今回は、デトックスの中級編です。デトックス治療をするときの重要なポイントは共通しているので、デトックスのボトルネックをいかにして克服するかが大切になります。
1. 低血糖とミトコンドリア対策
1-1. Dr Kalishのmethod
機能性医学の権威、ダニエル・カリッシュ先生は、医療コンサルタントと栄養療法の講師をしています。彼曰く、患者さんが検査や治療に消極的なのは説明が悪いのが原因だそうです。患者にきちんと説明ができていないから、セールスにつながらない。つまり、売り上げというのは自分の技量の結果そのものなんですね。
さて、カリッシュ先生はいつも僕が解説している根本治療ピラミッドに似た概念を提唱しています。彼の治療ピラミッドは大きく、神経内分泌、消化器、デトックスの3つから成り立っています。
- 神経内分泌 1.糖質代謝 2.エネルギー産生 3.神経伝達物質代謝
- 消化器 4.バクテリア、クロストリジウム、イースト除菌
- デトックス 5.デトックス 6.酸化 7.メチレーション
神経内分泌の1番の糖質代謝とは、低血糖を治すということです。2番目のエネルギー産生はミトコンドリア機能を上げること、3番目は神経伝達物質代謝で、アドレナリンの過剰分泌があるとデトックス効率が落ちるので、全て整えてからデトックスした方が良いということです。
デトックス治療が上手くいくかどうかは、環境を整えられるかどうかにかかっています。肝臓がデトックスの要なので、肝臓の機能が上がると、デトックス治療をしなくても自然に毒が排出されます。
1-2.遺伝子よりも症状が大切
メチレーションの大家のベン・リンチ博士も、メチレーションは最後にケアすべきと言います。「DIRTY GENES」という著書の中で、「いくら遺伝子解析をしても、遺伝子が環境によって汚されると思うようにタンパク質を発現できない。そのため治療すべきターゲットは、遺伝形式ではなくて実際の表現型だ」と言っています。遺伝子検査の結果に一喜一憂せず、実際の症状に目を向けましょう。
1-3. 低血糖とミトコンドリア対策
一番最初に取り組むべきは低血糖のケアです。低血糖があると、エネルギーの供給障害でミトコンドリア機能低下に直結します。糖質代謝がうまくいかないとエネルギー(ATP)産生もできなくなります。肝臓はエネルギーを大量に消費するので、ミトコンドリア機能低下=肝機能低下ということになります。
肝機能低下を表す代表的な数字が、ASTとALTです。両者は、アラニン経路の酵素なので、これらの数値が低いということはアラニン経路が異常に活性化されて、低血糖の代償が行われているということです。いくらビタミンB6を摂ってもASTとALTが上がってこない方は、糖質のエネルギーがうまく供給されないので、アミノ酸が異化されていきます。夜間低血糖を起こす人は、眠りが浅く、筋肉が緊張しているため、朝から肩が凝っています。プロテインを摂っていても、タンパク異化を起こして筋肉がどんどん痩せていきます。
人間は本来、血糖値を維持するためにグリコーゲンを蓄積することができますが、肝臓には500kcal分しか貯蔵することができません。そのため筋肉の1500kcal分のグリコーゲンを間接的に使うべくアラニン回路が働きます。低血糖を頻発する人はアラニン回路が過剰に亢進しているので、筋肉がどんどん分解されます。肝臓のグリコーゲンの分解刺激はグルカゴンですが、筋肉のグリコーゲンの分解刺激はコルチゾールとアドレナリンなので、低血糖を頻発してる人はこれらが過剰となります。
だから、補食をしたり、薬で副腎のケアをして低血糖を落ち着かせて、ミトコンドリア機能を安定させることがデトックスの最初の一歩なのです。そのあとに消化器のディスバイオシス、それからリーキーガットを治すという順序になります。
2. 腸内環境を整え肝臓の炎症を抑える
デトックスの第二のボトルネックは、肝臓の炎症です。炎症がデトックスの第二段階の抱合に必要なグルタチオンを無駄遣いしてしまうし、肝臓の炎症があると胆汁がうまく分泌できなくなります。肝臓の炎症は様々な要因で起こりますが、一番の要因は腸です。
2-1.ストレス、ディスバイオーシスとLPS
ストレスが腸の透過性を亢進することは昔から知られていました。これは1996年の論文で心臓手術を受けている患者にリーキーガットが多いことを示すものです。
バイパス手術を受けている患者はリーキーガットを引き起こしている
Intestinal permeability, gastric intramucosal pH, and systemic endotoxemia in patients undergoing cardiopulmonary bypass
JAMA 1996 Apr 3;275(13):1007-12.
ストレスは、炎症、リーキーガットを引き起こします。リーキーガットになれば未消化のタンパクや腸管の病原菌、ウイルスなど様々なものが血中を経由して肝臓に到達します。リーキーガットと肝臓の炎症には密接な関連がありそうです。
SIBOと脂肪肝に有意な関連性
Small intestinal bacterial overgrowth and nonalcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis
Eur J Gastroenterol Hepatol2020 May;32(5):601-608.
