今回は、前回お話した栄養療法ガイドラインの方針「4.根本原因を追求する」の第1段階、ドーズレスポンスについてお話しします。
もくじ
ドーズレスポンス=量と反応の関係
栄養療法ガイドラインの基本的な考え方は、ドーズレスポンスです。量と反応の関係のことです。
具体的な例をみてみましょう。
ビタミンB1
例えば、ビタミンB1が不足するとなる病気で有名なものは「脚気」です。
ビタミンB1はエネルギー代謝に不可欠のビタミンなので、欠乏すると心臓が浮腫んで、神経にも影響が出ます。膝の腱反射が起きなくなります。これを脚気と言います。
ということは、ビタミンB1を摂るとエネルギーがわいてきて、ミトコンドリア機能を活性化することができます。
ビタミンB3
ビタミンB3はナイアシンと呼ばれているビタミンです。
ペラグラを予防するために使われますが、その用途であれば30mgもあれば充分なのです。
しかしビタミンB3を3000mg摂ると、統合失調症に効果があるということがわかっています。
分子栄養学の始祖と呼ばれるエイブラハム・ホッファー博士は、精神科医になる前に生化学者だったので、ビタミンの特性をよく理解されていて、ビタミンB3を統合失調症患者に使ったら、結構な割合でよくなりました。
ただそれは、30mgでは効かず、最低でも1g以上投与する必要がありました。なぜナイアシンが統合失調症に効くかというメカニズムは結構おもしろいので、よかったら調べてみてくださいね。
葉酸
葉酸サプリメントといえば、妊婦さんが二分脊椎症予防のために飲むものですね。
二分脊椎とは、赤ちゃんが生まれてくる時に、脊髄や脊椎が癒合不全を起こしている症状です。症例は少ないと言われていますが、実際には統計に出てこないだけで、多く起こっていました。そこで、厚生労働省がビタミンB12と葉酸の摂取を推奨することによって、二分脊椎症はだいぶ減ってきました。
ビタミンB12と葉酸は、DNAに働きかけて、神経の発達を促す働きを持っています。
そんな葉酸ですが、10倍くらい摂るとメチレーション回路を動かすことができ、身体の解毒に役立ったり、がんを予防したりすることができます。
ビタミンC
最も有名なのはビタミンCでしょう。
ビタミンCはできるだけ大量にとって問題ないビタミンです。多く摂り過ぎたとしても副作用は下痢くらいです。
100mgあれば、壊血病は十分予防できます。
壊血病とはビタミンCが欠乏して、コラーゲンが作れなくなって、血管が弱くなって全身から出血する病気です。
大航海時代、多くの船員が壊血病にかかりました。これはライムを食べるという対策によって治ったそうです。
一方、ビタミンCをグラム単位で摂ると風邪の予防になることがわかっています。
10g摂ると、風邪の症状が80%程度減ります。
さらに、50~100mgを点滴すると、がん細胞を殺傷することがわかっています。
壊血病、かぜ、がん。量を変えると、効果が変わってきます。
ビタミンD
ビタミンDは昔から、「骨のビタミン」と呼ばれ、くる病に関係があることが知られていました。
赤ちゃんの時から日光に当たらないで過ごすと、骨が曲がってしまいます。くる病は北欧に多い病気です。大人になってから起こると、骨軟化症になります。
しかし最近DNAの解析が進み、ビタミンDの受容体がほぼ全身の臓器にあることがわかりました。
ビタミンDをより多く投与していると、特に乳がんと大腸がんをはじめとした、がんの予防に有効だということもわかってきました。ビタミンDは一般的には血中濃度で測りますが、ある一定の濃度を超えると明らかに、がんやリウマチの予防効果があると言われています。
ビタミンDの受容体がうまく働く人とそうでない人で、ビタミンDの必要量は異なります。
まとめ
まとめて書くと、最初にご覧いただいた表になります。
ドーズレスポンスといって、ビタミンは量を変えると得られる効果が様々に変わってきます。
このように、ビタミンは至適量を使うと、通常の予防効果を越えた新たな効果を得ることができます。