検査データを前にしたときに、よほどの専門家でないと、その意味がよく分からない-ということがあると思います。ある項目について、数字が大きいから体がよくないらしいというのはわかるけれど、だから何?といったようなこともあるかもしれません。
今回は、血液検査項目の中でも、特にわかりにくい、アルファベットが並んだ曲者、LDとγ-GTPをとり上げて、血液データ読みこっそり帳の使い方をお話ししていきます。
1.LD(乳酸デヒドロゲナーゼ、乳酸脱水素酵素)
1-1.LDとは
LD 乳酸デヒドロゲナーゼ 乳酸脱水素酵素 | 180 | ナイアシン ↓ 溶血 ↑ 臓器の損傷 ↑ |
LDは、“Lactate DeHydrogenase”の略語です。“De”はとり除く、“Hydro”が水という意味なので、乳酸から水をとり除く酵素ということで、日本語では、「乳酸デヒドロゲナーゼ」「乳酸脱水素酵素」と呼ばれます。また、LDでなくLDHといわれることもあります。
この酵素にはアイソザイムというものがあります。これには1、2、3…などの種類があり、それぞれのアイソザイムによって病気が変わります。そもそもアイソザイムとは何かというと、その酵素活性はほとんど同じで、異なるのはそれを作っているたんぱく質の配列です。この違いによって、どこから出たLDHかわかるようになっています。
LDH1,2増加 | 悪性貧血、心筋梗塞、溶血性貧血 |
LDH2,3増加 | 悪性リンパ腫、筋ジストロフィー、肺癌、白血病、膠原病 |
LDH5増加 | 肝炎、肝癌、骨格筋の損傷 |
このLDは、肝臓、胆道、心臓、腎臓、血液など体のいろいろなところにあります。その組織が壊れた時にこぼれでてくる酵素であり、こういう酵素のことを逸脱酵素といいます。
1-2.LDの数値が高くなるとき
では、LDの数値が高い時というのは、どのような時でしょうか。
筋肉組織が壊れたとき
筋肉の病気でも、LDは上がってきます。筋トレをした場合にも、筋肉組織が壊れるので、筋肉からLDが出てきます。検査データでLDがすごく高い、けれども患者さんは元気そうだという場合、「昨日筋トレしましたか?」「運動しましたか?」「何か体に負担のかかることをしましたか?」と聞いてみてください。案外、日中に長時間草取りをしていたなどということもあります。
赤血球が壊れたとき
LDは、ピルビン酸を乳酸に変える、あるいは乳酸をもう一度ピルビン酸に変えるときの酵素として使われます。
通常は、体の中にグルコースが入ってくると、細胞の中でピルビン酸に変わり、次にミトコンドリアに入ってエネルギーを作っていきます。
ミトコンドリアが働かないとき、ピルビン酸は乳酸に変わります。このピルビン酸と乳酸の間で働くのがLDです。
LDは赤血球の中にたくさん入っています。なぜなら、赤血球にはミトコンドリアがないため、エネルギーを作るときには嫌気性解糖をしなければならないからです。
ですから、赤血球が壊れるとLDは上がるため、溶血を見るときにLDの値は参考になります。
悪性腫瘍があるとき
がんがあると、LDが上がってきます。がんはもともと低酸素の状態で育っていきますが、酸素が周りに足りなくなると、低酸素誘導性因子(hypoxia-inducible factor :IHF)というものができて、低酸素の状態でもグルコースをピルビン酸、乳酸に変えてエネルギーを作れるようになります。
つまり、IHFができると、LDが増える。LDが増えると、どんどんエネルギーがつくれるようになるので、材料となるグルコースもたくさん必要になってきます。がんの患者さんが甘いものをたくさん欲しがるのはこのためです。
がんの診断に使うPET検査は、がん細胞のこの性質を利用して、放射性フッ素をつけたグルコース(フルオロデオキシグルコース)を注射し、それがどこにたくさん取りこまれたかをみることでがんがどこにあるかを診断します。写真を撮ると、黒く濃く写っているところが、砂糖をたくさん取ったところ、グルコースをたくさん取り込んだところで、がんになります。
1-3.LDの数値が低いとき
では、その逆にLDの数値が低い時には、何が起こっているのでしょうか。
まず、LDの働きについて、詳細に見てみることにします。
