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臨床分子栄養医学研究会

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宮澤賢史

ビタミンとミネラルの違い

宮澤賢史 · 2019年2月20日 ·

Healthy ripe fruits and vegetables containing vitamin C, natural minerals and dietary fiber, healthy lifestyle and nutrition concept

ビタミンとミネラルは全く違う

ビタミンとミネラルはどちらも「体内で代謝を高める補酵素として働く」「現代の食生活で不足しがち」という共通した特徴を持っています。

だから、手軽に摂れる栄養補給としてマルチビタミン・ミネラルというサプリメントが重宝されています。

栄養療法の大きな役割の一つは、細胞内に酵素反応を助ける補酵素を十分供給し、体内の代謝を回してあげることです。
通常ビタミン・ミネラルは単独ではなく、お互いに助け合って働くため、マルチビタミン・ミネラルサプリメントは非常に理にかなっています。

しかし、世の中にはこのサプリがうまく効かない人が大勢います。そのような人たちには、検査に基づく栄養療法が必要です。

なぜなら、ビタミンとミネラルは似ているようで全く違う性質を持っており、ビタミンとミネラルの受け取り方が人によって全く異なるからなのです。

栄養療法を行うためには、ベースサプリメントとしてマルチビタミン・ミネラルを摂る以外に、その人に会った栄養処方が必要です。

ビタミン

「ビタミン」とは何でしょうか?

ビタミンとは「体内では作れないので、必ずとらなくてはいけない栄養」のことです。

ヒトは体内でビタミンCを作れません。だから、ヒトにとってビタミンCはビタミンです。

ネズミは体内でビタミンCを作れます。だから、ネズミにとってはビタミンCはビタミンではありません。

では、ビタミンCは体内でどのような働きをしているでしょうか?

ビタミンCが足らなくなるとどのような事が起きるでしょうか?

ビタミンの標準摂取量

ビタミンCは体内で様々な働きをしています。ビタミンCが欠乏すると起きるのが「壊血病」です。

うつ状態になり、歯茎をはじめとしたいろいろなところから出血します。

ビタミンCは新鮮な食物にしか含まれません。
大航海時代、塩漬けの肉のみを積んだ船員がこの壊血病のために、数万人亡くなったのは有名な話です。

ビタミンCはコラーゲンをつくるのに欠かせない物質です。
壊血病は、ビタミンC不足のために、血管をつくるコラーゲンが作れなくなってしまう病気なんですね。

それで、血管が弱くなるために、全身から出血するわけです。

この壊血病を予防するために、最低限摂らなくてはいけないビタミンCの量の事を、
「標準摂取量」とか「所要量」などといいます。

厚生労働省が基準を出している、「第6次改定日本人の栄養所要量」によると、
ビタミンCの所要量は1日100mgとなっています。

つまり壊血病を防ぐためには、ビタミンCを毎日100mgとりましょう、ということです。

ビタミンの最適量

ところで、ビタミンCの働きはコラーゲンをつくることだけではありません。
ビタミンCにはざっと考えても以下の様な働きがあります。

・風邪などの感染症を予防する
・ノルアドレナリンを合成する
・カルニチンを合成する
・胆汁酸を合成する
・異物を代謝する
・インターフェロンの合成
・鉄代謝に関与する
・ヒスタミン遊離を抑制
・がんの予防
・メラニン産生の抑制(「美白効果」のことです)

これらの効果を得るために必要なビタミンCの量は様々です。

例えば、

壊血病を予防する量は1日100mgですが、風邪を予防するためには1日1,000mgを3回飲まなくてはならないという報告がありますし、がんを治療するには1日100,000mgのビタミンCを点滴しなくてはなりません。

