原始反射統合と筋膜と副腎疲労
ストレスに弱い、不安や恐怖に過剰に反応してしまう。視覚や聴覚が過敏だ、疲れやすい、自分に自信が持てない。発達障害かもしれない。栄養療法で副腎疲労の改善を目指しているのに、なかなかよくならない。
そういったことにお悩みの方、そのような傾向のあるご家族やクライアントをお持ちの方に、ぜひ知っていただきたいことがあります。
それは、栄養療法への取組みの前に、身体の緊張を解きほぐしてあげる必要があるということ。そして、そうすることで、胎児期や乳児期に機能し、成長するにつれて統合されていくはずの様々な「原始反射」と呼ばれる体の反応をできる限り抑え、先のような症状を改善していくことができるということ。
この「アナトミー・トレイン」という理論に基づく方法を学ぶことで、ぜひご自身やご家族、クライアントの元気と幸せを実現していきましょう。
初めに~反射とは
カエルが歩いているところに大きなヘビが来ました。この時、カエルはどのような反応をするでしょうか?
- 殴る、戦う
- 逃げる
- 固まる、すくむ
びっくりしたときには、この3つのいずれかー戦うか、逃げるか、すくむかとういう反応が起こります。このとき、身体の中では何が起こっているでしょうか。
生き延びることが最優先という状況になると、まず、脳みそにある下垂体から、副腎皮質刺激ホルモンACTHが出ます。その命令を受けて、副腎からコルチゾールとアドレナリンが出ます。これによって、身体には以下のような反応が起こります。
- 心臓がドキドキする
- 膀胱が緩む
膀胱が緩むのは、急いで逃げるのにトイレに行きたくなったら困るからです。 - 視野狭窄(トンネルビジョン)が起こる
逃げることに集中するため、余計な視覚情報を入れないよう、視野狭窄が起こります。ですから、視野が狭い人というのは、たいてい緊張していますし、選択肢がない人というのは緊張状態にあるということになります。 - 手足が震える
- 瞳孔が開く
瞳孔を開くことで光をたくさん取りいれて、情報を得ようとします。 - 顔が赤くなる
青くなる場合もありますが、血流がどんどん良くなって赤くなる場合もあります。 - 口が乾く
消化に関するものはほとんどストップするので、唾液も出ません。いつも口が乾いている人は、緊張状態にあることが多いのです。鉄欠乏や低血糖があると、さらに口は乾きやすくなります。 - お腹の動きが止まる
胃が止まり、腸も止まり、消化が止まります。 - 耳が聞こえなくなる
ものすごく怖い思いをしている最中は、限られた情報しか取りたくないので、あまり音が聞こえなくなってきます。
すごく怖い思いをしたときの反応「戦う、逃げる、すくむ」、これは全てストレスの反応です。この時、身体の中では、基本的に同じホルモン、アドレナリンやノルアドレナリンが出ています。けれども、反応の仕方は随分と異なっています。これは、それぞれの「生き残るための戦略」、これによって「生存確率をあげる」ことをしています。この反応の違いに関係しているのは、「身体の発達」段階です。
例えば、ウミウシのような生物の反応は、あまり戦わない。できるだけ身体を小さくギュッと固めて、身体を守ります。魚ぐらいになると、固まるのではなくて逃げます。場合によっては、襲いかかっていきます。そして人間になると、基本的には戦えるはずです。怖いものに向かっていって戦えるということは、例えばマンモスを捕まえて食べられる-といった判断ができるようになるわけです。これらは全て、身体の反射で起こります。
「反射」というと、どのようなもの思いつきますか?有名なのが、脚気の検査に使われる「膝蓋腱反射」。イスに座らせて、トンカチで膝を軽くトンと叩くと、足がピュッと上がる-というものです。普通に考えればここで起こっているのは、「叩かれた」という反応がまず起こり、脳が、「痛っ」と思う。そして「筋肉を縮めて」と脳がいい、膝が「わかった」というプロセス。頭まで情報がいくとこういう反応になるのですが、いちいちこのように考えていては遅い。こんなにゆるゆるとしていたら、ライオンに食べられてしまいます。
では、実際には何が起こっているかというと、叩かれた瞬間、刺激は脊髄に行き、その反応が脊髄から直接返ってきて膝があがっている。このプロセスには、脳はいりません。もう少し詳しく説明すると、叩かれた信号は、求心路という身体の中心のほうに向かう末梢神経を通って脊髄に入り、脊髄から直接反対側の神経に受け渡されて、筋肉を縮めなさいという命令に変わるということが起こっています。
ちなみに、脚気はビタミンB1の不足で起こります。これは、背中のところでUターンしていた末梢神経の感覚が、ビタミンB1不足の影響で低下するからです。そして、実は、今、ビタミンB1不足の人が結構多い。ビタミンB1は、特に糖分代謝のときにたくさん使うため、食事の内容を聞いてみると意外と脚気に近い状態の人なのではないかと感じることがあります。
また、糖尿病の人はいつも糖質を食べているので、ビタミンは相対的に減るはずです。けれども脚気の可能性を医師は考えません。実際には、糖分摂取が多く腸内の炎症があったり、タンパク質摂取量が減って、浮腫みが出ます。タンパク質もなく、運動量も少ないので、心臓の筋肉がどんどん減ります。結果的に心不全症状が出ます。脚気の症状も、浮腫みと心不全です。ところが、血液検査をでビタミンB1血中濃度を調べても、その基準値が曖昧なので参考にならないのが現状です。
