うつ病、統合失調症、ADHDなどの精神疾患にどのような栄養療法をしていけば良いのでしょうか。
本日の内容は、神経伝達物質の代謝に栄養が大きく関与しているのでその仕組みを知り、実際にどのようにしてそれらを判別するか、それを基に薬やサプリメントどのように使っていくかということについてお話します。
1.神経伝達物質の代謝とメチレーション
1-1. 本日の内容
・神経伝達物質の代謝
・神経伝達物質再取り込みトランスポーターたんぱくの合成に栄養素が大きく関与している
・神経伝達物質の状態を血液検査や症状などから推測できる
・それを元に薬剤や栄養サプリメントを調整することで症状の安定化を図れる
脳のバランスをとるのに重要なのは神経伝達物質の代謝とメチレーションの2つです。昨今、ゲームが流行っているのは、競争心を煽りご褒美をもらえ、毎日めまぐるしく変わる人間の報酬系に対する仕組みを全部実現しているためです。自分に役に立つことをすると脳からドーパミンが出て嬉しい気持ちになることを報酬系と言いますが、それがどんどん活性化していくと最終的に依存症になります。
Facebookもそのような報酬系の仕組みの尤もたるもので、「いいね」が今日は何個付いたかが気になる場合、完全に報酬系の奴隷となっています。
このように依存症は比較的身近な話ですが、精神疾患を持っていたり、生科学的なインバランスがある人は、まず脳の生化学状態を整えてから食事療法を取り入れた方がスムーズです。
脳細胞は脳の中に1,000億個あり、その細胞のひとつひとつが隣の1,000個の細胞と繋がっています。それをシナプスと言います。人の思考、行動、感情は全て、神経伝達物質と呼ばれる特別な物質が脳細胞から脳細胞に伝えられて起こります。
脳の刺激は電気で伝わり、電気回路がショートしないように少しだけ離れています。神経伝達物質という特殊な物質が伝達されることによって、考えたり行動したり、色々な感情が沸き起こったりします。
神経伝達物質はドーパミン、セロトニン、GABAなど何種類もあり、全て栄養から出来ていてそのまま脳機能に直結しています。ドーパミンはフェニルアラニン、セロトニンはトリプトファン、GABAはグルタミンという必須アミノ酸から代謝されてできています。グルタミンは条件付きの必須アミノ酸です。
分子栄養学とはもともと分子栄養精神医学から始まっていて、ライナス・ポーリング博士は、「脳は身体の他の部位に比べて栄養の影響を受けやすいから、精神医学から始めた方がいい」ということを提唱してます。
1-2. モノアミン仮説
多くのうつ病の薬は、モノアミン仮説に基づいて設計されてます。
・うつ病患者で 脳脊髄液中の5-HIAAの低下が見られる
・セロトニンの前駆物質であるトリプトファンをモノアミン酸化酵素阻害剤に併用すると抗うつ作用が増強する
これらのことから、うつ病患者の脳ではセロトニン神経伝達の機能低下が起きているという仮説が立てられる
Br J Psychiatry: 1967, 113(504);1237-64
うつ病患者の脳の脊髄液に5-HIAAというセロトニンの代謝産物が低く、うつ病の薬にトリプトファンを一緒に併用すると改善することから、うつ病患者の脳ではセロトニンがうまく働いていないのではないかという仮説が立てられ、これをモノアミン仮説と言っています。現在ではうつ病だけでなく、統合失調症や気分障害などもこのような仮説をもとに治療されています。
1-3. うつ病患者のすべてが低セロトニンとは限らない
問題は、うつ病の患者さんに実際にセロトニンが低いかどうかを検査していないままセロトニンを増やす薬が処方されるため、セロトニン症候群を起こす人がいるということです。セロトニン症候群とは、セロトニンが増えすぎて起きる副作用のことです。
SSRIとはセロトニンの取り込みを押さえて、シナプスでのセロトニンを増やす薬ですが、効果が見られないだけではなく副作用を起こす人がいることが問題です。セロトニン過剰となり、衝動性や攻撃性、自殺念慮を引き起こしたりします。基本的に栄養療法を含め、全ての治療は各人のセロトニン濃度に応じて量を調節する個別化医療が求められます。
今日の話は、精神疾患に対する栄養療法において、最大のデータベースを持っているウォルシュリサーチ・インスティチュートを基に構成されています。
ウィリアム・ウォルシュ博士
精神疾患患者に対して行った生化学検査数は300万件以上にわたり、過去に執筆した科学論文や記事200本以上
(行動障害 10,000件、ADHD 5,600件、統合失調症 3,500件、うつ 3,200件、自閉症 6,500件)
世界14ヵ国で300名以上、現在まで28ヵ国以上もの国で臨床医向け講演。
ウォルシュ博士の栄養療法を私が採用している1番目の理由は、分子栄養学の創始者のエイブラハム・ホッファー先生の正当な流れを組んでいるためです。ウォルシュ博士は、長年ホッファー先生と一緒に活動されてきた先生です。
