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ガイドライン

「自分のトリセツの作り方」 ミネラルの吸収と生体利用性について

宮澤賢史 · 2020年1月24日 ·

前の記事:  ビタミンのドーズレスポンス

今回は、ミネラルの吸収と生体利用性に関する話です。

水溶性ビタミンはとにかくいっぱい摂ればいいです。

ビタミンは受動拡散と言って、濃度を上げれば濃度差で、濃度の高いところから低いところに浸透して吸収されていきます。

しかし、ミネラルは生体利用性を上げてやる必要があります。亜鉛・鉄・マグネシウムはもともと吸収があまりよくないんです。

ミネラルを吸収するためには、腸内環境が大事

ミネラルは細胞の中にイオン化、もしくは有機酸によってキレート化されて入らないといけないので、吸収されるためには腸内環境を整えなければいければいけません。

炎症があると動きが止まってしまいます。代表的なのは鉄です。炎症がある人は、鉄をいっぱい入れても吸収利用できません。

肝臓からヘプシジンという物質が出て、鉄の吸収を止めるからです。それでもヘム鉄なら少し入っていってしまうんですが。

本来、炎症がある時には鉄を入れてはいけません。炎症に火を注ぐことになるからです。

炎症を止めてあげて、ミネラルの代謝を正常化すると、鉄サプリメントがなくても鉄は上がってきます。上咽頭炎をちゃんと治すとフェリチンが上がっていく人は何人もいました。

重金属が出るのも同じです。炎症があるとデトックスが止まってしまいます。抱合するためのグルタチオンが消費されてしまうからです。だから、いいミネラルを体内に取り入れるのにも、悪いものをデトックスするのにも、環境を整えてあげることが必要です。

カンジダに鉄サプリは禁忌

腸内環境治療で1番やっかいなのはカンジダです。カンジダは人に近いからです。細菌というより、人に近いんです。

人とカンジダは鉄を取り合います。

カンジダがある人は鉄サプリメントは禁忌です。カンジダは糖質も鉄も大好きですから、鉄があるとどんどん成長して増殖します。鉄サプリを摂ってお腹の膨満感が強くなる方、いらっしゃいます。そういう場合は鉄を使えないように、抗菌用の乳性タンパク質であるラクトフェリンを使います。

ビタミンとミネラルの性質の違い

ビタミンとミネラルはまったく違う性質を持っています。

ビタミン:易吸収性であり有機物
ミネラル:難吸収性の無機物

ミネラルは体内では作れません。ビタミンは腸内細菌でまかなえたりするんですが、ミネラルに関してはあり得ません。ミネラルを作れたら錬金術になってしまいます。
水溶性ビタミンはドーズレスポンスですから、効かなければ、基本的には量を増やせばいいです。

ミネラルは生体利用性とバランスが命です。

マグネシウムは、吸収が良くないことを利用して、下剤として使われます。他のミネラルとのバランスを考えなければいけません。相互作用があるので、一つのミネラルを入れると、対抗するミネラルが枯渇してしまったりします。だから、ビタミンよりもミネラルの方が難しいです。ミネラルがうまくいかなくてミトコンドリアが回っていない人も多いです。

 ミネラルのバランスは周期表を見る

ミネラルのバランスは、周期表にエッセンスが閉じ込められています。

周期表は、原子の電子配列を集めたものです。

原子があって、その周りを電子がグルグル回っています。電子がまわっている軌道には定員があります。一番内側は2個、その外側は8個、8個、18個、18個となっています。原子の外側の電子軌道をあらわしたものが周期表です。

なぜこんな並べ方をするかというと、最外殻の電子の数が、ミネラルの性質を決めているからです。

 例:アルカリ金属

例えば1番左側のアルカリ金属を例に取りましょう。

リチウム・ナトリウム・カリウムは、それぞれ内側の電子の数は異なりますが、最外殻の電子の数は1個です。

リチウムとナトリウムとカリウムは同じ性質を持っています。同じように動くし、体内で反発しあいます。それをうまく表して、きちんと見られるようにしているのが毛髪ミネラル検査です。

この方の場合は、ほとんどのミネラルは左側、不足を表しています。

ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウムは右側を向いています。

同じような性質を持つので、体内で同じように動くんですね。

ビタミンB12が足りない人、働かせたい人はリチウムをたくさん入れたらいいですが、入れすぎると逆にビタミンB12が枯渇します。

この方の場合は、コバルトが最下段になっています。体内でコバルト、というとビタミンB12(コバラミン)のことを表しています。この人の場合はリチウムが余っていて、ビタミンB12が足りていないので、ビタミンB12をほどよく足してあげたらいいです。

