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臨床分子栄養医学研究会

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宮澤賢史

自閉症児が増えた本当の原因

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

自閉症の発症率は68人に1人

アメリカ疾病予防管理センターが発表した米国における自閉症の発症率です。

Centers for Disease Control & Prevention
米国における自閉症の発症率
https://www.cdc.gov/ncbddd/autism/data.html

これは、2000年の調査における150人に1人と比べて、2倍以上の数字です。ここ10数年、自閉症の発症率の伸びが止まりません。

1970年には1万人に1人だった自閉症発症率がここまで上昇した原因は一体なんなのでしょう?

  • 認知されたこと?
  • 自閉症の診断基準が変わったこと?
  • 環境が悪化したこと?
  • ワクチン接種?

など諸説ありますが、私は「妊娠期間中の母体にのみ葉酸サプリメント摂取が奨励されたこと」が大きな要因だと考えています。

今回と次回、2回にわたって葉酸と発達障害の関係について考察してみたいと思います。

葉酸摂取推奨の流れ

葉酸はビタミンBに分類される生理活性物質です。

DNAの合成に必要であり、欠乏するとお腹の中にいる時の赤ちゃんのように細胞分裂の盛んな場所に深刻な影響を与えます。

「二分脊椎」といのは、生まれつき脊椎の一部が形成されない状態で、運動麻痺、感覚障害などを引き起こしますが、このような発達異常もお腹の中にいる時の葉酸不足が大きく関わります。

そのような出生時障害を予防するために、厚労省が葉酸サプリメントの摂取を推奨したのは、平成12年のことです。

厚生労働省
妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取についてhttps://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1212/h1228-1_18.html

これによると、妊娠を計画している女性は、障害の発症リスクを減らすために、

  • 妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間、葉酸をはじめとした栄養のバランスのとれた食事をとること
  • 通常の食事からでは十分な葉酸摂取が困難なので、当面「食事に加えいわゆる栄養補助食品からの葉酸摂取」をすること

と勧告がなされています。

厚労省がこのような英断を行った背景には、日本における二分脊椎発症の増加と、諸外国における葉酸摂取推奨の流れがあります。

葉酸と神経管閉鎖障害の症例対照研究は1980年代に多く行われました。

その結果、英国、米国が1992年に、カナダ、アイルランド、ニュージランド、ノルウェーなどが1993年に強化食品、サプリメントによる1日0.4mgの葉酸摂取を勧告するに至りました。

その後、多くの国で二分脊椎の発症率の大幅な低下が報告されました。

活性型葉酸と不活性型葉酸

さて、先ほど「葉酸不足が二分脊椎の原因」と言いましたが、正確には、「体内で葉酸を活性化できない赤ちゃんの葉酸不足が原因」です。
葉酸には活性型と不活性型があり、働きをするのは活性化型のみです。

葉酸を活性化できない赤ちゃんには余計に葉酸を足してあげることで、本来の働きを助けてあげることができます。

1990年代当時、すでにこのことは動物実験で確認されていました。
このように酵素の働きを、栄養素の量で補ってあげるのは、まさに分子栄養学の考え方です。

葉酸の摂取量を多くすることで、遺伝的に弱い人でも活性化葉酸の体内量を確保できます。

この葉酸を活性化する酵素は、MTHFR酵素(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)と呼ばれています。

この酵素を作るための遺伝子に問題がある赤ちゃんが正しく成長するためには人より余計に葉酸が必要です。
というわけで、1990年代前半から始まった葉酸サプリメント摂取の推奨は、各国の二分脊椎の発症を減少させました。
その推移は、先ほどの厚労省のホームページにも記載されています。

厚生労働省
妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取についてhttps://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1212/h1228-1_18.html

この成果は素晴らしいものです。

しかし、その時各国政府はまだ気が付いていなかったのかもしれません。
同時期から、自閉症の発症率が増加し始めることに・・・

このグラフを見てください。

様々な国、年代で行われた自閉症の発症率調査をまとめたものです。
これを見て頂くと、1990年ころから劇的な増加(!)を示しているのがお分かり頂けるでしょう。
葉酸サプリ摂取が、「二分脊椎発症率の低下」と「自閉症の発症率の上昇」を同時に起こした?
なぜ、神経の発達に必要な葉酸の摂取で、自閉症の発症率があがるのでしょうか?