2番目の理由として、その考え方をさらに発展させてエピジェネティクスという考え方を取り入れていることです。このエピジェネティクスとは、栄養が遺伝子の発現をコントロールしてるという意味です。この考え方が取り入れられるようになってから、今までよく理解できなかった精神医学の根本原因が判明しました。
3番目にはエビデンスが多いことです。去年亡くなったジャック・チャレムという方にメチレーションに関してアメリカで一番エビデンスが多い人を紹介してくれないかと頼んで紹介して頂きました。2年前、日本で講演をしてもらいましたが、内容がとても良かったのでシカゴに行って彼の研修を受けてきました。
1-4. 栄養素を併用した個別化医療
ウォルシュ博士は、個体差の重要性が大切で、心の病に対しては栄養素の不足よりも過剰摂取がより多くの悪影響を及ぼすとおっしゃっています。
鉄、メチオニン、葉酸、銅などは、過剰に投与するとかえって症状が悪化することがあるので、僕の場合、精神疾患の人は最初にマルチビタミン摂っていた場合は一時的に辞めていただいてます。
低メチレーションの人に葉酸を投与すると悪化します。葉酸はマルチビタミンにも入っているので、ウォルシュ博士によるとマルチビタミンも1度やめたほうがいいそうです。食事中の葉酸に関してはOKですが、栄養素でかえって悪化することがある程、脳はとても不安定です。
これに関しては自閉症の権威エイミー・ヤスコ博士も同じようにおっしゃっています。
下記は、脳のインバランスを的確に把握した個別化医療がどのくらい効果があるかという2010年のウォルシュ博士の論文です。
自閉症スペクトラム、ADHD、アスペルガー症候群、不安、双極性障害、うつ病、統合失調症および強迫性障害(OCD)を持つ患者567名に対して12か月間個別化治療を行い、QOLの改善度インタビューを行った。
110例(23.6%)が脱落、
221例(44.9%)大幅改善、91例(18.5%)が部分的改善
自閉症でほとんど改善しているのが45%、部分的な改善が35%、合わせて8割の人に何らかの改善が見られています。ADHDや躁鬱病など7〜8割の人に改善が見られてるという大規模な論文です。
1-5. 神経伝達物質の代謝とメチレーションに栄養素が大きく関与する
神経伝達物質の代謝
様々な神経伝達物質がある中、今日の主役はドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、GABA、グルタミン酸です。
ドーパミンはフェニルアラニンからテトラヒドロビオプテリンや、ビタミンB6の影響を受けて代謝されます。ビタミンB6が不足すると、ドーパミンが生成されません。そしてドーパミンからノルエピネフリンへは、ドーパミンβヒドロキシラーゼという酵素によって転換されますが、そこに銅が重要となります。銅過剰になるとドーパミンが減って集中力を高めてくれる神経伝達物質であるノルエピネフリンが増え、過剰になると不安な気持ちが出てその結果意欲がなくなってきます。
ビタミンB6はセロトニンやGABAの合成にも一役買っているので、特にピロール障害があるビタミンB6が少なくなってしまう体質の人が、ドーパミン、セロトニン、GABAは作られにくくなります。
また、グルタミン酸は、グルタミン酸受容体にくっついて効果を発現します。グルタミン酸は学習や記憶にとても大事ですが、多すぎると興奮を引き起こすため、特に自閉症のお子さんには問題となります。過剰なグルタミン酸の働きを強くするのはカルシウムで、働きを抑えてくれるのは亜鉛とマグネシウムです。
気を付けなければいけないのは銅と亜鉛のバランスです。銅と亜鉛はブラザーイオンで、お互いを抑えるように働いています。銅過剰の場合、亜鉛を沢山投与すれば、自然と銅が下がってきます。
これはNMDA型のグルタミン酸受容体です。
症状
目を合わせない、攻撃的、stims、自傷行為。ぼっーとする(オピオイド受容体も刺激される)
受容体抑制
マグネシウム
亜鉛
リチウム
グルタミン酸の神経の過剰興奮がカルシウムの流入を引き起こして細胞死を引き起こします。自閉症のお子さんの脳を解剖してみると、多く見られるのは鉄とカルシウムで、カルシウムが異常に流入してるので神経細胞が死んでしまい、グルタミン酸神経の過剰興奮により脳に炎症を起こしています。
上記の症状を抑えるため、自閉症のお子さんはグルタミンを食事から抜かなければいけない時期があります。グルタミン酸からGABAへの転換がうまくいかないため、グルタミン酸が溜まってしまうためです。それはビタミンB6不足なのかもしれないし、水銀の蓄積なのかもしれません。グルタミン酸からGABAへの転換には色々な要素が必要で、ビタミンAやビタミンKの不足もこの転換を阻害してしまいます。