リチウムを摂りすぎると、カリウムが下がってきます。拮抗ビタミンなので、リチウムとカリウムは一緒に入れてあげなければなりません。(ナトリウムはたくさんあるので例外)リチウムとカリウムを入れすぎると、今度はルビジウムが下がってきます。ルビジウムが足りなくなると、攻撃性が高まります。

だから、ミネラルの場合はバランスがとても大事です。

ミネラルの生体利用率に関わる腸の問題

これは宮澤医院の患者さんの初診時のアンケートです。

一番多い主訴は倦怠感、慢性疲労です。

慢性疲労の次に多い主訴は、腹部膨満感です。慢性疲労の人はお腹が悪い、ということですね。

副腎疲労の方150名の腸内環境検査を見てみると、77%の人に乳酸菌が少なく、腹部膨満感、炎症、免疫異常がありました。惨憺たる結果ですね。

腸の炎症を自覚できる人は少ないです。

腹痛、もしくは腹部膨満感が半年以上前からあるというのは、過敏性腸炎の診断基準です。

一般的にはいろんな下痢・便秘など様々な症状があっても、腸を調べると何ともない、というのが過敏性腸炎です。

しかし、実際に腸内細菌を調べてみると、大いに狂っています。症状がある人は自覚できるのでいいんですが、症状がない人もたくさんいます。統計上、実際に炎症があって、かつ自覚症状がある人は、40歳以上だと3人に1人という計算になります。

バナナみたいな便が毎日出ていてもそういうことがあります。バナナのような黄褐色で無臭の便が毎日1~2回出ることが最低限のラインです。そうなっていない人は、まずそこからやっていったらいいと思います。腸内環境を治すことは、ミネラルの吸収のためにとても重要です。

ミネラル吸収のポイントは土壌

今は、畑を耕すのに農薬をたくさん使います。すると、微生物がいなくなって、野菜が栄養的にすかすかになってしまいます。窒素を入れると大きくはなるんですが、すかすかになります。今、畑の野菜に足りない栄養素はマグネシウムなんだそうです。野菜のミネラルは減ってきています。ミネラルを吸収させるための微生物がいなくなっているからです。微生物が作り出す有機酸が、野菜にミネラルを吸収させます。

これは腸内にもあてはまり、腸内細菌が短鎖脂肪酸を作り出すと、その短鎖脂肪酸がミネラルを吸収させてくれるんです。だから、健全な発酵が必要です。そのためには食物繊維と乳酸菌です。

だから僕の場合は、ミネラルの吸収が悪い人に対しては便検査で短鎖脂肪酸をチェックしています。

「自分のトリセツの作り方」ビタミンのドーズレスポンス

宮澤賢史 · 2020年1月21日 ·

前回は、ビタミンとミネラルの考え方について説明しました。今回はドーズレスポンスについてです。ドーズレスポンスとは、量と反応の関係ですね。

歩行とふらつき、意識障害をもつ45歳男性

5日前から独り言が多くなり、会話が成り立たなくなった。また歩行がふらつくため、自宅内を這って移動していた。本日からほぼ寝たきり。

既往歴なし。喫煙歴20本x25年。飲酒ビール2.5リットル毎日。食事は不規則。バイタルサインほぼ安定。 診断と治療はなんでしょうか?

5日前からおかしくなって、すぐに寝たきり。普通は脳卒中などを考えますよね。

でも、特記すべきは1日ビール2.5リットル、食事は不規則でおつまみ程度というところです。

検査結果は、肝機能はお酒のせいで悪いですが、特に生命に関わるようなところはありません。

脳のMRIを撮ると、まんなかのところに少し炎症が見られます。

これは、ウェルニッケ脳症という極端なビタミンB1不足を原因とする中枢性障害です。眼球運動麻痺、歩行失調、意識消失をきたします。

大事なのは、拮抗栄養素の過剰な摂取によって、対立する栄養素が失われてしまうことです。

いったんこうなったら、ビタミンB1サプリを摂るのではなく、点滴でビタミンB1を大量に入れます。

ビタミンの欠乏症は現代でも存在する

脚気、ウェルニッケ脳症、壊血病は昔の病気ではありません。

現在でもあるんです。

現代の脚気は、こういったアルコール中毒か、子供の清涼飲料水の飲みすぎなどが主な原因です。 清涼飲料水は異常に糖質が多いので、それによってビタミンB1が消耗してしまうんです。

