• Skip to primary navigation
  • Skip to main content

臨床分子栄養医学研究会

あなたのサプリが効かない理由教えます

  • コース一覧
  • もう一本読む?
    • 分子栄養学基礎マスターコース 食事とサプリメント編
    • 分子栄養学の基礎 検査と根本原因
    • 分子栄養学アドバンス・コース
    • まごめじゅんの栄養講座
  • サクセスパス
    • 治療方針を決める
    • 必要な治療と順番を決める
    • 検査を行って確認する
    • 治療の実際
  • ごあいさつ
  • 受講者の声
    • 医療関係者
    • 一般の方
  • クリニック紹介
    • 分子栄養学の検査・治療を受けられるクリニック
    • 指導認定医・認定医一覧
    • 認定指導カウンセラー
    • 認定カウンセラー
    • PNTトレーナー
  • 会員サイト
    • 総合案内
    • 研究会会員サイト
    • 第25期会員サイト
  • Show Search
Hide Search
現在の場所:ホーム / アーカイブ宮澤賢史

宮澤賢史

栄養療法 3つの治療方針と治療手段

宮澤賢史 · 2019年2月20日 ·

分子栄養学の治療を行う場合の考え方について説明します。

1.病態の中心概念をとらえる

臓器で、細胞で、全身で何が起きているのか?

まずは、問診と診察から患者さんの病態の中心を成しているものは何かを考えます。

その時のポイントは、「臓器中心」だけでなく、同時に「体全体」としても考える事、「細胞や分子レベル」で何が起きているかを考える事です。

一般的な医療は、病態を「臓器レベル」で把握しますが、
栄養療法を行うときは、根本の病態を「全身症状」「細胞・分子レベル」で把握します。

例えば、副腎疲労の患者さんの細胞では「ミトコンドリア」機能が低下していることが多いのですが、「疲れやすい」という症状が出ている人は、副腎疲労にかかわらず、「ミコトンドリア」機能が低下しています。

根本になる病名、病態を把握する

私の場合、分子栄養学的アプローチ別に疾患を3群に分けています。
「疲労系」「免疫系」「精神神経系」です。

「疲労系」はその名の通り、疲労を主訴とする疾患。
「免疫系」はリウマチやアトピーなど、通常ステロイドが治療に用いられる疾患。
「精神神経系」は、統合失調症、うつなど神経伝達物質が問題になる疾患です。

最初にすることは、患者さんの病態の主原因が3つのうちのどこにあるのかを見つけることです。

「免疫系」「精神神経系」の疾患は、ほとんどの場合すでに病名が決まっています。原因不明と言われている場合、私の経験では多くが疲労系の疾患です。

疲労系は細胞のミトコンドリア機能の障害であり、臓器を超えて様々な症状が起きてきます。

正確な診断のためには、臓器単位の考え方のみで疾患を絞り込むのは難しく、細胞機能や全身状態を同時に考える、「俯瞰的なものの見方」が必要です。

「疲労系」の疾患を疑ったら、ミトコンドリア機能を評価すると同時に、疲労を起こしうる疾患の鑑別診断をしていくことが重要になります。

病名と病態が違っている場合もあるので注意

また、病名がすでにはっきりしている場合でも、その病名が患者さんの病態をきちんと表しているか確認する必要があります。

例えば、免疫系の疾患でも、免疫細胞のミコトンドリア機能が落ちていることが主原因になっている場合もあります。

2. 治療方針を決める

中心概念が決まれば治療方針が決まります。

疲労系疾患はミトコンドリア機能を改善させる

副腎疲労症候群は、臓器レベルでは副腎の問題ですが、全身症状は「疲れやすい」、細胞の状態は「ミトコンドリア機能低下」です。

甲状腺機能低下症は、臓器レベルでは甲状腺の問題ですが、全身症状は「疲れやすい」、細胞の状態は「ミトコンドリア機能低下」です。

鉄欠乏性貧血は、臓器レベルでは、赤血球の問題ですが、全身症状は「疲れやすい」、細胞の状態は「ミトコンドリア機能低下」です。

病名 臓器レベル 全身症状 細胞の状態
副腎疲労症候群 副腎機能低下 疲れやすい ミトコンドリア機能低下
甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下 疲れやすい ミトコンドリア機能低下
鉄欠乏性貧血 赤血球数低下 疲れやすい ミトコンドリア機能低下

つまり、慢性疲労、副腎疲労、起立性調節障害、甲状腺機能低下、貧血は、臓器レベルで考えると一見別々の疾患ですが、全身症状は「疲労」で共通しており、細胞レベルでみると「ミトコンドリア機能低下症」とひとくくりにできます。

