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生活習慣と睡眠

宮澤賢史 · 2023年4月23日 ·

「精神」、「感情」、「肉体」のどの動き一つとっても、睡眠の質に影響されないものはありません。

しかし、めまぐるしいスピードで動く世の中となったいま、慢性的な睡眠不足に陥って睡眠の質が低下するという悪影響に苛まれている人が多くいます。睡眠不足は先進国に共通する問題となっています。

十分な睡眠を取らずにいると、何をするのも遅くなり、想像力は衰えストレス増大し、仕事のパフォーマンスが下がります。要するに自分の能力のごく一部しか使えなくなります。

また、睡眠不足は、知らないうちに脳と体へのダメージを与える危険因子を蓄積させ、その先には免疫の衰えや糖尿病、がん、肥満、うつ、物忘れの増加など様々な不利益をもたらします。

それゆえに、身体が必要とする睡眠がとれない元凶に目を向けることが必要となります。睡眠の質を上げるために今夜から何ができて慢性的な睡眠不足に陥らないようにするために何ができるかをご紹介していきます。

もくじ

Toggle
  • 睡眠は人生のすべてを左右する
    • 睡眠が脳と体を作り変える
    • 運動の効果を引き出すには睡眠が必要
    • 睡眠不足がミスを生む科学的な理由
    • 睡眠は学習の質に影響を与える
    • 睡眠は脳をきれいにする
    • 睡眠不足と依存症
    • 睡眠不足と心血管疾患
    • 睡眠不足と生殖機能
    • 睡眠不足が食欲を増し、代謝低下させる
    • 睡眠はダイエットの強い味方
  • 眠りとは何か
  • 睡眠ホルモンを自ら作り出す
    • 太陽光が睡眠の質を決める
    • 熟睡に不可欠なメラトニン
  • 睡眠と覚醒
  • 眠りを妨げるもの
    • 現代の明かりの深い闇
    • アルコール
    • カフェイン
    • 深部体温の低下を阻害する環境
  • サプリはライフスタイルを見直した後に
  • 健やかな眠りのための12か条
    • 1.いつも同じ時間に寝て同じ時間に起きる
    • 2.夜寝る前に運動してはいけない
    • 3.カフェインとニコチンを摂取しない
    • 4.寝る前にアルコールを摂取しない。
    • 5.可能なら睡眠を妨げるような薬を飲まない
    • 6.夜遅い時間に大量の飲食をしない
    • 7.午後3時を過ぎたら昼寝をしない
    • 8.寝る前にリラックスする
    • 9.寝る前にお風呂につかる
    • 10.寝室を暗くする、寝室を涼しくする、寝室にデジタル機器を持ち込まない
    • 11.日中に太陽の光を浴びる
    • 12.眠れないままずっと布団の中にいない
  • まとめ

睡眠は人生のすべてを左右する

睡眠が脳と体を作り変える

私たちの体内では、目覚めているときに異化作用(外から摂取した物体を体内で分解する過程)が起こり、眠っているときに同化作用(外から摂取した物質を合成する過程)が起こります。

睡眠時は同化作用が活発になるといわれ、免疫力、骨、筋肉の成長や再生が促進されます。つまり、眠ることで身体が再生され、若さが保てるということです。

良質な睡眠を取ると、免疫系が強化され、ホルモンバランスが安定し、新陳代謝が促進されます。体のエネルギーが増加し、脳の働きも改善されます。 

運動の効果を引き出すには睡眠が必要

運動には驚くべき力があり、一番健康な状態でいたいなら、運動は必要不可欠です。

ただ、運動による様々なメリットがもたらされるのは、それを受け入れる準備が整っている(必要な睡眠を取っている)身体だけです。

運動後、眠っている間に体のためになるホルモンが大量に分泌され、以前よりも強い体にするための修復プログラムが発動し、身体を回復させることでトレーニングの効果を身体に吸収させることができます。

睡眠不足がミスを生む科学的な理由

睡眠不足になると、脳に送られるグルコースの量が低下してしまいます。

脳内でのグルコース減少量は均等ではなく、減少量が大きい部位が前頭前皮質と頭頂葉で実質12~14%失われてしまいます。それらの部位は衝動を抑制したり、複数の考えを区別したりするときに必要となる領域です。

 睡眠不足で脳がエネルギー不足になり、脳機能低下し、ちゃんと頭が働いていれば絶対しなかったようなまずい判断をしてしまったり、理性と欲望のせめぎ合いで欲望に負けてしまったりもします。