脚気心といって、動悸が激しくなって運ばれ、救急外来で肺高血圧症と診断されるも、最終的に脚気による心不全だということがわかる、ということはよくあります。

欠乏状態においては、十分な量の栄養を確保しましょう。

ビタミンC

欠乏症と言えば、壊血病です。

トーマス・スティーブンスの航海記を引用します。

これが壊血病の様子をあらわしています。

先ほどのウェルニッケ脳症のように、完全に不足したら点滴で入れないといけません。

でも特に問題がなければ、そんなにビタミンCを入れなくてもいいんじゃないの?と思う方もいらっしゃるかもしれません。

ビタミンCの抗がん作用

ビタミンCを点滴すると、血中濃度が経口で摂取する場合の70倍になります。レモン1250個分です。

点滴で入れると、経口摂取に比べ、血中濃度が通常の70倍になります。

僕がビタミンC点滴を習ったリオルダン・クリニックの、リオルダン先生が2000年に発表した論文です。

ビタミンCの血中濃度が400mg/dを超えるとがん細胞が死ぬ、という論文です。

2005年にWHOが追加実験を行うと、本当にがん細胞がなくなったので、そこから一気に広まりました。

これはビタミンCを経口摂取した場合と点滴した場合の、血中濃度のグラフです。

400mg/dというのは結構な濃度で、経口摂取では絶対にたどりつけない濃度なんです。点滴でしかこの濃度に達することはできません。

抗がん作用を期待するなら、点滴しなければなりません。これもドーズレスポンスですね。

ビタミンCの至適量は状況や目的によって変わる

ビタミンCの至適量は、状況や目的によって変わります。

怪我を治りやすくする、コラーゲンを作る(100mgで大丈夫)、壊血病を予防する、風邪の予防ではグラム単位で必要です。

副腎疲労は風邪と同じように、数十g摂るといいです。ビタミンCを点滴すると、てきめんにいいです。

ビタミンCサプリメントは頻回摂取が有効

サプリメントを摂るなら、1gずつ1時間ごとの頻回摂取が有効です。

ビタミンCは一度に大量に摂ると、吸収が落ちます。

60mgだと100%、100mgだと90%、1000㎎だと75%、2000㎎だと44%と、どんどん減っていきます。

ですから、1000mgが最もコスパが良いですね。

30分で血中濃度は上がりますが、4時間で下がります。4時間おきだと血中濃度が上がったり下がったり、血中濃度が安定しません。

ですから、1時間おきに、血中濃度が下がっていないうちに次々入れていくと、どんどん上がっていきます。

ビタミンCの効果は血中濃度に比例しますから、ビタミンCを1時間おきに摂るだけで、効果が3倍近くなります。

ビタミンCを自分で作れる動物

ビタミンCを自分で作れるものもいます。

左側が作れないグループ、右側が自分で作れるグループです。

犬と猫も作れますが200mg程度だそうです。自分で作れるとはいえ、少ないですね。動物病院ではビタミンC点滴はよくやることです。ストレスが多くて全然足りないからです。

野生のヤギは14mg/日ですが、病気になると100mg/日です。需要に応じて産生量が増すのです。

自分で作れない動物は、状況に応じて摂取量を増やした方がいいのではないか、という話です。

ビタミンDの血中濃度と効果

同様に、ビタミンDにもドーズレスポンスがあります。

ビタミンDの血中濃度が20ng/mlと低くても、くる病は予防できます。

様々ながん、糖尿病、多発性骨髄腫などはだいたい40~60ng/mlで予防できます。ほとんどの疾患ではこの濃度にしておくと、いいことがおきるということです。

日本人の平均ビタミンD血中濃度は20程度と言われています。

日焼けしていて、すごくビタミンDがありそうに見えても血中濃度が低い人もいます。逆の人もいます。ビタミンDの体内合成力によります。

低い人は、サプリメントを摂ると、確実に上がっていきます。血中濃度を上げるためには、できれば1日2000IU以上摂ると良いでしょう。

しかし、ビタミンDはビタミンAと同じく脂溶性ビタミンなので、1日5000IU以上摂取する場合は血中濃度を測定しながらやることが重要です。ビタミンDサプリメントを毎日摂っていて腎不全を起こしたという症例報告があります。

