有機酸検査は、グレートプレインズ研究所のウィリアム・ショー博士が開発した検査です。彼は小児科病院で、自閉症の子供に適切な検査の研究を行っていました。たまたま尿中の物質のクロマトグラフィーという検査をしたら、正常人と自閉症のお子さんでは、全く異なる物質があることを発見したのです。
それがアラビノースというカンジダが生成する物質でした。細かく調べてみると、自閉症のお子さんと普通のお子さんで、いくつか違うものがあることに気が付いて、検査項目を増やしたそうです。
現在の有機酸検査はミトコンドリア機能や神経伝達物質など様々な要素が加わり、大人にも有益な検査項目を備えています。
近年、多くの会社が有機酸検査を提供するようになりましたが、今回はグレートプレーンズ社の検査を取り上げます。
有機酸検査の仕組み
有機酸検査では、腸内にあるもの、そのものをみるのではなく、腸内にあるものが産生している物質をみます。腸内にあるものの代謝産物が血液中に上がってきて、最終的に濾過されて尿中に排泄されます。ですから、血中よりも尿中の方が成分が濃縮されて、敏感な指標となります。血中ではわからないものが尿中に溜まってくるということです。そのものではなく、代謝産物を測定することで、間接的に機能を評価することができます。
これは、脚気の生化学的原因を示したエネルギーの代謝図です。
脂肪、炭水化物、タンパク質というエネルギー源は、体の細胞レベルでいえば、すべてアセチルCoAに変換され、アセチルCoAが TCA サイクルというエネルギーを作り出すサイクルに入ります。
炭水化物(ブドウ糖)が、ピルビン酸になり、それがアセチルCoAになりますが、ピルビン酸がアセチルCoAにならないと、このTCAサイクルに入れません。有機酸検査で、ピルビン酸が多くて、クエン酸が少なければ、ピルビン酸をアセチルCoAやクエン酸に転換する経路がどこかで詰まっているんだろう、と推測できます。ピルビン酸デヒドロゲナーゼというピルビン酸を変換する酵素の働きが悪いのか、もしくはその酵素の補酵素であるビタミン B 1が足りないのか、そのどちらかではないかと推測ができます。
車を運転しながら、ラジオを聴いていると、「首都高の代官町から浜崎橋まで5キロ渋滞です」と、流れてきたりしますが、どこのことかわかりますか? 首都高速に乗り慣れている人でないとわからないですよね? でも、首都高速に乗りなれていない人でも、この図をみれば、どこからどこまで渋滞しているか一目瞭然です。有機酸検査では、どこからどこまでが渋滞しているか、ということがわかります。
TCA サイクルの図で、何がどこで何に代謝されてどういう流れになって、というこの図が頭に浮かぶと、有機酸検査の結果から、どこが渋滞しているかがわかります。経路がストップされるので、代謝前の物質が溢れ出てきて、代謝後の物質の数値が下がるので、そこで代謝が止まっている、ということを見つけることができます。
有機酸検査の読み方
有機酸検査では70の項目から様々な情報を得ることができます。これらについて、セクションごとに解説していきます。
- 腸内環境(カビ、酵母、クロストリジウム、SIBO)
- シュウ酸(原発性、食事、カビによる):溜まっていると水銀が解毒できない、尿路結石の原因
- ミトコンドリア機能(TCAサイクル)
- 3大栄養素(糖質、たんぱく質、脂質)の代謝
- ビタミンの過不足
- メチレーション
- 解毒
腸内環境と真菌
検査の1ページ目は、腸内環境についてです。上半分は特にイーストと真菌をみています。イースト、カビ、真菌の仲間です。酵母とカビは別物です。酵母の代表はカンジダで、カンジダは、単細胞の丸い形をしています。時々胞子みたいなものを出して根を出し侵襲して、腸の粘膜を突き破理、全身に毒素を撒き散らします。リーキーガット症候群の一番の原因です。カンジダは、リーキーガットと全身症状を起こします。
カビで代表的なのは、アスペルギルスです。有機酸検査では非常に感度高くアスペルギルスを測ることができます。アスペルギルスとは、コウジカビみたいなものです。糸状に増殖して、その糸の先からたんぱく分解酵素を出し、有機物を分解して、味噌や醤油などを作るのが、アスペルギルスの良い面です。味噌や醤油を作るのは、アスペルギルス・オリゼーです。泡盛を発酵させるのは、アスペルギルス・アワモリです。
アスペルギルスの中には、悪玉もいて、アスペルギルス肺症を起こすものもあります。このカビの問題は、カビ毒、マイコトキシンを出すことです。体全体がだるくて、有機酸検査でアスペルギルスに問題があったら、カビ毒の検査をした方がいいです。
カビ
・アスペルギルス
コウジカビとも呼ばれ、自然界において最も普通に見られる。
アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)醸造に不可欠
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)
アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)発ガン性
・フモニシン
菌糸をだして増殖
毒素(マイコトキシン)放出
有機酸検査で、カンジダがいると数値が上がってくるのが、3番の3-オキソグルタル酸、6番の酒石酸、7番のアラビノースです。
酵母
・カンジダ・アルビカンス
仮根を出して侵襲性が高い 、LGSの原因
・サッカロマイセス
総合便検査をされた方もいらっしゃると思いますが、便検査のカンジダの検出率は高くありません。総合便検査は便を培養するのですが、腸内環境の菌のほとんどが嫌気性で、空気に触れると死滅してしまうため培養が難しく、感度という点では、有機酸検査の方が優れています。
ですから、私は最初に腸内環境検査をするんですけども、患者さんが良くなってきたら、良くなってきたことの確認に、有機酸検査を使うことが多いです。かなり感度が高いです。
例えばこの人の場合は、3-オキソグルタル酸とアラビノースが上がっていますよね。そんなに大した量ではないと思いますが、カンジダいるだろうと思います。
3番、6番、7番が上がっていたらカンジダ。2番、4番、5番が上がっていったらアスペルギルス。9番が上がっていたらフモニシン。これもカビの一種です。ですから、2番、4番、5番、9番が上がっていたら、マイコトキシンの検査した方がいいという指標となります。もちろん検査が全てではないですが、重要な手がかりになります。
カンジダのミトコンドリアへの影響についてですが、1番、6番はリンゴ酸、3番は2―オキソグルタル酸のアナログです。アナログというのは、模倣するものという意味です。形が似ているために、本来入るべき物質の代わりに、それらの物質がTCAサイクルに入り込んでしまいます。入り込みはしますが、働かないもで、TCA サイクルが止まってしまいます。カビが生えるとミトコンドリアの機能が落ちるということです。
菌種 | 検査 | ミトコンドリア | ||||||
1シトラマル酸 | リンゴ酸 | |||||||
2. 5-ヒドロキシメチルー2-フロイン | アスペルギルス | マイコトキシン | ||||||
3. 3-オキソグルタル酸 | カンジダ | 2-オキソグルタル酸 | ||||||
4. フランー2,5-ジカルボキシ酸 | アスペルギルス | マイコトキシン | ||||||
5. フランカルボニルグリシン | アスペルギルス | マイコトキシン | ||||||
6. 酒石酸 | カンジダ | リンゴ酸 | ||||||
7. アラビノース | カンジダ | |||||||
8. カルボキシクエン酸 | ||||||||
9. トリカルバリル酸 | フモニシン | マイコトキシン |
ミトコンドリア機能が落ちている原因として、第一にカンジダ、カビの影響を考えたいです。どうしても疲れが取れない人は、これらも原因になっているかもしれません。大事なことは、カンジダの炎症が副腎疲労を起こすということです。カンジダは炎症を起こすので、その炎症が下垂体に飛び火して、それが副腎にストレスかけます。副腎疲労もカンジダを起こしますよね?
