• Skip to primary navigation
  • Skip to main content

臨床分子栄養医学研究会

あなたのサプリが効かない理由教えます

  • コース一覧
  • もう一本読む?
    • 分子栄養学基礎マスターコース 食事とサプリメント編
    • 分子栄養学の基礎 検査と根本原因
    • 分子栄養学アドバンス・コース
    • まごめじゅんの栄養講座
  • サクセスパス
    • 治療方針を決める
    • 必要な治療と順番を決める
    • 検査を行って確認する
    • 治療の実際
  • ごあいさつ
  • 受講者の声
    • 医療関係者
    • 一般の方
  • クリニック紹介
    • 分子栄養学の検査・治療を受けられるクリニック
    • 指導認定医・認定医一覧
    • 認定指導カウンセラー
    • 認定カウンセラー
    • PNTトレーナー
  • 会員サイト
    • 総合案内
    • 研究会会員サイト
    • 第24期会員サイト
  • Show Search
Hide Search
現在の場所:ホーム / アーカイブ宮澤賢史

宮澤賢史

栄養素がDNAに及ぼす影響

宮澤賢史 · 2020年1月7日 ·

細胞の中に核があって、その核の中には染色体が23対入っています。この染色体をひもとくと、長さ2mのDNAになります。ヒトのDNAはすべて解析され、その結果チンパンジーとヒトのDNAの違いは1.4%しかないことがわかりました。確かにDNAは設計図ですが、読み取り方によって完成品のタンパク質は全く異なるものになります。同じ楽譜でも、演奏家が違うと違う曲に聞こえますよね。それと同じようなです。DNAに基づいてタンパク質が作られることをタンパクの発現と呼んでいます。

遺伝子の発現に重要なヒストン

核の中の染色体はDNAからできています。DNAは定期的にヒストンという糸巻き上のものにくるまっています。このヒストンがあるおかげで、長いDNAが核内にコンパクトに収納されています。

ヒストンとDNA

遺伝子を発現するとき、ヒストンは外れたり位置がずれたりして、遺伝子の情報が読み取られ、たんぱく質が作られます。ヒストンは、DNAが絡まらないようにするためだけでなく、遺伝子の発現に重要な役割を持っているということが分かってきました。

タンパク質が作られる仕組み

DNA図書館(核)の中にある設計図(DNA)は持出禁止なので、RNAにコピーしてリボゾームに持ちだす

タンパク質はすべて細胞の核の中にある遺伝子の設計図情報をもとに作られます。図書館です。タンパク質はその場で作れないので、この設計図をRNAにコピーして、RNAとして持ち出さないといけません。このコピーすることを一般的に転写といいます。

転写された鋳型のRNAは、タンパク質の製造工場・倉庫である小胞体のリボゾームに持ち込まれます。RNAがリボゾームに設計図を持ち込み、その設計図通りにアミノ酸をつなげていく翻訳作業が行われます。だから、たんぱく質が作られるためにはまずDNAがRNAに転写される必要があります。

転写の仕組み

エンハンサー領域に転写因子タンパクが結合することがはじまり

DNAの長い鎖は、全体が設計図なわけではありません。設計図の場所と、設計をコントロールする場所にわかれています。設計図の場所を構造遺伝子、それ以外を転写調節領域といいます。

転写調節領域の中で、特にエンハンサーというところにRNAがくっつくと転写が始まります。プロモーターというのは、タンパク質の構造遺伝子がどこから始まるかを示しています。ここから読み取れば良いんだ、という目印になります。

エンハンサーであるRNAポリメラーゼというタンパク質がくっつくと、転写が始まって、タンパク質が作られます。(実際にはこの構造遺伝子が切り取られると、その中からイントロンという要らない遺伝子が切り落とされます。これをスプライシングといいます。)重要なのは、エンハンサー領域にタンパク質がくっつくと転写が起こるということです。

クロマチン構造が変化して転写を司る

ヒストンにDNAが巻き付いたものをクロマチン構造という

ヒストンにDNAが巻き付いたものをクロマチン構造と言います。クロマチン構造が変化することによって、転写が起こったり起こらなかったりします。ヒストンとヒストンの間が空くと、間に転写遺伝子が入ってこれるので、転写が始まります。逆にヒストンとヒストンの間が狭くなると、転写因子が入ってこれず、タンパク質の合成が起こりません。だから、合成がおこるかどうかはヒストンの間の距離次第です。ヒストンの間の距離は、ヒストンにアセチル基がつくか、メチル基がつくかで決まります。

メチレーションという概念があります。メチレーションが亢進しているときはメチル基がたくさんあるので、遺伝子の発現が止まります。がん遺伝子の発現もこれで阻止しています。メチレーションがうまくいかない人はがん遺伝子の発現を止めることができずにがん化する、という説があります。

メチル化は転写を抑制、アセチル化は転写を亢進

ヒストンにアセチル基がつくとクロマチン構造が疎になり、転写因子がエンハンサー領域に結合できるようになります。

身体がメチル化状態だとヒストンの間が狭くなり、転写が起こりません。メチル基がたくさんつくと、ヒストンとヒストンの間が短くなって、遺伝子の発現が起きません。ここだけ頭に入れておいてください。

ナイアシンは、転写因子を活性化させることでタンパク質をたくさん作らせます。その結果、ドーパミンが下がってきます。これが、統合失調症に効く理由です。反対に、SAMeというメチル基をたくさん持ったサプリメントは、遺伝子の発現を阻害して、結果的にセロトニンを増やします。重要なのは、ヒストン間の距離によって、たんぱく質の合成が動いたり止まったりするということです。

遺伝子の発現には栄養が重要

細胞の核に関しては、遺伝子の発現に関係する、遺伝子の発現には栄養がすごく絡んでいる、ということを覚えておいてください。遺伝子の設計図ではなく、発現が大事です。最も重要な遺伝子の発現は、栄養と環境でいくらでもコントロールすることができます。ですから、一卵性双生児でも環境と食事が違うと、遺伝子の発現が違うので、まったく違った人間になるということです。

ミトコンドリアへのサプリケア

宮澤賢史 · 2020年1月3日 ·

人間は約37兆個の細胞でできています。その細胞ひとつひとつが元気であることが健康状態を保つ上で必須で、その中は細胞内器官という中身がつまっていて、重要なのはこの4つです。

  • ミトコンドリア
  • 核
  • 細胞膜
  • 小胞体

他にもゴルジ体などもありますが、さしあたってこの4つを抑えておけば、栄養療法を考える上では事足ります。重要なのは、「細胞の どの部位の どんな働きのために どの栄養素が必要か」ということを、関連付けて頭に入れておくことです。例えば、ミトコンドリアならビタミンB群が必要ですよ、といったことです。

また「毒性物質が 細胞のどの部位の働きを損なうか」も重要です。例えば、ミトコンドリアは重金属でやられますし、トランス脂肪酸が入ってくると細胞膜の働きが失われます。トランス脂肪酸は直鎖状で、油の塊である細胞膜を固めてしまう働きがあります。その細胞内器官4つを、これから1つずつ解説していきます。

ミトコンドリアとは

ミトコンドリアは数ある細胞内小器官のうちのひとつで、すべてのエネルギーをATPという形で産生しています。各細胞に300から数千個存在していて、人間全体では1京個存在します。なんと、人間の体重の10%はミトコンドリアです。

血球や皮膚細胞にはほとんど存在しません。もし赤血球にミトコンドリアがあれば、酸素を運搬するのではなく、酸素を自分で使ってしまうからです。卵子には10万個あるので、ミトコンドリアが受精・着床に影響を及ぼします。

ミトコンドリアの祖先は細菌である、という話は最近有名になりました。もともとは別の生物だったのが、20億年ほど前に寄生したんです。リケッチアという細胞とウイルスの間のようなものが細胞内に寄生したのをきっかけに、エネルギーをたくさん作れるようになって進化した、という話です。つまりもともとは別の生き物ですから、細胞の核とは別に、独自のDNAを持っています。

ミトコンドリアはエネルギー産生装置

ミトコンドリアはエネルギーを産生する装置です。これは、糖質(グルコース)からエネルギーがどのように産生されるかという経路の図です。

前に出てきたクエン酸回路が、この中に入っています。ミトコンドリアの外側にあるのが解糖系という、ブドウ糖をピルビン酸に変える経路です。酸素を使わないので無酸素代謝と言われます。ミトコンドリアの中は酸素をたくさん使う、有酸素代謝です。

