こんにちは、宮澤です。
先日、ある患者さんに「先生、サラダ油って全部悪なんですよね?YouTubeで言ってました」と真顔で聞かれました。
その数日前には、別の方が「オメガ3サプリ飲んだら心房細動になるってニュース見て怖くてやめました」と…。
映画の中だと、医者は何でも即答してくれるヒーローですが、現実の僕たちは、こういう“情報の渋滞”をどう整理してあげるかが勝負どころなんですよね。
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### Kara Fitzgerald, NDによれば…
今回読んだ
**「Seed Oils vs Science: What the Data Shows | Dr. Bill Harris」** では、オメガ3・オメガ6・シードオイルの論争を、「感情」ではなく「エビデンス」でかなり丁寧に整理していました。
ざっくり要点を1段落でまとめると:
> オメガ3(EPA・DHA)の血中濃度を示す「オメガ3インデックス」は、心血管疾患、認知症、糖尿病、うつ・自殺リスク、全死亡リスクまで、かなり広範囲な健康アウトカムと関係していて、「8〜12%」くらいが理想的なターゲットゾーン。
> サプリ高容量の一部試験では心房細動リスクがわずかに上がるデータもあるけれど、絶対リスクはごく小さく、ベネフィットの方が明らかに大きい。
> そして“悪者”にされがちなオメガ6(とくにリノール酸)やシードオイルは、血中濃度が高い人ほど心血管疾患や糖尿病、総死亡リスクが**低い**というデータが多数あり、「オメガ6=炎症」という単純なストーリーは科学的には成立していない。
> つまり、「良い脂・悪い脂」の二元論や、きれいな経路図だけで語る栄養学では現実の人間の体は説明できないからこそ、オメガ3インデックスのような“測れる指標”を使いながら、一人ひとりに合わせて脂質戦略を考えるべきだよね、という話でした。
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### 僕から見ると:「脂質の話」がこじれる理由
僕から見ると、脂の議論がこんなにこじれる一番の理由は、
**「みんな“図”が好きすぎる」**からなんです。
・オメガ6 → アラキドン酸 → 炎症性エイコサノイド
・オメガ3 → 抗炎症 / 炎症消退メディエーター
この図、めちゃくちゃ分かりやすい。
だからこそ、頭の中でこんなストーリーが勝手に完成しちゃう。
> シードオイル(オメガ6多い)
> → 摂るほど炎症
> → だからゼロにした方がいい
> → オリーブオイル最強、魚油だけ飲んどけ
でも、臨床経験から言うと、現実はもっとカオスです。
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### 外来で実際に起きている「頭の中の会話」
脂の相談に来る人の頭の中って、だいたいこんな感じです:
– 「サラダ油は毒って聞いた」
– 「でも揚げ物もスナックもやめられない」
– 「魚高いし、家族が嫌がる」
– 「オメガ3サプリはいいって聞くけど、ニュースで怖い話も見た」
– 「結局、何をどれくらい食べればいいの?」
ここを僕なりに整理すると、質問はこう変換できます。
1. 「シードオイルって本当に“即アウト”レベルで体に悪いの?」
2. 「オメガ3って、どのくらい“ちゃんと”摂れば意味があるの?」
3. 「サプリはどのラインを超えるとリスクが出てきそうなの?」
4. 「血液検査で“今の自分”をどこまで見える化できるの?」
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### データを踏まえて、日常レベルに落とすと…
記事と自分の臨床をミックスして、
「現実的にこう考えようよ」というラインを整理すると、こんな感じです。
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#### ① シードオイル=即悪ではない
リノール酸(オメガ6)の血中濃度が高い人ほど:
– 心血管疾患リスク ↓
– 2型糖尿病リスク ↓
– 全死亡リスク ↓
というデータが積み上がっている、というのはかなり重要ポイント。
なので、
– 「シードオイルだから無条件に悪」
ではなく
– 「酸化した油」「揚げ物の頻度」「総カロリー・超加工食品の量」
の方が、よほど問題になっていることが多い、という見方が自然です。
→ 僕の外来でも
「揚げ油を何回も使い回す」「毎日コンビニフライドチキン」
こういう“調理法&頻度”の方が、検査値や体調と綺麗にリンクします。