この過剰なグルタミン酸神経の細胞死を防ぐのが、マグネシウムや亜鉛、リチウムなどです。脳の生化学状態をコントロールするのは2つです。一つは神経伝達物質の代謝、もう一つはメチレーションです。
1-6. メチル化について
メチレーションはメチル化とも言い、メチル基が色々な物質に結合し化学構造が変わって、様々な変化が起きたり代謝が進みます。メチル化は分子や、シナプス、ヒストン、DNAなどにも起こります。
例えば、水銀にメチル基がつくとメチル水銀になります。無機水銀に比べてメチル水銀が悪いのは、体が食べ物として認識して腸からそのまま吸収され、脳や脂肪に行ってしまいます。魚の水銀はメチル水銀です。
また、子宮内でDNAに起きるメチル化は、妊娠の2、3週で確立して一生続きます。肝臓も目も皮膚も全ての細胞は同じDNAを持っていますが、なぜ肝臓になったり皮膚になったり目玉になるかというと、DNAの読むところが違うからです。メチル基が結合しているところは読まなくなります。
僕は一夜漬けタイプで、試験前になると教科書で絶対出なさそうな箇所は、山をはって思い切ってバツをつけていました。集中力を高めるためそこが目に入らないようにバツをつけるようなもので、DNAのメチル化とは、DNAの中で読まないところを設定されるということです。
この子宮内で起こるメチル化がうまくいかないと、余計な遺伝子が発現してしまい問題になります。自閉症のお子さんは、98%低メチル化です。遺伝的な要因で、ほとんどの場合両親が低メチル化なら、低メチル化同士の組み合わせで低メチル化になりますが、本当はメチル基がつかなければいけないところに子宮の中で低メチル化が起きて活性酸素に弱い個体ができやすくなります。
妊婦はそれを防止するために、葉酸を摂ることが推奨されてます。葉酸を摂らなければいけないのは妊娠2、3週目なので、妊娠する前から計画的に葉酸を摂らないと間に合いません。妊娠2ヶ月と言われたときには、もう遅いのです。
また、今回一番の話題は神経伝達されるシナプスで起こるメチル化です。メチル化とは、メチル基がくっつくことですが、メチル基はほとんどがメチレーション回路によって作られるSAMeによって供給されます。メチレーション回路で作られるメチル基の最大の供給源がSAMeなので、メチレーション回路が回ってない人はSAMeが少ないです。メチレーション回路は遺伝子変異や環境によって左右されます。
この遺伝子変異を回避するサプリメントが、活性化葉酸です。このシナプスで起こるメチル化は、シナプス間隙の神経伝達物質を減らす効果があります。シナプスにおけるDNAのメチルレーションと、全身におけるメチレーションがあります。
下記はメチレーション回路です。
メチレーション回路でメチオニンというアミノ酸をもとに、それがアデノシル基がついてSアデノシルメチオニンになります。このSAMeがメチル基の供給源なので、メチレーション回路が回ってない人はメチル基が十分供給できません。ここでできたメチル基は、DNAのヒストンに結合します。
1-7. 核と染色体とDNAとヒストン
染色体をバラバラにすると、DNAとヒストンからできています。ヒストンとはこのDNAの長い紐を巻いておく糸巻きのようなものです。DNAは一つの細胞の中で伸ばすと1.8メートルくらいあり、このヒストンという糸巻きでぐるぐる巻かれているために1/1000ミリの核の中に入ることができます。そのため、昔はヒストンはDNAを絡ませないようにするためのものという風に思われていましたが、実はヒストンはDNAの発現に大きく関与しています。
1-8. 転写が起こるしくみ
転写はDNAからタンパク質が作られる過程の一部で、DNAはmRNAにコピーをされて、そのmRNAをもとにタンパク質が作られます。この一連の過程を転写と言います。
タンパク質が作られるためにはまず転写が行わなければなりません。転写は遺伝子のエンハンサー領域に転写因子タンパクが結合することから始まります。そのためエンハンサー領域にタンパクが結合できないと、タンパク質は作られません。
ヒストンは塩基性が強いので、酸性のメチル基が結合すると、ヒストン同士は縮んでエンハンサー領域に転写因子が近づきにくくなります。
逆にこのヒストンにアルカリ性のアセチル基が結合すると反発しあうため、ヒストンとヒストンの間が離れて、転写因子が近づきやすくなり、タンパクの合成が促進されます。メチル基が付くと、構造が密になり転写因子が近づきにくくなるので転写がストップするという仕組みです。
1-9. シナプルにおけるセロトニン量はメチレーションに比例する
メチル基がメチル化されるとタンパクの合成が止まり、これはすべてのタンパク質に当てはまります。メチル化が進むとヒストン同士が縮み、メチル化が進まないとヒストン同士は離れて、タンパクが作られます。