腸内細菌のバランスが悪い人は炎症体質です。ディスバイオーシスとは、腸内細菌の多様性が失われている状態のことを指します。腸内細菌の数と種類が減ることで、悪性のグラム陰性桿菌の割合が増えて、その細胞壁の成分であるLPS(リポポリサッカライド)からエンドトキシンが分泌されて体の内外に炎症を引き起こします。
糖尿病性腎症の患者は、腸内細菌バランスが悪く、炎症レベルが高い
Dysbiosis of Gram-negative gut microbiota and the associated serum lipopolysaccharide exacerbates inflammation in type 2 diabetic patients with chronic kidney disease
Exp Ther Med. 2019 Nov; 18(5): 3461–3469.Published online 2019 Aug
2-2. LPSがMRPを抑制する
この全身に炎症を引き起こすLPSですが、実は解毒にも重大な悪影響を及ぼすことがわかっています。LPSは、肝臓に炎症を引き起こして肝機能を止め、細胞の外から入ってきた異物を捕まえて外に排出する多剤耐性タンパク(multi-drug resistance Protein ; MDP)の機能低下を引き起こします。
抗がん剤が効かない一番の理由がこのMRPタンパク質なので、近年非常に研究されています。細胞には元々異物を排出する仕組みが備わっているため、抗がん剤を大量に使っている人たちに対して、MRPをいかに阻害するかという薬を開発しています。デトックスをする人の場合、このMRPを逆に活性化するということが大切になってきます。
細胞内から細胞外に薬物を排出するためには、この図にあるように大量なエネルギーが必要です。細胞が活性化するためにミトコンドリア機能を上げる必要がありますが、このMRPが阻害される原因はLPSです。エンドトキシンは、第二相・第三相の解毒ともに阻害するので、腸内環境が悪い人は解毒ができません。まず腸を治すために、食事を変えて、ストレスを減らしてください。
さらに悪いことに、エンドトキシンは胆汁の流れを劇的に減少させます。胆汁は下記のように様々な機能を持っています。
- 脂肪の消化
- 解毒
- 抗菌
- 甲状腺ホルモン活性化(+胆汁が脂肪を分解して体が活発な甲状腺ホルモンを作るのを助ける)
胆汁が分泌されないと、脂溶性ビタミンも吸収できず、メチル水銀、農薬、マイコトキシン脂溶性などの毒物が解毒できず、甲状腺ホルモンの活性化も妨げられます。
マウスに胆汁を投与すると、褐色脂肪組織のエネルギー消費が増加して肥満とインスリン抵抗性が予防されます。胆汁は単なる消化液ではありません。油ものを食べると胃がもたれるという人は、解毒もできず、腸内の抗菌活性も保たれていないのでSIBOも起きやすく、甲状腺機能も低下していると思われます。
2-3. 胆汁分泌不全の兆候
Dr.サンドラ・カボットが、サイロイドと、リバーディスファンクションの関係の本を沢山出版されていますが、甲状腺機能低下の患者さんの半数以上は胆汁分泌に障害を持っているとおっしゃっています。
胆汁分泌が低下して出る症状は、下記の通りです。
- 肩甲骨の間または胸郭の下の痛み
- 明るい色または灰色の便
- めまい
- 脂肪の多い食事後の膨満感
- 不眠症
- 乾燥肌
- 脱毛
ビタミンDのサプリメントを摂っているのにビタミンDの血中濃度が上がらない人も、一度胆汁分泌ができているかどうかを確かめてみると良いと思います。甲状腺機能の低下に関連した脱毛もあります。胆汁分泌不全の原因は、肝機能障害も然り、化学物質の曝露による毒素の蓄積や、ストレスホルモンであるコルチゾールの過多が胆汁分泌を妨げます。胆汁分泌も胃と同じように副交感神経支配だからです。
副交感神経の迷走神経は枝分かれしていて胃と胆のうに伸びているため、緊張すると胆のうや胃の動きも止めてしまいます。解決策として、Dr.サンドラ・カボットは、ココナッツオイルやMCT、クランベリーを推奨しています。甲状腺機能の低下が改善されない人は、リバークレンジングジュースで検索して、胆汁分泌を改善させてください。
2-4. LPS↑を疑う症状と検査
このエンドトキシンが悪さをして胆汁に炎症を引き起こし、胆汁分泌を止めてデトックスを妨げます。下記の症状がある方は要注意です。
症状
- 鼓腸
- 過敏性腸症候群
- 膨満
- 口臭
- 食物アレルギー
- うつ 不安
検査
- 血中ゾヌリン↑
- 良性細菌の低下
- 細菌多様性の低下
- 食物アレルギーIgG↑
- アラビノース↑
- カルプロテクチン↑
腸内環境の良し悪しは、腸と脳の症状で見ます。様々なエビデンスが出ていて、腸内環境の悪化=うつ、不安、緊張、パニック、などの精神症状を引き起こすため、精神症状が安定しない人は腸をチェックしてみてください。
検査での血中ゾヌリンはリーキーガットの良い指標です。CSA(腸内細菌検査)で良性細菌の低下、もしくは細菌の数や種類が減っていたら多様性の低下が考えられます。食物アレルギーが上昇していたり、カンジタならアラビノース、便中及び血中のカルプロテクチンは腸の炎症を表す良い指標のひとつです。これらを総合して、数値に問題がある人はデトックスはまだ時期早々か、行ったとしてもあまり効果が出ないでしょう。
まずは腸内細菌や腸内環境を改善してください。様々な方法がありますが、乳酸菌をサプリメントで入れるのが近道です。プロバイオティクスとプレバイオティクスをうまく使い分けるのがコツですが、プロバイオティクスを入れるということは強制的に腸内環境細菌を良くするということで、生着はしませんが便の状態が改善されます。
2-5. グルタミンの有用性
僕が一番重要視しているのはグルタミンです。特に低血糖からの流れで腸内環境が悪い人は、グルタミンが減少しています。低血糖の発作時に低血糖があると、筋肉で身体の中にアミノ酸が一番分解されるのはアラニンとグルタミンです。アラニンは糖新生に使われ、グルタミンも一部エネルギーとして使われますが、グルタミンの用途はストレスで失われるのと、腸粘膜の修復で失われるため、低血糖で腸内環境が悪い人はグルタミンが足りません。グルタミンを補給すれば夜間の低血糖の防止にもなり、筋肉が痩せていくのを抑制することができます。
グルタミンの使用量は、少ない人は5g〜でも十分ですが、多い人で50g、または15gを1日3回摂る人もいます。グルタミンは腸の水分量を調整するので、摂り過ぎると便秘になりますが、マグネシウムを併用することで便のコントロールはある程度可能です。便通に関しては、マグネシウムがアクセルで、グルタミンがブレーキとなります。ストレスで両方失われるので、両方摂ることをお勧めします。便中のカルプロテクチンを下げるのにグルタミンは有用です。リーキーガットが改善されるということは、肝炎が治るということです。肝炎が治って肝臓の細胞がきちんと働きだしたら、デトックスの第一相と第二相が働き出します。
グルタミンが重症熱傷患者の腸透過性を改善し、入院期間を短縮
Effects of enteral supplementation with glutamine granules on intestinal mucosal barrier function in severe burned patients
Clinical Trial Burns.2004 Mar;30(2):135-9.