原始反射
「反射」とは、外からの刺激で身体が反応すること、大脳皮質までいかずに、考えを経由せずに起こる反応のことです。そして、その種類はたくさんあります。例えば、まつ毛を触られたときにや目にゴミが入ったときに、自動的に目が閉じる。熱いものを触ったときに、手がいきなり縮むなど。そして、こういった反射の中の一つに、「原始反射」というものがあります。原始反射にも、以下のような様々なものがあります。
【いろいろな原始反射】
・恐怖麻痺反射
・モロー反射
・緊張性迷路反射
・探索・吸啜反射
・脊椎ガラント反射
・対称性緊張性頸反射
・非対称性緊張性頸反射
・足底反射
・新生児プランター反射
この原始反射は、「原始」という言葉がついているように、原始的な反射で、お腹の中の赤ちゃんが生き残るため、成長するために、子宮内で準備してくる反射です。けれども、これがずっと残っていると、大人としての動きができなくなるので、どんどん成長させて、次の動きができるように、統合させていく必要があります。原始反射の統合というのは、成長そのものです。つまり発達ということ。この統合がうまくいかないことを「発達障害」と言います。
赤ちゃんの脳の発達
これは神経細胞の模式図です。左図のようなこのまま裸の状態でツルンと1本ある状態では、信号は非常にゆっくりとしたスピードで、中途半端なかたちで進むため、情報がうまく伝わりません。この反応をもっと速くするために、神経の軸には、ミエリンや髄鞘といわれるものが巻かれています。これがつくことで、信号が飛んで速く情報が伝わります。この髄鞘には、脂の一種である「スフィンゴミエリン」というものがたくさん入ってできています。この材料の半分は、「ホスホコリン」。これには、リンがついたところと、炭素と水素がたくさんついたところがあって、さらにメチル基がたくさんついています。
メチル基を渡してくれるのは、メチレーション回路にあるSAMe。つまり、メチレーション回路が回らないと、ホスホコリンが作れず、スフィンゴミエリンも作れません。髄鞘も作れず、神経の伝達がうまくいかない、神経発達がうまくいかないということになります。
ホスホコリンは、コリンとATPが合わさったときに、その中の一つのリンがコリンに移ることで、ホスホコリンとADPになることで作られます。ホスホというのは、リンを意味しています。ATPはミトコンドリアで作りますが、そのためには鉄も酸素もたくさん必要です。電子伝達系では、CoQ10や銅もたくさん必要になります。ということは、貧血気味の妊婦さんはATPがあまり作れないので、間接的にホスホコリンもたくさん作れなくなっていく。
ここでも、お母さんの栄養状態は大事になってきます。メチル基もたくさん必要ですので、お母さんが人工葉酸を飲んでしまうとあまりよくない。解毒できないタイプのお母さんの場合、赤ちゃんの神経系の発達に異常が出るかもしれません。
葉酸が足りないときや、人工葉酸を使ったときに脊柱管の開いたまま生まれる子がいます。二分脊椎です。その原因については、葉酸が足りないと起こる…というところまでしかわかっていません。また、ホモシステインがたくさん余っていると、どうも二分脊椎になるということがわかっています。多分、ホスホコリンの合成がうまくいかないから神経の発達がうまくいかなのではないか-という考え方もあるのですが、論文はあまり出ていません。
これは、生まれたての赤ちゃんの頭の中の画像です。水が黒く写り、脂肪が白く写る「T1強調画像」という方法で撮ったものです。細胞は水とタンパク質で、スフィンゴミエリンはほとんど脂でできていますから、髄鞘ができたところは白っぽく写る。いいかえれば、きちんと動く神経になると、白く写ってきます。
一番左の画像は、新生児の脳を輪切りにしたもの、脳自体がなんとなく灰色です。その右隣の画像、生後7ヶ月になると、灰色のところと白いところがはっきり分かれてきます。さらにその右の画像、10ヶ月頃の赤ちゃんの脳は、その灰白質と白質がかなりはっきりしてきます。
右2つの画像は、左からそれぞれ、生後1週間と4カ月の赤ちゃんの脳を縦切りにした画像です。生後1週間ではまだ白いところがあまりありませんが、4ヶ月になると白いところが増えてきているのがわかります。このように、脳の発達は、下のほうから上に、右から左に、後ろから前に、真ん中から外に進んでいきます。
脳みその表面が白くないのは、そこは細胞の核があるところだから。細胞の軸のところはずっと長く伸びていて、そこは脂に包まれているので白っぽく写ります。
新生児の頭のMRI(脂のところが白く写るT1強調画像)です。これを見てみると脳みその中心部分の脳幹部と橋のあたりが白くなっています。
これは、ポールマクリーン先生が提唱した「脳の3層構造」。脳には「脳幹部」「辺縁系」「新皮質」があって、中心のほうから大きくなるという考え方と一致します。赤ちゃんが生まれたときに、ミエリンがきちんとできた脳ができているのは脳幹、真ん中のところです。それがだんだん育ってくると辺縁系に白っぽい線が増え、最終的に大脳皮質のほうに白い部分が広がっていきます。
