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宮澤賢史

有機酸検査の読み方

宮澤賢史 · 2019年11月15日 ·

有機酸検査は、グレートプレインズ研究所のウィリアム・ショー博士が開発した検査です。彼は小児科病院で、自閉症の子供に適切な検査の研究を行っていました。たまたま尿中の物質のクロマトグラフィーという検査をしたら、正常人と自閉症のお子さんでは、全く異なる物質があることを発見したのです。

それがアラビノースというカンジダが生成する物質でした。細かく調べてみると、自閉症のお子さんと普通のお子さんで、いくつか違うものがあることに気が付いて、検査項目を増やしたそうです。

現在の有機酸検査はミトコンドリア機能や神経伝達物質など様々な要素が加わり、大人にも有益な検査項目を備えています。

近年、多くの会社が有機酸検査を提供するようになりましたが、今回はグレートプレーンズ社の検査を取り上げます。

有機酸検査の仕組み

有機酸検査では、腸内にあるもの、そのものをみるのではなく、腸内にあるものが産生している物質をみます。腸内にあるものの代謝産物が血液中に上がってきて、最終的に濾過されて尿中に排泄されます。ですから、血中よりも尿中の方が成分が濃縮されて、敏感な指標となります。血中ではわからないものが尿中に溜まってくるということです。そのものではなく、代謝産物を測定することで、間接的に機能を評価することができます。

これは、脚気の生化学的原因を示したエネルギーの代謝図です。

脂肪、炭水化物、タンパク質というエネルギー源は、体の細胞レベルでいえば、すべてアセチルCoAに変換され、アセチルCoAが TCA サイクルというエネルギーを作り出すサイクルに入ります。

炭水化物(ブドウ糖)が、ピルビン酸になり、それがアセチルCoAになりますが、ピルビン酸がアセチルCoAにならないと、このTCAサイクルに入れません。有機酸検査で、ピルビン酸が多くて、クエン酸が少なければ、ピルビン酸をアセチルCoAやクエン酸に転換する経路がどこかで詰まっているんだろう、と推測できます。ピルビン酸デヒドロゲナーゼというピルビン酸を変換する酵素の働きが悪いのか、もしくはその酵素の補酵素であるビタミン B 1が足りないのか、そのどちらかではないかと推測ができます。

車を運転しながら、ラジオを聴いていると、「首都高の代官町から浜崎橋まで5キロ渋滞です」と、流れてきたりしますが、どこのことかわかりますか? 首都高速に乗り慣れている人でないとわからないですよね? でも、首都高速に乗りなれていない人でも、この図をみれば、どこからどこまで渋滞しているか一目瞭然です。有機酸検査では、どこからどこまでが渋滞しているか、ということがわかります。

TCA サイクルの図で、何がどこで何に代謝されてどういう流れになって、というこの図が頭に浮かぶと、有機酸検査の結果から、どこが渋滞しているかがわかります。経路がストップされるので、代謝前の物質が溢れ出てきて、代謝後の物質の数値が下がるので、そこで代謝が止まっている、ということを見つけることができます。

有機酸検査の読み方

有機酸検査では70の項目から様々な情報を得ることができます。これらについて、セクションごとに解説していきます。

  • 腸内環境(カビ、酵母、クロストリジウム、SIBO)
  • シュウ酸(原発性、食事、カビによる):溜まっていると水銀が解毒できない、尿路結石の原因
  • ミトコンドリア機能(TCAサイクル)
  • 3大栄養素(糖質、たんぱく質、脂質)の代謝
  • ビタミンの過不足
  • メチレーション
  • 解毒

腸内環境と真菌

検査の1ページ目は、腸内環境についてです。上半分は特にイーストと真菌をみています。イースト、カビ、真菌の仲間です。酵母とカビは別物です。酵母の代表はカンジダで、カンジダは、単細胞の丸い形をしています。時々胞子みたいなものを出して根を出し侵襲して、腸の粘膜を突き破理、全身に毒素を撒き散らします。リーキーガット症候群の一番の原因です。カンジダは、リーキーガットと全身症状を起こします。

カビで代表的なのは、アスペルギルスです。有機酸検査では非常に感度高くアスペルギルスを測ることができます。アスペルギルスとは、コウジカビみたいなものです。糸状に増殖して、その糸の先からたんぱく分解酵素を出し、有機物を分解して、味噌や醤油などを作るのが、アスペルギルスの良い面です。味噌や醤油を作るのは、アスペルギルス・オリゼーです。泡盛を発酵させるのは、アスペルギルス・アワモリです。

アスペルギルスの中には、悪玉もいて、アスペルギルス肺症を起こすものもあります。このカビの問題は、カビ毒、マイコトキシンを出すことです。体全体がだるくて、有機酸検査でアスペルギルスに問題があったら、カビ毒の検査をした方がいいです。

カビ
・アスペルギルス
コウジカビとも呼ばれ、自然界において最も普通に見られる。
アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)醸造に不可欠
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)
アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)発ガン性
・フモニシン
菌糸をだして増殖
毒素(マイコトキシン)放出

有機酸検査で、カンジダがいると数値が上がってくるのが、3番の3-オキソグルタル酸、6番の酒石酸、7番のアラビノースです。

酵母
・カンジダ・アルビカンス
仮根を出して侵襲性が高い 、LGSの原因
・サッカロマイセス

総合便検査をされた方もいらっしゃると思いますが、便検査のカンジダの検出率は高くありません。総合便検査は便を培養するのですが、腸内環境の菌のほとんどが嫌気性で、空気に触れると死滅してしまうため培養が難しく、感度という点では、有機酸検査の方が優れています。

ですから、私は最初に腸内環境検査をするんですけども、患者さんが良くなってきたら、良くなってきたことの確認に、有機酸検査を使うことが多いです。かなり感度が高いです。

例えばこの人の場合は、3-オキソグルタル酸とアラビノースが上がっていますよね。そんなに大した量ではないと思いますが、カンジダいるだろうと思います。

3番、6番、7番が上がっていたらカンジダ。2番、4番、5番が上がっていったらアスペルギルス。9番が上がっていたらフモニシン。これもカビの一種です。ですから、2番、4番、5番、9番が上がっていたら、マイコトキシンの検査した方がいいという指標となります。もちろん検査が全てではないですが、重要な手がかりになります。

カンジダのミトコンドリアへの影響についてですが、1番、6番はリンゴ酸、3番は2―オキソグルタル酸のアナログです。アナログというのは、模倣するものという意味です。形が似ているために、本来入るべき物質の代わりに、それらの物質がTCAサイクルに入り込んでしまいます。入り込みはしますが、働かないもで、TCA サイクルが止まってしまいます。カビが生えるとミトコンドリアの機能が落ちるということです。

菌種検査ミトコンドリア
1シトラマル酸リンゴ酸
2. 5-ヒドロキシメチルー2-フロインアスペルギルスマイコトキシン
3. 3-オキソグルタル酸カンジダ 2-オキソグルタル酸
4. フランー2,5-ジカルボキシ酸アスペルギルスマイコトキシン
5. フランカルボニルグリシンアスペルギルスマイコトキシン
6. 酒石酸カンジダリンゴ酸
7. アラビノース カンジダ
8. カルボキシクエン酸
9. トリカルバリル酸フモニシンマイコトキシン

ミトコンドリア機能が落ちている原因として、第一にカンジダ、カビの影響を考えたいです。どうしても疲れが取れない人は、これらも原因になっているかもしれません。大事なことは、カンジダの炎症が副腎疲労を起こすということです。カンジダは炎症を起こすので、その炎症が下垂体に飛び火して、それが副腎にストレスかけます。副腎疲労もカンジダを起こしますよね?

ミトコンドリア機能低下もカンジダを引き起こします。副腎疲労になったら低血糖になるので、どうしても甘いものを食べずにいられなくなり、ほとんどの人がカンジダを発症しています。ミトコンドリア機能が落ちるということは、エネルギーを作るために安易にエネルギーになる糖質に手が伸びるということです。自分の体調が、気付かないうちに自分の食習慣を変えていますから、その結果、ミトコンドリア機能低下と副腎疲労、カンジダ感染が三つ巴で起きている人がとても多いです。カンジダがなかなか治らないという方も、多分その三つ巴の悪循環から抜け出せない人だと思います。自分一人で治療するのは、難しいと思いますが、これを理解して一つ一つを並行して対処すれば、改善に向かうと思います。

カンジタの検査で一番敏感なのは、7番のアラビノースです。アラビノースが上がっていたらカンジダがいるということです。アラビノースはペントシジン(AGE)を作り出します。AGEは最終糖化産物で、体の中で糖化を引き起こす張本人です。

アラビノースの悪影響のもうひとつは、シュウ酸を作り、シュウ酸結石がたくさんできてしまうということです。

カンジダの影響
・IL-6が下垂体及び副腎皮質を刺激する
 Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 Aug 1; 97(16): 9317–9322.
カンジダの炎症も副腎疲労を起こす
・ 酒石酸、シトラマル酸はリンゴ酸のアナログ(構造が似ておりTCAで置き換わる)
・ アラビノースはリシン、アルギニンと結合しペントシジン(AGE)を作り出す
・MSメチオニン合成酵素はアセトアルデヒドで阻害される
Ann Clin Lab Sci. 1988 May-Jun;18(3):181-9.
・アセトアルデヒド分解にはNADH、B2、鉄、モリブデンが必要

また、カンジダはアルコール発酵してアセトアルデヒドを出し、メチオニン合成酵素を阻害します。メチオニン合成酵素は、活性酸素に弱く、アセトアルデヒドにも水銀にも弱いです。ですから、メチレーションも止まってしまいます。カンジダのアセトアルデヒドの分解には、マグネシウムに加えて、NADH、B 2、モリブデンが必要ですので、カンジダ除菌の前には、ダイオフ防止のために、これらの栄養の摂取しておいた方がいいです。

有機酸検査では、ビタミン B 群の量も把握できますので、カンジダ感染があったら、ビタミン B 2の量も確認してください。もしかしたら、カンジダ感染によって慢性的にビタミン B 2不足が起きていて、他の代謝経路に影響しているかもしれません。

これは、ナイスタチンという抗真菌薬を使ったら、カビの量が60日で減ったという論文です。確かに薬を使うとアラビノースも酒石酸もかなり下がりますが、肝機能障害を中心とした副作用がかなり気になりますので、私はまめにデータを取るようにしています。副腎疲労が強く、食事制限がかなり難しい人は、短期間で治療できるので、ナイスタチンは選択肢としてはいいかもしれません。ですが、再発率も結構高いので、そうではない人は、自然に除菌をした方がいいと思います。

有機酸検査の1ページ目の左下半分はバクテリアマーカー、腸内細菌バランスです。これらの数値が上がっていたらディスバイオーシスであるということです。バクテリアマーカーと書かれた上半分が腸内細菌一般で、下半分がクロストリジウムのマーカーです。クロストリジウムだけ別枠に設けています。その理由は、クロストリジウムが 精神疾患に非常に関連するからです。

破傷風に感染する人は、今はそんなにいないと思いますが、クロストリジウムテタニと言います。破傷風を発症すると、光と音にかなり敏感になって、精神的におかしくなるので、冷暗所で一時的に隔離するという治療があります。なぜ、そのような症状が出るのかというと、クロストリジウムがドーパミン代謝を狂わせるからです。

クロストリジウムのマーカーの15番、16番、17番、この3つは DβH(ドーパミンβヒドロキシラーゼ)を阻害します。ドーパミンがノルエピネフリンに変換される時に使われる酵素で、補酵素は銅とビタミン Cです。

脳疾患でDβHが出てきますが、銅過剰の人はこの酵素が働きすぎて、ドーパミンからノルエピネフリンに過剰転換されています。ですが、クロストリジウム感染がある人は、逆にドーパミンからノルエピネフリンへの変換が阻害されてしまいます。その結果、ドーパミンが過剰に溜まります。

