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臨床分子栄養医学研究会

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宮澤賢史

副腎疲労と腸内環境の関係

宮澤賢史 · 2019年2月23日 ·

副腎疲労というと副腎だけが悪いという印象をもちがちです。しかし副腎はネットワーク臓器であり、様々な臓器と深くつながっています。悪化した他の臓器を修復するために副腎が働かされた結果、副腎疲労になっているパターンはとても多いのです。

そんなつながりの深い臓器の中でも筆頭と言えるのが腸です。連続するストレスや、副腎疲労によって起こる低血糖症状をカバーするために食生活がめちゃくちゃになってしまい、その結果腸内環境が悪化している人は少なくありません。

ここでは

  • 副腎疲労患者150名の腸内環境検査の結果
  • それに対する治療法

について宮澤医院を受診した患者さんのデータを元に説明します。

1 副腎疲労患者は腸内環境が悪い

副腎疲労の患者さんが一番を多く訴える症状は「疲労」です。これは当たり前だと思いますが、意外にも2番目に多い主訴は腹部の症状です。

これは、宮澤医院を受信された150名の患者さんの主訴を多い順に並べたものです。

副腎疲労の患者さんには胃腸機能の低下がよくみられます。副腎疲労がなかなか治らない大きな原因の一つが胃腸問題なのです。

  • 腹部の膨満感
  • 便の形が不安定
  • 便のにおいが強い
  • 下腹部痛がある

これらは、腸内で悪玉菌が増え、異常発酵がおこっているサインです。

宮澤医院を受診する患者さんの8割に腸内環境異常があります。その中には、少し乳酸菌をとるだけで大分楽になる人もいるのです。また、腸が炎症を起こしていることもよくみられ、それを抑えるために必要なのが副腎ホルモンの「コルチゾール」です。体内に炎症があると副腎ホルモンが出っ放しになり、副腎が休む暇がなくなります。腸内環境の悪さが副腎に負担をかけ、また副腎疲労が腸内環境をさらに悪化させるという悪循環が起きます。腸が悪いとサプリが効かない

また、腸が悪いと副腎疲労の治療に必要な栄養が消化吸収されにくくなります。ビタミンCなどは多少胃腸が悪くとも体内に入っていきますから、サプリメントを摂取していれば、壊血病になることはまずありません。

しかし、ミネラルやたんぱく質などは消化、吸収に手間がかかるため、栄養を摂っていても不足という状態がありえるのです。日本人を含むアジア人は欧米人に比べて、

  • 胃酸分泌量が少ない
  • 消化酵素分泌量が少ない
  • 腸が長い

という特徴を持っています。このためにタンパク質やミネラルの消化吸収が阻害されたり、体から出ていくべき重金属や化学物質がうまく排泄されなかったりして、病態をさらに複雑にしています。特に腸管が炎症を起こしている場合は、吸収不良がひどくなります。吸収されなかったたんぱく質は腸内で腐敗し、悪玉腸内細菌のエサになります。

2 腸内環境を知る方法

副腎疲労が治らないと言って来院される患者さんの7割以上が腸の問題を抱えています。
宮澤医院では、腸内環境が悪化する原因を徹底的に検査しています。

2-1 問診

便の回数、色、臭い、形は腸内環境の鏡です。また、腹部膨満感、胃痛、腹痛、胸焼けなどの情報から、胃腸のどの部分に問題があるのか推測できます。

〈消化不良症状〉
胃もたれ、胸焼け、げっぷ、食欲不振、胃腸炎症状、腹痛、
胃のむかつき、小腸疾患、膵機能低下、腹部膨満、ガス多量、
便の形が不安定、便の匂いが強い、未消化便、下痢気味、
大腸下腹部痛、膨満感、便秘、頻回に便意をもよおす

家族歴や既往歴も重要な情報です。生まれてくる時に産道を通ることで、母親由来の乳酸菌が子供に移行します。また、ステロイド、ピル、抗生剤の使用歴、糖尿病,過敏性腸炎などは、全て腸漏れ症候群(リーキーガット)を起こす要因となります。

2-2 腹部の診察、超音波検査

長期間にわたり胃腸の機能が低下している方は、触診で明らかに胃腸が固くなっています。腹部膨満がある場合、胆汁や消化酵素が少なくなっているかもしくは悪性細菌の過剰な増殖なども疑われます。

2-3 食物アレルギー検査、腸内環境検査

良性、悪性細菌、真菌のバランスを見ます。通常腸内フローラ(様々な種類の腸内細菌が腸壁にお花畑のように生息していること)では、乳酸菌など良性菌が多くを占めていますが、ストレスや加齢、食生活や薬の副作用などにより、良性菌が減ると、悪性細菌や真菌などが多く増殖してきます。悪性細菌はガスを多く産生し、腹部膨満(ふくぶぼうまん)の元になりますし、カンジタ菌はアンモニアやアセトアルデヒドを作り、疲労感や頭に霧がかかったような症状を引き起こします。

消化酵素が十分に出ているかどうかも重要な情報です。消化酵素不足では、タンパク質が十分に消化されないまま腸の壁を通り抜け、体内でアレルギー反応を起こすからです。食物アレルギー検査はそのような状況を反映します。またそのような状態では、しばしば腸内に炎症が起きています。炎症が起きれば副腎は疲弊するし、免疫が反応してアレルギー症状を引き起こすこともあります。

腸内環境検査では、大腸の内視鏡検査ではわからない軽度の炎症(それでも十分副腎疲労をひきおこします)を見つける事が出来ます。治療がうまくいかない場合は、検査をして根本原因がどこにあるかを確認するのが結局早道です。

2-4 毛髪ミネラル検査

腸内環境が悪くなると、特にミネラルの吸収が悪くなり、重金属が体から出にくくなります。その状況を毛髪検査から把握していきます。

3 リーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群)

炎症などによって腸粘膜に穴が開いてしまい、体に悪影響を及ぼす物質が体内に入ってきてしまう事を腸漏れ症候群(リーキーガット症候群)と呼んでいます。小腸は胃で胃酸によって細かく分解された食物の栄養素を吸収する器官です。小腸にはバリアのような膜があって分子が小さな物質は通すことができるが、大きな分子は通さないような構造になっています。

食物はまず口で咀嚼によって細かくし唾液と混ざって胃に行きます。その後胃で胃酸によってさらに細かく正常に分解された食物の栄養素は、小腸のバリアを通り、腸壁のすぐ後ろにある血管へ流れこみ、身体の必要な場所へ運ばれます。

腸の壁の絨毛には薄い膜がバリアのようにはられていて、異物が貼ることを防ぐのと同時に、胃で細かく分解された食物の中の栄養素を吸収できる仕組みになっています。このバリアや破られると、異物が体内に侵入して重い感染症や様々なトラブルがおきるだけでなく、胃で十分に消化分解されなかった大きな食物の分子が血液中に入ってしまいます。未消化のタンパク質や、細菌、食品添加物などが血液の中に取り込ませてしまうと、身体はそれを異物とみなして攻撃することでアレルギー反応が起き、炎症が引き起こされます。

〈リーキーガット症候群の症状〉
下痢、過敏性腸症候群、月経前症候群、食物アレルギー、
ニキビ、肌荒れ、湿疹、リウマチ様症状、橋本病様症状、
セリアック病、抑うつ感、不安感、ADD、ADHA、花粉症、乾癬

日本人の7割がリーキーガット症候群の恐れがあると言われています。原因は食生活の悪化、抗生物質、ステロイド、ピル等の長期使用、食品添加物やカフェイン、アルコールの摂取、重金属、カンジダの増殖などです。便総合検査は「リーキーガット症候群」の原因を究明するのに最も適した検査の一つです。

4 便総合検査

便総合検査は、腸内環境について詳細な情報を提供してくれる検査です。腸内環境検査でわかることと、150名の副腎疲労患者さんに対して当院で行った検査結果について説明します。

4-1 良性、悪性細菌のバランス

この検査では、便中の腸内細菌を培養し、それを良性、悪性細菌、境界型菌にわけて表示してくれます。結果を見れば、良性菌が多いのか、悪性細菌が多いのか、一目瞭然です。

菌数は1+から4+の数値で表されます。数値が多いほど、菌数も多いということです。例えば、乳酸菌なら3+か4+くらいが、理想的な範囲です。

実際に副腎疲労患者の腸内環境検査では、乳酸菌が理想的(3+、4+)の人は23%しかいませんでした。

また、乳酸菌が3+、4+の人で悪性細菌が出ている人は殆どいなかったのも特徴的です。つまり、腸内のフローラは細菌がびっしり生えており、乳酸菌が十分な量があれば、悪性菌が増殖するスペースはないのです。

抗生剤やステロイドの使用などで良性細菌が少なくなると、その空いたスペースに悪性菌が生えてきてしまいます。

4-2 消化酵素

次にこのデータは、患者さんの腹部膨満がある人とない人、そして消化酵素が正常の人、低下している人の割合を示したものです。膨満感が強い人は全体の41%、消化酵素が減少している人は43%の人に見られました。

このデータによると、腹部膨満感がある人もない人も同様の確率で消化酵素が低下していることがわかります。腹部膨満感症状と消化酵素の不足にはあまり関係性を見出せませんでした。

これは、「腸内環境が改善しない人は、たとえ腹部膨満感がなくとも消化酵素を足してみて様子をみる」ことが無駄ではないことを示しています。

次に、腹部膨満感、胃痛、下痢と悪性細菌数との関係をみてみましょう。
悪性菌の種類数と腹部症状の間に相関関係がみられます。腹部膨満感、胃痛、下痢という症状は、SIBO(Small Intestinal Bacterial Overgrowth)
小腸内細菌過剰繁殖という病態でよくみられるものです。