次の記事:ミネラルの吸収と生体利用性について

「自分のトリセツの作り方」ビタミンとミネラルの考え方

宮澤賢史 · 2020年1月17日 ·

前の記事:小胞体

今回は、ビタミン・ミネラルのお話です。

ビタミンとミネラルに関しては、これは、と思う知識を集めたものになっています。

栄養素を効かせるカギ

これまでお話ししてきたことを振り返り、栄養素を効かせるカギをまとめてみました。

ドーズレスポンス

ドーズレスポンスとは、栄養素は投与量によって効果が変わってくるということです。

栄養素は欠乏症をいやすだけのものではありません。

ビタミン類はそもそも、欠乏症を治すための薬として開発され、使われてきました。今でも偏った栄養の教科書には、欠乏症を治すためにごく微量あればじゅうぶん、と書かれているものもあります。

しかし、量を増やすことによって、様々な医学効果が期待できるというのが最近になってわかってきました。

ドーズレスポンスをうまく使うと、栄養で思わぬ効果が期待できます。

個体差

脳は他の臓器に比べて栄養への依存度が高いです。

患者さんが薬を欲しがる時、睡眠薬や安定剤のような、効果がすぐにわかるものを欲しがる方が多いです。

コレステロールの薬を飲んですぐに効果がわかる方はほとんどいません。

アルコール、カフェインなどを考えても、食べ物はものすごく脳に影響します。

脳へのアプローチでは、食事・栄養コントロールをすることはとても重要です。

メチレーションの例で出てきたように、ある栄養を摂ったら体に害があるものもあります。特に脳への影響は強いので、脳へのセレクションは「すごく」考えるべきです。SAMeやナイアシンなど、メチレーションに関して逆の働きをするものを間違えると、悪化します。

局在を考える

同位同食という中国の考え方では、肝臓が悪い場合は鶏レバーを食べればいい、と言われます。

同様に、副腎の機能が落ちている人は、牛や豚の副腎をすりつぶしたものをサプリメントとしてとるという考え方があります。

細胞レベルのでの場合も同じように、細胞膜が悪かったら、細胞膜の原料をたくさん摂ったらいいです。

副腎を治したかったら副腎に多く存在する栄養素を摂ればいいです。ビタミンCが体内で最も多いのは副腎、ついで脳です。何故多いかというと、需要が多いからです。何故需要が多いのかを考えると、ビタミンCがどんな働きをしているかということがわかってきます。

栄養素の種類と性質

これに関しては後ほどまたお伝えします。

You are what you digest.

栄養は消化吸収して初めて役に立つので、消化できない量のサプリメントや食事をとることはやめましょう。

消化できても代謝できない場合もあって、サプリメントの摂り過ぎで肝臓を壊している方も多いです。そういう場合はきちんと代謝できていません。薬と同様、サプリメントの代謝も体に負担が大きいです。

特に代謝酵素で代謝されるものを、サプリメントと薬で同時に摂ってしまうと、薬の血中濃度が上がってしまって薬の副作用が強く出てしまったりもします。気を付けるべきです。

食事

サプリメントは食事の代わりにはなりえません。

効かない理由を考える

栄養素の局在について考える必要があります。重要なのは、効かせたい場所に元から多く存在する栄養を多く摂ることです。

ビタミンCの場合

例えば、日本の厚生労働省が指示しているビタミンCの摂取量は、レモン5個分です。レモン1個分は20mgと規定されているので、ビタミンCの標準摂取量は100mg、壊血病を予防するためには大人の場合100mgだと言っているということです。

アメリカのNational Academy of Scienceは、最低のビタミンC摂取量を60mg(現在は75mg)だと言っています。

ビタミンC標準摂取量の根拠となる実験

ではなぜ、100mgや60mgなのかというと、囚人を使った実験がもとになっています。

まず、ビタミンC欠乏食を2週間食べさせて、ビタミンCを完全に欠乏させます。それからビタミンCを5mg、10mgと毎日増やしていって、どれくらい摂ったら尿中に出てくるかというのを調べたところ、60mgだったそうです。ということは、60mgで体内で飽和したんだろう、という根拠なんだそうです。

でももし人間がそんな単純なバケツのような構造をしているのであれば、ビタミンCを大量にとっても、60mg以上は尿中に排泄されてしまうので無駄になるはずです。

ビタミンC排泄量の比較実験

これは、実際にビタミンCを1000mg摂った場合と、2000mg摂った場合の尿中の排泄量の比較です。もし60mg以上が尿に排泄されるなら、1000mgだと940mg出るはずですね。2000㎎だと1940mg排泄されるはずです。しかし、実際には1.5倍しか出ませんでした。ですから、この説は間違っているだろうということです。

では、その差はどこに消えたのでしょうか?