2-6.まとめ
ディスバイオーシスは、
- 肝臓に炎症を引き起こし
- MRPタンパク質の発現を低下させ
- 胆汁の流れを止める
まずは徹底的に腸を治療してください。ドクター・カリッシュのメソッドで、1番目が低血糖、糖質代謝の改善、2番目がミトコンドリア、3番目が神経伝達物質代謝です。そこを落ち着かせてから、4番目に腸内環境に取り掛かりましょう。
デトックス治療というのは、デトックスに最適な環境を整えることで、副腎疲労の治療と似ています。副腎疲労の治療というのは副腎サプリを摂ることではなく、副腎が治るのに最適な環境を整えてあげることです。引き算で考えて、炎症とストレスと低血糖発作を取ってあげることが大切です。
3. グルタチオン
デトックスのボトルネックの3番目は、細胞内グルタチオンの濃度が上がらないことでした。いかに細胞内グルタチオン濃度を上げるかという、ここからが本題となります。
3-1.グルタチオンとは
グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンという3つのアミノ酸から成るトリペプチドで、身体の中で2つの重要な機能を持っています。一つは細胞内の主要な抗酸化成分で、細胞内環境の抗酸化の集約です。それとともに、毒物や薬物の細胞外への排泄も執り行っています。他の抗酸化物質に比べてグルタチオンは特別に濃度が高く、酸化型と還元型のグルタチオンがありますが、NADHやビタミンB2、B3が働いて、細胞内の還元型グルタチオンを98%以上になるように保っています。
細胞内の還元型と酸化型のグルタチオンの比率が細胞毒性の評価指標、もしくは酸化ストレスの評価指標だと言われています。細胞内の指標は、血中濃度で測ることができます。メチレーションが低下している人は、この還元型と酸化型のグルタチオンの比率が低く、グルタチオンを還元する力が弱いです。
Phase1は酸化、活性化です。油の中に溶けている安定した毒物を排泄するために、活性化させて不安定にさせる必要があります。酸化させるためには、ビタミンB群が大量に必要で、実際に行うのはシトクロム、P450です。
Phase2は、活性化したものを抱合して水に溶けやすい物質と抱き合わせにします。その主役を担うのがグルタチオンで、Phase2のセンターピンは、細胞内グルタチオン濃度です。センターピンというのはボウリングの一番前に立っているピンのことです。ここのセンターピンを倒すと全部倒れるので、センターピンを外さないことです。
グルタチオンの半減期は12分なので、良いグルタチオンサプリを使っても即効性と持続性は両立しません。解毒の場合には細胞内グルタチオン濃度を高く保ち続けることが大切なので、やはり環境をいかに整えるかが大切になります。
3-2. グルタチオンの体内反応
グルタチオンは、細胞の中で還元と解毒という2つの働きを持っています。上の式は、還元です。過酸化水素がグルタチオンと結合することによってグルタチオンが酸化されて、過酸化水素は還元されて水になります。過酸化水素を還元しています。
GS-SGは酸化されたグルタチオンです。これは、NADPH、ビタミンB3によってまたグルタチオンに還元されて、その反応が繰り返されます。
この酸化還元反応を触媒しているのがグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)という酵素で、補酵素はセレンです。グルタチオンがあるだけでは酸化還元反応は進みません。GPXという触媒が媒介してくれることによって、酸化還元反応が起きるので、セレンが不足している人は細胞内環境がうまくいきません。グルタチオンを働かせるためにはセレンとナイアシンを摂らなければいけないということが分かります。
これは、メチレーションの中の硫酸経路の図です。
ホモシステインは独立した動脈硬化の因子で、不安定な物質であるシステインに変換されると、活性酸素があったり、鉄が多く存在する環境ではシスチンに変化し、シスチンがリアクティブニトロゲンスペーシーズ(RNS)になります。活性酸素(ROS)とRNSは、友達みたいなものなのでホモシステインが多すぎると、活性酸素の元となります。
ホモシステインが高すぎる人は、ビタミンB6、B12、葉酸を適宜摂ってメチレーション回路を回してください。B6を摂ることによって、CBSという酵素が活性化されて、システインにどんどん代謝されていきます。CBSの酵素はSAMe、活性酸素、ビタミンB6はセレンによって活性化されます。逆にこれを止めるのはシステインとグルタチオンです。
身体の中でグルタチオンを作る経路はこれしかないので、システインに、グルタミン酸とグリシンが結合してグルタチオンになります。この上流にあるホモシステインが適度にあると良いんですが、10以上は高くて動脈硬化の原因となり、5以下でもグルタチオンを作る材料がないということで問題になります。
CBSの遺伝子変異がある人はこの経路が活性化しやすいと言われていますが、実際にはこのホモシステインの数字を見たほうが良いです。CBSは遺伝子変異もありますが、システイン、グルタチオン、SAMeなどCBS酵素に影響を与えるものが多いので、遺伝子型よりも表現型(実際の数字)を見て、治療に役立てたほうが良いでしょう。