通常、十二指腸・小腸内のバクテリアの数は大腸内に 比べて、はるかに少ないが、SIBO患者においては十二指腸・小腸内に多数のバクテリアが繁殖し、しかもその種類は 大腸内のバクテリアに類似すると言われています。

この繁殖したバクテリアが宿主の食べた食物を 分解・発酵させる過程で、十二指腸・小腸内においてガスが 発生し、これらのバクテリアに起因する物質が下痢や 倦怠感などを引き起こすというわけです。これらの症状には、抗生剤、プロバイオティクス、成分栄養などの治療が有効だとされています。

4-4 免疫と炎症マーカー

副腎疲労の方の3分の2に免疫異常や炎症を認めました。それは、腸の炎症の修復のために副腎が酷使されている可能性があることを意味します。副腎疲労の治療では、腸の炎症の修復を常に頭に入れておく必要があります。

4-5 まとめ

平均的な副腎疲労患者さんの腸内環境像は以下の通りでした。

 乳酸菌が少なく(77%)
 腹部膨満感が強く(59%)
 時には悪性細菌が多く(25%)
 炎症を起こしており(64%)
 免疫異常がある(65%)

5 腸内環境改善の治療方法

食事

以上の理由から、副腎疲労患者にとって食事治療は極めて重要です。脳に霧がかかっていて、まともに献立も考えられないという方はまずここから始めましょう。そしてだんだんと回復してきて自分の食事に気が回るようになったらより詳しく食事状態を見直していくのです。

サプリメント

上記の結果は多くの患者さんの結果をまとめて平均化したものであり、個々の患者さんの状態は人によって全く異なります。実際には診察と検査の結果からサプリメントをセレクトしていきます。

・胸焼け、食物の味が残っている、胃もたれなどの症状が強い場合→消化酵素の摂取

・便の大きさ形、臭い、回数、色が悪い場合→乳酸菌の摂取(形はバナナ状、臭いは無臭、回数は1日2回、色は茶褐色がベストです)

・下痢や便秘を繰り返す、慢性の下痢、慢性の便秘→抗炎症サプリメントの摂取

特殊な場合を除き、乳酸菌や消化酵素は必須です。

6 まとめ

腸内環境を制する者が副腎疲労治療を制する事が出来ます。「急がば回れ」とはまさに腸内環境改善のことを言うのです。腸をよくするだけで、副腎疲労の症状が8割がた軽減してしまうことはよくあることです。腸内環境ケアには数か月かかりますが、根気よく取り組んでみてください。

栄養療法の値段と医師のレベル

宮澤賢史 · 2019年2月23日 ·

分子栄養学が正しく広まるためには、正しい知識が広まることももちろんですが、「正しい治療が適切な値段で受けられること」が必要だと常々思っています。

原因不明の病に苦しむ患者さんにとって、栄養療法は確かな手ごたえを感じられる数少ない治療の一つです。

しかし、治療が始まってから患者さんは経済的な事で悩むようになります。

「なるべくサプリや検査に頼らない方法を知りたいです」

「患者さんのサプリメント購入については長期にわたってくると負担も大きくなります。なるべく食品から摂取できるものは食品から、最低限必要なものはサプリメントからという風に考えたい」

「手探りで解析結果に従って実行してきました。必要なサプリ量がどう変わるか?いずれは減らせるのか?サプリ代が予算的にあと1年ももつか?が心細い限りです。」

これらは、メール講座を受講している方から頂いた生の意見です。

もちろん、治療にかかわる先生方も、これをよしと思っているわけではなく、

「日常診療では、高額な自費検査や唾液検査などはほぼ不可能。」

「検査には費用がかかり、いいといわれるサプリメントは高額なものも少なくありません。自分自身が患者の立場で言うと、やはり経済的負担から、そこまで高額な検査や治療を望まないと思います。」

といったご意見も頂いています。

この治療が広まるためには、「患者さんが無理なく出せる」かつ「医師が適切な利益を得られる」値段設定が求められます。いくら正しい治療だといっても、この治療が健康保険の適応になるにはまだ時間がかかりますので。

では、どうしたらよいのでしょうか?

正解は「検査とサプリをできるだけ減らすこと」です。

極端な話ですが、問診と診察から患者さんの不調の根本原因が全てわかれば検査はいりません。

また、患者さんの体の状況を正確に把握することができれば、絶対必要なサプリメントは、3種類まで減らせるかもしれません。いわゆる「引き算の栄養学」ってやつです。

しかし、言葉でいうのは簡単ですが、実際にはなかなか難しいです。そもそも、問診と診察から根本原因が完全に絞りきれないから検査をするわけですし、何が効くかはっきりと断定できないので複数のサプリメントが出るのです。

栄養療法の医師にもレベルがあります。

レベル0 サプリメントを完全否定する
レベル1 サプリメントを容認する
レベル2 血液検査で足りないサプリを処方する
レベル3 様々な検査を駆使してサプリを処方する
レベル4 サプリを邪魔する原因を考える
レベル5 必要ないサプリを減らす
レベル6 必要ない検査を減らす

レベル7 会った瞬間に必要な治療がわかる

私自身も、過去15年間でこのような階段を上ってきました。もちろんレベル7には至っていませんが。

サプリメントを摂るのは簡単です。(効果を継続したまま)やめるのが難しいんです。

医師はレベル4以上に到達して、はじめて患者さんの懐状況と治療効果を天秤にかけた治療ができるようになります。

レベル5になると、サプリをどこまで減らすかということに思慮が及ぶようになるので「治療のゴール」を意識できるようになります。そうすることではじめて患者さんに「治療期間の目安」の話ができるようになります。

問診事項と症状から検査結果を予測して、一番効果的なサプリメントをピンポイントで使う。それはレベル6の医師にしかできないことです。

医師、歯科医師の方は「自分はどのレベルの栄養療法医」か、患者さんだったら「自分の主治医はどのレベルなのか?」よく考えてみてください。

このレベルが栄養療法にかかるコストを大きく左右します。

分子栄養学実践講座では、レベル6になるためのカリキュラムを組んであり、それに必要な資料(テキストとビデオ)を提供しています。

「○○地方で副腎疲労をみてもらえるクリニックをご紹介下さい」とお問い合わせを頂いた時、必ず実践講座を受講された先生をご紹介するのはそういった理由からです。

レベル6の「検査とサプリを減らせる医師」には患者さんはレベル3の医師の2倍の診察料でも惜しみなく払ってくれるでしょう。それでもトータルで考えれば、患者さんの負担はだいぶ減るからです。

2010年代の後半、栄養療法は半分当たり前のこととしてますます多くの人に受け入れられていくでしょう。

インターネット上には栄養に対する様々な知識があふれています。栄養療法を専門とする医師(管理栄養士も)であれば、最低レベル4まで達していないと今後は厳しく、淘汰されて行くと思います。

ビタミンCの全て

宮澤賢史 · 2019年2月21日 ·

ビタミンCほど多くの人に知られているのに、全く理解されていないビタミンはないでしょう。ライナス・ポーリング博士も、ライナス・ポーリングの弟子だった僕の師匠も、僕もみんなビタミンCの不思議さに魅せられて分子栄養学の世界に入ったのです。

1. ビタミンCをサプリで摂る理由

「ビタミンC含有菓子の品質表示ガイドライン」によると、レモン1個はビタミンCを20mg含むとして計算するそうです。添加したビタミンCの量をレモン果実の個数により表示することが消費者にとって商品選択のための比較の目安となります。

「レモン○○個分のビタミンC配合!」と書いてあるパッケージがよくありますね。それに習って、いろいろな場面でのビタミンCをレモンの個数で表してみたいと思います。

厚生労働省の決めた最低摂取基準は1日あたり100mgです。ビタミンCの量をレモン果実の個数により表示するとこうなります。

1.1 ビタミンCをサプリで摂ることは無駄なのか?

1日60mgのビタミンCを摂ると尿中からあふれ出てくるそうです。(Levine et al., 2001)

人間のビタミンCのキャパシティが60mgしかなければ、ビタミンCをどんなにいれても60mg以外の部分はでていくということになる。巷でよく言われている「どれほど摂っても、身体の外に出て行くから、摂るだけ無駄」という発想です。

これは本当に正しいのでしょうか?人間の身体はレモンのはいる量がきまったコップみたいな構造をしているのでしょうか?下記は全く別の機関が行った実験です。

ビタミンCを1000mg、2000mgとったときの尿中にでてきたビタミンCを測定したものです。たしかに2000mgとった時のほうが多いが、倍の量出ているわけではありません。では、その差はどこにいってしまったのでしょうか?体内に残っているとしか思えません。

1.2 ビタミンCは体内で偏って存在する

やはり、この仮説は間違っているようです。人間の身体はそんなに単純ではない。では、実際に体のどこにビタミンCはたまっているのか?人間の身体を解剖してみることはできませんが、色素をつけたビタミンCをモルモットに飲ませてみた研究者がいます。

(Chatterjeeら、1975年)

モルモットにビタミンCを飲ませて6日後に解剖したものです。これを見ると「ビタミンCは、特に特定の臓器に集まり易い傾向がある」事がおわかり頂けると思います。

水晶体にビタミンCが集まっているのは、水晶体がビタミンCを多く必要とする臓器だという事を示唆しています。水晶体は、太陽光などによる活性酸素の影響を受けやすく、何十年にもわたる影響の結果が白内障です。実際、ビタミンCを多くとる人には白内障が少ないと言われています。

ある栄養素が特定の疾患に有効かどうかは、栄養素が疾患の存在する臓器に存在するかどうかで決まります。つまり、栄養素が集まってきている臓器=その栄養素をたくさん消費する臓器=その栄養素が無いと上手く働かない臓器といえます。