この無酸素代謝では、1分子のグルコースから2分子のピルビン酸ができます。その間に、ATPを使って、ATPが作られます。つまり、1分子のグルコースから、差し引き2つのATPが作られます。ATPができるほど、エネルギーが産生されているという意味です。

できたピルビン酸はミトコンドリアの中に入ってきて、TCAサイクル、クエン酸回路に入ってぐるぐる回ります。ここでも2ATPが作られます。クエン酸回路はNADをNADHにして、次の電子伝達系に水素を渡す役割をしています。NADというのはビタミンB3、ナイアシンのことです。つまり、ナイアシンは水素を奪っているんですね。この水素を奪う箇所が、3か所あります。

クエン酸回路は確かにATPも作っていますが、一番大事なエネルギー回路である電子伝達系に水素を渡すのが一番の役割です。水素の運び役になっているのがこのNAD、すなわちナイアシンなんです。

このクエン酸回路で得られた水素は電子伝達系に行来ます。電子伝達系では、NAD・コエンザイムQ10・鉄などが電子や水素を受け渡して、細胞の外にどんどん水素を出すんですね。そして水素が外から中に入っていく過程で、水車が回って、その水車を回す力でATPが作られるという仕組みです。

本当はもっと複雑ですが、初めての場合はこういった理解でいいと思います。大事なのは、電子伝達系で他と比べても格段に多い、34個のATPができるということです。解糖系とTCAサイクルは前段階の準備をしてくれるところ、というふうに考えたらいいと思います。

もちろんすべての回路が回らないとエネルギーは作れません。エネルギーがつくれない、ミトコンドリア機能が低下しているという場合は、これらの回路のうちのどこが止まっているのかを考えてください。一般的にはミトコンドリアサプリメントはナイアシン(NAD)・コエンザイムQ10、鉄などが含まれます。

ミトコンドリアのDNA

ミトコンドリアは細胞の核にあるDNAとは別に、独自のDNAを持っています。ミトコンドリアのDNAは、核のDNAと比べて、活性酸素の害を受けやすいのが特徴です。ミトコンドリアでは中で電子を受け渡していますから、酸化還元反応が活発に行われているということです。

ミトコンドリアは酸化反応の宝庫ですから、不完全燃焼のすすが2%くらい出るといわれています。ですから、年をとればとるほど、ミトコンドリアをきちんと動かすには抗酸化対策が必要です。抗酸化対策が不十分だと、ミトコンドリアのDNAが傷つきやすいです。ただでさえ活性酸素が多いのに、ミトコンドリアの遺伝子は核のDNAと違って、DNAを守るヒストンがなく、環状で丸裸です。損傷を受けやすいうえ、修復能力もとても劣ります。

さらに活性酸素・重金属・有機溶剤の影響で、DNAが直接障害されます。活性酸素の発生源でありながら、活性酸素に弱いという非常にデリケートなものです。抗酸化対策は必須です。

ミトコンドリアへのアプローチ1:必要な栄養を取る

ミトコンドリアを駆動する栄養素を摂ると、ミトコンドリアが動きやすくなりそうですね。コエンザイムQ10、NADH(還元型のNAD)、鉄などです。特に、電子伝達系で働くコエンザイムQ10、NADH(還元型のNAD)は積極的に摂っていくと良いと思います。マグネシウム・亜鉛も、ミトコンドリアの基本的な動きに重要なので、摂った方がいいですが、ミネラルは吸収が悪いので摂り方に工夫が大事です。

鉄はとても重要な栄養素ですが、酸化されやすく活性酸素の発生源になりやすいので、取り扱いに注意が必要です。鉄が足りないからと鉄サプリメントをたくさん摂るのは、害が大きいです。ヘム鉄の多い赤身肉をたくさん食べると、がんになりやすいという相関性についての論文はたくさんあります。ミトコンドリアを動かすためには、必要な栄養素と抗酸化対策が必要です。

ミトコンドリアへのアプローチ2:抗酸化対策

これは抗酸化物質として有名な、ビタミンCの構造式です。抗酸化、というのは相手を還元してあげるということです。還元するということは、水素をあげること、電子をあげることです。つまり抗酸化力が強いということは、電子を離しやすいということです。ビタミンCは非常に抗酸化力が強いというのは、エンジオール基の水素のひとつが構造上、非常に離れやすいからです。

一般的に、ヒドロキシ基(-OH)・フェノール基は抗酸化力を持っています。化学式を見ると、抗酸化力が強いかどうかがわかります。クルクミン、レスベラトロール、カテキンなどのポリフェノールは、この離れやすいOH基がたくさんついているから、抗酸化力が強いということになります。だから、ミトコンドリアを動かすためにはこういったポリフェノールを一緒に入れてあげるといいんです。

ミトコンドリアサプリの具体例

実際に、ミトコンドリアサプリの例を見てみましょう。これはPure Encapsulations社という有名なサプリメントメーカーの、mitcondria-ATPというミトコンドリアサプリです。Pure encapsulationsはアメリカの代替療法医の中で、人気ナンバー2です。(ナンバー1は Metagenics 社)

何が入っているかというと、上からチアミン、リボフラビン、ナイアシンです。そして抗酸化のビタミンCとE、マグネシウムが入っています。理屈にかなっていますよね。

ビタミンCとEはあわせて入れておくといいです。ビタミンCは、還元した時に自分自身は酸化されますから、ビタミンEに還元してもらうんです。ビタミンEは酸化されますから、グルタチオンに還元してもらうんです。次々つながっていまして、抗酸化ネットワークといいます。抗酸化ネットワークに入っている栄養素を組み合わせて摂ると、抗酸化能力が非常に高まります。

カルニチンの効果

カルニチンも入っています。カルニチンは脂肪酸をミトコンドリアの中に入れるのに必要な栄養素です。痩せる、と言われていたりしますが、脂肪を燃やすためのものです。エネルギー代謝に関しては、脂質と糖質がとても重要です。ふだん、脂質もたんぱく質も糖質も、すべてエネルギーにすることができます。しかしエネルギー代謝の柱はやはり、脂質と糖質です。

たんぱく質はアミノ基を持っているので、代謝の中でできる窒素は有害で、排泄するのにアンモニアを経由したりして手間がかかります。エネルギーとしては向いていません。できればCとHしか使いたくないので、炭水化物か脂質をエネルギーとして使いたいんです。糖質制限をしている人は脂質がエネルギーのメインになってきますね。

しかし、エネルギーの性質で比べると、脂質と糖質ではエネルギー供給のパイプの太さが違います。糖質はパイプが太く、エネルギーの効率がとても良いです。脂質は脂肪細胞にあるものを一回たんぱく質の単体に載せて、細胞内まで運んでこないとエネルギーとして使えないので、エネルギーの供給パイプが非常に細いです。そこが一番違うところです。

ふだん私たちがぼーっと座っていたなら、脂質のエネルギーの方が使われています。歩いたりすると、だんだん糖質の割合が増えてきます。マラソンは42キロ走りますが、42キロすべてを糖質では賄えないんです。糖質からできるグリコーゲンはせいぜい1500カロリーしか貯められないので、脂質エネルギーもうまく入れるんです。それがペース配分です。

うまく走れる時は脂質エネルギーを使って走って、スパートの時に糖質を使うんですね。だから、それまでに糖質を使い果たしていると最後のスパートがうまくできないんです。脂質はエネルギー源としてとても重要なのですが、その脂質を細胞内に入れるのに重要なのが、カルニチンです。

抗酸化物質

他に、トランスレスベラトロール、グレープエクストラクト、このあたりは抗酸化物質です。N-アセチルシステインとかαリポ酸とかがあります。αリポ酸は解毒と抗酸化に役立ちます。αリポ酸は脂の抗酸化も水の抗酸化もできます。ビタミンCとEの両方の特性を持っています。

あとはカネカ・ユビキノールが入っています。カネカ、というのはコエンザイムQ10の有名なメーカーです。鐘淵化学工業というところで開発されたのがコエンザイムQ10で、ユビキノールというんですが、1日30mgではまったく効きませんでしたが、200mg使うと心不全に効果があるとアメリカで火がついて、逆輸入されたような栄養素です。抗酸化とエネルギーの療法に効果があり、ミトコンドリアには必須です。

ミトコンドリアを動かすにはこんな栄養素が必要だ、という見本のようなものですね。

ミトコンドリアサプリの具体例2

もうひとつ、Seeking Health社のサプリメントをご紹介します。これは非常にシンプルですね。コエンザイムQ10とNADHだけ。これだけでも効くぐらいですから、コエンザイムQ10とNADHの重要性がわかりますよね。