バクテリアマーカーは、腸内環境が悪ければ上がります。加えて、10番の馬尿酸は、トルエンやコーヒーなどの食品でも上がります。11番にピロール障害とありますが、ウォルシュ博士の分類にあるピロール障害、体の中でピロール(ヘモグロビンの副産物)がたくさん作られやすい体質のことです。ピロールは亜鉛とビタミン B 6との親和性が異常に高いため、ピロールが尿中に多い、ピロール障害タイプの人は、慢性的にビタミンB 6と亜鉛不足になります。朝が起きられない副腎疲労のタイプです。

私はピロール障害なのですが、ピロールを調べたら患者さんの中で、私の値が一番高かったんです。朝がとても大変なんです。亜鉛を毎日とかなり多く摂ってます。ビタミン B 6を摂ると、耳の聞こえ良くなります。ワーワーした中で、人の声がよく聞こえないのですが、ビタミン B 6を摂るとよく聞こえるようになります。

12番、13番、この2つはパラベンも指標です。シャンプーなどに入ってるものですが、多すぎると上がることがあります。ですので、これらの要素を除いて、腸内環境を把握することが大事です。14番は良性細菌でも上がります。ビフィズス菌や乳酸菌、大腸菌が多すぎても上がります。

ですから、腸内環境改善しても、バクテリアマーカーにある数字がすごく高い場合は、SIBOの疑いをかけることができます。SIBOとは、腹部膨満感を引き起こす、小腸内細菌異常増殖です。小腸内の細菌過剰増殖でも、これらの数値は上がります。

神経疾患と密接に特に関わるのは、このクロストリジアのマーカーです。クロストリジウムは、芽胞を作るので結構しつこいです。抗菌剤に抵抗がありますので、治療に時間がかかります。

これは、ドーパミンの代謝図です。ドーパミンはフェニルアラニンから作られます。フェニルアラニンが、チロシンになり、ドーパになり、ドーパミンになり、ノルエピネフリンになり、エピネフリンになります。ドーパミンからノルエピネフリンに変わるところに、DβH(ドーパミンβヒドロキシラーゼ)という酵素がありますが、これを阻害するのが、17番の4-クレソールと、16番のHPHPAです。

HPHPAとは、フェニルアラニンがクロストリジウムにより、悪玉のようなものに変化した物質です。これがDβHを阻害し、ドーパミンからノルエピネフリンへの変換を止めてしまいます。

実際、精神疾患の人は、一般人と比較して、大量の HPHPA を排泄するということが論文で証明されています。また自閉症、統合失調症の患者さんの尿中においても、HPHPAの排泄量が増加しているというデータもあります。

こちらにも似たようなこと書いてあります。これに関係してはかなり古い論文が多いのですが、この2013年のものは、マウス実験で、4-クレソールに構造が類似している、4 EPS が多く見られ、精神症状のようなものが現れたと書かれています。

DβHを阻害するものは意外とたくさんあるということが、最近知られてきて、この有機酸検査で調べられるものの他に、このフェノール類が、DβHを阻害するのではないかと言われています。フェノールとは、芳香族炭化水素に、ヒドロキシ基(OH基)が付いているものです。エストロゲン、セロトニン、ドーパミン、チロシン、みんなフェノールです。OH基がたくさんあるとポリフェノールと呼ばれ、OH基のところに抗酸化作用があるので、良性の物質なのですが、このフェノールに過敏性がある人がいます。フェノール過敏症といいます。エイミーヤスコ博士の本や、自閉症の本に出てきますね?フェノールが多く含まれる食品を摂ると過敏になってしまう人、その理由はフェノールがDβHを阻害するからです。フェノールはフェノールイオン転移酵素で代謝されるのですが、特に子供の場合は、肝臓が未発達であるために、クロストリジウムが増殖すると症状が出てしまいます。

フェノール過敏症の人は、フェノールが多く含まれる食品を摂った時に、耳や頰が赤くなったり、多動になったり、睡眠障害になったりという症状が出るのですが、これらはドーパミン過剰の症状ですよね。ですから、自閉症のお子さんの場合は、腸内環境改善に加えて、特に低フェノール食が必要になることがあります。

クロストリジウムは、精神疾患に大きく影響するので、腸内環境を調べるに当たり、悪性菌の中でもクロストリジウムだけは、特別に調べた方がいいかもしれません。

クロストリジウムは、ミトコンドリアにも悪影響を及ぼします。このクロストリジウムは TCA サイクルに、短路を形成してATP 産生を低下させます。コハク酸の所が TCA サイクルと電子伝達系の両方で使われる酵素なので、すごく大事で、ここがうまく働かないとエネルギーがきちんと作れないのですが、ここに短路ができてしまい、ATP産生が低下してしまいます。

この論文は、自閉症のお子さんの論文ですが、ストレス環境要因が、腸内環境とミトコンドリアに大きく影響しているという結果を示した論文です。ミトコンドリア機能と消化機能の低下の2つが共通している自閉症のお子さんが非常に多いそうです。その原因として、ストレスとクロストリジウムが上げられています。クロストリジウム感染は、腸内環境を悪化させ、ミトコンドリア機能も低下させるということです。

ミトコンドリア機能が落ちていること自体も、やはり腸の蠕動や腸の消化吸収に影響するので、腸の消化吸収が上がらない人は、ミトコンドリアビタミンを摂っても上手く行きません。それ以外の方法で、ミトコンドリアを上げる必要があるので難しいです。

以上、ミトコンドリア機能を低下させる原因として、カンジタやカビ、クロストリジウムがあるという話でした。腸内環境とミトコンドリア機能を一緒に治していくことが重要です。

シュウ酸代謝

次は2ページ目です。これはシュウ酸を調べることができるシュウ酸塩の代謝物の検査です。19番、20番、21番とあって、21番がシュウ酸です。19番と20番はシュウ酸になる前の物質、前駆物質ですが、これらが高ければ、遺伝性原発性の高シュウ酸結晶を起こす引き起こす原因になるだろうと言われています。

シュウ酸が上がる原因は、遺伝、食べ物、カンジダです。シュウ酸はカルシウムと結びついて、カルシウムシュウ酸結石を作り、尿路結石の原因となります。それよりも問題なのは、シュウ酸が水銀と結びついて、シュウ酸水銀を形成し体内に溜まり、なかなか体外に排出されないことです。シュウ酸がもし高ければ、まずは食べ物をやめてみる、そしてカンジダ除菌をしてみて、シュウ酸が減ってくるかどうかをみるのがいいと思います。

シュウ酸代謝を示したのが下の図です。カンジダから来る経路がひとつあり、シュウ酸の前駆体がビタミンB6で代謝されるため、ビタミン B6が不足しているとシュウ酸ができやすくなります。ですから、原発性のシュウ酸代謝異常でも、ビタミンB6やマグネシウムを摂ることで、シュウ酸の量をある程度減らすことができます。

これはビタミンB6が関係している体の中の代謝を示しています。ビタミンB6はヒスチジンをヒスタミンに変えることができます。GOT と GPT の補酵素として働きます。トリプトファンがキノリン酸になるためには、ビタミンB6が必要です。ドーパミン、セロトニン 、GABA の生成にもビタミンB6が必要です。ビタミンB6は、基本的にたんぱく質の代謝に関わっています。大まかには、B1は糖質、B2は脂質、B6はタンパク質の代謝に関わっています。

アミノ酸系の神経伝達物質にビタミンB6は広く関わっています。脱炭酸酵素の補酵素としてビタミンB6が関わっているからです。その他にCOMT、ドーパミンやカテコラミンの代謝にも関わっていますし、CBSというアンモニアを作る酵素にも関わっていますので、ビタミンB6は結構複雑です。少なすぎても多すぎてもダメです。多すぎるとアンモニアがたくさんできてしまうし、キノリン酸も過剰に作られてしまいます。

カンジタ感染するとエストロゲンの代謝が狂ってPMS が強くなります。カンジダ感染する、シュウ酸ができる、ビタミンB 6が消費される、COMTがうまく働かなくなる、エストロゲンが相対的過剰になる、 PMS が強くなるという流れです。

これカルシウムシュウ酸結石です。実際に体の中も、pH 7.4だと、(COO-)2として遊離しているそうです。血中では2価のミネラルと特に塩を作って結びつきやすいです。2価といえば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、水銀です。

シュウ酸結石は、体のどこにでも行くそうです。尿管結石だけではなくて、筋肉の中にも入り込んで線維筋痛様症状が出るそうです。筋肉痛、線維筋痛症の症状を、シュウ酸を下げることで軽減できるというデータもあるみたいです。体の痛みがある場合、シュウ酸を考えたいですね。頭痛、排尿痛、慢性外陰膣炎に、シュウ酸が関係しているかもしれません。確かに、カンジダ膣炎の患者さんの中には、ヒリヒリする痛みがなかなか取れないとおっしゃる方も多いので、もしかしたらシュウ酸の影響なのかもしれません。

右下の数値は、解離定数、溶解度積というものですが、この数字が小さければ小さいほどシュウ酸との結びつきが強いということを示しています。カルシウムは10のマイナス8乗、

水銀は10のマイナス13乗ですので、10の6乗(5乗?)違います。つまり水銀は、カルシウムの100万倍(10万倍?)、シュウ酸と結びつきやすいということです。ですから、シュウ酸を何とかしないと水銀のデトックスが難しいです。解毒が上手くいかない人も、シュウ酸を考えてもいいかもしれません。シュウ酸が問題になっている人は結構多いと思います。

シュウ酸カルシウム結石が尿管結石のアメリカ人の場合は7割だそうです。日本人もカルシウム結石の人は結構いると思います。尿酸結石の人もいるのですが。結石ができるということは、塊が血管の中にできるということなので、大きいものは、結石として見つかるのですが、小さくて微細血管に詰まるものは結石として認識されません。でも確実にクレアチニンは上がってきます。クレアチニンが高いということは、筋肉量が多いということだと理解されていると思いますが、腎不全でも当然上がってきます。

クレアチニンの数値は、大体0.5から1ぐらいですが、2とか3になったら慢性腎不全です。8とか9になったら透析導入となります。クレアチニンが上がっている人は潜在的な結石の可能性も考えた方がいいと思います。その犯人はシュウ酸か尿酸、もしくは肝臓のフィブリノゲンではないかと、私は考えています。それらをチェックした方がいいです。潜在性副腎機能低下症の人は多いと、皆さんも感じていると思いますが、潜在性の肝臓機能低下症の人も、とても多いと思います。潜在性の肝機能低下は、慢性炎症であるので、フィブリノゲンなどが上がってきます。

エネルギー代謝

次は、エネルギー代謝についてです。

糖質と脂質、タンパク質は、どれもエネルギーになるのですが、生理的に考えて、人のメインのエネルギーは糖質だと思います。解糖系とは、2分子のブドウ糖がピルビン酸になる反応です。

ピルビン酸がアセチルCoAになって、 TCA サイクルの中で回るのですが、酸素がなかったり、ピルビン酸をアセチルCoAに転換する酵素もしくは補酵素がうまく働かなかったりすれば、ピルビン酸はアセチルCoAに転換されず、TCA サイクルは回りません。

それを見分けるのが、この乳酸とピルビン酸の量です。

これらの数値が高ければ、数字が赤く表示されるのですが、酸素が足りないのか、ビタミン B 群かCoQ10が不足しているのか、もしくはインスリン抵抗性があってブドウ糖が細胞の中に入れないのか、のどれかです。ある程度の原因は、ここまでわかれば絞れますので、見つけた原因に対処してあげることが大事です。

次は、ミトコンドリア機能を見るところです。このミトコンドリアマーカーで、上にある24番から29番の6つが TCA サイクルを評価する物質です。頭にある24番などの番号が、右の図の赤いところにある番号に対応しています。さっきの乳酸、ピルビン酸のところは、上にある炭水化物がアセチルCoAに入ってくるところです。