血中を1とすると、脳は血液中の20倍、白血球は80倍、副腎には150倍の濃度のビタミンCが含まれています。ビタミンCが多く含まれる臓器はそれだけビタミンCが必要であることを示しています。ですからビタミンC不足になると、脳の機能が低下する事が予想されます。

また、白血球中のビタミンC濃度が高いのも有名です。ビタミンCは白血球の遊走性を高め、免疫力をあげる効果があります。体内でビタミンC濃度が一番高いのは副腎(血中濃度の150倍)です。「ビタミンCは副腎ホルモンの産生に不可欠であり、ビタミンCの不足は副腎機能の低下をひき起こす」ことが類推できます。

ストレスなどで副腎を酷使しているときや、感染があるときはビタミンCの需要は高まっています。だから、そのような時は特に十分量のビタミンCを補給して身体を満たしてあげることが必要です。また、さらに十分量のビタミンCをとることで、副腎の機能を上げたり、感染症の治療に使ったりする事ができます。では、どの位の量をとればベネフィットが得られるのでしょうか。

例えば、Gortonらによる風邪にたいする二重盲検試験(1999)では、テストグループでは平常時から1日3回、1回1000mgのビタミンCを摂取してもらい、風邪の症状がでたら速やかに、1時間おきに6回1000mgのの摂取、その後は平常時と同じ量を続けるというトライアルを行いました。

その結果、プラセボグループに比べて、85%もの症状減という結果が得られました。その他、ポリオウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、コクサツキーウイルス、狂犬病ウイルスなどもビタミンC10gの経口摂取で不活化が実証されています。

ゴリラは、新鮮な植物を主に摂取しており、量的には一日に約4.5gのビタミンCに相当する。農業が発達する以前は、人も同じ物を食べて生活していた。だからビタミンCの適正摂取量について、一日100gだ、いや200mgだと論議するのではなく1gなのか、2gなのかを論議すべきである

ライナスポーリング

では、どのように、ビタミンCをとるべきでしょうか。上記の様に、積極的なベネフィットを得るためには、ビタミンCはg単位で摂るのが正しいといえます。では、どのようにビタミンCを摂るのが理想的でしょうか。

1.3 果物で摂る方法

天然の果物では100gあたりのビタミンC含有量はアセロラが圧倒的に多いです。アセロラは、カリブ諸島特産の果物で、成熟果実のビタミンCの含有量は、 1800mgにもなります。これは、他の果物に比べて圧倒的な量です。でも、これを毎日食べるのは、あまり現実的ではないかもしれません。

1.4 サプリメントで摂る方法

1000mgのサプリメントは、レモン50個分のビタミンCに相当します。サプリメントや点滴と言うと自然なビタミンというより、人工のビタミン剤という薬を使っているというイメージがあります。ビタミンとビタミン剤は似ているようで、全く違います。ビタミンは天然物です。何百万年前からも存在しているので、その進化をたどってきた人間の体に受け皿が出来ています。しかし、ビタミン剤は薬です。天然にあるものを模倣して、合成したものです。

天然物は特許が取れません。製薬メーカーは特許取得のために、故意に天然物とは少しちがった構造式の物を作り、それで特許を取得する事で利益を得てきました。そのため、売れている多くの薬は合成品です。ですから、ビタミン剤を含むほとんどの薬は、体内では異物として扱われ、排除されます。

しかし、ビタミンCは違います。天然物と合成物で構造式が全く同じなのです。ですから、世界中のビタミンCはほぼ100%工場で作られています。アセロラやローズヒップから抽出した天然物もありますが、製造コストがかかりすぎて、天然100%のビタミンCは事実上不可能だと思います。ビタミンCというのは、例え人工の物でも非常に自然なものといえます。しかし、だからといって、ビタミンCを多く摂ることに対して副作用もあることは覚えておかなくてはなりません。

1-5ビタミンCの至適量は状況や目的によって変わる

ビタミンCの最適な量は、状況や目的によって変わります。怪我を治りやすくする、コラーゲンを作る(100mgで大丈夫)、壊血病を予防する、風邪の予防ではグラム単位で必要です。副腎疲労は風邪と同じように、数十g摂るといいです。ビタミンCを点滴すると、てきめんにいいです。

1.6ビタミンCサプリメントは頻回摂取が有効

サプリメントを摂るなら、1gずつ1時間ごとの頻回摂取が有効です。ビタミンCは一度に大量に摂ると、吸収が落ちます。60mgだと100%、100mgだと90%、1000㎎だと75%、2000㎎だと44%と、どんどん減っていきます。ですから、1000mgが最もコスパが良いですね。

30分で血中濃度は上がりますが、4時間で下がります。4時間おきだと血中濃度が上がったり下がったり、血中濃度が安定しません。ですから、1時間おきに、血中濃度が下がっていないうちに次々入れていくと、どんどん上がっていきます。ビタミンCの効果は血中濃度に比例しますから、ビタミンCを1時間おきに摂るだけで、効果が3倍近くなります。

2. 美白のためには、どんなビタミンCをどの位摂ったらいいのですか?

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最近、異業種の方との打ち合わせの機会が多いのですが、私がビタミンC学会の名刺を出すときに必ず女性に聞かれるのがこの質問です。(高濃度ビタミンC点滴療法学会の理事をやっています)

普通だったら、「○×のビタミンCを○○g位摂るといいですよ!」とか答えると思うのですが、分子栄養学を全国に広めようと考えている私としては、いい加減な話はできませんので、以下のように答えます。

「どの位の量が必要かは、人によります。美白にどのくらいビタミンCが効果的かは肌にビタミンCがどのくらい移行するかを考えるといいです。体内でビタミンC濃度が一番高い臓器は副腎です。血中の150倍の濃度のビタミンCが存在します。次に多いのは白血球です。濃度は80倍です。これから、「 風邪の予防と治療にビタミンCが効果的」であり「副腎疲労症候群の治療に最優先すべき栄養素がビタミンCである」ということがわかります。

一般に、栄養素が高濃度に存在するところほど、需要量が高く、栄養素を摂取した場合に、優先的に使用されます。だから、副腎や白血球での需要量が多い場合は、ビタミンCはそちらで優先的に使われてしまいます。肌=ビタミンCというイメージがありますが、ビタミンCの優先順位としては決して高いほうではないんですね。実際に、ビタミンCを少量サプリメントで投与した場合と、点滴で大量に投与した場合のどちらでも副腎や脳には多くのビタミンCが移行します。優先順位が高いからです。

その一方で、肝臓や腎臓などビタミンCの優先順位がやや劣る臓器では、経口摂取と点滴では全く移行度が異なります。つまり、全身にビタミンCが足りているかどうかを知るためには、優先順位の低い臓器までビタミンCが届いているかを見るのがいいと思います。優先順位の低い臓器ってなんでしょうか? それは血管内や皮膚です。

だから、全身にビタミンCが十分足りているかを知るためにはビタミンCの血中濃度を測るとよいです。高濃度ビタミンC点滴を15g点滴した後の、健常人の平均到達血中濃度は1000μg/ml前後です。そこまで血中濃度が上がらない人は、どこかの臓器でビタミンCを消費していると考えられます。同じように、肌を見れば、ビタミンCが足りているかどうかの指標になるはずなのですが、肌の場合、様々な状況を誤認させる因子があるので、何ともいえませんね・・・・」

女性「すいません、あの、結局、どのくらいとればいいんですか?」

宮澤「・・・・・」

昔から自分の話がマニアックだという事は、私も薄々気が付いていましたが、最近、初対面の人にこういう話をすると、かなり引かれるということがわかってきました。皆さんも、栄養とかサプリの話になると気が付いたら浮いている、という状況にならない様、気をつけてくださいね。

3. 風邪とビタミンC

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風邪の季節に大活躍するのがビタミンCです。ビタミンCはうまく使うと、風邪に対して大変役立ちます!ここではビタミンCの使い方について、私の経験を交えてお話しします。

3.1 わたしの風邪のひきはじめのサイン

会議、講演会、診療、長時間の車の運転など、緊張を強いられる仕事の前日は、なるべく運動をしておくのが私の日課です。体力を蓄え、血液循環を良くしておくと、翌日の調子が違います。一昨日も、次の日に長距離の運転を控えていたので、空手教室に行きました。ところが、稽古をし始めたときに気がつきました。「いつもより汗をかかない・・・」

私は、春から秋ごろまではいつも空手着がびしょびしょになるほど汗をかきます。しかし、一昨日は1時間半~2時間ある稽古の中盤になっても、乾いた空手着のごわつき感が肩に残っていました。実は、これは私が風邪を引き始めの時によく感じるサインです。稽古が終わって、帰るとき急に私は喉の痛みを感じました。この冬、数百人のインフルエンザと風邪と胃腸炎の患者さんを診察しても風邪引かなかったのに・・・・・・

今週は、多忙だったためのストレスと前日の飲みすぎも原因だったのかもしれません。迷っている暇はありません。私は、家に帰るとすぐに高濃度ビタミンC25g+マルチビタミンB点滴を自分で行いました。このところ、忙しくてビタミンCサプリをサボっていたためもあるのか、点滴の効果はあまり実感できませんでした。通常は点滴をすると非常にリラックスして眠くなるのですが。そこで、私はビタミンC頻回摂取法を試してみることにしました。

3.2 ビタミンC頻回摂取法

ビタミンCの風邪に対する効果には多くのエビデンスがあります。Gortonらによる風邪にたいする二重盲検試験(1999)では、テストグループでは平常時から1日3回、1回1000mgのビタミンCを摂取してもらい、風邪の症状がでたら速やかに1時間おきに6回1000mgの摂取、その後は平常時と同じ量を続ける実験を行いました。その結果、プラセボグループに比べて、85%もの症状減という結果が得られました。

ビタミンCは白血球の遊走性を高め、免疫力をあげる効果があります。ストレスで副腎を酷使しているときや、感染がある時、ビタミンCの需要は亢進しています。そのような時は特に十分量のビタミンCを補給して飽和させてあげることが必要です。

最近、ビタミンCサプリをさぼっていた私は、白血球中のビタミンCを飽和させようと思って点滴をしたのです。さらに、Gortonに習って、寝るまで1時間おきにビタミンC500mgを摂取しました。3回目くらいで本当に、のどの痛みが治まり、体のだるさがとれてきたときは感激しました!