赤ちゃんは、ほとんど脳幹だけで生きています。
脳幹の仕事は、とにかく生き延びるための反射をすること。食べる、息をする、心臓を動かすといったことが最優先となる「脳幹反射」です。この中には、対光反射、角膜反射などがあります。
対光反射というのは、光が入ったときに瞳孔がキュッと縮む反射。角膜反射は、眼の中に物が入ったときに眼をギュッとつぶる反射。他には、毛様脊髄反射、咳反射、前庭反射、咽頭反射など。咳反射や咽頭反射は、異物が喉に入ったときに咳をする、すぐに吐き出すなど生きるのに直結した反射です。
新皮質は社会性を作るところです。新皮質があると、「熱い鍋を持ったときに、熱いから手を離したいと思っても、こぼすと危ないから頑張って持とう」というように考えることができます。だから、すごい嫌いな上司がいて、殴ってやろうと思うところが辺縁系ですが、ここで殴ると立場悪くなるなと考えるのが新皮質の社会性になります。脳幹寄りになると、上司が現れた瞬間に蹴るくらいの反射になります。
赤ちゃんのときに育つのは、まず脳幹の部分です。ここが未発達のままで大人になってしまうことがあります。これは、神経のスフィンゴミエリンがきちんと出てない、ATPが作れないために、神経がうまく作れないという状態です。とりあえずありあわせの材料でけでできる範囲内で身体を作っていきます。
そうすると、生き延びるためだけにエネルギーをほとんどを使ってしまい、社会生活を送るためのエネルギーが少ししか残りません。これは、いつも疲れている状態、生きるのが精一杯で余裕がない状態です。例えば、低血糖を起こしているような状態、貧血がひどい状態というのは、生き延びるほうが最優先となって社会生活を送るのが困難になります。
赤ちゃんの脳は、生まれたては中心にしかミエリンがありません。(写真:左)
成長してくるに従いミエリンができてきて、白いラインが脳の中にできてきます。(写真:中央)まだこの頃はお座りしかできません。
立ち上がれるようになると、脳の真ん中がかなり白くなってきます。(写真:右)
特に、頭の後方(写真では下方部)が白くなっていますが、ここは見る能力と関係していますから、見る能力がしっかりできてくると、白い部分も増えてきます。前頭葉のほう(写真では上方部)には、あまり白いところがありません。
この部分は社会性に関係していて、いろいろなことを統合し考える部分です。この時期は、すぐ泣くばかりでいて、お母さんのご機嫌を取ったりはしません。
白い部分の材料がスフィンゴミエリンです。スフィンゴミエリンにセラミドというものがついた長い分子で、しっぽの長い部分の「/\/\/\」となっている部分が炭素と水素でできた脂です。
脂が多いということは、水に溶けて尿から排泄できる毒素以外は溜まってしまうということです。本来は、その毒素は胆汁できちんと排泄できます。しかし、LDコレステロール値がとても高かったり、逆に低すぎる人、胃腸の動きが悪くて胆汁が出せない人というのは毒素が溜まりやすくなります。
また、解毒をしても便秘などで排便できない場合には、胆汁で排出したものが再吸収されてしまい毒素が溜まりやすくなります。また、キレート後に毒素がしっかり排泄できないと、再び身体を巡って、脳のスフィンゴミエリンに溜まってしまう場合もあります。
恐怖麻痺反射
母体のストレスと恐怖麻痺反射
恐怖麻痺反射は、受精して5週目から12週目くらいのときに起こる反射です。受精後5週目は2㎜くらいの大きさのとき。この頃は妊娠したかどうかわからない、ぎりぎり妊娠反応の検査で出るくらいの時期です。12週目(3ヶ月)頃には6㎝くらいになります。5週目頃は、ダンゴムシよりも小さく身体をギュッと丸めています。このときにお母さんがストレスを感じたらどうなるしょうか。
例えば、DVを受けていたり、金銭的な問題があるといった外的なストレス。貧血や低血糖、副腎疲労が強いなどのストレスがあったとしても、赤ちゃんはそこから逃げられません。外からどんどんアドレナリンが来て、ここは危険だというサインだけが入ってきます。そこで、どうやって身体を守るかというと、ダンゴムシと同じく、身体をギュッと丸めて少しでも生き延びようとするのです。
【母体のストレス】
貧血、低血糖、カフェイン、ニコチン、痛み、炎症、怪我、家庭環境、社会環境など
母体のストレスが赤ちゃんにダイレクトに関わってくるので、お母さんがずっと交感神経刺激状態で、アドレナリンがどんどん出ている状態というのは良くありません。昔の言い伝えで、妊婦に火事を見せるなというのがあります。火事を見て何か起こるわけではありませんが、アドレナリンは出ます。ですから、妊婦さんにはそういった怖いものは見せてはいけないのですし、夫婦喧嘩もできるだけしない方がいいわけです。
