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臨床分子栄養医学研究会

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宮澤賢史

自閉症治療における最大のポイント

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

異常なスピードで増えている自閉症

数年前になりますが自閉症に関しての勉強会に参加しました。

かつて米国で1万人に1人といわれた自閉症ですが、2012年にはアメリカ疾病管理予防センターはその割合は88人に1人との推定を発表しています。

日本と米国で全く違う治療の実情

日本での治療は、トレーニング、家族のサポートと薬物治療が主です。

もちろん、薬は必要ですが、その目的は日中の精神状態の平穏を確保するためのものであり、根本治療ではないところが歯がゆいところです。

残念ながら、保険診療の範囲では、自閉症に対する根本原因を見つけるのは困難といわざるを得ません。

日本に比べると、米国には多くの自閉症治療機関や、患者さんの団体があります。自閉症の治療に関しては、日本と欧米では大分知識量に差が出ているとのことでした。

エイミー・ヤスコの治療方法

そんな中で、エイミー・ヤスコ先生は自閉症の根本治療を遺伝子レベルからアプローチする事で、多くの患者を改善に導いている先生です。

彼女によると、自閉症は原因がほぼ確定されています。

遺伝子変異、神経興奮毒素、連鎖球菌の感染、有害重金属の負荷、慢性ウイルス感染、性別・血液型・HLAタイプなどです。

これらが複雑に影響しあって、自閉症が生じます。

「なぜうちの子だけが自閉症になってしまったのか?」

という両親の質問に対して、彼女はダイアナ妃の事故を例にあげて説明するそうです。

あの時、車があれほどスピードを出してなかったら?
あの時、パパラッチがあれほど追いかけてこなかったら?
あの時、運転手がお酒を飲んでいなかったら?
あの時、シートベルトをちゃんとしていたら?

自閉症はそれらの多くのパズルのピースが組み合わさったときに発症します。

自閉症を治療するためには、まず体内の炎症、特に腸の炎症を抑えなくてはなりません。
ですから、サプリメントに加えて、食事の内容を様々な形で制限していくことが必要です。

結構大変なことだと思います。

自閉症治療の最大のポイント

これは講師の先生が教えてくれたのですが、

「2年以上かなり治療を頑張っていたのに結果がいまいちだった子供がいる。」とのこと。

何で治療が効かないんだろうと、思っていたが、つい最近、「実は、甘いものをやめさせることが出来なかった」とご両親から告白されたという事でした。

そのときは、そうなんだ、やはり大変なんだなと、あまり考えなかったのですが、先日、衝撃的な出来事があったのです。

発達障害の児童を教育する学校の校長先生と面談しました。

そこは、全寮制でお子様を預かることで、単に勉強を見るだけでなく、生活を全般にわたってみているということです。

驚いたのはいままで100%の人が留学もしくは復学を果たしていることです。

これはすごいことです。

食事、腸内環境が重要

なぜ、こんな効果がでるんだろう?といろいろ聞いてみてわかりました。

大きな理由のひとつは、「子供達に対するお菓子、甘いものの徹底禁止」だと思います。

これをするだけでも、子供の場合は格段に腸内環境がよくなります。
ここは全寮制なので、完全な指導ができるんですね。

食事を厳格にしないとなかなかよく治らない病態があります。
それは、腸内環境が絡む問題です。

特に子供の場合は顕著です。
甘いものや添加物、食物アレルギーをおこす食物は未熟な腸内環境を悪化させます。

サプリを含む様々な治療をしているのに自閉症が治らない人もいるのに、食事、生活指導でも改善する人もいる。

最近、測定した自分の検査結果がかなり低血糖になっているのをみて、改めて思いました。

「食事は大事です」

今回の話は一部の人にとっては当たり前だと思いますが、私を含め出来ていない人は食事の大切さを自覚しようね、という話でした。

遅延型アレルギーは食べ物を制限するための検査ではない

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

先日、次のようなご質問を頂きました。

遅延型アレルギーについてなのですが、欧米や米国のアレルギー学会では、遅延型アレルギーの科学的根拠は乏しいとする声明が上がってきており、同様に日本でも、日本小児アレルギー学会が推奨しないとの声明を発表した、というニュースを拝見しました。