3.3 その後の経過

気分よく寝たのですが、翌朝起きてみると喉の痛みが昨日より強くなっていました。はっきりした発熱はないですが、頭がボーっとします。睡眠中は仕方のないことですが、ビタミンCを再度飽和させなくてはなりません。そこで朝食は食べずに、乳酸菌とビタミンC頻回サプリを続けました。朝8時から1時間ごとにビタミンC、3時間おきに乳酸菌をとったところ、午後3時頃には咽頭痛はほぼ消失、だるさも消えました。

その夜には多少飲酒しましたが、その影響もないようです。(その間もサプリ頻回摂取は継続)さらに一夜明けた現在、症状はほぼありません。今の状態は、風邪の症状は完全消失、リラックスした少し眠い感じ、腸のぜん動運動が著しい(排便1日2回あり)、でも下痢などではないといった感じです。Gortonに感謝です!

3.4 1時間おきにとると血中濃度は3倍になる

ビタミンCを頻回に摂取するメリットについて、スティーブ・ヒッキー博士は「ダイナミックーフロー」という考えを用いて説明しています。通常の人のビタミンC血中濃度は0.7mg/dl程度ですが、1gのビタミンCサプリメントを摂取することで1.4mg/dlまで上昇させることができます。しかし、せっかくとったビタミンCも、腎臓から排泄され、ビタミンC血中濃度は4時間後には元の0.7mg/dlまで戻ってしまいます。

では、ビタミンCが腎臓から完全に排出される前のタイミングで連続してビタミンCを摂取したらどうでしょうか。それによって血中濃度を高く保つことができます。1gのビタミンCサプリメントを1時間おきに摂取することで、血中濃度は3.9mg/dlまで上げることができるそうです。これは、通常(4時間以上おき)に摂取した時の3倍弱の濃度です。

常にビタミンCをとり続けることで白血球の働きを高め、風邪に対抗できるようになるのです。もちろんその間、腎臓からじゃんじゃんビタミンCは排出されるのですが、それを上回る量を頻回投与することで血中濃度を高く保つんですね。

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まさに、「源泉かけ流しの温泉」のようなぜいたくな治療法ですが、特に緊急時には試す価値があると実感しました。それと、個人的にはビタミンC点滴よりも、連続したサプリメント摂取のほうが効果を実感できたのも意外な点でした。風邪などの感染症に対しては、一度に多くのビタミンCを入れるよりも、持続してビタミンC濃度を高めることが効果的なのでしょう。

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4. 高濃度ビタミンCパイオニアへのインタビュー

次は高濃度ビタミンC点滴の話です。ヒュー・リオルダン先生は、ライナス・ポーリング博士の考案した高濃度ビタミンCの点滴療法の意志を引き継ぎ、30年間にわたってビタミンC点滴を行い、世界で初めて、ビタミンCががん細胞を殺傷することを証明した人です。

初めてリオルダン先生にあったのは2003年の夏、東京のホテルで行われたセミナーでした。リオルダン先生は、当時まだ数少なかった分子栄養学を行っている医師たちに対して自分の行っている治療の説明をしてくれました。彼は、日常から自分のビタミンC血中濃度を測定していたそうです。

しかし、ある日くもにかまれた日から、連日4日間ビタミンC 15gを点滴したが、いずれも血中濃度が測定限界値以下でした。それがきっかけで多くの人のビタミンC濃度を測定し、人がいかに簡単にビタミンC欠乏症になりやすいかを実感したそうです。翌年の2004年の夏、私は、この点滴治療を学ぶため、彼が院長を務める人体機能改善センター(現リオルダンセンター)に赴きました。

この前、パソコンのファイルを整理していたら、以前、ヒューリオルダン先生にインタビューをした時のメモがでてきました。その内容をシェアしたいと思います。

4.1 ビタミンC点滴の概要

宮澤「貴施設では年間500人が受けているというビタミンC点滴 治療(以下IVCとする)ですが、どの病気の人が何名くらいずついるのですか?」

Dr.Riordan「がん患者が全体の4分の1残りが4分の3。残りの内訳は様々で、ADHD、HCV、うつ病、リウマチ、関節炎、慢性疲労、自閉症など従来の治療においての改善が見られにくい疾患が多い。ヘビ毒や虫刺されにも有効。年齢の幅は広く2-90歳までこれも様々。ただし、多いのは50-60代。カンサス州はアメリカの中ではHIVの有病率が低いためかAIDS患者はほとんどいない。」

宮澤「1日にどのくらいの人数が受けに来るのですか?」

Dr.Riordan「1日のIVCをうける患者は10~20人。地元の人も多いが、アメリカ全土、また世界50カ国から患者がくる。それでIVCが必要と判断された人はその後地元の病院でIVCを受けたり、在宅サービスで受けたりすることも可能である。」

宮澤「癌のなかではどの部位が多いのですか?」

Dr.Riordan「卵巣、乳がん、肺がん、リンパ腫が多い」

宮澤「癌以外の疾患に対するプロトコールはあるのか?ビタミンC 何gを週何回とか、リポ酸を何g併用するとか、治療中にビタミンCを増減したり、回数を増やしたりするポイントとは?」

Dr.Riordan「万人に共通するプロトコールは存在しない。IVCの量、回数は到達する血中濃度によって決定している。注射法は投与量の最初の2分の1は血漿濃度をあげるために比較的早く点滴し、残り2分の1はゆっくりするのが効果的と考えられる。」

宮澤「またそれぞれの疾患における生存率は?」

Dr.Riordan「がん患者も個人個人でそれぞれ、進行程度、生活様式、生存の意思などの要因が様々であり、一律な生存率はだしていない。しかし、おおまかにいえば、腎臓、乳がん、前立腺、肺が効果を発揮しやすいといえるだろう。肺がんの死亡率は高い。しかし、延命という意味でのIVCの効果はある。
ただし、今までの経験から、生存率にかかわる因子が5つあるといえる。食事、経口の栄養素、家族のサポート、医師のサポート、そして一番重要なのが生きる意思である。
私は患者さんに「あとどれ位生きられますか」と聞かれたとき、逆にこう聞いている。
「あとどの位生きたいですか?」と」

4.2 腫瘍マーカーについて

宮澤「ビタミンC 治療においても腫瘍マーカーの増減をそのまま治療効果の判定に用いてよいか?私たちの施設においては画像上腫瘍縮小を認めるが、腫瘍マーカーは増大している症例を経験している。」

Dr.Riordan「乳がんの場合には比較的治療効果と腫瘍マーカーが一致することが多い。
腫瘍崩壊時にマーカーが一時的に上昇することは当センターにおいても見られている。
又画像上、腫瘍がなくてもマーカー値が高かったり、その逆の場合もある。」

宮澤「組み合わせているサプリメントなどについて、何をどの位用いていますか?」

Dr.Riordan「個人個人により様々」

4.3 副作用について

宮澤「血管の痛み、血管が硬くなる、これはコラーゲンの沈着が関係するのか?偏頭痛の増強している患者がいるがこの副作用はポピュラーなものなのか?」

Dr.Riordan
「主な副作用はのどの渇きのみ。数ヶ月―数年も注射をするのなら針を刺す部分を変更する必要はあると思う。点滴中にマグネシウムを加えることで刺すような痛みを緩和できると思う。」

4.4 禁忌事項について

宮澤「心不全には絶対禁忌なのか?点滴速度を落として、利尿剤と併用しているような症例はあるのか?透析患者に透析と組み合わせて用いているような症例はあるのか?」

Dr.Riordan「点滴速度の調整が必要。透析患者に施行した例はまだない。」

宮澤「風邪などの軽症感染症、健康増進などに用いても問題はないのか?」

Dr.Riordan「いかなる状況においても患者のビタミンC濃度が低ければどんどんやるべきである」

いかがでしたか?参考になりましたか?これは10年以上前のインタビューで、今ではこの治療に対する様々なエビデンスが報告されていますが、治療の原則はほとんど今と変わっていません。残念ながら、リオルダン先生は私が訪問した5ヶ月後に急逝されました。

しかし、私が今も行っている診療は、IVCのリオルダンプロトコールや、先日紹介した、Identfy the causesの原因分析、そして「患者とともに学ぶ」という哲学などリオルダン先生の影響を強く受けています。

5. 感情をコントロールしてビタミンCを節約する方法

嫌なことがあったり、感情的に激しく揺れたりしてイライラしている時は、副腎にとても負担がかかります。副腎では、ストレス負荷時にドーパミンやノルアドレナリンが合成されますが、ノルアドレナリン合成の補酵素として働くのがビタミンCです。モルモットにストレスを負荷すると副腎が肥大し、ビタミンC投与によって縮小します。ここではあえてビタミンCを使わず、感情をコントロールして副腎を保護する方法について考えました。

5.1 感情が必要な理由

NHKでも放送された「お金と感情と意思決定の白熱教室」をご覧になったことのある方はいるでしょうか?いかに人間が感情的な動物なのかを思い知らされます。

感情の専門家、デューク大学のダン・アリエリー教授は言います。感情は合理的なシステムをのっとってしまう。思考のシステムを手助けするのではなく、システムをのっとってしまうのが感情の大きな特徴だ。渋滞で割り込みされて、急に怒り出したりする人などが典型的です。そんなビタミンCの消費を増大させる、悪いものがなぜ人間に備わっているのでしょうか?これに対しての教授の答えはこうです。