ビタミンの必要量には個人差がある

ビタミンの必要量はヒトによって異なります。

タバコを吸う人、糖尿病の人は血中のビタミンC濃度が低いことがわかっています。
このような人は他の人にくらべて、余計にビタミンCを摂る必要があります。

このような個人差は、酵素と基質の親和性で説明できます。
体内の化学反応は基質と酵素が結合して起きますが、両者の結合を助けるのが補酵素です。

問題は酵素の形が人によって多少なりとも異なることです。
酵素はタンパク質の一種であり、設計図であるDNAを元に作られます。

ヒトのDNAは99.9%同じですが、0.1%の違いが個性を生みます。
酵素の形が悪いと基質との結合が弱く、余計に補酵素を必要とします。

「酵素の個人差によって必要な補酵素の量が異なること」

これを個体差といっています。

ビタミンは使う目的と個人差によって必要量が異なる

ミネラル

ビタミンの性質が「個体差」と「ドーズレスポンス(目的によって必要量が異なること)」だとすると、ミネラルの性質は「生体利用性」と「バランス」になります。

まずは吸収を考える

ミネラルは、生体利用性を高める工夫をしないと有効に使われません。

また、ミネラルはバランスが大切で、特定のミネラルだけが多いとほかのミネラルの働きを抑えてしまうことがあります。

特にミネラルをうまく使うのに必要とされるのは腸内環境です。
ミネラルはビタミンと違って、非常に難吸収性であるため、胃腸の不良がミネラルバランスを簡単に崩します。

ミネラルをうまく使うためにはまず腸内環境改善から始める必要があります。

ミネラルはバランスが大切

もう一つ重要なのは、ミネラルバランスです。

ナトリウムとカリウム、カルシウムとマグネシウム、亜鉛と銅はそれぞれ体内で反発しあう性質を持っています。

カリウムをたくさん取れば、ナトリウム(塩分)が体から抜けていき、血圧が下がるのが良い例です。
これらのミネラルは両者のバランスをうまく保つことが大切で、片方が多すぎるとあまり良いことがありません。

そういう意味で、マルチミネラルサプリメントは重宝します。

ビタミンAの栄養所要量について

宮澤賢史 · 2019年2月20日 ·

栄養所要量には上限がある

分子栄養医学を実践するときに、必ず絡んでくるのが栄養所要量の問題です。厚生労働省の「第6次改定日本人の栄養所要量」をみると、主な栄養素について、欠乏症を防ぐ必要量(所要量)とともに、過剰摂取による健康障害を防ぐ上限値(許容上限摂取量)の設定がされています。

この第6次・・は平成12年に改定されたものですが、当時のサプリメントブームを反映して、過剰症が万が一にもないように、特に上限値が細かく設定されました。ですから、多くのサプリメントに入っている栄養素は、この過剰症を超えないような量の設定になっています。

分子栄養学では、栄養素を栄養としてではなく、薬理学的効果を得るために投与しますので、当然、処方量は最低所要量を大きく超えてきます。しかし、ここに大きな壁の一つがあります。理論的背景と実績を患者さんに示すことが出来なければ、治療への同意が得られにくいからです。

ビタミンAの場合

ビタミンAの所要量は12歳以上で、1日当たり下記になります。ビタミンAの過剰摂取による副作用として、胎児奇形をはじめとして、頭痛、脳圧亢進、吐き気、嘔吐、皮膚の乾燥、筋肉痛、食欲不振、皮膚色素沈着などが言われています。

ビタミンAの所要量
男性 2000 IU(国際単位)
女性 1800 IU (妊婦は+200 IU、授乳婦は+1000 IU)
許容上限摂取量は5000IU

やきとりのレバーは1本で16,000 IU、うな重は1人前3,000 IUのビタミンAを含んでいます。実は、ビタミンAは、やきとりのレバーを食べることで、1日の許容上限摂取量を簡単に超えてしまうのですが、レバーを食べて奇形になったという話は聞いたことがありません。

私は妊婦さんを含む100人以上にビタミンAを少なくとも1日当たり、30,000 IU~120,000 IUを処方したり、監修したりしてきましたが、重篤な副作用の話は聞いたことがありません。しかし、それでも一般的には、妊婦への大量投与に関しては、贅否両論があり結論は得られてはいません。

ビタミンAにはいくつかの働きがありますが、一番大切なのは「細胞分裂の正常化」です。ビタミンAの一形態であるレチノイン酸は核内の受容体に結合し、特定の遺伝子の発現を制御します。レチノイン酸受容体はステロイドホルモンなどと同じく、細胞の核に存在します。

Naturevolume 330, pages444–450 (1987)