ミトコンドリア機能低下もカンジダを引き起こします。副腎疲労になったら低血糖になるので、どうしても甘いものを食べずにいられなくなり、ほとんどの人がカンジダを発症しています。ミトコンドリア機能が落ちるということは、エネルギーを作るために安易にエネルギーになる糖質に手が伸びるということです。自分の体調が、気付かないうちに自分の食習慣を変えていますから、その結果、ミトコンドリア機能低下と副腎疲労、カンジダ感染が三つ巴で起きている人がとても多いです。カンジダがなかなか治らないという方も、多分その三つ巴の悪循環から抜け出せない人だと思います。自分一人で治療するのは、難しいと思いますが、これを理解して一つ一つを並行して対処すれば、改善に向かうと思います。
カンジタの検査で一番敏感なのは、7番のアラビノースです。アラビノースが上がっていたらカンジダがいるということです。アラビノースはペントシジン(AGE)を作り出します。AGEは最終糖化産物で、体の中で糖化を引き起こす張本人です。
アラビノースの悪影響のもうひとつは、シュウ酸を作り、シュウ酸結石がたくさんできてしまうということです。
カンジダの影響
・IL-6が下垂体及び副腎皮質を刺激する
Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 Aug 1; 97(16): 9317–9322.
カンジダの炎症も副腎疲労を起こす
・ 酒石酸、シトラマル酸はリンゴ酸のアナログ(構造が似ておりTCAで置き換わる)
・ アラビノースはリシン、アルギニンと結合しペントシジン(AGE)を作り出す
・MSメチオニン合成酵素はアセトアルデヒドで阻害される
Ann Clin Lab Sci. 1988 May-Jun;18(3):181-9.
・アセトアルデヒド分解にはNADH、B2、鉄、モリブデンが必要
また、カンジダはアルコール発酵してアセトアルデヒドを出し、メチオニン合成酵素を阻害します。メチオニン合成酵素は、活性酸素に弱く、アセトアルデヒドにも水銀にも弱いです。ですから、メチレーションも止まってしまいます。カンジダのアセトアルデヒドの分解には、マグネシウムに加えて、NADH、B 2、モリブデンが必要ですので、カンジダ除菌の前には、ダイオフ防止のために、これらの栄養の摂取しておいた方がいいです。
有機酸検査では、ビタミン B 群の量も把握できますので、カンジダ感染があったら、ビタミン B 2の量も確認してください。もしかしたら、カンジダ感染によって慢性的にビタミン B 2不足が起きていて、他の代謝経路に影響しているかもしれません。
これは、ナイスタチンという抗真菌薬を使ったら、カビの量が60日で減ったという論文です。確かに薬を使うとアラビノースも酒石酸もかなり下がりますが、肝機能障害を中心とした副作用がかなり気になりますので、私はまめにデータを取るようにしています。副腎疲労が強く、食事制限がかなり難しい人は、短期間で治療できるので、ナイスタチンは選択肢としてはいいかもしれません。ですが、再発率も結構高いので、そうではない人は、自然に除菌をした方がいいと思います。
有機酸検査の1ページ目の左下半分はバクテリアマーカー、腸内細菌バランスです。これらの数値が上がっていたらディスバイオーシスであるということです。バクテリアマーカーと書かれた上半分が腸内細菌一般で、下半分がクロストリジウムのマーカーです。クロストリジウムだけ別枠に設けています。その理由は、クロストリジウムが 精神疾患に非常に関連するからです。
破傷風に感染する人は、今はそんなにいないと思いますが、クロストリジウムテタニと言います。破傷風を発症すると、光と音にかなり敏感になって、精神的におかしくなるので、冷暗所で一時的に隔離するという治療があります。なぜ、そのような症状が出るのかというと、クロストリジウムがドーパミン代謝を狂わせるからです。
クロストリジウムのマーカーの15番、16番、17番、この3つは DβH(ドーパミンβヒドロキシラーゼ)を阻害します。ドーパミンがノルエピネフリンに変換される時に使われる酵素で、補酵素は銅とビタミン Cです。
脳疾患でDβHが出てきますが、銅過剰の人はこの酵素が働きすぎて、ドーパミンからノルエピネフリンに過剰転換されています。ですが、クロストリジウム感染がある人は、逆にドーパミンからノルエピネフリンへの変換が阻害されてしまいます。その結果、ドーパミンが過剰に溜まります。
バクテリアマーカーは、腸内環境が悪ければ上がります。加えて、10番の馬尿酸は、トルエンやコーヒーなどの食品でも上がります。11番にピロール障害とありますが、ウォルシュ博士の分類にあるピロール障害、体の中でピロール(ヘモグロビンの副産物)がたくさん作られやすい体質のことです。ピロールは亜鉛とビタミン B 6との親和性が異常に高いため、ピロールが尿中に多い、ピロール障害タイプの人は、慢性的にビタミンB 6と亜鉛不足になります。朝が起きられない副腎疲労のタイプです。
私はピロール障害なのですが、ピロールを調べたら患者さんの中で、私の値が一番高かったんです。朝がとても大変なんです。亜鉛を毎日とかなり多く摂ってます。ビタミン B 6を摂ると、耳の聞こえ良くなります。ワーワーした中で、人の声がよく聞こえないのですが、ビタミン B 6を摂るとよく聞こえるようになります。
12番、13番、この2つはパラベンも指標です。シャンプーなどに入ってるものですが、多すぎると上がることがあります。ですので、これらの要素を除いて、腸内環境を把握することが大事です。14番は良性細菌でも上がります。ビフィズス菌や乳酸菌、大腸菌が多すぎても上がります。
ですから、腸内環境改善しても、バクテリアマーカーにある数字がすごく高い場合は、SIBOの疑いをかけることができます。SIBOとは、腹部膨満感を引き起こす、小腸内細菌異常増殖です。小腸内の細菌過剰増殖でも、これらの数値は上がります。