ビタミンCの局在

これはモルモットです。モルモットは人間と同様に体内でビタミンCを作ることができない、数少ない動物のうちのひとつです。

人間は進化の過程で、ビタミンCを体内で作る能力を失いました。ビタミンCを果実などで豊富に摂れる環境があったからだと思われます。

進化の過程で、周囲から豊富に摂れる栄養は、自分で作る能力が退化していきます。必須脂肪酸、必須アミノ酸、摂らなければばならないビタミンが多すぎますね。人は、外から摂取しなければいけない栄養だらけです。

ビタミンCの実験には一般的にモルモットが使われます。外から入れたビタミンCがどこに行くのか見るのには、モルモットが最適だからです。

これは1950年頃のビタミンCの実験の写真です。

摂ったビタミンCは、体内に均等に分布しているわけではありません。需要が高い臓器に集まっているのがわかると思います。ビタミンCの需要がどこで多いかというと、目玉、副腎、脳です。

分子栄養学の生みの親のひとり、ライナス・ポーリング博士の実験は、ハエを使ったものでした。

1日で死んでしまうハエでしたが、死ぬときには白内障になっているそうです。でも、ビタミンCを摂らせた場合は、死んだときにも白内障になっていませんでした。

水晶体にはビタミンCがたくさん含まれていて、抗酸化の働きで白内障になるのを予防しています。

同様に、副腎、脳での蓄積が高い理由もあると考えることができますね。

ビタミンCが脳脊髄内に少ない人は、うつ病の発症率が高いんです。

副腎では、ビタミンCはコルチゾールの合成に関与しています。

血中のビタミンCを1とすると、脳には20倍、白血球中には80倍、副腎には150倍存在しています。

風邪にビタミンCが聞く理由は、白血球の遊走性を上げる働きがあるからです。免疫が上がります。

副腎疲労の人はビタミンCを摂ったほうが良い、というのはこれだけでもわかりますね。

副腎から出るコルチゾール合成の、おおもとの命令は脳の下垂体から出ています。この副腎皮質刺激ホルモンを出す下垂体のビタミンC濃度は、非常に高いです。

脳・副腎・肝臓には優先的に供給されている

同じくモルモットで、ビタミンCをたくさん撮ると、臓器別の濃度がどうなるかを調べた論文があります。

ビタミンCは副腎とか肝臓や脳に多いですが、投与量を増やしていくと、どんどん上がっていきます。

ビタミンCの投与量が減ると、どんどん減るかと思いきや、ぎりぎりまで脳と副腎、肝臓の濃度は保たれます。他を差し置いても優先的に供給されているということです。

ちなみに、濃度別で考えた時に一番濃度が高いのは副腎・脳下垂体ですが、総量として一番多いのは、肝臓です。

肝臓ではビタミンCは解毒に使われます。解毒のフェーズ1、活性化のところで使われています。

お酒を飲んだ次の日、ちょっとボーっとしているときにビタミンC点滴をやるとリセットされます。僕はよくやります(笑)