脂肪の代謝に関しては42番から49番、たんぱく質の代謝に関しては62番から74番がそれぞれ対応しています。

ピルビン酸がアセチルCoAになって、クエン酸、アコニチン酸、α-ケトグルタル酸、これらは27番、28番、29番と、逆に並んでいます。そして、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、これらは時計回りに同じ順番に並んでいます。ですから、有機酸検査見る時には、29番、28番、27番、24番、25番、26番、という風に回っているということを意識してみてください。

例えばこの人の場合は、クエン酸は正常なのに、アコニチン酸が下がっているので、クエン酸とアコニチン酸の間の回路がうまく回っていないということになります。クエン酸がアコニチン酸に行くところは、とても活性酸素に弱く、多くの方でこのような数字の変化が見られます。それは、酸化ストレスが強いのか、グルタチオンが足りないのか、もしくはフッ素や水銀の蓄積が多いのか、ということを示します。有機酸検査で圧倒的に多いのは、このパターンと、コハク酸の数字が上がっているパターンです。コハク酸だけ上がってしまうということは、コハク酸からフマル酸、リンゴ酸への代謝がうまくいない、つまり、コハク酸からフマル酸への転換酵素の補酵素であるビタミン B 2やCoQ10が足りないのかもしれません。ビタミンB 2は53番、CoQ10は55番ですので、これらも一緒に参照されたらいいと思います。

コハク酸が上がっている場合は、ビタミン B 2やCoQ10不足になりますが、その他にコハク酸が単独で上がることがあります。それは金属と非金属による毒性が強い時です。コハク酸は TCA サイクルと電子伝達系の両者に関わっていますから、非常にその毒素の影響を受けやすいです。体に水銀が溜まっても、ドライクリーニングのような有機溶剤が溜まっても、どちらでもコハク酸が上がりますから、この数字が上がる場合は、重金属や環境毒素の検査をした方がいいかもしれません。検査項目が非常に多いので、有機酸検査をすると、色々なことのスクリーニングができます。絶対とは限りませんが、とても参考になります。

フマル酸は、カンジダがあると上がります。フマル酸からリンゴ酸に行きにくくなるからです。カンジダでやられるからカンジダで上がることがあります。α-ケトグルタル酸の指標の2-オキソグルタル酸も、カンジタ感染でやられる場所です。α-ケトグルタル酸はグルタミン酸の親戚です。

グルタミン酸は、アンモニアのシャトルで、体に溜まったアンモニアを外に運び出します。グルタミン酸がアンモニアをもうひとつ付けてグルタミンになり、アンモニアを離してグルタミン酸になって戻るという動きをシャトルと言います。アンモニアの処理にグルタミン酸が使われるということで、α-ケトグルタル酸からグルタミン酸を持って行かれてしまうので、その結果、2-オキソグルタル酸が下がることになります。この数字が低い場合には、アンモニアの過剰を考えたいです。アンモニアが過剰になる一番の原因は便秘です。

下半分も、ミトコンドリアマーカーですけども、上がっている人がたまにいます。これらは電子伝達系にも関わると言われています。上半分がどちらかと言うと TCA サイクル、下半分が電子伝達系のマーカーなのかもしれません。対処法は、電子伝達系を動かすB 群、CoQ10、カルニチン、鉄の摂取です。

神経伝達物質代謝

次に、神経伝達物質の代謝についてです。

ドーパミン、ノルエピネフリン、そしてドーパミンとノルエピネフリンの比率がこの検査で出ています。

ドーパミンはチロシンから作られますので、ドーパミンが不足している人は、多分チロシンがうまく作れていないと思います。この例の人がそうです。ドーパミンは適正であるといいです。意欲や喜びをもたらしてくれる神経伝達物質ですので。上がりすぎると興奮して多動になるので、問題ですが、低ければ低いで問題です。やる気がなくなってしまい、依存症状が出ます。アルコールやギャンブルなどの依存症の人は、ドーパミンが低めだと言われています。

ドーパミンが低いと辛いので、症状としてはドーパミンを増やすような行動を取りがちです。いつも怒っているとか、運転が荒いとかです。そうすることで、ドーパミンを増やそうとしています。

無意識にカテコラミンを上げるような行動を取るのが、ドーパミンが低い人の特徴です。手っ取り早く治すには、チロシンの補給がいいです。ドーパミンが高ければ高いで不安やパニックになりますから、この場合は、クロストリジウム対策です。

ドーパミンの状態がわかるといいと思いませんか?

でも、絶対正しい、という訳ではないので、気を付けてください。ドーパミンはドーパミンを測っているわけではありません。

実際に測っているのはホモバニリン酸です。ドーパミンはこのCOMTやMAOなどのカテコラミン代謝の酵素によってホモバニリン酸に代謝されるので、その代謝産物を測っています。ですから、もしこれらの酵素がうまく働いてない場合は、多すぎたり少なすぎたりするかもしれないので、見る時に注意が必要です。

ただ、それを言い始めるときりがないので、まずは基本的なところを理解して、そこから考察を進めていくといいと思います。実際には検査と症状が違うことはいくらでもあります。でも原則はこういうことです。

ノルエピネフリンを反映するのが、バニリルマンデル酸(VMA)です。褐色細胞腫というカテコラミンをたくさん産生する、がんみたいな腫瘍の病気があり、この数値がものすごく上がってしまいます。その場合だけ、普通の病院では検査をしますが、こういう微量なものを普通の病院では検査はしません。ですから、そういう意味でこの検査は貴重です。

ノルアドレナリンを反映しますから、低いとうつ症状、高いとイライラします。集中に必要な神経伝達物質ですので、ADHD で注意力が散漫だったり、過集中だったりするのは、ノルアドレナリンのバランスが、非常に悪いことが原因です。過食症には、色々な原因がありますが、過食症の人には、大体トラウマがあります。痩せるために無理なダイエットして栄養不良になり、その反動で過食になる、という上下を繰り返す人が多いです。

ですが、前頭葉の働きがうまくいかなくて、自分の食事を律せず過食になっている人も結構います。そういう人は、ドーパミンとノルアドレナリンのバランスが悪いのですが、腸内環境改善すると、完璧に治ることがあります。そういう人は、大体ステラトラなどのノルアドレナリン再取り込み阻害薬などを飲んでいたりします。

ドーパミンとノルアドレナリンの比率を反映しているのが、この35番ですから、この比率が高ければドーパミン過剰、逆に低ければドーパミンからノルアドレナリンへの過剰転換が起きているということです。つまり、銅過剰であるはずなのですが、銅過剰の人でこの尿中のドーパミンとノルアドレナリンの比率が一致することはほとんどないので、銅過剰の診断には使えません。これが参考にできるのはクロストリジウムとの対比です。そう考えると、腸内環境は全部に影響するので、やっぱり腸ファーストが大事だと思います。

トリプトファン代謝

トリプトファン代謝についてです。

トリプトファンがセロトニン、メラトニンの方向に行く経路と、キヌレニン経路を通ってNADが作られる経路があります。トリプトファンからセロトニンに行くのは、普段から5〜10%ぐらいですが、炎症やストレスがあると、セロトニン経路が完全に止まってしまいます。それでセロトニン、メラトニンが作れなくなり不眠になります。

このトリプトファン代謝は、トリプトファンがキヌレニン経路に何パーセント行って、セロトニン経路に何パーセント行くかというのを教えてくれるインジケーターです。ですからセロトニンの量、実際には代謝産物の5-HIAA を調べていますが、キノリン酸の量も調べています。

ビタミンB6はグルタミン代謝に関わっています。

グルタミンがグルタミン酸になってGABAに変換されますが、そのグルタミン酸のGABAへの変換がうまくいかない人がとても多いです。

ビタミンB6の大量療法をするとそこがうまくいくのですが、ビタミンB6を大量に入れてしまうと、キノリン酸がたくさん作られてしまうというのが問題です。キノリン酸は、同じようにグルタミン酸の受容体を刺激するので、お子さんの場合、返って暴れ方がひどくなってしまうことがあります。

キノリン酸経路が働く理由は、最終的にこのNAD、ナイアシンを作って、ミトコンドリアを動かそうという体の防御反応なので、炎症が起きている場合は、まず一番に、炎症をとらなければいけないし、キノリン酸が溜まっている場合は、キノリン酸をうまく NAD まで流してあげることが必要です。

キノリン酸が溜まりすぎていてNADが作れないのは、マグネシウム不足がひとつの原因です。もうひとつの原因は、フタル酸です。プラスチックに入っている物質です。ですからこの検査でキノリン酸などが上がっていたら、体の中に感染や炎症が起きているということです。体内でこのインターフェロンガンマという炎症性のサイトカイン、炎症性物質が暴れているということがこれを見ると分かります。

このキノリン酸の比率が狂っている人はとても多いです。異常に敏感な炎症マーカーで、これもミトコンドリア機能に直結しますから、ミトコンドリア機能が上がらないと感じている人、疲れが取りきれないとか、手足の冷えが完全に治らない、と感じている人は、この比率を見てください。体の中に炎症が残っているのかもしれません。

筋炎、感染、炎症、脳のミクログリア活性化が起きています。もしかしたら、ピロリ菌なのかもしれないし、上咽頭炎や根尖病変があるのかもしれないです。炎症を徹底的にチェックして下さい。

NMDA というのは、グルタミン酸受容体のことです。 キノリン酸がNMDA型グルタミン酸受容体のアゴニストというのは、キノリン酸がそこを刺激するという意味です。まずは炎症の元を見つけること、そしてそれに対処すること、抗酸化アプローチが必要です。そして、ナイアシンが多分足りなくなっていますから、ナイアシンを摂るといいでしょう。

ここで言いたいことは、さっきの図と同じです。炎症が影響して、キヌレニン経路への流れをどんどん促進させるということを表しています。

右側がグルタミン酸受容体の図です。グルタミン酸受容体が興奮すると、カルシウムが一気にグルタミン酸受容体を通して入り、細胞死を引き起こします。それが炎症の元です。自閉症のお子さんは、脳の中でそのグルタミン酸神経が異常興奮して、慢性の炎症を起こしています。ですから、この悪循環を何とかして止める必要があり、このNMDA受容体を抑制するのが、亜鉛とマグネシウム、リチウムです。だからまずマグネシウムを入れることが大事です。右側を見ると、受容体を亢進させるものに、グルタミン酸とカルシウムがありますが、そこにキノリン酸も入っています。この図には入っていませんが、低血糖も受容体を亢進させます。低血糖を避けること、キノリン酸を避けるために体の炎症を取ることが、とても大事になります。

サプリメントよりも食事の方が100倍難しい

サプリメントよりも食事の方が100倍難しいです。

サプリメントはラベルに容量や何を抽出したものかも書いてあるので、テスター的に使えますよね?例えば、B3が足りないと検査からわかれば、ビタミン B3のラベルの付いたサプリメントを投与すればいいというすごく簡単なことですが、食品というのは、色々なものの相互作用が集まっているので、食事の方が難しいです。

サプリメントを大量に投与しすぎると、全体のバランスを狂わせてしまうので、大量に投与していい場合とダメな場合とがあります。ビタミン Bは典型例です。

炎症

炎症です。

炎症を見つけて炎症を止めることが、ミトコンドリア機能の回復にとても大事です。炎症マーカーのCRPはあまり感度が良くないです。高感度 CRPでさえ炎症のマーカーとしてはあまり良くないので、炎症を起こしている各部位を調べることも大事です。多分、フェリチンが慢性肝機能障害のマーカーになっていますし、フィブリノゲンも。有機酸検査のキノリン酸が微妙な炎症のマーカーになっていると思います。ミトコンドリア機能が上がりきらない人は、これらをチェックしてみてください。

炎症があると、トリプトファンが全部キノリン酸の方に行くので、セロトニンやメラトニンの方に全く行かなくなってしまいます。

では、どうやって脳の中にトリプトファンを取り込むのでしょうか?