病態が「疲労」である疾患は「ミトコンドリア機能改善」が共通の治療方針なのです。

免疫系疾患は免疫の正常化を行う

同じように、治療にステロイドを用いる疾患にも同じ共通点があることに気づきます。

関節リウマチは、臓器レベルでは、関節の問題ですが、根本病態は「免疫異常」です。
アトピー性皮膚炎は、臓器レベルでは、関節の問題ですが、根本病態は「免疫異常」です。
掌蹠膿疱症は、臓器レベルでは、腸の問題ですが、根本病態は「免疫異常」です。

これらの疾患に共通する病態は「免疫異常」であり「免疫の正常化」が共通の治療方針です。

精神疾患は神経伝達物質のバランスを正常化する

同じように、うつ、統合失調症、発達障害、ADHDなどの共通病態は、「神経伝達物質代謝異常」であり、その調整が共通治療方針です。

「同じ疾患群には共通のアプローチ(治療方針)がある」のです。
そして、これらは栄養療法によって目的を達成することができます。

[box class=”box26″ title=”まとめ”]病態の中心概念をとらえ、治療方針を決める

(例) 中心概念は副腎疲労、治療方針は「副腎ケア」と「ミトコンドリア機能改善」[/box]

がんに対する治療方針

がんの原因は様々ですが、活性酸素や感染、慢性炎症以外にも、

1 アポトーシス不全(不完全な細胞を消去できないためにがん化する)
2 免疫低下
3 ストレス

などが挙げられます。

これに対しては、

1 ミトコンドリア機能改善
2 免疫の正常化
3 神経伝達物質のバランス正常化

が有効だと考えられます。

つまり、上記の3つの治療方針を全て組み合わせる必要があるのです。
栄養療法でもがんの治療は一番高度な技術が要求されます。

がん治療にもミトコンドリア機能は大きく関与します。
なぜなら、エネルギー産生と並んでミトコンドリアの大きな働きの一つが、「アポトーシス」の調整だからです。

3. 治療手段を決める

治療手段は診察や検査結果で決める

患者さんの疾患の概念をつかみ、治療方針が決まったら、次に治療方針を達成するための「治療手段」を決めます。
その際に、どの手段を用いるべきかは問診や検査結果をみて決めます。

例えば、ミトコンドリアについて考えてみましょう。
ミトコンドリアのエネルギー産生というのは、酵素反応によります。

だからミトコンドリア機能を高めるためには、酵素の代謝を高めたり、酵素反応の補酵素を補充したり、酵素反応の邪魔をする因子を取り除けばよいのです。

具体的には、ビタミンサプリをとることや、デトックス治療、また運動などもいいでしょう。

実際には、血液や毛髪、唾液検査などを用いて、酵素反応のボトルネックになっている個所を探し出して、そこを重点的にアプローチしていきます。

[box class=”box17″]

ミトコンドリア機能は様々な要因によって邪魔されます
ミトコンドリア機能低下の原因は検査をすることで明らかになります

  • ミトコンドリア内の酵素を動かす補酵素(ビタミン、ミネラル)が足りない
    (血液検査にて知る事が出来ます)
  • 腸内環境が悪くて酵素やミネラルの吸収が悪い
    (腸内環境検査にて知る事が出来ます)
  • 体内に入り込んだ重金属が酵素を邪魔しているのか?
    (毛髪ミネラル検査にて知る事が出来ます)[/box]

ですから、一言にミトコンドリア機能改善と言っても、それを正しく行うには、

  • 血液検査や毛髪検査の正しい読み方
  • 必要なサプリメントの選び方、投与の仕方
  • 細胞やミトコンドリアの構造と働き
  • 酵素反応を促進するビタミンと、邪魔する因子の種類

などの基礎的な知識が必要となります。

これは免疫系疾患でも同じです。
例えば「掌蹠膿疱症」をビオチンで治す人もいれば、口腔内ケアで治す人もいます。
治療のテクニックは違えど、目的は同じ「免疫の正常化」なのです。

ちょっと複雑ですが、ここを抑えておくと大まかな治療の流れがわかるようになります。

4. まとめ

分子栄養学治療の流れは、

1 病態を把握する
2 中心となる治療方針を決める
3 適切な診察と検査で使う治療手段を決める

となります。

このフレームワークを動かすためには、以下の知識が必要です。

①「病態から治療方針を決める方法」

②「治療方針を達成する方法」(ミトコンドリアの動かし方、免疫を正常化させる方法、神経伝達物質のバランスのとり方など)

③「診察の仕方、検査の読み方」

④「治療テクニック」(腸内環境改善法、自然なデトックス法、サプリメントの摂り方など)

ミトコンドリア機能向上と一言にいっても、やり方はざっと10通りもあります。

病院受診が必要なほど重症な人は、ミトコンドリアサプリを摂るだけでは改善しません。
酵素反応を高めるために単純に高たんぱく食にすることで改善する人は限られます。タンパク代謝全体を高めなくてはなりません。