睡眠は学習の質に影響を与える

睡眠を取ると脳がリフレッシュされ、新しいことを学習する準備ができます。

また、学習してから眠ることで新しい記憶が脳に定着します。

必要な情報を保管するだけでなく、いらない情報を捨てる役割もあります。それにより、脳が必要な情報を探すときに余分なエネルギーを使わずに済みます。

睡眠を削れば作業する時間は増えますが、作業の質や効率性は損なわれてしまいます。

睡眠は脳をきれいにする

脳は多くの働きをする結果、大量の老廃物を産生します。老廃物を除去することで新たな成長や発達の余地が生まれるため、脳が機能するうえで老廃物除去は欠かせません。

脳の老廃物除去システムは、昼もそれなりに働いていますが、活性の本番は睡眠中です。眠っている間、そのシステムは目覚めているときの10倍以上も活発になります。しかも、眠っている間は脳細胞が約60%まで縮小しニューロンの間の隙間が広がり老廃物を流す脳脊髄液が流れやすくなり、老廃物除去率は更に高まります。

睡眠不足になると瞬く間にアミロイドβや他のアルツハイマーに関係する毒素が蓄積します。寝ないことは、軽度の脳の損傷になり、睡眠は脳の掃除になるということです。

若い頃から慢性的に睡眠不足の人はアルツハイマー病リスクが高くなります。

脳細胞から老廃物が排泄される過程が私たちの良質な睡眠がかかせないことと深くかかわっています。

睡眠不足と感情コントロール

怒りや不安などの感性を生む扁桃体の反応が睡眠不足によって増幅し感情が暴走しやすくなります。

また、睡眠不足の人が報酬への期待や快楽を経験すると、ドーパミン分泌に関与する線条体が過活動になります。

睡眠を十分にとった人は、感情のアクセル作用のある扁桃体と、ブレーキ作用のある前頭前皮質の連携のバランスがよく、感情をコントロールしています。

一晩ぐっすり眠ると感情のブレーキを司る前頭前皮質と扁桃体のつながりが強化されて感情コントロールしやすくなります。

一晩起きているタイプの睡眠不足でも短い時間が何日か続くタイプの睡眠不足でも、脳の感情抑制機能は同じように影響受けます。

十分寝ることで理性を確保しないと、感情が暴走してしまいます。

睡眠不足と依存症

睡眠不足は各種の依存治療で失敗の原因ともなります。

アルコールやドラッグを求める気持ちを抑えられず、理性を司る前頭前皮質のコントロールが効かないからです。

睡眠不足と心血管疾患

睡眠不足によって血圧が上がると、血管そのものもダメージを受けます。特に大きく損傷するのが心臓に血液を送り込む冠状動脈です。睡眠不足によって冠状動脈が詰まると、心臓に十分な血液がいきわたらなくなり、冠状動脈性心臓発作のリスクが飛躍的に高まります。

睡眠不足が交感神経を過活動にさせます。身体は「戦うか逃げるか」モードに入りっぱなしになります。

それにより、まず心拍数の加速ブレーキ機能が低下します。また、慢性的にコルチゾール分泌過多になります。

すると、血管に送り出される血液量増加し、血管収縮し、成長ホルモンの分泌が低下して傷ついた血管内壁補修できず内壁がだんだん剥がれていき、血管そのものが弱くなってしまいます。そこに睡眠不足による高血圧が血管を攻撃します。

睡眠不足と生殖機能

睡眠時間が少なかったり睡眠の質が悪すぎる男性は、十分な睡眠を取っている男性と比べると、精子の量が少ない上精子自体の質も悪くなっています。またテストステロンの量も減少しています。テストステロンの少ない男性は一日を通して倦怠感が抜けません。また、テストステロンと脳の集中力の間には大きな関係があるので、仕事中も目の前の作業に集中することができません。また、テストステロンには骨密度を保ち、筋肉の量も増やす働きがあるので、すべての年代の男性にとって睡眠がいかに大切かよくわかります。

睡眠不足で生殖機能が脅かされるのは男性だけでなく女性も同じです。

日常的に睡眠時間が6時間以下の人は、卵胞刺激ホルモンの量が20%減少してしまい受精にも影響を与えます。

睡眠は男女の生殖機能にとって欠かせません。生殖に必要なホルモン、臓器、それに外見的な魅力までも睡眠に大きな影響をうけます。

睡眠不足が食欲を増し、代謝低下させる

睡眠不足でインスリン抵抗性が増加してしまいます。

そして食欲に関与するホルモンのレプチン(食欲抑制作用)が低下し、グレリン(食欲亢進)が増加、神経伝達物質のエンドカンナビノイド(食欲亢進で間食渇望)が増加して、空腹感がコントロールできなくなってしまいます。