ビタミンE

ビタミンEも、濃度が一番高いのは副腎です。

亜鉛

亜鉛が一番多いのは、膵臓です。

亜鉛は細胞分裂のキーミネラルです。

膵臓は消化酵素を大量に作るので、細胞がたくさん分裂するのに亜鉛が使われます。

肌もそうです。ですから、アトピー性皮膚炎には絶対必要です。

腸粘膜の修復にも大事です。人間の体内で細胞分裂が一番早いのは腸粘膜です。

骨髄もそうですね。白血球が2週間毎に入れ替わります。

口腔粘膜もターンオーバーが早いです。修復に必要な、細胞分裂に関わる亜鉛やビタミンAが豊富です。

ですから、効かせたい場所に元から多く存在する栄養を多く摂ることを意識してください。どこの臓器にどんな栄養が多いのかはご自分で調べてみてくださいね。

次の記事: ビタミンのドーズレスポンス

「自分のトリセツの作り方」小胞体

宮澤賢史 · 2020年1月14日 ·

前の記事: 細胞膜

ここまで、ミトコンドリアと細胞膜と核について学んできました。

今回は小胞体についてです。

小胞体とは

小胞体というのは核の周りにある、うにゅうにゅした形の器官のことです。

核ではタンパク質を作れないので、小胞体の中のこの粒々したリボゾームというところでタンパク質を作ります。作ったタンパク質はそのままこの小胞体の中に保存します。

つまり小胞体はタンパク質の製造と倉庫の役割です。作ったタンパク質を、必要に応じて出荷します。

フォールディングがうまくいかないと小胞体ストレスになる

タンパク質を作るにはまず、核内の遺伝子をRNAでコピーして、リボゾームに持ってきます。

そこから転写(翻訳)して、設計図に沿ってアミノ酸を1つずつ紡いでいきます。

数珠状になったアミノ酸をタンパク質にするためには、これを折りたたんでいくことが必要です。折りたたむことをフォールディングといいます。

この折りたたみ方が雑だと正しいタンパク質ができません。折りたたみを助けてくれるのが分子シャペロンです。シャペロンというのは執事、という意味です。シャペロンが正しく機能すると、正しい折り目で折りたたまれて、正しいタンパク質ができます。

タンパク質は非常に精巧な作りをしていて(多少大丈夫な部分はありますが)、一点構造が変わってしまうと働かないポイントがあります。

特に酵素の場合は、構造が少し変わってしまうと全く働かなくなることがあります。ですから、フォールディングはとても重要です。

タンパク質が正しく作られると、必要に応じてどんどん出荷されていきますけれども、不良品だと出荷停止になります。小胞体の中に、不良在庫がどんどん積みあがっていきます。

すると、小胞体がせまくなってきてお手上げになってきて、小胞体の機能が低下します。これを小胞体ストレスといいます。

タンパク質が正しく作られない理由は様々です。

うまくDNAのコピーができなかったのかもしれないし、翻訳がうまくいかなかったのかもしれないし、フォールディングに問題があったのかもしれません。細胞膜が固すぎて出荷できなかったのかもしれません。

様々な要因でできそこないのタンパク質が増加すると、小胞体ストレスがどんどんたまってきます。

小胞体とミトコンドリアは一心同体なので、どちらかにストレスがあると両方とも機能しなくなります。ミトコンドリア対策をいくら頑張っても、小胞体ストレスがあるとうまくいきません。

