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臨床分子栄養医学研究会imamura

食欲に負けずに結果が出るダイエット

臨床分子栄養医学研究会imamura · 2021年4月16日 ·

ダイエットについて分子栄養学的観点からお話しすることは普段あまりありませんが、人口における肥満の割合がコロナの死亡率に関連していると言われているため、今回はダイエットについて考察してみたいと思います。アメリカやイギリス人の肥満の割合が6〜7割に比べ、日本人は内臓脂肪が多い隠れ肥満型が3割くらいと言われています。その内臓脂肪が炎症を起こしていてCOVIDの死亡率を左右しているのではないかといわれています。

ダイエットの失敗原因

ダイエットの目的が体重を減らすことというのが良いかどうかという問題はありますが、巷におけるダイエットの問題点と分子栄養学的なダイエットの方法を根本原因の観点から考察します。

ネットで検索したダイエットを大きく2つに分けると、やり方が間違っているか、モチベーションが続かないの2つに分けられます。

【やり方が間違っている】

  • 食事制限が続かなかった
  • リバウンドして嫌になった
  • 決まって採る食材に飽きた
  • 体調を崩した
  • 体力がなくなった
  • 便秘になった
  • 栄養不足になった
  • 肌が荒れた 等

【モチベーションの問題】

  • ストレスがたまった
  • 「明日から⋯」と言ってスタートすらできなかった
  • すぐに結果が出ず諦めた
  • 目的があいまいだった
  • 目標が高すぎた
  • 運動がつらすぎた
  • 途中で止めてしまい続かなかった 等

では、どうしたら食欲に負けずに結果が出るダイエットができるのか、分子栄養学的に考えてみましょう。

単純なカロリー制限、糖質制限では長続きしない

カロリー制限VS糖質制限のどちらが効果的かという2010年の有名な論文があります。糖質制限は今全盛期で、大手のダイエット会社はこぞって糖質制限の手法を取り入れています。実線がカロリー制限(脂質制限)、点線が糖質制限(ローカーボダイエット)をしたグループですが、このデータを見てもわかる通り糖質制限は立ち上がりで体重を落とすスピードが早く、インスリン抵抗性も一気に改善することが分かります。

この論文は、BMIが30〜40、体重が100kgくらいの肥満の人を対象にしているので、3ヶ月目まではスピーディーに体重が落ちていきますが、その後は徐々に戻っていきます。100kgの人を2年間フォローアップして7%減(93kg)なので、必ずしも成功とは言い難く、リバウンドは糖質制限のほうが若干多いことが分かります。体全体のことを考えると、減量した体重をいかに維持できるかということが問題になります。糖質制限はリバウンドする人が多い食事療法で、5年、10年と継続させることがポイントとなります。

一方でカロリー制限は、エネルギーの消費も減ってしまいます。多くの論文によると、カロリー制限の最も基本的な生理学反応はエネルギー消費の削減で、カロリー消費を少なくするように適応します。エネルギー消費が削減される大きな理由は2つあり、一つは体重自体が減量するため必要なカロリーも少なくなること、2つ目は代謝が効率的になるということです。

体の作りが変わることで、より少ないエネルギーで体が生きていくことを可能にし、一度痩せたとしても同じカロリーを摂取すると段々元に戻ってしまいます。そのため体重を減らし続けるためには、カロリーを更に減らさなければいけないという大きな矛盾が生じます。単純なカロリー制限でダイエットを継続的に成功させるのは、かなりの意志の力が必要なのです。

モチベーションの問題

もう1つはモチベーションの問題です。カロリー制限に応じて、満腹ホルモンであるレプチンレベルが減少し、空腹ホルモンのグレリンが増加します。レプチンは、脂肪細胞から出る満腹ホルモンで、満腹を感じてこれ以上食べ物は必要ないというシグナルを出します。それと反対の働きをするのがグレリンです。カロリー制限に応じてこのレプチンが減ってグレリンが増加するため、常に空腹を感じるという状況になります。

「カロリー制限ダイエットをして、空腹感に慣れました」という人もいますが、グレリンとレプチンの生化学的なデータから判断すると、ダイエットで痩せて食事を戻したあとでも空腹感が増加したままになります。

体はモチベーション的にも体の仕組み的にもリバウンドするようにできています。一度は痩せられても、またセットポイントに戻ってしまいます。太りたい人が太れないのもこれと同じ原理です。体のセットポイントは脳が決めているという説がありますが、様々な要因が働いてそこに戻ってしまうため、ダイエットを体重減少にだけポイントを絞って行うのは難しいです。

長続きして痩せる食事法

ダイエットができない根本原因はどこにあるのでしょうか。

肥満というのは氷山の一角で、体内では肥満と同時に高血圧、高脂血症、耐糖能障害、骨粗鬆症、鬱などなど、様々な代謝障害が並行して起きています。そのため肥満だけをターゲットにするのではなく、体の代謝障害全体を治していくためには原因を追求することが必要となります。

最初に考えるべきはまず食事ですが、カロリー制限も糖質制限もお勧めできないとすると、どのような食事をするのが良いのでしょうか。食欲に負けず結果が出る食事法を世間で模索している中、ファスティングをうまく取り入れると良いというムーブメントがあります。

単なるカロリー制限ではなく、一日食べて一日食べない隔日断食(Alternative Day Fasting)や、1日のうちに8時間は食べて、残りの16時間は食べない間欠的断食(Intermittent Fasting)があります。どちらの方法でもその周期が異なるだけで断食の時間が確保され、これに関連した色々な本も出版されています。

食べても良い日は満腹になるまで食べられるため、カロリー制限より気軽に始められる点が人気の隔日断食は、普通のエネルギー摂取を100%とすると断食日は4分の1にします。ご馳走日には125%食べて良いという方法です。

それに比べて普通のカロリー制限ダイエットは、毎日の食事量を25%削減します。25%と125%の平均は75%なので、隔日断食とカロリー制限で理論的には食べている量は結果としては同じになります。ただしカロリー制限ダイエットで毎日25%抑えるのと、隔日断食における1日おきの食事の量は極端に違います。1日間、または数時間でも断食をする時間を作ることによって医学的効果を狙っているのが隔日断食の真の狙いです。

ダイエットの敵は、膵臓から分泌されるホルモンであるインスリン抵抗性です。インスリンは血糖値を下げるホルモンであると同時に、肝臓で脂肪の合成を促すホルモンです。インスリン抵抗性がある場合、インスリン感受性が落ちてしまい、インスリンが大量に分泌され、結果として脂肪を生成します。

Nutr Diabetes. 2017 Jun 19;7(6)
Enhanced insulin sensitivity in successful, long-term weight loss maintainers compared with matched controls with no weight loss history
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28628125/

そのため長期の減量の維持には、インスリン感受性の増強が必須となります。ではどんなファスティングや食事法がインスリン抵抗性を落とすかというと糖質制限が大変有効ですが、継続が困難なのが問題点です。

隔日断食に関しての上の表をご覧ください。ADF(隔日断食)はCR(カロリー制限)に比べて、恐らく断食の時間を設けることによってインスリン抵抗性(HOMA-IR)が改善しています。

糖質制限は辛いけれど、インスリン抵抗性を落として減量したい人にとっては、一日は好きなだけ食べて一日断食する隔日断食が良いと思います。副腎機能と肝機能が正常で筋肉がしっかりある人にとっては問題ないと思いますが、問題点は糖質制限と同じく離脱率が38%とかなり高いということです。このデータは、アメリカ人でBMIが25.0〜35.9の肥満度が高い人を対象にしたものなので、それほどインスリン抵抗性が高くない人には効果は期待できません。痩せてる人がモデル体型を目指して隔日断食をするのは注意が必要です。

隔日断食をより緩くして継続可能になると言われているのが、24時間のうち8時間は食べて良いが残りの16時間は食べない断続的断食、通称8時間ダイエットと言われるものです。間欠的断食やIntermittent Fastingとも言われています。隔日断食ほどではないにしろ、ファスティングの時間を設けることによってインスリン抵抗性の改善が期待できます。

糖尿病の人、代謝障害がある人に対しての間欠的断食についての論文によると、明らかにインスリンのレベルは下がっているため、インスリン抵抗性が大きい人に対しては間欠的断食は意味があると思います。

私が実践しているもので近いパターンのものは、間欠的断食です。お昼の12時と夜の7時に食べたら、他の時間に食べなければ間欠的な断食になります。副腎疲労がない人なら比較的継続しやすいやり方ではないでしょうか。

アメリカの学会におけるVarady先生の発表による隔日断食と8時間ダイエットの比較表です。

Krista Varady,Ph.D. Professor of Nutrition University of Illinois,Chicago

隔日断食のメリットは3ヶ月で5〜7.5kg減と体重の減り始めが早いことですが、さらに減り始めが早いのは糖質制限です。隔日断食にしても、体重が減り始めるのは、8時間ダイエットに比べれば早いです。継続は確実断食が難しくて8時間ダイエットは簡単。共通しているのは、カロリー計算は不要だということです。

今のところ絶対的に継続可能な食事というのはないですが、いかにインスリン抵抗性とレプチンの問題を抑えるかというのが、モチベーションに関係してくるのではないでしょうか。

炎症の与える影響その1インスリン抵抗性

もう一つ考えたいのは、炎症の与える影響です。炎症は、ピラミッドの一番下にあるので、炎症と腸内環境のケアはダイエットのためには必須です。

膵臓からインスリンから血中に分泌されても、肝臓骨格筋、脂肪組織でのインスリンに対する反応が鈍くなっているために、インスリンの血糖を下げる働きが十分に発揮されない状態のことをインスリン抵抗性と言います。インスリン抵抗性を来す原因は太っていることですが、太っているとなぜ糖尿病になるのでしょうか。