シナプスにおいて問題になるのは、セロトニンの取り込みのタンパクのことを指しています。タンパクが沢山作れるということは、このセロトニン取り込みタンパクが沢山増えます。この場合はタンパクが少ないためセロトニンの取り込み口が少なくなり、シナプスの間隙にセロトニンが沢山余ってしまいます。
逆にセロトニン取り込みタンパクが沢山増えるということは、どんどん取り込まれてしまいシナプス間隙にセロトニンが減ります。メチレーション亢進=神経伝達物質の増加で、メチレーション低下=セロトニン、ドーパミン量低下です。
オーバーメーションやアンダーメチレーションについては後ほど詳しく説明しますが、オーバーメチレーションとはメチレーションが亢進しいてることで、アンダーメチレーションはメチレーションが低下してることを言います。オーバーメチレーションでは、セロトニンもドーパミンも沢山分泌されますが、アンダーメチレーションはどちらも分泌されません。
アンダーメチレーション=回路が回らなくて、メチル基が足りないこと
オーバーメチレーション=メチル基が多くて、余っていること
アンダーメチレーション状態
自閉症スペクトラム 98%
反社会的人格障害 95%
統合失調感情障害 90%
反抗挑戦性障害 85%
神経性食思不振症 82%
うつ病 38%
オーバーメチレーション状態
パニック障害 64%
妄想型統合失調症 52%
ADHD 28%
行動障害 23%
うつ病 18%
オーバーメチレーションの人は神経伝達物質が多すぎるので減らし、アンダーメチレーションの人は少なすぎるので増やしてください。メチレーションの状態を診ることがとても大切です。
一般的に、自閉症スペクトラムの人は、98%アンダーメチレーションです。様々な人格障害とか、神経性食思不振症、82%の人がアンダーメチレーションです。反対にドーパミンが多すぎるオーバーメチレーションの人は、パニック障害や、いわゆる典型的な妄想型の統合失調症、幻覚が見える統合失調症も含まれます。
アンダーメチレーション
オーバーメチレーション
- メチレーション回路の遺伝子変異
- ヒスタミン過剰負荷
- たん白不足
- クレアチン合成障害 AGAT GAMTのSNP
- アルギニンまたはグリシン不足
- メチルトランスフェラーゼSNP
アンダーメチレーションになる原因は、メチレーション回路の遺伝子変異です。メチレーション回路がうまく回らないのは、遺伝子に変異があることが一番の理由です。特に問題になるのは葉酸の活性化の遺伝子のMTHFRです。
反対にオーバーメチレーションになる一番の原因は、クレアチン合成障害で筋肉を作る酵素がうまく働かない人です。メチレーション回路で作られたSAMeは、7割が筋肉を作るために使われます。筋肉をつけられない人は、その酵素の分だけSAMeが余ります。オーバーメチレーションの人は、鍛えても鍛えても筋肉がつきません。
1-10. 第一部まとめ
- 神経のバランスは、神経伝達物質の合成や分解に必要な補酵素、シナプスにおける再取込トランスポーターなどの影響を強く受ける
- 神経伝達物質の代謝には銅とビタミンB6が必要
- ビタミンB6不足で ドーパミン↓、セロトニン↓、GABA↓
- 銅の過剰で、ドーパミン↓、ノルエピネフリン↑,酸化ストレス↑ ✽ ✽神経伝達物質再取り込みトランスポーターたんぱくの合成(つまりシナプスにおける神経伝達物質の再取込量)にはメチレーションが大きく関与している
- アンダーメチレーションではシナプス間隙のセロトニン↓、ドーパミン↓
- オーバーメチレーションではシナプス間隙のセロトニン↑、ドーパミン↑
神経伝達物質の代謝とメチレーションによって脳の全体の生化学状態が決まります。つまり銅と亜鉛のバランス、ビタミンB6の不足、メチレーション状態を見れば良いということです。
2. うつ病のタイプ別分類
2-1. うつ病を脳内の生化学状態で分類
こちらは日本語訳されているウォルシュ博士の本です。
博士は、うつ病の分類を大まかに5つに分けてます。精神疾患を持っている人は2/3がメチレーション異常で、2/3はメチレーション正常です。メチレーション異常の人や、銅亜鉛バランスが狂ってる人は症状が特徴的です。
アンダーメチレーションタイプ(38%)
メチレーションが低下しているタイプの人は、ドーパミンが少ないです。
- 強迫神経症状
- 季節性アレルギー
- 完璧主義
- 競争心が強い
- 学校の成績はよい
- 儀式的な行動
- SSRIが効果的
強迫神経症状を持つ人は、いつも同じ方から靴下を履き、いつも同じ道を通って学校に行く、いつも同じ食事をとらないと気が済まないなどの行動をとります。ヒスタミンが多くなるため、季節アレルギー出やすいです。そして完璧主義で競争心が強く、負けず嫌いです。
オーバーメチレーションタイプの人はドーパミン過多の人です。
オーバーメチレーションタイプ(20%)
- 鬱に加えて不安やパニック
