糖質制限ってどうなのですか?

糖質制限食とは、血糖値を上げる糖質をできるだけ控えて、食後の高血糖を防ぐ食事法です。

つまり、糖質、米飯・めん類・パンなどの炭水化物などを制限し、脂質、たんぱく質を多く摂取します。

「主食をやめると健康になる」という本を出版されている江部先生が、糖質制限による糖尿病治療で多くの成果を出されています。

今や、この「糖質制限」は多くの人が知っている言葉になりました。

この糖質制限食は糖尿病治療やダイエットに応用されていますが、その理論はざっと次のようになります。

・血糖値を上げるのは糖質だけである。

・糖質摂取によって血糖が高値になり、インスリン分泌が誘発される。

・それが続くとインスリン抵抗性が生まれ、糖尿病が悪化する。

・血糖値は食事によってコントロールされているのではない。

・肝臓からの糖新生によってコントロールされている。

・だから、糖質を摂らなくても十分に血糖は保つことができる。

この糖質制限食は、血糖コントロールに非常に効果があります。

私自身も糖質制限食を試したことがありますし、糖尿病患者さんに治療として取り入れていただいたこともあります。

上手く取り入れることができた患者さんは、血糖降下剤を辞めることができたりするなど、劇的な効果を上げています。

ところで、この糖質を制限するという方法論は今に始まったことではありません。2000年頃にブームになったアトキンス式ダイエットは低炭水化物によるダイエット法です。

それ以前の米国でも糖質制限食の方法論は存在しました。そのたびに、通常の食事バランスではないため健康上の問題を巡って激しく議論が交わされています。

炭水化物制限に反対する代表的な著書

炭水化物制限に反対する代表的な著書をご紹介します。

米と糖尿病 日本人は炭水化物(糖質)を制限してはならない

山梨医科大学名誉教授、佐藤章夫先生の著書です。

内容は「炭水化物の多い食事を取ることによって糖尿病が改善する」というものです。

この本で主張されていることは次の通りです。

 

・日本人の食生活は過去1000年にわたって米をはじめとするでんぷん類だった
・これが第二次世界大戦後の60年間で激変した
・動物性食品、とくに、乳製品の消費量が増え、穀物の消費量が減った
・それと共に糖尿の患者が劇的に増加した。
・だから、穀物の消費量が減ったことが糖尿病の原因である。
・それを裏付けるような論文もある。
・要するに穀物中心の食事をするとインスリン分泌が少なくて済む

糖質の多い食事をすれば、インスリン分泌が亢進すると考えるのが普通だと思っていましたから、この本の内容はかなり刺激的でした。

糖質制限を極めたいと思われる方は是非、反対意見の著書を読んでみてください。
反対側からも見ることによって、物事の本質が現れてきます。

糖質制限が血糖値のコントロールによいのは明らか

但し、糖尿病にとってよいのかどうかは長期的な視点が必要です。

糖尿病は単に血糖が高いだけの疾患ではないからです。糖尿病は、糖質、たんぱく質、脂質代謝異常を伴い、血管障害を引き起こします。また、糖質を制限したら、代わりに何を食べるべきなのかの個別対応が必要です。

高炭水化物はインスリン分泌を亢進させるのか、抑制するのか?

「高炭水化物食はインスリン分泌が少なくて済む」という話は一見、暴言に思えます。

しかし、日本人は、体重あたりで欧米人と比べてもインスリンを分泌するすい臓ランゲルハンス島の数が少ないとのこと。

日本人は1000年にわたって高炭水化物をとってきました。

もし、炭水化物食がインスリン分泌を促すのであれば、すい臓ランゲルハンス島は欧米人よりもむしろ発達してしかるべきではないのか? という疑問が残ります。

糖質制限食を行う場合は長期的な視点に立ってインスリン分泌能をフォローする必要があるでしょう。

糖尿病の最大の原因は運動不足である

この図は、糖尿病の根本原因は運動不足だということを表しています。

糖質の多くは筋肉で消費され、筋肉細胞ではインスリン非依存性に糖質を取り込むことが出来ます。ということは、「筋肉が糖質をコントロールしている」といってもよいでしょう。