インスリン
• 食後に膵臓β細胞から分泌されるホルモン
• インスリン受容体に作用して、グルコースの取り込みを促す
• 過剰に分泌されると、受容体機能が低下する

脂肪細胞が肥大化すると炎症が起こります。脂肪が増えてきて、酸欠状態になります。そうすると、炎症のマクロファージが寄ってきて炎症性サイトカインを出してインスリンのシグナリングを邪魔します。

インスリンの受容体にインスリンがくっつくと、細胞内でリン酸化という反応が起きて、GLUT4というグルコースを取り込むタンパク質を引っ張り、細胞膜に同化させます。このGLUT4が細胞膜に同化すると、グルコースを取り込む穴ができてグルコースが入ってきます。これがインスリンによるグルコース取り込みの機序ですが、このシグナルが炎症によってインスリン受容体のリン酸化が邪魔されてGLUT4が上がってこなくなるのでグルコースが取り込めなくなります。その結果、細胞の外にブドウ糖があふれるのが、インスリン抵抗性です。

インスリン抵抗性の仕組み
 脂肪細胞の肥大化
→脂肪細胞にマクロファージが働いて炎症性サイトカインを放出する
→インスリン受容体基質のリン酸化を邪魔する
→GLUT4が細胞膜に上がってこない
→グルコースが取り込めないため、代償的にインスリン濃度は増大する

インスリンが効かないので、代償的にインスリン濃度がどんどん増大していきます。インスリンというのは肝臓で沢山脂肪をつくるため、インスリン抵抗性がある人は太りやすくなります。

炎症の与える影響その2 レプチン抵抗性

インスリンのほかにもう一つ痩せられない原因で考えなければいけないのは、レプチンです。

レプチンというのは食後に脂肪細胞から分泌されるホルモンですが、満腹中枢を刺激するので、レプチンが出たら通常は食欲が抑制されます。ただし過剰に分泌されすぎると、インスリンと同じように受容体の機能が低下して食欲が抑制できなくなります。このことをレプチン抵抗性といいます。レプチン抵抗性とインスリン抵抗性の2つがあると、なかなか痩せられません。

レプチン
• 食後に脂肪細胞から分泌
• 満腹中枢を刺激する「レプチン受容体」に作用して、食欲を抑制
• 過剰に分泌されると、受容体機能が低下する

下記の論文によると、インスリン同様にレプチン(満腹ホルモン)が高いままダイエットしてもリバウンドします。

J Clin Endocrinol Metab.2010 Nov;95(11):5037-44
Weight regain after a diet-induced loss is predicted by higher baseline leptin and lower ghrelin plasma levels
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20719836/

8週間低カロリーダイエットで平均で5%の体重減少をしてリバウンドしていないか調べたところ、10%以上リバウンドした人は、そうでない人に比べて優位にレプチンレベルが高く、グレリンレベルが低いという結果が出ました。

インスリン抵抗性と同じく、レプチン抵抗性の鍵も炎症です。

J Am Coll Cardiol. 2008 Oct 7; 52(15)
Leptin Resistance: A Possible Interface of Inflammation and
Metabolism in Obes

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4556270/

上記は、レプチンと炎症マーカーの血漿レベルが相関しているという論文ですが、体内の炎症を抑えて、レプチン抵抗性やインスリン抵抗性を抑えないと、脂肪は増加して食欲が止まらなくなります。

炎症を抑え、インスリン抵抗性を減らすために、ファスティングの時間をとるというのは有効だと思います。糖質をとらない時間=インスリンをなくす時間を無理なく持つためにファスティングは大変有効です。

では、糖質を摂らず脂質を摂ればいいかというとそうもいきません。脂質の摂り過ぎも炎症を起こします。

腸内環境とリーキーガット

炎症は腸とセットになっていて、腸内環境とダイエットは密接に関わっています。腸内細菌とリーキーガットの関係性を見てみましょう。

J Clin Med.2019 Apr; 8(4)
Faecal Microbiota Are Related to Insulin Sensitivity and Secretion in Overweight or Obese Adults
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6518043/

腸内細菌とインスリンの感受性は密接に相関することがわかっています。糖尿病の人の腸内細菌叢というのは健常者の腸内細菌叢と全く違います。腸内細菌を変えたら糖尿病も治ります。

太った人に痩せた人の腸内細菌を移植したらインスリン抵抗性が改善するという論文もあります。それほど腸内細菌とインスリン抵抗性は密接に関係しています。インスリン抵抗性を改善して腸の抗炎症効果がある酪酸も増加したそうです。腸のエネルギー産生があり、腸の抗炎症効果がある酪酸が増えるという点からみても、腸内細菌はとても重要だと言えます。

腸内細菌検査はされたことはありますか?いくつかの日本の会社が腸内細菌のDNA解析の検査を提供していますが、当院で扱っているマイクロバイオータ社の腸内細菌検査では、太りやすさを腸内細菌から推測するというデータ解析をしています。デブ菌VS痩せ菌、つまりフィルミクテスとバクテロイデスの比率が入っています。

このフィルミクテスとバクテロイデスの比率が何故関係するかというと、フィルミクテスは食事からより多くのカロリーを抽出するというデブ菌と言われていて、フィルミクテスが沢山ある人は太りやすいという考察です。痩せ菌と言われているのは、バクテロイデスです。酪酸がバクテロイデスを生成し、カロリーを消費してくれます。腸内環境から始めたいという方は、ぜひ腸内細菌検査をしてフィルミクテスとバクテロイデスの比率をみてみてください。酪酸が不足すると炎症を起こすので、更に総合便分析をしてみると、酪酸・腸の炎症などその他全てについて判ります。

腸内細菌バランスを整える必要性はわかると思いますが、その他にするべきはリーキーガット対策です。リーキーガットの原因は、抗生剤、ステロイド、ストレス、悪い食事などです。

高脂肪食はリーキーガットを引き起こす

糖質制限については賛否両論ありますが、糖質制限をした場合に間違いが起こりやすいのが悪い脂肪を摂ってしまうことです。

高脂肪食で
◆ フェルミテクス/バクテロイデス比を増加した
◆ 血中サイトカインの増加を認める
◆ LPSの増加を認める(LGS)

Ann Intern Med. 2010 Aug 3;153(3)
Weight and metabolic outcomes after 2 years on a low-carbohydrate versus low-fat diet: a randomized trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20679559/

ダイエットで一番避けるべきは、悪い脂肪を摂ることによってリーキーガットを引き起こすことです。腸の炎症が起きて、インスリン抵抗性が起きてしまいます。高脂肪食はフィルミクテスとバクテロイデスの比率を増加してデブ菌を増やし、炎症性物質である血中サイトカインが増加します。炎症成分であるLPSも増えてしまいます。腸に炎症を起こしてリーキーガットを引き起こして、そのリーキーガットから漏れた穴からLPSが血中に入ってしまいます。

Trends Biotechnol.2015 Sep;33(9)
Proteobacteria: microbial signature of dysbiosis in gut microbiota
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26210164

LPS(リポポリサッカライド Lipopolysaccharide)が食欲と体重を増加させます。血中にこのLPSが入ると体中に炎症を起こします。腸と脳は迷走神経で繋がっていてこれを腸脳相関といいますが、腸からコレシストキニンという伝達物質が分泌されます。これはレプチンと同じように分泌されると食欲を抑える物質ですが、コレシストキニンの迷走神経をLPSが阻害してしまうため、食欲を増大させる原因になります。

ダイエットが失敗する二大要因として考えられるのは、減量の効果をなくすインスリン抵抗性やレプチン抵抗性か、食欲が亢進してしまうことですが、LPSはこの両者に働きかけるので、高脂肪食、特に脂肪の種類が悪いと問題になります。

減量しても痩せさせないシステムがあるのか、それとも減量を続けさせないような糖質の渇望の状態や食事の渇望の状態をつくってしまうのかが根底のメカニズムにあります。

消化不良

消化不良は日本人だけでなくて欧米人にも共通で散見される問題で、消化不良で問題になってくるのはミネラル、特に亜鉛とマグネシウムです。

マグネシウムの欠乏はチョコレートの渇望に影響を与える可能性があるそうです。マグネシウム不足の人はチョコレートを欲しがちで、この渇望がダイエットを阻害します。

過食の患者40%と神経性食欲不振症の患者の54%は亜鉛欠乏でした。銅と亜鉛のバランスはとても重要です。Dr. カリッシュの論文によると、欧米では消化不良というベースがあってこれらの欠乏が起きるそうです。

睡眠とデトックス、副腎と肝臓と筋肉

食事、炎症、消化管のリーキーガットの問題など様々なことがダイエットに関わってくるということがわかりますが、もう1つの要因である睡眠とデトックスにも触れておきましょう。

睡眠不足は肥満の大きな原因で、免疫低下も招きます。理想的な睡眠時間は7〜9時間で、睡眠が7時間以下や9時間以上の人は睡眠に問題があります。9時間以上の人は睡眠が浅いために代償的に睡眠時間が伸びている可能性があります。慢性的な睡眠不足は過食や肥満を招きます。睡眠不足だとメラトニンが充分に分泌されないため、免疫が働かなくなります。

下記は2013年の論文ですが、脳は睡眠中に不要物を排出しているとあります。

Science 2013 Jun 28;340(6140)
Neuroscience. Garbage truck of the brain
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23812703/

脳の血管にはリンパ組織がないため、intercellular glyphatic pathwayという動脈と静脈の間をつないでいる経路から不要物やリン酸化したタンパク質を排出しますが、夜寝ている間に働くため、睡眠不足=デトックス不良ということになります。