「感情は人間が生き残るのに必要だったからだろう。進化の過程から考えると実は、感情=何も考えないことだと言える。ジャングルで虎に鉢合わせてしてしまった場合を想像してほしい。君たちなら自分の体にどう反応してほしいと考えるだろうか。頭の中で損得勘定を計算して、コストや利益を考えてからじっくり判断するべきか?違うだろう。そんなこと言ってる場合じゃない。とにかく何も考えずに逃げるのが先だ。それが感情の果たす役割だ。」

5.2 感情をうまく使う方法

私たちが、ふとしたことで他人に腹を立てたりするとき、私たちの副腎からでたノルアドレナリンは、脳の中でもとりわけ原始的な部分、大脳辺縁系に働きかけます。教授は続けます。問題は「私たちがもはや、感情がいい役立ち方をするような世界、例えばジャングルのようなところに住んでいないことだ」

教授によると感情の特徴は「環境によって引き起こされる」「長くは続かない」「人間の行動を支配する」の3つです。ですから、感情をうまく使うためには、いくつか気を付けることがあります。

1番目に、感情は必要な行動に素早く導いてくれます。だから、自分を奮い立たせるのに使うに使うと効果的です。

2番目に、感情は環境によって左右されます。だから自分のなりたい感情に応じて、自分のおくべき環境をえらぶことです。ゆったりしたい気分に浸りたかったら、南の島にいることを想像するだけでは不十分です。実際にハワイまでいきましょう。

3番目。感情は動き始めると止めるのは困難です。これは、本当に困難ですが、感情は私たちが考えているほど長続きはしない、という性質を使い、「変な環境に身を置かないこと」「感情が安定したら、すぐに、行動の改善を行うこと」が有用だと思われます。

いかがですか?このように、感情の性質を知っておくことは、ビタミンCの節約にだいぶ貢献するのでしょうか。それでも、完全にコントロールできないのが「感情」というものなのですが。

6. ビタミンCに関するQ and A

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今までお話ししてきたように、ビタミンCは非常に身近でありふれたものですが、ビタミンCの大量療法ともなるとまだまだ多くの否定的な意見を多く耳にします。

Orthomolecular Medicine News Serviceでは、そんなビタミンCに関する多くの質問にエビデンスを示しながら解答をおこなっています。非常に興味深い内容ですので、一度ご覧になってください。なかなか刺激的な事が書いてあります。一部抜粋しました。

http://orthomolecular.org/resources/omns/index.shtml(原文は英語)

Q 一日に2000mgのビタミンCを摂取することは大量療法と言えるでしょうか?

A いいえ。数十年前、ライナスポーリングとアーウィンストーンは、大部分の動物は体重換算でそれよりも多くのビタミンCを産生することを示しました。

Q それなら、なぜ政府はビタミンC摂取の上限を設定しているのでしょうか?

A おそらく、理由は無知によるものです。米国毒物コントロールセンター会議によると、「ビタミンC(とその他のサプリメントも)は、誰も殺さない」としています。

Q ビタミンCがDNAを傷つけるでしょうか?

A いいえ。もし、ビタミンCがDNAにダメージを与えるのであれば、なぜ多くの動物は人間の体重に換算して1日に2000~10000mgものビタミンCを体内でつくるのでしょうか?進化は重要な遺伝物質を傷つけるようなものを助けることはありません。

Q ビタミンCは低血糖やB12不足、先天性欠損、不妊症などを起こすでしょうか?

A ビタミンCは先天性欠損症(また、不妊性)も流産も引き起こしません。低血糖や反発性の壊血病、不妊性、突然変異、ビタミンB12の破壊などの有害事象は誤ってビタミンCに起因するとされていました。医療関係者は特にビタミンCがこれらの影響を生じない事を認識する必要があります。

Q ビタミンCは・・・・・

A 14日間に渡る二重盲検プラセボ対照試験では、3,000mg/dayのビタミンCをとることで性交の頻度が高まることが報告されています。また、ビタミンC摂取群ではうつ病の著名な減少も認められました。これらはビタミンCの「カテコラミンの活動性を調節し、ストレス反応を減弱し、不安とプロラクチン放出にアプローチし、血管機能を改善し、オキシトシン分泌を増加させる」という機能によるものでしょう。これらの過程は性行動とその雰囲気に左右されます。

Q ビタミンCは、腎結石を引き起こしますか?

いいえ。虚偽狂った医療メディアは、しばしば、ウィリアム・マコーミックがビタミンCが実際に腎結石の形成を防ぐことを証明したという事実を見落としています。彼は1946年にこれに関するレポートを公開しました。彼の仕事は、アラバマ大学医学部のエマニュエルチェラスキン博士によって確かめられました。Cheraskin博士は、ビタミンCがシュウ酸エステル石の形成を阻止することを示しました。「たとえ尿の中のシュウ酸エステルの一部が酸化型アスコルビン酸に由来するとしても、高用量のビタミンC摂取はシュウ酸カルシウム腎結石の危険性を増すものではない。」という報告もあります

large- scale Harvard Prospective Health Professional Follow-Up Studyによると1500mg/day≦のビタミンCを摂った群はそれ以下のグループに比べて優位に腎臓結石のリスクが低かったそうです。ロバートカスカート博士は1969年から患者に対して高容量ビタミンCを使用し、次のように述べています。

「私がアスコルビン酸が腎臓結石を起こすという記事を読む時にはすでに私はそれが腎結石を起こさないというエビデンスを持っていたので、私は大量を患者に使い続けた。2006年までに私は25000人の患者に対して高容量ビタミンCを使用したが、腎結石を発症したものはいない。500mg/dayまで一日の量を減らした患者のうち二人がシュウ酸カルシウム結石を発症した。彼らに対してはビタミンC投与量を元に戻し、マグネシウムとB6を加えたところ、腎結石は二度と発症しなかった。彼らが腎結石を発症したのは十分な量のビタミンCを摂っていなかったからだ」

Q なぜ、あれだけのビタミンCを摂っていながらポーリング博士はがんで亡くなったのですか?

A ライナスポーリング博士(大量投与ビタミンC主唱者)は、前立腺ガンで1994年に亡くなりました。メイヨークリニックのガン研究者チャールズG. Moertel博士(ポーリングとビタミンCの批判者)は、また、1994年に、リンパ腫で亡くなりました。Moertel博士は、66才でした。ポーリング博士は、93才でした。

この年齢差がビタミンCによる利益のせいかどうかに関しては、個人的な見解は分かれるところです。大事なことは「ビタミンC不足は進行がん患者に多くみられる」ということです。血中ビタミンCレベルの低い患者さんは生存期間が短いのです。

Q ビタミンCは動脈内径を狭くしたり、動脈硬化を起こしたりはしないのでしょうか。

アブラハム・ホッファー先生は次のように述べています。「私は1952年から自分の患者に大量ビタミンC投与を行っているが、この数十年に心臓疾患が進行した症例を見たことが無い。」1969年以降25,000人以上の患者の経験のあるロバートカスカート博士も初診時に何もない患者さんが心臓疾患を発症することを見たことがないと述べています。

キーニー、フレイは、30日間、患者に対してビタミンCを与えて、動脈を通して血流測定を行いました。1日1回の投与で血流は50%近くも改善し、1ヶ月後もそれは持続していました。

Q 血圧に関してはどうですか?

A 無作為二重盲検プラセボ対照試験では、サプリメントのビタミンCを摂っている患者は優位に血圧が低いことを示しました。

Q ではなぜマスメディアではアンチビタミンCのレポートに興奮するのでしょうか?

A 否定的なニュースは人目を引くのです。
否定的なニュースは新聞や雑誌が売れ、テレビの視聴率をあげます。もちろん、肯定的な薬の研究も見出しを飾ることがあります。しかし、肯定的なビタミンの研究はそうなることはありません。

人間のためのビタミンCのための米国の1日あたりの推奨摂取量は、モルモットのための農務省のビタミンC基準のわずか10%だそうです。サプリメントは現在の日本でも欠かせないものになっています。自分の身を守るには情報の洪水の中から正しいものをつかみとる知識が必要な時代になっているのでしょう。

7. なぜビタミンCの合成能力を失ったのか

最後に、なぜ人はビタミンCを作れなくなってしまったのかについて考えます。ビタミンCは人間が体内で合成することができないため、外界から摂取しなくてはならない栄養素のひとつです。ほとんどの哺乳類はグルコースからビタミンCを合成することができますが、人間をはじめとする霊長類とモルモットはビタミンCの合成ができません。これはビタミンC生合成過程の最終段階で働く酵素であるL-グロノラクトンオキシダーゼが人では欠損しているからです。

なぜ、人はビタミンCの合成能力を失ってしまったのでしょうか。ビタミンCは副腎がアドレナリンやコルチゾールなどのホルモンを産生するときの原料になります。そのためか、副腎における濃度が体内で一番高く、血中濃度の150倍にもなります。コルチゾールは強力な抗炎症、抗ストレス作用をもちますので、ビタミンCはこれらの能力に密接に関わると考えられます。なぜ人類はビタミンC合成能を失ったのか本当の原因はいまだ持って不明です。

7.1 脳を守るため?