食事からのトリプトファンは、脳血液関門(BBB)において、他の大型中性アミノ酸と競合します。ですから、もしトリプトファンを脳内に取り込みたいのであれば、大型中性アミノ酸を減らせばいいです。この BBB に関しては、酸性アミノ酸同士や中性アミノ酸同士が競合します。

酸性とか中性とかってわかりますか? 

アミノ酸とは、アミノ基を持ったカルボン酸のことです。

アミノ基がややアルカリ性でカルボン酸が酸性です。だからアミノ基とカルボン酸の量が同じであれば、それは中性アミノ酸といいます。アミノ基が多かったら塩基性アミノ酸、カルボン酸が多ければ酸性アミノ酸です。人間の体の中で酸性アミノ酸とはグルタミン酸とアスパラギン酸の2つで、アミノ基とカルボキシル基の数が同じだから中性アミノ酸です。中性アミノ酸は、脳内に行く時の経路が一緒なので、これらを一度に取ると競合するということです。

BCAA、バリン、ロイシン、イソロイシンは、特にトリプトファンを阻害します。目が冴えるので、寝る前に BCAA 取ると眠れなくなります。逆に炭水化物を摂るとインスリンが上がりBCAA が取り込まれるので、その結果、トリプトファンが脳内に入り、リラックスした気持ちになります。トリプトファン代謝が上手くいってない場合は、そういうことも対処としては必要です。トリプトファンサプリメントではなく、5 HTPから摂ってもいいと思います。

ピリミジン代謝

次はピリミジン代謝です。

ウラシルとチミンが載っています。チミンはウラシルにメチル基が付いたものです。つまり、ウラシルとチミンはメチル化が、メチレーションが上手くいっているかどうかの指標になります。

この脂質代謝マーカーはなかなか使えます。項目がたくさんありますが、この右下の図は幹細胞の中のミトコンドリアの図です。

脂肪が入ってきて、この脂肪酸がミトコンドリアの中で使われればいいですが、使われない場合はスベリン酸やアジピン酸になってしまいます。45、47、48が特に脂肪が上手く使えないと上がってきます。では、どういう時に脂肪が上手く使えないかというと、それはカルニチンが足りない時です。脂肪酸はそのままではミトコンドリアの膜を通過できません。カルニチンはリジンやメチオニン、鉄、ビタミン C から生合成されていますから、もしかしたらこれらの栄養が足りないのかもしれません。

糖質制限をしようと思ったらどうしても脂質代謝がメインになりますので、糖質制限が上手くいかない人は、特にこの脂肪代謝マーカーを調べてみたらいいと思います。マーカーが上がっていたら、カルニチンを補給したり、食事を中鎖脂肪酸にシフトしたり、比較的カルニチンがなくても代謝される脂肪酸を上手く摂ったりするといいでしょう。

栄養素マーカー

その下は栄養素マーカーです。

有機酸検査は5万円くらいしますが、70何項目も調べられるので、血液データよりももしかしたらコストパフォーマンスが良いかもしれません。ビタミンB群、CoQ10、グルタチオンが調べられます。気を付けておきたいのは、このアスタリスク(*)が付いているものは、高いと逆に低いということで、高いと逆に足りないということなので、見誤らないようにしてください。

項目が多いので、総合作用を見比べられます。

例えば、ビタミンB6とシュウ酸ですが、もしかしたら、シュウ酸が高ければ、ビタミンB6が低いかもしれません。もちろん、他の要因でもビタミンB6は下がりますが。また、カンジダの代謝には、ビタミンB2が必要ですから、カンジダが高ければ、このグルタル酸が高いかもしれません。ビタミンB2が足りないと高くなるマーカーですから。

ビタミンCは、サプリメントで摂っていてれば、こんな風に上がりますが、その一方で、たくさん摂っていても、ゼロになる人がいます。これはアメリカへの輸送の関係で、ビタミンCがすぐ酸化されて、いくら取ってもダメな人がいます。特に夏に検査する場合は、ゼロになっている人が多いですから、そこは気にしないでください。

CoQ10とグルタチオンのマーカーです。基本的には、CoQ10のマーカーとして使えますが、HMG還元酵素阻害剤(スタチン)を摂ることによって、この数字は上がることがあります。グルタチオンは解毒物質のマーカーです。毒物が溜まれば、 N- アセチルシステインが消費されて下がります。

解毒

イオウ経路、硫酸経路、解毒の指標です。

グルタチオンは体の細胞の脂肪の中から水銀を取り出します。グルタチオンは、水銀を抱合、つまり水溶性に近いものにして、解毒するために、体にとって絶対に不可欠な物質です。

このピログルタミン酸と2-ヒドロキシ酪酸というのは、アスタリスク(*)が付いていますので、グルタチオンが欠乏すると上昇します。これらは硫酸経路に関係しています。硫酸経路は、ぐるぐる回っていますが、何か毒物があると、下の硫酸を作る方に経路が流れて、グルタチオンが作られます。このグルタチオンの副産物が、2-ヒドロキシ酪酸などだと考えてください。ですから、これらの数字が上がっている時は、グルタチオンがいっぱい作られています。つまり解毒の必然性があると体が判断しているということです。毒に暴露されたらこれら2つが上がると考えてください。

グルタチオンが足りなければ、サプリメントとしては、グルタチオンの前駆物質であるN-アセチルシステイン(NAC)や、もしくは僕が使っているのはリポゾーマルグルタチオンを摂ることです。グルタチオンは、トリペプチドで、アミノ酸が3つ繋がった構造をしていて、消化酵素に極めて弱く、摂っても上手く働かないことがあります。ですから、リポゾーマルタイプで、直接細胞の中に入るものを使うのか、もしくは消化酵素の影響を受けないクリームのようなものを使うのか、点滴で入れるのか、など、色々な方法があります。いずれにしても大事なことはグルタチオンが異常に消費されている原因検索をすることです。

これをしないと、いくら解毒しても毒が溜まっていったら意味がないので、ほとんど効果がありません。解毒しなければいけないほど、毒素が溜まっていたら、多分先ほど出てきたコハク酸のマーカーが上がっているでしょうから、それも一緒に調べておくことが重要です。コハク酸上がっているということは、金属か非金属の毒性に曝されている可能性があるということです。このように、有機酸検査は、交互に色々と見るところがありますので、検査をやっていない人はやりたくなってきたのではないでしょうか?

グルタチオンの下は、過剰アンモニアのマーカー、オロチン酸です。アンモニア毒性がある場合、尿素回路が上手く働いていない可能性があります。アルギニンやシトルリンを摂って回路を動かしてあげるといいでしょう。もうひとつの可能性は、便秘です。便秘の解消が必要です。

一番下は、サリチル酸やアセトアミノフェンです。解熱剤など、お子さんが使う場合、これらは解毒のシステムを止めてしまいますので、使っている場合、この数値が上がってきます。

アミノ酸代謝物

62番から74番までは、アミノ酸代謝物です。ミトコンドリアに入る脂質やタンパク質、炭水化物が全部わかります。ですが、このアミノ酸マーカーは、ちょっと私にはよくわかりませんが、先天性代謝異常で上がるマーカーも結構多いので、あまり上がっている人はいないです。強いて言えば、ほとんどの人のマーカーが左に寄っていますが、ビタミン B 群が足りない人は、少し上がる傾向があると思います。ビタミンB 群がないので、アミノ酸の代謝が少し詰まっている感じです。こういったところを参考にして、是非やってみてください。

毒性のマーカーが上がっていたら、もしくは毒物が溜まっているような症状があったら、解毒の検査もした方がいいと思います。毒が溜まっていそうだから、解毒をと考える人が結構たくさんいますが、もしそれが環境毒素だったり、自分が知らないうちに摂っている食物の中に含まれているものだったりしたら、いくら解毒をしても出ないです。ですから、本当にあるのかどうか調べて、その原因を特定することがとても大事です。

カビ毒はこれらの病気の原因になっていることがあります。

特定のカビによって生成される毒性化合物で、 NK 活性や、免疫グロブリンの分泌、グルタチオンを低下させます。ミトコンドリアを標的としていますから、疲れの原因として重要です。ミトコンドリアに影響するのがとても問題で、このマイコトキシンは、熱しても分解されにくく、環境の変化でも分解されにくく、除去が困難なことがとても問題です。さらに、このカビ毒は親油性ですから、脳に行きやすくて脳神経症状を起こしやすいです。子供だったら学習障害、大人だったら計算ができなくなったり、記憶力が低下したり、物事が考えにくくなったり、集中力が低下したり。これは何度も出てきている3型アルツハイマー病の原因です。副腎疲労でブレインフォグなんですと言ってきた人の中で、数名カビ毒の人がいました。

カビ毒は色々なものに入っています。多いのはアフラトキシンやオクラトキシンなどで、このオクラトキシンはカビ毒検査をすると、ほとんどの人に入っています。よっぽど汚染されているようです。

このカビ毒の検査は、マイコトックスといいますが、やらなければいけない人は正直そんなに多くないです。

本当にやるべき人は、輸入のピスタチオなどや、ちゃんと乾燥していないものをたくさん食べる人、食べていた人、10年前のものでも残っています。また、家が古い人、古い家に住んでいた人、10年前でも。カビ毒というのは、食べ物か空気で吸入するかどちらかですから、エアコンや空気清浄機、一度台風で水に浸かった家、元々湿っぽい家に住んでいる人は、やっぱり怪しいかもしれません。

症状としては、とにかくブレインフォグと慢性疲労、ミトコンドリア機能障害です。頭痛やめまいがする人も結構います。消化器症状、胃食道逆流症状が出る人も結構います。

さっき言ったように、2、4、5、9が有機酸検査で上がっている人。こういう人もカビ毒を調べた方がいいかもしれません。もしくはさっきのコハク酸(24番)が上がっている人は、毛髪水銀検査とカビ毒の検査の両方をされたらいいと思います。

43歳の女性、慢性疲労の方。

シトラマル酸が上がっています。3-オキソグルタル酸とアラビノースが上がっているので、カンジダ感染です。ですから、カビ毒マーカーの2、4、5は上がっていないですがカビ毒の検査をしたいと希望されたので行いました。

上がっていたのは、オクラトキシンとペニシリウムでした。検査の結果は、緑と赤で表示されるのですが、赤なのでかなりまずいと思うかもしれませんが、基準値が20までで、45ありますし。でも何か症状が出ているかというと、全く出ていません。オクラトキシンは多くの人が持っています。もちろん解毒をお勧めしました。これくらいだと、ほとんど症状としては出ません。すごく敏感な人は分かりますが。

出てはいけないのはアフラトキシンです。この人は、アフラトキシンは出ていません。アフラトキシンは、肝臓がんの発がんの原因と昔から言われています。これもアスペルギルスから出ます。こちらはほとんど出ませんが、オクラトキシンは9割くらいの人にみられます。どちらも発がん性がありますが、アフラトキシンの方が圧倒的に悪いみたいです。穀物、ぶどうジュース、ワインに入っています。

その他で多いのは、ゼアラレノンというものです。これは肝臓毒性と女性化ホルモン作用が強いので、男性更年期の原因になります。これが出ていたら、テストステロンを補充してもあまり上手くいかないです。

湿っぽい部屋に住んでいる場合、古い家に住んでいる場合は、このベルカリンを調べてください。これは免疫抑制効果があるそうです。ちょっと怪しいなと思って検査をする方が気を付けるのは、毛髪ミネラル水銀と同じですが、重症な人ほど出ません。毛髪ミネラル検査で、水銀レベルが低い人は、別に水銀が溜まっていない訳ではなくて、水銀を排泄する力が悪いかもしれません。これも全く同じで、マイコトキシンは親油性で脂肪細胞の中に入っていますから、グルタチオンがうまく使えない人、解毒能が悪い人は、検査をしても尿中に排泄されません。

水銀もそうですが、尿中検査の場合は、普通に出る人もいますけども、チャレンジテスト、実際にグルタチオンを飲んでもらってから検査をすることをお勧めします。 N -アセチルシステインを500mg ぐらい、1週間摂って、解毒体質にしてから出します。脂肪の中に入っているという事は、断食すると脂肪が分解されるので、できるだけ絶食時間を長く、12時間以上取って、次の日の朝や昼に検査をすると、結構今まで出なかった人が出るようになります。私も最初やってみたら全く出ませんでした。私も少し出ましたから解毒しました。

治療の実際

宮澤賢史 · 2019年11月1日 ·

STEP1:治療方針を決める
STEP2:必要な治療と順番を決める
STEP3:検査を行って確認する

自分の治療ピラミッドは出来上がりましたか?

