ビタミンCほど多くの人に知られているのに、全く理解されていないビタミンはないでしょう。ライナス・ポーリング博士も、ライナス・ポーリングの弟子だった僕の師匠も、僕もみんなビタミンCの不思議さに魅せられて分子栄養学の世界に入ったのです。
1. ビタミンCをサプリで摂る理由
「ビタミンC含有菓子の品質表示ガイドライン」によると、レモン1個はビタミンCを20mg含むとして計算するそうです。添加したビタミンCの量をレモン果実の個数により表示することが消費者にとって商品選択のための比較の目安となります。
「レモン○○個分のビタミンC配合!」と書いてあるパッケージがよくありますね。それに習って、いろいろな場面でのビタミンCをレモンの個数で表してみたいと思います。
厚生労働省の決めた最低摂取基準は1日あたり100mgです。ビタミンCの量をレモン果実の個数により表示するとこうなります。
1.1 ビタミンCをサプリで摂ることは無駄なのか?
1日60mgのビタミンCを摂ると尿中からあふれ出てくるそうです。(Levine et al., 2001)
人間のビタミンCのキャパシティが60mgしかなければ、ビタミンCをどんなにいれても60mg以外の部分はでていくということになる。巷でよく言われている「どれほど摂っても、身体の外に出て行くから、摂るだけ無駄」という発想です。
これは本当に正しいのでしょうか?人間の身体はレモンのはいる量がきまったコップみたいな構造をしているのでしょうか?下記は全く別の機関が行った実験です。
ビタミンCを1000mg、2000mgとったときの尿中にでてきたビタミンCを測定したものです。たしかに2000mgとった時のほうが多いが、倍の量出ているわけではありません。では、その差はどこにいってしまったのでしょうか?体内に残っているとしか思えません。
1.2 ビタミンCは体内で偏って存在する
やはり、この仮説は間違っているようです。人間の身体はそんなに単純ではない。では、実際に体のどこにビタミンCはたまっているのか?人間の身体を解剖してみることはできませんが、色素をつけたビタミンCをモルモットに飲ませてみた研究者がいます。
(Chatterjeeら、1975年)
モルモットにビタミンCを飲ませて6日後に解剖したものです。これを見ると「ビタミンCは、特に特定の臓器に集まり易い傾向がある」事がおわかり頂けると思います。
水晶体にビタミンCが集まっているのは、水晶体がビタミンCを多く必要とする臓器だという事を示唆しています。水晶体は、太陽光などによる活性酸素の影響を受けやすく、何十年にもわたる影響の結果が白内障です。実際、ビタミンCを多くとる人には白内障が少ないと言われています。
ある栄養素が特定の疾患に有効かどうかは、栄養素が疾患の存在する臓器に存在するかどうかで決まります。つまり、栄養素が集まってきている臓器=その栄養素をたくさん消費する臓器=その栄養素が無いと上手く働かない臓器といえます。
血中を1とすると、脳は血液中の20倍、白血球は80倍、副腎には150倍の濃度のビタミンCが含まれています。ビタミンCが多く含まれる臓器はそれだけビタミンCが必要であることを示しています。ですからビタミンC不足になると、脳の機能が低下する事が予想されます。
また、白血球中のビタミンC濃度が高いのも有名です。ビタミンCは白血球の遊走性を高め、免疫力をあげる効果があります。体内でビタミンC濃度が一番高いのは副腎(血中濃度の150倍)です。「ビタミンCは副腎ホルモンの産生に不可欠であり、ビタミンCの不足は副腎機能の低下をひき起こす」ことが類推できます。
ストレスなどで副腎を酷使しているときや、感染があるときはビタミンCの需要は高まっています。だから、そのような時は特に十分量のビタミンCを補給して身体を満たしてあげることが必要です。また、さらに十分量のビタミンCをとることで、副腎の機能を上げたり、感染症の治療に使ったりする事ができます。では、どの位の量をとればベネフィットが得られるのでしょうか。