- SSRIや抗ヒスタミン薬に対して不耐性、
- 化学物質アレルギーを持つ
- 症状にもかかわらず、気立てのよい優しい人が多い
- ADHDや学業不良といった症状は
- アンダーメチレーションタイプの人の3倍
ドーパミンやセロトニンが多すぎて鬱になる人もいますし、不安症状がとても強いという特徴があります。なにかにつけて不安なので、パニックを起こしたりしますが、SSRIやボルザックなどの薬に対してかえって悪化する場合もあります。様々なことが次から次へと頭に浮かんできて、思考がまとまらない人が多いです。ドーパミンが大量に出たら学校の成績が上がりそうですが、意外とそうでもなく、絵が上手だったり音楽的な才能があったり芸術家思考の人が多いです。
2-1. メチレーションと症状
メチレーション状態には低メチル化と高メチル化があり、低メチル化の原因は葉酸の活性化酵素の変異が一番です。
ヒスタミンを代謝している酵素でもあるSAMeの合成が低くなるので、ヒスタミンが多くなって花粉症になります。メチレーション回路が回らないとドーパミンの合成が下がって、依存症体質の人が多いです。クレアチン合成酵素にメチル基が回るため、筋肉量は多くテストステロンが多くなり、性欲も強いです。
反対に、高メチル化の人はクレアチン合成酵素が下がっているため、いくら鍛えても筋肉がつきません。高メチル化の人はSAMeが余るので、ドーパミンがどんどん構成されます。創造性に長けていて喋り始めたら止まりません。検査はヒスタミン量で判定し、好塩基球の実数を測ります。
2-2. 評価法 ヒスタミンと好塩基球
ヒスタミンはSAMeによって代謝されてメチルヒスタミンになるので、低メチレーションの人はSAMeがあまり作られず、ヒスタミンが溜まって色々な症状を引き起こします。
上記のサプリは、ヒスタミンを代謝する酵素であるジアミンオキシダーゼです。消化酵素や高ヒスタミン薬を使うと、ヒスタミン量が狂ってしまいますが、一般的にはヒスタミン量からメチレーション状態が推測できます。血液中のヒスタミンは98%好塩基球の中に入っているため、好塩基球数で測定します。
ウォルシュ博士は全血中のヒスタミン濃度を測ることを推奨していますが、全血中のヒスタミン濃度を測れる検査会社が日本にはないため、血液中の好塩基球数から推測します。
2-3. 好塩基球数を求める
好塩基球数の求め方は、白血球×好塩基球の割合をかけてそれで100で割ってください。
白血球数 × 好塩基球(BASO)の割合(%)÷100
白血球数4800×
好塩基球(BASO)の割合(%)2.5÷100=120
好塩基球数<30 なら OM
好塩基球数>70 なら UM
好塩基球数が30以下ならオーバーメチレーション、好塩基球数が70以上ならアンダーメチレーションなので、この方の好塩基球数はとても多いとわかります。
さらに詳しく診るためにはSAMeと、SAMeが代謝されたS-アデノシルホモシステインの比率を測るドクターズデータ社のメチレーション検査もあります。
もしこの検査をされるなら治療の前に行なってください。治療の後にやると結果が狂ってくることが多いためです。
2-4. 銅過剰タイプ(17%)
銅は人間の成長に不可欠な因子なので、妊娠中に上がったり、お子さんも上がります。ただ一部の女性では、出産後、正常に戻るべき銅のレベルが下がらない人がいて、これを銅過剰タイプといいます。
- 強い不安感・パニック傾向がある
- 産後うつ病を引き起こす可能性がある
- 活動的である
- SSRIで不安が増強する
- 安定剤ではうつが治らない
- ピル、ホルモン補充療法で悪化する
- 敏感肌である
銅過剰タイプの95%が女性で、特にエストロゲン値が高くなる思春期、更年期、妊娠期に発症することが多いです。銅過剰になると、ドーパミンからノルエピネフリンへの過剰転換が起き、不安、パニック傾向や、産後うつ病の大きな原因になります。薬が効かないため、SSRIや安定剤でも効果がありません。そしてエストロゲンは銅をさらに悪化させるので、ピルで悪化するというのも特徴です。オーバーメチレーション状態と銅過剰状態の人が混合で合わさっている場合もいます。
2-5. 銅過剰の症状
検査では、銅と亜鉛のバランスを見ます。
セルロプラスミンを測ってる人は、酸化ストレスに直結する遊離銅を測ることも大事です。栄養サプリメントの中で特に鉄と銅は活性酸素の発生源になるので、気を付けてください。
鉄の害が出やすい人は鉄を乗せるタンパクの残りであるUIBCが少ない人です。いわゆる空の台車です。その数字が通常200なので、100ある人は鉄の害が出やすいです。銅に関してはセルロプラスミンというタンパク質が少なくて、遊離銅が多い人が銅の酸化ストレスの影響が出やすくなります。
2-6. 銅過剰の評価
銅過剰の評価方法は下記の通りです。
- 血中銅↑(>110)