疲れやすい人は、こういったサプリメントから始めてください。ただし、それはあくまで対症療法なので、その下に何があるかということが大事です。

ミトコンドリアはがんにも関わる

これはミトコンドリアサプリの話の続きですが、がんは遺伝疾患か代謝疾患かという議論が昔からあります。がんは遺伝子に傷がついて、そこから発症します。傷がついた遺伝子が分裂して増えていく、という仕組みなんです。

だから、アンジェリーナ・ジョリーさんは遺伝的に、変異型のBRCAという乳がんの因子があったので、予防的に乳房をとってしまいました。これはがんが遺伝疾患だという発想に基づいた行動だと思います。

しかし、本当にがんは遺伝疾患なのでしょうか?がんは100年前にはほとんどありませんでした。もし遺伝疾患なら、昔からもっとあったはずです。

これは、「Cancer as a Metabolic Disease」がんは代謝疾患である、という内容の本にあった図です。正常細胞が分裂すると、正常細胞になります。腫瘍細胞が分裂すれば、当然腫瘍細胞になります。しかしそれは、何が原因なのでしょうか。正常細胞に腫瘍核を入れても、正常細胞になりました。逆に、腫瘍細胞に正常な核を入れ込んでも、腫瘍細胞ができたんです。ということは、核内の遺伝子に起因するものではないはずです。

がんの腫瘍抑制因子はミトコンドリア

がんの究極の主要抑制因子はミトコンドリアです。だから、ミトコンドリアの機能が低下するとがんになりやすいです。ミトコンドリア機能の低い人、疲れやすい人、低体温の人はがんを発症しやすいです。がんを治すためには、ミトコンドリア機能を上げて、身体を暖めるといいという話があります。これはミトコンドリアだけではなく、もう一つの細胞機関である小胞体と重ね合わせて考えると理解が進むと思います。このあたりはとても大事な話です。

人間には、古くなったり傷ついた細胞に自殺してもらう機能があります。この作用をアポトーシスといいます。ミトコンドリアはエネルギーの産生がメインの仕事ですが、アポトーシスのコントロールにも一役買っています。エネルギーの低下とアポトーシスコントロールの低下は同時に起こります。だから、エネルギーの低下は発がんやアルツハイマーにも関係してきます。

アポトーシスは、ミトコンドリアと小胞体が協同してシグナルを出すことによってはじめて行われます。だから、ミトコンドリアと小胞体のどちらかの機能が低下するとアポトーシスが行われなくなって、不要な細胞が出ていかず、デトックスできなくなってしまいます。よって、腫瘍細胞が生き残ってしまうわけです。もともと外部から来たミトコンドリアと、正常な細胞を結びつけているのは小胞体です。小胞体は、たんぱく質の製造工場です。

疲労系疾患はミトコンドリア機能を改善させる

大事なのは、疲労系疾患はミトコンドリア機能を改善させることが大事だということです。俯瞰的に、ズームを変えて、同時に考えていってください。代謝のどこが止まっているのかも同時に考えます。

副腎疲労もミトコンドリア機能低下です。全身症状としては、疲れやすい。臓器レベルとしては副腎機能低下。細胞の状態としてはミトコンドリア機能低下です。

甲状腺機能低下症も、臓器レベルで言えば甲状腺機能の低下ですが、細胞の状態としてはミトコンドリアの低下です。甲状腺ホルモンにはミトコンドリアの数を増やし、機能を高めることがわかっています。

鉄欠乏性貧血も同じです。臓器レベルでは、赤血球数低下、質の悪化ですが、やはりミトコンドリア機能低下です。鉄には、赤血球の中で酸素を運ぶ働きと、ミトコンドリアの中での働きがあります。酸素を運ぶのも、ミトコンドリアの中での働きもエネルギーに関係するので、鉄欠乏性貧血はものすごくエネルギー不足になります。

鉄はエネルギー源ですから絶対に必要ですが、多すぎると活性酸素発生のもとになります。コツは、少量使って、利用効率を最大限まで上げることです。

サプリメントを使わないミトコンドリアアプローチ

ミトコンドリアの働きを良くする方法は、サプリメントを使うか使わないかで大きく2通りに分けられます。サプリメント以外では、運動が重要です。運動刺激によってミトコンドリアは増えます。

新しいミトコンドリアを作り出すために重要なのは、断食です。空腹時間を作ると、脂肪が燃えるようになります。脂肪が燃える時に、ナイアシンが体内で作られます。実はナイアシンがミトコンドリアを新生するスイッチになっています。

DNAの修復もナイアシンです。DNAの修復は寝ている間に行われるので、寝る前に少量飲むといいです。多すぎると肝機能障害やナイアシンフラッシュを起こしたりします。ナイアシンは量によって効果が変わる、とても興味深いビタミンです。

小胞体ストレスを解消すること、については、また次回の小胞体のところで詳しくご説明します。

 治療には順番がある

宮澤賢史 · 2019年12月27日 ·

根本原因(が及ぼす体内のシステムの不具合)の治療は、ピラミッドの下層から上にかけて順番に行うのが原則です。ここではなぜこのような順番で治療を行うべきなのか、その理由をお話しします。

脳機能は様々な影響を受ける

脳機能、メチレーションの調整がピラミッドの最上段にあるのは、それだけ脳機能が様々な影響を受けやすいことを表しています。色々なことを全部終ってからでないと、脳の調整を何度もやり直すことになります。

例えば、脳は最もエネルギーを使う臓器の一つです。ですから、脳にアプローチする前に、必ずミトコンドリアをある程度動かしておく必要があります。

副腎も非常に脳機能に関係します。HPA軸といって、コルチゾールが多すぎると海馬という記憶に関する部分が委縮します。また、副腎疲労のせいで活発な性格が隠れていることはよくあります。このような場合、治療が進むにつれてだんだんと性格が変わっていきます。人格が変わったように元気になって、躁病のようになってしまうこともあります。ですから、治療開始時のサプリメントと、副腎が回復されてきた時のサプリメントでは処方を少し変えなければなりません。

炎症も脳機能に大きな影響を与えます。炎症がうつ病の原因だという報告は多いです。特に自閉症、子供の場合は炎症の影響をすごく受けやすいです。自閉症の場合は最初から脳の炎症を止めるようにアプローチするのを意識します。食事指導がすごく厳しくなります。グルテンフリー・カゼインフリーに加えて、グルタミンフリーにもします。グルタミンは、興奮性の脳の神経伝達物質であるグルタミン酸の前駆体です。

重金属などの毒素もかなり影響しています。歯にアマルガムが入っている人は、様々な経路で体内から脳に入ってきます。アマルガムの水銀は、常に蒸発していますから蒸気水銀としても脳に入ります。血行にも乗りますし、三叉神経を逆行して直接脳にも行きます。

低血糖はエネルギー不足を引き起こす

低血糖対策はとても大事です。これは血糖曲線です。これは糖負荷試験といって空腹時にブドウ糖を75g飲んで、血糖値とインスリンの量を測る検査ですが、普通の人は血糖値が緩やかに上って下がります。

しかし、この方は急激に130まで上がって、急激に57まで下がっています。ジェットコースターのようですね。下がった時に、イライラしたり眠くなったりします。これを低血糖症と言います。エネルギーレベルがめちゃくちゃになって、脳にかなり影響します。ですから、エネルギーレベルを平坦化して、落ち着かせてから脳にアプローチしないといけません。

副腎ホルモンケアがミトコンドリアを安定させる

低血糖症はもともとは副腎疲労が原因で起きます。副腎はコルチゾールを出して、血糖値を保ってくれる働きをしています。副腎疲労がある人は、きちんとエネルギーが供給できません。ですから、ミトコンドリア対策をする前に、ホルモンの方を根本的にやるということです。

エネルギーとデトックスの関係

これはミトコンドリアの中でぐるぐる回っているクエン酸回路というものです。ミトコンドリアの中でこの回路がぐるぐる回って、そこからエネルギーが作り出されています。必要な栄養素が黄緑色で示されています。亜鉛、鉄、ビタミンB群などですね。

回路が滞りなくまわるためには、様々な栄養が必要です。一方でこの黒いところは、それを邪魔するものです。クエン酸からシスアコニチン酸になるために使われる酵素がありますが、これはフッ素・水銀・ヒ素・アンチモンによって阻害されます。アルミニウムによって阻害されるところもあります。