葉酸活性化のできない赤ちゃんの出生率が上がった

MTHFR遺伝子研究の世界的な権威、ベン・リンチ博士は、こう言います。

妊娠期間中に母親が多量の葉酸を摂取した事で、MTHFR遺伝子変異を持つ幼児の流産の減少をひきおこし、自然淘汰の在り方を変えたという説がある。
これは、神経が発達する重要な時期に、より多量の葉酸を必要とする幼児の出生率が増加したことを意味している。
発達期により多くの葉酸を必要とする幼児が増えているのだとすれば、 子宮内にいた時と同等の葉酸濃度を維持することができない幼児の絶対数も増えているということ。
故に、自閉症のような発達障害を生じるケースは増加していると考えられる。

つまり、自閉症が1990年以降増加している理由の一つは、皮肉なことに、「通常なら死産や神経管異常で生まれてくる赤ちゃんが葉酸のおかげでちゃんと生まれることができるようになったから」なのです。

確かに妊娠中の葉酸によって、神経管異常のリスクは逃れることができるようになりました。
しかし、残念ながら現時点では、各国の対応は、出生時の神経異常の防止のみにとどまっており、生まれた後のフォロープログラムはありません。

葉酸摂取の推奨は、妊娠1ヶ月前~3ヶ月のみで、出生後のガイドラインはありません。

MTHFR遺伝子検査のすすめ

神経管異常を起こすMTHFR遺伝子変異は、自閉症の発症にもかかわりが深いことが近年の研究でわかっています。

しかし、新生児マススクリーニング検査(病気を早期発見するため赤ちゃん全員に対して、公費で行なわれる検査)には、MTHFR遺伝子検査はまだ入っていません。

以上の事から、我々の行うべき対応は、はっきりしています。

まずは、自分で検査をしてみましょう!

最近の技術発達のおかげで、MTHFR遺伝子は10,000円くらいで検査ができるようになりました。

この遺伝子変異はアジア系に多いという事もすでにわかっています。(日本人は40%以上)

生まれる前だけでなく、生まれた後も葉酸が必要

もう一つ重要な事は、生まれた後も葉酸のフォローが必要だということです。特に遺伝子変異がある幼児には葉酸の確保が欠かせません。

但し、葉酸サプリならなんでもいいというわけではありません。
ここが非常に重要な点です。

先ほどの厚労省のデータによると日本の神経管障害の発症率は70年代には10,000人に15人ほどでしたが、現在では、10,000人に5人ほどです。

仮に10,000人中、10人が神経管障害を逃れて、全員が自閉症になったとしても、爆発的な自閉症の発症率である68人に1人(10,000人中、147人)という数字とはかけ離れているように思えます。