例えば、Gortonらによる風邪にたいする二重盲検試験(1999)では、テストグループでは平常時から1日3回、1回1000mgのビタミンCを摂取してもらい、風邪の症状がでたら速やかに、1時間おきに6回1000mgのの摂取、その後は平常時と同じ量を続けるというトライアルを行いました。
その結果、プラセボグループに比べて、85%もの症状減という結果が得られました。その他、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、コクサツキーウイルス、狂犬病ウイルスなどもビタミンC10gの経口摂取で不活化が実証されています。
ゴリラは、新鮮な植物を主に摂取しており、量的には一日に約4.5gのビタミンCに相当する。農業が発達する以前は、人も同じ物を食べて生活していた。だからビタミンCの適正摂取量について、一日100gだ、いや200mgだと論議するのではなく1gなのか、2gなのかを論議すべきである
ライナスポーリング
では、どのように、ビタミンCをとるべきでしょうか。上記の様に、積極的なベネフィットを得るためには、ビタミンCはg単位で摂るのが正しいといえます。では、どのようにビタミンCを摂るのが理想的でしょうか。
1.3 果物で摂る方法
天然の果物では100gあたりのビタミンC含有量はアセロラが圧倒的に多いです。アセロラは、カリブ諸島特産の果物で、成熟果実のビタミンCの含有量は、 1800mgにもなります。これは、他の果物に比べて圧倒的な量です。でも、これを毎日食べるのは、あまり現実的ではないかもしれません。
1.4 サプリメントで摂る方法
1000mgのサプリメントは、レモン50個分のビタミンCに相当します。サプリメントや点滴と言うと自然なビタミンというより、人工のビタミン剤という薬を使っているというイメージがあります。ビタミンとビタミン剤は似ているようで、全く違います。ビタミンは天然物です。何百万年前からも存在しているので、その進化をたどってきた人間の体に受け皿が出来ています。しかし、ビタミン剤は薬です。天然にあるものを模倣して、合成したものです。
天然物は特許が取れません。製薬メーカーは特許取得のために、故意に天然物とは少しちがった構造式の物を作り、それで特許を取得する事で利益を得てきました。そのため、売れている多くの薬は合成品です。ですから、ビタミン剤を含むほとんどの薬は、体内では異物として扱われ、排除されます。
しかし、ビタミンCは違います。天然物と合成物で構造式が全く同じなのです。ですから、世界中のビタミンCはほぼ100%工場で作られています。アセロラやローズヒップから抽出した天然物もありますが、製造コストがかかりすぎて、天然100%のビタミンCは事実上不可能だと思います。ビタミンCというのは、例え人工の物でも非常に自然なものといえます。しかし、だからといって、ビタミンCを多く摂ることに対して副作用もあることは覚えておかなくてはなりません。
1-5ビタミンCの至適量は状況や目的によって変わる
ビタミンCの最適な量は、状況や目的によって変わります。怪我を治りやすくする、コラーゲンを作る(100mgで大丈夫)、壊血病を予防する、風邪の予防ではグラム単位で必要です。副腎疲労は風邪と同じように、数十g摂るといいです。ビタミンCを点滴すると、てきめんにいいです。
1.6ビタミンCサプリメントは頻回摂取が有効
サプリメントを摂るなら、1gずつ1時間ごとの頻回摂取が有効です。ビタミンCは一度に大量に摂ると、吸収が落ちます。60mgだと100%、100mgだと90%、1000㎎だと75%、2000㎎だと44%と、どんどん減っていきます。ですから、1000mgが最もコスパが良いですね。
30分で血中濃度は上がりますが、4時間で下がります。4時間おきだと血中濃度が上がったり下がったり、血中濃度が安定しません。ですから、1時間おきに、血中濃度が下がっていないうちに次々入れていくと、どんどん上がっていきます。ビタミンCの効果は血中濃度に比例しますから、ビタミンCを1時間おきに摂るだけで、効果が3倍近くなります。
2. 美白のためには、どんなビタミンCをどの位摂ったらいいのですか?