- 血中亜鉛↓(<90)
- 遊離銅比率↑(>25%)
銅過剰活性酸素のことを考えなければいけません。血中度が高くて、血中亜鉛が低く、さらに遊離銅比率が高いことです。
遊離銅比率の計算式は下記のとおりです。
( 血中銅 – セルロプラスミン×3 )/血中銅 x100 (%)
遊離銅の比率が高い方はセルロプラスミンを増やすことが大事で、セルロプラスミンを増やすのに有効なのはビタミンAです。
2-7. ピロール障害について
ピロールとはヘモグロビンを作る時の副産物で、多く作られると尿中に排泄される物質です。体の中での重要性はそれほど多くないので、作られた側から排泄されていきますが、問題なのはビタミンB6と亜鉛が非常に結合しやすいので、沢山作られる人はB6と亜鉛が体から抜けていきます。このような体質の人のことを、ピロール障害といいます。
これは体質で、生まれつきB6と亜鉛不足なので、10歳になる前から症状が出ることが多いです。神経伝達物質のセロトニン、ドーパミン、GABAは全てB6に依存しているので、これらが不足してしまうがために不安やうつの症状が出ます。気分の変動が激しく、双極性障害(躁鬱病)と診断されることもあり、躁と鬱を繰り返し、気分が1分単位で変わることもあります。
ピロール障害の人はストレスがあると症状が悪化するため、亜鉛とビタミンB6を増量する必要があります。ビタミンB6が不足し短期記憶障害が出て、夢が思い出せない、本が読めないという症状が出てきます。
このピロールタイプの人は副腎疲労にとても似ていて、朝が弱く夜がとても強いです。ストレスに弱く、朝弱く夜強いという傾向は、副腎疲労にとても似ているので、ピロール障害の人が隠れていることがあります。
2-8. パイロルリアの評価
ピロール障害は、下記の二つの方法で評価します。
①尿中ピロール
尿中のピロールが15を超えたらピロール異常です。ただこの検査もハードルが高いので、亜鉛とビタミンB6が足りていないかどうかということから推測しましょう。
②亜鉛、B6量から推し量る
血中亜鉛↓、GOT>GPT、尿素窒素↓
血中の亜鉛の濃度と、GOTとGPTの差がB6不足を反映します。ピロール障害には尿素窒素の低下も関わってきます。
- GOTとGPTは、共にビタミンB6を補酵素とするアミノ基転移酵素である
- ビタミンB6は様々なアミノ基転移酵素の補酵素として働くが、その中でもGOT,GPTの活性が特に高い。
- GPT ↑ なら肝機能障害 (脂肪肝、ウイルス肝炎)
- GPT ↓ なら酵素、補酵素の活性が低下
- GPTのほうがB6の不足の影響を大きく受ける。
- 両者共に低めで、GPTがより低い場合には、B6不足
- 両者共に高めで、GPTがより高い場合には、脂肪肝 (B6不足と脂肪肝があると、一見正常範囲に見える)
下記は、アラニン回路という経路です。
筋肉では糖新生ができないため、ピルビン酸がアラニンに代わり肝臓に行って、そこからグルコースが新生されます。その際に尿素ができるので、この回路がうまく回る人は尿素窒素の数字が高めです。
この回路がうまく回るためには、ピルビン酸からアラニンへの転換がされなければいけませんが、このピルビン酸とのアラニンの転換をするのがALT(GPT)です。ビタミンB6が足りない人はピルビン酸、アラニンの転換がうまくいかないため、尿素が下がってきて尿素窒素が一桁という人も中にはいます。
2-9. パイロルリアの症状
ピロール障害の症状は、ビタミンB6と亜鉛欠乏によるところが大きいです。
爪に白い斑点があると分かりやすいですが、亜鉛不足でALPが下がって成長障害が起きます。また、B6不足なので、副腎疲労症状や短期記憶障害が出たり、気分が不安定になります。
オメガ6系の脂肪酸がうまく作れないというのもパイロルリアの特筆すべき症状です。そのため、ウォルシュ博士によるとパイロルリアの人はオメガ3を摂りすぎてはいけないとのことです。
2-10. 重金属蓄積タイプ(5%)
- 突然鬱が現れる
- 腹部の痛み、けいれん
- イライラ
- 頭痛、筋力低下
- エネルギー切れ
- カウンセリング、薬が効かない
どれにも当てはまらない場合は、鉛や水銀、カドミウム、ヒ素などの重金属について考えてみてください。見分け方としては何のきっかけもないのに突然鬱になったりします。腹部症状があり、イライラや怒りが出てくることがあります。それぞれの暴露歴からも判断していかないといけませんが、他の4つの病態と重なってる場合がありますので問診が大事です。
2-10. 第2部まとめ
① 評価すべき事項
- メチレーション状態 亢進?低下?正常?(ドーパミン量を左右する)
- 銅過剰はないか?(活性酸素の発生量、ノルエピネフリン量に影響)
- パイロルリアはないか?(亜鉛↓、B6↓により様々な影響)
- 消化管の問題はないか?
- 重金属の影響はないか?