5.これらがうまく機能しないときに考える事

Depressed woman

「血液検査をして足りないサプリメントを摂ったが治らない」
「複雑な尿検査や遺伝子検査をしたり、様々な治療法を試ししても、ゴールが見つからない」

という人は決して少なくありません。

なぜ、うまくいかないのか?
理由は大きく2つに分けられます。

(1)検査の解釈が間違っている

栄養療法における血液検査の解釈は一般の医療的な見方とはだいぶ異なります。
詳しくは血液検査の読み方講座でご紹介しています。

また、こちらの記事(検査をしているのに治療がうまくいっていない人のパターン)も参考にしてください。

(2)治療の「方針」と「手段」がごっちゃになっている

この2つを取り違えている人がすごく多いです。治療家も患者さんもです。

貴方の副腎疲労に対する「治療方針」はなんですか?ちょっと考えてみてください。

もちろん、副腎が疲れているので、副腎を癒すためのビタミンCやハーブも重要なのですが、それだけでは副腎疲労は十分回復しません。

なぜなら、副腎疲労を起こすまでには全身の細胞がかなり疲労しているからです。

副腎の役割はストレスに対応する事ですから、ちょっとやそっとのストレスで根を上げることはありません。

副腎疲労を起こすまでには、通常数年間にわたるストレス期間があります。
その間に、全身の細胞が疲労し、エネルギーを作る能力がすっかり落ちてしまうのです。

細胞の中でエネルギー産生を担っているのは「ミトコンドリア」です。
つまり「副腎疲労」では、細胞のミトコンドリア機能が低下しています。
だから、私の「副腎疲労」の治療戦略は、「副腎のケア」と「ミトコンドリア機能の改善」なのです。

方針と手段の違いを明確に意識する

「そんなの当り前じゃないか」というご意見もあると思いますが、実際には、この目的を明確に意識するかしないかで、治療効果は大きく違います。
意識をしていないと「方針」と「手段」を取り違えてしまうことがあるからです。

「血液検査で足りない栄養素みつけ、それを補充する」という治療をしている人があとを絶たない理由は、治療の方針と手段を取り違えているからです。

血液検査の結果が良くなることが、「治療方針」だと勘違いしているのです。

設定が間違っているので、数値に一喜一憂したり、治療効果が頭打ちになったり、サプリメントを減らしたら症状が逆戻りしたりするなど、すぐ限界が来ます。

「サプリメントをとること」は手段であって、方針ではありません。

血液検査は、方針を指し示してくれる道しるべであり、方針そのものではありません。

「フレームワーク」という考え方

「治療方針を決め、それを達成するために必要な手段を探るために、道しるべを用意する」というこのような考え方の枠組みを「フレームワーク」といいます。

実際、私はこのフレームワークを意識して、治療計画書に取り入れるようにしてから、一層の治療効果をあげられるようになりました。

治療目的がぶれないので、必要最低限の検査、治療のみで済むことにも役立っています。

6.フレームワーク作りの実際

フレームワークとは、治療の考え方の基本になる枠組みの事です。

・同じ疾患群(病態)には共通の治療アプローチがある
・それぞれの治療アプローチには、複数のテクニックの組み合わせが必要である
・それぞれのテクニックは、基礎知識の上に成り立っている

という考え方を図にしています。

左から順番に疾患群、治療アプローチ、テクニック、基礎知識です。
左は具体的な病名、治療の話、右は抽象的な概念の話です。

細胞の機能を高めるためには、状況に応じて様々な治療アプローチや、治療手段(テクニック)を必要とします。

使い方は以下の通りです。

① 患者さんの病気の系列を決める
→すると、基本治療方針(アプローチ)が大体きまります。

② 基本アプローチを行うのに必要なテクニックを決める
→問診、診察、検査結果から必要なテクニックを決めます。

③ 治療テクニックを使う順番を決める
→通常は体への侵襲が少ないものから順番に行っていきます。

7.病態の本質は、人間を構成している細胞の機能にある

ですからこの図では、細胞という観点から病態を
「疲労系」「免疫系」「精神系」の3つにわけています。
一人の人が複数の病態を持っている場合もあります。

病態が把握できれば、基本の治療方針がおのずと決まってきます。
なぜなら、細胞レベルで考えると、同じ系列に属する疾患は同じ細胞の部位の働きが低下しているからです。(例えば、疲労系疾患はミトコンドリアの働きが低下しています。)

同じ系には共通の病態があり、それに対する共通の治療アプローチが存在します。

例えば、「疲労系」には、慢性疲労症候群,副腎疲労,甲状腺機能低下症などが含まれますが、これらに対しては、ミトコンドリア機能改善が共通アプローチです。

もちろん、それが治療の全てではありません。
それぞれの病態に応じて個別にやるべきことはあります(例えば慢性疲労症候群なら感染に対する対策)が、いずれにしても、疲労系に対してはミトコンドリアアプローチが必須なのです。