4. 肝臓(フェーズ1とフェーズ2の動き)とデトックスの原則
4-1. 肝臓(フェーズ1とフェーズ2の動き)
下記は、肝臓の中でフェーズ1とフェーズ2がどのように動いてるかという図になります。
Phase1が、チトクロームP450酵素、Phase2は抱合(Conjugation )です。Phase1に必要な栄養素は、アミノ酸も必要ですが、活性化のためにはビタミンB群が主役です。
Phase2に至るために重要なのは抗酸化物質です。Phase1はビタミンB群、Phase2は抗酸化物質、そしてPhase3はS、硫黄です。これらの重要な栄養素は、BASと覚えると覚えやすいと思います。
ここで大事なのが、Phase1からPhase2に引っかかる人が多いということです。Phase1はビタミンB群で活性化されますが、実際はストレスやアルコールでも活性化されます。細胞内グルタチオンの濃度が低い、活性酸素が多い、体内で炎症を起こしているなど様々な理由で、細胞内グルタチオン濃度が低い人というのはPhase2で止まっていて、これが一番困るパターンです。活性化されがものがそのまま体に残ってしまうので、活性酸素を二次的に発生させて組織のダメージにつながってしまいます。細胞内環境の修復が急務です。そういう方には、肝臓の炎症を取ってからデトックス治療をしてください。
4-2. デトックスの原則
① 脂と水を適切量とること
- 脂肪は中枢神経の60~80%を構成する
- 不足すると水銀や農薬など脂溶性毒素の攻撃を受けやすい
- 十分な水分がないと腎臓で適切な濾過ができなくなる
- 水分を細胞内に入れ込むことが重要(そのためにはミネラル)
② 毒素の再分布は悪化を招く
- 腸肝循環における再吸収
- フェーズ1のみ活性化されるとデトックスクライシス
- 経口での吸着物質なしでのキレーションは脳への再分布の可能性
デトックス治療で一番最初にやるべきことは質の良い油と水を適量取ることです。脂肪は脳の乾燥重量の6割から8割を占めているので、脂肪が不足すると水銀や農薬などの脂溶性毒素の攻撃を受けやすくなります。油は体に悪いのでなるべく摂らないようにしているという方がいますが、良い油を積極的に摂らないとデトックスにはならないです。
十分な水分がないと適切な毒素のろ過ができないので、水も沢山摂ってください。水を飲んでも細胞の外に入れ込むだけなので、細胞外液を増やすのではなく細胞の中に水分を入れ込むのがポイントです。そのために細胞内ミネラルを一緒に摂ることです。細胞内に多く存在するミネラルであるカリウムとマグネシウムを摂ることによって、細胞の中に水が供給されるようになります。それが解毒の第一歩です。
毒素の再分布が一番問題だということも覚えておいてください。再分布とは、腸肝循環における再吸収により、モルヒネなどの薬は肝臓で一度代謝されて、胆汁で排出されたあと、また腸から吸収されて肝臓に戻ります。それを何回か繰り返しているので、なかなか薬として抜けずに薬剤性肝障害の元となります。メチル水銀も腸管循環を繰り返していますが、腸が悪く便秘だとさらに腸肝循環が悪くなります。そのため水溶性食物繊維を意識して摂って、余計な毒物を排泄するというのがとても大事になってきます。
Phase1からPhase2にうまく繋げないと、活性化されたものが肝臓の中に溜まってしまい、毒素を悪化させる要因となります。これをデトックスクライシスと言います。最近、ミネラルをキレート化できる薬物を経口や点滴で入れるキレーション治療というものがあります。DMSAや、EDPAなどの硫黄や活性酸、クロレラなどの吸着物質が入っている薬を使います。これらを使わずにキレーションだけすると、脳に届いて悪化を招きます。
5. グルタチオンの上手い使い方
グルタチオンのサプリメントを使って細胞内グルタチオン濃度をあげる方法をご紹介します。
5-0.問診する
最初に重要なのは問診です。赤ワインを飲んだら不眠になるか、頭痛起こるかを聞いてください。何故かというと、グルタチオンには硫黄が含まれるからです。グルタチオンというのはグリシン、グルタミン酸、システインの3つのトリペプチドで、システインの中に硫黄を含み、硫黄負荷がかかります。
グルタチオンは、ある程度以上身体に入ると身体にフィードバックがかかってシステインをグルタチオンに変換する酵素の働きが悪くなるため抑制されて、硫黄を代謝する方向に流れます。硫黄を代謝する経路は、最終的に亜硫酸塩がSUOXで硫酸塩に変換され、尿になって身体から出ていきますが、炎症がある、モリブデンが足りない、ヒ素や胆のうが溜まっている、SUOXにスニップがある、遺伝子変異がある人というのは、硫黄を摂ると頭痛がしたり喘息が出たりします。
宮澤医院では、デトックス治療をする前に、硫黄アレルギー、玉ねぎ、ブロッコリー、にんにくなどを食べて具合が悪くなる方は申し出てくださいと伝えています。