最近、異業種の方との打ち合わせの機会が多いのですが、私がビタミンC学会の名刺を出すときに必ず女性に聞かれるのがこの質問です。(高濃度ビタミンC点滴療法学会の理事をやっています)
普通だったら、「○×のビタミンCを○○g位摂るといいですよ!」とか答えると思うのですが、分子栄養学を全国に広めようと考えている私としては、いい加減な話はできませんので、以下のように答えます。
「どの位の量が必要かは、人によります。美白にどのくらいビタミンCが効果的かは肌にビタミンCがどのくらい移行するかを考えるといいです。体内でビタミンC濃度が一番高い臓器は副腎です。血中の150倍の濃度のビタミンCが存在します。次に多いのは白血球です。濃度は80倍です。これから、「 風邪の予防と治療にビタミンCが効果的」であり「副腎疲労症候群の治療に最優先すべき栄養素がビタミンCである」ということがわかります。
一般に、栄養素が高濃度に存在するところほど、需要量が高く、栄養素を摂取した場合に、優先的に使用されます。だから、副腎や白血球での需要量が多い場合は、ビタミンCはそちらで優先的に使われてしまいます。肌=ビタミンCというイメージがありますが、ビタミンCの優先順位としては決して高いほうではないんですね。実際に、ビタミンCを少量サプリメントで投与した場合と、点滴で大量に投与した場合のどちらでも副腎や脳には多くのビタミンCが移行します。優先順位が高いからです。
その一方で、肝臓や腎臓などビタミンCの優先順位がやや劣る臓器では、経口摂取と点滴では全く移行度が異なります。つまり、全身にビタミンCが足りているかどうかを知るためには、優先順位の低い臓器までビタミンCが届いているかを見るのがいいと思います。優先順位の低い臓器ってなんでしょうか? それは血管内や皮膚です。
だから、全身にビタミンCが十分足りているかを知るためにはビタミンCの血中濃度を測るとよいです。高濃度ビタミンC点滴を15g点滴した後の、健常人の平均到達血中濃度は1000μg/ml前後です。そこまで血中濃度が上がらない人は、どこかの臓器でビタミンCを消費していると考えられます。同じように、肌を見れば、ビタミンCが足りているかどうかの指標になるはずなのですが、肌の場合、様々な状況を誤認させる因子があるので、何ともいえませんね・・・・」
女性「すいません、あの、結局、どのくらいとればいいんですか?」
宮澤「・・・・・」
昔から自分の話がマニアックだという事は、私も薄々気が付いていましたが、最近、初対面の人にこういう話をすると、かなり引かれるということがわかってきました。皆さんも、栄養とかサプリの話になると気が付いたら浮いている、という状況にならない様、気をつけてくださいね。
3. 風邪とビタミンC
風邪の季節に大活躍するのがビタミンCです。ビタミンCはうまく使うと、風邪に対して大変役立ちます!ここではビタミンCの使い方について、私の経験を交えてお話しします。
3.1 わたしの風邪のひきはじめのサイン
会議、講演会、診療、長時間の車の運転など、緊張を強いられる仕事の前日は、なるべく運動をしておくのが私の日課です。体力を蓄え、血液循環を良くしておくと、翌日の調子が違います。一昨日も、次の日に長距離の運転を控えていたので、空手教室に行きました。ところが、稽古をし始めたときに気がつきました。「いつもより汗をかかない・・・」
私は、春から秋ごろまではいつも空手着がびしょびしょになるほど汗をかきます。しかし、一昨日は1時間半~2時間ある稽古の中盤になっても、乾いた空手着のごわつき感が肩に残っていました。実は、これは私が風邪を引き始めの時によく感じるサインです。稽古が終わって、帰るとき急に私は喉の痛みを感じました。この冬、数百人のインフルエンザと風邪と胃腸炎の患者さんを診察しても風邪引かなかったのに・・・・・・
今週は、多忙だったためのストレスと前日の飲みすぎも原因だったのかもしれません。迷っている暇はありません。私は、家に帰るとすぐに高濃度ビタミンC25g+マルチビタミンB点滴を自分で行いました。このところ、忙しくてビタミンCサプリをサボっていたためもあるのか、点滴の効果はあまり実感できませんでした。通常は点滴をすると非常にリラックスして眠くなるのですが。そこで、私はビタミンC頻回摂取法を試してみることにしました。
3.2 ビタミンC頻回摂取法
ビタミンCの風邪に対する効果には多くのエビデンスがあります。Gortonらによる風邪にたいする二重盲検試験(1999)では、テストグループでは平常時から1日3回、1回1000mgのビタミンCを摂取してもらい、風邪の症状がでたら速やかに1時間おきに6回1000mgの摂取、その後は平常時と同じ量を続ける実験を行いました。その結果、プラセボグループに比べて、85%もの症状減という結果が得られました。
ビタミンCは白血球の遊走性を高め、免疫力をあげる効果があります。ストレスで副腎を酷使しているときや、感染がある時、ビタミンCの需要は亢進しています。そのような時は特に十分量のビタミンCを補給して飽和させてあげることが必要です。
最近、ビタミンCサプリをさぼっていた私は、白血球中のビタミンCを飽和させようと思って点滴をしたのです。さらに、Gortonに習って、寝るまで1時間おきにビタミンC500mgを摂取しました。3回目くらいで本当に、のどの痛みが治まり、体のだるさがとれてきたときは感激しました!