ですから、小胞体ストレスをなくすようにしなければなりません。

転写がうまくいくように活性酸素をなくすことも大事ですが、特に大事なのは、フォールディングを助ける分子シャペロンをちゃんと働かせることです。

小胞体ストレスを防ぐには

ではいったい、どうすれば小胞体ストレスを防げるのでしょうか。

1.動物性タンパク質の過剰摂取を制限する

肉は必要ですが、食べ過ぎはダメです。食べ過ぎるとタンパク質を作らなくていいのかな、と体が勘違いして在庫が増えてしまうそうです。

2.ミトコンドリア機能を上げる

小胞体の機能を上げるには、一心同体であるミトコンドリアの機能をあげてやるのもいい手です。

ミトコンドリア機能を上げるために、運動するのが良いでしょう。

3.ヒートショックプロテイン

先程出てきた分子シャペロンは、ヒートショックプロテインのことだと思って構いません。

ヒートショックプロテインとは、刺激によってつくられるタンパク質です。

どんな刺激かというと、朝日を浴びる、熱いお風呂に入る、息を1分間とめる、寒中水泳をする、高地トレーニング、断食をする、ということです。

ヒートショックプロテインを刺激すると、分子シャペロンがうまく働くようになって、フォールディングがうまくいきます。断食をした方がいい理由の一つはこれです。

時々短期の刺激を与えてあげることで、タンパク質の不良在庫を一掃してください。

寝る前にオメガ3脂肪酸やナイアシンを摂取する

細胞膜を柔らかくすることも必要ですから、オメガ3サプリメントを摂ることもいいと思います。

遺伝子の修復をする、ナイアシンを寝る前に摂ることもいいでしょう。

小胞体ストレスをなくして、小胞体とミトコンドリアの動きを良くしましょう。

最後に

ここまでで、細胞の4つの働きは終わりです。

イメージができてきたでしょうか?自分の細胞を動かすイメージがとても大切です。

自分の今の細胞はどうなっているかということをイメージして、根本治療ピラミッドを作ってみてください。

次の記事: ビタミン・ミネラルの考え方

「自分のトリセツの作り方」細胞膜

宮澤賢史 · 2020年1月10日 ·

前の記事: メチレーションプロフィール

ここまで細胞の中の、ミトコンドリア、核とお話ししてきました。

次は細胞膜です。

細胞膜の構造

細胞膜はご存知の方も多いかもしれませんが、脂質の2重層といって、リン脂質が集まって2層構造をなしています。

これはリン脂質の図です。グリセロールに脂肪酸2つとコリンがついています。これがたくさん集まって、細胞膜を形成しています。

脂肪といえば、普通は中性脂肪を連想しますね。中性脂肪はグリセロールに脂肪酸が3つくっついたものです。

リン脂質は、脂肪酸が2つで、中性脂肪にあったもう一つの脂肪酸の代わりに、コリンがくっついたものです。

脂肪酸の方が脂溶性で油に溶け、コリンの方が親水性で水に溶けます。

油に溶けやすいところ同士、しっぽ同士がくっついて2重層になっているので、内側と外側は親水性になっています。血液や細胞内の水分がうまく入るようになっていますが、中は油なので、いろんなものが通らないようになっています。特別なものしか通しません。それが細胞膜です。

細胞膜の3つの働き

細胞膜の働きは3つです。

  • 隔てる(選択的透過性)
  •   流動性(樹状突起、エクソサイトーシス)
  •   プロスタグランジン

ひとつずつ、詳しくみていきましょう。

細胞膜の働き1.隔てる(選択的透過性)

まずひとつは、隔てる壁の役割です。細胞というのは選択的透過性を持っています。限られたものだけを通して、他は通さないということです。

例:カルシウム

例えば、カルシウムの濃度差は細胞の外と内では10000:1なんです。

細胞の外に10000あれば、細胞内には1しかないんです。極端な濃度差ですね。

ATPを使って、細胞の中から外にポンプで組みだしているんです。

体内のATPの多くは、カルシウムをくみ出すことに使われています。何故そんなところに大事なエネルギーを使うかというと、カルシウムの濃度差を保つことが生命にとってとても大事だからです。

普段はカルシウムの濃度差を10000:1に保っておいて、何かしら刺激があった時に、カルシウムが外から中に一気に入ってきます。

これによって心臓が動いたり、インスリンが分泌されたり、神経が伝達されたりします。

人間はカルシウムをスイッチとして使っているので、カルシウムの濃度差がスイッチの敏感さにつながっています。ですから、この敏感さを保つために、カルシウムをどんどんくみ上げないといけません。

もしこのATPがなくなって、ポンプ機能が弱ってくると、10000:1が保てず、1000:1くらいになってしまったりして、スイッチが鈍感になっていきます。

するとインスリンがうまく分泌できなかったり、神経伝達物質がうまく働かなかったりします。だから、ここは鍵になるところです。

ミネラルを体内に吸収させる方法1.イオンチャンネルを通す

ミネラルは水溶性です。ミネラルを体内に吸収させようと思ったら、まず腸の粘膜の細胞の中に入れ込むことが必要です。細胞の外から中に入らないといけないんですが、入口はありません。

しかし、イオン化すると入ります。イオンチャンネルという穴があるんです。ですから、ミネラルはイオン化させなければなりません。そのためには胃酸が必須です。胃酸が出ていない人はミネラルを吸収できません。

ミネラルを体内に吸収させる方法2.キレート

ミネラルを体内に吸収させるもうひとつの方法は、キレートすることです。キレート、というのはアミノ酸で挟み込む方法です。

ミネラルは、アミノ酸で挟み込まれると、アミノ酸の入り口を通して細胞内に入り込むことができます。

アミノ酸で挟み込んだミネラルのことをキレートミネラルといい、サプリメントとしてたくさん発売されています。日本では食品のキレート加工が認められていないので、日本製のキレートサプリメントはありません。外国産のものを使うことになります。

そんな形で、少し工夫しないとミネラルは吸収するのが難しいです。

脂溶性ビタミンは細胞膜を通過する

それに比べて、脂溶性ビタミンは脂である細胞膜を自由に通過できます。

遺伝子の発現には、栄養が核に働きかけることが関係してきます。脂溶性のビタミンAやビタミンDは、摂取したらそのまま細胞の核に働きかけて遺伝子の発現に直接関与するので、作用がとても強力です。脂溶性ビタミンは非常によく効きますが、胆汁がしっかり出ていることが条件です。

これはステロイドホルモンの働きとまったく同じです。ステロイドホルモンとは、コルチゾールです。ステロイドがなぜあんなに強力かというと、細胞膜を通り抜けて核に直接働きかけるからです。