症状や検査などから自分に問題のあるピラミッドの階層が判明したら、それを下層から順番に治療していきます。

治療といっても内容は食事とサプリメントを摂る事、環境を整える事が主ですので、患者さん自身の意思の力が重要です。

くれぐれも 目的と手段を取り違えないように(検査結果をよくするための治療にならないように)してください。血液データが改善傾向なのに具合がちっともよくならない事は珍しくありません。

治療の原則は、根本原因アプローチです。治療には個体差がありますが、大体の治療手段は共通していますのでそれをご紹介します。

これらの自然治療は、一般的な標準治療に取って代わるものではありません。必ず一般的な診療も受けて、器質的な病気がないのかを確認してください。一般的診療もとても大事です。

1)腸内環境改善は4Rが基本

症状と腸内環境検査の結果を元に治療を組み立てます。悪性菌やカンジダが多ければRemove「除去する」、腸の炎症マーカーが高ければRegenerate「再生する」を重点的に行います。

Remove「除去する」

まずは腸にとって悪いものを除去していきましょう。腸に炎症を起しやすいグルテン、カゼイン、加工食品、砂糖、さらにアレルギー反応のある食品も除去します。

膨満感や下痢、グルテン、カゼインへの過敏反応があったり、過敏性腸症候群(IBS)または炎症性腸疾患(IBD)の診断を受けていたりするなら、それは小腸での細菌やカビの過剰増殖があるかもしれません。その場合は、除菌治療を考慮します。

抗菌薬や抗菌ハーブ、バイオフィルムのクレンジングサプリメントなどを使用しますが、抗菌薬は腸内フローラを変えてしまうので慎重な導入が必要です。

腸内環境を悪化させる精神的ストレスも出来る限り除去しましょう。

よく聞かれるのが「一生グルテンが食べられないの?」というご質問ですが、多くの人はリーキーガットの修復が終えてから少しずつ食事を戻しています。

忘れないでください。何でも食べられるような体になる事が治療目標です(セリアック病など一部の人を除く)。

Regenerate「再生する」

消化管粘膜を再生して、バリアを丈夫にします。グルタミンは腸粘膜の修復材料であり、小腸の第一のエネルギー源です。ストレス時は消費が激しくなるため、その分増量します。

グルタミンで興奮する場合や、便秘がひどい場合などは他の抗炎症効果を持つケルセチンやベルベリン(オウバク)などを使用します。

Replace「補てんする」

特に腹部膨満が強い時や、便検査で消化酵素が低下している時は、充分に酵素を補います。未消化たん白による腸内環境の悪化や体のアレルギー反応が軽減されます。

また、胃酸分泌機能が低下している場合も多く、特にタンパク摂取時のベタイン塩酸補給も有効です。

Reinoculate「植菌する」

良い菌を腸に植えていきます。

良質のプロバイオティクスは即効性があり、後の消化管治療を容易にしてくれます。 乳酸菌やビフィズス菌の菌数が多いものを中心に使用します。

抗生剤で腸が荒れている時、検査で酵母の増殖が強い時などはサッカロマイセス、クロストリジウムが多い時は同じクロストリジウム族のミヤリ酸を使用します。

酪酸は腸のエネルギー源としても大変重要で、ミネラル吸収に大きな役割を果たしています。

2)体の炎症を取る

炎症体質の改善としてはフィッシュオイル(EPA)サプリメントが有名ですが、体内に炎症が残っていないかをチェックする事が欠かせません。

炎症がわかりにくいのは、胃や腸、肝臓、上咽頭、歯根部などです。炎症を起しやすい部位をひとつずつ丁寧にチェックし、必要に応じて治療します。

残っている炎症は次に行うデトックス治療を困難にします。

3)デトックス治療を行う

治療に入る前に、まず毒をこれ以上入れないようにするのが先決です。毒の暴露がないか確認しましょう。

何度治療を行ってもカビ毒が除去できなかった患者さんがいましたが、自宅の空気清浄機を取り替えたらその後再発しなくなりました。

解毒できる人はデトックス治療は不要

体は元々解毒能力を持っています。解毒ができる人はわざわざ治療をする必要はありません。解毒力が弱まっている場合には治療が必要となります。

中には腸内環境を整えたり、炎症を取る事で解毒能力が復活する人もいます。その方も治療は必要ないでしょう。

重金属の解毒能力があるかどうかは毛髪ミネラル検査で評価する事ができます。

脳は水銀がたまりやすい

例えば、体内に水銀が入っても、通常の検査では血中水銀濃度は3日間で検出感度以下になってしまいます。つまり、血液中の水銀は排出が比較的容易なのです。

問題は脂肪の中に入り込んで安定化したメチル水銀です。脳は脂肪のかたまりのような臓器ですから、大量の水銀が溜まりやすい場所と言えます。

解毒の3ステップ

体内の解毒は脂溶性で安定化して脂肪に溜まっているものを不安定にして水溶性にする事から始まります。すると血液に乗って流れ出し腎臓や肝臓から排泄する事ができるようになります。

体内の解毒機構は3ステップに分かれています。

ステップ1 活性化する(不安定にして水に溶けやすくする)
ステップ2 抱合する(水溶性の物質と結合させて水に溶けやすくする)
ステップ3 輸送する(血液に乗せて肝臓や腎臓から排泄する)

解毒の治療をするときには、それをさかのぼるように、ステップ3⇨ステップ2⇨ステップ1と進めるのがコツです。

肝臓から排泄する場合は、胆汁として腸に注がれますから、デトックス前に腸内環境を完全にしておく(リーキーガットを治しておく)事は必須です。

次に、ミルクシスル(マリアアザミの種子)などで肝機能を高めてから、ステップ2の縫合を助けるグルタチオン、NAC、ブロッコリースプラウトなどを使用します。

ステップ1,2が上手くいって、水銀が血液や腸管内に流れてきてはじめて、硫黄成分(パクチー、にんにく)など水銀を吸着する食事が役に立ってきます。

サプリや薬を使うだけがデトックス治療ではありません。ファスティング(断食)は、脂肪を分解できるため、優れている自然デトックスです。また、サウナも有効です。

4)ホルモンバランスの調整を行う

サプリメントを用いたホルモンバランス調整が適応となるのは、器質的な疾患がない場合に限ります。明らかな副腎機能低下、甲状腺機能低下、および下垂体機能低下などがある場合、標準的な治療を優先するべきです。

標準的な検査で異常がないと診断されていても、潜在的にホルモンが低下している場合は栄養を用いた自然な治療が功を奏する場合があります。

ホルモンの治療にも順番がある

副腎、甲状腺、性ホルモン(男性、女性ホルモン)のバランスを整えていきます。ホルモンの中にも階層があり、下から副腎、甲状腺、性ホルモンとなっていて、この順番で治療する事が重要です。

例えば、甲状腺はミトコンドリアを刺激するスイッチのようなものですから、副腎が回復しきらないうちに甲状腺ホルモンを足すと、ガス欠の車でアクセルを踏むような状態になり、疲弊が余計に進みます。

また、性ホルモンと副腎ホルモン(コルチゾール)は同じコレステロールを材料に作られます。副腎疲労の際はコレステロールがコルチゾールに優先的に使われてしまいますので、まずは副腎ケアを徹底しないと性ホルモンが安定しません。これをコルチゾール・スティール(コルチゾールが性ホルモンを盗むという意味)と言います。

自律神経の過緊張はコルチゾールを消費するため、結果的に女性ホルモンに影響し、不妊の原因にもなり得ます。

副腎へのアプローチ

まず、第一に「副腎疲労は結果である」という事をお忘れなく。ストレスや炎症がなくなれば副腎の負担はだいぶ軽くなります。腸の炎症を抑えたり、重金属を排泄するのにも副腎は酷使されています。

副腎に対するサプリメントアプローチは大きく分けて3つです。

・同位同食(体が弱っているときに、弱っている部分と同じ部位を食することで症状を軽減したり、機能をサポートしたりすること)に基づき、豚や牛の副腎をすりつぶしたものを摂ります。

・アダプトゲン
ストレスへの抵抗能力を高める天然のハーブです。アシュワガンダ、ロディオラ、エゾウコギ、オタネニンジンとかが有名です。

・副腎に多い栄養素をとる(ビタミンC・Eなど) 
副腎はビタミンCやEをたくさん消費する臓器です。ビタミンCを適量とることは副腎をリラックスさせる良い手段です。

潜在性の甲状腺機能低下症に注意

甲状腺機能に関して気を付ける事は、「甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの数値が基準範囲でも潜在的に機能低下症になっている事がある」という事です。

例えば、甲状腺刺激ホルモンTSHの基準値は「0.5〜2.5」くらいですが、0.5と2.5ではずいぶんと違います。

ホルモン補充療法の第一人者のThierry Hertoghe先生の『HORMONE HANDBOOK」で、理想値は1前後であり、2以上は潜在性の甲状腺機能低下を疑ったほうがいいとしています。

では、なぜそんなこと起きるかというと、理由の一つは非活性型甲状腺ホルモンのT4から活性型のT3への変換がうまくいっていない事です。変換には 至適温度 と鉄やセレニウムなどのミネラルが必要です。

また、副腎疲労がありコルチゾールが低下すると甲状腺ホルモンの変換は抑制されます。

T4 →T3 変換の最適条件
・至適温度37℃
・鉄が十分にある
・セレニウムが十分にある
・コルチゾールが十分にある

さらに、水銀の蓄積は甲状腺ホルモンの分泌も変換も全て抑制してしまうのです。

Andrew Catler “Amalgam Illness “より 一部改変

このように水銀デトックス、鉄とセレンの補給などにより、間接的に甲状腺機能をケアして、それでも低下傾向であればホルモン補充を行います。

5)エネルギーをもっと得るために

ミトコンドリアは腸内環境や重金属、環境毒素、副腎や甲状腺ホルモンの影響を強く受けます。それらの治療を行うだけでもミトコンドリア機能は大きく改善が期待できます。

しかし、そこまで行っても効果が不十分なら、いよいよミトコンドリアそのものに目を向ける必要があります。

ミトコンドリア内の化学反応を向上させる

慢性疲労を細胞レベルで考えるとミトコンドリアの機能低下に行き当たります。ミトコンドリアは一つの細胞内に多いときは3000個も存在し、体重の1割を占めています。エネルギー産生はミトコンドリアの大きな仕事です。

ミトコンドリアの中ではTCAサイクルと電子伝達系といった化学反応によりエネルギーが作られています。ミトコンドリアの働きが悪いということは、その化学反応がうまくいっていないということです。