食事、炎症、消化管、デトックスなどの理由がありますが、ダイエットという観点からするとインスリン抵抗性がすごく大きな問題なので、糖質を制限して、インスリン抵抗性を改善させるステージが必要ですが、そのためには、副腎と肝臓と筋肉が元気である必要があります。

人は糖新生で血糖値を保っています。食事中のブドウ糖は2時間しか保たないため、グリコーゲンを使わないと血糖値を保てません。体のアミノ酸を分解してブドウ糖を作ったり、脂肪を燃やしていますが、糖新生がうまくできない人は糖質制限をすると疲弊してしまうので、まずは腸、それから肝臓を治してというふうに、ダイエットも根本ピラミッドの下から段階的に積み上げていくしかないと思います。

繰り返しますが、肥満とは、氷山の一角です。肥満は体内に起きている様々な代謝異常の一部だと考えられます。

ホメオスタシスが狂ってインスリン抵抗性が出たとして、体の中の変化はわかりにくいですが、肥満はわかりやすいので気になります。ただ体の外に出ている肥満というのはごく一部で、高血圧、脂質代謝異常、サルコペニア、アルツハイマーの発症率が高くなります。体内に炎症があり、消化不良の問題があって、デトックスがうまくいっていないから、こういった症状が一連の流れとして起きてくるのです。

ダイエットはわかりやすい切り口なので、そこだけに注目しがちですが、体全体のことを考えると、体の全体の代謝異常が治るのと同時に肥満も自然と解消していくのではないかと思います。

実際にリバウンドをして体重は元に戻っても、健康状態が改善されることがあります。インスリン抵抗性もある程度良くなって代謝も上がり、デトックスの状態も良くなります。体重は変わらないけど他が変わればいいのではという考え方もあると思います。それでもやっぱり痩せたいと思うのは、モチベーションの問題です。下記は、運動を追加すると減量の維持が改善されるという論文です。

ARTICLES.01 SEP 2009
Regular exercise attenuates the metabolic drive to regain weight after long-term weight loss
https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/ajpregu.00192.2009

難しいのは継続

ダイエットで一番難しいのは「継続」なので、継続するために必要なのは目的の明確化です。ゴールは情報でできているので、自分のゴールがどこにあるのかが脳の中で明確になっていれば成功すると思います。

心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる、人格が変われば運命が変わるという言葉がありますが、習慣化によって人格と運命も変わります。

最初の2ヶ月間、3、4週間でも習慣化するにはいろいろな方法がありますが、それには意識を変えることです。毎日10km走ろうと思ったらなかなか続かないので、気が乗らないときは100mだけ走ります。100m走るということは、少なくとも意識が走るということに向いたということなので、無理をしないで続けるためには距離を短くして、スクワットの回数を少なくして、必ず一回ずつ行うということをすると意識が変わって習慣化することが可能になります。

結果を得るためには、be→do→haveという流れが必要です。行動するためには、在り方が大変重要です。在り方というのは何かというと、「習慣の総体」です。最初の一歩が肝心なのです。

エネルギー不足という観点からの甲状腺機能低下症

臨床分子栄養医学研究会imamura · 2020年9月18日 ·

体温をいかにあげるか

免疫の要とは

免疫の要は腸内環境ですが、リンパ球数はそんなに急には変化しません。地道に育てていくしかないので、普段から気をつけている方はこのコロナ禍においても慌てないと思います。

免疫力を高めるために一番手っ取り早いのは、オーソモレキュラー学会が提唱しているようにビタミンA、ビタミンC、ビタミンDを摂ることです。

トーマス・E・レビー先生が、ビタミンCが色々な類の伝染病に効くということをおっしゃっていますが、特にビタミンC点滴はとても効果的なので、良かったら試してみてください。

サプリメントは、栄養が濃縮した効率の道具なので、こんなときのためにうまく利用することをお勧めします。

今日は、もうひとつの免疫の要である体温をいかにあげるかという話をします。

血液検査でホルモン数値を測ってる人は多いと思いますが、エネルギー代謝の良い指標となります。

エネルギー不足で代謝をいかに上げるかというが課題の方も多いと思いますが、甲状腺はその要になると思います。

通常は、甲状腺ホルモンが少ないと脳から刺激を出してホルモンを出すよう促してくれます。ただし低体温であったり、代謝が止まっていたりすると、なかなかうまくいきません。

下記の図は、下層から順番に治療していくと良いとお伝えしている7つの根本原因ピラミッドですが、甲状腺は真ん中より上のほうにあります。

エネルギーを動かすためには、まず炎症を取って、それからデトックスして、ホルモンをうまく調整するという流れになります。

甲状腺の基礎

甲状腺とは首の根元にある臓器で、蝶の形をしています。

太古の時代、人間は海から陸に上がったため、ヨード(ヨウ素)は人間の体にとって必須なのですが、ヨードを溜めておく臓器を作りました。それが甲状腺です。

この甲状腺はヨードを取り込んで、T3やT4などの甲状腺ホルモンを作っています。

このホルモンを作る刺激になるシグナルの発信元は、脳です。甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone、TSH)を出すのは下垂体で、その下垂体に甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(thyrotropin-releasing hormone, TRH)を送っているのが視床下部です。

つまり会社でいうと部長・課長・平社員のように、上からの命令があって初めて甲状腺ホルモンが出るようになっています。

甲状性ホルモンが少ないと、上に刺激を与えてもっと刺激を出すように、多過ぎた場合は少なくするようにとフィードバックがかかるようになっています。

甲状性ホルモンは、この狭い範囲の中でフィードバックがかかって上手く調整されています。エネルギーの不足にとても敏感なので、数字が動きやすいため血液データでそれを測ることは、有用です。

甲状性ホルモンはミトコンドリアに働きますが、全身に受容体があるため様々な体の機能に影響しています。そのひとつが心拍数で、甲状腺ホルモンが過剰に出る病の方は、心拍が非常に高く動悸がします。

他にも甲状腺機能低下症で顕著なのは、低体温です。筋肉が減って浮腫むため、体重が増えることもあります。

また、生理周期や、神経系にも影響をきたします。

コレステロールは、甲状性機能低下症の良い指標となります。コレステロール値が高い場合、まず最初に甲状性機能低下症を疑います。

ただ副腎疲労の場合はコレステロールが元々低下しているため、そこがマスク(隠されている)されているので見極めるのに注意が必要です。

中性脂肪もコレステロールも低い人は、甲状性機能低下症と副腎疲労と両方がある場合があります。中性脂肪が低いということは、低エネルギー状態ということです。

低エネルギー状態の場合は、甲状腺機能が低下して通常はコレステロールを代謝できなくなり、コレステロールが上がります。

問題は、甲状性機能が低下していても、6割の人はエネルギー不足でも動けてしまうために自覚症状がありません。

甲状腺機能低下症の症状

症状を細かく見ていきましょう。

・脱毛

全身の脱毛が見られますが、特に女性に多いのは眉毛の外側1/3の脱毛です。

・浮腫

甲状腺の腫脹は、特に橋本病に多いです。甲状腺機能の低下は、水銀や副腎疲労と関連すると言われていますが、世間一般的に甲状腺機能低下症といえば、この橋本病のことです。

橋本病とは、甲状腺に対する自己免疫疾患です。自己免疫で甲状腺が攻撃されるため、甲状腺機能が亢進しても低下しても甲状腺が大きく腫れます。甲状腺ホルモンが低下すると、皮膚が乾燥し、心臓は徐脈になります。心筋のビオシンという細胞に甲状腺機能の受容体があるからです。

・消化管の機能の低下による食欲不振や便秘

・生理不順や不妊症

脳にフィードバックがかかるため、高プロラクチン血症となり生理不順や不妊症も引き起こしやすくなります。

・手根管症候群

手足の冷えや浮腫も感じ、さらには手首の部分にある骨と手根靭帯に囲まれた空間(手根管)が狭くなることで指先が痺れ神経が圧迫されるため、母指球筋(親指の付け根の筋肉)が減る手根管症候群になることもあります。指でOKサインを作ることが難しくなったり、左右の手の甲を合わせて押してみて痛みがあれば、この傾向があるといえます。

・体重増加

・記憶力の減退

・寒さに弱い

これらが一般に言われている主な症状ですが、栄養療法的には鬱、疲労、低血糖なども引き起こすということも留意しておいてください。

消化機能も落ちて、サプリも効かなくなります。低血糖と甲状腺機能低下症はセットのようなもので、ミトコンドリア機能の低下と非常に症状が似ていると思います。

甲状腺とミトコンドリアの関係

甲状腺機能の主な機能

生理学の教科書である「ガイトンの生理学」の345ページを日本語訳したのが下記の文章です。英語版は無料でダウンロードできるので、是非読んでみてください。

甲状腺ホルモンを動物に投与すると、ミトコンドリアの数と大きさが増える、それだけでなく活動性が上がるに伴い、ミトコンドリアの膜の表面の面積が増えるとあります。

ミトコンドリアでエネルギーを産生している場所は、ミトコンドリアの膜です。ミトコンドリアの膜の表面積が増えるということは、つまりエネルギーが増えるということです。

甲状腺ホルモンの主な機能の1つは、ミトコンドリアの量と活動性を増やし、エネルギーを作ることと考えられる。

上記の写真は筋肉のイメージですが、ミオシン、アクチンという収縮タンパク質が赤の繊維で規則正しく並べられています。横を走っている青色がミトコンドリアです。そこにエネルギーが供給されて、ミトコンドリアが増えます。