実は、各国政府の行った葉酸政策の問題点は、今回お話しした「出生後の赤ちゃんのためのフォロー・プログラムがないこと」だけではありません。

「葉酸量の確保のためにサプリメントを推奨した」ということも非常に関係があることなのです。

次回に続きます。

https://orthomolecularmedicine.tokyo/cause2/

自閉症治療における最大のポイント

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

異常なスピードで増えている自閉症

数年前になりますが自閉症に関しての勉強会に参加しました。

かつて米国で1万人に1人といわれた自閉症ですが、2012年にはアメリカ疾病管理予防センターはその割合は88人に1人との推定を発表しています。

日本と米国で全く違う治療の実情

日本での治療は、トレーニング、家族のサポートと薬物治療が主です。

もちろん、薬は必要ですが、その目的は日中の精神状態の平穏を確保するためのものであり、根本治療ではないところが歯がゆいところです。

残念ながら、保険診療の範囲では、自閉症に対する根本原因を見つけるのは困難といわざるを得ません。

日本に比べると、米国には多くの自閉症治療機関や、患者さんの団体があります。自閉症の治療に関しては、日本と欧米では大分知識量に差が出ているとのことでした。

エイミー・ヤスコの治療方法

そんな中で、エイミー・ヤスコ先生は自閉症の根本治療を遺伝子レベルからアプローチする事で、多くの患者を改善に導いている先生です。

彼女によると、自閉症は原因がほぼ確定されています。

遺伝子変異、神経興奮毒素、連鎖球菌の感染、有害重金属の負荷、慢性ウイルス感染、性別・血液型・HLAタイプなどです。

これらが複雑に影響しあって、自閉症が生じます。

「なぜうちの子だけが自閉症になってしまったのか?」

という両親の質問に対して、彼女はダイアナ妃の事故を例にあげて説明するそうです。

あの時、車があれほどスピードを出してなかったら?
あの時、パパラッチがあれほど追いかけてこなかったら?
あの時、運転手がお酒を飲んでいなかったら?
あの時、シートベルトをちゃんとしていたら?

自閉症はそれらの多くのパズルのピースが組み合わさったときに発症します。

自閉症を治療するためには、まず体内の炎症、特に腸の炎症を抑えなくてはなりません。
ですから、サプリメントに加えて、食事の内容を様々な形で制限していくことが必要です。

結構大変なことだと思います。

自閉症治療の最大のポイント

これは講師の先生が教えてくれたのですが、

「2年以上かなり治療を頑張っていたのに結果がいまいちだった子供がいる。」とのこと。

何で治療が効かないんだろうと、思っていたが、つい最近、「実は、甘いものをやめさせることが出来なかった」とご両親から告白されたという事でした。

そのときは、そうなんだ、やはり大変なんだなと、あまり考えなかったのですが、先日、衝撃的な出来事があったのです。

発達障害の児童を教育する学校の校長先生と面談しました。

そこは、全寮制でお子様を預かることで、単に勉強を見るだけでなく、生活を全般にわたってみているということです。

驚いたのはいままで100%の人が留学もしくは復学を果たしていることです。

これはすごいことです。

食事、腸内環境が重要

なぜ、こんな効果がでるんだろう?といろいろ聞いてみてわかりました。

大きな理由のひとつは、「子供達に対するお菓子、甘いものの徹底禁止」だと思います。

これをするだけでも、子供の場合は格段に腸内環境がよくなります。
ここは全寮制なので、完全な指導ができるんですね。

食事を厳格にしないとなかなかよく治らない病態があります。
それは、腸内環境が絡む問題です。

特に子供の場合は顕著です。
甘いものや添加物、食物アレルギーをおこす食物は未熟な腸内環境を悪化させます。

サプリを含む様々な治療をしているのに自閉症が治らない人もいるのに、食事、生活指導でも改善する人もいる。

最近、測定した自分の検査結果がかなり低血糖になっているのをみて、改めて思いました。

「食事は大事です」

今回の話は一部の人にとっては当たり前だと思いますが、私を含め出来ていない人は食事の大切さを自覚しようね、という話でした。

遅延型アレルギーは食べ物を制限するための検査ではない

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

先日、次のようなご質問を頂きました。

遅延型アレルギーについてなのですが、欧米や米国のアレルギー学会では、遅延型アレルギーの科学的根拠は乏しいとする声明が上がってきており、同様に日本でも、日本小児アレルギー学会が推奨しないとの声明を発表した、というニュースを拝見しました。

また、免疫寛容が成立してくる過程で、IgG4が上がってくるという意見もありますよね。私の勤務先でも、遅延型アレルギーを実施しておりますが、このニュースを拝見して以降、この検査の是非について自分自身も混乱しております。