LDというのは、ミトコンドリアがうまく働かない、つまりTCA回路が回っていない、電子伝達系が回っていないときに、グルコースから作られたピルビン酸を乳酸に変えてエネルギーをつくりだす酵素でした。
このエネルギーは、2つのNADが、2つのNADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変わる時のエネルギーを使って、2つのADPから、2つのATPという形で作り出されます。そして、LDは、この2つのNADHを再びNADに戻し、もう一度使えるようにすることで、グルコースからピルビン酸、乳酸がつくられる回路をぐるぐると回しています。
このLDが動いている状態のとき、乳酸は一度肝臓の中に運ばれ、もう一度ピルビン酸に変わって、さらにグルコースになる糖新生が行われます。この回路をコリ回路といいます。
ところが、ピルビン酸をもう一度グルコースに変えるには、ATPが6個が必要になる。つまり、グルコースからピルビン酸を作るときの3倍のATPが必要になります。
もしここで、LDが少なかったらどうなるでしょうか。
まず、NADとNADHを使った回路がうまく回らない。グルコースをピルビン酸に変えて嫌気性解糖でATPを作る回路の効率が落ちる。コリ回路も回りにくくなる。結果、エネルギーがつくりだせなくなってくる。
つまり、LDが低いと、もともとTCA回路も電子伝達系も回っていないうえに、さらに解糖系も回らなくなります。ですから、LDが低い人というのは、エネルギーがつくれず、大抵疲れてぐったりしている方が多くなります。
1-4.LDデータの使い方
LDは、ASTとの比率をみることで、どこに問題があるかのあたりをつけることができます。
- 肝臓が悪いとき
ASTとLDの比(AST/LD)は、大体6を超えません。
肝臓の炎症が強いときほど、この比が低下する。つまりLDが増え、ASTが相対的に下がってきます。 - 心筋梗塞のとき
この比は10前後になります。心臓の筋肉が壊れると、ASTもLDも出てくるのですが、特にASTがたくさん出てきます。 - 悪性腫瘍のとき
ASTのほうが高くて、10以上になることが多くなります。 - 白血病や溶血のとき
この比が20から30倍になりきます。
もしLDの数値が高い場合には、まず、それがどこからこぼれてきたのかをチェックしましょう。そのときには、アイソザイムを、LDHのどのタイプが多いかを調べます。
そして、その次に、ASTとの比で当たりをつける。
LDが低いときにはエネルギー切れ、LDが多いときにはどこかに障害があるので、それを調べる。このようにして、LDを使うことで、病気や障害、不調を見極めていくことができます。
2.γ-GTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ、γグルタミルトランスフェラーゼ)
2-1.γ-GTPとは
γ-GTPは、γグルタミルトランスペプチダーゼ、もしくはγグルタミルトランスフェラーゼの略称で、一般には、お酒を飲んだときに上がる、肝臓が悪いときに上がることで知られているものです。
ところが、単位重量当たりでは、腎臓に最も多く入っていて、次に膵臓、肝臓、脾臓の順。だからといって、γ-GTPを腎臓の数値や膵臓の数値として見ずに、肝臓の数値として使われるのは、臓器の重さからです。
腎臓や脾臓が約150グラム、膵臓が100グラムなのに対して、肝臓はその1500gと、10倍も重いから。
もしそれぞれが50%怪我をしたとしても、肝臓のほうが圧倒的な量のγ-GTPを出すことになるからです。
なので、γ-GTPが上がったときにはいろいろな病気を鑑別しますが、ほとんどの場合、肝臓と胆道系の調子悪いらしいと思えば大丈夫です。γ-GTPは、その他、小腸、精巣、前立腺などにもあります。
γ-GTPで鑑別できる病気
- アルコール性肝障害
- 肝内胆汁うっ滞
(薬剤、ウイルス性肝炎) - 肝外胆汁うっ滞
(閉塞性黄疸) - 胆管細胞がん
- 転移性肝がん
- 副腎皮質ホルモン
- 抗てんかん薬
- 原発性胆汁性肝硬変
- 肝細胞がん
- 慢性肝炎
- 肝硬変
- 非アルコール性脂肪肝
- 肝炎(NASH)
- 家族性高γGTP血
では、γ-GTPは細胞の中のどこにあるのでしょうか。