甲状腺ホルモンの受容体は、アクチンにあります。エネルギーの需要が増え、それに伴いミトコンドリアの活動性を増します。

甲状性ホルモンの働き

甲状腺ホルモンはステロイドスーパーファミリーのひとつで、性ホルモンやステロイドホルモンと同様に細胞の膜ではなく、核の中に受容体が存在しています。

甲状腺ホルモンは細胞膜を通過して、細胞の核内受容体に結合します。遺伝子のプロモーター領域に存在する受容体です。

プロモーター領域というのは、遺伝子を発現させるスイッチになる場所です。ここに甲状腺ホルモンが結合すると、遺伝子がタンパク質を作り始めます。メッセンジャーRNA(mRNA)が転写され、それが小胞体に到達し、タンパク質を作り始めます。

成長、発達、代謝などの甲状腺ホルモンの働きというのは、受容体を介した標的遺伝子の発現調節によるものです。ホルモンが核の中に結合し、それを利用したタンパク質(酵素)が作られ、反応が進みます。

遺伝子の変異があると、ホルモンが出ていても受容体の感受性が劣ることになります。甲状腺ホルモンの受容体の異常による病気が、いくつか発見されています。

甲状腺ホルモン受容体

甲状腺ホルモン受容体 (TR) は、全身の細胞に存在します。

α1、α2、β1、β2があり、そのうちα1、α2、β1は全身にあります。β2は、視床下部と下垂体にのみ存在します。α1、α2、β1は、受容体にホルモンが結合したら正の働き(ポジティブ・フィードバック)をしますが、β2の場合は、負の働き(ネガティブ・フィードバック)をします。

正の働きとは、例えば骨芽細胞であれば、アルカリフォスタファーゼ(ALP・リン酸化合物を分解する酵素)やオステオカルシン(OC)を活性化する働きのことです。

骨の形成に甲状腺ホルモンは欠かせません。

ALPという数値は、亜鉛とマグネシウムが補酵素になっているので、血液検査で亜鉛・マグネシウムが低下すれば、ALPは下がると理解されていますが、亜鉛・マグネシウムが豊富でも、甲状腺機能が低下しているとALPは下がります。

亜鉛とマグネシウムが沢山あるのにALPの数値が低い人は、甲状腺機能が低下していると考えられます。ALPというのは、アルカリ環境下でフォスタファーゼ(脱リン酸化)する酵素で、リン酸が結合するかしないかでタンパクの構造が変わり活性化します。

リン酸が結合することをキナーゼといい、脱リン酸化はフォスタファーゼといいますが、リン酸がくっついていると骨化がうまく進まないため、それを脱リン酸化することで骨化が進んでいく酵素です。

成長期の子供は、ALPが1,000くらいあります。それが300に減少すると成長はとまります。甲状腺ホルモンがうまく働いていないと成長が止まり、背が伸びなくなります。

ALPは、骨芽細胞・破骨細胞、心筋細胞のミオシン、肝臓のG6PD酵素(グルタチオン還元酵素)にも働いています。コレステロール代謝酵素にも働いていることは、よく知られています。

甲状腺ホルモン機能低下により、コレステロールが上昇します。甲状腺ホルモンは、脂肪組織で脂肪の分解や、脂肪酸の合成にも作用しています。

その他、脳の軸索の伸長や、樹状突起の形成にも働いているので鬱にも関連してきます。甲状腺ホルモンは、脳の発達においてもとても重要です。

甲状腺機能低下症の諸症状は、このように全身に症状が出ますが、視床下部と下垂体にも甲状腺ホルモンの受容体はあります。その受容体に甲状腺ホルモンが結合すると、視床下部も下垂体も刺激ホルモンの放出を弱めます。

これが甲状腺のネガティブ・フィードバックのしくみです。

T3とT4のうち、特にフィードバックに関わっている血中のT3濃度が上がってくると、甲状腺受容体のβ2のに結合して転写が抑制されて両方とも下がります。ここの受容体がうまく働かない場合は、甲状腺ホルモン不応症という病気を引き起こします。

この甲状腺ホルモンの受容体の遺伝子が完全欠損している人がいて、甲状腺ホルモンがいくら出ても受容体がないのでネガティブフィードバックがかからなくなります。そのため甲状腺ホルモンも刺激ホルモンも、出っ放しになり、甲状腺がすごく腫れてきます。

受容体の感受性がものすごく大事だということがわかります。

甲状腺の自己免疫疾患

甲状腺機能低下症の原因

甲状腺機能低下症の原因を見ていきましょう。

①自己免疫

自分の抗体(リンパ球)が自分の臓器を攻撃してしまうことです。炎症や、異常な免疫の撹乱が原因となり間違って自分を攻撃してしまいますが、甲状腺の場合は抗サイロブログリン抗体というのが有名です。

橋本病のことを別名慢性甲状腺炎といいますが、なぜ炎症を起こすかというと自分の免疫が自分の甲状腺の中のサイロブログリンを攻撃するからです。

サイロブログリンというのは、甲状腺ホルモンの材料です。サイロブログリンのチオシンキにヨードがくっついて甲状腺ホルモンになります。

甲状腺ホルモンの材料が攻撃されてしまいます。このため甲状腺は炎症して、甲状腺ホルモン機能低下症を引き起こします。診断は抗サイロブログリン抗体が上昇していることに加えて、甲状腺機能の低下があることです。

抗サイロブログリン抗体が高くても症状が出ない人は多いです。発症していない人は実際に治療する必要はないので経過観察となります。

橋本病の診断に必ず甲状腺の要因とされるのは、この抗サイロブログリン抗体や、甲状腺のペルオキシダーゼ(甲状腺ホルモンを作る酵素)に対する抗体かのどちらかが上昇します。

甲状腺機能低下=橋本病です。

②水銀

ホルモンの中で一番影響を受けるのが甲状腺です。下垂体のTSH(甲状腺刺激ホルモン)の分泌、甲状腺側の受容体、T4からT3への変換も邪魔します。

③低栄養

低栄養、鉄欠乏もあります。T4からT3の変換にぺルオキシターゼ関わっているため鉄欠乏もNGです。セレンやグルタチオンも関わっていて、これらの栄養の欠乏が変換障害を起こすため、甲状腺機能低下症の原因になります。

④肝機能障害

T4から活性型T3への変換が肝臓で行われるため、肝機能障害も原因となります。T3のほうがT4より圧倒的に強いので、肝機能が悪い人は甲状腺機能低下になります。

肝臓は沈黙の臓器と言われていて、数値にも出ません。エコーで見ても異常がない場合も、肝機能が低下しているために筋脈が滞っている人、背中の張りが強い人はとても多いです。

早期に推測する方法がないかと肝臓専門の菊池先生に伺ったところ、肝臓の硬さでわかるということでした。肋骨のところに手をいれてみて、健康な人は2本指入るそうです。

私自身も2週間アルコールを抜いた時は、肝臓がいつもより柔らかいような気がします。

⑤コルチゾール

根本原因ピラミッドを考える上で大事なのは、コルチゾールの問題です。コルチゾールは、副腎と密接に関わっています。コルチゾールが多すぎても少なすぎても、甲状腺機能低下症を引き起こします。

ヒエラルキーの中で一番下に副腎を置いていますが、脳の下垂体に腫瘍ができてACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が大量に放出されて副腎も腫れてくるというクッシング病という病気があります。

脳下垂体の腫瘍が原因のものを「クッシング病」、それとは別に副腎に癌ができて、副腎皮質ホルモンが亢進して生じる場合は「クッシング症候群」といいます。

このクッシング症候群の患者を調べたところ、コルチゾールは高いのですが、T4からT3に変換障害が起きるということが分かっています。

これはクッシング症候群だけでなく、ストレスなどによるコルチゾール過多の場合も同様の状態が見られます。コルチゾール過多は甲状腺T4からT3への変換障害を起こします。

⑥エネルギー不足

副腎疲労が進みエネルギー不足になると、軽症の場合はT3が低下してフィードバックでTSHが上がるパターンがよくみられます。

T4、T3、TSHの中で一番敏感に動くのはTSHです。T3は3あったほうがいいと思いますが、それくらいの落ち方でもTSHは跳ね上がるので、一番敏感に動くのはTSHです。

それに比べて重症の場合はT3は下がりますが、脳から問題がきているため、TSHがフィードバックで上がってきません。これは、「LowT3症候群」「下垂体性甲状腺機能低下症」とよばれています。

甲状腺ホルモンの数値を見たときに、一体どのレベルかと判断することが重要となります。

副腎疲労が強くなると変換障害が起きて、TSHが上がりT3が下がります。TSHが上がらない場合は、HPAと脳下垂体の全体がやられ、全身が消耗している状態です。

この状態になると、甲状腺だけを治しても意味がありません。甲状腺ホルモンがミトコンドリアを増やしてくれるので、ミトコンドリア機能が低下したら甲状腺ホルモンを投与すれば良いと思われるかもしれません。

でもそうはいかないのがこの甲状腺の難しいところです。

甲状腺ホルモンの低下というのは、全身の衰弱状態の結果を表しているからです。人間の体はとてもうまくできていて、そこでフィードバックで甲状腺ホルモンをあげたら全身が衰弱して死んでしまうということを知っているので、全体として代謝を抑えるように甲状腺ホルモンがフィードバックかかるようになっているのです。

よって、治療は全身にアプローチしなければなりません。

甲状腺からホルモンが作られ、T4は甲状腺でほぼ100%作られますが、T3はT4から一旦肝臓で変換されたものが8割を占めています。

甲状腺からもT3は出ていますが、全体の20%で、T4の5倍の活性を持つT3は、肝機能がとても重要だということがわかります。

甲状腺のフィードバックは、T3やT4が視床下部などの下垂体の受容体に結合することによって行われるので、当然活性度が高いT3がフィードバックする力も強くなります。

そのためT3とTSHは、反比例の数値となります。その一方で、T4は、フィードバックの影響が少ないためTSHと比例することが多いです。

甲状腺機能低下症 ~診断方法~

診断

甲状腺機能低下症の歴史は、診断の歴史です。

①見た目、症状から判断

最初の甲状腺機能低下症の症例報告は、1875年に英国のロンドン臨床会で行われました。甲状腺機能低下症を診断するためのTSH、FT3(遊離型T3)やFT4(遊離型T4)が計れなかった時代に甲状腺機能低下症をどのように判断したかというと、見た目からです。