さらに睡眠不足のため活力がなくなり、活動量低下して肥満につながってしまいます。

睡眠はダイエットの強い味方

十分な睡眠は脳内の衝動コントロール(衝動を司る扁桃体と理性を司る前頭前皮質の連携バランス)を回復させ、更に食欲に影響するホルモンや、神経伝達物質バランス整い、異常な食欲にブレーキを掛けやすくなります。

眠りとは何か

人は眠りに落ちてから目覚めるまで、ずっと同じように眠っているわけではありません。

眠りにはレム睡眠(脳は起きているが、身体は眠っている)とノンレム睡眠(脳も体も眠っている)の2種類があり、それを繰り返しながら眠っています。

寝付いたあと、すぐに訪れるのはノンレム睡眠です。

とりわけ最初の90分間のノンレム睡眠は睡眠全体の中で最も深い眠りです。

レム睡眠は入眠後およそ90分後に訪れるのがレム睡眠です。ノンレム睡眠とレム睡眠を明け方くらいまでに4、5回繰り返し現れ、明け方になるとレム睡眠の出現時間が長くなります。

睡眠メンテナンスで意識したいのが、最初のノンレム睡眠をいかに深くするかということです。ここで深く眠れれば、その後の睡眠リズムも整い、自律神経やホルモンの働きも良くなり、翌日のパフォーマンスも上がります。

睡眠ホルモンを自ら作り出す

太陽光が睡眠の質を決める

夜ぐっすり眠るための行動は、朝目覚めた瞬間に始まります。

私たちの体には24時間周期の体内時計があります。24時間周期で訪れる睡眠サイクルは日中に浴びる太陽光の量に左右されます。

24時間体内時計の管理は視床下部にある視交叉上核でされています。この時計が概日リズムとコミュニケーションを取りながら、脳のすべての部位と、体内のすべての臓器に信号を出して、決まった時間に決まったホルモンが分泌されるようになっています。このリズムによって、目を覚ましている時間と眠る時間が決まっています。

この体内時計に大きく影響するのが太陽光です。

朝の光は、視床下部や光に反応する臓器や腺に「起きなさい」という警告を送る役割を果たします。

太陽光には、日中に分泌されるべきホルモンや、体内時計を調節する神経伝達物質の生成を促す力があります。太陽光が引き金となって、身体にとって最適な量の生成が始まります。

体内時計の調節にセロトニンは欠かせません。

セロトニンの生成が夜に熟睡する準備を整えることになるためです。

セロトニン生成は何を食べ、どの程度身体を動かし、自然光をどのくらい浴びるかでその生産量が変わってきます。

私たちの目には脳の中心に情報を送る特別な光受容体があり、その働きが引き金となってセロトニンが生成されます。

人間の皮膚にはセロトニンを生成し、それをメラトニンに変える力があります。

これも太陽光の影響を強く受けます。

熟睡に不可欠なメラトニン

熟睡の一番の立役者はメラトニンです。

視交叉上核は「メラトニン」を使って夜と昼の情報を脳と身体に送り続けています。

メラトニンの生成と分泌は光を浴びた量に大きく左右されます。適切な時間に適切な光を浴びなかったら、そのメカニズムは台無しになりかねません。

太陽が発する光のスペクトルは、メラトニンを生成するサイクル調節に役立ちます。

つまり、日中に太陽光を浴びる量を増やし、夜に浴びる光を減らせば熟睡に役立つということです。

日が沈んであたりが暗くなると、視交叉上核は「メラトニンを分泌せよ」という指令を出します。

すると、脳の奥深くにある松果体という部位から血中にメラトニンが分泌されます。

メラトニンは、脳と身体に向かって「暗くなった」という情報を送ることにより、眠りにつく「タイミング」をコントロールしています。ただし、メラトニンは眠りそのものを生み出しているわけではありません。実際に睡眠を発生させる脳の部位をスタートラインに誘導することです。