しかし、分子栄養学の創始者でありビタミンC研究の第一人者であったライナス・ポーリング博士は「人類がビタミンC合成能を失ったのは脳を守るためだ」と言っていたそうです。ライナス・ポーリング博士はいつも突然、「ビタミンCはがんに効く」等と発言し、その理由は言わなかった(というか、天才すぎて、だれも彼の言うことを理解できなかった)そうです。

ビタミンCががん細胞を殺傷する事は、2005年に米国国立衛生研究所によって証明されましたが、なぜ、人がビタミンCを作れなくなったのかは未だに謎です。この「脳を守る」というのはどういう意味なのでしょうか?ビタミンC合成能がない霊長類の脳の特徴のひとつは脳重量です。体重あたりの脳重量は霊長類全体がほかの哺乳類にくらべて大きいのです。人類は社会生活に適応するために脳容量が大きくなり、そのため脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖の需要量も増加しました。

7.2 ストレスと低血糖、究極の選択

ところが、一方でブドウ糖はビタミンCの原料でもあるのです。ブドウ糖にLグロノラクトンオキシダーゼが働くとビタミンCが合成されます。ビタミンC合成需要が急激に高まった場合、当然ブドウ糖は激しく消費されるでしょう。血糖が低下するかどうかは定かではありませんし、他の動物がビタミンC需要が高まったときに低血糖になるという報告はありません。しかし、脳機能維持にブドウ糖が重要な役目を持つことは事実ですし、脳が大きい霊長類ではその需要は相当なものです。

ですから、2500万年前の人類の遺伝子は社会生活適応の脳機能維持のためにブドウ糖を温存すべきか、社会生活でのストレス解消のためにビタミンC合成能を保つのかの苦渋の選択をせまられたのではないでしょうか。

結局、果実などビタミンCが外界から用意に摂取できる環境が整っていたヒトを含む一部の霊長類は、社会生活で受けるストレスや病気などよりも、大きくなった脳を守るために体内の糖を維持する方に進化したのでしょう。

そうそう、霊長類のもう一つの大きな特徴は、「社会がつくられ、ランク付けがされる」ということです。お互いに個々を認識し、ランク付けしあうという複雑な社会生活においては、脳機能低下はストレスよりも深刻なダメージを負う可能性も高いと思われます。脳機能(理性や意志)の低下、それは社会の中での順位の下落に直結することなのです。猿も人間もそういうところは一緒です。

社会生活の中で、自分のランクを上げるために脳機能を維持することを選択した霊長類は、ビタミンC欠乏で副腎疲労を起こし、ストレスを受けるという宿命を負っているのです。

サプリメントの選び方と使用量

宮澤賢史 · 2019年2月21日 ·

はじめに

分子栄養学は、サプリメントを用いて医学的な効果を得るための栄養療法の方法論です。
健康増進のためにサプリメントを摂るのと、栄養療法により病気を治す方法には大きな違いがあります。

それは、サプリメントの選び方と使用量です。

栄養療法は、様々な検査をして足りない栄養を見つけ出し、通常よりもかなり多い量の栄養を用いるのが特徴です。

ここでは、どのようにしてサプリメントの種類や量を決めるのかについて説明します。

栄養療法に必要な4つの考え方

サプリメントの種類と量を決めるためには、4つの考え方「ドーズレスポンス」「個体差」「栄養素の局在」「栄養療法を邪魔する要素」が必要です。

「栄養素の局在」とは、文字通り、体内で栄養素が均一でなく、偏って分布していることを意味しています。体内でビタミンC濃度が一番高いのは副腎です。

「ドーズレスポンス」とは、治療効果を得るためには最適量の栄養を使う必要があるという意味です。

体重70kgのヤギが1日あたり13gのビタミンCを体内で作れることから考えると、人間も体内の状態を最適化するためには数十g単位のビタミンCが必要なのかもしれません。

「個体差」とは、栄養素の必要量が人によって大きく異なるという意味です。

ビタミンC点滴後のビタミンC血中濃度が人によって大きく異なるのは、腫瘍や感染、炎症、ストレスなどによってビタミンCが大きく失われている人がいるからです。

「栄養療法を邪魔する要素」とは、栄養の吸収を邪魔する腸内環境悪化、ミネラルの効果を減弱し、弊害を及ぼす重金属の蓄積などです。

上記の4つの法則を知り、うまく使わなければ疾患を治すことはできません。
それぞれについてもう少し詳しく説明します。

ビタミンの定義

「ビタミン」とは何でしょうか?

ビタミンとは「体内では作れないので、必ずとらなくてはいけない栄養」のことです。

ヒトは体内でビタミンCを作れません。だから、ヒトにとってビタミンCはビタミンです。

ヤギは体内でビタミンCを作れます。だから、ヤギにとってはビタミンCはビタミンではありません。

では、ビタミンCは体内でどのような働きをしているでしょうか?
ビタミンCが足らなくなるとどのような事が起きるでしょうか?

ビタミンの標準摂取量

ビタミンCは体内で様々な働きをしています。

ビタミンCが欠乏するとおきるのが「壊血病」です。うつ状態になり、歯茎をはじめとした色々なところから出血します。

ビタミンCは新鮮な食物にしか含まれません。大航海時代、塩漬けの肉のみを積んだ船員が壊血病のために、数万人亡くなりました。

ビタミンCはコラーゲンをつくるのに欠かせない物質です。壊血病は、ビタミンC不足により血管の材料コラーゲンが作れない病気です。血管が弱くなるので全身から出血します。

この壊血病を予防するために、最低限摂らなくてはいけないビタミンCの量の事を、「標準摂取量」とか「所要量」などといいます。

「標準摂取量」は、国が定めた量で、栄養失調を防ぐ最低の量であり、それに対して「最適量」は、病気を治すための量です。

ビタミンの最適量

ところで、ビタミンCの働きはコラーゲンを作ることだけではありません。
ビタミンCにはざっと考えても以下の様な働きがあります。

  • 風邪などの感染症を予防する
  • ノルアドレナリンを合成する
  • カルニチンを合成する
  • 胆汁酸を合成する
  • 異物を代謝する
  • インターフェロンの合成
  • 鉄代謝に関与する
  • ヒスタミン遊離を抑制
  • がんの予防
  • メラニン産生の抑制(「美白効果」のことです)

これらの効果を得るために必要なビタミンCの量は様々です。

例えば、壊血病を予防する量は1日100mgですが、風邪を予防するためには1日1,000mg(1g)を3回飲まなくてはならないという報告がありますし、がんを治療するには1日100,000mg(100g)のビタミンCを点滴しなくてはなりません。

つまり、ビタミンの「標準摂取量」は100mgで、これによりビタミンC欠乏である「壊血病」を予防することができます。

その一方で、抗がん剤としてビタミンCを使う場合の必要量は100gであり、これががんに対するビタミンCの「最適量」となります。

この場合、「最適量」は「標準摂取量」の1000倍となります。

このように、目的によって必要な量が異なる事を量と反応の関係(ドーズレスポンス)と呼んでいます。

ビタミンC100gはレモン5000個分にもなります。この栄養素の量はサプリメントなしには達成できません。

つまりサプリメントは栄養を凝縮した「効率の道具」ということができます。この栄養の効率化によって医学効果を発揮させるのが「分子栄養学」というわけです。

ビタミンの最適量には個人差がある

ビタミンの必要量はヒトによって異なります。

タバコを吸う人、糖尿病の人は血中のビタミンC濃度が低いことがわかっています。このような人は他の人にくらべて、余計にビタミンCを摂る必要があります。

このような個人差は、酵素と基質の親和性で説明できます。
体内の化学反応は基質と酵素が結合して起きますが、両者の結合を助けるのが補酵素です。

問題は酵素の形が人によって多少なりとも異なることです。
酵素はタンパク質の一種であり、設計図であるDNAを元に作られます。

ヒトのDNAは99.9%同じですが、0.1%の違いが個性を生みます。酵素の形が悪いと基質との結合が弱く、余計に補酵素を必要とします。

「酵素の個人差によって必要な補酵素の量が異なること」これを個体差といっています。

サプリメントの最適量が人により異なる理由

タンパク質の働きにはいろいろありますが、一番重要なものは酵素としての働きです。
酵素は、体内で働く化学反応を調整(触媒作用といいます)しています。

人間は食べ物を体内で燃やしてエネルギーを作っています。実際には体温は36.5度で、物が反応するには非常に低い温度です。

しかし、酵素の触媒作用によって、食物は、確実に血や肉になり、エネルギーになります。だから、人は酵素が無ければ、生きられません。

酵素によって化学反応を触媒される物質を「基質」と言います。体内の化学反応は「酵素」と「基質」が組み合わさって進んでいきます。

ビタミン、ミネラルは補酵素として働く

酵素の働きを助けるものを「補酵素」といいます。

アミラーゼ、リパーゼ、リゾチームなどは酵素だけの力で反応を触媒しますが、酸化還元反応やアミノ基転移反応などは、補酵素の力を借りないと反応が進みません。

基質と酵素は鍵と鍵穴の関係に例えられます。形がぴったり合わないと反応が進まないのですが、それを助けるのが補酵素の役目です。

分子栄養学の世界で出てくる「個体差」とは、酵素の設計図である遺伝子の「個体差」なのです。

DNA配列に微妙な違いがあるために、それを設計図として作られる酵素たん白質にも若干の形の違いが生まれます。

基質と酵素と補酵素は、鍵と鍵穴とグリース(潤滑剤)に例えられます。

カギが鍵穴に入りやすい人と入りにくい人がいるわけで、このような人は補酵素(グリース)を余計に使うことで、化学反応の扉を開けることができます。

この補酵素として使われるのがビタミンやミネラルなのです。

補酵素として使われるビタミンの量は時には標準摂取量の100倍に達することもあります。

以上の理由により、栄養素の最適量は人によって異なるため、必要なサプリメントの種類と量を決める際に、その人の酵素活性を検査で測定する事が有用なのです。

脳における補酵素の研究

1950年代末、ライナス・ポーリング博士は、精神疾患の原因の一つに酵素の機能障害があるのではないかと疑い、脳機能における酵素の役割を研究しました。

彼が、ビタミンが欠乏症予防以外に重要な生化学的効果を持つ可能性に気が付いたのは、ポーリング博士が1965年にエーブラム・ホッファー著「精神医学におけるナイアシン療法」を読んだ時のことです。