クエン酸からαケトグルタル酸に至るまでのこの部分は(山手線でいうと駒込から東京駅くらいまで)は、非常に活性酸素の害を受けやすいです。重金属によって活性酸素がたくさん発生すると、このあたりはすべて止まってしまいます。

この状態をみるのが、先日ご紹介した尿有機酸検査です。まずミトコンドリアをちゃんと動かそうと思ったら、栄養を入れるだけでなくデトックスもしようということです。ですから、デトックスがエネルギーよりもピラミッドの下層になります。

性ホルモンより副腎ホルモンのケア

ホルモンの中にもヒエラルキーがあります。性ホルモンよりも副腎ホルモンを先に治療するのには理由があります。コレステロールからホルモンができるんですが、コルチゾールと性ホルモン、両方ともコレステロールからできます。コルチゾールが少なくなる副腎疲労の段階になると、コレステロールの多くがコルチゾールの生成に回ってしまい、性ホルモンに行かなくなってしまいます。

生命維持に大事なのはコルチゾールですから、生命反応を少なくしてすべてコルチゾールに傾けます。これをコルチゾール・スティール症候群といいます。わかりやすくいうと、コルチゾールが性ホルモンにまわるはずの材料をを盗んでいってしまうのです。(正確には異なりますが、そう理解して頂くのがわかりやすいと思います。)

副腎疲労ではPMSなど、女性ホルモン・男性ホルモン低下の症状が頻発します。これに対して性ホルモンの補充だけしてもだめでしょう。最初にするべきは、副腎へのアプローチです。コルチゾールを正常に戻してあげることです。そうすると、性ホルモンの方も自然と元に戻ってくる人が多いです。

環境毒素がホルモンに与える影響

次は、ホルモンと水銀の関係です。副腎ホルモン・性ホルモンをはじめ、すべてのホルモンはその受容体をことごとく、水銀によってブロックされます。これは、アンドリュー・カトラー先生の書かれた「Amalgam Illness」という本に載っていた図を日本語化したものです。アマルガムの害について書かれた本です。

甲状腺機能がもし低下していたら、天然の甲状腺ホルモンなどで補充してあげることも身体の代謝にとっては必要なのかもしれませんが、デトックスをちゃんとやったら、それが必要なくなる可能性があるということです。重金属はホルモンを支配しています。

デトックスの前に腸内環境を整える

人間の解毒というのは、3段階にわかれています。フェーズ1は活性化で、脂に溶けて安定している毒素を活性化して水に溶けやすくする段階、フェーズ2は抱合といって、水溶性のグルタチオンと抱き合わせてやはり水溶性にする段階、そしてフェーズ3は排泄で腎臓や肝臓から腸を通って体外に出す段階です。

体の中の毒が抜けないのは、脂の中で安定化してしまっているからです。血液中の毒や腸内の毒は、人間は排泄することができます。出せないのは、脂の中の毒です。ですから、脂肪がたくさんある人は毒が溜まりやすいです。

これらの3つのフェーズのすべてに関わるのは腸です。デトックスは腸内環境に大きく左右されます。だから、まず最初に腸内環境を治さないと解毒がうまくいきません。

水銀には有機水銀と無機水銀があります。有機水銀の80%は肝臓から胆汁に乗せて腸から排出されていきますから、腸内環境が悪ければまた腸から吸収されてしまうし、毎日排便がない人はなかなか体外に出ていきません。本格的なデトックスの前に腸内環境を治すことが大切です。

デトックスの前に炎症を抑える

デトックスの前には、炎症を治すことも大事です。体内に炎症があると、抱合に必要なグルタチオンがすべて持っていかれてしまうからです。

グルタチオンは抱合に関わる最も強力な因子ですが、同時に、強力な抗酸化物質でもあるので、体内に酸化ストレスがあるとそちらを還元するためにすべて使われてしまいます。ですから、体内でグルタチオンが十分に使えるように炎症を押さえ込んでからデトックスに入ることが大切です。

具体的には、腸内環境を整えながら、耳鼻科や歯科いってくださいね、とアドバイスします。耳鼻科で上咽頭炎を、歯科で根尖感染を治してきていただきます。特に脳のデトックスをするには、首から上の炎症を完全にとってしまうことです。脳に近い炎症がとても関係してきますから。

リーキーガットとリーキーブレイン

腸と脳はどちらを先にアプローチすべきかというと、両方です。脳がちゃんとした人でないと食べ物がちゃんとできないですよね。栄養療法は食事療法です。食事療法ができないと、腸が治りません。腸が治らないと、全て上手く行きません。ですから、対症療法的に脳にアプローチしてあげることは重要です。ただし、根源的には下から登っていかないといけません。

リーキーガットとは、腸に穴が開いてしまうという概念です。たんぱく質の中のグリアジンというものがあります。小麦を避けてほしい理由は、グリアジンがゾヌリンタンパク質を作らせて、そのゾヌリンが腸のタイトジャンクションを開いてしまうからです。タイトジャンクションとは、粘膜細胞と粘膜細胞の間に存在するバリアのことです。タイトジャンクションが開くと、余計なものが体内に入ってしまい、様々な免疫反応を引き起こしてしまいます。これがリーキーガットです。

入ったゾヌリンはそのまま脳の方まで行きます。問題なのは腸のタイトジャンクションと脳の血液脳関門(BBB: blood brain barrier )はほぼ同じ構造をしているということです。血液脳関門は脳の中に異物が入らないようにしているバリアですが、腸と同様にゾヌリンで開きます。だから、ゾヌリンが頭の方に行った場合、そのまま脳の中に入ってしまいます。だから、リーキーガットがリーキーブレインも引き起こします。

もちろん小麦アレルギーもあるかもしれませんが、それだけでは説明しきれないグルテンの問題点があります。特に子供は感受性が高いので、グルテンフリーにすると異常行動が治まったりします。

アルツハイマー病の原因と対策

アルツハイマー病に効く薬はありません。アルツハイマー病はβアミロイドの蓄積が原因だと言われて、ベータアミロイドを減らすための薬が全世界でたくさん開発されましたが、ことごとく失敗しました。どこの国の政府も主張していて、フランスは半年前にアルツハイマーの薬を保険外適用にしました。理由は、効かないからです。

アメリカのアルツハイマー病学会も薬は効かないと公式声明を出しています。薬をたくさん使っているのは日本くらいです。なぜ薬が効かないかというと、ベータアミロイドの蓄積は原因ではなくて結果だからです。アルツハイマーの原因には個体差があるからです。原因は人によって様々で、毒物のせい・栄養不足のせい、炎症のせいなどです。だから、アルツハイマーも個体差を見据えた栄養療法で治していかないとうまくいかないんです。

それをうまく説明しているのが、この「アルツハイマー病の真実と終焉」という本です。アルツハイマー病の原因は、この本によると大きく3つに分かれていて、この3つのうちのどれにあたるのかを突き詰めて、それにアプローチしていくといいよ、と書かれています。書かれていることはかなり複雑に見えますが、根本治療のピラミッドを理解していれば、治療の順番に困ることはありません。

治療のステップ

ピラミッドは5段階ありましたが、重症な人ほど4段目(デトックス)と5段目(炎症、腸内環境)、そして低血糖の治療に時間をかけた方がいいです。

栄養療法はサプリメントと食事ですが、栄養の吸収が悪い人は、全然うまくいきません。時間をかけて、吸収できるような素地を作ってあげるのが、結果的には近道です。消化できない栄養は腸を荒らすだけです。代謝が低く、消化酵素が出ていないわけですから。腸が荒れて、お腹が膨れて、まったく治りません。まずは、合わない食べ物をやめることです。

胃腸のケアに集中すること、副腎ケアに集中して低血糖をなくすこと。それだけでだいぶ、人の持っている自然治癒力が働いてきます。

サプリメントとしては副腎サプリと乳酸菌と消化酵素などで様子を見ます。ある程度素地が出てきたら、代謝が高くなってくるので、デトックスを始めようか、ということになります。デトックスは基本的に攻めの治療です。ここからはサウナや運動を混ぜていってもいいと思います。散歩したら疲れて動けなくなっちゃう、という人はまだそこまでやらない方がいいということです。

根本治療ピラミッドの使い方

宮澤賢史 · 2019年12月13日 ·

いろいろな原因を見ていくと、栄養が不足する原因は共通したいくつかのものに収束してくるということにお気づきだと思います。これらの、いくつかの根本原因にアプローチすると、なぜか他のことが芋づる式によくなってきます。