3.3 その後の経過
気分よく寝たのですが、翌朝起きてみると喉の痛みが昨日より強くなっていました。はっきりした発熱はないですが、頭がボーっとします。睡眠中は仕方のないことですが、ビタミンCを再度飽和させなくてはなりません。そこで朝食は食べずに、乳酸菌とビタミンC頻回サプリを続けました。朝8時から1時間ごとにビタミンC、3時間おきに乳酸菌をとったところ、午後3時頃には咽頭痛はほぼ消失、だるさも消えました。
その夜には多少飲酒しましたが、その影響もないようです。(その間もサプリ頻回摂取は継続)さらに一夜明けた現在、症状はほぼありません。今の状態は、風邪の症状は完全消失、リラックスした少し眠い感じ、腸のぜん動運動が著しい(排便1日2回あり)、でも下痢などではないといった感じです。Gortonに感謝です!
3.4 1時間おきにとると血中濃度は3倍になる
ビタミンCを頻回に摂取するメリットについて、スティーブ・ヒッキー博士は「ダイナミックーフロー」という考えを用いて説明しています。通常の人のビタミンC血中濃度は0.7mg/dl程度ですが、1gのビタミンCサプリメントを摂取することで1.4mg/dlまで上昇させることができます。しかし、せっかくとったビタミンCも、腎臓から排泄され、ビタミンC血中濃度は4時間後には元の0.7mg/dlまで戻ってしまいます。
では、ビタミンCが腎臓から完全に排出される前のタイミングで連続してビタミンCを摂取したらどうでしょうか。それによって血中濃度を高く保つことができます。1gのビタミンCサプリメントを1時間おきに摂取することで、血中濃度は3.9mg/dlまで上げることができるそうです。これは、通常(4時間以上おき)に摂取した時の3倍弱の濃度です。
常にビタミンCをとり続けることで白血球の働きを高め、風邪に対抗できるようになるのです。もちろんその間、腎臓からじゃんじゃんビタミンCは排出されるのですが、それを上回る量を頻回投与することで血中濃度を高く保つんですね。
まさに、「源泉かけ流しの温泉」のようなぜいたくな治療法ですが、特に緊急時には試す価値があると実感しました。それと、個人的にはビタミンC点滴よりも、連続したサプリメント摂取のほうが効果を実感できたのも意外な点でした。風邪などの感染症に対しては、一度に多くのビタミンCを入れるよりも、持続してビタミンC濃度を高めることが効果的なのでしょう。
4. 高濃度ビタミンCパイオニアへのインタビュー
次は高濃度ビタミンC点滴の話です。ヒュー・リオルダン先生は、ライナス・ポーリング博士の考案した高濃度ビタミンCの点滴療法の意志を引き継ぎ、30年間にわたってビタミンC点滴を行い、世界で初めて、ビタミンCががん細胞を殺傷することを証明した人です。
初めてリオルダン先生にあったのは2003年の夏、東京のホテルで行われたセミナーでした。リオルダン先生は、当時まだ数少なかった分子栄養学を行っている医師たちに対して自分の行っている治療の説明をしてくれました。彼は、日常から自分のビタミンC血中濃度を測定していたそうです。
しかし、ある日くもにかまれた日から、連日4日間ビタミンC 15gを点滴したが、いずれも血中濃度が測定限界値以下でした。それがきっかけで多くの人のビタミンC濃度を測定し、人がいかに簡単にビタミンC欠乏症になりやすいかを実感したそうです。翌年の2004年の夏、私は、この点滴治療を学ぶため、彼が院長を務める人体機能改善センター(現リオルダンセンター)に赴きました。
この前、パソコンのファイルを整理していたら、以前、ヒューリオルダン先生にインタビューをした時のメモがでてきました。その内容をシェアしたいと思います。
4.1 ビタミンC点滴の概要
宮澤「貴施設では年間500人が受けているというビタミンC点滴 治療(以下IVCとする)ですが、どの病気の人が何名くらいずついるのですか?」
Dr.Riordan「がん患者が全体の4分の1残りが4分の3。残りの内訳は様々で、ADHD、HCV、うつ病、リウマチ、関節炎、慢性疲労、自閉症など従来の治療においての改善が見られにくい疾患が多い。ヘビ毒や虫刺されにも有効。年齢の幅は広く2-90歳までこれも様々。ただし、多いのは50-60代。カンサス州はアメリカの中ではHIVの有病率が低いためかAIDS患者はほとんどいない。」