ビタミンAは直接、細胞の核に働きかけ、細胞分裂に関わります。
そういう意味でビタミンAはステロイドと同様に非常に薬理的作用が強いビタミンです。つまり、「ビタミンAが不足すると、細胞分裂がうまくいかない」ということです。

よって、細胞分裂が盛んな胎児を抱えている妊婦には必須とされているし、細胞分裂異常が原因となっているがんに対しての効能が期待されているし(白血病の治療にはすでに応用されている)、細胞分裂が盛んな皮膚や口腔粘膜の正常化に必要なわけです。だから、ビタミンA、冬時の肌の乾燥防止には本当に効きます。

天然と人工ビタミンAは全く違う

ビタミンAサプリメントこのように非常に使えますが、ひとつだけ注意が必要です。天然のサプリメントと人工的なサプリメントやビタミンA製剤は全く別物です。人工のビタミンAは最初から活性型です。摂取したそばから効果を発現しますので、効き過ぎる事があります。

一方で、天然ビタミンAは体内に入ってから、必要に応じて活性化されますのでそのようなことはありません。うなぎと同じです。

統合失調症に対するナイアシンの効果

宮澤賢史 · 2019年2月20日 ·

ナイアシン(ビタミンB3)をご存知ですか。ビタミンB群には、B1,2,3,5,6,12などがあります。これ、間の数字がいっぱい抜けています。なぜかというと、生体内で作ることが出来ない栄養素をビタミンと言っているのですが、本当は体内で作られていることが後から分かったり、他のビタミンと実は同じだったりして、欠番になっているものがあるんですね。

ナイアシンも元々はビタミンB3だったのです。しかし、体内でごく少量ですが作られていることがわかり、それで最近ではビタミンでなく、ナイアシンと呼ばれることが多いようです。

1. エイブラハム・ホッファーのアドレノクロム仮説

厚労省による、大人のナイアシンの1日あたりの許容上限摂取は30mgです。しかし、実際に精神疾患にナイアシンを使う場合、その100倍にあたる1日3000mgを使用する事は少なくありません。そこで、ナイアシンを高用量使用し、6000人の統合失調症患者を社会復帰させたエイブラハム・ホッファー医師の研究についてご紹介します。

現在、精神疾患の診断方法は精神疾患の診断マニュアルによります。診断マニュアルとは、DSM-IV(アメリカ精神医学会が発行する精神疾患の診断・統計マニュアル)や第4番ICD-10(WHOの疾病及び関連保健問題の国際統計分類)などのことです。

これらの中には例えば、気分変調症(うつ病)のチェックリストがあり、

  ・抑うつ気分が存在する
  ・食欲減退
  ・不眠
 ・気力の低下
  ・集中力の低下

などの項目が並んでいます。そのうち、いくつか以上当てはまれば、うつ病と診断できるわけです。つまり、エピソード、問診、症状から診断するのですが、この診断方法のいいところは、情報工学的、統計的な分類手法を使っているので、経験の浅い医師でも、経験豊富な医師と同様な診断ができることです。

この場合、病気の原因について追及しなくても診断が可能で、すぐに治療を始めることができます。しかし、残念ながらこの方法論には大きな欠点もあります。疾患に隠された原因を見極めていないので、その場限りの対症療法になりがちですし、場合によっては薬が効かないこともあります。

  • ドーパミン仮説
  • アドレノクロム仮説
  • グルタミン酸仮説
  • 遺伝的要因

精神疾患の発病メカニズムについてこのように、諸説ありますが、分子栄養学の創始者エイブラハム・ホッファーはアドレノクロム仮説で有名です。

ホッファーは農生化学者から精神科医になったという経歴を持っています。彼は統合失調症の研究でメスカリンに注目しました。メスカリンは麻薬の一種です。メキシコのウイチョル族が宗教儀式の際用いていたものです。なぜならば、統合失調症の症状とメスカリン中毒の症状は似ているのです。

どちらも、感覚障害、運動障害、思考障害、幻覚、離人症、気分障害といった症状が出ます。彼がそれに気がついたのは変色した喘息の薬(アドレナリン)が、同様の心理的経験を起こしたという報告からです。「腐ったアドレナリンが怪しい → アドレナリンは体内でも作られる」と思ったわけです。