神経疾患と密接に特に関わるのは、このクロストリジアのマーカーです。クロストリジウムは、芽胞を作るので結構しつこいです。抗菌剤に抵抗がありますので、治療に時間がかかります。
これは、ドーパミンの代謝図です。ドーパミンはフェニルアラニンから作られます。フェニルアラニンが、チロシンになり、ドーパになり、ドーパミンになり、ノルエピネフリンになり、エピネフリンになります。ドーパミンからノルエピネフリンに変わるところに、DβH(ドーパミンβヒドロキシラーゼ)という酵素がありますが、これを阻害するのが、17番の4-クレソールと、16番のHPHPAです。
HPHPAとは、フェニルアラニンがクロストリジウムにより、悪玉のようなものに変化した物質です。これがDβHを阻害し、ドーパミンからノルエピネフリンへの変換を止めてしまいます。
実際、精神疾患の人は、一般人と比較して、大量の HPHPA を排泄するということが論文で証明されています。また自閉症、統合失調症の患者さんの尿中においても、HPHPAの排泄量が増加しているというデータもあります。
こちらにも似たようなこと書いてあります。これに関係してはかなり古い論文が多いのですが、この2013年のものは、マウス実験で、4-クレソールに構造が類似している、4 EPS が多く見られ、精神症状のようなものが現れたと書かれています。
DβHを阻害するものは意外とたくさんあるということが、最近知られてきて、この有機酸検査で調べられるものの他に、このフェノール類が、DβHを阻害するのではないかと言われています。フェノールとは、芳香族炭化水素に、ヒドロキシ基(OH基)が付いているものです。エストロゲン、セロトニン、ドーパミン、チロシン、みんなフェノールです。OH基がたくさんあるとポリフェノールと呼ばれ、OH基のところに抗酸化作用があるので、良性の物質なのですが、このフェノールに過敏性がある人がいます。フェノール過敏症といいます。エイミーヤスコ博士の本や、自閉症の本に出てきますね?フェノールが多く含まれる食品を摂ると過敏になってしまう人、その理由はフェノールがDβHを阻害するからです。フェノールはフェノールイオン転移酵素で代謝されるのですが、特に子供の場合は、肝臓が未発達であるために、クロストリジウムが増殖すると症状が出てしまいます。
フェノール過敏症の人は、フェノールが多く含まれる食品を摂った時に、耳や頰が赤くなったり、多動になったり、睡眠障害になったりという症状が出るのですが、これらはドーパミン過剰の症状ですよね。ですから、自閉症のお子さんの場合は、腸内環境改善に加えて、特に低フェノール食が必要になることがあります。
クロストリジウムは、精神疾患に大きく影響するので、腸内環境を調べるに当たり、悪性菌の中でもクロストリジウムだけは、特別に調べた方がいいかもしれません。
クロストリジウムは、ミトコンドリアにも悪影響を及ぼします。このクロストリジウムは TCA サイクルに、短路を形成してATP 産生を低下させます。コハク酸の所が TCA サイクルと電子伝達系の両方で使われる酵素なので、すごく大事で、ここがうまく働かないとエネルギーがきちんと作れないのですが、ここに短路ができてしまい、ATP産生が低下してしまいます。
この論文は、自閉症のお子さんの論文ですが、ストレス環境要因が、腸内環境とミトコンドリアに大きく影響しているという結果を示した論文です。ミトコンドリア機能と消化機能の低下の2つが共通している自閉症のお子さんが非常に多いそうです。その原因として、ストレスとクロストリジウムが上げられています。クロストリジウム感染は、腸内環境を悪化させ、ミトコンドリア機能も低下させるということです。
ミトコンドリア機能が落ちていること自体も、やはり腸の蠕動や腸の消化吸収に影響するので、腸の消化吸収が上がらない人は、ミトコンドリアビタミンを摂っても上手く行きません。それ以外の方法で、ミトコンドリアを上げる必要があるので難しいです。
以上、ミトコンドリア機能を低下させる原因として、カンジタやカビ、クロストリジウムがあるという話でした。腸内環境とミトコンドリア機能を一緒に治していくことが重要です。
シュウ酸代謝
次は2ページ目です。これはシュウ酸を調べることができるシュウ酸塩の代謝物の検査です。19番、20番、21番とあって、21番がシュウ酸です。19番と20番はシュウ酸になる前の物質、前駆物質ですが、これらが高ければ、遺伝性原発性の高シュウ酸結晶を起こす引き起こす原因になるだろうと言われています。
シュウ酸が上がる原因は、遺伝、食べ物、カンジダです。シュウ酸はカルシウムと結びついて、カルシウムシュウ酸結石を作り、尿路結石の原因となります。それよりも問題なのは、シュウ酸が水銀と結びついて、シュウ酸水銀を形成し体内に溜まり、なかなか体外に排出されないことです。シュウ酸がもし高ければ、まずは食べ物をやめてみる、そしてカンジダ除菌をしてみて、シュウ酸が減ってくるかどうかをみるのがいいと思います。
シュウ酸代謝を示したのが下の図です。カンジダから来る経路がひとつあり、シュウ酸の前駆体がビタミンB6で代謝されるため、ビタミン B6が不足しているとシュウ酸ができやすくなります。ですから、原発性のシュウ酸代謝異常でも、ビタミンB6やマグネシウムを摂ることで、シュウ酸の量をある程度減らすことができます。
これはビタミンB6が関係している体の中の代謝を示しています。ビタミンB6はヒスチジンをヒスタミンに変えることができます。GOT と GPT の補酵素として働きます。トリプトファンがキノリン酸になるためには、ビタミンB6が必要です。ドーパミン、セロトニン 、GABA の生成にもビタミンB6が必要です。ビタミンB6は、基本的にたんぱく質の代謝に関わっています。大まかには、B1は糖質、B2は脂質、B6はタンパク質の代謝に関わっています。