また、免疫寛容が成立してくる過程で、IgG4が上がってくるという意見もありますよね。私の勤務先でも、遅延型アレルギーを実施しておりますが、このニュースを拝見して以降、この検査の是非について自分自身も混乱しております。

先生は、遅延型アレルギーについてどのようなお考えをお持ちですか?是非、ご意見を聞かせていただければと思います。

こちらについて回答させて頂きます。

 1 アレルギー学会はIgG抗体を否定

平成26年11月19日に、日本小児アレルギー学会が「食物アレルギーの原因食品の診断法としてIgG抗体を用いることを推奨しない」という声明を出しました。

内容を見ると、

  • IgG抗体の結果を信じて除去食を行っている患者がたくさんいる
  • IgG抗体は健常人でも上昇するので診断価値はない
  • IgG抗体の結果に基づく除去食のエビデンスは存在しない
  • この検査結果に基づく除去食は意味がないし、むしろ栄養失調になるので問題

という事のようです。

彼らは、IgGの上昇は免疫寛容の進行だと主張しています。

2 免疫寛容とアレルギーの違い

免疫寛容とは、特定の者に対して免疫を抑える仕組みのことです。肉はたんぱく質のかたまりで、人にとっては異物ですが、免疫寛容が起こることで食べ物として取り込むことができます。免疫寛容に異常をきたし、本来は異物とは認識されない飲食物を異物として攻撃するために起こるのが食物アレルギーです。

消化管には免疫を抑制する制御性T細胞が多く分布しています。この細胞の働きにより、経口摂取したものには免疫寛容が生じます「食物アレルギーが疑われても、免疫寛容を促すために、症状を誘発しない範囲で食物の摂取を進めるべき」だというのが、最新の食物アレルギーに関する考え方です。

これら一連の学会の主張は、一部を除いて非常に理にかなっていると思いますし、「食物アレルギーの原因食品の診断法としてIgG抗体を用いることを推奨しないこと」「アレルギーの根本治療として免疫寛容を促すこと」には私も賛成です。

しかし、私は「症状がなくてもIgG抗体が上昇する」「エビデンスがない」という2点については疑問を感じます。

3 食物アレルギーが精神症状を起こす事は認識されていない

IgG検査と症状の発現について、

「食物アレルギーIgG4検査は成人の慢性じんましんや他のアレルギー性皮膚疾患症状に対して診断価値がない」
(Int Arch Allergy Immunol. 2011;155(1):52-6)

など、典型的アレルギー症状とIgG検査の関連の論文は散見されますが、その一方で、精神症状とIgG検査の関連に言及した論文は見受けられないようです。

以下に示すのは、メイヨークリニックのホームページからとった、食物アレルギーの症状リストです。

  • 口内がひりひりする、うずく
  • じんましん、湿疹
  • 唇、顔、舌、のど、その他の部位が腫れる
  • 喘鳴、鼻づまり、または呼吸困難
  • 腹痛、下痢、吐き気または嘔吐
  • めまい、 もうろう状態または元気がなくなること
  • その他アナフィラキシー

この中には、「多動」とか「気分の落ち込み」、「疲労感」などはないですよね。

そう、一般的な医師の通念として、「精神症状は、食物アレルギーの症状としてとらえられていない」のです。

もともと、IgG検査は分子栄養学の世界で、特に精神症状を捉える指標として発達してきたものです。それが、いつのまにか一番大切な精神症状の把握が抜け落ちて、エビデンスの十分な蓄積がないまま簡便な臨床症状のマーカーとして商業ベースにのって広まってしまったのが実情でしょう。アレルギー症状とIgG抗体の上昇の関連については、精神症状を含めて再度評価しなおす必要があると思います。

もう一つの問題はIgG検査が単独で一人歩きしているということです。

4 食事とIgG抗体の関連性

私の調べる限りでは、IBS(過敏性腸症候群)患者において、食事とIgG抗体の関連性を認める報告があります。

IBS患者では対象に比べて、小麦や牛肉、豚肉やラム肉などのIgG抗体が上昇
(American Journal of Gastroenterology, Vol. 100, pp. 1558‐9.)