それは、細胞の中の小胞体です。図の中でいうと、小胞体の細胞の膜のところに足を突っ込んで、そこからヒョロヒョロっと出ているのが、γ-GTPです。
また、γ-GTPは、酵素なのでたんぱく質なのですが、糖鎖のくっついた糖たんぱく質になっています。
そして、この小胞体には、脂質・ステロイドの合成、たんぱく質の折りたたみや成熟化、カルシウムの貯蔵、解毒といった役割がありましたが、この解毒にγ-GTPが大きな役割を果たしています。
2-2.γ-GTPと解毒
解毒といえばグルタチオンですが、これは、グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸がくっついてできたポリペプチドのことになります。そして、この真ん中の黄色いところにはいっている硫黄が、外から入ってきた毒を上手に捕まえます。
このグルタチオン、実は、意外なところでお仕事をしています。食べ物のコクを作っているのです。食べ物にグルタチオンがたくさん入っていると、甘みや酸っぱみなどではなく、しっかりと重たい、おいしいイメージのコクが出てきます。あっさりしたものにはグルタチオンは少ないことが多いです。
このとき、グルタチオンは舌の上にあるカルシウム感知受容体にくっつくことで、旨味として感じれるおいしさをつくっています。なので、大したものが入っていなくても、グルタチオンさえ入れておけば、コクのある風味ができます。
なおかつグルタミン酸が入っているので旨味もあるし、グリシンが入っているので分解されると甘みも出てきます。
さて、このグルタチオンの真ん中の部分、システインをバリンに取り替えてみます。
すると、グルタチオンによく似たポリペプチドが出来上がります。
これは味の素が合成して作ったものです。「グルタミルバリルグリシン」という名前で、グルタチオンに比べて10倍コクがあるらしいです。
これはもともと天然に入っているもので、ホタテやナンプラー、魚醤にたくさん入っていて、いろいろなお出汁に使うなど天然の旨味を出すためのアミノ酸、たんぱく質になるわけです。
なので、これがおいしいと感じるということは、体がグルタチオンを外から取り入れたいということだと思しますし、コクのあるものが好きな方は、もしかしたら体が解毒をしたいと思っているのかもしれません。
このグルタチオンは、何からできているかというと、アミノ酸の基本の4つである酸素、水素、窒素、炭素からできています。
それに加えて、真ん中の黄色いところ、硫黄が入っています。この硫黄がポイントです。
毒というのは水に溶けないものが多いのですが、グルタチオンの真ん中にある硫黄が上手につかまえる、つまり、グルタチオンとくっつくことで水に溶けやすくします。
細胞の中にあるたくさんの毒はグルタチオンとくっつくことで、細胞膜についている「グルタチオン抱合体排出ポンプ」から、血中に排出することができるようになります。
このような毒には、子ども用の痛み止めや熱冷ましに使われるアセトアミノフェンや、カドミウムやメチル水銀、鉛などの重金属、花粉症の原因になるロイコトリエン、生理痛や頭痛のもとになるプロスタグランジンなどがあります。
このグルタチオンはアミノ酸が3つくっついたものなので、消化酵素を使ったらうまく切れるはずなのですが、ほとんどのたんぱく質分解酵素で分解できません。
ところが、このグルタミル基、グルタミン酸の部分、ここを切ってくれる酵素が1つだけあります。それが、γ-GTPです。
2-3.γ-GTPが上がるとき
γ-GTPが上がるときには、2つの可能性を考えます。
- 解毒が必要なとき
体の中の毒は肝臓に入って、解毒のためのグルタチオンができます。毒の量が多ければ多いほど、グルタチオンが体の中でたくさんできる。そうすると、それを分解してもう一度使うために、γ-GTPが増えていく。
なので、γ-GTPが高いときは、肝臓で何か解毒するものがあるのかなというように考えます。
解毒が必要なものには、お酒、薬、毒物、重金属などがあります。抗てんかん薬や抗生物質を使っても、γ-GTPが上がってくることがありますが、その場合は、肝臓が障害を受けたのかもしれないし、もしかしたら解毒するためにγ-GTPが上がったのかもしれないので、他の酵素と合わせて調べます。 - 肝臓が壊れたとき