ワインに含まれる酸化防止剤も亜硫酸塩なので、ワインを飲んで気持ち悪くなる人というのは硫黄代謝がうまくいってない人です。僕は3,000円以下のワインを買ったら、亜硫酸塩を飛ばすために、一杯だけグラスに注いでボトルを振ります。空気の隙間ができたらキャップをもう1回締めて、20回くらい振り、その後キャップを開けるとシューという音がします。これをすることによって悪酔いをしません。
5-1. 水を入れる
- 脱水=毒素の濃縮
- 水を補給するタイミングは「ちょっと脳が疲れたとき」
- 脳は脱水に敏感
問診が終わったら、まず水を補給して毒素の濃縮を薄めることから始めます。特に脱水に敏感な臓器である脳のデトックスが大事なので、水を頻繁に補給してもらうようにしてください。ちょっと疲れたなと思ったらそれは脱水症状なので、カフェインを補給するではなくて、水分を補給してください。
5-2. ミネラルを補給する
正しい水分補給というのは細胞内ミネラルを摂ることと同義です。ミネラルは水を引っ張る性質があるので、細胞内ミネラルを摂ることが細胞内に水を引き込むことになるのです。カリウム、マグネシウムなどのミネラルを十分補給してください。
5-3. モリブデンを摂る
硫酸の活性化をするため、モリブデンを摂ってください。モリブデンといえばこの3つを覚えておいてください。
- アセトアルデヒドの代謝
- 硫黄の代謝(SUOXの補酵素)
- 尿酸代謝(XOの補酵素)
黄色いのがモリブデンです。カンジタ治療をする時には、アセトアルデヒド脱水素酵素の補酵素としてマグネシウムと一緒にモリブデンを入れておくと、ダイオフが少なくて済みます。モリブデンを使って、硫黄の代謝をスムーズにしてください。グルタチオンが大切だと言うと、ついグルタチオンの量が増えてしまいますが、共に使う補酵素を消費するので、バランスが大事です。
モリブデンを使うと尿酸代謝が上がるので、元々尿酸が高い人は気をつけてください。尿酸が低くて活性酸素が足りずに抗酸化力が弱い人は、使用して大丈夫です。尿酸値を増やしたい人はモリブデンを使ってみましょう。尿酸値を減らしたい人は体をアルカリ化してください。尿酸は、アルカリ環境下で排泄が促進されます。
5-4. 抗酸化物質を摂る
抗酸化物質が足りないとグルタチオンが抗酸化に使われてしまうので、抗酸化物質を摂りましょう。
5-5. リボフラビンを摂る(グルタチオンの還元に必要)
ビタミンB2、B3は、グルタチオンの還元環境を保つのに必要です。
5-6. ブロッコリースプラウトを摂る
Phase2はグルタチオンが主役ですが、その他にグルクロン酸抱合も重要です。これを活性化してくれるのがブロッコリースプラウトです。ブロッコリースプラウトは安価のため、POORMAN’Sグルタチオンと言われていますが、グルタチオンに負けず劣らず効果が高いので、毎日摂るべきです。ラディッシュスプラウトと、ブロッコリスプラウトをミックスするとより効果が高いそうです。咀嚼することで活性化されるので、食べ物で摂ったほうが良いと思います。
5-7. 少量頻回に摂ること(半減期12分)
グルタチオンは、少量頻回の方が効きやすいです。白玉点滴というタチオンを入れる点滴があります。美白に効果が高く、モデルさんが使っているので白玉点滴という名前がついたようです。内容物は、グルタチオンで一つ200mgを5本、1,000mgくらい一度に点滴します。美白の効能については分かりませんが、肝機能の向上になり、お酒を飲んだ翌日は楽になると思います。
ただ、半減期が短く持続力はありません。細胞の膜を貫通して入るリポソーマルタイプのグルタチオンは、非常に即効性があります。リポソーマルグルタチオンを発売している会社のインタビューを見ると、「まずリポソーマルグルタチオンを飲んだら喉元に貯めておいてください。20秒、30秒〜1分くらい貯めておくと頭がスッキリしてきます」と言っています。即効性があり、細胞膜を超えて入ってくるので、良い使い方だと思います。脳に近く、細胞内の抗酸化をするから、頭がすっきりします。
ただし、持続と即効性は違うので、半減期が短いグルタチオンをうまく使うには、ティースプーン1杯を一度に摂るのではなく、1/4のティースプーンに4回に分けて摂ったほうが解毒に関しては効果が高いので、補酵素との影響を考えて少量頻回で摂って下さい。
5-8. 遺伝子について
グルタチオンに関しては、ホモシステインの数字を見て補酵素がきちんと働いているかどうかを見てください。ベン・リンチ博士は、色々な要素が大き過ぎて遺伝子変異だけでは予測がつかないので、ホモシステインからシステインに、システインからグルタチオンにどのくらい変換されているか、グルタチオンを過剰摂取したらフィードバックがかかる可能性と、その結果も考えながら上げる要素、下げる要素を理解して使いなさいと言っています。
では、どれくらいの量を摂ったらフィードバックがかかるでしょうか。グルタチオンは肝臓だけで1日10gくらい作られます。500mgのグルタチオンサプリを一度摂って、フィードバックがかかるかは疑問です。
ただし、身体は硫黄が大量に入ってくると硫酸経路を活性化させ、排泄する方向に動くので、フィードバックは実際にかかるということは試験管の中で確認されているようなので、そういう働きはあると思いますが、はっきりしたことはまだ分かっていません。