アミノ酸系の神経伝達物質にビタミンB6は広く関わっています。脱炭酸酵素の補酵素としてビタミンB6が関わっているからです。その他にCOMT、ドーパミンやカテコラミンの代謝にも関わっていますし、CBSというアンモニアを作る酵素にも関わっていますので、ビタミンB6は結構複雑です。少なすぎても多すぎてもダメです。多すぎるとアンモニアがたくさんできてしまうし、キノリン酸も過剰に作られてしまいます。
カンジタ感染するとエストロゲンの代謝が狂ってPMS が強くなります。カンジダ感染する、シュウ酸ができる、ビタミンB 6が消費される、COMTがうまく働かなくなる、エストロゲンが相対的過剰になる、 PMS が強くなるという流れです。
これカルシウムシュウ酸結石です。実際に体の中も、pH 7.4だと、(COO-)2として遊離しているそうです。血中では2価のミネラルと特に塩を作って結びつきやすいです。2価といえば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、水銀です。
シュウ酸結石は、体のどこにでも行くそうです。尿管結石だけではなくて、筋肉の中にも入り込んで線維筋痛様症状が出るそうです。筋肉痛、線維筋痛症の症状を、シュウ酸を下げることで軽減できるというデータもあるみたいです。体の痛みがある場合、シュウ酸を考えたいですね。頭痛、排尿痛、慢性外陰膣炎に、シュウ酸が関係しているかもしれません。確かに、カンジダ膣炎の患者さんの中には、ヒリヒリする痛みがなかなか取れないとおっしゃる方も多いので、もしかしたらシュウ酸の影響なのかもしれません。
右下の数値は、解離定数、溶解度積というものですが、この数字が小さければ小さいほどシュウ酸との結びつきが強いということを示しています。カルシウムは10のマイナス8乗、
水銀は10のマイナス13乗ですので、10の6乗(5乗?)違います。つまり水銀は、カルシウムの100万倍(10万倍?)、シュウ酸と結びつきやすいということです。ですから、シュウ酸を何とかしないと水銀のデトックスが難しいです。解毒が上手くいかない人も、シュウ酸を考えてもいいかもしれません。シュウ酸が問題になっている人は結構多いと思います。
シュウ酸カルシウム結石が尿管結石のアメリカ人の場合は7割だそうです。日本人もカルシウム結石の人は結構いると思います。尿酸結石の人もいるのですが。結石ができるということは、塊が血管の中にできるということなので、大きいものは、結石として見つかるのですが、小さくて微細血管に詰まるものは結石として認識されません。でも確実にクレアチニンは上がってきます。クレアチニンが高いということは、筋肉量が多いということだと理解されていると思いますが、腎不全でも当然上がってきます。
クレアチニンの数値は、大体0.5から1ぐらいですが、2とか3になったら慢性腎不全です。8とか9になったら透析導入となります。クレアチニンが上がっている人は潜在的な結石の可能性も考えた方がいいと思います。その犯人はシュウ酸か尿酸、もしくは肝臓のフィブリノゲンではないかと、私は考えています。それらをチェックした方がいいです。潜在性副腎機能低下症の人は多いと、皆さんも感じていると思いますが、潜在性の肝臓機能低下症の人も、とても多いと思います。潜在性の肝機能低下は、慢性炎症であるので、フィブリノゲンなどが上がってきます。
エネルギー代謝
次は、エネルギー代謝についてです。
糖質と脂質、タンパク質は、どれもエネルギーになるのですが、生理的に考えて、人のメインのエネルギーは糖質だと思います。解糖系とは、2分子のブドウ糖がピルビン酸になる反応です。
ピルビン酸がアセチルCoAになって、 TCA サイクルの中で回るのですが、酸素がなかったり、ピルビン酸をアセチルCoAに転換する酵素もしくは補酵素がうまく働かなかったりすれば、ピルビン酸はアセチルCoAに転換されず、TCA サイクルは回りません。
それを見分けるのが、この乳酸とピルビン酸の量です。
これらの数値が高ければ、数字が赤く表示されるのですが、酸素が足りないのか、ビタミン B 群かCoQ10が不足しているのか、もしくはインスリン抵抗性があってブドウ糖が細胞の中に入れないのか、のどれかです。ある程度の原因は、ここまでわかれば絞れますので、見つけた原因に対処してあげることが大事です。
次は、ミトコンドリア機能を見るところです。このミトコンドリアマーカーで、上にある24番から29番の6つが TCA サイクルを評価する物質です。頭にある24番などの番号が、右の図の赤いところにある番号に対応しています。さっきの乳酸、ピルビン酸のところは、上にある炭水化物がアセチルCoAに入ってくるところです。
脂肪の代謝に関しては42番から49番、たんぱく質の代謝に関しては62番から74番がそれぞれ対応しています。
ピルビン酸がアセチルCoAになって、クエン酸、アコニチン酸、α-ケトグルタル酸、これらは27番、28番、29番と、逆に並んでいます。そして、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、これらは時計回りに同じ順番に並んでいます。ですから、有機酸検査見る時には、29番、28番、27番、24番、25番、26番、という風に回っているということを意識してみてください。