これにヒントを得て、1968年、ポーリングはサイエンス誌に「分子整合精神医学」
(Orthomolecular psychiatry)と題した簡単な論文を書き、ビタミン大量療法運動の原理を発表しました。

ビタミンには酵素を助ける補酵素としての働きがあります。
ポーリング博士は、そこで、酵素、補酵素の不足が病気を引き起こすので、それを充分量補充することで病態の改善が見込めるのではないかと提案したのです。

栄養素の局在

疾患に対してのサプリメントの選び方は、『栄養素の局在を考えること』 がポイントです。

「ある栄養素がある疾患に対して有効かどうかは、疾患の存在する部位にその栄養素が存在するかどうかを考えればよい」

栄養素が、体のどの部位で濃度が高いかを知ることは、その栄養素がどこの疾患で有用なのかを知ることなのです。

なぜなら、栄養素は体が長年の歴史で必要とされる部位に運ばれるシステムが確立しているからです。

ビタミンCの場合血中濃度を1とすると、脳には20倍、白血球には80倍、副腎には150倍のビタミンCが存在します。

ビタミンCが存在する所には、それだけ需要があると考えられます。

風邪の予防と治療にビタミンCが効果的であるというエビデンスが多く存在しますが、これはビタミンCによる白血球の活性化作用が一因と考えられます。

また、副腎疲労症候群の治療に最優先すべき栄養素がビタミンCであることも、このビタミンCの分布から推測されます。

一般に、栄養素が高濃度に存在するところほど需要量が高く、栄養素を摂取した場合に、優先的に使用されます。

「美白のためには、どの位のビタミンCを摂ればいいのですか」というご質問をよく頂きますが、答えは「人によって大きく異なります」 となるわけです。

副腎や白血球での需要量が多い場合は、そちらでまず使われてしまうからです。

ビタミンCが足りているかを調べるためには、ビタミンC血中濃度を測定すると参考になります。

栄養療法を邪魔する要因

分子栄養学の多くの書籍には上記3つの事に関してはよく書かれています。

ストレス回避の仕方、ドーズレスポンス、個体差を考慮したサプリメント処方などです。

これらをちゃんと行えば、ある程度の病期なら回復してしまいます。

しかし、それだけではうまくいかない人もいます。4番目の邪魔する要因の影響が強い人たちです。

私の外来に来る人で、まったくサプリを摂っていない人は10人に1人もいません。

4番目の要素がひっかかっているために、病期が治らずに来る人が半分以上を占めます。

そういうわけで、私の仕事はだんだんと

「サプリメントの処方」から「疾患を起こしている根本原因をみつけること」

にシフトしてきました。

宮澤医院には、多くの人が副腎疲労の症状でやってきます。

疲れているのは、副腎疲労が原因だと思ってくる人が多いのですが、多くの場合副腎疲労は「原因」でなく「結果」です。

つまり、副腎疲労を起こしている「根本原因」が他にあります。

副腎だけを見ていては、副腎疲労は治らないのです。

足し算よりも引き算

言い換えれば、副腎疲労は全身疾患のバロメーターという事もできると思います。

体内に何か異常があれば、副腎にストレスがかかるのですから、副腎ホルモン値に影響します。

最近は、健康診断の項目として全国民が受けるべきではないかと思っています。

私が習った分子栄養学講座のテキストは、どちらかというと生化学の式が満載でした。

今見るとエッセンスの塊ですが、最初は理解するのに相当時間を要しました。

実践講座を始めた時は、私もそれをならって各ビタミンの構造式、特徴などの話をさせていただく事が多かったのですが、ニーズに合わせてどんどん進化していき、今では4つ目の要「邪魔する要因とその対処」についての話が7割です。

なぜなら、臨床応用しやすく、結果が出やすいからです。

結果が出て患者様に喜んでもらえれば、それが自信につながるし、多くの患者様を呼ぶことになり、それでもっと研修しようと意欲がわいてくるという、好循環が生まれやすいです。

だから、これから分子栄養学を勉強する方には特に、一通り足りない栄養素を見つける方法を身に付けたら、次は邪魔する要因とその対処について考えることをお勧めいたします。

「足りない栄養素を足すという方法でうまくいく患者さんは2~3割」です。

まずは腸からアプローチ

邪魔する要因とその対処ですが、具体的には、まず腸内環境改善をして、栄養素が消化吸収されやすい素地を作ることからはじめるとよいです。

悪玉菌やカンジタなどが増殖している場合は、単純に乳酸菌を摂るだけではうまくいかないことも多いです。

腸内環境検査を行い、炎症や免疫、消化酵素の調整なども同時に行っていきます。重金属の蓄積評価と対処法に関して、治療の初期に行うのは難しいです。炎症や感染が存在すれば、体内の解毒機構が低下するため、毛髪分析などに影響が出ます。また、腸内環境が整っていない時にデトックスを行うと非常に副作用が出やすいです。

「副腎疲労は、どのレベルになったら治療の専門家に相談するべきでしょうか?」

というご質問をよく頂きますが、上記3つの対処をしても難しいなら4番目の要素を疑い、ご相談いただいた方がよいと思います。

この領域は思いつきで治療すると、逆効果になることもあるので、早めにプロの治療家に任せる方がよいでしょう。

栄養療法 3つの治療方針と治療手段

宮澤賢史 · 2019年2月20日 ·

分子栄養学の治療を行う場合の考え方について説明します。

1.病態の中心概念をとらえる

臓器で、細胞で、全身で何が起きているのか?

まずは、問診と診察から患者さんの病態の中心を成しているものは何かを考えます。

その時のポイントは、「臓器中心」だけでなく、同時に「体全体」としても考える事、「細胞や分子レベル」で何が起きているかを考える事です。

一般的な医療は、病態を「臓器レベル」で把握しますが、
栄養療法を行うときは、根本の病態を「全身症状」「細胞・分子レベル」で把握します。

例えば、副腎疲労の患者さんの細胞では「ミトコンドリア」機能が低下していることが多いのですが、「疲れやすい」という症状が出ている人は、副腎疲労にかかわらず、「ミコトンドリア」機能が低下しています。

根本になる病名、病態を把握する

私の場合、分子栄養学的アプローチ別に疾患を3群に分けています。
「疲労系」「免疫系」「精神神経系」です。

「疲労系」はその名の通り、疲労を主訴とする疾患。
「免疫系」はリウマチやアトピーなど、通常ステロイドが治療に用いられる疾患。
「精神神経系」は、統合失調症、うつなど神経伝達物質が問題になる疾患です。

最初にすることは、患者さんの病態の主原因が3つのうちのどこにあるのかを見つけることです。

「免疫系」「精神神経系」の疾患は、ほとんどの場合すでに病名が決まっています。原因不明と言われている場合、私の経験では多くが疲労系の疾患です。

疲労系は細胞のミトコンドリア機能の障害であり、臓器を超えて様々な症状が起きてきます。

正確な診断のためには、臓器単位の考え方のみで疾患を絞り込むのは難しく、細胞機能や全身状態を同時に考える、「俯瞰的なものの見方」が必要です。

「疲労系」の疾患を疑ったら、ミトコンドリア機能を評価すると同時に、疲労を起こしうる疾患の鑑別診断をしていくことが重要になります。

病名と病態が違っている場合もあるので注意

また、病名がすでにはっきりしている場合でも、その病名が患者さんの病態をきちんと表しているか確認する必要があります。

例えば、免疫系の疾患でも、免疫細胞のミコトンドリア機能が落ちていることが主原因になっている場合もあります。

2. 治療方針を決める

中心概念が決まれば治療方針が決まります。

疲労系疾患はミトコンドリア機能を改善させる

副腎疲労症候群は、臓器レベルでは副腎の問題ですが、全身症状は「疲れやすい」、細胞の状態は「ミトコンドリア機能低下」です。

甲状腺機能低下症は、臓器レベルでは甲状腺の問題ですが、全身症状は「疲れやすい」、細胞の状態は「ミトコンドリア機能低下」です。

鉄欠乏性貧血は、臓器レベルでは、赤血球の問題ですが、全身症状は「疲れやすい」、細胞の状態は「ミトコンドリア機能低下」です。

病名 臓器レベル 全身症状 細胞の状態
副腎疲労症候群 副腎機能低下 疲れやすい ミトコンドリア機能低下
甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下 疲れやすい ミトコンドリア機能低下
鉄欠乏性貧血 赤血球数低下 疲れやすい ミトコンドリア機能低下

つまり、慢性疲労、副腎疲労、起立性調節障害、甲状腺機能低下、貧血は、臓器レベルで考えると一見別々の疾患ですが、全身症状は「疲労」で共通しており、細胞レベルでみると「ミトコンドリア機能低下症」とひとくくりにできます。

病態が「疲労」である疾患は「ミトコンドリア機能改善」が共通の治療方針なのです。

免疫系疾患は免疫の正常化を行う

同じように、治療にステロイドを用いる疾患にも同じ共通点があることに気づきます。

関節リウマチは、臓器レベルでは、関節の問題ですが、根本病態は「免疫異常」です。
アトピー性皮膚炎は、臓器レベルでは、関節の問題ですが、根本病態は「免疫異常」です。
掌蹠膿疱症は、臓器レベルでは、腸の問題ですが、根本病態は「免疫異常」です。