先生は、遅延型アレルギーについてどのようなお考えをお持ちですか?是非、ご意見を聞かせていただければと思います。

こちらについて回答させて頂きます。

 1 アレルギー学会はIgG抗体を否定

平成26年11月19日に、日本小児アレルギー学会が「食物アレルギーの原因食品の診断法としてIgG抗体を用いることを推奨しない」という声明を出しました。

内容を見ると、

  • IgG抗体の結果を信じて除去食を行っている患者がたくさんいる
  • IgG抗体は健常人でも上昇するので診断価値はない
  • IgG抗体の結果に基づく除去食のエビデンスは存在しない
  • この検査結果に基づく除去食は意味がないし、むしろ栄養失調になるので問題

という事のようです。

彼らは、IgGの上昇は免疫寛容の進行だと主張しています。

2 免疫寛容とアレルギーの違い

免疫寛容とは、特定の者に対して免疫を抑える仕組みのことです。肉はたんぱく質のかたまりで、人にとっては異物ですが、免疫寛容が起こることで食べ物として取り込むことができます。免疫寛容に異常をきたし、本来は異物とは認識されない飲食物を異物として攻撃するために起こるのが食物アレルギーです。

消化管には免疫を抑制する制御性T細胞が多く分布しています。この細胞の働きにより、経口摂取したものには免疫寛容が生じます「食物アレルギーが疑われても、免疫寛容を促すために、症状を誘発しない範囲で食物の摂取を進めるべき」だというのが、最新の食物アレルギーに関する考え方です。

これら一連の学会の主張は、一部を除いて非常に理にかなっていると思いますし、「食物アレルギーの原因食品の診断法としてIgG抗体を用いることを推奨しないこと」「アレルギーの根本治療として免疫寛容を促すこと」には私も賛成です。

しかし、私は「症状がなくてもIgG抗体が上昇する」「エビデンスがない」という2点については疑問を感じます。

3 食物アレルギーが精神症状を起こす事は認識されていない

IgG検査と症状の発現について、

「食物アレルギーIgG4検査は成人の慢性じんましんや他のアレルギー性皮膚疾患症状に対して診断価値がない」
(Int Arch Allergy Immunol. 2011;155(1):52-6)

など、典型的アレルギー症状とIgG検査の関連の論文は散見されますが、その一方で、精神症状とIgG検査の関連に言及した論文は見受けられないようです。

以下に示すのは、メイヨークリニックのホームページからとった、食物アレルギーの症状リストです。

  • 口内がひりひりする、うずく
  • じんましん、湿疹
  • 唇、顔、舌、のど、その他の部位が腫れる
  • 喘鳴、鼻づまり、または呼吸困難
  • 腹痛、下痢、吐き気または嘔吐
  • めまい、 もうろう状態または元気がなくなること
  • その他アナフィラキシー

この中には、「多動」とか「気分の落ち込み」、「疲労感」などはないですよね。

そう、一般的な医師の通念として、「精神症状は、食物アレルギーの症状としてとらえられていない」のです。

もともと、IgG検査は分子栄養学の世界で、特に精神症状を捉える指標として発達してきたものです。それが、いつのまにか一番大切な精神症状の把握が抜け落ちて、エビデンスの十分な蓄積がないまま簡便な臨床症状のマーカーとして商業ベースにのって広まってしまったのが実情でしょう。アレルギー症状とIgG抗体の上昇の関連については、精神症状を含めて再度評価しなおす必要があると思います。

もう一つの問題はIgG検査が単独で一人歩きしているということです。

4 食事とIgG抗体の関連性

私の調べる限りでは、IBS(過敏性腸症候群)患者において、食事とIgG抗体の関連性を認める報告があります。

IBS患者では対象に比べて、小麦や牛肉、豚肉やラム肉などのIgG抗体が上昇
(American Journal of Gastroenterology, Vol. 100, pp. 1558‐9.)