疾患群と治療アプローチは常にセットです。

[box class=”box26″ title=”解説”]

高血圧症や糖尿病などが入っていませんが、これらも厳密に言えば細胞機能低下であり、「疲労系」、「免疫系」に組み入れられます。

ただし、これらの疾患は薬剤での調整が比較的容易であり、生活の質も保たれるので、積極的な栄養療法を受ける患者さんはそれほど多くないようです。

ここでは、標準的な医療での調節がうまくいきにくかったり、薬剤の副作用が強かったり、生活の質が低下しやすいものを中心に構成しています。

[/box]

ビタミンとミネラルの違い

宮澤賢史 · 2019年2月20日 ·

Healthy ripe fruits and vegetables containing vitamin C, natural minerals and dietary fiber, healthy lifestyle and nutrition concept

ビタミンとミネラルは全く違う

ビタミンとミネラルはどちらも「体内で代謝を高める補酵素として働く」「現代の食生活で不足しがち」という共通した特徴を持っています。

だから、手軽に摂れる栄養補給としてマルチビタミン・ミネラルというサプリメントが重宝されています。

栄養療法の大きな役割の一つは、細胞内に酵素反応を助ける補酵素を十分供給し、体内の代謝を回してあげることです。
通常ビタミン・ミネラルは単独ではなく、お互いに助け合って働くため、マルチビタミン・ミネラルサプリメントは非常に理にかなっています。

しかし、世の中にはこのサプリがうまく効かない人が大勢います。そのような人たちには、検査に基づく栄養療法が必要です。

なぜなら、ビタミンとミネラルは似ているようで全く違う性質を持っており、ビタミンとミネラルの受け取り方が人によって全く異なるからなのです。

栄養療法を行うためには、ベースサプリメントとしてマルチビタミン・ミネラルを摂る以外に、その人に会った栄養処方が必要です。

ビタミン

「ビタミン」とは何でしょうか?

ビタミンとは「体内では作れないので、必ずとらなくてはいけない栄養」のことです。

ヒトは体内でビタミンCを作れません。だから、ヒトにとってビタミンCはビタミンです。

ネズミは体内でビタミンCを作れます。だから、ネズミにとってはビタミンCはビタミンではありません。

では、ビタミンCは体内でどのような働きをしているでしょうか?

ビタミンCが足らなくなるとどのような事が起きるでしょうか?

ビタミンの標準摂取量

ビタミンCは体内で様々な働きをしています。ビタミンCが欠乏すると起きるのが「壊血病」です。

うつ状態になり、歯茎をはじめとしたいろいろなところから出血します。

ビタミンCは新鮮な食物にしか含まれません。
大航海時代、塩漬けの肉のみを積んだ船員がこの壊血病のために、数万人亡くなったのは有名な話です。

ビタミンCはコラーゲンをつくるのに欠かせない物質です。
壊血病は、ビタミンC不足のために、血管をつくるコラーゲンが作れなくなってしまう病気なんですね。

それで、血管が弱くなるために、全身から出血するわけです。

この壊血病を予防するために、最低限摂らなくてはいけないビタミンCの量の事を、
「標準摂取量」とか「所要量」などといいます。

厚生労働省が基準を出している、「第6次改定日本人の栄養所要量」によると、
ビタミンCの所要量は1日100mgとなっています。

つまり壊血病を防ぐためには、ビタミンCを毎日100mgとりましょう、ということです。

ビタミンの最適量

ところで、ビタミンCの働きはコラーゲンをつくることだけではありません。
ビタミンCにはざっと考えても以下の様な働きがあります。

・風邪などの感染症を予防する
・ノルアドレナリンを合成する
・カルニチンを合成する
・胆汁酸を合成する
・異物を代謝する
・インターフェロンの合成
・鉄代謝に関与する
・ヒスタミン遊離を抑制
・がんの予防
・メラニン産生の抑制(「美白効果」のことです)

これらの効果を得るために必要なビタミンCの量は様々です。

例えば、

壊血病を予防する量は1日100mgですが、風邪を予防するためには1日1,000mgを3回飲まなくてはならないという報告がありますし、がんを治療するには1日100,000mgのビタミンCを点滴しなくてはなりません。