ホッファーはその後も研究を続け、統制研究(1952-1954年)にて、幻覚と妄想30人の統合失調症患者に対して、1日あたり3000mgのナイアシンを投与し、2年後90%以上が改善しました。ナイアシンにアドレナリンの劣化を抑える要素を見出したわけです。

その後、ホッファーは精神疾患をもつがん患者を多く診ていくことになりますが、その過程で、栄養療法で精神疾患を治療すると、がんもよくなることに気がつきました。

もちろん、ホッファー先生はビタミンB3だけをつかって治療をしていたのではありません。ほかにも食事内容などが精神疾患の治療には深く関連しています。このことについては、ホッファー先生の著書「統合失調症を治す―栄養療法による驚異的回復!」に詳細があるので、興味がある方は見てみてください。

2. ナイアシンはメチレーションを亢進させる

ウイリアム・ウォルシュ博士は統合失調症患者を5つのタイプに分け、低メチレーションタイプの患者にはSAMe、高メチレーションタイプの患者にはナイアシンを推奨しています。

高メチレーションタイプの統合失調症患者では、脳のシナプスにおいてドーパミン再取り込みタンパクの合成が阻害されるために、シナプス間隙のドーパミンが増加しています。

つまり、高メチの人はドーパミン過剰型の精神疾患を起こしやすい。このような人にはドーパミンを増やすSAMeやSSRIではなく、ドーパミンを減らすナイアシンや葉酸サプリを使うべきです。

ナイアシンや葉酸はディアセチラーぜ活性を低下させるため、シナプスのアセチル化が亢進する結果、ドーパミン取り込みタンパクの合成が亢進し、ドーパミンを減らす事ができます。

分子栄養学は疾患の根本原因を理解し、そこに対して自然で体に優しい治療を施していくというものです。このように細胞の働きや分子構造、酵素の働きなどの注目して治療をするので、全身的な効果があります。

サプリの量と反応の関係

宮澤賢史 · 2019年2月20日 ·

栄養療法やサプリメントを推奨する会でよく聞く話なんですけれど、

・ 現代は食生活が変化して必要な栄養素を摂れなくなっている。
・ 付き合いで飲みすぎることも多いし、不摂生している。
・ 現代では農薬の使いすぎで、畑がやせて野菜に含まれるビタミンの量が減っている

ですからサプリメントで必要な栄養素を補いましょうというものです。このような、不摂生を補ってくれる商品としてのサプリメントも否定はしません。しかし、それなら食事をきちんと摂ったほうがよいでしょう。サプリメントを摂る本当の意味は効率化です。栄養素が濃縮して入っており食事では取りきれない医学的な量の栄養を摂ることができます。

例えば、豚肉にはビタミンBが多く含まれていると言われていて、ブタヒレ肉100gには1.34mgのビタミンB1が含まれています。確かに、これは1日の厚労省の推奨量1mgよりは多いです。しかし、栄養療法で神経の再生のために使うビタミンB1は1日150mgです。

これは、ブタ肉11.2kgに相当します。これを1日で食べるのはいかに大食いの人でも無理ですよね。同様に、風邪の予防に必要な3000mgのビタミンCはレモン150個分です。

栄養素は単に欠乏症を補うだけでなく、量を多くとることで様々な医学効果が期待できます。しかし、その量を確保するためには栄養素を濃縮して摂ることが不可欠なのです。

コンテンツ [非表示]

  • 副作用をモニターしながら進める
  • 歩行とふらつき、意識障害をもつ45歳男性
  • 今も存在するビタミン欠乏症
  • 量と反応の関係(ドーズ・レスポンス)
  • ビタミンCの至適量は状況や目的によって変わる
  • ビタミンCサプリメントは頻回摂取が有効
  • ビタミンCを自分で作れる動物
  • ビタミンDの血中濃度と効果

副作用をモニターしながら進める

ところで、「第6次改定日本人の栄養所要量について」をご覧頂くと分かりますが、多くの栄養素に関して、厚労省は上限を設けています。サプリメントの副作用を懸念しての事です。