IgG抗体をもとにした食事の除去でIBSの症状が減弱
(Gut, Vol. 53, pp.1459‐64.)

また、その一方で精神疾患と腸内環境(リーキーガット症候群)に関する報告も多く認めます。

うつ病患者で、腸のグラム陰性桿菌に対する免疫グロブリンが上昇している
(J Affect Disord. 2007 Apr;99(1-3):237-40. Epub 2006 Sep 27.)

腸漏出症候群を治療することで慢性疲労症候群の臨床症状も改善する
(Neuro Endocrinol Lett. 2008 Dec;29(6):902-10.)

うつ病は脳の慢性炎症であることが最近の研究で明らかになっていますが、その炎症の元として腸は非常に有力視されているのです。
(So depression is an inflammatory disease, but where does the
inflammation come from?:BMC Medicine 2013, 11:200)

5 IgG検査は腸管バリア機能を評価するためにある

また、ポーランド、ルブリン大学の精神科医 Karakuła氏は、「ゾヌリンなどにより、何らかの形で腸粘膜のタイトジャンクションが開いてしまうと、腸管の透過性が亢進する(俗にいうリーキーガットの状態)。これによってより大きな分子が腸管バリアを潜り抜け血流に達するので、それが遅延型食物アレルギーを引き起こす。この状態は免疫反応を亢進させ、炎症性サイトカインを放出させ、それがうつ症状を引き起こす。だからうつ病患者において、腸の透過性とIgGレベルを測定するのは有用ではないかと思われる。」と報告しています。(Nutr Neurosci. 2014 Sep 30.)

この考え方は、至極当然であり、そもそも、IgG検査は食物を制限するための検査ではなく、腸管バリア機能を評価するための検査です。IgGと腸管は切っても切り離せない関係なんです!IgGと腸管免疫の関係を一切考慮せず、IgGだけをみて「エビデンスが不十分」とするのはそれこそ考慮がないと思います。

以上から、私は「IgG抗体上昇に伴うアレルギー症状としての精神症状が見逃されている可能性がある」「IgG単独のエビデンスは少ないが、腸内環境と精神疾患の関係を示すエビデンスは豊富であり、これらをまとめて総合的にとらえるべき」だと考えています。

6 問題は検査だけが独り歩きする事

そもそも、前出の日本小児アレルギー学会の主張の元になっているこのカナダアレルギー臨床免疫学会の見解(Allergy Asthma Clin Immunol. 2012; 8(1): 12.)を見て頂きたいのですが、彼らが心配しているのは、

  • 十分な説明がないまま、キットだけが業者から直接消費者に売られていること
  • 十分な知識のない医師や薬剤師のいるクリニックの待合室、薬局などにおいてあること
  • その結果が間違って理解され、食物制限をした子供が発育障害を起こすこと

なのです。

IgG食物アレルギー検査は、その検査の有用性と欠点を合わせて知っている経験のある分子栄養学医にとっては、貴重な情報です。問題は検査の使い方であり、検査だけが独り歩きすることがないようにしてほしいものです。

7 検査をうまく使いこなすために

もちろん、IgG検査の欠点もたくさんあります。やってみた人はわかると思いますが、検査会社ごとに結果のばらつきが非常にあります。特に、各食物に対するアレルギーを鵜呑みにしないことが大切です。栄養療法においては、IgG検査に限らず、いかに腸内環境を把握するかが治療の成否を分けます。なぜなら、栄養サプリメントは腸管から吸収されるからです。

  • 腸内環境を把握しないまま、サプリメントを大量摂取して、腹部の膨満感が続くばかりで症状改善がない人
  • 腹部症状が改善していないのに、カンジタの除菌や、重金属デトックス治療を行い、副作用が多くて失敗した人

がとても多いです。

一番確実な根本原因の見つけ方

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

今日は「根本原因の見分け方」についてお話したいと思います。

分子栄養学に関わらず、医学の世界では、患者さんの主訴を元にして、病気の根本原因を探っていきます。

その過程の中で、時には様々な検査が必要になってきます。
主訴や現病歴から「どのような検査が必要か」を見分ける能力が要求されるわけです。
では、どうやってそれを見分けるのでしょうか。

その答えは「フレームワーク」です。

「フレームワーク」とは、検査の選択の行うための基礎となるアイデア集みたいなものです。
分子栄養学講座で使用しているものの一部をご紹介します。

Identify the Causes! (根本原因を見つけ出せ!)