宮澤「1日にどのくらいの人数が受けに来るのですか?」
Dr.Riordan「1日のIVCをうける患者は10~20人。地元の人も多いが、アメリカ全土、また世界50カ国から患者がくる。それでIVCが必要と判断された人はその後地元の病院でIVCを受けたり、在宅サービスで受けたりすることも可能である。」
宮澤「癌のなかではどの部位が多いのですか?」
Dr.Riordan「卵巣、乳がん、肺がん、リンパ腫が多い」
宮澤「癌以外の疾患に対するプロトコールはあるのか?ビタミンC 何gを週何回とか、リポ酸を何g併用するとか、治療中にビタミンCを増減したり、回数を増やしたりするポイントとは?」
Dr.Riordan「万人に共通するプロトコールは存在しない。IVCの量、回数は到達する血中濃度によって決定している。注射法は投与量の最初の2分の1は血漿濃度をあげるために比較的早く点滴し、残り2分の1はゆっくりするのが効果的と考えられる。」
宮澤「またそれぞれの疾患における生存率は?」
Dr.Riordan「がん患者も個人個人でそれぞれ、進行程度、生活様式、生存の意思などの要因が様々であり、一律な生存率はだしていない。しかし、おおまかにいえば、腎臓、乳がん、前立腺、肺が効果を発揮しやすいといえるだろう。肺がんの死亡率は高い。しかし、延命という意味でのIVCの効果はある。
ただし、今までの経験から、生存率にかかわる因子が5つあるといえる。食事、経口の栄養素、家族のサポート、医師のサポート、そして一番重要なのが生きる意思である。
私は患者さんに「あとどれ位生きられますか」と聞かれたとき、逆にこう聞いている。
「あとどの位生きたいですか?」と」
4.2 腫瘍マーカーについて
宮澤「ビタミンC 治療においても腫瘍マーカーの増減をそのまま治療効果の判定に用いてよいか?私たちの施設においては画像上腫瘍縮小を認めるが、腫瘍マーカーは増大している症例を経験している。」
Dr.Riordan「乳がんの場合には比較的治療効果と腫瘍マーカーが一致することが多い。
腫瘍崩壊時にマーカーが一時的に上昇することは当センターにおいても見られている。
又画像上、腫瘍がなくてもマーカー値が高かったり、その逆の場合もある。」
宮澤「組み合わせているサプリメントなどについて、何をどの位用いていますか?」
Dr.Riordan「個人個人により様々」
4.3 副作用について
宮澤「血管の痛み、血管が硬くなる、これはコラーゲンの沈着が関係するのか?偏頭痛の増強している患者がいるがこの副作用はポピュラーなものなのか?」
Dr.Riordan
「主な副作用はのどの渇きのみ。数ヶ月―数年も注射をするのなら針を刺す部分を変更する必要はあると思う。点滴中にマグネシウムを加えることで刺すような痛みを緩和できると思う。」
4.4 禁忌事項について
宮澤「心不全には絶対禁忌なのか?点滴速度を落として、利尿剤と併用しているような症例はあるのか?透析患者に透析と組み合わせて用いているような症例はあるのか?」
Dr.Riordan「点滴速度の調整が必要。透析患者に施行した例はまだない。」
宮澤「風邪などの軽症感染症、健康増進などに用いても問題はないのか?」
Dr.Riordan「いかなる状況においても患者のビタミンC濃度が低ければどんどんやるべきである」
いかがでしたか?参考になりましたか?これは10年以上前のインタビューで、今ではこの治療に対する様々なエビデンスが報告されていますが、治療の原則はほとんど今と変わっていません。残念ながら、リオルダン先生は私が訪問した5ヶ月後に急逝されました。
しかし、私が今も行っている診療は、IVCのリオルダンプロトコールや、先日紹介した、Identfy the causesの原因分析、そして「患者とともに学ぶ」という哲学などリオルダン先生の影響を強く受けています。
5. 感情をコントロールしてビタミンCを節約する方法