細胞の中の小胞体にあるγ-GTPが、壊れた細胞からはみ出てきます。逸脱酵素です。これは、例えば、脂肪肝、肝炎、胆汁を流す胆道が詰まったようなとき、胆石があるときなどです。
2-4.解毒のカギを握るシステイン
ここで、もう一度、グルタチオンについて見てみましょう。
グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンという3つのアミノ酸がくっついたものでトリペプチドになります。
グルタミン酸とシステインの隙間を切るのがγ-GTPです。
そしてシステインとグリシンのくっついた2つのペプチドを切るものが、ジペプチターゼです。2個のペプチドを切るのに使われる酵素だから、ジペプチターゼです。
では、もし、γ-GTPが足りない場合には、何が起こるでしょうか。
当然、グルタチオンのグルタミン酸とシステインの間を切ることができなくなります。そして、再利用できるシステインが不足する。
実は、システインは、グルタミン酸やグリシンと較べて、体内にある量が相対的に少ないですし、食べものに入っている量も意外と少ない。となると、システインはぜひ再利用したいものになるわけですが、ここでγ-GTPが少ないと、システインを再利用することができなくなります。結果、グルタチオンの再生が低下して、解毒能力が落ちていくことになります。
システインが入っているサプリはいろいろありますが、意外と皆さんが身近で見たことがあるのはハイチオールです。ハイチオールの「チオール」というのは硫黄のことで、箱に書いてある分子式自体が実はシステインです。シミやそばかす、全身倦怠感に使うと書いてありますが、ビタミンCだけでなく、システインをしっかり入れることで解毒ができる。そこから倦怠感が抜けるというように考えていいと思います。
γ-GTPが少ない時には、システインが少なくなっている可能性があるので、システインを入れてあげると体中がうまく回る可能性があります。逆に、γ-GTPが増えているときにも、需要が増えているので、システインを入れてあげる必要があります。
このシステインは、非必須アミノ酸なので、体内で必須アミノ酸から作ることができます。
では、肉などメチオニンをたくさん食べればシステインができるのでしょうか。
メチオニンをシステインに変える経路を見てみたいと思います。
メチオニン回路を回って、ホモシステインになって、さらにCBSの酵素がきちんと動いて、システインにならないと困ります。逆に考えると、システインをたくさん作るためにはメチル基をどんどん使ってしまうので、メチレーションが回らなくなります。
つまり、システインが足りないときには、メチレーション回路がうまく回って、メチオニンをシステインにする必要があるわけで、ビタミンB12や葉酸が足りないと回路がうまく回らずに、解毒ができなくなるということになります。
2-5.γ-GTPが下がるとき
γ-GTPがとても減っているときには、材料不足、つまり、たんぱく質不足を疑います。たんぱく質の不足は、たんぱく質をとっていない、とっていても消化できない、消化できても吸収できないといった原因によって起こります。
まず、たんぱく質をとっていないという状況は、例えば夏バテのシーズンに起こります。
あまりに暑くて食欲が落ちる、ぐったりする、外に出ない、寝てばかりになる…こんな時には、どうしてもジュースやアイス、素麺などの炭水化物が多くなります。よほど意識しないと、たんぱく質が増えることはめったにありません。
その結果、疲労倦怠感、食欲不振、無気力、寝汗が出すぎたりなどしてきます。
ちなみに寝汗はアドレナリンによって出ます。夜中にアドレナリンがドンと出る理由は、夜間低血糖を補正するために体が反応しているサイン。つまり、副腎疲労が起こっているということで、これこそ夏バテです。
とにかく胃もたれがひどい、食欲がない、お腹も張った気がする、吐き気もする、ゲップも出る、こういう状態のことを漢方では「脾虚(ひきょ)」といいます。この場合の脾は脾臓という意味ではなくて、消化管全体を指しているので、「脾虚」とは消化機能の低下を意味しますが、この脾虚は結果的に気力・体力の低下を招きます。
次に、たんぱく質をとっていても消化できない…というのは、どんな時でしょうか。
普通、胃は、食べ物が入ると、ふわっと膨らみます。弛緩して、そのあとにリズミカルな蠕動が起こる。そうして、十二指腸のほうに消化したものを排出する。