もしあなたが車を運転中に警告等がついたとしましょう。それをディーラーに持っていったら、

「とりあえず警告灯のランプはずしておきました。」と言われたらどうでしょうか?

サービスマンにボンネットを開けて、原因を精査してもらいたいですよね。
ちゃんとしたディーラーなら、車をジャッキアップしてチェックしてくれるでしょう。

車の場合、「原因を見つけ出して、その上で対処する」のが当たり前ですが、人間の場合はしばしば、違っています。

血圧が高ければ、血圧の薬がでます。高血圧の原因を徹底的に調べて薬を出されている患者さんは少ないとおもいます。

病気の根本原因がわからないままに対症療法を受けている患者さんは山ほどいます。
これではクルマ以下の扱いです。

私は患者さんの現病歴を聞きながら、根本原因を見つけ出すという事をしています。
それに必要なものの一つは詳細な問診表で、もう一つは、この語呂合わせです。

IDENTIFY THE CAUSES

Infection 感染  ウイルス、細菌、真菌の過剰増殖はしばしば隠れている
Digestion 消化  胃酸分泌不良、消化酵素分泌不全、腸内フローラ不全Emotion 感情   非常に問題で、さらに不健康な関連を引き起こすNutrients 栄養   栄養不良、吸収不良、または代謝的なブロック
Toxins 毒    鉛、水銀などの重金属、残留農薬、除草剤など
Inflamation 炎症 「○○炎」を引き起こす慢性的な引き金、食習慣
Foods 食事  隠れた食事の悪影響が臓器のダメージ、食物依存症を引き起こす
You 貴方  貴方の決断が貴方の病気に与える影響がわからないという思い込み
Thyroid dysfunction 通常の検査では検出する事ができない甲状腺機能異常
Hypoglycemia 低血糖 炭水化物、糖質、インスリン、その他のホルモン分泌不全などが関わる
Endocrine disorders ホルモンの分泌異常、分泌不全が加齢、機能不全を引き起こす
Candida overgrowth  過剰な抗生剤、ステロイド、砂糖、ストレス
Adrenal Fatigue 副腎疲労、副腎機能低下 低血糖、病気や人生への負担などが原因
Underactivity 自分の能力を十分鍛えないこと「使わなければ駄目になる
Stress or spiritual critis  不必要な活動でいっぱいになってしまうこと;無意味
Enviromental 環境  満たされない、機能しない、むしろ害のある家庭、仕事、遊びの場
Structural 構造   肉体的、精神的、感情的な要素の不一致、不整合が痛みや機能障害を引き起こす

私が数年前に、米国Riordan Clinic所長のハニング・ハーキー先生に教えて頂いたものです。

なんと、頭文字が IDENTIFY THE CAUSES になっていますので、比較的覚えやすいのではないでしょうか。

このような思考の枠組みである「フレームワーク」を使用する事で、原因は「何か?」でなく、「どれか?」という様に考えられるようになります。

あとは、順番に考えていけば、だれでも全ての可能性をもれなく、ダブりなく、吟味する事ができます。

吟味をして、疑わしいと思った病態に応じた検査を選べばよいわけです。
非常に画期的です。

実際、私はこのフレームワークを元に、副腎疲労症候群について66名に治験を行い、2008年に副腎疲労症候群の研究発表会を開いたり、Ⅱ型甲状腺機能低下症を研究したりしました。

現在、よく行っている腸内環境検査も、これから派生しているものです。

このフレームワークの特徴は、標準的な医療で見逃されがちな病態にフォーカスしているところです。

世界50ヶ国から難病の患者が集まっているクリニックで使用されているだけのことはありますね!