その化学反応がスムーズに回るには反応を仲介する酵素と補酵素の存在が不可欠です。補酵素不足を簡単に推測できるのは血液検査です。

個人差が大きいため、一回の測定では絶対的な不足を決めるのが困難であり、何回か続けて測定して数字の増減を見ていくことになります。

血液検査から推測できる栄養状態

GOT,GPTの差が大きいビタミンB6不足
LDHが低いビタミンB3不足
ALPが低い亜鉛、マグネシウム不足
Fe,フェリチンが低い鉄不足
関節ビリルビンが高い酸化ストレスが多い

血液検査の結果は問題ないのに、それでもエネルギーが不十分だと感じたら、有機酸検査のエネルギーの項目を確認してください。

有機酸検査は、エネルギーを生み出すTCAサイクルという化学反応の経路を構成する基質が全て測定できるため、どこで反応が止まっているかがはっきりわかります。

もう一つミトコンドリア機能が落ちる原因として過剰な活性酸素があります。ミトコンドリアは酸素を使って大量のエネルギーを作るため、活性酸素を発生します。

ミトコンドリア自体は活性酸素に弱く、それが継続するとミトコンドリアの老化が進みます。特に40代以降になったら活性酸素対策が必須です。

ミトコンドリアを若返らせる

体内のタンパク質のリサイクルを促進すると、ミトコンドリア機能が向上することがわかっています。これをオートファジーと言います。

オートファジーを活発にするためには、運動を中心に短期的ストレスをかけることが良いとされています。またファスティングも有効ですが、副腎疲労が治りきっていない場合はかえって逆効果なことがあります。

6)脳へのアプローチ

リーキーガットを改善し、水銀を解毒した時点で脳の霧が晴れ、気分の落ち込みが改善する人はかなり多いです。

副腎疲労が改善すると低血糖発作を起こさなくなりイライラも取れますし、甲状腺機能が戻るにつれうつ症状が改善する人もいます。

今までの治療で十分改善すれば、脳への栄養療法は必須ではありませんが、うつやイライラへの対処がまだ不十分な人には必要かもしれません。

脳内のセロトニン、ドーパミンレベルを決めるもの

うつ病などの精神疾患の症状は、脳内の神経伝達物質のアンバランスによって起きています。

うつ病では、神経伝達物質のセロトニンが減少していることを前提としてSSRI(セロトニン再取り込阻害薬)など、脳内でセロトニンを増やす薬が処方されます。

セロトニンが減少している人にはこの薬は効果的なのですが、実はうつ病の方の中にはセロトニンレベルが高い人もいます。

20年間にわたり、2800人のうつ病患者の脳の生化学検査を行ってきたウイリアム・ウォルシュ博士によれば、うつ病患者のうち実際に低セロトニンレベルが問題になる人は38%にとどまりました。

うつ病の5タイプ

セロトニンレベルが高いか低いかを決める一番の要因はメチレーションです。メチレーションが低レベルの場合はセロトニンは足りなくなり、葉酸が欠乏する高レベルのメチレーション状態ならばセロトニンは多くなります。ドーパミンも同様です。

高メチレーション状態ならドーパミンを減らすためにナイアシン、低メチレーションならセロトニンを増やすためにSAMeサプリメントの摂取が推奨されます。

最後に

根本医療を実践したいと思っている患者さんと、医療に取り入れたいと思っている医師のために書きました。

この根本原因を見据えた自然医療は患者さんが自分でやる事が多すぎて、自分自身で戦略を理解する気持ちがないと、正確に治療をトレースできないし、モチベーションが続きません。

「私は何のためにグルテンを制限しなきゃいけないの?」ということになりかねないです。

でも、今までの治療戦略をお読みいただけたら、治療の筋道を頭に描くことはできたのではないでしょうか。

ここに紹介した検査、検査を解説してくれる医療機関をうまく利用、活用するという気持ちで自分が主役の医療を行ってください。

但し、くれぐれもお伝えしておきますが、この治療は一人でやらず医療の専門家と一緒に行ってください。

栄養療法には副作用がないと思っている方もいるようですが、そんなことはありません。大量サプリによる肝障害を起こす人は結構います。病院で定期的に検査を受けてないからわからないだけだと思います。

もし、これ以上の知識を具体的に知りたい場合、ぜひ分子栄養学実践講座に参加してください。いろいろな世界が見えてくるはずです。

検査を行って確認する

宮澤賢史 · 2019年11月1日 ·

STEP1:治療方針を決める
STEP2:必要な治療と順番を決める

ステップ2の続きです。
さて、治療方針と順番が決まりましたか?

しかし、その方針は病態から推測したものであり、仮説にすぎません。本当にその方針があっているか、様々な検査を使って確認していきます。

日本の病院で行われる検査は5mmのがんや、2mmのポリープなど「目に見えるもの」を見つけるのは得意ですが、「目に見えないもの」(ホルモンの微妙な変化や体内に貯まっている水銀の量など)に関しては感度がとても悪い、もしくは検査そのものがないのが実情です。

だから、脳の神経伝達物質やミトコンドリアの状態、ホルモンバランスや重金属、非金属の体内蓄積など特殊な検査に関しては海外の会社を頼ることになります。

重要:サプリメントを用いた自然治療が適応となるのは、器質的な疾患がない場合に限ります。必ず、一般的な治療を行っている病院でも診察を受けて、器質的な疾患がない事を確認してください。

まずは基本の血液検査

最初に欠かせないのは基本の血液検査です。

これは、栄養状態の過不足、酵素活性、ストレス度合いなどを血液検査から推定し、栄養処方の一助とするものです。この方法は実際に、日本国内の多くの分子栄養学医に活用されているものであり、私もこの方法を用いて、15年間で12,000人以上のデータを解析してきました。

栄養状態を知るなら一般的な健診項目だけではなく、以下のような項目も測っておくと便利です。

  • フェリチン・・・貯蔵鉄を評価するのに最適な指標。ミトコンドリア機能も反映します。
  • 亜鉛、銅・・・脳の栄養という観点から言えば、亜鉛と銅の数値が同じ位の数値が理想的です。銅の過剰は不安な気持ちを強くします。
  • ペプシノーゲン1・・・胃酸の分泌量を反映します。胃酸や消化酵素が十分出ているかどうかは栄養状態に大きく影響します。
  • ホモシステイン・・・動脈硬化の因子としても、メチレーション回路が回っているかを知る手がかりとしても有益です。
  • ビタミンD・・・ビタミンDの効果は血中濃度に比例します。免疫増強を求めるなら40 ng/mL 以上を目指しましょう。

この血液検査から栄養状態を読み取る方法論は一般の医療界には認められていないものであり、勿論、大規模試験に基づくエビデンスなどはありません。あくまでも、生化学的な理論および、経験から推察されるものです。栄養状態を読み解く大きな手がかりを得られる反面、生体における病態の根本原因を探る手段としては、不十分な点もあります。

スクリーニングに最適な有機酸検査

朝一番の尿を取るだけで、腸内環境、ミトコンドリア機能、脳神経伝達物質のバランス、炎症の程度など、広い範囲で体を知ることができるのが米国のグレートプレーンズ研究所が提供している有機酸検査です。

スクリーニングというのは最初のふるい分けを意味する言葉で、とにかく検査でわかる範囲が広いので、「詳しい状況はよくわからないけど、とにかく調子が悪いので検査をやってみたい」という方にもオススメです。

ビタミンやミネラルの欠乏、イーストやクロストリジウム菌の過剰増殖、糖質、脂質、たん白代謝。毒性物質の解毒状況なんかもわかります。

どのようにして尿検査で腸内環境がわかるのでしょうか?

腸に住んでいる酵母菌の産生物は分子量が小さいため、正常の腸からもある程度は吸収され、肝臓、腎臓を経由して、尿として排出されます。その排泄物を分析しているのです。

また例えば、多くの精神疾患で脳内のドーパミンレベルが高いことが報告されています。過剰のドーパミンは神経細胞を傷つけるので、順次ノルエピネフリンに転換されるのが普通です。有機酸検査では、尿中のドーパミン、ノルエピネフリン代謝物を測る事で、これらの量を推測することができます。

それだけではありません。ミトコンドリア機能障害の評価もできますし、解毒に重要なグルタチオンのレベルもわかります。新生児スクリーニングでも行われるアミノ酸代謝異常もカバーしています。

迷ったら有機酸検査です。

腸内環境を評価する

腸内細菌はビタミンB群やビタミンKを作り出し、栄養の吸収を助け、食物繊維を発酵させてエネルギーに変えたりとさまざまな働きを行っていますが、中でも最重要なのは腸のバリア機能を保つことです。

腸管は自分に必要な栄養は十分に吸収し、細菌や毒物、未消化のタンパク質などは取り込まないように選択的なバリアを作っています。この見事な機能は「神の手」と称されてきました。

現代の食生活や環境のせいで、このバリア機能が破綻してしまっている人が増えており、これをリーキーガット症候群と呼びます。これがおきてしまうと、腸に空いた穴から有害物質が血管に侵入し、いたるところで免疫反応が起き、慢性炎症を引き起こししてしまいます。

リーキーガットの模式図

ここで、腸のバリアを構成する因子を再確認しましょう。バリアは大きく細菌学的バリア(乳酸菌とかビフィズス菌)、免疫学的バリア(粘膜免疫のIgA)、物理的バリア(細胞と細胞の間を結合しているタンパク)の3つに分けられます。これらのバリアが壊れて腸に炎症を起こしていないか、タンパク質を分解する消化酵素は十分か。

これを調べるのに最適なのが Doctors Data(ドクターズ・データ)社の(包括的便分析検査(Comprehensive Stool Analysis)です。

Comprehensive(包括的)というだけあって、カンジダなどイーストの有無、消化酵素の分泌、炎症の程度、腸管免疫、短鎖脂肪酸の生成など様々な情報を与えてくれます。

検査結果に応じて、乳酸菌が足りなければ乳酸菌、消化酵素が足りなければ消化酵素を足し、カンジダ菌がいれば除菌治療、炎症が強ければグルタミンやケルセチンを足していく事でかなりの確率で腸内環境がよくなっていくのを実感されるでしょう。

腸内フローラは人や地域によって大きく異なり、どの菌が良くてどれが悪いとは簡単に決め付けられない現状ですが、ビフィズス菌と乳酸菌は多くの研究から良い事が示唆されており、その量が推測できるのは大きなアドバンテージです。

但し問題点もあります。腸内細菌は嫌気性が多く、空気に触れると死んでしまいます。ですから培養検査が難しいのです。実際に培養検査で検出できる菌は全体の30%以下です。

それを解決するのが腸内細菌のDNA検査です。名の通り、腸内細菌のDNA解析を行うため細菌が生きてるかどうかに関係なく検査可能です。最近は日本でも腸内細菌DNA分析をすることができるようになりました。

自覚症状はあてにならない

「自覚症状があれば、 検査なんて必要ない」と思う方もいるかもしれません。しかし、腸の炎症を自覚できる人は少ないことを覚えておいてください。

宮澤医院で上記の便検査を行った50名の患者さんに繰り返す便秘や下痢、腹痛などの自覚症状があるか聞いたところ、40歳未満では3分の1、40歳以上になると3分の2の方は症状がないと答えました。

毛髪で重金属の排泄力を評価する

アジア地域の工業における水銀排泄量は世界的に見てもかなり多く、火力発電所で使用される石炭中の水銀が大気中に放出、海に落ちて生物濃縮され、魚に蓄積しています。

体が大きく寿命が長い魚ほど濃縮は大きくなります。現在、マグロやクジラに含まれる水銀量は無視できないほど多くなっているのが現状です。

いくら避けようとしても、現代に生きている限り、体内に入ってくる金属の量をゼロにする事はできません。重要なのは、入ってきた金属を排泄する能力です。

自閉症児は健常な子供に比べて、水銀を排泄する力が弱い事がわかっています。毛髪検査は水銀の排泄能力が保たれているかどうかを簡単に調べられる優れた検査です。

検査で重金属を排泄する力が弱い場合、解毒治療が必要になります。逆に多少金属の蓄積があっても、排泄する力が保たれていれば積極的な解毒治療は必要ありません。

また、この検査からは、有害金属だけでなく必須ミネラルのバランスや体のストレス具合など多彩な情報を読み取る事ができます。

副腎疲労を評価する唾液検査

副腎疲労は、ストレスにより副腎機能が低下してホルモン分泌量が低下する病態ですが、その低下量は難病として知られるアディゾン病と比べれば僅かです。

だから、血中のコルチゾールを測定してもほぼ正常範囲と出てしまいます。検査が正常なのに症状があるので問題なわけで、それを解決するためにはより感度の高い検査を行い、コルチゾールが低下している事を確かめる必要があります。

一番簡単なのは、唾液中コルチゾール検査です。唾液のスピッツを持っていればどこでも検査ができます。

血中のコルチゾールは実際には働いていない非活性のコルチゾールもまとめて測れてしまいますが、唾液中コルチゾール検査では活性型のコルチゾールだけを測る事ができるため、非常に鋭敏です。

唾液中コルチゾール濃度は血清中の非結合コルチゾール濃度に比例する
Ann Clin Biochem. 1983 Nov;20 (Pt 6):329-35.