けれども、胃が広がらないときには、食べ物がうまく入っていかず、少し食べただけで胃がいっぱいになった気がしてしまいます。胃の蠕動も、本来は消化したものを下のほうに送っていかなければならないのに、上のほうにいったり下のほうにいったりしてしまう。
このうまくいかない感じを、「機能性ディスペプシア」と呼びます。
症状としては、食後の膨満感、少し食べるとすぐにお腹がいっぱいになってしまう状態、みぞおちが痛い、みぞおちが焼けるような感じなどがあります。
これは、消化管なので自律神経の問題です。自律神経には交感神経と副交感神経があって、交感神経は戦ったり逃げたりするような状態、副交感神経はリラックス状態をつくります。ですから、昼間には交感神経優位に、夜には副交感神経が優位に働きます。
これがうまくいっていれば、晩ご飯を食べても、朝にはお腹が空きます。
お腹を動かすためには、副交感神経が優位であること、交感神経はできれば止まっていることが大切です。
交感神経が優位になると、お腹の動きは悪くなり、胃の粘液が減少し、胃壁の再生も胃の運動も低下して、たんぱく質の消化が悪くなります。
たんぱく質は胃に入ると、ペプシノーゲンに胃酸が働いてペプシンに変わった酵素によって、まずペプトンにまで消化されます。
しかし、ペプシノーゲンもペプシンも酵素なので、たんぱく質が素になってできていますし、胃袋もたんぱく質でできています。
たんぱく質不足があると、たんぱく質の消化ができないという悪循環が起こっています。ところが、たんぱく質不足があると、たんぱく質の消化に必要な酵素の産生や胃袋の再生ができなくなるため、さらにたんぱく質不足に陥る…ということになります。
では、胃酸を十分に出すことができない時というのは、どういういときでしょうか。
- 萎縮性胃炎
萎縮性胃炎は、内視鏡で見てみると、粘膜が荒れてツルツルになっていて胃酸を十分出すことができません。 - ピロリ菌感染
胃の炎症を起こしたり、アンモニアを作ったりするので、胃酸が働くことができなくなります。 - 胃酸抑制剤
この薬剤は、痛み止めと一緒に出されたり、胃もたれや逆流性食道炎の時に出されたりします。重曹が入った胃薬をずっと飲んでいても、胃酸がアルカリで中和されて、胃酸としての働きができなくなります。 - 胃の切除後
がんや胃潰瘍などの病気で胃を切ったあとも、胃酸が足りなくなります。 - エネルギー不足
エネルギー不足で胃酸が出なくなるのは、胃のプロトポンプが働かなくなるためです。
胃のプロトポンプ:胃の中にH⁺を出し、胃の中にあるK⁺を細胞内に閉じ込めるポンプ。こうすることで、胃の中でH⁺とCl⁻とから胃酸であるHCLをつくれるようにする。これが動くためには、ATPが必要となる。 - 緊張(交感神経)
そこで、胃をきちんと整えておくためには、以下のことが必要です。
- 丈夫な粘膜
たんぱく質やミネラル、ビタミンAが必要になります。 - リラックス
睡眠の質が上がっていること、ストレスのコントロールができていることも必要になります。睡眠が不調な方は、副腎疲労がベースにあって夜間低血糖があったりすることがあります。カフェインやニコチンも交感神経を刺激してしまいますので、こういうものを使っていて胃がもたれているときには、まず抜いてもらうことが先決になります。
また、カフェインやニコチンが必要な状態ということの裏には原因があるので、例えば鉄欠乏がないか、血糖値の乱高下がないか、食べ方が体に合っていないのではないか、家庭とか職場環境が悪いのではないかなどを見て、それを改善するように勧める必要があります。 - 酸性に保つ
酸性度が低い方にはクエン酸やレモン、梅干しを足してもらってみたりすることもあります。胃炎がない場合にはベタリン塩酸のサプリメントを使うこともあります。
また、重曹とか胃酸抑制剤は使わないようにします。もし使うときでも、症状が強いときだけや、使ったほうがメリットのあるときだけに限ってください。
2-6.γ-GTPと尿素窒素
実は、血液データ読みこっそり帳の同じページにあるγ-GTPと尿素窒素は、どちらもたんぱく質量を反映しています。そして、以下のことを見ることができます。
- たんぱく質をしっかり食べているか
