
今日は高濃度ビタミンCの話です。
ヒュー・リオルダン先生は、ライナス・ポーリング博士の考案した高濃度ビタミンCの点滴療法の意志を引き継ぎ、30年間にわたってビタミンC点滴を行い、世界で初めて、ビタミンCががん細胞を殺傷することを証明した人です。
初めてリオルダン先生にあったのは2003年の夏、東京のホテルで行われたセミナーでした。
リオルダン先生は、当時まだ数少なかった分子栄養学を行っている医師たちに対して自分の行っている治療の説明をしてくれました。
彼は、日常から自分のビタミンC血中濃度を測定していたそうです。
しかし、ある日くもにかまれた日から、連日4日間ビタミンC 15gを点滴したが、いずれも血中濃度が測定限界値以下でした。
それがきっかけで多くの人のビタミンC濃度を測定し、人がいかに簡単にビタミンC欠乏症になりやすいかを実感したそうです。
翌年の2004年の夏、私は、この点滴治療を学ぶため、彼が院長を務める人体機能改善センター(現リオルダンセンター)に赴きました。
この前、パソコンのファイルを整理していたら、以前、ヒューリオルダン先生にインタビューをした時のメモがでてきました。
その内容をシェアしたいと思います。
宮澤
「貴施設では年間500人が受けているというビタミンC点滴 治療(以下IVCとする)ですが、どの病気の人が何名くらいずついるのか?」
Dr.Riordan
「がん患者が全体の4分の1残りが4分の3
残りの内訳は様々で、ADHD、HCV、うつ病、リウマチ、関節炎、慢性疲労、自閉症など従来の治療においての改善が見られにくい疾患が多い。
ヘビ毒や虫刺されにも有効。
年齢の幅は広く2-90歳までこれも様々。ただし、多いのは50-60代。カンサス州はアメリカの中ではHIVの有病率が低いためかAIDS患者はほとんどいない。」
宮澤
「1日にどのくらいの人数が受けに来るのですか?」
Dr.Riordan
「1日のIVCをうける患者は10~20人。
地元の人も多いが、アメリカ全土、また世界50カ国から患者がくる。
それでIVCが必要と判断された人はその後地元の病院でIVCを受けたり、在宅サービスで受けたりすることも可能である。」
宮澤
「癌のなかではどの部位が多いのですか?」
Dr.Riordan
「卵巣、乳がん、肺がん、リンパ腫が多い」
宮澤
「癌以外の疾患に対するプロトコールはあるのか?
ビタミンC 何gを週何回とか、リポ酸を何g併用するとか、治療中にビタミンCを増減したり、回数を増やしたりするポイントとは?」
Dr.Riordan
「万人に共通するプロトコールは存在しない。IVCの量、回数は到達する血中濃度によって決定している。
注射法は投与量の最初の2分の1は血漿濃度をあげるために比較的早く点滴し、残り2分の1はゆっくりするのが効果的と考えられる。」
宮澤
「またそれぞれの疾患における生存率は?」
Dr.Riordan
「がん患者も個人個人でそれぞれ、進行程度、生活様式、生存の意思などの要因が様々であり、一律な生存率はだしていない。
しかし、おおまかにいえば、腎臓、乳がん、前立腺、肺が効果を発揮しやすいといえるだろう。肺がんの死亡率は高い。しかし、延命という意味でのIVCの効果はある。
ただし、今までの経験から、生存率にかかわる因子が5つあるといえる。
食事、経口の栄養素、家族のサポート、医師のサポート、そして一番重要なのが生きる意思である。
私は患者さんに「あとどれ位生きられますか」と聞かれたとき、逆にこう聞いている。
「あとどの位生きたいですか?」と」
腫瘍マーカーについて
宮澤
「ビタミンC 治療においても腫瘍マーカーの増減をそのまま治療効果の判定に用いてよいか?
私たちの施設においては画像上腫瘍縮小を認めるが、腫瘍マーカーは増大している症例を経験している。」
Dr.Riordan
「乳がんの場合には比較的治療効果と腫瘍マーカーが一致することが多い。
腫瘍崩壊時にマーカーが一時的に上昇することは当センターにおいても見られている。
又画像上、腫瘍がなくてもマーカー値が高かったり、その逆の場合もある。」
宮澤
「組み合わせているサプリメントなどについて、何をどの位用いていますか?」
Dr.Riordan
「個人個人により様々」
副作用について
宮澤「血管の痛み、血管が硬くなる、これはコラーゲンの沈着が関係するのか?
偏頭痛の増強している患者がいるがこの副作用はポピュラーなものなのか?」
Dr.Riordan
「主な副作用はのどの渇きのみ。
数ヶ月―数年も注射をするのなら針を刺す部分を変更する必要はあると思う。点滴中にマグネシウムを加えることで刺すような痛みを緩和できると思う。」
禁忌事項について
宮澤
「心不全には絶対禁忌なのか?
点滴速度を落として、利尿剤と併用しているような症例はあるのか?
透析患者に透析と組み合わせて用いているような症例はあるのか?」
Dr.Riordan
「点滴速度の調整が必要。
透析患者に施行した例はまだない。」
宮澤
「風邪などの軽症感染症、健康増進などに用いても問題はないのか?」
Dr.Riordan
「いかなる状況においても患者のビタミンC濃度が低ければどんどんやるべきである」
いかがでしたか?参考になりましたか?
これは10年以上前のインタビューで、今ではこの治療に対する様々なエビデンスが報告されていますが、治療の原則はほとんど今と変わっていません。
残念ながら、リオルダン先生は私が訪問した5ヶ月後に急逝されました。
しかし、私が今も行っている診療は、IVCのリオルダンプロトコールや、先日紹介した、Identfy the causesの原因分析、そして「患者とともに学ぶ」という哲学などリオルダン先生の影響を強く受けています。