例えばこの人の場合は、クエン酸は正常なのに、アコニチン酸が下がっているので、クエン酸とアコニチン酸の間の回路がうまく回っていないということになります。クエン酸がアコニチン酸に行くところは、とても活性酸素に弱く、多くの方でこのような数字の変化が見られます。それは、酸化ストレスが強いのか、グルタチオンが足りないのか、もしくはフッ素や水銀の蓄積が多いのか、ということを示します。有機酸検査で圧倒的に多いのは、このパターンと、コハク酸の数字が上がっているパターンです。コハク酸だけ上がってしまうということは、コハク酸からフマル酸、リンゴ酸への代謝がうまくいない、つまり、コハク酸からフマル酸への転換酵素の補酵素であるビタミン B 2やCoQ10が足りないのかもしれません。ビタミンB 2は53番、CoQ10は55番ですので、これらも一緒に参照されたらいいと思います。
コハク酸が上がっている場合は、ビタミン B 2やCoQ10不足になりますが、その他にコハク酸が単独で上がることがあります。それは金属と非金属による毒性が強い時です。コハク酸は TCA サイクルと電子伝達系の両者に関わっていますから、非常にその毒素の影響を受けやすいです。体に水銀が溜まっても、ドライクリーニングのような有機溶剤が溜まっても、どちらでもコハク酸が上がりますから、この数字が上がる場合は、重金属や環境毒素の検査をした方がいいかもしれません。検査項目が非常に多いので、有機酸検査をすると、色々なことのスクリーニングができます。絶対とは限りませんが、とても参考になります。
フマル酸は、カンジダがあると上がります。フマル酸からリンゴ酸に行きにくくなるからです。カンジダでやられるからカンジダで上がることがあります。α-ケトグルタル酸の指標の2-オキソグルタル酸も、カンジタ感染でやられる場所です。α-ケトグルタル酸はグルタミン酸の親戚です。
グルタミン酸は、アンモニアのシャトルで、体に溜まったアンモニアを外に運び出します。グルタミン酸がアンモニアをもうひとつ付けてグルタミンになり、アンモニアを離してグルタミン酸になって戻るという動きをシャトルと言います。アンモニアの処理にグルタミン酸が使われるということで、α-ケトグルタル酸からグルタミン酸を持って行かれてしまうので、その結果、2-オキソグルタル酸が下がることになります。この数字が低い場合には、アンモニアの過剰を考えたいです。アンモニアが過剰になる一番の原因は便秘です。
下半分も、ミトコンドリアマーカーですけども、上がっている人がたまにいます。これらは電子伝達系にも関わると言われています。上半分がどちらかと言うと TCA サイクル、下半分が電子伝達系のマーカーなのかもしれません。対処法は、電子伝達系を動かすB 群、CoQ10、カルニチン、鉄の摂取です。
神経伝達物質代謝
次に、神経伝達物質の代謝についてです。
ドーパミン、ノルエピネフリン、そしてドーパミンとノルエピネフリンの比率がこの検査で出ています。
ドーパミンはチロシンから作られますので、ドーパミンが不足している人は、多分チロシンがうまく作れていないと思います。この例の人がそうです。ドーパミンは適正であるといいです。意欲や喜びをもたらしてくれる神経伝達物質ですので。上がりすぎると興奮して多動になるので、問題ですが、低ければ低いで問題です。やる気がなくなってしまい、依存症状が出ます。アルコールやギャンブルなどの依存症の人は、ドーパミンが低めだと言われています。
ドーパミンが低いと辛いので、症状としてはドーパミンを増やすような行動を取りがちです。いつも怒っているとか、運転が荒いとかです。そうすることで、ドーパミンを増やそうとしています。
無意識にカテコラミンを上げるような行動を取るのが、ドーパミンが低い人の特徴です。手っ取り早く治すには、チロシンの補給がいいです。ドーパミンが高ければ高いで不安やパニックになりますから、この場合は、クロストリジウム対策です。
ドーパミンの状態がわかるといいと思いませんか?
でも、絶対正しい、という訳ではないので、気を付けてください。ドーパミンはドーパミンを測っているわけではありません。
実際に測っているのはホモバニリン酸です。ドーパミンはこのCOMTやMAOなどのカテコラミン代謝の酵素によってホモバニリン酸に代謝されるので、その代謝産物を測っています。ですから、もしこれらの酵素がうまく働いてない場合は、多すぎたり少なすぎたりするかもしれないので、見る時に注意が必要です。
ただ、それを言い始めるときりがないので、まずは基本的なところを理解して、そこから考察を進めていくといいと思います。実際には検査と症状が違うことはいくらでもあります。でも原則はこういうことです。
ノルエピネフリンを反映するのが、バニリルマンデル酸(VMA)です。褐色細胞腫というカテコラミンをたくさん産生する、がんみたいな腫瘍の病気があり、この数値がものすごく上がってしまいます。その場合だけ、普通の病院では検査をしますが、こういう微量なものを普通の病院では検査はしません。ですから、そういう意味でこの検査は貴重です。
ノルアドレナリンを反映しますから、低いとうつ症状、高いとイライラします。集中に必要な神経伝達物質ですので、ADHD で注意力が散漫だったり、過集中だったりするのは、ノルアドレナリンのバランスが、非常に悪いことが原因です。過食症には、色々な原因がありますが、過食症の人には、大体トラウマがあります。痩せるために無理なダイエットして栄養不良になり、その反動で過食になる、という上下を繰り返す人が多いです。
ですが、前頭葉の働きがうまくいかなくて、自分の食事を律せず過食になっている人も結構います。そういう人は、ドーパミンとノルアドレナリンのバランスが悪いのですが、腸内環境改善すると、完璧に治ることがあります。そういう人は、大体ステラトラなどのノルアドレナリン再取り込み阻害薬などを飲んでいたりします。
ドーパミンとノルアドレナリンの比率を反映しているのが、この35番ですから、この比率が高ければドーパミン過剰、逆に低ければドーパミンからノルアドレナリンへの過剰転換が起きているということです。つまり、銅過剰であるはずなのですが、銅過剰の人でこの尿中のドーパミンとノルアドレナリンの比率が一致することはほとんどないので、銅過剰の診断には使えません。これが参考にできるのはクロストリジウムとの対比です。そう考えると、腸内環境は全部に影響するので、やっぱり腸ファーストが大事だと思います。