嫌なことがあったり、感情的に激しく揺れたりしてイライラしている時は、副腎にとても負担がかかります。副腎では、ストレス負荷時にドーパミンやノルアドレナリンが合成されますが、ノルアドレナリン合成の補酵素として働くのがビタミンCです。モルモットにストレスを負荷すると副腎が肥大し、ビタミンC投与によって縮小します。ここではあえてビタミンCを使わず、感情をコントロールして副腎を保護する方法について考えました。
5.1 感情が必要な理由
NHKでも放送された「お金と感情と意思決定の白熱教室」をご覧になったことのある方はいるでしょうか?いかに人間が感情的な動物なのかを思い知らされます。
感情の専門家、デューク大学のダン・アリエリー教授は言います。感情は合理的なシステムをのっとってしまう。思考のシステムを手助けするのではなく、システムをのっとってしまうのが感情の大きな特徴だ。渋滞で割り込みされて、急に怒り出したりする人などが典型的です。そんなビタミンCの消費を増大させる、悪いものがなぜ人間に備わっているのでしょうか?これに対しての教授の答えはこうです。
「感情は人間が生き残るのに必要だったからだろう。進化の過程から考えると実は、感情=何も考えないことだと言える。ジャングルで虎に鉢合わせてしてしまった場合を想像してほしい。君たちなら自分の体にどう反応してほしいと考えるだろうか。頭の中で損得勘定を計算して、コストや利益を考えてからじっくり判断するべきか?違うだろう。そんなこと言ってる場合じゃない。とにかく何も考えずに逃げるのが先だ。それが感情の果たす役割だ。」
5.2 感情をうまく使う方法
私たちが、ふとしたことで他人に腹を立てたりするとき、私たちの副腎からでたノルアドレナリンは、脳の中でもとりわけ原始的な部分、大脳辺縁系に働きかけます。教授は続けます。問題は「私たちがもはや、感情がいい役立ち方をするような世界、例えばジャングルのようなところに住んでいないことだ」
教授によると感情の特徴は「環境によって引き起こされる」「長くは続かない」「人間の行動を支配する」の3つです。ですから、感情をうまく使うためには、いくつか気を付けることがあります。
1番目に、感情は必要な行動に素早く導いてくれます。だから、自分を奮い立たせるのに使うに使うと効果的です。
2番目に、感情は環境によって左右されます。だから自分のなりたい感情に応じて、自分のおくべき環境をえらぶことです。ゆったりしたい気分に浸りたかったら、南の島にいることを想像するだけでは不十分です。実際にハワイまでいきましょう。
3番目。感情は動き始めると止めるのは困難です。これは、本当に困難ですが、感情は私たちが考えているほど長続きはしない、という性質を使い、「変な環境に身を置かないこと」「感情が安定したら、すぐに、行動の改善を行うこと」が有用だと思われます。
いかがですか?このように、感情の性質を知っておくことは、ビタミンCの節約にだいぶ貢献するのでしょうか。それでも、完全にコントロールできないのが「感情」というものなのですが。
6. ビタミンCに関するQ and A
今までお話ししてきたように、ビタミンCは非常に身近でありふれたものですが、ビタミンCの大量療法ともなるとまだまだ多くの否定的な意見を多く耳にします。
Orthomolecular Medicine News Serviceでは、そんなビタミンCに関する多くの質問にエビデンスを示しながら解答をおこなっています。非常に興味深い内容ですので、一度ご覧になってください。なかなか刺激的な事が書いてあります。一部抜粋しました。
http://orthomolecular.org/resources/omns/index.shtml(原文は英語)
Q 一日に2000mgのビタミンCを摂取することは大量療法と言えるでしょうか?
A いいえ。数十年前、ライナスポーリングとアーウィンストーンは、大部分の動物は体重換算でそれよりも多くのビタミンCを産生することを示しました。
Q それなら、なぜ政府はビタミンC摂取の上限を設定しているのでしょうか?
A おそらく、理由は無知によるものです。米国毒物コントロールセンター会議によると、「ビタミンC(とその他のサプリメントも)は、誰も殺さない」としています。
Q ビタミンCがDNAを傷つけるでしょうか?