このフレームワークの詳細な使い方については「分子栄養学実践講座」で行いますので、もし、上記を読んでもいまひとつ自分で応用するのが難しいと思われる方は、是非受講をお考えください。

根本原因は「何か?」でなく、「どれか?」と考える

毛髪ミネラル検査について

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

毛髪ミネラル分析検査は、その名の通り毛髪からのミネラルの排泄量とバランスを見る検査です。髪は最も早く成長する体組織であり、1か月で1cm伸びます。細胞外液に浸かっている毛包中の毛細胞が成長する際、システインがミネラルを巻き込むため、毛髪は細胞外液のミネラル濃度の経時変化の記録紙である、ということができます。

血液検査はミネラルの評価に向いていない

尿や毛髪検査を用いて重金属の蓄積やミネラルのアンバランスを測定する事は分子栄養学の処方を決めるうえで重要事項です。血液検査でもミネラルを測定する事は可能です。しかし、体内のミネラルの過不足を診断するためには、血液検査は不適当です。例えばカルシウムやマグネシウムなどは、血中濃度が狂わないように厳重に微調整がされているからです。

血液は、常に補正されているので、検査のタイミングで結構数値が変わります。しかし、毛髪検査は毛根から3cmの毛髪をすべて検体として提出することで、3か月の平均値を求めることができます。だから、基準値の設定が細かく、ミネラルのわずかな過不足を判定できるのです。

血液検査

採血した瞬間のミネラル濃度を測定するため、タイミングによって大きく値が変化する。そのため基準値を広くとる必要がある

毛髪検査

3ヶ月間のミネラル濃度の経時変化の平均を測定できるため、基準値をより細かく設定できる。だから、わずかな過不足を判定できる

また、マグロをはじめとした大型魚に含まれる水銀は、体内に入ると血中濃度が上がりますが、それはすぐに組織に吸収されてしまいます。水銀の血中濃度が上がるのはマグロを食べてから3時間の間だけです。だから、経時変化に影響を受けにくく、安定した値が得られる尿検査や毛髪検査を行うのです。

日本人は重金属まみれ

数多くの毛髪ミネラル結果を見てきましたが、重金属の全くたまっていない日本人はいません。水銀、鉛、ヒ素、カドミウムをはじめとして多彩な重金属レベルが高いのがごく普通です。いかに日本人が重金属汚染にまみれているかということがわかります。

検査会社で結果は大きく違う

髪ミネラル検査を行っている検査会社にはいくつかあります。しかし、日本人と欧米人では重金属の蓄積量が違いますので、各検査会社の重金属検査の基準値にも影響しています。これは、同一人物の毛髪を同時に2社にオーダーしたものです。

ドクターズデータ社(米国)
ら・べるびい社(日本)(以下、ら社)

このように、各ミネラルの値に関しては両社でほぼ同じですが、基準値が大きく違うため、同じ検査の値でも「 一方では正常範囲なのにもう一方ではかなり足りない 」という検査結果の解釈の違いが生じます。

例えば、21歳から40歳における、ド社の水銀の基準値は400ppb以下ですが、ら社のそれは、2183~6946ppbと、かなりかけ離れています。私の水銀値は、ら社の検査結果では基準値よりやや高い程度ですが、ド社では、飛びぬけて高くでていました。同様に、リチウムの基準値は、ド社は7~23ppb、ら社は0.32~8.4ppbです。私のリチウム結果は、ら社では、基準範囲の真ん中ですが、ド社では、最低値までグラフが振り切れています。

これらの差異は、両国に住む人の食習慣だけでなく、生活環境や、両社の測定器のセッティング等様々な要素に左右されます。これらの差異を頭に入れてデータを読んでいかないと、思わぬ落とし穴に引っかかる事があります。

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