アドレナリンが出る状態というのは、貧血、鉄欠乏、低血糖を起こしている状態。甘い物が欲しくなるとき、カフェイン、ニコチン。痛みが強い。炎症があるとき。怪我をしたとき。また、家庭環境からの影響もとても大きく、旦那さんが協力的でない、暴力をふるう、姑だけでなく実母ともうまくいかないときなどです。これは家族との相性が悪くてもそこから逃げられないからですが、一方、一人暮らしした場合には金銭的に生活が大変になると、この場合もストレスになります。また、妊娠していると会社の理解が得られないなどの社会的な環境も関わってきますので、これらがすべて、母体のストレスとなります。
お母さんのアドレナリンは、当然、赤ちゃんの身体の中に入っていきます。このアドレナリンは、外の世界は危ないよと教えることになるので、赤ちゃんは生まれた後に自分で自分を守ることへとつながっていきます。まったりした子が生まれてしまうと、周りのオオカミが平気で手を出してしまいますから、ある程度怯えやすい子どもにしたほうが、生き残り戦略としては有利になります。ただし問題になるのは、ストレスがずっとある場合です。この場合は、反射が残存してしまいます。ストレスがあるたびに、背中にグッと力を入れて叩かれても殴られてもいいように、身体をギュッと丸く小さくして耐えます。ダンゴムシそのものです。
背中を固めて身動きができない状態、これがフリーズです。フリーズすると自分は助かるらしいと身体が覚えていきます。ただ、逃げ場もなく、戦う相手もいない胎児のときにはこれで全然構いません。しかし、怖いことがあったら背中を丸めれば大丈夫…というのを、生まれてからずっと繰り返して大人になった場合、怖いことがあると固まり、声が出ず、動けなくなります。
家でははしゃぎ回るけれど、面接のときや、親や友達の前で話せなくなってしまうことを場面緘黙といいます。これがとても強く出る場合には精神科で安定剤が出されることもあります。つまり、少しのアドレナリンでこの反射が出てくる。逃げるとか殴るとかではなくて、これが一番効率がいい…と、今までの経験で覚えているということになります。
もう少し動ける場合は、泣き叫んでその場で動かない子がいますが、これも恐怖麻痺反射のバリエーションの一つです。いつもアドレナリンにさらされてる中、お腹の中で赤ちゃんが成長してくると、副腎ができて自分でもアドレナリンやコルチゾールを出すようになります。つまり、生まれる前からずっと副腎疲労なのです。
ですから、生まれてからどんなにかわいがったとしてもこれから抜けるのが難しく、すごく過敏な、すぐに泣いてしまう赤ちゃんになります。副腎疲労になっているので、当然、血糖値の維持もできないため、ミルクを少し飲んでは泣き、少し飲んでは泣き・・・という子どもになるのです。
筋肉と筋膜と恐怖麻痺反射
焼くとパリッとするソーセージ。真ん中に肉があって、その周りを包んでいる膜があります。筋膜というのは、このソーセージの膜に似ています。膜がパンパンに張っていると、中の肉がフワフワでも、筋肉全体としては張った状態になります。この膜が硬ければ、動きが悪くなりますし、柔らかければ筋肉自体も柔らかくなります。
人間にも筋膜があります。筋肉の周りを包んでいる膜です。この膜は一つひとつではバラバラな筋肉と筋肉をつなげていて、この膜があることで1本のラインとして身体の中に存在しています。足の指ー足の裏ーかかとーふくらはぎー膝ー太ももの裏ー尻尾の骨ー背中ー首の後ろー頭ーおでこ、という具合に足先からおでこまでがつながって1本のラインができます。これを「スーパーフィシャル・バック・ライン」というのですが、実は、これと恐怖麻痺反射には関係があります。
このラインを使って、真っ直ぐに立ちます。後ろ側の筋肉にはテンションが必要で、それを作るためにはある程度の筋肉量とリラックスが必要となります。この筋肉はしっかりと伸びていないといけないのですが、いつもガチガチに硬いと筋肉は伸びなくなります。赤ちゃんはもともと丸まっていますが、恐怖麻痺反射があると、さらに丸まってしまいます。この筋肉がしっかり伸びないと、最終的に立つことができません。だから、この反射を統合して発達させることがすごく大事になってきます。
赤ちゃんの発達と恐怖麻痺反射
赤ちゃんは発達してくると、背中を伸ばせるようになります。そして、首が上げられ、ハイハイができるようになります。背中の緊張が取れて前を見ることができるようになると、自然に”見る”ということが発達します。ずっと緊張してる人は眼の緊張が続くため、物を見ることができない、ピントが合わない、本を読むことができないことにもつながっていきます。
背中のラインの上のほうは首のところにもつながっています。首の奥のほうには細かい筋肉があって、その筋肉一つひとつの中に伸張受容器が多くあります。伸張受容器は、伸びた/縮んだというのを受け止める受容器で、筋紡錘がその仕事をしています。首の筋肉では、筋肉1g当たり36個もあり、とても感覚が過敏です。ここに手を当てて目玉を動かすと、筋肉が動くのがわかります。つまり、目の動きと首の後ろの筋肉は連動しているということです。
疲れ目に効くツボは頭のてっぺんや首の後ろ、肩のところにあります。頭のてっぺん部分はスーパー・フィシャル・バックラインが通るところですから、ここの筋肉を緩めると目の動きも楽になってきます。つまり、首が凝っていると目が痛くなる、疲れ目だと首が凝るというのは、この連動から起こるのです。