トリプトファン代謝
トリプトファン代謝についてです。
トリプトファンがセロトニン、メラトニンの方向に行く経路と、キヌレニン経路を通ってNADが作られる経路があります。トリプトファンからセロトニンに行くのは、普段から5〜10%ぐらいですが、炎症やストレスがあると、セロトニン経路が完全に止まってしまいます。それでセロトニン、メラトニンが作れなくなり不眠になります。
このトリプトファン代謝は、トリプトファンがキヌレニン経路に何パーセント行って、セロトニン経路に何パーセント行くかというのを教えてくれるインジケーターです。ですからセロトニンの量、実際には代謝産物の5-HIAA を調べていますが、キノリン酸の量も調べています。
ビタミンB6はグルタミン代謝に関わっています。
グルタミンがグルタミン酸になってGABAに変換されますが、そのグルタミン酸のGABAへの変換がうまくいかない人がとても多いです。
ビタミンB6の大量療法をするとそこがうまくいくのですが、ビタミンB6を大量に入れてしまうと、キノリン酸がたくさん作られてしまうというのが問題です。キノリン酸は、同じようにグルタミン酸の受容体を刺激するので、お子さんの場合、返って暴れ方がひどくなってしまうことがあります。
キノリン酸経路が働く理由は、最終的にこのNAD、ナイアシンを作って、ミトコンドリアを動かそうという体の防御反応なので、炎症が起きている場合は、まず一番に、炎症をとらなければいけないし、キノリン酸が溜まっている場合は、キノリン酸をうまく NAD まで流してあげることが必要です。
キノリン酸が溜まりすぎていてNADが作れないのは、マグネシウム不足がひとつの原因です。もうひとつの原因は、フタル酸です。プラスチックに入っている物質です。ですからこの検査でキノリン酸などが上がっていたら、体の中に感染や炎症が起きているということです。体内でこのインターフェロンガンマという炎症性のサイトカイン、炎症性物質が暴れているということがこれを見ると分かります。
このキノリン酸の比率が狂っている人はとても多いです。異常に敏感な炎症マーカーで、これもミトコンドリア機能に直結しますから、ミトコンドリア機能が上がらないと感じている人、疲れが取りきれないとか、手足の冷えが完全に治らない、と感じている人は、この比率を見てください。体の中に炎症が残っているのかもしれません。
筋炎、感染、炎症、脳のミクログリア活性化が起きています。もしかしたら、ピロリ菌なのかもしれないし、上咽頭炎や根尖病変があるのかもしれないです。炎症を徹底的にチェックして下さい。
NMDA というのは、グルタミン酸受容体のことです。 キノリン酸がNMDA型グルタミン酸受容体のアゴニストというのは、キノリン酸がそこを刺激するという意味です。まずは炎症の元を見つけること、そしてそれに対処すること、抗酸化アプローチが必要です。そして、ナイアシンが多分足りなくなっていますから、ナイアシンを摂るといいでしょう。
ここで言いたいことは、さっきの図と同じです。炎症が影響して、キヌレニン経路への流れをどんどん促進させるということを表しています。
右側がグルタミン酸受容体の図です。グルタミン酸受容体が興奮すると、カルシウムが一気にグルタミン酸受容体を通して入り、細胞死を引き起こします。それが炎症の元です。自閉症のお子さんは、脳の中でそのグルタミン酸神経が異常興奮して、慢性の炎症を起こしています。ですから、この悪循環を何とかして止める必要があり、このNMDA受容体を抑制するのが、亜鉛とマグネシウム、リチウムです。だからまずマグネシウムを入れることが大事です。右側を見ると、受容体を亢進させるものに、グルタミン酸とカルシウムがありますが、そこにキノリン酸も入っています。この図には入っていませんが、低血糖も受容体を亢進させます。低血糖を避けること、キノリン酸を避けるために体の炎症を取ることが、とても大事になります。
サプリメントよりも食事の方が100倍難しい
サプリメントよりも食事の方が100倍難しいです。
サプリメントはラベルに容量や何を抽出したものかも書いてあるので、テスター的に使えますよね?例えば、B3が足りないと検査からわかれば、ビタミン B3のラベルの付いたサプリメントを投与すればいいというすごく簡単なことですが、食品というのは、色々なものの相互作用が集まっているので、食事の方が難しいです。
サプリメントを大量に投与しすぎると、全体のバランスを狂わせてしまうので、大量に投与していい場合とダメな場合とがあります。ビタミン Bは典型例です。
炎症
炎症です。
炎症を見つけて炎症を止めることが、ミトコンドリア機能の回復にとても大事です。炎症マーカーのCRPはあまり感度が良くないです。高感度 CRPでさえ炎症のマーカーとしてはあまり良くないので、炎症を起こしている各部位を調べることも大事です。多分、フェリチンが慢性肝機能障害のマーカーになっていますし、フィブリノゲンも。有機酸検査のキノリン酸が微妙な炎症のマーカーになっていると思います。ミトコンドリア機能が上がりきらない人は、これらをチェックしてみてください。
炎症があると、トリプトファンが全部キノリン酸の方に行くので、セロトニンやメラトニンの方に全く行かなくなってしまいます。
では、どうやって脳の中にトリプトファンを取り込むのでしょうか?
食事からのトリプトファンは、脳血液関門(BBB)において、他の大型中性アミノ酸と競合します。ですから、もしトリプトファンを脳内に取り込みたいのであれば、大型中性アミノ酸を減らせばいいです。この BBB に関しては、酸性アミノ酸同士や中性アミノ酸同士が競合します。
酸性とか中性とかってわかりますか?