細胞膜の働き2.流動性

細胞膜は、その柔らかく流動性が高いことを通じて、神経伝達したり、ホルモンの分泌に関わったりしています。

流動性が高いというのは、形を自由に変えられるということです。

流動性を高くするために

リン脂質は不飽和脂肪酸が入っています。不飽和脂肪酸は結合部分が飽和していない脂肪酸のことです。

二重結合がある脂肪酸のことです。二重結合があるとそこが可動性が高くなるので、柔らかくなって、流動性が高まりますから、何にでも形を変えることができるようになります。

例えば脳神経細胞です。樹状突起によって、たくさんつながっています。この樹状突起も、すべて細胞の膜でできています。不飽和脂肪酸がたくさん入っているからです。

マグロの目玉を食べると頭が良くなると言ったりしますね。マグロの目玉にはDHAがたくさん入っているからです。DHAは特に脳への移行性が高いので、脳の脂の原料になります。しかもDHAは二重結合が6個もあります。(EPAは5個です。)非常に柔らかいので、神経細胞の樹状突起の維持に役に立ちます。

赤ちゃんが飲んだら頭が良くなるし、ご老人が飲めば、痴呆防止の役に立ちます。

この逆の働きをするのがトランス脂肪酸です。最も固い油です。流動性が極めて乏しいうえに、脳にどんどん吸収されます。脳は細胞膜の塊みたいなものですから、最も影響を受けます。特に子供の場合は、脳の発達が4歳までに80%できてしまいます。人間の体は25歳くらいまでゆっくり成長しますが、脳は早いんです。ですから、子供の時にトランス脂肪酸を与えたら絶対ダメなんです。すべて脳にいってしまいますから。何を摂るかより、何を摂らないかを先に考えなければなりません。

リン脂質の不飽和脂肪酸濃度が高い方が、膜の流動性が高まって、頭が良くなっていくということです。

エキソサイトーシス

細胞はどうやって細胞内環境の中で神経伝達物質やヒスタミン等の細胞外環境適応物質を作るのか。

答えは、細胞の内側にさらに膜を隔てて、細胞外環境を確保するということです。

膜と膜をくっつければ、簡単に分泌することができます。逆に、受容体をくっつければ簡単に取り込むことができます。これがエキスサイトーシスです。

不飽和脂肪酸が少なくて膜が固いと、この出し入れがうまくいかないんです。

細胞膜の働き3.プロスタグランジン

細胞膜の一部がちぎれて生理活性物質になり、炎症や血栓に関わっています。プロスタグランジンといいます。

炎症を止めるのは、炎症の部位を治療します。しかし細胞レベルで言えば、細胞の部分の脂肪酸の組成を変えるということです。魚の脂を摂れ、ということです。それが細胞レベルで炎症を止めることになります。

エイコサノイド

細胞の膜というのは、ホスホリパーゼA2の刺激によってちぎれて、生理活性物質になります。

肉の脂、アラキドン酸の場合はプロスタグランジンE2、トロンボキサンA2、すなわち炎症を起こすプロスタグランジンという物質ができます。

魚に多いEPAの場合は炎症を抑えるプロスタグランジンE2というものができます。

ですから、細胞の膜の不飽和脂肪酸の組成が、炎症体質かそうでないかを決めるんです。

ふだん肉の脂を食べている人は、アラキドン酸が多い膜になりやすいので、刺激があった場合は炎症を起こすプロスタグランジンが出ます。魚の脂をたくさん食べる人は炎症を抑えるプロスタグランジンが出ます。この炎症を起こしやすいか起こしにくいかという比率のことを、EPA/AA比率といいます。AAは、アラキドン酸(Arachidonic acid)です。

アラキドン酸は必須脂肪酸です。体内になければならないもので、アラキドン酸のおかげで炎症を起こすことができます。短期の炎症は絶対に必要なものです。傷を素早く修復するために炎症物質を出し、そのおかげで傷が早く治ります。

ただ、EPAが少なすぎて、炎症を収束させることができず、慢性化してしまうのが問題なんです。

現代人はアラキドン酸を摂りすぎていて、理想的な比率3:1とは離れて、20:1ほどになってしまっています。

ですのでアラキドン酸を控えてEPAを増やすことで、炎症体質を抑えましょうということです。

EPAは血管で言えば、血小板の凝集を抑制するので、血液もサラサラにします。やはりEPA、DHAは重要です。

アトピー性皮膚炎の人は炎症体質なので、このあたりは絶対考えた方がいいと思います。

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