睡眠が始まると体内のメラトニンは、夜から朝にかけてゆっくり減っていきます。太陽の光が目を通して脳に入ってくると(瞼を閉じていても光を感知できる)松果体にブレーキが掛けられてメラトニン分泌が止まります。血中にメラトニンがなくなると、脳と身体は「睡眠時間終了」というメッセージを受け取ります。

この体内時計と化学物質のバランスによって日中は覚醒し、夜になると眠くなるというリズムが出来上がっています。そして睡眠の質も一部はこのバランスによって決まっています。

睡眠と覚醒

眠りをコントロールする要素は大きく分けて2つあります。

一つは視交叉上核が司る24時間単位の概日リズムで、二つ目はアデノシンから送られる睡眠圧です。

目覚めているあいだ中、脳細胞は活発に動いています。その結果「アデノシン(抑制の働きを持つ)」という副産物が生まれます。脳内にアデノシンが増えると眠りたいという欲求が高まります。この現象が「睡眠圧」です。アデノシンの量がピークに達すると、眠くて眠くてたまらないという状態になります。たいていの人は12~16時間起きているとこの状態になります。

概日リズムの覚醒力活動の低下と大量のアデノシンの組み合わせにより、強い眠気が引き起こされます。睡眠中の脳内では、その日に蓄積されたアデノシンを取り除く作業が行われています。大人の場合、8時間ほどぐっすり眠れば、脳内のアデノシンは一掃されます。

概日リズムは目が覚める数時間前から概日リズムの活動が上昇し、活動が上昇すると脳と身体に目覚めを促す信号が送られます。そして健康な大人の場合、ほとんどの人が午後の早い時間に概日リズムのピークを迎えます。

朝になり、アデノシンがなくなって、代わりに概日リズムの覚醒力が増してくると、自然と目が覚めるようになっています。

概日リズムは実際に眠っているか起きているかに関係なく、独自の24時間リズムで動いています。脳内のアデノシンがどんな状態になっていようとも、決まった時間に睡眠を促し、決まった時間に覚醒を促します。

眠りを妨げるもの

何が睡眠パターンや熟睡する能力を私たちから奪っているのでしょうか。

夜は明るい人工光に晒され、朝は早くから仕事や学校に行かなければならない、自然の温度変化も感じられない環境で暮らしカフェインやアルコールの攻撃も受けています。自然な眠りとは相容れない環境でぐっすり眠れないのも当たり前です。

通勤・通勤時間が長いこと、そしてテレビやインターネットのせいで就寝が先延ばしされていること。まずこの2つのせいで睡眠時間は朝と夜の両方が削られます。それは大人も子どもも同じです。

現代の明かりの深い闇

夜の人工光はたとえ弱い光であっても視交叉上核に「今は昼だ」と信じ込ませることができます。メラトニン分泌は日の入りとともに増加してくるはずですが、人工光が存在する限り、その分泌が抑制され遅れてしまいます。人工光に脳がだまされ、就寝時間となってもまだ昼だと思い込んでいます。

目の中にあって光を感知し、視交叉上核に「今は昼だ」と伝える光受容器は、青い光の中にある短い波長をもっとも敏感に感じ取ります。

この光を強く発するものは、多くの人が何時間も見つめているパソコン、スマートフォン、タブレットなどです。

これらを寝る前に2時間使うと、メラトニン分泌が20%以上抑えられ、分泌の時間も遅くなるといわれます。

アルコール

アルコールは睡眠を断片的にしまい、夜中に何度も目が覚め、寝ても疲れがとれません。

そして、もっとも強力なレム睡眠抑制因子の一つとなります。

カフェイン

カフェインは神経に強い影響を与える刺激物です。

カフェインにより神経が刺激されれば、上質な睡眠はとても得られません。

とはいえ、コーヒーや紅茶、チョコレートなどカフェインが含まれているものは全般的においしい上、人体と親和性が高く身も心も状況が上向きになるため日常的に摂取されています。

カフェインとアデノシンは構造が類似しているため、カフェインがあると、アデノシンの受容体と結合してしまいます。

すると、アデノシンから出る睡眠信号を遮断し、眠気を覚ますことができます。

カフェインの影響は神経系だけでなく、内分泌系にも及びます。副腎に刺激を与え、睡眠を阻害するアドレナリンやコルチゾール分泌促進してしまいます。

体内のカフェインは飲んでからおよそ30分後にピークを迎えます。しかし、カフェインの半減期は平均して5~7時間になります。たった半分体にカフェインが残っている状態とはいえ、カフェインはかなり強力であり、もう半分を分解するという大変な作業もまだ残っています。脳は夜通しカフェインの影響と闘うことになるので、その状態で熟睡はできません。