メチレーション状態、銅過剰、パイロルリア、の他に、消化管の問題がないかを確認してください。消化管の問題があれば必ず鬱になります。そして重金属の影響も聞いてみてください。複数の異常が合併することがあるので注意してください。特に合併しやすいのはメチレーションの低下とパイロルリア、メチレーション過剰と銅過剰です。
②うつ病の生化学タイプと神経伝達物質のアンバランス
うつ病の生科学タイプ 神経伝達物質活性 | |
低メチレーション 低セロトニン、低ドーパミン | |
高メチレーション 高セロトニン、高ドーパミン | |
銅過剰 高ノルエピネフリン | |
ピロール異常 低セロトニン、低GABA |
うつ病の生化学タイプと神経伝達物質は、低メチレーションの場合は神経伝達物質は低くなり、高メチレーションの場合は高くなります。銅過剰の場合はドーパミンが低くなってノルエピネフリンが高くなり、ピロール異常の場合はB6が不足するので、セロトニンもGABAもドーパミンも作られにくくなります。
大事なのはうつ病、統合失調症、ADHDとかの病名ではなくて、脳の中の生化学状態で栄養療法を決めていくということです。うつ病でもセロトニンが高い場合と低い場合とあります。
3. タイプ別治療
生化学治療の原則
・神経伝達物質の合成に必要な栄養素の濃度を正常化する事。
→亜鉛、銅、B6の事
・標的栄養療法を使い、神経伝達物質の活動性を
エピジェネティックに制御する事→メチレーションの調節をするという意味
・フリーラジカルの酸化ストレスを軽減する事
→抗酸化治療(一番大事な抗酸化物質は亜鉛)
抗酸化物質も色々ありますが、大事なのは亜鉛、グルタチオン、セレンです。グルタチオンは体の中で作られる物質ですが、これら3つの抗酸化力が強いです。
亜鉛はメタロチオネインという抗酸化物質を作るのにとても重要です。メタロチオネインを積極的に作って解毒を促すというのがウォルシュ博士の考え方で、メタロチオネインを作るためには、血中濃度、亜鉛の血中濃度を100以上に保つと良いと提唱しています。
3-1. 検査すべき項目
亜鉛や銅、その他に検査をしておいた方が良い推奨項目として血中のホモシステインもあります。他にも25OHビタミンDと甲状腺機能は精神疾患に関わってくるところです。
- 血漿亜鉛
- 血清銅
- ヒスタミン
- 尿中ピロール
- 血中ホモシステイン
- 25OHビタミンD
- 甲状腺機能
- GOT/GPT
もしピロール検査をしてみたい方は是非してみてください。尿中ピロール検査を請け負っているのは、アメリカのDHAというラボか、HDRI社です。正確に測ってくれるのは、DHAの方ですが、凍結したものを送らなければいけなくて、凍結保証のDHLで送ると確か送料が9万円します。さすがに高すぎるので、僕の場合はHDRI社のものを使ってます。ただ測定誤差がどうしても出るそうです。
3-2. 治療失敗の最も大きな原因
- コンプライアンスの低下
- OMの場合、服薬の量、複雑さ → 単純化
- UMの場合、説明不足
- 子供の場合、明確なメリットを示す
- 食事内容に介入する前に、主なインバランスを
改善する方が好結果が得られる。 - 多くの患者にとって、インバランスを修正する前に
生活スタイルを大幅に改善するのは無理。
(自閉症、ADHDを除く)
治療は、亜鉛、銅、ビタミンB6、葉酸などを補充していくことですが、治療失敗の最も大きな原因は、コンプライアンスの低下です。コンプライアンスとは、患者さんが服薬をちゃんとできてるかどうかです。
オーバーメチレーションの人の場合は、服薬の量が多かったり複雑さを嫌う傾向にありので、要望によっては単純化してあげることです。
アンダーメチレーションの人は、完璧主義で理論的な話が好きなので、説明が足りてないとうまくコンプライアンスがいかないですが、きちんと説明してあげたら100%服薬してくれることが多いです。
母親に連れて来られたお子さんの場合は、コンプライアンスはとても悪いです。食事の改善にもやる気がないです。親のメリットのために連れて来られているにしても、お子さんに対して明確なメリットがちゃんと説明できれば、コンプライアンスが上がることが多いです。
食事内容の改善がとても大事ですが、多くの人にとって生化学的なインバランスを修正する前に生活スタイルを改善するのは無理だということもあります。もし食事指導がうまくいかなければ、最初にこのインバランスを調整してあげると良いかもしれません。ただし自閉症の場合は、脳に炎症を起こしていてリーキーブレーンになっているので、食事の介入が必要だと思います。
今年の最初にメドマプスの方が来て自閉症セミナーがありましたが、自閉症に対して今一番有効な栄養療法のエビデンスの話をされていて、1位がメラトニンで、2位がオメガ6とオメガ3とビタミンB6でした。
3-3. 治療の基本
- High Pyrroles: 亜鉛, B6/P5P
- Overmethylation: 葉酸、ナイアシン
- Undermethylation: メチルB12, SAMe
- Low Zinc: 亜鉛
- High Copper: 亜鉛、モリブデン
- Free Cu high: ビタミンA,抗酸化物質
ピロールの場合は亜鉛とB6、B6が効かない場合は、ピロールだと判明した場合は活性型のビタミンB6を併用して使ってきます。ピロールの患者は、例えばB6を200mg、P5Pを50mgみたいな感じで使っていきます。