これらの疾患に共通する病態は「免疫異常」であり「免疫の正常化」が共通の治療方針です。

精神疾患は神経伝達物質のバランスを正常化する

同じように、うつ、統合失調症、発達障害、ADHDなどの共通病態は、「神経伝達物質代謝異常」であり、その調整が共通治療方針です。

「同じ疾患群には共通のアプローチ(治療方針)がある」のです。
そして、これらは栄養療法によって目的を達成することができます。

[box class=”box26″ title=”まとめ”]病態の中心概念をとらえ、治療方針を決める

(例) 中心概念は副腎疲労、治療方針は「副腎ケア」と「ミトコンドリア機能改善」[/box]

がんに対する治療方針

がんの原因は様々ですが、活性酸素や感染、慢性炎症以外にも、

1 アポトーシス不全(不完全な細胞を消去できないためにがん化する)
2 免疫低下
3 ストレス

などが挙げられます。

これに対しては、

1 ミトコンドリア機能改善
2 免疫の正常化
3 神経伝達物質のバランス正常化

が有効だと考えられます。

つまり、上記の3つの治療方針を全て組み合わせる必要があるのです。
栄養療法でもがんの治療は一番高度な技術が要求されます。

がん治療にもミトコンドリア機能は大きく関与します。
なぜなら、エネルギー産生と並んでミトコンドリアの大きな働きの一つが、「アポトーシス」の調整だからです。

3. 治療手段を決める

治療手段は診察や検査結果で決める

患者さんの疾患の概念をつかみ、治療方針が決まったら、次に治療方針を達成するための「治療手段」を決めます。
その際に、どの手段を用いるべきかは問診や検査結果をみて決めます。

例えば、ミトコンドリアについて考えてみましょう。
ミトコンドリアのエネルギー産生というのは、酵素反応によります。

だからミトコンドリア機能を高めるためには、酵素の代謝を高めたり、酵素反応の補酵素を補充したり、酵素反応の邪魔をする因子を取り除けばよいのです。

具体的には、ビタミンサプリをとることや、デトックス治療、また運動などもいいでしょう。

実際には、血液や毛髪、唾液検査などを用いて、酵素反応のボトルネックになっている個所を探し出して、そこを重点的にアプローチしていきます。

[box class=”box17″]

ミトコンドリア機能は様々な要因によって邪魔されます
ミトコンドリア機能低下の原因は検査をすることで明らかになります

  • ミトコンドリア内の酵素を動かす補酵素(ビタミン、ミネラル)が足りない
    (血液検査にて知る事が出来ます)
  • 腸内環境が悪くて酵素やミネラルの吸収が悪い
    (腸内環境検査にて知る事が出来ます)
  • 体内に入り込んだ重金属が酵素を邪魔しているのか?
    (毛髪ミネラル検査にて知る事が出来ます)[/box]

ですから、一言にミトコンドリア機能改善と言っても、それを正しく行うには、

  • 血液検査や毛髪検査の正しい読み方
  • 必要なサプリメントの選び方、投与の仕方
  • 細胞やミトコンドリアの構造と働き
  • 酵素反応を促進するビタミンと、邪魔する因子の種類

などの基礎的な知識が必要となります。

これは免疫系疾患でも同じです。
例えば「掌蹠膿疱症」をビオチンで治す人もいれば、口腔内ケアで治す人もいます。
治療のテクニックは違えど、目的は同じ「免疫の正常化」なのです。

ちょっと複雑ですが、ここを抑えておくと大まかな治療の流れがわかるようになります。

4. まとめ

分子栄養学治療の流れは、

1 病態を把握する
2 中心となる治療方針を決める
3 適切な診察と検査で使う治療手段を決める

となります。

このフレームワークを動かすためには、以下の知識が必要です。

①「病態から治療方針を決める方法」

②「治療方針を達成する方法」(ミトコンドリアの動かし方、免疫を正常化させる方法、神経伝達物質のバランスのとり方など)

③「診察の仕方、検査の読み方」

④「治療テクニック」(腸内環境改善法、自然なデトックス法、サプリメントの摂り方など)

ミトコンドリア機能向上と一言にいっても、やり方はざっと10通りもあります。

病院受診が必要なほど重症な人は、ミトコンドリアサプリを摂るだけでは改善しません。
酵素反応を高めるために単純に高たんぱく食にすることで改善する人は限られます。タンパク代謝全体を高めなくてはなりません。

5.これらがうまく機能しないときに考える事

Depressed woman

「血液検査をして足りないサプリメントを摂ったが治らない」
「複雑な尿検査や遺伝子検査をしたり、様々な治療法を試ししても、ゴールが見つからない」

という人は決して少なくありません。

なぜ、うまくいかないのか?
理由は大きく2つに分けられます。

(1)検査の解釈が間違っている

栄養療法における血液検査の解釈は一般の医療的な見方とはだいぶ異なります。
詳しくは血液検査の読み方講座でご紹介しています。

また、こちらの記事(検査をしているのに治療がうまくいっていない人のパターン)も参考にしてください。

(2)治療の「方針」と「手段」がごっちゃになっている

この2つを取り違えている人がすごく多いです。治療家も患者さんもです。

貴方の副腎疲労に対する「治療方針」はなんですか?ちょっと考えてみてください。

もちろん、副腎が疲れているので、副腎を癒すためのビタミンCやハーブも重要なのですが、それだけでは副腎疲労は十分回復しません。

なぜなら、副腎疲労を起こすまでには全身の細胞がかなり疲労しているからです。

副腎の役割はストレスに対応する事ですから、ちょっとやそっとのストレスで根を上げることはありません。

副腎疲労を起こすまでには、通常数年間にわたるストレス期間があります。
その間に、全身の細胞が疲労し、エネルギーを作る能力がすっかり落ちてしまうのです。

細胞の中でエネルギー産生を担っているのは「ミトコンドリア」です。
つまり「副腎疲労」では、細胞のミトコンドリア機能が低下しています。
だから、私の「副腎疲労」の治療戦略は、「副腎のケア」と「ミトコンドリア機能の改善」なのです。

方針と手段の違いを明確に意識する

「そんなの当り前じゃないか」というご意見もあると思いますが、実際には、この目的を明確に意識するかしないかで、治療効果は大きく違います。
意識をしていないと「方針」と「手段」を取り違えてしまうことがあるからです。

「血液検査で足りない栄養素みつけ、それを補充する」という治療をしている人があとを絶たない理由は、治療の方針と手段を取り違えているからです。

血液検査の結果が良くなることが、「治療方針」だと勘違いしているのです。

設定が間違っているので、数値に一喜一憂したり、治療効果が頭打ちになったり、サプリメントを減らしたら症状が逆戻りしたりするなど、すぐ限界が来ます。

「サプリメントをとること」は手段であって、方針ではありません。

血液検査は、方針を指し示してくれる道しるべであり、方針そのものではありません。

「フレームワーク」という考え方

「治療方針を決め、それを達成するために必要な手段を探るために、道しるべを用意する」というこのような考え方の枠組みを「フレームワーク」といいます。

実際、私はこのフレームワークを意識して、治療計画書に取り入れるようにしてから、一層の治療効果をあげられるようになりました。

治療目的がぶれないので、必要最低限の検査、治療のみで済むことにも役立っています。

6.フレームワーク作りの実際

フレームワークとは、治療の考え方の基本になる枠組みの事です。

・同じ疾患群(病態)には共通の治療アプローチがある
・それぞれの治療アプローチには、複数のテクニックの組み合わせが必要である
・それぞれのテクニックは、基礎知識の上に成り立っている

という考え方を図にしています。

左から順番に疾患群、治療アプローチ、テクニック、基礎知識です。
左は具体的な病名、治療の話、右は抽象的な概念の話です。

細胞の機能を高めるためには、状況に応じて様々な治療アプローチや、治療手段(テクニック)を必要とします。

使い方は以下の通りです。

① 患者さんの病気の系列を決める
→すると、基本治療方針(アプローチ)が大体きまります。

② 基本アプローチを行うのに必要なテクニックを決める
→問診、診察、検査結果から必要なテクニックを決めます。

③ 治療テクニックを使う順番を決める
→通常は体への侵襲が少ないものから順番に行っていきます。

7.病態の本質は、人間を構成している細胞の機能にある

ですからこの図では、細胞という観点から病態を
「疲労系」「免疫系」「精神系」の3つにわけています。
一人の人が複数の病態を持っている場合もあります。

病態が把握できれば、基本の治療方針がおのずと決まってきます。
なぜなら、細胞レベルで考えると、同じ系列に属する疾患は同じ細胞の部位の働きが低下しているからです。(例えば、疲労系疾患はミトコンドリアの働きが低下しています。)

同じ系には共通の病態があり、それに対する共通の治療アプローチが存在します。

例えば、「疲労系」には、慢性疲労症候群,副腎疲労,甲状腺機能低下症などが含まれますが、これらに対しては、ミトコンドリア機能改善が共通アプローチです。

もちろん、それが治療の全てではありません。
それぞれの病態に応じて個別にやるべきことはあります(例えば慢性疲労症候群なら感染に対する対策)が、いずれにしても、疲労系に対してはミトコンドリアアプローチが必須なのです。

疾患群と治療アプローチは常にセットです。

[box class=”box26″ title=”解説”]

高血圧症や糖尿病などが入っていませんが、これらも厳密に言えば細胞機能低下であり、「疲労系」、「免疫系」に組み入れられます。

ただし、これらの疾患は薬剤での調整が比較的容易であり、生活の質も保たれるので、積極的な栄養療法を受ける患者さんはそれほど多くないようです。

ここでは、標準的な医療での調節がうまくいきにくかったり、薬剤の副作用が強かったり、生活の質が低下しやすいものを中心に構成しています。

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