カフェインの刺激は時間の経過とともに消えていきます。カフェインの分解は、肝臓から分泌される酵素によって行われます。この酵素による分解速度は、人によって異なり、大部分は遺伝で決まっています。特に分解の早い人は、夕食時にエスプレッソを飲んでも午前0時ごろにぐっすり眠ることができます。しかし多くの人はそんなことはできません。体内から完全にカフェインが消えるまでかなり時間がかかるためカフェインの覚醒の影響を受けやすくなります。

カフェインはその効果が切れたことでエネルギーレベルがガクッと低下し、集中力が切れ、頭がうまく働かなくなり、強烈な眠気が襲ってきます。

カフェインが体内にある間は、眠気を誘うアデノシンはカフェインによってブロックされていますが、それでも量は増え続けています。

しかし、カフェインの分解が終わり、受容体のブロックが解除されると、アデノシンの影響が一気に襲ってきます。コーヒーを飲む2~3時間前に感じていた眠気に加え、その間に増えたアデノシンによる眠気も感じることになります。これをカフェインクラッシュといいます。このアデノシンの猛攻に対抗するために、さらにカフェインを摂取するようになり、カフェイン依存を招いてしまいます。

深部体温の低下を阻害する環境

身の回りの温度は寝つきの良さにも、眠りの質にも影響を与えます。部屋の室温、寝るときに着ているもの、布団が温度を決めています。

深部体温の低下が睡眠には欠かせません。入眠前に皮膚温度(手足)が上がって、熱放散し、深部体温が下がるとすると視交叉上核はメラトニン分泌を始めます。

夜に体温が通常より高くなると、強い覚醒状態となり、身体が体内の温度調節器をリセットしようとしてなかなか寝付けません。

メラトニン分泌を促す情報は日が暮れて暗くなることだけでなく、深部体温が下がることも必要です。

工業化された社会に暮らす私たちは自然の気温の変化とは切り離された生活を送っています。夜になっても室温が下がらないので視床下部はメラトニンを放出するタイミングを掴めません。それに体も衣類や室温で常に暖かい状態に保たれているので放熱がうまくいかず、深部体温が下がりにくくなっています。

★夜遅い運動は睡眠のためにはならない

夜遅くに運動すると、深部体温が大幅に上昇するという問題があります。しかも運動によって代謝が上がっているのでますます体温は下がりにくくなります。寝る間際に運動して深部体温をあげてしまうと最高の睡眠を得ることはできません。

寝室の電気を消す2~3時間前には運動を終わらせるようにしましょう。

そのころには運動によって分泌されているコルチゾールは下がり、副交感神経が体内の舵を握っているので、深部体温は眠いと感じるぐらいまで下がっています。

また、負荷がかかりすぎる運動はコルチゾールがなかなか下がらず、交感神経の興奮も収まらず、覚醒作用が続くので、睡眠を阻害しないために適度な量と強度の運動にしましょう。

★悩みや心配事、落ち込みや不安などの精神的要因が間接的に深部体温をあげる

体内の温度調節器は視床下部にあります。それを正常に動かすためには脳の働きをサポートすることが重要です。

視床下部には様々な反応系列がある中でHPA軸(視床下部―下垂体―副腎)と呼ばれるストレスに一番反応する系列があります。

それゆえ、ストレスが交感神経系を過活動にし、脳を緊張状態にして覚醒するとともに、代謝率をあげ、深部体温を上げてしまいます。ストレス社会の今、ストレス対策も絶対に必要となります。

良質な睡眠を求めるなら、精神や感情を落ち着かせて自分自身がクールになることも必要です。

サプリはライフスタイルを見直した後に

ぐっすり眠りたくて薬やサプリに頼ろうとする人は多いですが、それには注意が必要です。サプリより先によく眠れない原因となっている生活習慣に対処するほうが先に来ないといけません。