大事なのは、根本原因を考える癖をつけることです。根本原因を考える癖をつけると、症状からデータを推測できるようになってきます。慣れてくると本当にわかるようになってきます。

6つの根本原因治療を積み重ねていく

多くのオーソモレキュラー医が様々な意見を持っていますが、彼らが主張する根本原因で共通しているのは脳機能、エネルギー(ミトコンドリア)、ホルモン、肝臓(デトックス)、腸内環境、炎症の6つです。

これは私が普段の治療に用いている治療ピラミッドです。過去の経験から、治療内容と治療の順序を大きく5つにわけました。下から治療を積み上げていくのでピラミッドと勝手に命名しました。

なぜピラミッド状になっているかというと、下にあるものの方がより深い根本原因になりやすいからです。下から治療を組み上げていくと、私の経験上うまくいくことが多いです。エネルギーはミトコンドリアの改善法です。あとは、ホルモンバランスを鍛えましょう。解毒をしましょう、腸内環境を整えて身体の炎症を取りましょう。だいたいこんなところだと思います。

治療には順番がある

根本原因の治療としては、下から順番に積み上げていきます。宮澤医院の治療は実際にこのようにやっています。大事なのは、腸内環境を整えて炎症を抑えたらこの治療は終わり、というわけではなく、その治療を維持しながら上に積み上げていくことです。自分なりの治療のピラミッドを完成させていただきたいです。

症状と根本原因の関係

まずは腸内環境と炎症からチェックしましょう。問診で腹部膨満や下痢などにチェックがたくさんつく人は、腸内環境が悪いんだとわかりますね。想像がつくのではないかと思います。

次は環境毒素のチェックです。環境毒素が周囲に多く、解毒力が弱まっている場合は、デトックスが必要です。例えば水銀なら魚と歯。歯はアマルガムです。子供の場合は少量のワクチンも関係するかもしれません。鉛なら水道管、ヒ素なら海産物や飲料水です。

あと多いのは、カビ毒と有機溶剤です。カビ毒は築100年以上の家や、洪水などで一度浸水した家、クーラーの掃除を5年以上していない人は注意が必要です。なかなか治らなかった人が、家を掃除してカビを除去したら急に良くなったという話もあります。有機溶剤は排気ガス、ガソリン、クリーニング、農薬などです。

朝が起きられない人、疲れが取れない人、ストレスを前より感じやすくなった人は副腎に疲れがあります。

次はホルモンです。甲状腺は身体の代謝を司っていますから、甲状腺機能が低下すると、低体温とむくみ、そしてうつ症状がきます。体の痛みが出る人もいます。早朝の基礎体温が36.5度いっていない人は、何らかの代謝の低下があります。甲状腺機能をチェックしてみてください。

女性ならPMSや生理不順があると性ホルモンへの影響が出ている兆候と言えます。性欲の低下も分かりやすい指標です。あと、エネルギーは疲れやすさの指標ですから比較的わかりやすいでしょう。

検査と根本原因の関係

検査とピラミッドの関係はこのようになっています。問診と自己診断である程度あたりがついたら、そこが本当なのかどうか検査で確かめてみるといいですね。

例えば、腸内環境を調べるのには尿有機酸検査が良いと思います。僕が普段行っているのは、尿有機酸検査と、包括的便検査です。包括的便検査は本当に具合が悪い人はやったほうが良いですが、ちょっと専門的すぎるので、普通は尿有機酸検査で良いと思います。

尿有機酸検査は腸だけではなく、ミトコンドリアも、ビタミン・ミネラルの不足、三大栄養素の代謝、メチレーション、ドーパミン・セロトニン、すべてわかるので、尿有機酸検査はすごくお得な検査です。

重金属に関しては、ぜひ毛髪ミネラル検査を受けてください。毛髪ミネラル検査は髪の毛を300本とるだけなので、比較的簡単です。毛髪ミネラル検査でわかるのは、ミネラルのバランスと重金属の蓄積、排泄力です。腸内環境やストレス状態もわかるので、見方を覚えると非常にわかりやすい検査です。

この表に載っている毛髪ミネラル検査を見ると、ミネラルが左によっています。足りないということです。ミネラルが全般的に足りていないということは、腸内環境が悪くてミネラルの吸収が悪いということです。毛髪ミネラル検査を見るだけで、この方は腸が悪いな、とわかりますね。

脳やホルモンなどは、いろいろな検査があります。参考程度に見ておいてください。尿中ホルモン検査は副腎と性ホルモンが見られて良い検査で、一番正確な検査です。しかし、24時間尿を容器に貯めなければならないとか、女性の場合は生理から3日目にやらないといけないとか、いろいろな制約があってかなり大変です。副腎が元気になってきて、乳がんの予防等に興味がある場合にはすごく良い検査です。

副腎に関しては、唾液中のコルチゾール検査というものがあります。血中のコルチゾールはなかなか下がりませんが、唾液中のコルチゾールは敏感です。副腎疲労を測ることができるので、やれる方はやってもいいかもしれません。比較的手軽にできます。

甲状腺に関しては血液検査でTSH、T3、T4を測れば大体わかります。基準値と正常値は違います。日本の検査会社の基準値はすこし広すぎるので、基準値の範囲内なら安心だと思わないでください。TSHを測っている人は、0.5から2までの間に入っているか確認してください。2以上は明らかに甲状腺機能が低下していると思います。基準値は0.5から5くらいですが、5だと多すぎます。

特に脳機能を改善する指標として、メチレーション遺伝子検査というものがあります。脳に関しては遺伝子の影響が比較的強いので、脳機能を極めたい方は遺伝子の検査をしてもいいかもしれません。

実際の例

根本原因ピラミッドの使い方を実際の症例で見てみましょう。今回はアレルギー体質の改善をゴールとした場合のお話です。目的によって、ピラミッドのどこを重点的に抑えるべきかとが見えてきます。

根本原因ピラミッドの使い方を実際の症例で見てみましょう。今回はアレルギー体質の改善をゴールとした場合のお話です。目的によって、ピラミッドのどこを重点的に抑えるべきかとが見えてきます。

1. アレルギー体質へのアプローチ

1-1.ステロイドの問題は免疫抑制してしまうこと

これはステロイド発売後のアトピーの有病率を調べると意外なことがわかります。1970年代には5歳以下に多く、年齢が上がるとともに減りました。20歳を越えると、ほとんどいませんでした。しかし、1990年代になるとより高い年齢で有病率が上がるようになりました。

ステロイド外用剤が発売されてから、ステロイドが世の中に浸透すればするほど、高年齢のアトピー性皮膚炎の有病率が高くなっているということがわかります。なぜなら、ステロイドはアトピーの根本的な治療薬ではないからです。ステロイドは免疫抑制剤です。アトピー性皮膚炎は炎症なので、炎症は抑えなくてはいけないのですが、ステロイドの問題点は免疫まで抑えてしまうことです。

1-2. アレルギー性疾患の根本的な治療

アレルギー性疾患の根本的な治療は何でしょうか。

答えは免疫の正常化です。そして、免疫を正常化させるためには、免疫を抑制してはいけないのです。アトピー性皮膚炎に限らず、自己免疫疾患・アレルギー疾患・アレルギー体質をより改善させようと思ったら、根本原因として、免疫を正常化させようと考えてください。

免疫は何もなくて、ただ発動するということはありません。何らかの発動原因があります。例えば炎症です。風邪やリウマチのようなわかりやすい炎症だけではなく、身体の中には潜在的な見えない炎症がたくさんあります。炎症は万病の元、と言われるようになってきました。炎症があるから免疫が亢進してしまうんです。身体の炎症を抑えましょう。

これがアレルギー体質の改善に対する根本的なアプローチです。特に免疫疾患に対するアプローチとして有効なのが、上咽頭と腸です。体の末梢神経の大部分が集中しているからです。

特に腸は、末梢神経の70~80%が集中しています。腸は免疫の塊です。食べ物が敵なのか味方なのかを判別しなければならないので、免疫が異常に発達しています。パイエル板が敵と味方を判別しています。

同様の仕組みが上咽頭にもあります。口を開いて見えるのは中咽頭までです。上咽頭は鼻のちょうど奥の方です。上咽頭はアデノイドといって、鼻からくる空気と口からくる空気の交差点になっていて、免疫が完全にむき出しになっているところがあります。上咽頭と腸の炎症は臨床上症状が出にくく、わかりにくいことも問題です。