それは、なぜか?例えば、首を使わずに目だけを使って、視界の端のほうを見ようとしても、視野の範囲は限られます。一方、目の動きとともに、自動的に首もついていくと視野が広がります。敵が来ているのに、目だけではきちんと見ることができませんから、首も自動的に動くようにできている。これも反射です。
つまり、恐怖麻痺反射があると敵を見つけられない、首が動かせない、目が動かせない、人と目を合わせることもできなくなっていきます。
ストレートネックと眼球運動の低下
首がグーッと前に曲がってる状態をストレートネックといいます。本来、首は後ろ向きに反っているはずですが、首が真っ直ぐということは、後頭下筋(前述の目の動きと連動している筋肉)の可動性が低下して動きが悪くなっていきます。
つまり、眼球運動の協調性が低下します。下を向いて広いところを見れないままにしておくと、筋肉が固まってしまったり、廃用性萎縮が起こっていきます。この姿勢は緊張したときの姿勢でもあるので、ずっとスマホを見ていると身体はどんどん緊張していき、怖いことが起こっている…と身体が反応してしまいます。
ですから、首がきちんと伸びない人、背中が伸ばせない人というのは、結果的に眼球運動の協調性が低下し、視力の発達が遅れに繋がっていきます。いつも下だけ見ていると、目からの距離が短いところばかりを見ていて遠くが見れないであったり、目の動きが悪い=眼球運動が悪いために立体視ができなくなります。立体視ができなければ距離感がつかめない。
さらに、3Dで人の顔が覚えられないということにつながってきます。これを相貌失認といいます。3Dが見れないということは距離感がつかめないため、物にぶつかるだけでなく、人と視線を合わせられなくなったりします。
また、眼球運動が悪いため、動体視力が育ちません。ということは、キャッチボールやドッジボールができなかったり、極端な場合、動いてる先生が見えなかったりするため、先生を目で追いかけるよりも手元で落書きしていたほうが楽となってしまいます。
勉強をするとき、目を寄せて真ん中を見ています。ですから、目を寄せる力がない、首の後ろが凝ってる人は、がんばって無理に目を寄せているから目が疲れてしまい。恐怖麻痺反射が残っている人は勉強ができなくなっていきます。
不定愁訴の多い人、文句が非常に多い人、怖がるタイプの人、頭痛とか不眠とか交感神経優位な人は、目が真ん中に寄らない場合が多くあります。こういうタイプは、とても些細なことででも瞬時に副腎疲労を起こしてしまい、ものすごい身体の不調が出てしまうのです。
筋緊張と原始反射の残存
猫はどこから落としても、たいてい怪我をしません。落ちていくときに、いろいろなものを一瞬で見るという目への情報と、高さ・位置・速度の変化という内耳への情報が入ります。この情報を合わせて、反射で首を動かし、この反射で背骨を捻り、最終的に着地ができます。
このとき首と連動して背中曲げているのですが、これはアドレナリンで起こした反射です。この反射は必要なときにだけ起こることであって、ずっとこれがあるのは問題です。これが原始反射の残存です。猫は頑張って運動して体の連動が起きているのではなく、きちんと発達して反射が起こるからこれができるのです。
背中を丸めて身体を固めて首をすくめるのは、怖いことがあったときの反射です。普段からその姿勢になっているということは、いつもいつも怖いということ。ビックリして怖いと、首と頭の筋肉が収縮して固まるーこれが反射です。この反射がずっと起こっていると、常に緊張した姿勢のままになります。
首をすくめる=首と頭の筋の収縮でした。これは恐怖反応です。収縮という動き自体が恐怖反応であり、恐怖感があるとこの収縮が起こります。つまり、怖いときにはこの首の動きになると覚えているため、肩が凝ったとき、脳では「いつもと同じ、怖いことが起こっているな」と反応します。そうすると、肩が凝っているだけでコルチゾールが出ます。コルチゾールがずっと出ているので、アドレナリンも出てきます。それで、いつも怒りやすい、いつも副腎疲労を起こす、いつも疲れている人になるのです。
例えば、前屈みになると、脳が前屈みになったという信号を筋肉から受け取ります。すると、このパターンは怖いことがあったときだから、今は怖いんだと思います。それなら準備しなければと思い、コルチゾールをいっぱい出すのです。トラウマのある人は、怖いことを経験したときの筋肉の動きを覚えています。その動きが再現されると、怖い気持ちになります。これがフラッシュバックです。
フラッシュバックとかトラウマがある場合には、大きな刺激ではなくゆっくり手で触れることで筋肉が緩んでリラックスします。その状態で今まで辛かったことを話してもらうと、今度はその嫌だった記憶と体のリラックスがリンクするため、思い出してもパニックを起こさなくなってきます。
この応用として、幼稚園や保育園で嫌な思いをした子どもへの接し方があります。お母さんに、「今日こんなことがあった」と訴えにきたとき、子どもの身体が緊張して、手も湿気っていたら、まず抱っこをしてあげます。お母さんに優しく抱っこされて、お腹や背中が触れた状態で筋肉を緩めてあげながら、嫌なことを全部話させます。そうすると、今日の嫌な記憶と、お母さんに抱っこされて温かいというものがリンクするので、思い出してもパニックになりません。つまり、筋肉が準備しなくてすみますので、恐怖麻痺反射が起こらなくなってきます。
