ここまでの話で、問診・検査もやって、だいたい自分の現状は把握した、スタート地点が見えた、となりました。
次はゴール地点を決めます。今回はアレルギー体質の改善をゴールとした場合のお話です。
目的によって、ピラミッドのどこを重点的にやったらいいのかということが見えてきます。
ステロイドの問題は免疫抑制してしまうこと
これはステロイド発売後のアトピーの有病率を調べたグラフです。この一番下の線がステロイド外用剤発売後18年した時の京都のグラフです。横軸が年齢です。
1972年のときには5歳以下に多く、年齢が上がるとともに減っていくというグラフでした。20歳を越えると、ほとんどいなくなります。
しかし、1995年の大津市のデータだと、かなり有病率が高くなっています。特筆すべきはより高い年齢で有病率が高くなっているということです。
ステロイド外用剤が発売されてから、ステロイドが世の中に浸透すればするほど、高年齢のアトピー性皮膚炎の有病率が高くなっているということがわかります。
なぜなら、ステロイドはアトピーの根本的な治療薬ではないからです。
ステロイドは免疫抑制剤です。アトピー性皮膚炎は炎症なので、炎症は抑えなくてはいけないのですが、ステロイドの問題点は免疫まで抑えてしまうことです。
アレルギー性疾患の根本的な治療
アレルギー性疾患の根本的な治療は何でしょうか。
答えは免疫の正常化です。
そして、免疫を正常化させるためには、免疫を抑制してはいけないのです。
アトピー性皮膚炎に限らず、自己免疫疾患・アレルギー疾患・アレルギー体質をより改善させようと思ったら、根本原因として、免疫を正常化させようと考えてください。
免疫は何もなくて、ただ発動するということはありません。何らかの発動原因があります。
炎症を抑える
例えば炎症です。
風邪やリウマチのようなわかりやすい炎症だけではなく、身体の中には潜在的な見えない炎症がたくさんあります。炎症は万病の元、と言われるようになってきました。炎症があるから免疫が亢進してしまうんです。
身体の炎症を抑えましょう。
これがアレルギー体質の改善に対する根本的なアプローチです。
特に、上咽頭と腸の炎症を抑える
特に免疫疾患に対するアプローチとして有効なのが、上咽頭と腸です。体の末梢神経の大部分が集中しているからです。
特に腸は、末梢神経の70~80%が集中しています。
腸は免疫の塊です。食べ物が敵なのか味方なのかを判別しなければならないので、免疫が異常に発達しています。パイエル板が敵と味方を判別しています。
同様の仕組みが上咽頭にもあります。口を開いて見えるのは中咽頭までです。上咽頭は鼻のちょうど奥の方です。
上咽頭はアデノイドといって、鼻からくる空気と口からくる空気の交差点になっていて、免疫が完全にむき出しになっているところがあります。
上咽頭と腸の炎症は臨床上症状が出にくく、わかりにくいことも問題です。
腸の炎症は、40歳以上だと、半数以上は自覚できません。若い人は過敏性腸炎のような症状が出ることもあります。
上咽頭炎も、自分では気が付かない炎症のひとつです。
- いつも口を開けている
- 慢性の鼻炎がある
- 食べるときに音を立てる
- 口を閉じると梅干しのようなしわができる
- 鼻咽頭から喉にたんが流れる
- 口呼吸である
- 朝起きると喉がひりひりする
特に最後の3つの症状がある場合、99%以上の確率で上咽頭炎があります。耳鼻科で検査を受ける必要があるでしょう。
上咽頭や腸は免疫が集中しているところですから、ここに炎症があると、炎症性物質・反応性の免疫物質が全身をまわります。この仕組みをリンパ球のホーミングと言います。ひとつの炎症が全身に飛び火して、全身が炎症体質・自己免疫体質になってしまうんです。だから、免疫を正常化するためにはまず、炎症を止めることが重要です。
濃くなっているところは、特に重点的にアプローチしなければならないところです。
アレルギーを治したいなら、腸を念入りにやってください。炎症を念入りに止めてください。
副腎アプローチも重要
もうひとつアプローチしないといけないのは、副腎です。
副腎はコルチゾールという炎症を止める物質を出しています。
薬で言うとプレドニン(ステロイド)があります。
ステロイドを体に投与すると副作用が心配だという人もいると思います。しかし、ステロイドは体内でも作っているんです。体内で作る量だと適切な量だけ出ているので、副作用がありません。
コルチゾールは身体に必要な物質なんですが、副腎疲労だと分泌できません。だから、炎症が抑えきれないんです。
アトピーでも慢性の喘息でも、副腎疲労を起こしていますから、炎症を抑えきれていません。だから、副腎アプローチが重要です。
免疫寛容を起こさせる
もう一つの手段は、免疫寛容を起こさせるということです。
免疫寛容とは、わざとアレルギーの物質を与えてあげて、自分の免疫が発動するのを毎日繰り返すうちに、自分の体のほうがその物質に慣れて反応しなくなってくる、という現象です。
免疫寛容を起こさせるためには、一過性に免疫を上げなければなりません。
一般的な抗アレルギー薬や、免疫抑制剤であるステロイドを使っていると、免疫が上がらないので、免疫寛容が永久に起こりません。
どうしても治らない場合は、免疫に対する体の準備をちゃんと作っておいてから、一過性に免疫を上げて、免疫寛容を起こさせるという手を使います。
宮澤医院では、リウマチの人にこの方法を使っています。