ビタミンの必要量には個人差がある

ビタミンの必要量はヒトによって異なります。

タバコを吸う人、糖尿病の人は血中のビタミンC濃度が低いことがわかっています。
このような人は他の人にくらべて、余計にビタミンCを摂る必要があります。

このような個人差は、酵素と基質の親和性で説明できます。
体内の化学反応は基質と酵素が結合して起きますが、両者の結合を助けるのが補酵素です。

問題は酵素の形が人によって多少なりとも異なることです。
酵素はタンパク質の一種であり、設計図であるDNAを元に作られます。

ヒトのDNAは99.9%同じですが、0.1%の違いが個性を生みます。
酵素の形が悪いと基質との結合が弱く、余計に補酵素を必要とします。

「酵素の個人差によって必要な補酵素の量が異なること」

これを個体差といっています。

ビタミンは使う目的と個人差によって必要量が異なる

ミネラル

ビタミンの性質が「個体差」と「ドーズレスポンス(目的によって必要量が異なること)」だとすると、ミネラルの性質は「生体利用性」と「バランス」になります。

まずは吸収を考える

ミネラルは、生体利用性を高める工夫をしないと有効に使われません。

また、ミネラルはバランスが大切で、特定のミネラルだけが多いとほかのミネラルの働きを抑えてしまうことがあります。

特にミネラルをうまく使うのに必要とされるのは腸内環境です。
ミネラルはビタミンと違って、非常に難吸収性であるため、胃腸の不良がミネラルバランスを簡単に崩します。

ミネラルをうまく使うためにはまず腸内環境改善から始める必要があります。

ミネラルはバランスが大切

もう一つ重要なのは、ミネラルバランスです。

ナトリウムとカリウム、カルシウムとマグネシウム、亜鉛と銅はそれぞれ体内で反発しあう性質を持っています。

カリウムをたくさん取れば、ナトリウム(塩分)が体から抜けていき、血圧が下がるのが良い例です。
これらのミネラルは両者のバランスをうまく保つことが大切で、片方が多すぎるとあまり良いことがありません。

そういう意味で、マルチミネラルサプリメントは重宝します。

ビタミンAの栄養所要量について

宮澤賢史 · 2019年2月20日 ·

栄養所要量には上限がある

分子栄養医学を実践するときに、必ず絡んでくるのが栄養所要量の問題です。厚生労働省の「第6次改定日本人の栄養所要量」をみると、主な栄養素について、欠乏症を防ぐ必要量(所要量)とともに、過剰摂取による健康障害を防ぐ上限値(許容上限摂取量)の設定がされています。

この第6次・・は平成12年に改定されたものですが、当時のサプリメントブームを反映して、過剰症が万が一にもないように、特に上限値が細かく設定されました。ですから、多くのサプリメントに入っている栄養素は、この過剰症を超えないような量の設定になっています。

分子栄養学では、栄養素を栄養としてではなく、薬理学的効果を得るために投与しますので、当然、処方量は最低所要量を大きく超えてきます。しかし、ここに大きな壁の一つがあります。理論的背景と実績を患者さんに示すことが出来なければ、治療への同意が得られにくいからです。

ビタミンAの場合

ビタミンAの所要量は12歳以上で、1日当たり下記になります。ビタミンAの過剰摂取による副作用として、胎児奇形をはじめとして、頭痛、脳圧亢進、吐き気、嘔吐、皮膚の乾燥、筋肉痛、食欲不振、皮膚色素沈着などが言われています。

ビタミンAの所要量
男性 2000 IU(国際単位)
女性 1800 IU (妊婦は+200 IU、授乳婦は+1000 IU)
許容上限摂取量は5000IU

やきとりのレバーは1本で16,000 IU、うな重は1人前3,000 IUのビタミンAを含んでいます。実は、ビタミンAは、やきとりのレバーを食べることで、1日の許容上限摂取量を簡単に超えてしまうのですが、レバーを食べて奇形になったという話は聞いたことがありません。

私は妊婦さんを含む100人以上にビタミンAを少なくとも1日当たり、30,000 IU~120,000 IUを処方したり、監修したりしてきましたが、重篤な副作用の話は聞いたことがありません。しかし、それでも一般的には、妊婦への大量投与に関しては、贅否両論があり結論は得られてはいません。

ビタミンAにはいくつかの働きがありますが、一番大切なのは「細胞分裂の正常化」です。ビタミンAの一形態であるレチノイン酸は核内の受容体に結合し、特定の遺伝子の発現を制御します。レチノイン酸受容体はステロイドホルモンなどと同じく、細胞の核に存在します。

Naturevolume 330, pages444–450 (1987)

ビタミンAは直接、細胞の核に働きかけ、細胞分裂に関わります。
そういう意味でビタミンAはステロイドと同様に非常に薬理的作用が強いビタミンです。つまり、「ビタミンAが不足すると、細胞分裂がうまくいかない」ということです。

よって、細胞分裂が盛んな胎児を抱えている妊婦には必須とされているし、細胞分裂異常が原因となっているがんに対しての効能が期待されているし(白血病の治療にはすでに応用されている)、細胞分裂が盛んな皮膚や口腔粘膜の正常化に必要なわけです。だから、ビタミンA、冬時の肌の乾燥防止には本当に効きます。