6. グルタチオンサプリの副作用
グルタチオン=グリシン+システイン(硫黄)+グルタミン酸
6-1. グルタミン酸による副作用
グルタチオンは、グリシン、システイン、グルタミン酸から成っています。システインの硫黄の負荷のことは以前お話しした通りですが、グルタミン酸による副作用が出る人もいるので気をつけてください。
グルタミン酸は脳のカルシウムチャンネルを開放します。カルシウム、低血糖は、グルタミン酸神経を刺激します。グルタミン酸神経が開放されて、カルシウムが沢山入ってくれば、炎症を引き起こして細胞死を起こします。これは、自閉症の子どもの脳によく起こるので、低グルタミン酸食にしてもらいます。イライラ、頭痛、MSG、過敏症、不眠症が起きている人は、グルタチオンによる副作用なのかもしれません。有機酸検査でキヌレニン経路が亢進して、脳に炎症が起きている人は副作用が起きやすいです。
グルタミン酸とキヌレニン酸、キノリン酸は、脳の神経毒物です。電磁波過敏症の人は、カルシウムチャンネルが開放を刺激するので、グルタチオンが足りていないことが多いです。5Gが怖いと思っている人は、細胞内グルタチオン濃度を上げてください。
6-2. 硫黄による副作用
前述したように、グルタチオンは硫黄の代謝物だということを忘れてはいけません。
7. どんなタイプのグルタチオンを使うべきか、基質と酵素のバランスが大事
7-1. グルタチオンレベルは低すぎても高すぎても問題
グルタチオンレベルが低いか高いかは、個人によって差があります。ブレインフォグ、頭がクリアでない程度に合わせて飲むグルタチオンの量を調整してください。リポソームグルタチオンなら2、3滴からスタートして、ティースプーンを1/4、半分、または1杯を1回に摂ってみて、症状に変化があるかを試してみてください。赤血球中のグルタチオン濃度を測るのは高価なので、症状で微調整するのが現実的でしょう。
7-2. どんなタイプのグルタチオンを使うべきか
グルタチオンのサプリメントは下記のように様々あります。
・S-acetylglutathione
グルタチオンはトリペプチドなので、胃酸で切られると効力がなくなりがちですが、最近出たiHerbで購入できるSアセチルグルタチオンというサプリはアセチル基だけが切られるので、細胞内グルタチオン濃度を上げるのに良いそうです。
・ラクトバチラス・ファーメンタンス(グルタチオン産生腸内細菌)
ラクトバチラス・ファーメンタンスという乳酸菌は、グルタチオンの産生能力がある菌だと言われています。ただし発酵して腹部膨満を起こす人がいるので、注意した方が良いかもしれません。
・NAC
他に有名なのはNACのNアセチルシステインです。システインがグルタチオンの前駆体なので、Nアセチルシステインを使うのは良い方法だと思います。前駆体を入れておけば身体の中で都合よく変換してくれるからです。Nアセチルシステインの問題点は、このGCLの酵素がマイコトキシンで阻害されるということです。これに関した論文がいくつかあるので、マイコトキシンの検査をして溜まってる人は NACではなくてグルタチオンそのものの方がいいかもしれません。
・グルタチオン点滴
グルタチオンの点滴に関しては、「リポゾーマルグルタチオンのサプリメントの方が、赤血球中グルタチオンレベルの上昇度が高い」というドクターズデータ社の検査の方の非公式コメントが出ています。点滴でも上がりますが性能が良いサプリメントの方が効果は高いらしいので、うまく組み合わせて使うのが良いだろうと思います。
大切なのは基質と酵素のバランスをとることです。グルタチオンはセレンがないと活性化できず、リボフラビンがあって初めてリサイクルでき、モリブデンがあって硫黄代謝ができます。グルタチオンだけ入れると、競合して使われる他の栄養素が枯渇するので気をつけてください。基質を入れる時はいつでも、酵素に負荷をかけすぎないように気をつけてください。
僕が今使っているのはこちらです。
ある先生が推奨していたのでこれを使っていますが、使っている一番の理由は不味くないからです。グルタチオンのサプリメントの欠点の一つは硫黄が入っているため不味いことです。 上記は、グルタチオンに加えて、リボフラビン、セレン、モリブデンが入っています。PQQというのは抗酸化の補酵素で、細胞膜を柔らかくするフォスファチジルコリンもセットで入っているので、基質と酵素のバランスが考えられていて使いやすいと思います。
このシーキングヘルス社のサプリはベン・リンチが作っていますが、彼のインタビューで、アンケートでは全く受け付けない人は3%しかいなかったとのことでした。それほど多数でないですが副作用として、痙攣と自己免疫の反応があるということです。アメリカではリーキーガットのせいか、癌や心臓病より自己免疫疾患の患者が飛び抜けて多くなっているので、そのような症状で困っている人がグルタチオンを使っていると推測します。