唾液中コルチゾール検査

人のコルチゾールは1日の中でも分泌量がだいぶ異なり、朝には多く出ますが、夕方から夜にかけてはほとんど出なくなります。それに合わせて、8時、12時、16時、24時と1日4回唾液を取って検査を行います。

婦人科系疾患の人がまず治療すべき臓器

乳がんや子宮筋腫、子宮内膜症、PMSなど、エストロゲンという女性ホルモンの過剰が原因になっている病気を持つ人が優先的に治療する場所は肝臓です。

なぜなら、余ったエストロゲンは肝臓で分解、解毒されるからです。特に悪玉と呼ばれる16OHエストロゲンの過剰が婦人科疾患に大きく影響しています。

Rhein consulting laboratories社が提供している尿中ホルモン検査はコルチゾールだけでなく、テストステロンやエストロゲン、DHEAなど女性ホルモンや男性ホルモンのすべての項目を一度に測ることができます。

24時間尿をためて行う検査ですので、やや面倒に感じるかもしれませんが、測定の正確さ、情報の多さはピカイチです。これからホルモン補充療法を行う計画がある人も必ずやっておきたい検査です。

脳機能の評価に使える遺伝子検査

うつや統合失調症、ADHDなどの疾患では脳内の神経伝達物質のバランスが問題になる事が多いです。ドーパミンやノルエピネフリン、セロトニンの量に関しては有機酸検査や血液検査で推定する事が可能です。

しかし、発達障害の子供の場合は、それ以外に遺伝子検査をすることが有用かもしれません。言語の習得に必要なドーパミンや解毒が十分に行われるためには体内のメチレーション回路がうまく回る必要があります。ほとんどの自閉症児はこれがうまく働いていませんが、その原因の多くは遺伝子変異にあります。

これは、ドクターズ・データ社のDNAメチレーション検査。メチレーションに関わる遺伝子の変異の殆どをカバーしています。

子供の脳神経は4歳までに80%完成してしまいますから、時間との勝負です。気が付いたら早めに始めることです。

まとめ

これでようやく、治療ピラミッドを構成する要素が固まりました!
あとは、原則下の段から治療を行っていきます。

宮澤医院ではご紹介した検査を全て取り扱っています。ご希望の方は検査キットをお送りする事も出来ます。(一部できないものがあります)

ここまでできたらいよいよ治療にとりかかります。

STEP4:実際の治療

必要な治療と順番を決める

宮澤賢史 · 2019年11月1日 ·

前回は「ステップ1_治療方針を決める」ということをお話ししました。

さて、大まかな治療方針が決まったら、次はそれを達成するために必要な治療とその順番を決めていきます。

私は栄養療法や分子生物学、栄養学のテキストを30冊以上持っていますが、そのうちほとんどは「病気を診ずに人を診よ」などの信念的な事と、95%の人が読み飛ばすビタミン代謝の化学式などに多くのページを割いています。

これらは本当はすごく重要なのかもしれませんが、ここを読んでいるあなたはそれを求めていないでしょう。求めているのはもっと実用的ですぐつかえる知識に違いありません。私も「まずは自分に向き合う」といった抽象論は好きではありません。

ですから、図やチャートを用いて、理論に沿って治療方針の決定をする方法をご紹介することにしました。この方法のよいところは再現性です。理論通りに進めれば、だれがやっても同じ治療法にたどり着けるはずです。

これは私が普段の治療に用いている治療ピラミッドです。過去の経験から、治療内容と治療の順序を大きく5つにわけました。

一番上は脳機能の治療。神経伝達物質の調整や、脳の細胞膜の抗酸化治療が含まれます。2番目のエネルギーというのはミトコンドリア機能改善です。3番目はホルモンバランス調整です。同じホルモンの中でも優先順位があり、下の副腎からアプローチしていきます。4番目は解毒(デトックス)治療で、臓器としては特に肝臓をケアしていきます。一番下は腸内環境および体内の炎症を抑える治療になります。

ポイントは、上の段の要素は下の段の要素の影響を受けやすい事です。だから、原則的にこれら5つの治療は下の段から行っていきます。

ピラミッドのように下から積み上げていく感じです。下の段の治療がうまくいっていないのに上の段の治療だけをやると、崩れてしまいます。

疲労疾患に必要な治療とその順番

例えば、疲労疾患の治療方針は、ミトコンドリア機能改善でした。しかし、ミトコンドリア機能だけに目を向けると失敗します。上から2段目のエネルギー(ミトコンドリア機能)には、3段目の副腎や甲状腺ホルモンが影響しています。

また、エネルギーを生み出す体内の回路は、4段目の要素「重金属」(特に水銀やヒ素、鉛)などによって容易に機能低下を起こします。だからもし重金属が貯まっているなら、ミトコンドリア機能を改善するために重金属のデトックス(解毒)治療が必要になります。

ミトコンドリア内でエネルギーを生み出すクエン酸回路は、ヒ素、水銀、アルミニウムが体内に貯まると簡単に止まってしまいます。

さらに、5段目の要素「腸内環境」が悪いとミトコンドリアを動かすのに必要なミネラル類の消化吸収がうまくいきません。

このように、2段目のミトコンドリア改善のためには、2,3,4,5段目の全てにアプローチしなくてはならない可能性があります。

免疫系疾患に必要な治療とその順番

免疫系疾患に必要な治療は、免疫の正常化と副腎疲労の改善です。

これだけ多くの人が花粉症になっている事実は多くの日本人の免疫機構が大変なことになっている、と言うことを示しています。特に問題なのは腸内環境です。

腸には抹消の免疫の60%が集中していますので、食生活が悪かったり、腸が炎症を起していれば当然のように免疫異常を起こします。腸内環境改善は免疫を正常化させるのに絶対必要な治療です。

ちなみに、2番目に免疫が集中している場所はどこでしょうか?

それは、咽頭です。扁桃腺は巨大な組織ですが、それは鼻と口、両方から入ってくる異物を見分け、せき止める関所の役割を担っているからです。

咽頭部の炎症を抑えるのは免疫系疾患の治療に欠かせないファクターです。

このように、体内の隠れた炎症を見つけ出し治療するのは治療計画の中でも優先的に行われるべきで、治療ピラミッドの第5段目にあたります。

次に免疫系疾患治療に必要なのは副腎アプローチです。

治療ピラミッドの法則にしたがうと、3段目の副腎疲労改善のためには、4段目、5段目の治療が必要になります。重金属解毒にはかなりの副腎に負担がかかるし、体内に隠れた炎症がある場合、これも副腎からコルチゾールが24時間出っ放しになります。

精神系疾患に必要な治療とその順番

精神系疾患の治療方針は脳神経伝達物質のバランス調整です。

ウイリアム・ウォルシュ博士は20年、2800人のうつ病患者の分析から、うつ病患者の脳内の状態を大きく5種類に分けました。

彼は脳内の生化学状態を調べる事で、5つの分類のどこに当てはまるのか、そしてどのような治療をするのかを明確にしました。

これは大変重要な事ですが、その前にやらなくてはならないことがあります。

ここまで読み進めていたら、もうお分かりだと思いますが脳の治療ピラミッドは最上部の第1段目にあります。つまり、脳はミトコンドリア、副腎、甲状腺、デトックス、腸内環境など全ての影響を強く受けます。

ミトコンドリアの働きが低下することが原因でおこる病気をミトコンドリア病と呼んでいて、 多くは生まれながらにしてミトコンドリアの働きを低下させるような遺伝子の変化を持っている方が発症します。

物事を見聞きしたり、理解する能力など「脳」の機能と、心不全、運動障害など「筋肉」の機能が主に障害を受けます。ミトコンドリアは特に脳と筋肉に多いため、ミトコンドリア機能の低下は脳と筋肉に症状が出やすいです。(昔ミトコンドリア病は「ミトコンドリア脳筋症」と呼ばれていました)

また、ホルモンとの関係も大きいです。脳は視床下部-下垂体-副腎軸によって副腎と強く結びついていますし、甲状腺機能低下症でうつ症状が出るのは有名です。

そして重金属やその他の毒素に脳はとても弱いです。マグロに多く含まれるメチル水銀は、体が必要なアミノ酸メチオニンと勘違いして、腸から容易に取り込まれ、脳神経や脂肪細胞に貯まっていきます。

さらに、腸内環境と脳機能が相関している事はもう半ば常識的に語られるようになりました。腸内細菌は迷走神経を通して脳に信号を送っています。また、グルテンが腸粘膜に働きかける事で起こるリーキーガット症候群は、同時にリーキーブレイン(脳血液関門の破たんのこと)をも引き起こすことが明らかになってきました。

つまり、精神系疾患の治療をするためには、神経伝達物質の調整治療(第1段目)の他に、炎症を抑え、腸を治して(第5段目)、デトックスをして(第4段目)、副腎ケアを行い(第3段目)、ミトコンドリア機能を改善させる (第2段目) ことが必要なのです。

アルツハイマー病の栄養による根本治療で一躍脚光を浴びたデール・プレデセン博士の治療法を記した「アルツハイマー病真実と終焉」は脳機能改善を栄養で行うすべての人にとっての必読書です。

プレデセン博士はアルツハイマー病を3種類に分類しました。炎症による1型タイプ、栄養、ホルモン不足による2型タイプ、水銀やカビ毒が脳に蓄積して起こる3型タイプです。

アルツハイマー病やその前段階の初期認知症が疑われる場合、まず最初にすることは3型のうちどのタイプなのかを見抜く事です。タイプがわかれば、治療法と順番が見えてきます。

アルツハイマー病の場合は、ピラミッドの2段目~5段目を順序良く治療する事で、第1段目に効果があらわれてくるのです。

ちなみに、この治療法はアルツハイマーだけでなく、全ての脳疾患の人に応用できます。脳機能をあげるため、受験生にも推奨できる治療です。

このようにして、治療方針が決まり、治療の順番のめどがついたら、実際にその治療を行うべき原因が本当に存在するのか、検査をして確かめていきます。

次のステップ3は実際の検査についてです。

STEP3:検査を行って確認する

治療方針を決める

宮澤賢史 · 2019年11月1日 ·

私が行っている診療についてご説明します。

宮澤医院を受診される方の多くは「慢性疲労」など疲労性疾患、
「アトピー」「リウマチ」「掌蹠膿疱症」「脱毛」など免疫疾患、
「うつ」「ADHD」「発達障害」など精神疾患の方です。

これに当てはまらない、高血圧や糖尿病といった疾患にももちろん栄養療法は有効です。ただし、上に挙げた疾患は現在薬で完治が難しく、薬の副作用がでやすいなどの問題が多く、栄養が特に効果を発揮しやすい分野です。