腸の炎症は、40歳以上だと、半数以上は自覚できません。若い人は過敏性腸炎のような症状が出ることもあります。上咽頭炎も、自分では気が付かない炎症のひとつです。

  • いつも口を開けている
  • 慢性の鼻炎がある
  • 食べるときに音を立てる
  • 口を閉じると梅干しのようなしわができる
  • 鼻咽頭から喉にたんが流れる
  • 口呼吸である
  • 朝起きると喉がひりひりする

特に最後の3つの症状がある場合、99%以上の確率で上咽頭炎があります。耳鼻科で検査を受ける必要があるでしょう。

上咽頭や腸は免疫が集中しているところですから、ここに炎症があると、炎症性物質・反応性の免疫物質が全身をまわります。この仕組みをリンパ球のホーミングと言います。ひとつの炎症が全身に飛び火して、全身が炎症体質・自己免疫体質になってしまうんです。だから、免疫を正常化するためにはまず、炎症を止めることが重要です。

濃くなっているところは、特に重点的にアプローチしなければならないところです。

アレルギーを治したいなら、腸を念入りにやってください。炎症を念入りに止めてください。

1.3 副腎ケアも忘れずに

もうひとつアプローチしないといけないのは、副腎です。副腎はコルチゾールという炎症を止める物質を出しています。薬で言うとプレドニン(ステロイド)があります。

ステロイドを体に投与すると副作用が心配だという人もいると思います。しかし、ステロイドは体内でも作っているんです。体内で作る量だと適切な量だけ出ているので、副作用がありません。コルチゾールは身体に必要な物質なんですが、副腎疲労だと分泌できません。だから、炎症が抑えきれないんです。

アトピーでも慢性の喘息でも、副腎疲労を起こしていますから、炎症を抑えきれていません。だから、副腎アプローチが重要です。

1.4 免疫寛容を起こさせる

もう一つの手段は、免疫寛容を起こさせるということです。免疫寛容とは、わざとアレルギーの物質を与えてあげて、自分の免疫が発動するのを毎日繰り返すうちに、自分の体のほうがその物質に慣れて反応しなくなってくる、という現象です。

免疫寛容を起こさせるためには、一過性に免疫を上げなければなりません。一般的な抗アレルギー薬や、免疫抑制剤であるステロイドを使っていると、免疫が上がらないので、免疫寛容が永久に起こりません。

どうしても治らない場合は、免疫に対する体の準備をちゃんと作っておいてから、一過性に免疫を上げて、免疫寛容を起こさせるという手を使います。宮澤医院では、リウマチの人にこの方法を使っています。

2. 疲労が主訴の場合

疲労改善の場合はどこにアプローチすればいいかというと、ミトコンドリアです。ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを作っているところです。ミトコンドリアの流動的に形は変わるようです。このたくさんあるひだになっているところでエネルギーを作っています。疲れやすいということはすなわち、細胞のミトコンドリアの働きが悪いということです。

2.1 ミトコンドリアが多い場所

臓器別に言うと、ミトコンドリアは脳と筋肉に多いのです。ミトコンドリア病といって、遺伝的にミトコンドリアの働きが落ちてしまいう病気があります。昔はミトコンドリア脳筋症と言いました。脳のうつのような症状と、筋力低下の両方が起きます。

ミトコンドリアは心臓と肝臓にも多いです。シトクロムという赤茶色の鉄の酵素があるので、赤く見えます。焼鳥のレバーやハツを見ると赤いですよね。ミトコンドリアが多いからです。

ミトコンドリアが最も多いのは卵子です。肝細胞には5000個ですが、卵細胞には10万個もあります。不妊の一番の原因は、ミトコンドリア機能の低下症と、自律神経の過緊張です。自律神経の過緊張があると、ホルモンバランスに不具合が生じるからです。

人工授精をしてもうまく行かないのは、卵の元気がないからです。卵がそのものが元気でないと、着床して産まれるだけの力を持っていないと、どれだけくっつけてもだめです。関西の方ではミトコンドリア移植手術をやっているクリニックもありますね。

疲労体質改善の根本はミトコンドリアです。しかし、疲労回復はミトコンドリアサプリだけ飲んでも良くなりません。

なぜならミトコンドリアは、いろいろな影響を受けているからです。全部やっていった方が良いです。

2.2 ミトコンドリアに必要な栄養

ミトコンドリアは栄養で動いています。ビタミンB群、COQ10、鉄、などなど。大事なのはミネラルです。亜鉛、マグネシウム、鉄が重要です。ミネラルは、サプリメントなどで摂ればすぐ効くというものではありません。ミネラルの代謝が追いついていなくてミトコンドリアが動いていない人は多いです。ミネラルは生体利用性とバランスを考えなければなりません。

ビタミンは摂れば摂っただけ結果が出ます。しかし、ミネラルは吸収が悪いので、そのまま下って下痢になったりします。腸が悪いとミネラルは効きません。ミネラルが足りないと思ったら、最初にやることは、ミネラルの補給ではなくて、腸内環境改善です。食物繊維をちゃんと摂って、腸内で発酵させるようにします。すると、短鎖脂肪酸ができます。この短鎖脂肪酸がミネラルをキレート、捕まえて腸の中に引き込んでくれるんです。

ミネラルは、バランスを考える必要があります。ミネラルは拮抗します。例えば、亜鉛と水銀は体内で反発します。だから、水銀が体に溜まっている人は亜鉛の働きが悪いということです。すると、マグネシウムの働きも悪くなります。特に水銀は、いろいろな金属と合金を作りやすいです。いろんなミネラルとくっついて、その働きを止めてしまうのです。ですから、デトックスしてあげたら急にミネラルの働きが良くなって、色々うまく回り始めるということはよくあります。

2.3 副腎と甲状腺ホルモン

そして、ホルモンもすごく大事です。ミトコンドリアに鞭を打っているのは、副腎、特に甲状腺ホルモンです。甲状腺機能が低下していたら、いくらミトコンドリア対策をしていてもうまくいきません。そして、甲状腺機能に影響が出ている人は、重金属などの有害物質に暴露していたりします。

何度も言うように、下から順番にやっていく必要があります。ホルモンにもヒエラルキーがあります。順番が決まっているので、副腎から甲状腺、性ホルモンの順にやるのが一番いいと思います。対症療法的にやってもいいんですが、根本的に変えるには下から積み上げなければなりません。副腎症状が出ている場合は、対症療法として副腎サプリを摂っても良いんです。しかし根本的には下からやっていかないと、ずっと副腎サプリがやめられない、ということになります。

問診票と検査からピラミッドを組み立てて、甲状腺と毒物蓄積の問診や検査に該当しなければ、そこは抜いていけば良いんです。下層のケアを行いながら、上のケアを積み上げていきます。

だいたい見えてきたでしょうか。デトックスのやり方や、腸内環境の整え方は、ネット上にたくさんあります。いい動画もたくさんありますので、参考にしてみてください。

個体差から根本原因へ

宮澤賢史 · 2019年11月26日 ·

いきなり根本原因にアプローチと言われても戸惑う人も多いとお思います。栄養療法の考え方にはステップがあります。まずは食事が大前提。それができたらサプリを組み合わせます。その考え方が理解できたら個体差を学んでください。そして最後が栄養が足りなくなる原因へのアプローチです。順番に見て行きましょう。

1

1 前提 「良い食事をとる」

栄養療法ガイドラインの最も前提にあるのは、良い食事を摂ることです。普段の不摂生な生活で足りない栄養をサプリメントで補おう、というのは栄養療法とは違います。食事が8割くらいをしめます。

2 第1段階「サプリメントをうまく使う」

サプリメントは栄養が濃縮されているので、普段の食事ではとても摂れない量の栄養を摂ることができます。これが食事と異なる部分です。サプリメントは栄養の量の効率化の道具です。これをドーズとレスポンスの関係、ドーズレスポンスといいます。栄養は量によって臨床的な効果が違ってきます。

2-1ビタミンB1

例えば、ビタミンB1が不足するとなる病気で有名なものは「脚気」です。ビタミンB1はエネルギー代謝に不可欠のビタミンなので、欠乏すると心臓が浮腫んで、神経にも影響が出ます。膝の腱反射が起きなくなります。これを脚気と言います。ということは、ビタミンB1を摂るとエネルギーがわいてきて、ミトコンドリア機能を活性化することができます。