他に僕が使っているのはリサーチ・ドニュートリショナルというもので、グリセリンが沢山入っていてスイカ味とオレンジ味があって、味が中和されているために採用しました。また、個包装なので酸化しにくいと思います。沢山量を摂ることではなくて、細胞内環境を整えることが大事だと思うので、その補助として頻回に使うと良いでしょう。
これは、ウィリアム・ウォルシュ博士のスライドからお借りしたメチレーション、低メチレーションとオーバーメチレーションの原因の図です。
ホモシステインが高くなる人の多くは、低メチレーションが原因です。低メチレーションになる人の原因の一番は、MTHFRの遺伝子変異です。MTHFRはホモシステインが特に高い人は調べる価値があるかもしれません。
SAMeが沢山作れるかで、オーバーメチレーションかアンダーメチレーションかが決まりますが、SAMeは作られたものの7割が筋肉で使われるので、AGATやGAMTなど筋肉を作る酵素がうまく働いていない人は、筋肉が作られずメチル基が余ってしまいます。高メチル化の人は、いくら運動しても筋肉がつきません。低メチル化の人は少し運動すれば筋肉がつきます。筋肉がつきやすいということは筋肉を作るのにメチル基が全部持っていかれるため、低メチレーションになります。僕のホモシステインは7ぐらいなので、比較的低メチレーションだと思います。ホモシステインは、簡単に血中濃度を測れるので、ちょうど良い値になるように調整するように心がけてみてください。
8. 症例 46歳女性 慢性疲労
8-1. 主訴
- 貧血でふらつく
- だるい日はやるべきことが捗らない
- 少しでもジャンクなものを食べると必ず体調が悪くなる
- 夜になると動けなくなる
- いつもはコーヒーを2杯ほど飲んでなんとか活動している
- ここ2年で体重が8kg増えた
- 元気にパワフルに過ごしたいです
症状で特筆すべきは、中性脂肪が極端に低いことです。中性脂肪が低い=エネルギー代謝が低いです。特にアドレナリンが沢山出ている人の場合は、アドレナリンが中性脂肪を分解して遊離脂肪酸に変えるため、低血糖があってエネルギー代謝が悪いことは容易に想像できると思います。
8-2. 血液データ
食後高血糖があるのか、1.5AGがとても低いです。炎症の影響なのか、銅亜鉛バランスも悪いため、銅過剰タイプなのかもしれません。炎症のマーカーはそれ程高くはないですが、ピロリ菌がいることが炎症の引き金になっているのかもしれません。ペプシノゲンが少し高いです。
フェリチンは37で、MCVは108です。つまり、鉄欠乏と大球性貧血が混在しているので、恐らく鉄欠乏に加えてB12の消化吸収の障害及び甲状腺機能の低下があるでしょう。実際にTSHおよびT3がとても低いです。T3が低くてTSHが低いというのはフィードバックがかけたくてもあまりかけられてない状態なので、長年に渡って中枢神経が抑制を受けてる状況じゃないかと考えられます。
このデータを見て、どうやってデトックスするのかということを考えてみてください。最初にお話ししたドクターカリッシュのメソッドを思い出してください。デトックスの一番最初にやることは低血糖の改善でした。2番目がミトコンドリア機能の改善でした。この方は低血糖症もあるし、ミトコンドリア機能低下もあるでしょう。
8-3. 腸内環境
腸内環境を見てみると、良性菌のラクトバチルスが1+と少なく、境界型菌が5つ出てますから、ディスバイオーシスは結構進んでいるのではと考えられます。
消化吸収マーカーを見てみると、エラスターゼが208と低下しています。これは500以上が標準なので消化酵素は低く、そのためにディスバイオーシスを起こしやすい原因になっています。下の炎症マーカーを見てみると、標準が1くらいのラクトフェリンが3.2、カルプロテクティンは10くらいでそれほど大きくありませんが、標準100のリゾチームが148で、炎症が少し見られます。
ディスバイオーシスがあり、消化酵素が落ちていて、炎症があるので、乳酸菌を足した方が良さそうです。消化酵素が少ないので、場合によってはSIBOの検査をした方が良いでしょう。
短鎖脂肪酸を見ると、トータルの総短鎖脂肪酸は6.7、その中の酪酸は1.8で、比較的低いので、もう少し足してあげたほうが良いです。元々この短鎖脂肪酸が低いのは乳酸菌が少ないせいです。短鎖脂肪酸は食物繊維が良性の細菌によって発酵されたもので、これが不足するとミネラルが吸収できなかったり、腸管循環が起きやすくなります。この方の場合は低血糖を治して、ミトコンドリア機能を上げて、腸内環境を治してあげることが重要です。腸内環境を治すには、乳酸菌を入れて炎症を抑えて消化酵素を少し足してください。だんだんお腹の調子が良くなってくるでしょう。
8-4. 毒物検査
46歳で、できれば妊娠もしたいというお話だったので、毒物検査もしていただきました。いくつかの毒物が出ましたが、特に高かったのは有機リンです。母体に有機リンがあると、自然流産やIUGRが起こりやすいので、デトックスしたいとご希望がありました。
最後にオリゴスキャンを見てみましょう。アルミニウム、銀、カドミウムが高いです。
日本人では標準な方ですが、有害金属の毒性を見るとトータル属性が高いので、デトックスをした方が良いと判断します。