IgG抗体をもとにした食事の除去でIBSの症状が減弱
(Gut, Vol. 53, pp.1459‐64.)

また、その一方で精神疾患と腸内環境(リーキーガット症候群)に関する報告も多く認めます。

うつ病患者で、腸のグラム陰性桿菌に対する免疫グロブリンが上昇している
(J Affect Disord. 2007 Apr;99(1-3):237-40. Epub 2006 Sep 27.)

腸漏出症候群を治療することで慢性疲労症候群の臨床症状も改善する
(Neuro Endocrinol Lett. 2008 Dec;29(6):902-10.)

うつ病は脳の慢性炎症であることが最近の研究で明らかになっていますが、その炎症の元として腸は非常に有力視されているのです。
(So depression is an inflammatory disease, but where does the
inflammation come from?:BMC Medicine 2013, 11:200)

5 IgG検査は腸管バリア機能を評価するためにある

また、ポーランド、ルブリン大学の精神科医 Karakuła氏は、「ゾヌリンなどにより、何らかの形で腸粘膜のタイトジャンクションが開いてしまうと、腸管の透過性が亢進する(俗にいうリーキーガットの状態)。これによってより大きな分子が腸管バリアを潜り抜け血流に達するので、それが遅延型食物アレルギーを引き起こす。この状態は免疫反応を亢進させ、炎症性サイトカインを放出させ、それがうつ症状を引き起こす。だからうつ病患者において、腸の透過性とIgGレベルを測定するのは有用ではないかと思われる。」と報告しています。(Nutr Neurosci. 2014 Sep 30.)

この考え方は、至極当然であり、そもそも、IgG検査は食物を制限するための検査ではなく、腸管バリア機能を評価するための検査です。IgGと腸管は切っても切り離せない関係なんです!IgGと腸管免疫の関係を一切考慮せず、IgGだけをみて「エビデンスが不十分」とするのはそれこそ考慮がないと思います。

以上から、私は「IgG抗体上昇に伴うアレルギー症状としての精神症状が見逃されている可能性がある」「IgG単独のエビデンスは少ないが、腸内環境と精神疾患の関係を示すエビデンスは豊富であり、これらをまとめて総合的にとらえるべき」だと考えています。

6 問題は検査だけが独り歩きする事

そもそも、前出の日本小児アレルギー学会の主張の元になっているこのカナダアレルギー臨床免疫学会の見解(Allergy Asthma Clin Immunol. 2012; 8(1): 12.)を見て頂きたいのですが、彼らが心配しているのは、

  • 十分な説明がないまま、キットだけが業者から直接消費者に売られていること
  • 十分な知識のない医師や薬剤師のいるクリニックの待合室、薬局などにおいてあること
  • その結果が間違って理解され、食物制限をした子供が発育障害を起こすこと

なのです。

IgG食物アレルギー検査は、その検査の有用性と欠点を合わせて知っている経験のある分子栄養学医にとっては、貴重な情報です。問題は検査の使い方であり、検査だけが独り歩きすることがないようにしてほしいものです。

7 検査をうまく使いこなすために

もちろん、IgG検査の欠点もたくさんあります。やってみた人はわかると思いますが、検査会社ごとに結果のばらつきが非常にあります。特に、各食物に対するアレルギーを鵜呑みにしないことが大切です。栄養療法においては、IgG検査に限らず、いかに腸内環境を把握するかが治療の成否を分けます。なぜなら、栄養サプリメントは腸管から吸収されるからです。

  • 腸内環境を把握しないまま、サプリメントを大量摂取して、腹部の膨満感が続くばかりで症状改善がない人
  • 腹部症状が改善していないのに、カンジタの除菌や、重金属デトックス治療を行い、副作用が多くて失敗した人

がとても多いです。

一番確実な根本原因の見つけ方

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

今日は「根本原因の見分け方」についてお話したいと思います。

分子栄養学に関わらず、医学の世界では、患者さんの主訴を元にして、病気の根本原因を探っていきます。

その過程の中で、時には様々な検査が必要になってきます。
主訴や現病歴から「どのような検査が必要か」を見分ける能力が要求されるわけです。
では、どうやってそれを見分けるのでしょうか。

その答えは「フレームワーク」です。

「フレームワーク」とは、検査の選択の行うための基礎となるアイデア集みたいなものです。
分子栄養学講座で使用しているものの一部をご紹介します。

Identify the Causes! (根本原因を見つけ出せ!)