サプリメントは高容量を摂ると、副作用が生じる可能性があります。(もちろん、薬よりも圧倒的に少ないですが)ビタミンCを高用量とれば、胃への刺激が出る場合もあるし、下痢をする事もあります。

だから、初めに検査をして栄養素の過不足を判断する事が必要になってきます。もちろん、治療開始後も時々検査をして、栄養が十分かどうか評価を行います。栄養療法では、モニターをしながら、医学的効果が得られる量のサプリメントを使用します。

歩行とふらつき、意識障害をもつ45歳男性

5日前から独り言が多くなり、会話が成り立たなくなった。また歩行がふらつくため、自宅内を這って移動していた。本日からほぼ寝たきり。既往歴なし。喫煙歴20本x25年。飲酒ビール2.5リットル毎日。食事は不規則。バイタルサインほぼ安定。 診断と治療はなんでしょうか?

5日前からおかしくなって、すぐに寝たきり。普通は脳卒中などを考えますよね。でも、特記すべきは1日ビール2.5リットル、食事は不規則でおつまみ程度というところです。検査結果は、肝機能はお酒のせいで悪いですが、特に生命に関わるようなところはありません。

今も存在するビタミン欠乏症

この方の脳のMRIを撮ったら、まんなかのところに少し炎症が見られました。これは、ウェルニッケ脳症という極端なビタミンB1不足を原因とする中枢性障害です。眼球運動麻痺、歩行失調、意識消失をきたします。

脚気、ウェルニッケ脳症、壊血病は昔の病気ではありません。現在でもあるんです。現代の脚気は、こういったアルコール中毒か、子供の清涼飲料水の飲みすぎなどが主な原因です。 脚気心といって、動悸が激しくなって運ばれ、救急外来で肺高血圧症と診断されるも、最終的に脚気による心不全だということがわかる、ということはよくあります。清涼飲料水は異常に糖質が多いので、それによってビタミンB1が消耗してしまうんです。拮抗栄養素の過剰な摂取によって、対立する栄養素が失われてしまうというのがポイントです。

脚気はビタミンB1の欠乏症です。厚労省の勧めるビタミンB1の推奨量は1日1.1mgですが、いったんこうなったら、数百mgのビタミンBが必要です。これは食事はもちろん、サプリでも不十分なので、点滴でビタミンB1を大量に入れます。

量と反応の関係(ドーズ・レスポンス)

ビタミンBが枯渇する脚気や、他にもビタミンC欠乏の壊血病などは、大量に栄養を補給する必要があるのは理解できたけど、じゃあ重症の欠乏症じゃなければ、ビタミン大量補給の必要もないでしょ。と思う方もいらっしゃるかもしれません。

ここからは、欠乏症以外にビタミンを大量に使う意味を説明します。例えば、ビタミンCを25g点滴すると、血中濃度が経口で摂取する場合の70倍になります。レモン1250個分です。

これは僕がビタミンC点滴を習ったリオルダン・クリニックの、リオルダン先生が2000年に発表したビタミンCの血中濃度が400mg/dを超えるとがん細胞が死ぬ、という論文です。2005年にWHOが追加実験を行うと、本当にがん細胞がなくなったので、そこから一気に広まりました。

これはビタミンCを経口摂取した場合と点滴した場合の、血中濃度のグラフです。400mg/dというのは結構な濃度で、経口摂取では絶対にたどりつけない濃度なんです。点滴でしかこの濃度に達することはできません。抗がん作用を期待するなら、点滴しなければなりません。例えば、これがビタミンの欠乏症でない人に大量にビタミンを使う例です。

ビタミンCの至適量は状況や目的によって変わる

ビタミンCの最適な量は、状況や目的によって変わります。怪我を治りやすくする、コラーゲンを作る(100mgで大丈夫)、壊血病を予防する、風邪の予防ではグラム単位で必要です。副腎疲労は風邪と同じように、数十g摂るといいです。ビタミンCを点滴すると、てきめんにいいです。

ビタミンCサプリメントは頻回摂取が有効

サプリメントを摂るなら、1gずつ1時間ごとの頻回摂取が有効です。ビタミンCは一度に大量に摂ると、吸収が落ちます。60mgだと100%、100mgだと90%、1000㎎だと75%、2000㎎だと44%と、どんどん減っていきます。ですから、1000mgが最もコスパが良いですね。