あくまでも参考程度ですが、オリゴスキャンの検査ではPhase2とPhase3の状況が分かります。このPhase3の硫黄との結合状態に要注意と出ているのでうまくいってないだろうと思います。一番下の酸化ストレスと抗酸化薬は緑と黄色なので、酸化ストレスに関しては心配ないでしょう。ただこの検査だけでははっきり分からないので、有機酸検査や、他の血液検査から細胞内環境を推定していく必要はあります。尿酸値が低い、ビリルビンが高いというのは活性酸素が沢山出ているということです。
8-5. 有機酸検査
- アラビノース
- クロストリジウム
- SIBO
- シュウ酸
- リボフラビン
- ビタミンC
- ミトコンドリア
- キノリン酸
- NAC
- ピログルタミン酸
- 2ヒドロキシ酪酸
解毒をする人はぜひ有機酸検査をしてみてください。有機酸検査では、解毒に必要なマーカーが10個くらいあり、これらを全部クリアしたらデトックスできるという印です。アラビノース、クロストリジウム、SIBO、アラビノースはカンジタの治療、クロストリジウムは腸内細菌バランス、SIBOも同じです。SIBOはDHPTAを見ればわかります。
有機酸検査で有用なのはシュウ酸がわかることです。シュウ酸というのはカンジタ感染や食べ物の多さで上がりますが、水銀と結びついてシュウ酸水銀になると水銀のデトックスができなくなるため、シュウ酸が高いうちにデトックスはしないでください。次に見るのはビタミンです。ビタミンCの血中濃度は有機酸検査では下がりやすい所ですが、抗酸化力の指標になります。
リボフラビンを見ると、ビタミンB2が見れます。ビタミンB2は有機酸検査では上がりやすい所です。グルタル酸というところで、ビタミンB2は低く出やすい場所です。なぜならばビタミンB2はカンジタの代謝で使われるからです。カンジタ感染を起こしている人はリボフラビンが低く出ます。甲状腺機能が低下している人も、リボフラビンが低く出ます。ビタミンB2が低いということはグルタチオンは還元できないということです。ここもチェックしておいてください。
ミトコンドリア機能を見るのも重要です。ミトコンドリアにはATPが必要ですが、解毒やMRPタンパク質を使うのにもミトコンドリアが必要です。キノリン酸Nアセチルシステインも測れます。
最後はピログルタミン酸と2ヒドロキシ酪酸。この二つはグルタチオンマーカーとして58番と59番に載ってます。この二つが高いということは解毒が体内で働いているか、グルタチオンが体内で枯渇しているかを表しています。有機酸検査でこの11個のマーカーを見て、解毒治療に役立ててください。
8-6. 治療経過
低血糖を治してミトコンドリアをフォローして、神経伝達物質バランスを治してください。この方の場合は銅亜鉛バランスがかなり悪いので、亜鉛を摂るのはとても有用です。ドーパミン代謝が悪いはずです。それが終わったら消化器と肝臓のケアをしてください。f僕がいつも使っているサプリメントをご紹介します。Phase2を助けるのは、こちらです。
Liver Nutrientsには、肝臓の胆汁排泄をあげるミルクシスルが入っています。
Nアセチルシステインとリポゾーマルグルタチオンを一緒に使うと、血中濃度細胞内グルタチオン濃度を安定させるのに有用です。グルタチオンの半減期は短いので、前駆体を入れることで安定します。タウリンは、胆汁排泄や、細胞内にマグネシウムを入れ込む時に役立ちます。他にメチレーションを回すためにベタインやトリメチルグリシンが入ってます。αリポ酸はSH基が付いているので、Phase3に役に立ちます。
リポソーマルグルタチオンにリボフラビンや補酵素が、リバーニュートリエンスにミルクシスル、Nアセチルシステインが入ってるので、この2つを僕は組み合わせて使うようにしています。場合によってはウルソという胆汁排泄用の薬と、たまに使うのがタチオン、iHerbで売っている還元型のグルタチオンを主に使って、抱合して胆汁排泄を促します。
胆汁から排泄してきたらその毒素をキャッチして再吸収を防ぐには、下記の活性炭、クレメジンという薬、クロレラをよく使うようにしています。ケイ素を入れると水銀の抗酸化に役立つとので一緒に使っています。
この方の場合は、甲状腺機能の低下症があったので途中からナチュラルサイロイドを使いました。
腸内環境処方
- ウルトラフローラ
- ビタミンA
- トレースミネラル
- DaVinci リポソーマルC
- カンジダアウェイ
- リフキシマ
- インターフェーズ
デトックス処方
- ミヤBM
- リバー
- 亜鉛・マグネシウム
- グルタチオン
- B12
- 葉酸
- クロレラ
- ケイ素
ミトコンドリア機能を上げるのに、どうしても甲状腺機能がネックになる場合があって、その場合は起爆剤として甲状腺ホルモン(自然ホルモン)を使うとうまくいくことがあります。この方の場合は治療後のT3がも3.6まで上がりました。
治療期間は1年半くらいかかりましたが、貧血も治って低血糖症の症状も改善して表情も明るくなりました。デトックス後、有機リンはギリギリくらいまで下がり、症状も大分良くなりました。