甲状腺ホルモンは昔から存在していました。豚の甲状腺をすりつぶした甲状腺ホルモンを投与してみて、症状が改善した場合、甲状腺機能低下症と判断されていました。

下記は2型甲状腺機能低下症の本にある図ですが、顔全体がむくんでいて、手の先にも浮腫があるのが特徴です。

甲状腺の受容体は、細胞の核の中の遺伝子の発現に関与しているので、遺伝子のスニップがあれば受容体の感度も低下するということが十分ありえます。この当時はホルモンを測っていないので、見た目で判断していました。

上腕の外側が一番ムチンが溜まりやすいので、そこを診断すれば良いそうです。

甲状腺機能が低下すると、ムチンの代謝が悪くなり、皮下にムチンが溜まります。

甲状腺機能低下症のことを、粘液水腫(Myxedema)といいますが、ムチン(Myxe)が溜まって浮腫(edema)を起こすというのが名前の由来です。

上記の図はムチンの構造ですが、枝分かれしていて水分を沢山含めるようになっているため、皮下がパンパンになって上腕の皮膚がつまめなくなるのが、一番わかりやすい甲状腺機能低下症のサインです。

日本ではここまで浮腫んでいる人はあまり見ないですが、アメリカの内陸部や、アルプスの山の中に住んでいる人とか極端にヨード不足の人が多いようです。

②基礎代謝とコレステロール

20世紀になり、判断基準はコレステロールと基礎代謝になりました。基礎代謝を測ることができるようになり、1934年にHurxhalがコレステロールと基礎代謝が逆相関することを報告しました。

コレステロールが高ければ、甲状腺機能低下症の疑いがあるということです。下記の写真は最新の機械ですが、代謝を安定させた状態で測らないといけないため、3日前から絶食をしたり準備が大変みたいです。

下記は1977年の論文で、甲状腺ホルモンの数値がいかに当てにならないかという報告です。

TSHとT4の数値が正常な人たちに甲状腺ホルモンを投与したら、実際に基礎代謝が上がり、コレステロールが下がりました。白い丸が反応がなかった人、黒い丸が反応があった人たちで、多くの人に反応がみられています。

甲状腺ホルモンが正常範囲でも、あまり信用できないということが分かります。

③基礎体温から推測する

1,000人の低代謝で甲状腺機能低下症の症状を持つ人は、感染がない限り全員低体温でした。甲状腺治療で例外なく体温が上昇し、ほとんどの患者で症状改善が見られたそうです。

天然型甲状腺ホルモン剤(ナチュラルサイロイド)を2、30人の人に投与しましたが、体温が目に見えて上がる人は半分もいなかったです。低体温とは36.5度以下の方で、36.8度になったらホルモンの薬をやめるように言っていますが、そこまで体温が上がる人はなかなかいないです。

恐らく甲状腺ホルモンだけを投与してもうまくいかないのだろうと思いますが、確かに反応がある人はだんだん基礎体温が上がっていきます。

④ホルモンの値

下記はハルトゲ(Hertoghe)先生の「ホルモンハンドブック」からの抜粋です。

世界標準だと思って良いと思いますが、この本から抜粋した甲状腺ホルモンのレファレンス(基準値)とオプティマルレンジ(最適値)です。真ん中がPossobly Deficient(恐らく不足)値です。

TSHの最適値は1です。2.5以上は明らかに高いです。日本の場合は5まで基準値があり、TSHが4でも基準範囲内なのであまりにも幅が広すぎると思うんですが、TSHは一番敏感な数値でせめて1から2の間に入ると良いと思います。

FT3は2.5から3.4が最適値とあります。2.5以下だと多分足りないので、できれば3が望ましいです。数字が全てではないですが、2.8とか2.9で症状が出ている人もいます。

ただやはりFT3が2.9でもTSHが3や4の人がいますから、その場合は感度が高いTSHを参考にするのが良いと思います。

T4は、1.3から1.8が最適値と出ていますが、1以上はあったほうが良いです。

原発性甲状腺機能低下症の診断基準

上記が日本の原発性甲状腺機能低下症の診断基準ですが、臨床初見はいいとして、T4とTSHを検査初見で入れてています。それで臨床所見と検査所見を満たして初めて「原発性の甲状腺機能低下症」だということが診断されます。

TT4は、甲状腺から100%出るため、T4とTSHは普通比例するのにもかかわらず、逆転する場合は相当フィードバックがかかっているという判断だと思います。。

T3が下がるとTSHが急上昇するため、過剰な診断が心配で恐らくT4を判断基準にしているのではと思います。

ただこれだと見逃されがちなので、甲状腺はエネルギー代謝も含め、少し過剰な診断ぎみのほうがいいと私は思います。

⑤一番確実な診断方法

一番確実なのは、治療的診断です。甲状腺ホルモンを実際に投与してみて症状に変化があるかどうかを見ます。

1977年にSaundersらが行った試験によると、100人の頭痛、頸部痛、顎関節症の患者(すべてTSH、T4正常範囲)に対して、甲状腺ホルモン投与をしたところ、66人の患者の基礎代謝(BMR)が10〜35%上昇し、半数以上でコレステロール値が25〜200低下しました。

数値の変化があった人のほとんどが、臨床症状も改善したということです。もちろん事前にホルモン値を測る必要はありますが、痛みがある人には甲状腺ホルモンを投与しても良いのではと私は思います。全員痛みが消えるわけではないし、その判断基準が明確ではないのですが、試してみる価値はあると思っています。

下記は、宮澤医院で天然の甲状腺ホルモンを処方している患者に渡している紙です。

天然甲状腺ホルモンのチラージンSという薬は、T4です。T4からT3への変換障害がある人にはあまり効果がないので、天然のT4とT3が混ざった薬を処方しています。

飲ませ方としては最初の4週目までは32,5μg、それを超えたら倍にして、効かなかったら3倍にするんですけども、体温が36.8度以上になったら錠数をあげないでくださいとお伝えしていて、このように毎日基礎体温をつけてもらいます。

体温が上がる人と上がらない人がいて、上がらなくても症状だけ消える人もいます。

症例

実際の症例を見ていきましょう。

症例1

36才女性。夜間不眠、肩こり、朝起きられるとありますが、さらに問診を行ったところ、朝は起きられないということが判明しました。実際は肩こりも強いとのことでした。

典型的な副腎疲労のパターンで、低血糖もありました。上記は一部のみの抜粋ですが、エネルギーの代謝が滞っていることがお分かりいただけると思います。

特に象徴的なのは、中性脂肪が低いことです。

上記は去年の3月くらいのデータですが、TSHが6に上がっています。FT3は3を割っています。T4もT3も基準値の範囲内なのでここだけ見ていると見逃しますが、敏感なマーカーであるTSHから判断して、甲状腺機能の低下が見られます。

コレステロールの代謝が悪くなってLDLは上昇しそうなはずですが、実際は低いので低栄養とコレステロールの代謝の両方が重なっているということが想像できます。

治療法として、グルテン・カゼインフリーをしたこと、ほとんどタンパク質を摂っていなかったので、タンパク質を摂るようにさせました。

現在は副腎ケアをさらに強化しています。9ヶ月でTSHが6から3まで下がりました。FT3はほぼ変わりませんが、TSHを見ると治療効果が歴然です。

中性脂肪は30から36で、目指せ70とありますけども、HDLもLDLも少しずつ上がってきたので、もう少し時間はかかると思いますが、改善が見込めるのではないかと思います。

下記はこの方のリブレの結果ですが、夜間の血糖値がかなり低いことが分かります。

夜間低血糖=低エネルギー状態で、続発性に甲状腺機能が低下しています。低中性脂肪と甲状腺機能低下症の人は、ほぼイコールで結べますが、低エネルギー全体のことだと考えていただけるといいと思います。

中性脂肪が分解された不飽和脂肪酸というのは、エネルギー不足状態の一番鋭敏なマーカーです。そもそも低中性脂肪になる理由は、合成が少ないか、消費が多いかのどちらかです。

中性脂肪の大元のひとつは食事です。食事中の油が少ないことが、低中性脂肪の原因だと言われています。

もう1つ大事なのは、何因性のトリグリセリド(TG)、つまり肝臓で作られる中性脂肪が少ないとやはり低中性脂肪になります。ここにも肝機能の影響があると思います。

上記の図は代謝図ですが、ブドウ糖はミトコンドリアを経由して、中性脂肪を作ることができます。この経路は活性化されていて、糖質を摂ると中性脂肪上がります。高中性脂肪の人の原因は、お酒か甘いものかのどちらかです。

アルコールは特別に中性脂肪の合成を促進しますが、糖質は中性脂肪を沢山作るため、脂肪を摂るより糖質を摂った方が中性脂肪は上がります。ただしこれは肝機能に依存していますから、肝機能が悪い人は中性脂肪が低くなりがちです。

もうひとつは消費が多くて、脂肪が分解されやすい人です。リパーゼという脂肪分解酵素がありますが、その中でもホルモン感受性リパーゼ(HSL)の活性が高い人は、どんどん脂肪が分解されます。このホルモンを亢進させるのは、アドレナリンです。