もしあなたが車を運転中に警告等がついたとしましょう。それをディーラーに持っていったら、

「とりあえず警告灯のランプはずしておきました。」と言われたらどうでしょうか?

サービスマンにボンネットを開けて、原因を精査してもらいたいですよね。
ちゃんとしたディーラーなら、車をジャッキアップしてチェックしてくれるでしょう。

車の場合、「原因を見つけ出して、その上で対処する」のが当たり前ですが、人間の場合はしばしば、違っています。

血圧が高ければ、血圧の薬がでます。高血圧の原因を徹底的に調べて薬を出されている患者さんは少ないとおもいます。

病気の根本原因がわからないままに対症療法を受けている患者さんは山ほどいます。
これではクルマ以下の扱いです。

私は患者さんの現病歴を聞きながら、根本原因を見つけ出すという事をしています。
それに必要なものの一つは詳細な問診表で、もう一つは、この語呂合わせです。

IDENTIFY THE CAUSES

Infection 感染  ウイルス、細菌、真菌の過剰増殖はしばしば隠れている
Digestion 消化  胃酸分泌不良、消化酵素分泌不全、腸内フローラ不全Emotion 感情   非常に問題で、さらに不健康な関連を引き起こすNutrients 栄養   栄養不良、吸収不良、または代謝的なブロック
Toxins 毒    鉛、水銀などの重金属、残留農薬、除草剤など
Inflamation 炎症 「○○炎」を引き起こす慢性的な引き金、食習慣
Foods 食事  隠れた食事の悪影響が臓器のダメージ、食物依存症を引き起こす
You 貴方  貴方の決断が貴方の病気に与える影響がわからないという思い込み
Thyroid dysfunction 通常の検査では検出する事ができない甲状腺機能異常
Hypoglycemia 低血糖 炭水化物、糖質、インスリン、その他のホルモン分泌不全などが関わる
Endocrine disorders ホルモンの分泌異常、分泌不全が加齢、機能不全を引き起こす
Candida overgrowth  過剰な抗生剤、ステロイド、砂糖、ストレス
Adrenal Fatigue 副腎疲労、副腎機能低下 低血糖、病気や人生への負担などが原因
Underactivity 自分の能力を十分鍛えないこと「使わなければ駄目になる
Stress or spiritual critis  不必要な活動でいっぱいになってしまうこと;無意味
Enviromental 環境  満たされない、機能しない、むしろ害のある家庭、仕事、遊びの場
Structural 構造   肉体的、精神的、感情的な要素の不一致、不整合が痛みや機能障害を引き起こす

私が数年前に、米国Riordan Clinic所長のハニング・ハーキー先生に教えて頂いたものです。

なんと、頭文字が IDENTIFY THE CAUSES になっていますので、比較的覚えやすいのではないでしょうか。

このような思考の枠組みである「フレームワーク」を使用する事で、原因は「何か?」でなく、「どれか?」という様に考えられるようになります。

あとは、順番に考えていけば、だれでも全ての可能性をもれなく、ダブりなく、吟味する事ができます。

吟味をして、疑わしいと思った病態に応じた検査を選べばよいわけです。
非常に画期的です。

実際、私はこのフレームワークを元に、副腎疲労症候群について66名に治験を行い、2008年に副腎疲労症候群の研究発表会を開いたり、Ⅱ型甲状腺機能低下症を研究したりしました。

現在、よく行っている腸内環境検査も、これから派生しているものです。

このフレームワークの特徴は、標準的な医療で見逃されがちな病態にフォーカスしているところです。

世界50ヶ国から難病の患者が集まっているクリニックで使用されているだけのことはありますね!