A いいえ。もし、ビタミンCがDNAにダメージを与えるのであれば、なぜ多くの動物は人間の体重に換算して1日に2000~10000mgものビタミンCを体内でつくるのでしょうか?進化は重要な遺伝物質を傷つけるようなものを助けることはありません。
Q ビタミンCは低血糖やB12不足、先天性欠損、不妊症などを起こすでしょうか?
A ビタミンCは先天性欠損症(また、不妊性)も流産も引き起こしません。低血糖や反発性の壊血病、不妊性、突然変異、ビタミンB12の破壊などの有害事象は誤ってビタミンCに起因するとされていました。医療関係者は特にビタミンCがこれらの影響を生じない事を認識する必要があります。
Q ビタミンCは・・・・・
A 14日間に渡る二重盲検プラセボ対照試験では、3,000mg/dayのビタミンCをとることで性交の頻度が高まることが報告されています。また、ビタミンC摂取群ではうつ病の著名な減少も認められました。これらはビタミンCの「カテコラミンの活動性を調節し、ストレス反応を減弱し、不安とプロラクチン放出にアプローチし、血管機能を改善し、オキシトシン分泌を増加させる」という機能によるものでしょう。これらの過程は性行動とその雰囲気に左右されます。
Q ビタミンCは、腎結石を引き起こしますか?
いいえ。虚偽狂った医療メディアは、しばしば、ウィリアム・マコーミックがビタミンCが実際に腎結石の形成を防ぐことを証明したという事実を見落としています。彼は1946年にこれに関するレポートを公開しました。彼の仕事は、アラバマ大学医学部のエマニュエルチェラスキン博士によって確かめられました。Cheraskin博士は、ビタミンCがシュウ酸エステル石の形成を阻止することを示しました。「たとえ尿の中のシュウ酸エステルの一部が酸化型アスコルビン酸に由来するとしても、高用量のビタミンC摂取はシュウ酸カルシウム腎結石の危険性を増すものではない。」という報告もあります
large- scale Harvard Prospective Health Professional Follow-Up Studyによると1500mg/day≦のビタミンCを摂った群はそれ以下のグループに比べて優位に腎臓結石のリスクが低かったそうです。ロバートカスカート博士は1969年から患者に対して高容量ビタミンCを使用し、次のように述べています。
「私がアスコルビン酸が腎臓結石を起こすという記事を読む時にはすでに私はそれが腎結石を起こさないというエビデンスを持っていたので、私は大量を患者に使い続けた。2006年までに私は25000人の患者に対して高容量ビタミンCを使用したが、腎結石を発症したものはいない。500mg/dayまで一日の量を減らした患者のうち二人がシュウ酸カルシウム結石を発症した。彼らに対してはビタミンC投与量を元に戻し、マグネシウムとB6を加えたところ、腎結石は二度と発症しなかった。彼らが腎結石を発症したのは十分な量のビタミンCを摂っていなかったからだ」
Q なぜ、あれだけのビタミンCを摂っていながらポーリング博士はがんで亡くなったのですか?
A ライナスポーリング博士(大量投与ビタミンC主唱者)は、前立腺ガンで1994年に亡くなりました。メイヨークリニックのガン研究者チャールズG. Moertel博士(ポーリングとビタミンCの批判者)は、また、1994年に、リンパ腫で亡くなりました。Moertel博士は、66才でした。ポーリング博士は、93才でした。
この年齢差がビタミンCによる利益のせいかどうかに関しては、個人的な見解は分かれるところです。大事なことは「ビタミンC不足は進行がん患者に多くみられる」ということです。血中ビタミンCレベルの低い患者さんは生存期間が短いのです。
Q ビタミンCは動脈内径を狭くしたり、動脈硬化を起こしたりはしないのでしょうか。
アブラハム・ホッファー先生は次のように述べています。「私は1952年から自分の患者に大量ビタミンC投与を行っているが、この数十年に心臓疾患が進行した症例を見たことが無い。」1969年以降25,000人以上の患者の経験のあるロバートカスカート博士も初診時に何もない患者さんが心臓疾患を発症することを見たことがないと述べています。
キーニー、フレイは、30日間、患者に対してビタミンCを与えて、動脈を通して血流測定を行いました。1日1回の投与で血流は50%近くも改善し、1ヶ月後もそれは持続していました。
Q 血圧に関してはどうですか?
A 無作為二重盲検プラセボ対照試験では、サプリメントのビタミンCを摂っている患者は優位に血圧が低いことを示しました。
Q ではなぜマスメディアではアンチビタミンCのレポートに興奮するのでしょうか?