30分で血中濃度は上がりますが、4時間で下がります。4時間おきだと血中濃度が上がったり下がったり、血中濃度が安定しません。ですから、1時間おきに、血中濃度が下がっていないうちに次々入れていくと、どんどん上がっていきます。ビタミンCの効果は血中濃度に比例しますから、ビタミンCを1時間おきに摂るだけで、効果が3倍近くなります。

ビタミンCを自分で作れる動物

ビタミンCを自分で作れるものもいます。左側が作れないグループ、右側が自分で作れるグループです。犬と猫も作れますが200mg程度だそうです。自分で作れるとはいえ、少ないですね。動物病院ではビタミンC点滴はよくやることです。ストレスが多くて全然足りないからです。

野生のヤギは14mg/日ですが、病気になると100mg/日です。需要に応じて産生量が増すのです。自分で作れない動物は、状況に応じて摂取量を増やした方がいいのではないか、という話です。

ビタミンDの血中濃度と効果

同様に、ビタミンDにもドーズレスポンスがあります。ビタミンDの血中濃度が20ng/mlと低くても、くる病は予防できます。様々ながん、糖尿病、多発性骨髄腫などはだいたい40~60ng/mlで予防できます。ほとんどの疾患ではこの濃度にしておくと、いいことがおきるということです。

日本人の平均ビタミンD血中濃度は20程度と言われています。日焼けしていて、すごくビタミンDがありそうに見えても血中濃度が低い人もいます。逆の人もいます。ビタミンDの体内合成力によります。低い人は、サプリメントを摂ると、確実に上がっていきます。血中濃度を上げるためには、できれば1日2000IU以上摂ると良いでしょう。

しかし、ビタミンDはビタミンAと同じく脂溶性ビタミンなので、1日5000IU以上摂取する場合は血中濃度を測定しながらやることが重要です。ビタミンDサプリメントを毎日摂っていて腎不全を起こしたという症例報告があります。

鉄サプリのうまい使い方

宮澤賢史 · 2019年2月20日 ·

鉄と言えば、鉄欠乏性貧血です。日本人若年女性には貧血が多く、特に有月経女性、妊娠中女性、成長期の女性、乳児期では鉄不足が多く見られます。血中フェリチンは潜在性鉄欠乏を見つけるための検査として多くの方に知られるようになりましたが、その一方で炎症マーカーでもあり、検査の見方には注意が必要です。

また、鉄サプリメントは体に悪影響をきたす場合もあり、単純にフェリチンが低いからと言って大量に摂るのは危険です。ここでは、鉄の利点、欠点を知ってうまく使う方法についてご紹介します。

1.フェリチンは鉄欠乏と炎症の指標

血中フェリチンを測定すれば潜在性鉄欠乏貧血を見つける事が出来ます。フェリチンが一桁では多くの人が貧血症状(特に神経症状)を訴えます。

鉄欠乏の基準
ヘモグロビン > 12.0 g/dl  かつ フェリチン値 > 12 ng/mL
これを満たしていない場合、鉄欠乏の可能性があります。
(実際にはフェリチン値20でも欠乏症状が出ることがあります)

検査会社によってフェリチンの基準値はまちまちで、これは基準値を設定するための母集団に潜在性鉄欠乏が紛れ込んでいる可能性があります。フェリチンの基準値は参考程度に考えておいたほうが良いでしょう。また、体内に炎症があると炎症部位からフェリチンが血中に逸脱するため、血中フェリチンは上昇します。そのような場合に鉄サプリメントは無効であり、むしろ禁忌です。

2.鉄は少なすぎても多すぎてもよくない

鉄は赤血球内のヘモグロビンを構成し、酸素の運搬に関わっています。鉄欠乏は酸素欠乏を意味します。また、鉄はミトコンドリアの電子伝達系の要素でもあります。つまり、鉄欠乏貧血=酸素運搬能力低下+ミトコンドリア障害であり、慢性疲労、うつをはじめとして様々な症状を呈することになります。