このフレームワークの詳細な使い方については「分子栄養学実践講座」で行いますので、もし、上記を読んでもいまひとつ自分で応用するのが難しいと思われる方は、是非受講をお考えください。

根本原因は「何か?」でなく、「どれか?」と考える

毛髪ミネラル検査について

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

毛髪ミネラル分析検査は、その名の通り毛髪からのミネラルの排泄量とバランスを見る検査です。髪は最も早く成長する体組織であり、1か月で1cm伸びます。細胞外液に浸かっている毛包中の毛細胞が成長する際、システインがミネラルを巻き込むため、毛髪は細胞外液のミネラル濃度の経時変化の記録紙である、ということができます。

血液検査はミネラルの評価に向いていない

尿や毛髪検査を用いて重金属の蓄積やミネラルのアンバランスを測定する事は分子栄養学の処方を決めるうえで重要事項です。血液検査でもミネラルを測定する事は可能です。しかし、体内のミネラルの過不足を診断するためには、血液検査は不適当です。例えばカルシウムやマグネシウムなどは、血中濃度が狂わないように厳重に微調整がされているからです。

血液は、常に補正されているので、検査のタイミングで結構数値が変わります。しかし、毛髪検査は毛根から3cmの毛髪をすべて検体として提出することで、3か月の平均値を求めることができます。だから、基準値の設定が細かく、ミネラルのわずかな過不足を判定できるのです。

血液検査

採血した瞬間のミネラル濃度を測定するため、タイミングによって大きく値が変化する。そのため基準値を広くとる必要がある

毛髪検査

3ヶ月間のミネラル濃度の経時変化の平均を測定できるため、基準値をより細かく設定できる。だから、わずかな過不足を判定できる

また、マグロをはじめとした大型魚に含まれる水銀は、体内に入ると血中濃度が上がりますが、それはすぐに組織に吸収されてしまいます。水銀の血中濃度が上がるのはマグロを食べてから3時間の間だけです。だから、経時変化に影響を受けにくく、安定した値が得られる尿検査や毛髪検査を行うのです。

日本人は重金属まみれ

数多くの毛髪ミネラル結果を見てきましたが、重金属の全くたまっていない日本人はいません。水銀、鉛、ヒ素、カドミウムをはじめとして多彩な重金属レベルが高いのがごく普通です。いかに日本人が重金属汚染にまみれているかということがわかります。

検査会社で結果は大きく違う

髪ミネラル検査を行っている検査会社にはいくつかあります。しかし、日本人と欧米人では重金属の蓄積量が違いますので、各検査会社の重金属検査の基準値にも影響しています。これは、同一人物の毛髪を同時に2社にオーダーしたものです。

ドクターズデータ社(米国)
ら・べるびい社(日本)(以下、ら社)

このように、各ミネラルの値に関しては両社でほぼ同じですが、基準値が大きく違うため、同じ検査の値でも「 一方では正常範囲なのにもう一方ではかなり足りない 」という検査結果の解釈の違いが生じます。

例えば、21歳から40歳における、ド社の水銀の基準値は400ppb以下ですが、ら社のそれは、2183~6946ppbと、かなりかけ離れています。私の水銀値は、ら社の検査結果では基準値よりやや高い程度ですが、ド社では、飛びぬけて高くでていました。同様に、リチウムの基準値は、ド社は7~23ppb、ら社は0.32~8.4ppbです。私のリチウム結果は、ら社では、基準範囲の真ん中ですが、ド社では、最低値までグラフが振り切れています。

これらの差異は、両国に住む人の食習慣だけでなく、生活環境や、両社の測定器のセッティング等様々な要素に左右されます。これらの差異を頭に入れてデータを読んでいかないと、思わぬ落とし穴に引っかかる事があります。

40歳になったら自分のお腹の症状はあてにしない

宮澤賢史 · 2019年2月23日 ·

慢性疲労治療のコツの1つは、腸のわずかな炎症をみつけてケアすることです。おなかの自覚症状はあてにならないため、感度の高い検査を使い炎症を見逃さないようにしましょう。

腸の炎症が万病の元

慢性疲労を長く患っている患者さんには炎症を持っている人が多いようです。慢性鼻炎、脂肪肝、歯周病、上咽頭炎などの炎症は副腎に負担をかけ、様々なサプリメントの効果を打ち消してしまいます。中でも特に影響が強いのが腸の炎症です。腸はサプリメントの入り口であり、免疫の調整臓器でもあるので、吸収不良からアトピーまで様々な病気に関わっています。