- きちんと消化できているか
- 吸収ができているか
- 自律神経が整っているかどうか
- エネルギー産生できているか
たくさん食べても消化できない場合、データとしては尿素窒素がたくさん上がりますが、γ-GTPはあまり上がりません。ただ、脂肪肝でγ-GTPが上がってくることもあります。数字がよくなったからといってたんぱく質が足りているとは限らないので、このあたりは問診をかけてみましょう。手が冷たいとき、手汗をかいているとき、眠りが浅いとき、こういう場合にはあまり消化できてないのかなと疑ってみてもいいです。
吸収もできないとうまくいかないので、腸の炎症があるかどうかも確認してください。
この2つの項目がすごく低い場合、大抵エネルギー切れを起こしています。いつもだるくて疲れています。
両方ともそこそこ数字があるのにだるい場合は、何かマスクがかかっている場合がありますから、必ず確認してください。
γ-GTPが低い場合は、化学物質の解毒ができなくなります。
こういう人の中には、臭いが強いものが苦手な方が多いですし、柔軟剤や虫除けでだるくなる子もいます。最近の虫よけは臭いがないので、これを使われているかどうか気がつかないことが多いのですが、特定の部屋に入るとだるかったり辛かったりするような症状がある場合には、虫除けを使っていないか問診してみてもいいかもしれません。
家をつくるときに使う接着剤や木についている防腐剤などの解毒ができずに、シックハウス症候群になっていることもあります。
γ-GTPが低い方には、たんぱく質を摂りなさいだけではなくて、解毒能力がない可能性を推測してあげるとよいと思います。
2-7.おさらい
γ-GTPは、低い場合と高い場合の両方があります。両方の要因が重なって、数字だけがちょうど15くらいになって、あまり問題がないと思うときがあります。例えば、胃腸が悪くて、低たんぱく質になっている場合。本来、γ-GTPは下がるはずなのですが、ジュースやアイスクリームなど炭水化物をとっていて脂肪肝になっていると、γ-GTPがいい数字になったりします。さらに、便秘をしていれば、本当は低いはずの尿素窒素も上がってきて、同じくらいのいい数字になったりもします。いい数字でたんぱく質が足りているように見えるけれど、患者さんは辛そうにしている。そして、話を聞いてみると、まともにたんぱく質を摂っていない。この矛盾を見つけたら、マスクがかかっているかもしれないと疑ってみてください。
γ-GTPが低い時、特に1桁のときには、かなり疲れている状態、体調が悪いんだなと考えます。そして、γ-GTPがそもそも下がってしまう状態なので、お腹が弱いかもしれないと考えます。カウンセラーや病院に来るときには、体調がそこそこ上がっていることが多いですし、外の人には元気に見せている場合もありますので、「お家では本当はどうですか?」「土日、だるくて眠っていませんか?」「帰ったらすぐに、シャワーも浴びずに寝てしまうことはないですか?」と、普段の生活がどうかを聞くのも大事です。
このような人は、香料やお化粧品が苦手で、すっぴんだったり、無香料などに極端にこだわることも多いです。食では、炭水化物とか野菜が好き、マクロビをしている、自然派に異常なほど強いこだわりがある、そういう方もそもともと消化吸収力が落ちている、体調が悪いことを疑ったほうがいいと思います。
ときどき、とてもγ-GTPが低いのに元気な方がいます。そういうときには、カフェインを摂ってないか、緑茶を飲んでいないかなどを聞いてください。カフェインを入れると、元気がないという自覚がなくなって意外と動けてしまうので、「私は元気」と言います。「私は元気」と言うけど、早口で声が甲高かったり、話を聞かない人が多いです。
このように、数字の見た目と、体で起こっていることに違いがあることがあるので、そのあたりを観察してみてください。
3.さいごに
今日は、LDHとγ-GTPの話をしました。どちらも酵素なのでたんぱく質です。この2つを増やすためには、たんぱく質をしっかり摂ること、そのためには胃腸が丈夫であることが必要です。で、どちらも細胞が壊れると出てきます。どの細胞に入っているかが分かると、どこの病気か当たりがついてきます。このあたりを踏まえてこっそり帳をうまく使ってもらえたらいいなと思います。