ところが、子どもが訴えてきたときに、「あっち行ってなさい」「うるさい」「どっか行け」と言うと、この恐怖麻痺反射がドンドン強くなっていきます。そうすると抜けなくなってくるので、いつ敵が来てもいいように防御している状態になります。
スーパーフィシャル・バック・ラインの筋緊張
わたし達の頭もスーパーフィシャル・バック・ラインの一連の筋肉に囲まれているので、背中が緊張していると怖い思いをする、いつもストレスが溜まっている状態になります。頭を触ってみたときに、頭の皮が揺れずに固まっている人の場合には、恐怖麻痺反射が起こりやすくなっているかもしれません。
こういう時は、頭のてっぺんを緩めるのもよいですが、おでこと眉毛の上のところを触ってゆっくり緩めてあげる、首の後ろにゆっくり手を当てるといったことでリラックスできます。
このラインの延長にある太ももの後ろ、ハムストリングの部分がいつも緊張状態にあると、ハムストリングの低下が起こります。そして、メンタルの低下が起こる。
太ももの内側から外側が落ちているタイプの人、ずっと座りっぱなしの仕事をしている人、受験生はメンタルが危うくなってくる可能性があります。
そして、このハムストリングの部分の筋肉はとても大きいので、ここがずっと緊張して固定されていると脳にあまり刺激が行かないということになります。
背中の筋肉、いわゆる背筋のところは、本来であれば柔らかくヒレ肉のようなものが2本あるはずなのですが、ここをずっと緊張させていると2本の千歳飴のようになっていきます。
運動しても運動しても筋肉つかなくて、千歳飴が2本ある人は、恐怖麻痺反射の残存がある可能性があります。そして、そういう人は、すぐに怒ったり、泣いたり、喚いたりする傾向が強いので、クレーマーにもなりやすく、注意が必要です。
この連続した筋肉の一番下のところは、足の裏にあります。ここに筋緊張があると、足裏の前後からぎゅっと力が入って図のような屈み足になります。これは元々赤ちゃんの反射の一部なのですが、サンダルをはくと疲れるという人はこの反射が残っている可能性があります。
こういう人はいつも足を固めているので足の指が広がらない、はがすとみかんの房のように指の跡がつく“みかん足”になってきます。これはしっかりとマッサージをしてあげる必要があります。
この2枚の写真は、ある兄妹の足の写真です。左写真の足はそっくりですが、足指をぎゅっと握っている右の写真には違いがあることがわかります。これは筋の緊張、足の使い方に違いがあることを示しています。
そして、“根拠のない自信”をもっているのは、足が曲げられるほうの子ども。根拠のない自信があるなら、“根拠のない不安”も存在します。足の指をしっかり動かせない子には恐怖麻痺反射が残っているかもしれません。
その場合は、少し背中を触られただけでドキドキしたり、誰かに声をかけられば怒られると思ったり、お母さんがいなくなると捨てられたという発想になる。日常的にこれが続くと、社会生活が送れなくなっていってしまいます。
足の裏の筋肉が全体に縮むのでなく、アンバランスに縮むこともあります。親指側がぎゅっと縮んだ場合はハイアーチと言って無駄に甲高になり、偽物の土踏まずができます。逆に、小指側がぎゅっと縮んだ場合は親指側が上がるので、靴のかかとが減ってきます。そして、転びやすくなったり、かかとが痛くなる「足底腱鞘炎」になったりします。
「足底筋膜炎」の時、足の内部では腱がぎゅっと引っ張られて続けて、その結果として膜がはがれ、骨芽細胞が増え、余計な骨ができ上がってきます。この治し方は足裏マッサージだといわれていますが、全体の筋肉は1本の線でつながっているので、背中を撫でたり首を撫でたり、場合によってはおでこの上を撫でたりすると予防になってきます。さらには、痛みの原因となっている大元の緊張を緩めてあげる、緊張の原因を探して取り除いていってあげるということも必要になります。
赤ちゃんの恐怖麻痺反射がずっと残っていると、背中の筋肉にずっと力を入れている状態になるので、筋肉が育たず前かがみになります。また、背中の皮膚が過敏になるか、逆にわざと鈍くして感覚が入らないようにするかの両極端になります。
背中をきちんと反らせるようになると、背中の筋肉も骨も発達します。そして、恐怖麻痺反射が統合されてくると、その結果として赤丸の部分に凹みができてきます。もし大きくなっても反り腰だったり、猫背だったり、ストレートネックだったりといった状態がある場合は、恐怖麻痺反射が残っているという証拠になります。
このスーパーフィシャル・バック・ラインは、何千年も前に中国でいわれていた膀胱経絡、太陽膀経絡といわれていたラインと同じです。ツボもほとんどが筋肉の付着部だったりトリガーポイントであることが多く、ここを刺激してあげるということは、筋紡錘とか腱紡錘への刺激になり、筋肉を育ててあげることにつながる。
栄養だけ入れても治らない人は、ヨガやピラティスをしたり、場合によっては筋トレをしたり、鍼灸などがすごく効いてくるのはこういったことと関連しています。