2-2ビタミンB3

ビタミンB3はナイアシンと呼ばれているビタミンです。ペラグラを予防するために使われますが、その用途であれば30mgもあれば充分なのです。しかしビタミンB3を3000mg摂ると、統合失調症に効果があるということがわかっています。分子栄養学の始祖と呼ばれるエイブラハム・ホッファー博士は、精神科医になる前に生化学者だったので、ビタミンの特性をよく理解されていて、ビタミンB3を統合失調症患者に使ったら、結構な割合でよくなりました。ただそれは、30mgでは効かず、最低でも1g以上投与する必要がありました。なぜナイアシンが統合失調症に効くかというメカニズムは結構おもしろいので、よかったら調べてみてくださいね。

2-3葉酸

葉酸サプリメントといえば、妊婦さんが二分脊椎症予防のために飲むものですね。二分脊椎とは、赤ちゃんが生まれてくる時に、脊髄や脊椎が癒合不全を起こしている症状です。症例は少ないと言われていますが、実際には統計に出てこないだけで、多く起こっていました。そこで、厚生労働省がビタミンB12と葉酸の摂取を推奨することによって、二分脊椎症はだいぶ減ってきました。ビタミンB12と葉酸は、DNAに働きかけて、神経の発達を促す働きを持っています。そんな葉酸ですが、10倍くらい摂るとメチレーション回路を動かすことができ、身体の解毒に役立ったり、がんを予防したりすることができます。

2-4ビタミンC

最も有名なのはビタミンCでしょう。ビタミンCはできるだけ大量にとって問題ないビタミンです。多く摂り過ぎたとしても副作用は下痢くらいです。100mgあれば、壊血病は十分予防できます。壊血病とはビタミンCが欠乏して、コラーゲンが作れなくなって、血管が弱くなって全身から出血する病気です。大航海時代、多くの船員が壊血病にかかりました。これはライムを食べるという対策によって治ったそうです。

一方、ビタミンCをグラム単位で摂ると風邪の予防になることがわかっています。10g摂ると、風邪の症状が80%程度減ります。さらに、50~100gを点滴すると、がん細胞を殺傷することがわかっています。壊血病、かぜ、がん。量を変えると、効果が変わってきます。

2-5ビタミンD

ビタミンDは昔から、「骨のビタミン」と呼ばれ、くる病に関係があることが知られていました。赤ちゃんの時から日光に当たらないで過ごすと、骨が曲がってしまいます。くる病は北欧に多い病気です。大人になってから起こると、骨軟化症になります。

しかし最近DNAの解析が進み、ビタミンDの受容体がほぼ全身の臓器にあることがわかりました。ビタミンDをより多く投与していると、特に乳がんと大腸がんをはじめとした、がんの予防に有効だということもわかってきました。ビタミンDは一般的には血中濃度で測りますが、ある一定の濃度を超えると明らかに、がんやリウマチの予防効果があると言われています。ビタミンDの受容体がうまく働く人とそうでない人で、ビタミンDの必要量は異なります。

まとめて書くと、この様な表になります。このように、ビタミンは至適量を使うと、通常の予防効果を越えた新たな効果を得ることができます。

3 第2段階「検査をして足りない栄養を知る」

検査して足りない栄養を摂ります。皆が同じ栄養を摂るわけではありません。自分にはこの栄養が足りないからこれを摂る、ということが大切です。栄養療法で1番失敗するパターンは、人に言われたことを鵜呑みにすることです。

「テレビや雑誌で言っていたら」や「権威のある人が言っていた」などのことでもそのまま鵜呑みにせず、自分の頭で咀嚼して、最終的にそれを取り入れるかどうかは自分で判断して決めてください。もし自己責任で失敗したとしても、自分の大きな教訓、知恵になりますから。

栄養療法を学びはじめの方は、血液検査の結果を見て、足りないものを補充していくというやり方を覚えることが良いでしょう。これから血液検査の結果の、LDLコレステロールの見方についてお話します。栄養療法的には、一般的な医療の観点だけではなく、何故この数値になっているのかという根本原因まで考える必要があります。

3-1LDLは胆汁とホルモンの材料

LDLというのは、Low density lipoprotein、つまりコレステロールを運ぶタンパク質のことです。健康診断でよく測りますよね。

HDLは、いわゆる善玉コレステロールです。全身の余ったコレステロールを回収する掃除屋なので、一般的にそう呼ばれています。一方で、LDLというのは、いわゆる悪玉コレステロールです。LDLは、肝臓から全身にコレステロールを配る役割を担っています。配る途中で、血管の壁について酸化されると、動脈硬化の因子になります。したがって、一般的にはLDLは低いほうが動脈硬化を起こしにくいので良いとされています。高ければ下げるのが一般的な医療方針です。そのための薬はたくさん発売されています。

しかし、分子栄養学的な解釈は少し違います。分子栄養学的には、LDLは胆汁とステロイドホルモンと細胞膜の原料として、とても重要な役割を担っています。コレステロールの80%が胆汁酸になり、20%がホルモンになります。

胆汁酸は肝臓から分泌されて、胆汁になり、脂肪の吸収に役立ちます。胆汁が出ない人は脂肪の吸収ができません。脂肪を分解するためには、肝臓から出る胆汁と、膵臓から出る脂肪分解酵素のリパーゼが必要です。脂肪は水に溶けませんので吸収するためには脂肪をを乳化させて、水に溶けるようにする必要があります。胆汁が出なければ脂肪が吸収できないので、便が白くなります。

それだけではありません。脂肪酸が足りない人は、脂溶性ビタミン(A、D、E、Kなど)の吸収ができず、見た目にカサカサしてきます。ビタミンAなどは体内では作れないので、大問題です。

LDLコレステロールの20%はステロイドホルモンになります。ステロイドホルモンというのは、化学的に言えばステロイド骨格を持ったホルモンのことです。いわゆるステロイドホルモンの他、性ホルモンもステロイドホルモンです。

3-2コレステロールが低いとどうなるか?

コレステロールが低いと、いったいどうなるのでしょうか。胆汁が出ないので脂溶性ビタミン不足になり、ストレスに弱くなり、コエンザイムQ10が作れないのでエネルギー不足になります。

また、コレステロールが低いと、コルチゾールが出にくくなります。コルチゾールは炎症時やストレスを受けたときに出るホルモンです。コルチゾールが出にくくなってくると、炎症が長引いたり、ストレスに弱くなったり、いったん引いた風邪が治りにくいといった症状が出てきます。

総コレステロールが140以下の人、LDLが100以下の人など、一般的にコレステロールが低い人はうつ傾向が強いことが多いです。また、コレステロールが低い人はコレステロールの合成系が弱いことが多いです。その場合、一緒に作られるコエンザイムQ10も作られなくなります。コエンザイムQ10はミトコンドリアを動かす重要な栄養素なので、足りなくなるとミトコンドリアが働かなくなります。

40歳以上になると製造力ががくっと落ちるので、サプリメントで補充する人が多いです。自分でコエンザイムQ10が作れているかどうかは、血中のコエンザイムQ10を見ればいいのですが、測りにくいです。そこで、血中のコレステロールで代用することができます。コレステロールはコエンザイムQ10と同じ経路で作られるからです。

3-3コレステロールが低い場合の対策

このようなわけで、分子栄養学的に言えば低コレステロールは大問題です。胆汁が出ないので脂溶性ビタミン不足になり、ストレスに弱くなり、コエンザイムQ10が作れなくなってミトコンドリアが働かなくなります。悪いことばかりですね。

対策は脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)と、コエンザイムQ10と、ストレス対策として副腎サプリメントを摂ってあげればいいです。もちろんこれは個体差がありますが、LDLが低い人はこのようなサプリメントを摂るといいと思います。

3-4 MCVは赤血球の大きさ

MCVは、赤血球の大きさを表す血液検査の項目です。正確には平均赤血球容積と言います。赤血球というのは中に鉄が入っていますから、鉄が少ないと、赤血球の容積が少なくなるのです。反対に、赤血球の容積が大きくなる時は、ビタミンB12が足りない時です。ビタミンB12は赤血球の中の、DNAの合成に関わっています。ビタミンB12が足りないとDNAの合成がうまくいかなくて、結果的に赤血球が大きくなってしまいます。