薬やサプリに飛びついても症状が治まっただけで、長い目で見れば体に良くない何かに依存する可能性が高まります。

まずは自身のライフスタイルを改善し、それでもやはり必要だと感じたら睡眠を助けてくれる天然素材のサプリやハーブを取り入れると良いでしょう。

健やかな眠りのための12か条

1.いつも同じ時間に寝て同じ時間に起きる

人間は習慣の生き物。睡眠パターンがころころ変わると適応するのに苦労します。週末に寝だめしても平日の睡眠不足の埋め合わせにはなりません。

2.夜寝る前に運動してはいけない

運動は確かに健康に良いですが、あまり遅い時間にしてはいけません。最低でも30分の運動を定期的に行うことを推奨しますが、寝る2~3時間前までに終わらせるように。

3.カフェインとニコチンを摂取しない

カフェインの効果が完全に抜けるまで8時間かかることもあります。

*睡眠のためにはカフェインの摂取は控えたほうが良いのですが、どうしてもカフェイン飲料や食品がとりたい場合は、午後2時までを門限としましょう。カフェインに敏感な人はもっと早い時間を門限とするとよいでしょう。

ニコチンも刺激剤であり、喫煙者は眠りが浅いことが多いようです。

それにニコチンの禁断症状のために朝早く目が覚めてしまいます。

4.寝る前にアルコールを摂取しない。

あまり飲みすぎるとレム睡眠が失われ、眠りも浅くなります。また中途覚醒も多くなります。

5.可能なら睡眠を妨げるような薬を飲まない

心臓病、高血圧、ぜんそくの一般的な処方薬、市販の咳止めの漢方薬、風邪薬、アレルギー薬などには睡眠を妨げる成分が入っていることもあります。もし、不眠に悩んでいるなら、医師か薬剤師に相談してみましょう。

6.夜遅い時間に大量の飲食をしない

軽食なら構いませんが、夜遅くに食べ過ぎると消化不良を起こし、それが睡眠の妨げになります。また、寝る前に水分を取りすぎると夜中に何度も起きてトイレに行くことになります。

7.午後3時を過ぎたら昼寝をしない

昼寝は失われた睡眠を取り戻すいい方法ですが、午後の遅い時間に寝てしまうと夜に眠れなくなります。

8.寝る前にリラックスする

寝る直前までスケジュールを詰め込みすぎないように。

本を読む、音楽を聴くなどリラックスできる寝る前の習慣を作りましょう。

呼吸を深めることで副交感神経のスイッチを入れることができます。深呼吸には体の感覚を瞬時に変える力があります。この呼吸が身につけば副交感スイッチを自分の意志で切り替えられるようになるばかりか自分の思念を制御する力も高まります。

9.寝る前にお風呂につかる

お風呂から出たときに深部体温が下がり、自然な眠気が訪れる助けになります。それにお風呂につかること自体にリラックス効果があります。

10.寝室を暗くする、寝室を涼しくする、寝室にデジタル機器を持ち込まない

睡眠の妨げになるもの、音、明るい光、寝心地の悪い寝具、暖かすぎる室温などは寝室から一掃しましょう。

デジタル機器も睡眠の邪魔になります。

・就寝90分前にはブルーライトを遮断

 身体が必要としている深い睡眠を取るには少なくとも寝る90分前にはありとあらゆる画面の電源を切る必要があります。

・スマホの代わりになる楽しいことを見つける

 誰かと会話したり、本を読んだりするなど。

・自動通知機能をoffにする

 電子機器を取りたくなる合図をなくしましょう。設定を変えて自動通知を受け取らないようにしましょう。

・ツールの力を借りる

ブルーライトを遮断するツールやグッズを活用しましょう。

ブルーライトを抑えてくれる眼鏡や時間帯に応じて画面から出る有害なブルーライトを抑えてくれるソフトなど使うのもお勧めです。

11.日中に太陽の光を浴びる

太陽の光は体内時計を整えるカギとなる要素です。

毎日最低でも30分は外に出て日光を浴びるように。可能であれば、太陽の光で目覚めるようにしましょう。

12.眠れないままずっと布団の中にいない

20分以上寝付けなかったら、または寝付けなくてイライラしてきたら、布団から出て眠くなるまで何かリラックスできる活動をしましょう。眠れないという不安のせいでますます眠れなくなるためです。

まとめ

自分に必要な睡眠をしっかりとると、ホルモン機能が高まり、筋肉、細胞組織臓器を修復し、病気から身体を守り、思考を最高の状態で働かせることができ、これまで以上に能力を発揮しやすくなります。

睡眠が人生の成功への近道の手助けにもなるので、良い睡眠のための生活を習慣化するようにしましょう。

参考資料

最高の脳と身体を作る睡眠の技術 ショーン・スティーブンソン

睡眠こそ最強の解決策である マシュー・ウォーカー

スタンフォード式 最高の睡眠 西野精治

個人差と根本原因

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