サプリメントを摂る事は目的ではない

栄養療法クリニックを受診したり、いろいろな治療を試しているのにも関わらず上手くいっていない人や、思うような結果が得られていない人が増えています。

よく見るのは、サプリメントを摂る事が目的?と思えるくらい大量のサプリを摂っている人です。しかも、現在進行中でどんどん増えていっています。

サプリを摂る事が楽しみだったり、生き甲斐だったりする人もいるかもしれませんが、通常、健康状態が戻るにつれ必要なサプリは減っていくはずです。

栄養療法をうまくいかせる治療方針は「最終的にサプリが要らなくなる体作り」です。

血液データをよくする事は目的ではない

確かに栄養状態には個人差があるため、血液検査を行って足りない栄養を知ることは重要です。しかし、それはあくまでも手段です。

それなのに、いつの間にか血液データをよくする事が治療方針になっている人がとても多いです。

自覚症状と血液データで見る栄養状態は多くの場合一致しません。

データを見たら、「鉄と亜鉛とビタミンDが足りない」だけでなく、「なぜ鉄や亜鉛やビタミンDが足りないんだろう?」と考えてください。

多くの場合は栄養素の摂取不足が原因ではないのです。

なにも考えずに足していくとサプリは際限なく増えていきます。

足りない栄養の原因を考えよう

「アカパンカビ」というカビを知っていますか?
様々な生物実験で頻繁に使われるカビの一種です。

このカビは自分が生きるために必要な栄養素をすべて自分でまかなえるため 「完全栄養生物」 と呼ばれます。

このカビは進化のたびに、自ら栄養を作り出す機能を捨てていきました。

じつは、栄養を自分で作るのは体にとって大きな負担です。周りの環境に豊富に果物があれば、ビタミンCを作らなくても済むかもしれません。

トヨタが車の部品を一から作るのをやめてから大会社になったように、生物の進化とは、自ら栄養を作るシステムの断捨離と言えます。

結局、カビから数億年を経て進化したヒトは多くの栄養素を作れなくなりました。 このように栄養がないと生きられない動物を「従属栄養生物」といいます。

ヒトの栄養素には必須脂肪酸、必須ミネラル、必須アミノ酸、ビタミンなど、栄養には「必須」と名のつくものが多いです。

これらは全て体内では作れず、食物として外部から取り入れる必要があります。

つまり、ヒトは究極の「従属栄養生物」なのです。

人間という生き物は、生まれながらに食事、環境の変化、ストレス、感染症などで大きく栄養バランスを崩しやすい宿命を持っています。

つまり、何が言いたいかというと「人は従属栄養生物だから、足りない栄養素に着目すると病気の根本原因がわかる」ということです。

根本原因を見ずに足りない栄養をサプリを補うだけでは、治療効果が頭打ちになったり、サプリを減らしたら症状が逆戻りしたりします。

しかし、根本を治療していけば、サプリで過剰な栄養を摂らなくても体内の代謝が回るようになってきます。

栄養療法のゴールは「サプリが要らない体になる事」「何でも食べられる体になる事」です。

これを忘れないでください。

治療方針は病態から決める

じゃあ実際にはどのように方針を立てるのか?
私の方法を説明していきます。

おおまかな治療方針を決めるには自分の病態を知る必要があります。まずは、自分の病態が次の栄養療法が効果的な3つの分野のどれにあたるのかを確認しましょう。


  • 「疲労系」その名の通り、疲労を主訴とする疾患(不妊症もここ)
  • 「免疫系」 リウマチやアトピーなど、通常ステロイドが用いられる疾患
  • 「精神神経系」統合失調症、うつなど神経伝達物質が問題になる疾患

栄養療法を行うときの考え方の枠組み

宮澤医院を受診する患者さんの殆どは上の3つの分野のどれかに当てはまります。

大事な事は、病態がわかればセットで治療方針も決まるという事です。

疲労系はミトコンドリア機能障害

慢性疲労の症状は体のエネルギー不足で現れます。では体のエネルギーはどこから作られるのでしょうか?

人は37兆個の細胞から成り立っています。その細胞一つ一つの中には、 ミトコンドリアが 数百個〜数千個も含まれていますが、これがエネルギーを作る工場です。このミトコンドリアの働きが低下していたり、ミトコンドリアが働くための栄養が不足していると「疲れやすい」という症状が出てくるのです。

そこで、疲労を主訴とする疾患のことを「疲労系」疾患と呼ぶことにします。「免疫系」「精神神経系」の疾患は通常診断がつきやすいのに対して、「疲労系」疾患は原因不明とされている事が多いです。また、効果的な薬がほとんどない事も疲労系疾患の特徴です。疲労系疾患の治療方針はミトコンドリア機能の改善です。

「疲労系」の疾患を疑ったら、ミトコンドリア機能を評価すると同時に、疲労を起こしうる疾患の鑑別をしていきます。

慢性疲労症候群では重症なほど、ミトコンドリアの性能が落ちていることがわかっていますが、他にも 若い人に多い起立性調節障害、鉄欠乏性貧血など、疲労を症状とする疾患はみんな「疲労系」疾患と考えてよいでしょう。

また、甲状腺と副腎はミトコンドリアに大きな影響を与えています。だから、甲状腺機能低下症や副腎疲労症候群も「疲労系」疾患と考えます。


  • 副腎疲労症候群は、臓器レベルでは副腎の問題ですが、全身症状は「疲れやすい」、細胞の状態は「ミトコンドリア機能低下」です。
  • 甲状腺機能低下症は、臓器レベルでは甲状腺の問題ですが、全身症状は「疲れやすい」、細胞の状態は「ミトコンドリア機能低下」です。
  • 鉄欠乏性貧血は、臓器レベルでは、赤血球の問題ですが、 全身症状は「疲れやすい」、細胞の状態は「ミトコンドリア機能低下」です。

つまり、慢性疲労、副腎疲労、起立性調節障害、甲状腺機能低下、貧血は、臓器レベルで考えると一見別々の疾患ですが、全身症状は「疲労」で共通しており、細胞レベルでみると「ミトコンドリア機能の低下症」とひとくくりにできます。

病態が「疲労」である疾患は「ミトコンドリア機能改善」が共通の治療方針になります。

ミトコンドリア機能の低下と慢性疲労症候群の重症度が比例する

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2680051/

もちろん、副腎疲労では副腎ケア、甲状腺機能低下症では甲状腺ケア、慢性疲労症候群では感染症のケアが必要ですが、細胞単位で考えた場合にはこれらの疾患にはミトコンドリア機能改善という共通項があるということになります。

線維筋痛症も疲労症状が出ますが、体の痛みを伴うため免疫系疾患としての側面も持っています。このように、2つの病態にまたがっている場合もあります。

上記の表に入れていませんが、不妊症は疲労系疾患です。なぜなら、卵子は体内でミトコンドリアを一番多く含む細胞だからです。つまり、妊娠にはエネルギーが必要です。

不妊症をチャートで見るとこのようになります。

不妊症対策で重要なのはミトコンドリア機能とホルモンバランス、そして自律神経の過緊張をとる事なのです。

「疲労系疾患」

  • 慢性疲労症候群
  • 起立性調節障害
  • 鉄欠乏性貧血
  • 甲状腺機能低下症
  • 副腎疲労
  • 線維筋痛症
  • 不妊症
  • その他、疲労を伴う疾患

癌、アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎など、いくつかの疾患と症状がミトコンドリアの機能不全と関連する事がわかっています。必ずしも疲労症状がなくとも、ミトコンドリアを治療する事はいつでも重要です。

免疫系疾患は免疫を正常化させる

関節リウマチやアトピー性皮膚炎などはステロイドや免疫抑制剤を数年~数十年にわたり継続して使用する事が多く、完治が難しい病気です。このような免疫異常による病気を「免疫系」疾患と呼びます。免疫系疾患の治療方針は免疫の正常化です。

関節リウマチは、臓器レベルでは関節の問題ですが、根本病態は「免疫異常」です。アトピー性皮膚炎は、臓器レベルでは皮膚の問題ですが、根本病態は「免疫異常」です。自己免疫疾患の根本病態は「免疫異常」です。

免疫系疾患の特徴は、治療にステロイドや免疫抑制剤が用いられる事です。ステロイドは強い抗炎症効果、および免疫抑制効果を持っています。

免疫疾患は免疫の正常化が根本治療です。そのためには、免疫を抑制せず、むしろ向上させることで一時的に体内で戦いが起き、その結果免疫が学習し、最終的に免疫寛容をおこさせる必要があります。

関節リウマチに対して、軟骨成分である非変性Ⅱ型コラーゲンサプリメントを投与する治療はその典型例です。

免疫寛容と免疫抑制は全く異なるものです。ステロイドを使用して免疫を抑制している間は免疫寛容は起きません。

免疫系疾患を起こす人は長年炎症が続いていることが多く、副腎が疲労しています。だから体内で十分なステロイドを作れないため、アトピーなどでは特によくみられるのですが、つまり炎症が長引くのです。

そういうこともあり、免疫系疾患の治療方針は免疫の正常化と副腎機能の回復になります。

免疫系疾患

  • アトピー性皮膚炎(免疫低下で炎症がいつまでもおさまらない)
  • 関節リウマチ(関節に対する自己免疫)
  • その他の膠原病
  • セリアック病(腸の粘膜に対する自己免疫)
  • グルテン運動失調症(小脳に対する自己免疫)
  • 掌蹠膿疱症
  • 女性の脱毛(毛根に対する自己免疫)

注意:リウマチやアトピーなど、免疫疾患には炎症性疾患という側面も存在します。医学的に炎症を抑制しなければならない状態というのは常に存在します。(例えばリウマチの炎症を止めなけば関節の破壊は進行します。)実際の治療は臨床的な判断が優先されます。

精神系疾患は神経伝達物質調整

うつ病やパニック障害など脳に関わる病気は非常に食事や栄養の影響を受けやすいため、栄養療法の良い適応になります。また、アルツハイマー病は、効果的な治療薬がない典型的疾患であり、やはり栄養療法の有効性が多く報告されています。これらの病気を「精神系」疾患と呼びます。

「精神系」の疾患は栄養療法での改善報告が一番多い分野です。精神系疾患の治療方針は神経伝達物質のバランスをとることです。

脳は、神経細胞間の神経伝達物質によって情報を伝えています。

うつ病の原因仮説はいろいろありますが、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質が少なくなってしまうモノアミン仮説が有力なものの一つです。

今使われている多くの抗うつ薬は、この神経伝達物質の不足を補う仕組みです。
例えば、うつ病ではセロトニンが不足しているのが一因なので、セロトニン再取り込み阻害薬というものを使います。

ちなみに栄養療法では、薬の代わりに、セロトニンそのものを増やそうと考えます。脳の中でセロトニンを増やすために、材料と補因子をすべて補うのです。

例えば、「セロトニン」は「トリプトファン」から「5HTP」を経由して脳内で合成されますが、「トリプトファン」から「5HTP」の変換には、補酵素として「鉄」、「ナイアシン」、「葉酸」そして「5HTP」から「セロトニン」の変換には「ビタミンB6」が必要です。

セロトニン不足が疑われる患者さんに対しては、主原料になるたんぱく質に加えてこれらの栄養をサプリメントで摂るというのが、モノアミン仮説に基づいた栄養療法の基本です。

基本の方針が1つだけではなく、2つや3つにまたがる事もあります。

もちろん、実際の病態はもっともっと複雑なのかもしれません。でも病態が複雑になっているほど、単純化して治療の骨子を決める必要があるんです。

いろいろな事をいっぺんにやろうとして失敗したり、自分が今どこにいるかわからなくなったりする方がとても多いです。単純化して一つずつみていくことです。

方針の目途がついたら、次のステップ2に行きましょう。

STEP2:必要な治療と順番を決める
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