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#### ② 本当に足りてないのは、オメガ3
記事の中の数字も、自分の印象とほぼ一致していて:
– 日本人でもオメガ3インデックスは5%前後の人が多い
– 「理想ゾーン」は8〜12%
– ベジタリアン・ヴィーガンはさらに低い傾向
外来で脂肪酸プロファイルを見ると、
– オメガ6「多すぎ」より
– オメガ3「少なすぎ」の方が圧倒的に多いです。
つまり、問題の本丸は
**「オメガ6を減らす」より「オメガ3を増やす」**こと。
ざっくりの目安でいうと:
– 青魚(サバ・イワシ・サンマ・サケなど)
→ 週3〜4回以上
– それが難しければ、EPA/DHA合計で
→ 1,000〜2,000mg/日レベルのサプリを検討
このくらいにしてやっと、
「検査上も体感も変わり始める」ってことが多いです。
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#### ③ 高容量サプリと心房細動:怖がり方を間違えない
記事でも解説されていたように:
– 高リスク(心血管病リスクが高い人)
– 高用量(3〜4g/日レベルのEPA or EPA+DHA)
– というかなり特殊な条件で
– AF(心房細動)が
2% → 3% みたいに“絶対リスク+1%”で増えた試験がある
一方で、
– 一般~中等度リスクの人が
– 食事+サプリで1〜2g/日程度とっている範囲では
「血中オメガ3が高いほどAFリスクはむしろ低い」
というデータの方が圧倒的に多い。
僕の感覚としては:
– 一般的な健康目的のサプリ量(〜2g/日程度)
→ 心房細動を必要以上に怖がる必要はない
– すでにAFがある人・多剤内服中で高用量を検討する人
→ 担当医と相談しながら、2g/日以下から慎重に
という運用が現実的だと思っています。
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#### ④ 背景を無視して「脂だけ」いじると失敗する
栄養療法あるあるなんですが、
> サプリや特定栄養素だけを
> ガッと増やして
> 生活習慣や炎症の土台は放置
これをやると、たいていこじれます。
– 睡眠崩壊
– 運動ゼロ
– 高血糖・高インスリン
– 慢性のストレス+腸内環境の乱れ
この土台ごと炎上しているところに、
いきなり大量PUFA(多価不飽和脂肪酸)だけドンと入れるのは、
車検も受けてないオンボロ車にターボだけ載せるようなもので、
結果のブレが大きくなるんです。
だから僕は、
1. 血糖・インスリン
2. 体重・内臓脂肪
3. 腸内環境・炎症マーカー
4. 生活リズム(睡眠・ストレス・運動)
この辺りをざっくり整えながら、
**オメガ3は“ベースのインフラ”として少しずつ底上げしていく**
という順番をおすすめしています。
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### 栄養療法として「脂質から何を学ぶべきか」
ここまでを、もう一度シンプルにまとめると、
– 「シードオイル=悪」
– 「オメガ6=炎症」
– 「オメガ3サプリ=心房細動の原因」
こういう“キャッチーな恐怖ストーリー”は、
データの全体像を見ると、かなり崩れてきているってこと。
栄養療法として本当に学ぶべきは、
– 「どの脂が良い・悪い」ではなく
→ **自分(or 患者)の体の中で、今どうなっているかを測る視点**
– なんとなく「比率」を語るのではなく
→ **オメガ3インデックスのような具体的な指標でゴールを決めること**
– 脂質の経路図だけではなく
→ **アウトカム(実際の病気・死亡リスク)とセットで考える癖**
そして何より、
> 「だからこそ、脂質を“怖がるため”じゃなく
> “味方につけるため”に学ぶべき」
というマインドセットなんです。
栄養療法って、
「足りないものを足す」とか「余分なものを引く」以上に、
**体のデザインを理解して、その意図に沿う**作業に近い。
脂の話は、その入り口として最高の教材だなと改めて感じました。
また書きますね!
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参考にした記事:
[Seed Oils vs Science: What the Data Shows | Dr. Bill Harris](https://www.drkarafitzgerald.com/2026/04/21/omega-3-seed-oil-debate-harris/)