高ストレス状態の人は、脂肪が分解されやすいということです。

ホルモン感受性リパーゼの活性を止めるのは、インスリンです。インスリンはこのホルモン感受性リパーゼの働きを抑えて、脂肪細胞内に脂肪を溜め込む働きがあります。インスリンが沢山出ると、脂肪が蓄積されます。

アドレナリンやコルチゾールは、このリパーゼの働きを抑えるインスリンの働きを抑えるので、結果として働きが亢進するためどんどん脂肪が分解されます。

アドレナリンとコルチゾールが出る原因は、低血糖やミトコンドリア機能の低下、低エネルギーです。

結果として中性脂肪が低くなる原因になります。中性脂肪が70以下だと、やはり低エネルギーと言えます。

中性脂肪はこの3つの総因で形成されるため、食事の影響をすごく受けます。そのため中性脂肪を適切に判断するには、測定は食後12時間は空けてください。12時間空けて朝の採血で中性脂肪を測って、評価をすると良いと思います。

その観点からこの数値を見ると低エネルギー状態があって、そのために甲状腺が働きをストップしているという状態かと思います。

ただTSHは反応して上がっていますので、そう重症ではないと思います。この方は、朝起きられないけど、特別疲れやすいわけではなく、日中は普通に動けるそうです。

下記は、獣医学の資料です。

酪農家にとって、牛のミルクが出なくなることが一番問題です。

ですからこの点に関してすごく研究していて、どういう牛がミルクが出なくなるのかという記事の内容ですが、牛のエネルギー状態とタンパク代謝によるものだそうです。一番重要な長期的な指標はBCS(ボディ・コンディショニング・スコア)で、脂肪のつき具合を見るものだそうです。

エネルギーの代謝とタンパク代謝がうまく回ってていないため痩せている牛はだめで、牛の骨格の背骨と骨盤の角度を測って、それがV字型に見えるかU字型かを見るそうです。それがタンパク質代謝とエネルギー状態の長期的な指標で、短期的な指標は何かというと遊離脂肪酸だそうです。

遊離脂肪酸は、もっとも優れた負のエネルギーバランスの指標ということです。

エネルギーバランスが負に傾いていると、中性脂肪がどんどん遊離脂肪酸に分解されます。ネットで遊離脂肪酸を検索すると一番始めに上がってくるのが牛の記事で、人間よりも栄養状態についてよっぽど研究されています。

ホルモン感受性リパーゼが働くと遊離脂肪酸が沢山できて、大元をたどれば低エネルギー状態というわけです。

遊離脂肪酸の測定は今は当院では項目に入れていませんが、昔インスリン抵抗性のマーカーとして使っていたことはあります。

インスリンの効きが悪ければ、ホルモン感受性リパーゼが働いて、遊離脂肪酸が増えていきます。だから糖尿病とか肥満の人にはそういう見方ができます。FFA: free fatty acid (遊離脂肪酸)が上がってきます。飢餓の状態でも遊離脂肪酸が増えて、結局中性脂肪は下がります。

そういうわけで軽度の甲状腺の異常マーカーというのは、甲状腺だけではなくて体全体のエネルギー不足、つまりミトコンドリア機能低下とか、低血糖ケアのサインを表しているということになります。

決して甲状腺ホルモン補充のサインではないことに気をつけてください。これは根本原因ピラミッドに当てはめた図ですが、腸のリーキーガットがあると肝臓にダメージを与えます。

肝臓にダメージがくると、T4からT3の変換がうまくいかなくて、結局ミトコンドリアがダメになります。炎症や低血糖があると副腎がダメになって、そうなると甲状腺がダメになります。

腸→肝臓ケア→デトックス→副腎のケアの次は甲状腺ケアですが、この甲状腺ケアというのは、甲状腺ホルモン補充という意味ではありません。ミトコンドリアをうまく動かしてエネルギーを充足させてから甲状腺ホルモンの投与をしないと、かえって消耗してしまうことになります。上の図の底辺の下層を整えてから、甲状腺をケアする必要があります。

もうひとつ大切なのは、ミトコンドリア機能が低下しているということは、つまりミトコンドリアが多い臓器の機能が低下しているということです。ミトコンドリアの機能に直結しているのは、脳と筋肉と肝臓です。

脳と肝臓は使いすぎると、疲弊します。筋肉だけは使えば使うほどミトコンドリアが増えますが、ミトコンドリア機能が低下している人は、肝臓疲労を起こしています。

肝臓は、タンパク合成、抱合、糖新生、胆汁分泌を担っているので、肝臓機能が落ちるとこれらが一律にうまく働かず体調が悪化します。潜在性の肝臓機能低下症の人のきっかけはリーキーガットかもしれないし、毒物に沢山晒されているせいかもしれませんが、そのせいで肝臓機能が低下すると、タンパク合成も糖新生もできなくなります。

対策としては、エネルギーの消耗をおさえることです。肝臓に対しては、アルコール、薬、それからサプリはほどほどにすることです。薬剤性肝障害と同等に、サプリ性肝障害を起こしている人が多いです。

添加物が多いし、もともと容量が多いので、サプリの代謝は肝臓に負担がかかります。脂溶性のビタミンはほどほどにすることと、リーキーガットは徹底的に治しましょう。

肝臓が悪い人は、グルタミンを摂ると良いと思います。グルタミンは、1日15g×3回で50gくらい摂っても大丈夫です。

グルタミンを摂ることによって、化学物質過敏症が改善する人も結構います。化学物質過敏症というのは、肝臓で化学物質の処理が容量過多で処理しきれなくなった状態のことを言います。

肝臓を治さないと解毒がうまくいかないので、肝臓の疲労を早めに見つけて対処することが大事だと思います。

脳はかなりエネルギーを使っているので、脳の疲労には瞑想と断捨離が良いと思います。

症例2

38才の女性、異臭症、不眠症、疲労感、砂糖の渇望。

この方は、慢性疲労なのですが、副腎疲労や甲状腺機能低下症の方は、大体9割の人がカルシウムとマグネシウムの値が高いです。カルシウム・マグネシウムが高い=脱灰の公式です。なぜ脱灰しているかというと、ひとつにはマグネシウム不足、ミトコンドリア機能低下があると思いますが、もうひとつの原因は、骨化がうまくいかないので、甲状腺機能低下症だろうと思っています。

甲状腺によい食事と悪い食事

上記は、シャッターストップという有料の画像ダウンロードサイトからの抜粋で、アメリカ人用の「良い食事と悪い食事」の例です。

タンパク質、野菜、フルーツがOKで、NGはカフェイン、アルコール、大豆の摂りすぎです。大豆の過剰摂取は、T4からT3の変換を障害します。

気になるのは海藻です。アメリカ人の場合は、海産物を摂った方が良いと思いますけど、摂りすぎは甲状腺機能の低下を招きます。うがい薬のイソジンには、ヨードが入っていますが、これを多要すると、甲状腺機能が低下する人がいます。ヨードは摂りすぎるとフィードバックがかかるので、甲状腺機能低下症の人は摂りすぎないでくださいと病院で言われるはずです。摂らなくてもダメだし、摂りすぎもダメで、何事も適量が良いと思います。

外国産のサプリにも注意してください。時々毛髪検査して、異様にヨードが高い人がいますが、恐らく原因はサプリじゃないかと思います。アメリカはヨードが不足しがちなので、塩やサプリなど色々なところにヨードが添加されているので、必ず表記を見て注意してください。

この方の場合は異臭症が酷かったのですが、リーキーガットを治したら、ご飯と肉野菜が食べれるようになりました。

腸を治して食事が摂れるようになって、TSHが3から1.6に下がり、T3は、3.3から2.81に下がりましたが、症状は改善しました。中性脂肪は48から56に上がり、LDLも105から128に上がっています。全体的に栄養状態が改善しています。つまり食習慣や栄養状態が良くなると、甲状腺機能が改善するということです。

症例3

36才女性。この方は当院で定期検診を受けていますが、2016年は中性脂肪が66で、LDLが96でした。中性脂肪が低く、それなりに疲れはあるけど普通に生活しているという感じでした。

2018年の11月の定期検診の時には、T3が2.73で、TSHが0.41でした。中性脂肪は153、LDLが82。

これは今から考えるとちょっと低いのですが、このときは特別に酷い症状はなかったので、こんなものかなと思っていました。

それがある日インフルエンザに罹った後、手が異常に震えると言われました。声がかすれて、息が切れ、立っているのも辛く、激しく情緒不安定。初めは低血糖かと思ったそうです。しかしご飯を食べても寝ても症状が変わらないということで、甲状腺機能を測ったらTSHが0.01、FT3が19.5でした。

この時のLDLは40まで低下しています。コレステロールの代謝が促進して、LDLがここまで下がってしまいました。これは、バセドウ氏病です。甲状腺機能が亢進すると、このような数字になるという参考例です。

バセドウ氏病は甲状腺機能低下症の反対で、甲状腺機能亢進症です。原因は、これも自己免疫です。

甲状腺のTSHのレセプター抗体というのができて、その結果甲状腺ホルモンがとめどもなくでてきます。症状としては、手の痺れと動悸です。脈は安静時でも100を超えます。

治療に使うのは甲状腺の働きを抑える薬と、βブロッカーという頻脈を抑える交感神経の遮断薬です。それでとりあえず甲状腺が落ち着くまでの間、脈を抑えるために投与します。

上記は2ヶ月後に測った結果ですが、まだFT3が10あります。このときはまだ苦しかったと思います。このNT-proBNPというのは、心臓の負担の検査です。頻脈があると心不全を起こす人がいます。

8月になってFT3が3.66になって大分症状が落ち着いてきます。それでもまだTSHは0.05未満です。ここからもTSHが非常に敏感なマーカーだということはお分かりいただけると思います。

