この記事によれば、GLP-1受容体作動薬(セマグルチドなど)の使用はここ数年で一般人口で700%増加し、糖尿病患者の4人に1人以上が処方を受けています。
GLP-1薬は血糖コントロールだけでなく、NF-κB抑制やTNFα・IL-6低下など、強い抗炎症作用を持ち、心血管疾患や認知症、炎症性腸疾患への応用も期待されています。
一方で、強い食欲抑制により「ほとんど食べない」「お腹がすいたときだけ高カロリージャンクを食べる」といった“無計画な摂食制限”が起こりやすく、その結果、食物繊維・タンパク質・ビタミン・ミネラルが不足し、腸内細菌叢の多様性低下とディスバイオシス(腸内環境の乱れ)を招く可能性が指摘されています。
Faecalibacterium prausnitzii、Bifidobacterium、Akkermansia、Lactobacillusといったキーストーン細菌や、酪酸などの短鎖脂肪酸が減少すると、腸粘膜バリアが弱まり、リーキーガットや慢性炎症、「インフラメイジング」(炎症性老化)につながるリスクがあります。
Doctors data社のマルコウスキー博士は、GLP-1使用患者では便検査(GI360など)で多様性・ディスバイオシス指数・キーストーン細菌・短鎖脂肪酸をモニターし、食物繊維・発酵食品・ポリフェノールを意識した栄養介入を同時に行うべきだと提案しています。
僕はGLP-1薬を「悪者」とは考えていません。むしろ、うまく使えば、血糖・体重・炎症を整える強力なツールになり得ます。ただし大事なのは、「薬で食欲を消す」ことと「体が必要とする栄養を満たす」ことは、まったく別物だということです。
問題の本質はGLP-1薬ではなく、「食事量が減るのに、質を上げていないこと」にあります。根本原因は、
・そもそもの食の質が低い(超加工食品中心)
・食欲が落ちたことで、さらに「楽でおいしいもの」だけを選びがち
・腸内細菌のことを誰も教えてくれない
この3つが重なって、ディスバイオシスに向かっていく、という構図です。
例えば同じGLP-1を使っていても、
– 少量でも、よく噛んで、野菜・豆・海藻・発酵食品をしっかり摂っている人
– 朝はコーヒーだけ、夕方になってフライドチキンとアイスで済ませる人
では、腸内環境も、将来の健康もまったく違います。
どんな薬を使うかよりも、「その人が毎日何を口にしているか」の方がはるかに重要です。
では、どうすればいいか。
ポイントは「食事を薬にする」という発想で、“少量高密度食”を組み立てることです。
1. 量ではなく“密度”を上げる
食べる回数が減るほど、1回の食事に栄養を詰め込む必要があります。
・毎食に「たんぱく源+たっぷり野菜+良質な脂」をセットにする
・白い主食だけで終わらせない(雑穀・オーツ・豆類を混ぜる)
2. 腸内細菌への“差し入れ”を忘れない
自分のためだけでなく、「お腹の中の住民」のために食べるイメージです。
・水溶性食物繊維:玉ねぎ、長ねぎ、ゴボウ、オクラ、海藻、オーツ、豆
・レジスタントスターチ:冷ましたご飯やじゃがいも、豆類
・発酵食品:味噌、納豆、キムチ、ヨーグルト、ぬか漬け
3. 個体差が重要
GLP-1で便秘が悪化する人、逆に下痢しやすくなる人もいます。同じ「食物繊維」でも、合う量や種類は人によって違うので、
・少量から増やす
・お腹の張り・便の状態を毎日メモする
といったフィードバックが不可欠です。
4. 自然のチカラを信じる
短鎖脂肪酸のような抗炎症物質は、サプリではなく、もともと僕たちの腸内細菌が作る“自然の薬”です。GLP-1で食欲を調整しつつ、腸内細菌には食物繊維や発酵食品という“エサ”を届けてあげる。この二刀流こそ、薬と自然のチカラを両立させる道だと思います。
GLP-1を使うかやめるか、自己判断で振り回されるのではなく、「どういう食事なら、この薬のメリットを最大化してデメリットを減らせるか」を、一緒に考えてくれる医師・栄養の専門家と組むことが理想ですね。