この話の延長で、足の指回しをすることで、めまいや頭痛、ひざ痛が治ることがあります。こういったことが起こる理由は、足の指を回すことでまず筋緊張が抜け、そこから筋膜の延長をずっと通って、他の部位の緊張も抜けるからです。
そして、筋緊張が抜けるだけで、副腎疲労が楽になり、例えばリバースT3を作らなくて済むようになる。その結果、甲状腺機能が上がる、間接的にコレステロールが下がってくる可能性があります。筋肉も増えてくるかもしれません。お腹も動いてきて胃酸が出てくると、ミネラル吸収もよくなるということも期待できます。
恐怖麻痺反射の残存と対処方法
恐怖麻痺反射が残っていると、先のような身体的特徴だけでなく、以下のようなことも起こってきます。
- ストレス耐性が低い
- 肌や音、視覚的な変化などの感覚過敏
- 状況がかわったり、驚くようなことが嫌い
- 柔軟に対応できない
- 疲れやすい
- すぐに息をつめる(止める)
- 人前で恥をかくような状況が嫌い
- 愛情を受け取るのも表現するのも苦手
- 自己否定が強い
- 極度な恐れ、被害的な妄想
- 新しい活動を嫌う
特に誰かと比較されたり、優劣が出るような活動 - かんしゃくを起こす
- ストレス状況で固まる(考えることと動くことが同時にできない)
では、このような人への対応、例えばカウンセリングをする際にはどのようにしたらいいでしょうか。
以下が大切なポイントになります。
- いきなり前に立たない
横に座る、少し斜めに座る、2人の間にお花やぬいぐるみなどを置くなどの工夫をする - いきなり目を合わせない
もともと目の強調運動が悪いので目を合わせられない、これまでの合わせた経験がない - 人前で恥をかかせない、失敗させない
できるだけ簡単なことから始めて、成功体験を積ませる、その人について笑わない - 予定は前もって知らせておく
心の準備ができるようにしてあげるだけで、緊張が和らぐ - 居心地のいい部屋をつくって、くつろげるようにする
空間的なガードをつくる、個室を用意する - 集会では、席を後ろやわきのほうにする
一番前はプレッシャーが強い - 何か提案するときに、“No”の選択肢を入れる
選択肢を自分で作ることができないので、提案を断ることのできる選択肢を入れる - 静かにやさしく話しかける
できるだけ静かに、そーっと話しかけることが大事、ドアをノックするだけでも飛び上がる - 騒音を避ける
騒音がひどいときには、イヤーマフやノイズキャンセリングのヘッドホンをつける
モロー反射
モロー反射とは
恐怖麻痺反射は、スーパーフィシャル・バック・ラインと呼ばれる背中側の筋肉が緊張する、原始的だけれどもとても大切な反射でした。この反対側、つまりお腹側にあるのが「スーパーフィシャル・フロント・ライン」と呼ばれる筋肉で、ここで起きる緊張を「モロー反射」と呼びます。
赤ちゃんが寝ているときにドアをバタンと閉めると、ビクビクッとするーあれがモロー反射です。一回手足をバッと広げて、そのあとギュッと抱きかかえる感じです。これは、一回緊張してバッと開いたあとに、前のほうを緊張させてギューッと固める反射です。これには腹筋もはいっています。
特に小さい子に多いのですが、お腹をさわるとガチガチな子どもがいます。ガチガチなので腹筋があるように感じるのですが、背中の千歳飴のように緊張して固くなっているだけで、大抵、身体全体はグニャグニャです。こういった子は、割と小さめで、あまりミルクを飲まない、偏食がある、お腹をすぐに壊しやすい、夜泣きする、よく疳の虫を起こすといった傾向があります。
スーパーフィシャル・フロント・ラインの仲間で、首のところにある「胸鎖乳突筋」という筋肉があります。ここがいつも緊張していると、筋肉が発達せず短いままなので、顎が引っ張られて口が開くようになる、口がきちんと閉まらない、口の周りの筋肉が落ちてくるということが起こります。
そうすると、噛む力もなくなり、話し方がもぞもぞする、口呼吸になる、上咽頭炎を起こすといったことになり、「アデノイド顔貌」といって横から見ると首が前傾した顎ラインのない顔立ちになります。
そして、この過緊張が続くと、呼吸が苦しくなり、息をするたびに方が肩が上がることになります。こういう人は、胸の前の筋肉もガチガチになっているので、胸郭が開かない。だから呼吸補助筋を使って呼吸をする。さらに、肺がふくらまないから副交感神経に信号が入らないし、横隔膜も働かないので胃腸の動きも落ちてきます。
モロー反射が残存すると起こること
モロー反射が成長とともに統合されていかないと、突然の音や光などの刺激によって感覚過敏が起こります。いつもびっくりしてしまうので、嫌がって泣いたり暴れたり、新しい状況や活動への対応も難しくなる。
少し何かあるだけでびっくりして手足がびくっと動いてしまうので、隣にいる人を叩いてしまったりすることもあります。これは反射なので止めることができません。勝手に身体が動くので、思考や注意もそれやすく、一つのことを集中して考えることができなくなります。
また、いつもビックリして交感神経優位になっているので、不安、特に予期不安、「こんなことが起こったらどうしよう」ということで不安になっています。いつも怯えているので感情的になったりしますし、社会的にも未熟で、社会に溶け込むことができません。