TSHレセプター抗体の数値が上がっています。抗体というのは免疫のことで、自分のTSHの受容体を攻撃しているということです。だからバセドウ氏病でも橋本病でも放置すると炎症が起きるので、甲状腺が腫れてきます。

この方の場合は発見が早かったので、半年少々で症状は消えました。

症例4

36歳女性、慢性疲労の方です。不妊と夜間不眠があり、TSHが7.7でした。FT3は2.57で一応基準値範囲内には入っていますが、例によってTSHが上がっていますから、エネルギーが低下しているだろと思いました。

この方の場合は、カンジダ除菌をして、デトックスをして腸内環境や低血糖の改善もしたんですが、いまいち完治せず、それに合わせてエネルギー状態が戻ってきたため、ナチュラルサイロイドを投与しました。その結果、2ヶ月で妊娠されました。

2ヶ月後のTSHは、上記の数字です。

ホルモン投与をしたので、T3はあまり変化はないですが、TSHが劇的に下がっています。

症状がなくても甲状腺を意識した方がいい場合はいくつかあり、代表的なのは不妊症です。不妊外来では例外なくT3、T4、TSHを測っていると思います。潜在的な甲状腺機能低下症でも不妊の原因になるからです。甲状腺ホルモンが低下すると、フィードバックがTSH、TRH両方かかりますが、このTRHはTSHだけでなく、実はプロラクチンも制御しているのです。

TRHが増えると、プロラクチンが上がりますが、これは基本的には排卵を抑えるホルモンなので、不妊の原因になります。潜在性甲状腺機能低下症でも、ここはアプローチしてケアをしておくと良いと思います。

脱毛の人も甲状腺機能を測ってみると良いと思います。時には、疲労の症状が出ない人もいます。甲状腺機能低下症というと、典型的なむくみや疲れ、鬱がありますが、症状が全部揃ってないので、一部の症状がある場合でも気にした方がいいかもしれません。

体の痛みだけという人もいるので、整形外科的なことも色々やってこれもやれば良いと思います。この方はちょっと体温が上がって、35度台だったのが36.7度まで上がるようになってきました。

体温はばらつきがあるので、平均的に見ていくと良いと思います。体感が先に出る人もいるし、体温が上がる人もいます。大事なのはピラミッドの下から埋めていくことです。ある程度ミトコンドリアが動いているのを確認したうえで、さらにカンフル剤的に短期的に使った方がいいと思います。

症例5

44歳女性で睡眠時無呼吸、慢性疲労と集中力低下がありました。アミラーゼとCPKが低いので、筋肉がなくて酵素活性が落ちていました。

この方は腸内環境ケアや、低血糖の治療をひととおりして、これが3ヶ月後の所見です。症状がほぼ変わらず、冷えも治らないし、無呼吸も睡眠も変わりませんでした。

そのときに甲状腺ホルモンを初めて測ってみたら、やはりTSHが高かったです。

FT3は若干下がっていて基準値範囲内には入っていますが、TSHが上がっていて潜在性の甲状腺機能低下症を示唆する所見です。

最初中性脂肪が128でしたが、測り直したら63に落ちていました。一通り治療はしていたので、それに加えてピラミッドの底辺から治療して、それでも改善しなかったのでチラージンSを追加して治療しました。

合成のチラージンT4を投与してみたのですが、冷えは良くなったけど疲れは変わらない。でも沖縄に行ったら体調が良かったというので、体を温めてもらいました。それでも甲状腺のところは回復しなかったため、ナチュラルサイロイドに変えました。32.5から65μg摂った結果、急に良くなりました。

体温が36.5度以上、基礎体温がキープできるようになりました。記憶力が上がり、落ち込みも痛みもなくなって、唾液が出るようになりました。

数値の変化は以下の通りです。

TSHは大変敏感なマーカーで、治療への反応性も高いです。このように全てのケアをされた方が、甲状腺ホルモンの投与を、追加できっかけとして行うのはすごく良いと思います。色々な治療を試しても、今ひとつ突き抜けないという方の治療に使うようにしています。もちろん最初から出すことはしていませんが、時々このようにすごく良くなる人がいます。

1ヶ月、2ヶ月で効果が出ましたが、ホルモンそのものなので栄養療法より効果が断然早いです。ただ色々な注意点もあります。

エンジンのスタートのボタンでいうセルモーターみたいなものです。車はガソリンで動いていますが、一番最初だけエンジンを動かすときは電気で動かします。でもこのボタンを押し続けていると、クルクルとセルモーターが回しっぱなしになって焼き切れてしまうので、最初の一瞬を動かしてあげるときだけ使うんです。

うまく回り始めれば、体が元の状態に戻るので薬がだんだん必要なくなります。最大半年くらいの投与を考えています。あまりやりすぎると逆に消耗してしまうので、その見極めが大事だろうと思います。

症例6

46歳の女性で、慢性疲労の方です。疲労感と朝起きれない、出産後に体重が10kg増加したといらっしゃいました。

この方は子宮筋腫も貧血もあったので、甲状腺だけの問題ではないんですが、そちらのほうは手術して順調に推移していました。EATというのはDスポット治療のことです。

SIBOに対して抗生剤、捕食もして、低血糖ケア、デトックスして、2年半治療してだいぶん良くなったんですが、いまいち安定しなくて仕事に復帰するのは不安だということでした。

仕事は結構ストレスかかるので、リハビリ出社をお勧めしていますが、職種によっては完治してから出社してくださいというところもあると思います。

そういった場合どこまでいったら、職場復帰できるのか迷われると思います。

この方の場合は、例によってTSHが3.03でした。中性脂肪は135あり、LDLも高かったです。

この方はナチュラルサイロイドを2ヶ月投与したら、TSHが3.03から0.053まで下がって、これだとオーバードーズなのかもしれないと思われる方もいるかもしれませんけど、基本的には私は体温で決めています。

基礎代謝が上がってくれるかどうか、そこを治療の指標にしています。体温が下がりすぎず上がりすぎずっていうところを目指すみたいです。

1ヶ月後には不眠が改善し、2ヶ月後には疲労も肩こりも消えました。仕事復帰を考えたいと気持ちも前向きになってきました。2年半治療してもいまいちだったのが、2ヶ月で急によくなるので、そういう場合は使って良かったなと思えます。

ちょっと気になったのがこの方の毛髪検査で、バーが左側に出ると腸内環境が悪く、ミネラルの吸収が悪いという印なんですが、普通エネルギー不足の人や甲状腺機能低下症の人はカルシウムとマグネシウムが右に出ます。

ところがたまにこうやって右に出ない人がいて、その違いは何なのだろうと考えてみました。

この方は1年半休職していて、別段忙しくもなく、家でほぼじっとしていて、ストレスもないと思われます。

つまりエネルギーをあまり消耗していないんです。いまのところ考えつくのはそれくらいかなと思います。

下記は、ほぼ甲状腺機能低下症の人の毛髪検査の結果です。

みんなカルシウムとマグネシウムが高いです。

ちなみにこの水銀が高い人は4年くらい前の私です(笑)カルシウム・マグネシウムが高くて、ナトリウム・カリウムも高いという状態が鉄板の副腎疲労、慢性疲労パターンなんですけど、この46歳の方はこのパターンに当てはまらないです。

ナトリウムが低いので疲労はあると思うんですけど、カルシウム・マグネシウムが高い場合は大体毛髪の過剰な石灰化なので、脱灰の促進を疑うと言われています。

カルシウムの99.9パーセントは骨にあるので、毛髪中のカルシウムが多い場合は、骨の代謝に問題があるということです。特に再石灰化よりも脱灰が多い場合はカルシウム、マグネシウムが当然多いと考えられますが、その原因の一番は副甲状腺(PTH)で、この値が高ければ当然脱灰を底押しします。

もう1つはマグネシウム不足。

もう1つは酸性食品。

あとはビタミンD不足とかビタミンBの過剰とかでカルシウムが体から出ていってしまう場合です。このような場合が、おそらく脱灰が更新する原因じゃないかと思うんですが、酸性食品の場合は体をアルカリ化させようとして、アルカリのカルシウムが脱灰してきます。

ビタミンDが不足すると、カルシウムのバインディングプロテインが作れないので、カルシウムの吸収が下がります。つまり低カルシウムの人の場合は、カルシウムだけを摂るのじゃなく、ビタミンDとカルシウムとマグネシウム一緒に摂るということがポイントです。

ビタミンDが不足すると二次的にカルシウムも不足してくるので、骨の吸収が起きてくるのだろうと思います。あともう1つは造骨側の問題です。副甲状腺は脱灰に働きますが、甲状腺は骨の形成に寄与します。骨芽細胞に甲状腺ホルモン受容体があるからです。

甲状腺機能が低下すると骨芽細胞の機能は低下して、ALPが下がって骨化のタンパクが下がってくると、こういう感じなんだろうなと思います。

多くの甲状腺機能低下症の人の毛髪中のカルシウム・マグネシウムが高いのはこれが原因だと思います。マグネシウムをそんなに消耗していないのかもしれません。

甲状腺とエネルギー、ミトコンドリアは切っても切れない関係なので、甲状腺ホルモンが間接的にか直接的にかミトコンドリアを増やすという話がありましたが、甲状腺とミトコンドリアをつなぐキーのひとつがビタミンB2です。

甲状腺ホルモンはビタミンB2をFADという活性型ビタミンB2に変換する重要な役割があります。ビタミンB2の活性化には亜鉛、マグネシウム、マンガンなどが必要ですが、それとともに甲状腺機能も必要なんです。

マグネシウム、カルシウムが余っていても甲状腺機能が低下していたら、ビタミンB2は活性化されずにミトコンドリア機能は低下します。ビタミンB2がどこに使われているかというと、ひとつはメチレーションです。