オーダーメイドでサプリを処方する個別化栄養療法を行うためには、腸内環境を調べて腸の炎症の有無や程度をあらかじめ知っておくことが不可欠です。といっても、大腸の内視鏡検査で異常なしだからといって、炎症がないと決めつけるわけにはいきません。肉眼的にはわからない軽度の炎症でさえも全身への影響は少なくありません。

腫瘍や炎症がないのに腹部症状を伴う過敏性腸炎も、顕微鏡で腸組織をみると炎症が存在することがわかっています。

便中リゾチームは最も感度が高い腸炎の検査

私は腸内環境の把握のためにドクターズ・データ社の総合便検査分析を使用しています。この研究所は代替医療の分野では有名で、世界中のクリニックに臨床検査を提供しています。

この検査では、一般的な病院の検査ではわからない腸内細菌バランスや免疫状態など様々な腸内の状況を知ることができます。

その中でも重宝するのが腸の炎症の指標である便中リゾチームです。リゾチームは、細菌の細胞壁を分解する働きを持っており、炎症の程度に応じて便中のリゾチーム濃度が増えます。おおまかにいうと、病原性細菌が増えると中等度(200~600程度)、炎症性腸疾患があれば高度(2,000以上)増加します。

慢性疲労の患者さんの多くに中等度の炎症が見られますが、この程度では大腸内視鏡検査で異常を認める事は殆どありません。この検査は通常なら見逃されてしまう位の軽度の炎症を見つけることができるのです。これは副腎疲労の治療の成功率を大きく左右します。炎症は例え軽症でもコルチゾールの分泌を促すため副腎に負担をかけ続けるからです。

ところで、一体どのくらいの人がこの軽度の腸の炎症を自覚しているでしょうか。自覚症状がなければ、腸の検査や食事治療に考えが及ぶこともないでしょう。そこで当院を受診中の患者さんの自覚症状と便検査の結果を比較してみました。

腸の炎症を自覚できる人は意外と多くない

最近1ヶ月半に来院され、便検査を行った65名の慢性疲労、副腎疲労、低血糖の患者さん(7~63才、男28名、女37名)に対して腸内環境の問診票と便中リゾチームの上昇度を比較しました。

すると、65名中50名(77%)に便中リゾチーム軽度上昇(>200)が認められました。疲労や低血糖を持つ患者さんの腸がいかに炎症を起こしているかがよくわかります。

次にそのような軽度の腸炎を持つ50名のうち、過敏性腸炎の症状がある方を調べました。

〈過敏性腸炎の診断基準〉
腹痛もしくは腹部不快感が半年前からあり、かつ最近3か月の中で月に3日以上あり、さらに下記の項目のうち2つ以上を満たす。

  • 排便により軽快する。
  • 症状の有無と排便頻度が関連している。(例:腹痛があるとき排便回数が増える)
  • 症状の有無と便の状態が関連している。(例:腹部不快感があるとき下痢状便になる)

その結果、症状を持つ人は26名、ない人は24名でした。

つまり、便中リゾチームが高く腸に炎症がある人でも、腹痛や腹部不快感などのはっきりした過敏性腸炎症状を持つ人は半分に過ぎないのです。

この状況は年齢が上がると顕著になります。先ほどの50名を40歳を区切りに2つに分けてみました。すると、40歳未満では症状ありが67%を占めるのに対して、40歳以上で症状が出ている人は38%に過ぎませんでした。40歳になると自分の腸の炎症に気がつく事が出来るのは3人にひとりなのです。

まとめ

腸の炎症があるのに自覚症状に乏しい人は意外と多く、特に40歳になるとそれが顕著です。慢性疲労、低血糖がなかなか治らない方は、お腹の症状が全くなくても一度腸内環境検査をしてみましょう。

検査は便のサンプルを郵送するだけで体への負担も最低限です。

宮澤医院では炎症の程度や腸内細菌バランス、免疫の低下度などを考慮して治療内容や治療期間の目安を決定しています。多少時間と手間をかけてでも根本原因を把握しておくことが迷いのない治療方針を生み出し、結局は治療期間も短くて済みます。ちょっとお高い検査ですが、40歳超えたら一度やってみて損はないです。

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