さらに、口の中に入ってくる違和感をすごく嫌います。偏食が多くなるし、食べるのも嫌だし、目で見て怖がったりもするので食わず嫌いも多い。モロー反射が統合されている子は、食べてからそれが好きか嫌いかをいいますが、統合されれていない子の場合は見ただけで泣いてしまう、触っているだけでもいやということが起こります。
ハイパーアクティビィティ、動きすぎる傾向もあります。モロー反射自体で動きが激しいということもありますし、背中の筋肉もお腹側の筋肉もいつも緊張して発達していないために、じっとしていられない、動いているしかない。元気に見えますが、実は止まるだけの体力がありません。けれども、身体からではなく、チェックリストから診断するADHDやアスペルガーなどの検査では、当てはまると診断されてしまうこともあります。これに低血糖、鉄欠乏、カフェイン摂取が加わるとその可能性はますます高くなります。
いつもおびえているので、副腎疲労にもなります。その結果、コルチゾールが足りなくなって、アレルギーを発症する。ぜんそくや慢性的な病気をもっている子も多い。そうなると、お母さんも過緊張から神経質になるので、お互いに緊張させ合ってしまいます。こんな時は、お母さんがゆったりすると、調子がよくなることがあります。
その他の原始反射
- 緊張性迷路反射
赤ちゃんの首を後ろに向けると手足がバッと広がる、前に倒すとギュッと前に曲がるという反射です。これが残っていると、頭を動かしただけで姿勢が保てなくなる。三半規管がうまく働かないため、いつもふらふらしていたり、バランス感覚が悪くてでんぐり返しができなかったり、ボール投げができなかったり、姿勢が悪かったり、保てなかったりします。この反射だけが残っているということはないので、複合的な影響も出てきます。机に座って勉強できない、気が付くと頬杖をついている、突っ伏しているなどということもあります。この反射が残っているスポーツ選手の場合は、本番にパフォーマンスを発揮できなくなります。 - 吸啜(きゅうてつ)反射
赤ちゃんの口に指を入れるとチュッチュ吸う、ほっぺをツンツンとするとそっちを向くといった反応です。これは、おっぱいを自分で飲めるようにするための反射で、生まれてから3、4ヶ月目でなくなっていきます。これが残っていると口の周りに感覚過敏があって、口紅がぬれないなどということも起こります。そのほか、舌が前に突き出ていたり、食べるのが苦手ですぐこぼしたりなどします。口の周りの筋肉ができていない、顎が発達しない、歯が全部生え揃わなくて矯正が必要になる、ホルモンバランスが悪いといったことも起こります。 - 脊椎ガラント反射
背骨の横を触るとお尻がピュッとそちらに向くという反応です。これは、狭いところで背中に刺激が当たってお尻が動くと産道を下りてこられるので、そのためにある反射です。背中を触ると、悲鳴を上げて「きゃあ」という人はこれが残っている状態です。背中の感覚がすごく過敏なので、背もたれのあるイスに座れない、背中のタグが当たるのをすごく嫌がるなどがあるので、落ち着いて勉強できないことがあります。 - 対称性筋緊張性頚反射
腹ばいのところからハイハイするまでの途中の反射です。頭を上げると手が伸びる、頭を下げるとお尻が上がる、ハイハイの少し前のお尻を上げてゆらゆら揺れているときの動きはこの反射です。これがきちんとできるようになると、目の運動がだいぶできるようになってきます。上を向いたり下を向いたりをすごくしますので、いろんな距離が見られるようになるというわけです。 - 非対称性緊張性反射
顔を向けると、向けた側の手を曲げて反対側を伸ばす、顔を右側に乗せると左側の手足が伸びるといった、右と左を作っていく反射です。これができるようになると、それまで両手で何かを持つ、両手で同じことをするといったことが多かったことものが、右手と左手の動きをバラバラに動かすことができるようになります。 - 足底反射
刺激に対して足指をぎゅっと握ってしまう、もしくは反対にパッと開いてしまうといった足の反射です。握ってしまう反射が残っていると、毎日足の指で鉛筆を握ったまま歩いているようなものなのでとても疲れます。逆に、バビンスキー反射のように足の裏に嫌なものが当たると足の指が開いてしまう反射が残ると、濡れたプールの床を歩けないということも起こります。
最後に
これまでの一連の情報は、筋膜とか腱をつなげる『アナトミー・トレイン』という本に載っています。また、原始反射の本で一番わかりやすいのは、『人間脳を育てる』という本。それぞれは全く別の分野の本ですが、理解できてくるとそのつながりが感動的にわかると思います。
そして、ここに、副腎疲労や栄養、筋トレ、お灸や鍼などといった情報を入れていくと、もっとグングン理解があがると思います。
栄養療法のカウンセリングというのは、「栄養で治す」のではなく、「栄養を武器にする」もの。ですから、それにだけこだわらないようにしてください。
最終目的は、元気になって幸せになることです。そのためにこういった情報が、問診や指針で使えるといいなと思っています。