アミノ酸とは、アミノ基を持ったカルボン酸のことです。
アミノ基がややアルカリ性でカルボン酸が酸性です。だからアミノ基とカルボン酸の量が同じであれば、それは中性アミノ酸といいます。アミノ基が多かったら塩基性アミノ酸、カルボン酸が多ければ酸性アミノ酸です。人間の体の中で酸性アミノ酸とはグルタミン酸とアスパラギン酸の2つで、アミノ基とカルボキシル基の数が同じだから中性アミノ酸です。中性アミノ酸は、脳内に行く時の経路が一緒なので、これらを一度に取ると競合するということです。
BCAA、バリン、ロイシン、イソロイシンは、特にトリプトファンを阻害します。目が冴えるので、寝る前に BCAA 取ると眠れなくなります。逆に炭水化物を摂るとインスリンが上がりBCAA が取り込まれるので、その結果、トリプトファンが脳内に入り、リラックスした気持ちになります。トリプトファン代謝が上手くいってない場合は、そういうことも対処としては必要です。トリプトファンサプリメントではなく、5 HTPから摂ってもいいと思います。
ピリミジン代謝
次はピリミジン代謝です。
ウラシルとチミンが載っています。チミンはウラシルにメチル基が付いたものです。つまり、ウラシルとチミンはメチル化が、メチレーションが上手くいっているかどうかの指標になります。
この脂質代謝マーカーはなかなか使えます。項目がたくさんありますが、この右下の図は幹細胞の中のミトコンドリアの図です。
脂肪が入ってきて、この脂肪酸がミトコンドリアの中で使われればいいですが、使われない場合はスベリン酸やアジピン酸になってしまいます。45、47、48が特に脂肪が上手く使えないと上がってきます。では、どういう時に脂肪が上手く使えないかというと、それはカルニチンが足りない時です。脂肪酸はそのままではミトコンドリアの膜を通過できません。カルニチンはリジンやメチオニン、鉄、ビタミン C から生合成されていますから、もしかしたらこれらの栄養が足りないのかもしれません。
糖質制限をしようと思ったらどうしても脂質代謝がメインになりますので、糖質制限が上手くいかない人は、特にこの脂肪代謝マーカーを調べてみたらいいと思います。マーカーが上がっていたら、カルニチンを補給したり、食事を中鎖脂肪酸にシフトしたり、比較的カルニチンがなくても代謝される脂肪酸を上手く摂ったりするといいでしょう。
栄養素マーカー
その下は栄養素マーカーです。
有機酸検査は5万円くらいしますが、70何項目も調べられるので、血液データよりももしかしたらコストパフォーマンスが良いかもしれません。ビタミンB群、CoQ10、グルタチオンが調べられます。気を付けておきたいのは、このアスタリスク(*)が付いているものは、高いと逆に低いということで、高いと逆に足りないということなので、見誤らないようにしてください。
項目が多いので、総合作用を見比べられます。
例えば、ビタミンB6とシュウ酸ですが、もしかしたら、シュウ酸が高ければ、ビタミンB6が低いかもしれません。もちろん、他の要因でもビタミンB6は下がりますが。また、カンジダの代謝には、ビタミンB2が必要ですから、カンジダが高ければ、このグルタル酸が高いかもしれません。ビタミンB2が足りないと高くなるマーカーですから。
ビタミンCは、サプリメントで摂っていてれば、こんな風に上がりますが、その一方で、たくさん摂っていても、ゼロになる人がいます。これはアメリカへの輸送の関係で、ビタミンCがすぐ酸化されて、いくら取ってもダメな人がいます。特に夏に検査する場合は、ゼロになっている人が多いですから、そこは気にしないでください。
CoQ10とグルタチオンのマーカーです。基本的には、CoQ10のマーカーとして使えますが、HMG還元酵素阻害剤(スタチン)を摂ることによって、この数字は上がることがあります。グルタチオンは解毒物質のマーカーです。毒物が溜まれば、 N- アセチルシステインが消費されて下がります。
解毒
イオウ経路、硫酸経路、解毒の指標です。
グルタチオンは体の細胞の脂肪の中から水銀を取り出します。グルタチオンは、水銀を抱合、つまり水溶性に近いものにして、解毒するために、体にとって絶対に不可欠な物質です。
このピログルタミン酸と2-ヒドロキシ酪酸というのは、アスタリスク(*)が付いていますので、グルタチオンが欠乏すると上昇します。これらは硫酸経路に関係しています。硫酸経路は、ぐるぐる回っていますが、何か毒物があると、下の硫酸を作る方に経路が流れて、グルタチオンが作られます。このグルタチオンの副産物が、2-ヒドロキシ酪酸などだと考えてください。ですから、これらの数字が上がっている時は、グルタチオンがいっぱい作られています。つまり解毒の必然性があると体が判断しているということです。毒に暴露されたらこれら2つが上がると考えてください。
グルタチオンが足りなければ、サプリメントとしては、グルタチオンの前駆物質であるN-アセチルシステイン(NAC)や、もしくは僕が使っているのはリポゾーマルグルタチオンを摂ることです。グルタチオンは、トリペプチドで、アミノ酸が3つ繋がった構造をしていて、消化酵素に極めて弱く、摂っても上手く働かないことがあります。ですから、リポゾーマルタイプで、直接細胞の中に入るものを使うのか、もしくは消化酵素の影響を受けないクリームのようなものを使うのか、点滴で入れるのか、など、色々な方法があります。いずれにしても大事なことはグルタチオンが異常に消費されている原因検索をすることです。
これをしないと、いくら解毒しても毒が溜まっていったら意味がないので、ほとんど効果がありません。解毒しなければいけないほど、毒素が溜まっていたら、多分先ほど出てきたコハク酸のマーカーが上がっているでしょうから、それも一緒に調べておくことが重要です。コハク酸上がっているということは、金属か非金属の毒性に曝されている可能性があるということです。このように、有機酸検査は、交互に色々と見るところがありますので、検査をやっていない人はやりたくなってきたのではないでしょうか?