天然と人工ビタミンAは全く違う

ビタミンAサプリメントこのように非常に使えますが、ひとつだけ注意が必要です。天然のサプリメントと人工的なサプリメントやビタミンA製剤は全く別物です。人工のビタミンAは最初から活性型です。摂取したそばから効果を発現しますので、効き過ぎる事があります。

一方で、天然ビタミンAは体内に入ってから、必要に応じて活性化されますのでそのようなことはありません。うなぎと同じです。

統合失調症に対するナイアシンの効果

宮澤賢史 · 2019年2月20日 ·

ナイアシン(ビタミンB3)をご存知ですか。ビタミンB群には、B1,2,3,5,6,12などがあります。これ、間の数字がいっぱい抜けています。なぜかというと、生体内で作ることが出来ない栄養素をビタミンと言っているのですが、本当は体内で作られていることが後から分かったり、他のビタミンと実は同じだったりして、欠番になっているものがあるんですね。

ナイアシンも元々はビタミンB3だったのです。しかし、体内でごく少量ですが作られていることがわかり、それで最近ではビタミンでなく、ナイアシンと呼ばれることが多いようです。

1. エイブラハム・ホッファーのアドレノクロム仮説

厚労省による、大人のナイアシンの1日あたりの許容上限摂取は30mgです。しかし、実際に精神疾患にナイアシンを使う場合、その100倍にあたる1日3000mgを使用する事は少なくありません。そこで、ナイアシンを高用量使用し、6000人の統合失調症患者を社会復帰させたエイブラハム・ホッファー医師の研究についてご紹介します。

現在、精神疾患の診断方法は精神疾患の診断マニュアルによります。診断マニュアルとは、DSM-IV(アメリカ精神医学会が発行する精神疾患の診断・統計マニュアル)や第4番ICD-10(WHOの疾病及び関連保健問題の国際統計分類)などのことです。

これらの中には例えば、気分変調症(うつ病)のチェックリストがあり、

  ・抑うつ気分が存在する
  ・食欲減退
  ・不眠
 ・気力の低下
  ・集中力の低下

などの項目が並んでいます。そのうち、いくつか以上当てはまれば、うつ病と診断できるわけです。つまり、エピソード、問診、症状から診断するのですが、この診断方法のいいところは、情報工学的、統計的な分類手法を使っているので、経験の浅い医師でも、経験豊富な医師と同様な診断ができることです。

この場合、病気の原因について追及しなくても診断が可能で、すぐに治療を始めることができます。しかし、残念ながらこの方法論には大きな欠点もあります。疾患に隠された原因を見極めていないので、その場限りの対症療法になりがちですし、場合によっては薬が効かないこともあります。

  • ドーパミン仮説
  • アドレノクロム仮説
  • グルタミン酸仮説
  • 遺伝的要因

精神疾患の発病メカニズムについてこのように、諸説ありますが、分子栄養学の創始者エイブラハム・ホッファーはアドレノクロム仮説で有名です。

ホッファーは農生化学者から精神科医になったという経歴を持っています。彼は統合失調症の研究でメスカリンに注目しました。メスカリンは麻薬の一種です。メキシコのウイチョル族が宗教儀式の際用いていたものです。なぜならば、統合失調症の症状とメスカリン中毒の症状は似ているのです。

どちらも、感覚障害、運動障害、思考障害、幻覚、離人症、気分障害といった症状が出ます。彼がそれに気がついたのは変色した喘息の薬(アドレナリン)が、同様の心理的経験を起こしたという報告からです。「腐ったアドレナリンが怪しい → アドレナリンは体内でも作られる」と思ったわけです。

ホッファーはその後も研究を続け、統制研究(1952-1954年)にて、幻覚と妄想30人の統合失調症患者に対して、1日あたり3000mgのナイアシンを投与し、2年後90%以上が改善しました。ナイアシンにアドレナリンの劣化を抑える要素を見出したわけです。

その後、ホッファーは精神疾患をもつがん患者を多く診ていくことになりますが、その過程で、栄養療法で精神疾患を治療すると、がんもよくなることに気がつきました。

もちろん、ホッファー先生はビタミンB3だけをつかって治療をしていたのではありません。ほかにも食事内容などが精神疾患の治療には深く関連しています。このことについては、ホッファー先生の著書「統合失調症を治す―栄養療法による驚異的回復!」に詳細があるので、興味がある方は見てみてください。

2. ナイアシンはメチレーションを亢進させる

ウイリアム・ウォルシュ博士は統合失調症患者を5つのタイプに分け、低メチレーションタイプの患者にはSAMe、高メチレーションタイプの患者にはナイアシンを推奨しています。