運動しなくなって、筋肉が萎縮した現代人が糖質をコントロールできないのは当たり前です。糖質制限食は筋萎縮による糖質代謝異常を起こさないための、代替手段のひとつといえるでしょう。

糖質摂取量は筋肉量、運動量をあわせて考えていかないとうまくいきません。

「米は究極のサプリメントである」

佐藤章夫先生は著書の中で、昔のオリンピック選手の食事内容について触れており、そこで「1600g(2700kcalに相当)の米は食べられるが、1000gのパン(2600kcalに相当)はとても食べられない」と言っています。

これは「米のエネルギー効率のよさ」を表しています。

「サプリメントは効率の道具である」と私は思っていますが、米は糖質のサプリ的存在だということができるでしょう。

サプリメントは栄養摂取量を効率化したいときに用いるものですが、その点において筋肉運動に多く用いられる糖質を効率よく摂取できるのが米なのです。

肉食と身体活動によって筋肉は肥大し増量しますが、その筋肉に仕事をさせるのはグリコーゲンであり、これは主にでんぷんからつくられるからです。

今は筋肉運動の目的が主に、労働からスポーツに変わっています。オリンピックで記録を狙うのなら、パン食ではなく米を食べるべきですね。

ちなみに江部先生は「必須アミノ酸、必須脂肪酸はあるが、必須糖質はない。 なぜなら、糖新生によって体内でつくることができるから。」ということをおっしゃっています。

これは、いざとなったら糖を作れるように体が防御機構を持っている事を意味します。つまり、糖質が体内でいかに重要な、生命線なのかを物語っているものであり、「糖質の摂取が必要ない」とは言えないのです。

効率がいいことがいいとは限らない

常に効率がいいことが健康にはつながらないことに注意する必要があります。

たんぱく質の効率を追求したのがプロテインです。

プロテインは適切に目的の部位に取り込まれると威力を発揮します。しかし、消化能力が落ちた人にとってプロテインは腸内の未消化蛋白を増やし、環境悪化因子となります。

筋肉運動に最適な糖質ですが、筋肉が少なく、運動量も少ない人が糖質を取ったらどうなるか?糖質は吸収が容易なために、血中に入ります。しかし、肝臓や筋肉での取り込み量が少ないために血中にあふれてしまいます。

糖質制限のブログに、筋トレをした日は糖質制限しなくても血糖が上がらなかった!というのを見ましたが、逆に言えば筋トレをしない人が食事で血糖を上げないには、糖質制限するしかないのです。

・人間は適応できる動物である

人間は筋肉を動かして、糖質を充分摂るような生活をする事も可能だし、糖質制限をしてケトン体回路を活性化させて脳を動かすことも可能です。

基本的には人間はどちらの環境でも生きていくことができるように作られています。

だから、糖質制限をするかしないかは、本人が自分の体の特性を踏まえて、自分の考え方で決めてよいのです。

栄養療法のプロとしての対処

ただし、人には個体差があります。

ブドウ糖の取り込みが悪い人は血糖が上がりやすいし、副腎機能が弱い人は血糖を保ちにくい。

マラソンは、糖質と脂質というエネルギー源を使い分けるスポーツです。通常の走行時には脂質を中心に使いますが、スパートするときにはエネルギー源が糖質に切り替わります。

この切り替えがうまく出来ない人は、スパート時に糖質を使い果たしており、ばててしまうのです。

この個体差を把握して、どのように食事内容を組み立てるかがプロの仕事です。

栄養療法が得意とする精神疾患ですが、ほぼ全ての精神疾患は背景に低血糖症という血糖の調節障害が隠れています。

つまり「糖質を制するものは栄養療法を制する」のです。

米という名のサプリの性質を知って、いかにうまく使うかが重要です。

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