MTHFR、葉酸の活性化酵素は、遺伝子変異があれば活性が落ちますが、ビタミンB2不足でも甲状腺機能低下症でも活性は落ちます。MTHFRの補酵素がビタミンB2だからです。

だから甲状腺機能が低下すれば、低メチレーションということになります。解毒もできなくなり、神経の発達もうまくいかなくなり、MCVなどにも影響します。

それとG6PDが活性化できなくなり、グルタチオン還元ができなくなって解毒もできなくなるでしょう。こういったこともさることながら一番影響するのはミトコンドリアだろうと思うんですね。

ビタミンB2はどこに働いているかというと、電子伝達系のIとIIとβ酸化で使われています。下記は電子伝達系の図ですが、ビタミンB2は水色で示されています。

複合体の1番、複合体の2番、そしてβオキシデーション(β3)が脂肪を利用するところに使われています。

脂肪が不飽和脂肪酸になったらどんどん痩せていくのではというご質問をいただきましたが、このβ酸化のところにビタミンB2が足りていないと、そこが障害されるんのではないかと思います。

もしかしたら痩せる人と痩せない人の違いはここかもしれません。

ミトコンドリア機能が低下して痩せてしまう人もいれば、痩せにくくなる人もいます。脂肪の代謝によるもので、甲状腺機能低下症は代謝を障害します。複合体1番と2番も障害します。

ひとつの仮説ですが、毛髪中のカルシウム・マグネシウムが高い人は、エネルギーの消耗が激しい人です。エネルギーの消耗によりマグネシウムが枯渇して、その結果ミトコンドリアが働かなくなります。

マグネシウムが足りないから脱灰しているので、治療はマグネシウムで行います。

この方は一年半休職していて、活動量も少ない比較的おっとりしている方です。

マグネシウムは余っていますが、恐らく別の理由でミトコンドリアが働いていないと思われます。たとえばビタミンB2です。

先ほどの毛髪検査の方たちはみんな痩せ方なのに比べて、この方は比較的ぽっちゃり型です。ビタミンB2が足りないために脂肪の代謝が止まるのではと推測します。ビタミンB2については、今後もっと詳しく調べていこうと思います。

甲状腺ケアとは

ピラミッドの上階層にあるミトコンドリアを動かすのは結構大変なことなので、下の階層から順番に改善していく必要があるのですが、甲状腺ケアというのは甲状腺ホルモンの投与とイコールではないということにご注意ください。副腎疲労も同様です。ホルモンの補充は、ミトコンドリアケアのあとに行うべきだと思います。

ここでいう甲状腺ケアというのは、デトックスとか肝臓ケアなど自然療法によるケアのことです。

甲状腺とミトコンドリアの関係

甲状腺とミトコンドリアは、相互的な関係です。甲状腺機能が低下すればミトコンドリアも下がって、ミトコンドリア機能が下がれば甲状腺も下がります。そのため負のスパイラルに入って、そこから抜け出せない人が結構います。

その理由とは、太古の昔からの人間の習性として、ミトコンドリア機能が低下したら飢餓状態だと判断するからです。飢餓状態に備えるために甲状腺機能を故意に落として、逃避モードにはいるわけです。

だから体に飢餓と感じさせてしまうと、甲状腺機能がさらに下がって負のスパイラルに入っていきます。

先ほどのビタミンB2の話をいれて考えると、甲状腺機能が低下すると、電子伝達系の1番と2番の補酵素であるビタミンB2の活性化がうまくいかなくなります。

2番のことをコハク酸デヒドロゲナーゼと言います。コハク酸というのは電子伝達系とTCAサイクルにまたがる唯一の酵素です。コハク酸がダメージを受けると、電子伝達系とTCAサイクルの両方が止まります。TCAサイクルの一番下のところにあるのがコハク酸です。

クエン酸から始まってクエン酸がイソクエン酸になって、6時のところにコハク酸があって、それがフマル酸になって、リンゴ酸になる。コハク酸をフマル酸に変える酵素のことをコハク酸デヒドロゲナーゼといいます。

電子伝達系の2番のコンプレックスと同じもので、つまりビタミンB2が欠乏して、甲状腺機能が低下すると、TCAサイクルと電子伝達系機能の両方に影響をきたします。

それによってミトコンドリアが止まると体が飢餓状態だと思って、さらに甲状腺機能が低下するという悪循環が起こります。

どこかで、この悪循環を止めてあげなければなりません。

有機酸検査(OAT)を見るとカンジダ感染している人は、アラビノースも臭酸も上がっています。そういう方は、コハク酸も上がっていて、ビタミンB2が上がってることが多いんです。この4つはセットなのです。

カンジダが全身に影響するのはご存知だと思いますが、カンジダの代謝産物がTCAサイクルを邪魔するので、ミトコンドリア機能を止めてしまいます。TCAサイクルのエネルギー代謝のところで6つ棒があり、一番上にコハク酸があって、このコハク酸だけが上がっている人が時々います。

そのエネルギー代謝の3つの棒がばらばらになっていると、補酵素が足りなくてどこかで代謝が止まっているってことを表しますが、コハク酸だけ上がっている人は、ビタミンB2だけ入れればいいそうです。

琥珀酸のレベルが上がっているということは、コハク酸の代謝が止まっている。つまりコハク酸デヒドロゲナーゼが動いていないということです。

コハク酸デヒドロゲナーゼが動いていないということは、ビタミンB2が活性化されていない=甲状腺機能が低下しているということです。

有機酸検査の結果を見ながら、活性化型ビタミンB2を入れてあげてミトコンドリアを元気にしてあげることが、ポイントかもしれません。

症例7

35才の女性。疲労回復中とありますけど、この方は栄養療法を行い、良くはなったが完全に治り切らず、あと一歩良くしたいと来られた方です。

朝の唾液コルチゾールは保たれていて副腎疲労はそんなになかったです。ただし中性脂肪が32しかなかったんですね。だからエネルギーは負の状態なんですが、甲状腺ホルモンが2.2で少し高かったので、ホルモン投与をしました。

すると中性脂肪が23に下がりました。甲状腺ホルモンはよくなったけど、エネルギー状態は悪くなった例です。症状は一時的に良くなりましたが、これをずっと続けると必ず悪くなります。ガソリンが空なのにアクセルをふかせてはいけないという例です。ミトコンドリアの状態を良くして、低血糖の波をちゃんと整えてから、ホルモン補充をするようにしてください。

症例8

最後の症例は、61才の女性です。意欲低下、不安、憂鬱、電車に乗れないなど色々な症状がありました。

一年半くらい治療して、腸内ケア、カンジダ、デトックス、脳機能にはでDHDを使ったり、色々なアプローチをしてほぼ良くなったのですが、意欲だけが戻らないということでした。

ウインドウショッピングに行って、あれ買って、これ買ってなど言って欲しいというのが、ご主人の希望でした。

中性脂肪は60で、この方の場合は、低エネルギー状態、FT3は2.6で副腎疲労もあるんですけども、TSHが上がってないので、これは脳から来ているパターンです。

ナチュラルサイロイドを投与しましたが、意欲はなかなか戻らなくてちょっと時間がかかります。

下垂体性の甲状腺機能低下症なので、ずっとLowT3が続いていて、脳から抑制がかかっているパターンだからです。

もう少し丁寧に下層のピラミッドもう1、2年かけていかないと、引き続き低血糖とか寒中水泳とかミトコンドリアの機能をあげるようなアプローチをとって行こうと思います。地道なようですけど、下から順番にやっていくのが一番の近道です。

ナチュラルサイロイドはこういう場合はやはり効かないです。脳から抑制がきているパターンだからです。

まとめ

  • 甲状腺マーカーは鋭敏なエネルギーの指標

甲状腺のマーカー特にTSHは鋭敏なエネルギーの指標になります。

  • マーカー値によって重症度が推測できる

マーカーの値によってTSHが上がったり下がったりします。それにより重症度が推測できます。

  • 軽度の異常はピラミッドの下層ケアで対処

橋本病のような甲状腺の病気は治療が必要ですが、いわゆる他の要因によって甲状腺に影響している場合は、ピラミッドの下層から順番にケアすることで対処できます。食事をケアするだけでも敏感なTSHがどんどん推移します。

  • 甲状腺ホルモンはミトコンドリアを動かす

甲状腺ホルモンの補充は有効だと思いますが特別な事情がない限りは、ミトコンドリアを動かす他の要因のケアを行ってさらに補助として一時的に考慮するのが良いです。

  • 体に飢餓を感じさせない

体が飢餓だと感じると、栄養不足と認識して甲状腺機能を抑えにかかります。そのため、いかに自分の体に今は飢餓じゃないんだと思わせるようにしないと、どんどん下がっていくと思います。

低血糖を頻繁に起こしていたら体は飢餓だと認識します。体がいつも冷えていても同じです。

現代社会において食べ物やエネルギー源は沢山あるのに、体が飢餓だと勝手に勘違いして、甲状腺機能を低下させます。そうならないために低血糖を防止して、体を温めたり、冷水浴がお勧めです。

冷水浴は一時的に体に刺激を与えて自律神経を整える上、いつも使っていない毛細血管を開くため、体が温まります。寒中水泳、高地トレーニング、断食などの短期的なストレスは体にとってプラスだと思います。

ただし体に飢餓だと勘違いさせない範囲で行うのが大切です。体を温め続ければ、飢餓状態の冬眠のサインが解けて甲状腺ホルモンが上がってくるので、そうすると自然に正のサイクルに入ってくるはずです。

ゆっくりでもいいから登り坂に入ってくれれば、あとはその治療をつづければいいだけだと私は考えています。

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