高メチレーションタイプの統合失調症患者では、脳のシナプスにおいてドーパミン再取り込みタンパクの合成が阻害されるために、シナプス間隙のドーパミンが増加しています。

つまり、高メチの人はドーパミン過剰型の精神疾患を起こしやすい。このような人にはドーパミンを増やすSAMeやSSRIではなく、ドーパミンを減らすナイアシンや葉酸サプリを使うべきです。

ナイアシンや葉酸はディアセチラーぜ活性を低下させるため、シナプスのアセチル化が亢進する結果、ドーパミン取り込みタンパクの合成が亢進し、ドーパミンを減らす事ができます。

分子栄養学は疾患の根本原因を理解し、そこに対して自然で体に優しい治療を施していくというものです。このように細胞の働きや分子構造、酵素の働きなどの注目して治療をするので、全身的な効果があります。

サプリの量と反応の関係

宮澤賢史 · 2019年2月20日 ·

栄養療法やサプリメントを推奨する会でよく聞く話なんですけれど、

・ 現代は食生活が変化して必要な栄養素を摂れなくなっている。
・ 付き合いで飲みすぎることも多いし、不摂生している。
・ 現代では農薬の使いすぎで、畑がやせて野菜に含まれるビタミンの量が減っている

ですからサプリメントで必要な栄養素を補いましょうというものです。このような、不摂生を補ってくれる商品としてのサプリメントも否定はしません。しかし、それなら食事をきちんと摂ったほうがよいでしょう。サプリメントを摂る本当の意味は効率化です。栄養素が濃縮して入っており食事では取りきれない医学的な量の栄養を摂ることができます。

例えば、豚肉にはビタミンBが多く含まれていると言われていて、ブタヒレ肉100gには1.34mgのビタミンB1が含まれています。確かに、これは1日の厚労省の推奨量1mgよりは多いです。しかし、栄養療法で神経の再生のために使うビタミンB1は1日150mgです。

これは、ブタ肉11.2kgに相当します。これを1日で食べるのはいかに大食いの人でも無理ですよね。同様に、風邪の予防に必要な3000mgのビタミンCはレモン150個分です。

栄養素は単に欠乏症を補うだけでなく、量を多くとることで様々な医学効果が期待できます。しかし、その量を確保するためには栄養素を濃縮して摂ることが不可欠なのです。

コンテンツ [非表示]

  • 副作用をモニターしながら進める
  • 歩行とふらつき、意識障害をもつ45歳男性
  • 今も存在するビタミン欠乏症
  • 量と反応の関係(ドーズ・レスポンス)
  • ビタミンCの至適量は状況や目的によって変わる
  • ビタミンCサプリメントは頻回摂取が有効
  • ビタミンCを自分で作れる動物
  • ビタミンDの血中濃度と効果

副作用をモニターしながら進める

ところで、「第6次改定日本人の栄養所要量について」をご覧頂くと分かりますが、多くの栄養素に関して、厚労省は上限を設けています。サプリメントの副作用を懸念しての事です。

サプリメントは高容量を摂ると、副作用が生じる可能性があります。(もちろん、薬よりも圧倒的に少ないですが)ビタミンCを高用量とれば、胃への刺激が出る場合もあるし、下痢をする事もあります。

だから、初めに検査をして栄養素の過不足を判断する事が必要になってきます。もちろん、治療開始後も時々検査をして、栄養が十分かどうか評価を行います。栄養療法では、モニターをしながら、医学的効果が得られる量のサプリメントを使用します。

歩行とふらつき、意識障害をもつ45歳男性

5日前から独り言が多くなり、会話が成り立たなくなった。また歩行がふらつくため、自宅内を這って移動していた。本日からほぼ寝たきり。既往歴なし。喫煙歴20本x25年。飲酒ビール2.5リットル毎日。食事は不規則。バイタルサインほぼ安定。 診断と治療はなんでしょうか?

5日前からおかしくなって、すぐに寝たきり。普通は脳卒中などを考えますよね。でも、特記すべきは1日ビール2.5リットル、食事は不規則でおつまみ程度というところです。検査結果は、肝機能はお酒のせいで悪いですが、特に生命に関わるようなところはありません。

今も存在するビタミン欠乏症

この方の脳のMRIを撮ったら、まんなかのところに少し炎症が見られました。これは、ウェルニッケ脳症という極端なビタミンB1不足を原因とする中枢性障害です。眼球運動麻痺、歩行失調、意識消失をきたします。

脚気、ウェルニッケ脳症、壊血病は昔の病気ではありません。現在でもあるんです。現代の脚気は、こういったアルコール中毒か、子供の清涼飲料水の飲みすぎなどが主な原因です。 脚気心といって、動悸が激しくなって運ばれ、救急外来で肺高血圧症と診断されるも、最終的に脚気による心不全だということがわかる、ということはよくあります。清涼飲料水は異常に糖質が多いので、それによってビタミンB1が消耗してしまうんです。拮抗栄養素の過剰な摂取によって、対立する栄養素が失われてしまうというのがポイントです。