その一方で、鉄は活性酸素の発生源であることも重要です。鉄はフェリチン、トランスフェリンなどタンパクと結合することによって、毒性が制御されています。つまり、鉄は多すぎても少なすぎてもよくないのです。血中フェリチンの低下に対して大量のヘム鉄サプリメントを摂取することはおすすめしません。

3.鉄欠乏性貧血にも2種類ある

ミトコンドリアを保護しつつ、活性酸素の害を避けたい場合はどうしたらいいのか?答えは、鉄欠乏性貧血の種類を見極めることです。鉄欠乏には、「体内の鉄が足りない場合」と「体内の鉄代謝が止まっている場合(代謝に使える鉄が欠乏しているという意味)」があります。鉄サプリを補給する意義があるのは、前者の方のみです。

4.鉄を調整するたんぱく質ヘプシジン

鉄の代謝を調整しているのはヘプシジンというタンパク質です。風邪をひいているとき、リウマチを患っている場合などは体内に炎症性物質が溢れています。このような時に、血中に大量の鉄があると活性酸素をさらに発生させてしまう要因となります。それを防止するために、炎症があると肝臓からヘプシジンが放出され、鉄代謝を止めます。

ヘプシジンは体内の鉄を網内系(リンパ節や脾臓など)を閉じ込め、血中に出られないようにします。腸からの鉄の吸収を止めます。炎症があり、ヘプシジンが分泌されている場合に鉄サプリを補給する意味合いは殆どありません。

5.鉄の摂取量を増やすのではなく、吸収を考えよう

一般的に1日に食事から摂取できる鉄は10mgで、そのうち吸収されるのは1mgです。しかし鉄欠乏が顕著な場合、鉄の取り込みたんぱくが多く合成されるため鉄の吸収は数倍に上昇します。食事から鉄が全く摂れない場合でも、理論上は5mgの鉄サプリメントが2錠もあれば十分鉄欠乏は改善していきます。

改善が悪い場合は、鉄の摂取量が足りないのではなく鉄の吸収を第一に考えるべきです。鉄は場合によっては危険なものですから、少ない鉄をいかに効率よく使うかがカギなのです。

6.鉄の吸収をよくする方法

鉄は酸性化(PHを下げる)したり、還元したり、錯体を作ると溶けやすくなり吸収が良くなります。

6-1.イオン化する

鉄元素はイオン化されてはじめて細胞膜のイオンチャンネルを通過できるようになります。鉄は通常Fe3+(酸化型)をとっています。還元してFe2+(還元型)にすると、鉄がイオン化しやすくなります。もしくは、pHを下げると、鉄がイオン化しやすくなります。還元するためにはビタミンCなどの抗酸化剤、pHを下げるためには胃酸が重要です。

6-2.キレート化する

キレートアイアン、もしくは天然のキレート鉄であるヘム鉄を使用することで、吸収率は格段によくなります。ヘム鉄にさらにビタミンCを加えることで吸収が良くなるようです。

6-3.炎症を抑える

炎症下では、ヘプシジンにより鉄吸収が抑制されます。そのような時は、鉄サプリを中止し、抗炎症治療を行いましょう。腸や上咽頭炎、脂肪肝などは特に見逃されやすい炎症です。

6-4.カンジタを治療する

鉄の投与がカンジタ増殖を引き起こす可能性があります。カンジタなどの真菌類は、ヒトと同じ真核生物であり、類似点が多く指摘されています。鉄はヒト細胞の代謝や、ミトコンドリア機能の維持に重要な働きを担っていますが、同様に真菌細胞においても不可欠な存在です。

真菌は、免疫低下時(抗がん剤治療時など)に、消化管から血管に移動して増殖する事が知られています。真菌の生育において、消化管内の遊離鉄濃度は充分なのに対して、血中の遊離鉄濃度は、フェリチン、トランスフェリンなどのタンパクに捕捉されるため非常に低くなっています。

そのため、真菌は血中の赤血球、トランスフェリンやフェリチンから鉄を奪取するという取込機構を持っています。

参考:カンジタと鉄代謝

鉄サプリメントの摂取がカンジタ感染の危険を増大するという報告もあります。遊離鉄に結合する働きのあるラクトフェリンをうまく使うのがよいようです。

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