A 否定的なニュースは人目を引くのです。
否定的なニュースは新聞や雑誌が売れ、テレビの視聴率をあげます。もちろん、肯定的な薬の研究も見出しを飾ることがあります。しかし、肯定的なビタミンの研究はそうなることはありません。
人間のためのビタミンCのための米国の1日あたりの推奨摂取量は、モルモットのための農務省のビタミンC基準のわずか10%だそうです。サプリメントは現在の日本でも欠かせないものになっています。自分の身を守るには情報の洪水の中から正しいものをつかみとる知識が必要な時代になっているのでしょう。
7. なぜビタミンCの合成能力を失ったのか
最後に、なぜ人はビタミンCを作れなくなってしまったのかについて考えます。ビタミンCは人間が体内で合成することができないため、外界から摂取しなくてはならない栄養素のひとつです。ほとんどの哺乳類はグルコースからビタミンCを合成することができますが、人間をはじめとする霊長類とモルモットはビタミンCの合成ができません。これはビタミンC生合成過程の最終段階で働く酵素であるL-グロノラクトンオキシダーゼが人では欠損しているからです。
なぜ、人はビタミンCの合成能力を失ってしまったのでしょうか。ビタミンCは副腎がアドレナリンやコルチゾールなどのホルモンを産生するときの原料になります。そのためか、副腎における濃度が体内で一番高く、血中濃度の150倍にもなります。コルチゾールは強力な抗炎症、抗ストレス作用をもちますので、ビタミンCはこれらの能力に密接に関わると考えられます。なぜ人類はビタミンC合成能を失ったのか本当の原因はいまだ持って不明です。
7.1 脳を守るため?
しかし、分子栄養学の創始者でありビタミンC研究の第一人者であったライナス・ポーリング博士は「人類がビタミンC合成能を失ったのは脳を守るためだ」と言っていたそうです。ライナス・ポーリング博士はいつも突然、「ビタミンCはがんに効く」等と発言し、その理由は言わなかった(というか、天才すぎて、だれも彼の言うことを理解できなかった)そうです。
ビタミンCががん細胞を殺傷する事は、2005年に米国国立衛生研究所によって証明されましたが、なぜ、人がビタミンCを作れなくなったのかは未だに謎です。この「脳を守る」というのはどういう意味なのでしょうか?ビタミンC合成能がない霊長類の脳の特徴のひとつは脳重量です。体重あたりの脳重量は霊長類全体がほかの哺乳類にくらべて大きいのです。人類は社会生活に適応するために脳容量が大きくなり、そのため脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖の需要量も増加しました。
7.2 ストレスと低血糖、究極の選択
ところが、一方でブドウ糖はビタミンCの原料でもあるのです。ブドウ糖にLグロノラクトンオキシダーゼが働くとビタミンCが合成されます。ビタミンC合成需要が急激に高まった場合、当然ブドウ糖は激しく消費されるでしょう。血糖が低下するかどうかは定かではありませんし、他の動物がビタミンC需要が高まったときに低血糖になるという報告はありません。しかし、脳機能維持にブドウ糖が重要な役目を持つことは事実ですし、脳が大きい霊長類ではその需要は相当なものです。
ですから、2500万年前の人類の遺伝子は社会生活適応の脳機能維持のためにブドウ糖を温存すべきか、社会生活でのストレス解消のためにビタミンC合成能を保つのかの苦渋の選択をせまられたのではないでしょうか。
結局、果実などビタミンCが外界から用意に摂取できる環境が整っていたヒトを含む一部の霊長類は、社会生活で受けるストレスや病気などよりも、大きくなった脳を守るために体内の糖を維持する方に進化したのでしょう。
そうそう、霊長類のもう一つの大きな特徴は、「社会がつくられ、ランク付けがされる」ということです。お互いに個々を認識し、ランク付けしあうという複雑な社会生活においては、脳機能低下はストレスよりも深刻なダメージを負う可能性も高いと思われます。脳機能(理性や意志)の低下、それは社会の中での順位の下落に直結することなのです。猿も人間もそういうところは一緒です。
社会生活の中で、自分のランクを上げるために脳機能を維持することを選択した霊長類は、ビタミンC欠乏で副腎疲労を起こし、ストレスを受けるという宿命を負っているのです。