MCVはだいたい90くらいが正常です。80くらいだと鉄欠乏性貧血、100くらいだと大球性貧血(ビタミンB12が足りないための貧血)です。栄養学的にはどう解釈するかと言うと、同じくMCVが高い場合は赤血球容積のことを表しています。しかしさらに、ビタミンB12と葉酸が関係してきます。ビタミンB12と葉酸は手を取り合って働くものですから、片方だけだとうまくいきません。

足りていないならビタミンB12と葉酸を摂ればいいんじゃないかとお思いかもしれませんが、それだけでは解決しない人がたくさんいます。メチコバールというビタミンB12の薬があります。末端神経障害、手足がしびれるという人に出されているんですが、効かないことで有名です。

なぜかというと、ビタミンB12の使い方が上手くないんですね。ひとつは、ビタミンB12だけでは効かないということです。葉酸の助けが必要です。もうひとつは、ビタミンB12は細胞の中に入り込まないと効かないからです。注射しても細胞の外にしか届きません。細胞の中に入るためにはリチウムが必要です。

だからMCVが高い場合は、栄養的には葉酸が活性化していないということが考えられます。一般的な解釈と栄養的な解釈は異なりますが、一般的な解釈でもメカニズムを突き詰めていけば、摂るべき栄養素が明らかになってきます。

4 第3段階「サプリメントが効かない理由をつぶす」

第3段階として、効かない理由を潰していきます。サプリメントは栄養が異常に大量に入っているので、体の中の錆びついた歯車を回す力を持っています。

もしサプリメントを摂って身体が軽くなった・目が見えるようになった、など調子が良くなったのなら、その栄養が媒介している回路に問題があるということです。人間の身体はブラックボックスですから、実際にサプリメントを採ってみて結果を見ることもあります。治療的診断といいます。

何故そこの回路が細くなっているのか、ボトルネックになっているのかを考えて改善していけば、回路がスムーズにまわるようになります。最終的には、たくさん必要だったサプリメントが不要になっていくはずです。最終目標はサプリメントのいらない身体になることです。

4-1 LDLが低くなる根本原因

LDLが下がっていた場合、対策としてはビタミンやコエンザイムQ10や副腎サプリを飲めばいいんですが、根本原因を考える必要があります。そもそも何故LDLがが低下しているんでしょうか?

原因1:タンパク質の代謝が悪い

LDLは、正確にはlow density lipoprotein(ロー デンシティ リポプロテイン)と言います。つまり、LDLは正確に言えばコレステロールではなく、タンパク質なんです。LDLが低くなるのは、タンパク質の代謝が悪い人です。

タンパク質は体の中でリサイクルを繰り返されていますが、外から摂らなければなりません。特に消化酵素や胆汁が出ていない人、胃酸の分泌が悪い人はタンパク質が消化吸収不良になり、その結果LDLが下がってきます。

原因2:ミトコンドリア機能の低下

もう一つは、ミトコンドリア機能の低下です。ミトコンドリアはエネルギーの産生工場です。ATPという体内のエネルギーをたくさん作っています。

コレステロールは糖質・脂質から合成されますが、その合成過程でエネルギーをたくさん使います。だから、エネルギー不足(ミトコンドリア機能低下)だと、コレステロールがうまく作られません。

だからつまるところは、ミトコンドリア機能を上げて消化吸収能力を上げてあげようということです。そうすると徐々にコレステロールが上がってきます。コレステロールが上がれば、ビタミンA・D・E・Kを飲まなくても良くなってきます。

4-2 GOTとGPTはビタミンB6を補酵素とする酵素

GOTとGPTは、肝臓の細胞の中に入っている酵素です。肝臓の炎症があると、肝臓の細胞が破壊されて血中に逸脱してきます。ですから、これらは逸脱酵素と呼ばれています。一般的な解釈としては、GOTとGPTは肝臓の炎症マーカーです。GOTが有意に高い場合はアルコール性肝炎です。GPTが有意に高い場合は脂肪肝のことが多いでしょう。

しかし、栄養的に言えば、高いことではなくて低いことが問題になります。なぜならば、これらは酵素だからです。体の中の代謝は酵素によって動いています。代謝を媒介してくれるのが酵素です。酵素がないと身体は動きません。

GOTとGPTは酵素ですが、動くのに補酵素としてビタミンB6が必要です。よって、GOTとGPTが低い人は酵素の活性が悪いと推測できます。おそらく補酵素であるビタミンB6不足で、酵素の活性が落ちています。

4-3ビタミンB6不足が意味すること

ビタミンB6が足りないということは、他のビタミンB6を補酵素とする酵素も動かないということです。例えば、下記のようなものです。

  • セロトニンをメラトニンにする酵素
  • ドーパミンを作る酵素
  • GABAを作る酵素
  • エストロゲンを代謝する酵素

こういった酵素がすべて働かなくなるので、こういった症状が出てきます

  • セロトニン、メラトニン、ドーパミン、GABA不足
  • エストロゲン代謝不良
  • 低血糖

ビタミンB6が足りないと低血糖を頻発するようになります。低血糖のケアは、栄養療法をやる上で一番最初にやらないといけないことですから覚えておいてください。対策としては、ビタミンB6、メラトニン、GABAなど、それぞれ足りない栄養素をサプリメントで摂っていくというのが基本的なアプローチです。

4-4GOTとGPT低下の根本原因はミトコンドリア

GOTとGPTが下がってしまう原因はビタミンB6不足でしたね。では何故、ビタミンB6、ビタミンB群が不足するのかという根本原因を考えます。ビタミンB6をはじめとするビタミンB群は、エネルギー代謝に深く関わっています。特に糖質、タンパク質に関わります。ビタミンB6はタンパク質を代謝する酵素の補酵素としてものすごく働いています。ビタミンB群が足りなくなる原因は、だいたい糖質の過剰摂取です。

特に脚気がひどいですね。現代の脚気の原因はビタミンB1を摂っていないことではなく、糖質の過剰摂取でビタミンB1が消耗してしまうことです。競合して働かなければならない栄養素の片方だけを摂ると、もう片方が消耗されてしまうので、注意が必要です。

ではなぜ糖質を過剰摂取してしまうのでしょうか。つい甘いものに手が伸びてしまう理由は何なのでしょうか。それは、ミトコンドリア機能が低下しているからです。「疲れやすい体質になってしまっているので、ついつい手っ取り早くエネルギーを補充できるものに手が伸びる」という状態です。ミトコンドリア機能が低下した結果、頻繁に低血糖を起こしているので、低血糖を補うための手段として糖質を摂りたくなるんです。

ですから、「糖質を摂るのを控えてください!」と言っても無理です。本能的なところで、身体の危機感から摂っているわけですから。だから、こんな状態の人に甘いものを摂るなと言うのは、息をするな、と言っているようなもので無理なのです。根本原因である、ミトコンドリア機能の低下にアプローチしていく必要があります。

4-4 MCVが大きい場合の根本原因

前述したようにMCVが大きかったら、ビタミンB12・葉酸不足です。それならビタミンB12・葉酸をサプリメントで摂れば良いのではと思うかもしれませんが、量が際限なく増えていってしまいます。

原因をもう一歩踏み込んで考えると、MCVが大きい場合は、普通の食べ物に含まれているビタミンB12と葉酸の吸収がうまくいっていないんです。ビタミンB12は、胃から出てくる内因子とくっついて、回腸末端から吸収されます。胃が悪くても腸が悪くても、ビタミンB12の吸収は落ちます。

特に胃酸分泌と関連しています。内因子を出す細胞と胃酸を出す細胞は同じです。そもそも胃の運動機能が低下している人というのは、やはり胃酸も内因子も出にくいんです。自律神経の緊張などが関係しています。緊張すると交感神経優位になって、副交感神経で動いている消化系が止まってしまうわけです。

いつも緊張している人は胃酸も出ないし、消化酵素も出ないし、腸の蠕動が弱くなります。自律神経の緊張が強い人は、まずこの緊張を解かないと栄養が入っていきません。腸内環境も悪化します。腸内環境が悪くなってくると、消化吸収が悪くなりますから、何事もうまく働かなくなってきます。

  • « Go to Previous Page
  • ページ 1
  • Interim pages omitted …
  • ページ 7
  • ページ 8
  • ページ 9
  • ページ 10
  • ページ 11
  • Interim pages omitted …
  • ページ 15
  • Go to Next Page »

臨床分子栄養医学研究会

Copyright © 2025 臨床分子栄養医学研究会

  • プライバシーポリシー
  • 会員規約および会員規定
  • 利用規約
  • 特定商取引法に基づく表記