グルタチオンの下は、過剰アンモニアのマーカー、オロチン酸です。アンモニア毒性がある場合、尿素回路が上手く働いていない可能性があります。アルギニンやシトルリンを摂って回路を動かしてあげるといいでしょう。もうひとつの可能性は、便秘です。便秘の解消が必要です。
一番下は、サリチル酸やアセトアミノフェンです。解熱剤など、お子さんが使う場合、これらは解毒のシステムを止めてしまいますので、使っている場合、この数値が上がってきます。
アミノ酸代謝物
62番から74番までは、アミノ酸代謝物です。ミトコンドリアに入る脂質やタンパク質、炭水化物が全部わかります。ですが、このアミノ酸マーカーは、ちょっと私にはよくわかりませんが、先天性代謝異常で上がるマーカーも結構多いので、あまり上がっている人はいないです。強いて言えば、ほとんどの人のマーカーが左に寄っていますが、ビタミン B 群が足りない人は、少し上がる傾向があると思います。ビタミンB 群がないので、アミノ酸の代謝が少し詰まっている感じです。こういったところを参考にして、是非やってみてください。
毒性のマーカーが上がっていたら、もしくは毒物が溜まっているような症状があったら、解毒の検査もした方がいいと思います。毒が溜まっていそうだから、解毒をと考える人が結構たくさんいますが、もしそれが環境毒素だったり、自分が知らないうちに摂っている食物の中に含まれているものだったりしたら、いくら解毒をしても出ないです。ですから、本当にあるのかどうか調べて、その原因を特定することがとても大事です。
カビ毒はこれらの病気の原因になっていることがあります。
特定のカビによって生成される毒性化合物で、 NK 活性や、免疫グロブリンの分泌、グルタチオンを低下させます。ミトコンドリアを標的としていますから、疲れの原因として重要です。ミトコンドリアに影響するのがとても問題で、このマイコトキシンは、熱しても分解されにくく、環境の変化でも分解されにくく、除去が困難なことがとても問題です。さらに、このカビ毒は親油性ですから、脳に行きやすくて脳神経症状を起こしやすいです。子供だったら学習障害、大人だったら計算ができなくなったり、記憶力が低下したり、物事が考えにくくなったり、集中力が低下したり。これは何度も出てきている3型アルツハイマー病の原因です。副腎疲労でブレインフォグなんですと言ってきた人の中で、数名カビ毒の人がいました。
カビ毒は色々なものに入っています。多いのはアフラトキシンやオクラトキシンなどで、このオクラトキシンはカビ毒検査をすると、ほとんどの人に入っています。よっぽど汚染されているようです。
このカビ毒の検査は、マイコトックスといいますが、やらなければいけない人は正直そんなに多くないです。
本当にやるべき人は、輸入のピスタチオなどや、ちゃんと乾燥していないものをたくさん食べる人、食べていた人、10年前のものでも残っています。また、家が古い人、古い家に住んでいた人、10年前でも。カビ毒というのは、食べ物か空気で吸入するかどちらかですから、エアコンや空気清浄機、一度台風で水に浸かった家、元々湿っぽい家に住んでいる人は、やっぱり怪しいかもしれません。
症状としては、とにかくブレインフォグと慢性疲労、ミトコンドリア機能障害です。頭痛やめまいがする人も結構います。消化器症状、胃食道逆流症状が出る人も結構います。
さっき言ったように、2、4、5、9が有機酸検査で上がっている人。こういう人もカビ毒を調べた方がいいかもしれません。もしくはさっきのコハク酸(24番)が上がっている人は、毛髪水銀検査とカビ毒の検査の両方をされたらいいと思います。
43歳の女性、慢性疲労の方。
シトラマル酸が上がっています。3-オキソグルタル酸とアラビノースが上がっているので、カンジダ感染です。ですから、カビ毒マーカーの2、4、5は上がっていないですがカビ毒の検査をしたいと希望されたので行いました。
上がっていたのは、オクラトキシンとペニシリウムでした。検査の結果は、緑と赤で表示されるのですが、赤なのでかなりまずいと思うかもしれませんが、基準値が20までで、45ありますし。でも何か症状が出ているかというと、全く出ていません。オクラトキシンは多くの人が持っています。もちろん解毒をお勧めしました。これくらいだと、ほとんど症状としては出ません。すごく敏感な人は分かりますが。
出てはいけないのはアフラトキシンです。この人は、アフラトキシンは出ていません。アフラトキシンは、肝臓がんの発がんの原因と昔から言われています。これもアスペルギルスから出ます。こちらはほとんど出ませんが、オクラトキシンは9割くらいの人にみられます。どちらも発がん性がありますが、アフラトキシンの方が圧倒的に悪いみたいです。穀物、ぶどうジュース、ワインに入っています。
その他で多いのは、ゼアラレノンというものです。これは肝臓毒性と女性化ホルモン作用が強いので、男性更年期の原因になります。これが出ていたら、テストステロンを補充してもあまり上手くいかないです。
湿っぽい部屋に住んでいる場合、古い家に住んでいる場合は、このベルカリンを調べてください。これは免疫抑制効果があるそうです。ちょっと怪しいなと思って検査をする方が気を付けるのは、毛髪ミネラル水銀と同じですが、重症な人ほど出ません。毛髪ミネラル検査で、水銀レベルが低い人は、別に水銀が溜まっていない訳ではなくて、水銀を排泄する力が悪いかもしれません。これも全く同じで、マイコトキシンは親油性で脂肪細胞の中に入っていますから、グルタチオンがうまく使えない人、解毒能が悪い人は、検査をしても尿中に排泄されません。
水銀もそうですが、尿中検査の場合は、普通に出る人もいますけども、チャレンジテスト、実際にグルタチオンを飲んでもらってから検査をすることをお勧めします。 N -アセチルシステインを500mg ぐらい、1週間摂って、解毒体質にしてから出します。脂肪の中に入っているという事は、断食すると脂肪が分解されるので、できるだけ絶食時間を長く、12時間以上取って、次の日の朝や昼に検査をすると、結構今まで出なかった人が出るようになります。私も最初やってみたら全く出ませんでした。私も少し出ましたから解毒しました。