脚気はビタミンB1の欠乏症です。厚労省の勧めるビタミンB1の推奨量は1日1.1mgですが、いったんこうなったら、数百mgのビタミンBが必要です。これは食事はもちろん、サプリでも不十分なので、点滴でビタミンB1を大量に入れます。

量と反応の関係(ドーズ・レスポンス)

ビタミンBが枯渇する脚気や、他にもビタミンC欠乏の壊血病などは、大量に栄養を補給する必要があるのは理解できたけど、じゃあ重症の欠乏症じゃなければ、ビタミン大量補給の必要もないでしょ。と思う方もいらっしゃるかもしれません。

ここからは、欠乏症以外にビタミンを大量に使う意味を説明します。例えば、ビタミンCを25g点滴すると、血中濃度が経口で摂取する場合の70倍になります。レモン1250個分です。

これは僕がビタミンC点滴を習ったリオルダン・クリニックの、リオルダン先生が2000年に発表したビタミンCの血中濃度が400mg/dを超えるとがん細胞が死ぬ、という論文です。2005年にWHOが追加実験を行うと、本当にがん細胞がなくなったので、そこから一気に広まりました。

これはビタミンCを経口摂取した場合と点滴した場合の、血中濃度のグラフです。400mg/dというのは結構な濃度で、経口摂取では絶対にたどりつけない濃度なんです。点滴でしかこの濃度に達することはできません。抗がん作用を期待するなら、点滴しなければなりません。例えば、これがビタミンの欠乏症でない人に大量にビタミンを使う例です。

ビタミンCの至適量は状況や目的によって変わる

ビタミンCの最適な量は、状況や目的によって変わります。怪我を治りやすくする、コラーゲンを作る(100mgで大丈夫)、壊血病を予防する、風邪の予防ではグラム単位で必要です。副腎疲労は風邪と同じように、数十g摂るといいです。ビタミンCを点滴すると、てきめんにいいです。

ビタミンCサプリメントは頻回摂取が有効

サプリメントを摂るなら、1gずつ1時間ごとの頻回摂取が有効です。ビタミンCは一度に大量に摂ると、吸収が落ちます。60mgだと100%、100mgだと90%、1000㎎だと75%、2000㎎だと44%と、どんどん減っていきます。ですから、1000mgが最もコスパが良いですね。

30分で血中濃度は上がりますが、4時間で下がります。4時間おきだと血中濃度が上がったり下がったり、血中濃度が安定しません。ですから、1時間おきに、血中濃度が下がっていないうちに次々入れていくと、どんどん上がっていきます。ビタミンCの効果は血中濃度に比例しますから、ビタミンCを1時間おきに摂るだけで、効果が3倍近くなります。

ビタミンCを自分で作れる動物

ビタミンCを自分で作れるものもいます。左側が作れないグループ、右側が自分で作れるグループです。犬と猫も作れますが200mg程度だそうです。自分で作れるとはいえ、少ないですね。動物病院ではビタミンC点滴はよくやることです。ストレスが多くて全然足りないからです。

野生のヤギは14mg/日ですが、病気になると100mg/日です。需要に応じて産生量が増すのです。自分で作れない動物は、状況に応じて摂取量を増やした方がいいのではないか、という話です。

ビタミンDの血中濃度と効果

同様に、ビタミンDにもドーズレスポンスがあります。ビタミンDの血中濃度が20ng/mlと低くても、くる病は予防できます。様々ながん、糖尿病、多発性骨髄腫などはだいたい40~60ng/mlで予防できます。ほとんどの疾患ではこの濃度にしておくと、いいことがおきるということです。

日本人の平均ビタミンD血中濃度は20程度と言われています。日焼けしていて、すごくビタミンDがありそうに見えても血中濃度が低い人もいます。逆の人もいます。ビタミンDの体内合成力によります。低い人は、サプリメントを摂ると、確実に上がっていきます。血中濃度を上げるためには、できれば1日2000IU以上摂ると良いでしょう。

しかし、ビタミンDはビタミンAと同じく脂溶性ビタミンなので、1日5000IU以上摂取する場合は血中濃度を測定しながらやることが重要です。ビタミンDサプリメントを毎日摂っていて腎不全を起こしたという症例報告があります。

  • « Go to Previous Page
  • ページ 1
  • Interim pages omitted …
  • ページ 12
  • ページ 13
  • ページ 14
  • ページ 15
  • ページ 16
  • Go to Next Page »

臨床分子栄養医学研究会

Copyright © 2025 臨床分子栄養医学研究会

  • プライバシーポリシー
  • 会員規約および会員規定
  • 利用規約
  • 特定商取引法に基づく表記