オーバーメチレーションの場合はメチル化を低下させる働きがある葉酸とナイアシンを使います。アンダーメチレーションの場合はメチル化を亢進させる働きがあるSAMeと場合によってはメチルビタミンB12を使います。
亜鉛が低い場合は亜鉛を、そして銅が高い場合は亜鉛と場合によっては銅と拮抗するモリブデンを使うのも良いでしょう。遊離銅が高い場合は、酸化ストレスが問題になるのでビタミンAと抗酸化物質を使います。
3-4. アンダーメチレーションタイプ
治療:SAMe もしくは メチオニン
・Cal/Mag
・mB12
・治療効果に1か月以上
・就寝前にイノシトール
・葉酸をさけること
治療のコツ
・完全に理解したうえで注文したい完璧主義者が多い
・考え方を受け入れられれば100%摂取する
アンダーメチレーションの人には、SAMeそのものを使うか、その前駆体のメチオニンというアミノ酸を使っていますが、メチオニンの場合はSAMeに変換するのにマグネシウムが沢山必要なので、一緒に摂る必要があります。欠かせないのがマグネシウムで、上にはCal/Magとありますが僕はマグネシウム単独で使っています。時にはメチルビタミンB12を使うといいですが、かえってイライラする人もいるので、腸内環境を治してから使った方が良いです。
タイプ別によって、症状が落ち着くのにかかる時間が違います。アンダーメチレーションの場合は1ヶ月以上、大体2、3ヶ月かかります。メチル化を亢進させるのが目的なので、メチル化を低下させる葉酸は避けた方が良いと思います。
3-5. オーバーメチレーションタイプ
診断:
血中ヒスタミン 40以下
血中Folate ↓ 好塩基球30以下
治療:
・葉酸塩 or フォリン酸なら少量
・B12
・ナイアシン/ビタミン C
・マンガン
・2,3週間悪化の時期を経て1か月後から改善
治療のコツ
あまり多くのサプリを摂りたくない人多い、最初に最大のサプリ個数を決めておく。マルチを使う、最低限必要なものを使う
オーバーメチレーションの場合はメチル化が亢進してるので、メチル化を低下させる葉酸を使います。ビタミンB12は使う時と使わない時がありますが、葉酸がうまく効かない場合はナイアシンを使います。ナイアシンは徐々に増やしていきますが、なかにはナイアシンで肝障害が起きる人がいるので、気をつけてください。
ナイアシンの厚生労働省の推奨量は30mgなので、3g使うならモニタリングしながら使った方が良いです。不安症の人はナイアシンを重宝しますが、諸刃の剣なのでモニターが必要です。ナイアシンフラッシュも起こるし、コレステロールが下がる人がいますから、コレステロールが元々低い人はナイアシンの使用は考えたほうがいいかもしれません。コレステロールはとても大事です。僕もナイアシンを毎日飲んでたらコレステロールがかなり下がりました。500mgだったら大丈夫ですが、1,000mgだと下がる人は下がります。
マンガンはアセチルコリンを活性化する働きがあります。アセチルコリンが活性化するということは、ドーパミンを抑えるということです。アセチルコリンとドーパミンというのは反対の働きをして成長障害が問題になるので、大人のみに使うようにします。オーバーメチレーションの人は、場合によっては2、3週間悪化して、その後1ヶ月後から改善することがありますので、1ヶ月未満の始めた時に不安を癒すフォローが必要です。
3-6. 銅過剰タイプ
治療:
銅入りのサプリメントを止める。
水道にフィルターを付ける
亜鉛
モリブデン & ビタミン E
銅の急降下を防ぐため少量からスタート
改善まで2ヵ月
銅過剰タイプの人は、当然ですが銅のサプリメントを使わないでください。アメリカには、銅とか鉄がフリーのサプリメント結構ありますが日本は普通に入っています。銅がいつまでたっても高い人は、水道にフィルターを付けた方がいいかもしれません。
治療には、亜鉛とモリブデンを使います。統計によると、亜鉛の量を倍にすると9ぐらい上がってきます。亜鉛は、普通食事から10mgくらい摂っています。サプリメントで20mgに増やしたら血中レベルが9上がり、40mgに増やしたらさらに9上がります。
血中濃度を100にするためには、逆算してどれくらいの量を摂るかを決めていったら良いと思います。亜鉛は最初から目的量を摂るのではなく、少量から始めた方が良いです。亜鉛とカドミウムと水銀は同族元素なので、カドミウムが体に蓄積されていた場合にカドミウムが一気に動いて腎障害を引き起こすことがあるため、亜鉛は少量から使うと良いでしょう。
3-7. ピロールタイプ
治療:
・Zinc
・B6 and P5P
・ピロール>40ならオメガ3を避ける
・抗酸化物質があるとよい(E,C,biotin)
・1週間程度で改善傾向がみられる
治療のコツ
・ストレスに応じて増量が必要な時がある
・ストレスの持続時間中、亜鉛を25-50mgとB6を100mgもしくは、P5Pを50mg毎日増量。
・ストレスが終わったら、元の投薬に戻す。
ピロールタイプの人は、亜鉛とB6不足なので、亜鉛を25mgから、そしてビタミンB6を100mg+P5Pを50mg使っていきます。様々な治療の中で一番治療反応性が早いのは、亜鉛やビタミンB6の治療です。ビタミンB6は水溶性物質なので、効果が出るのが早いです。ピロールタイプの人はストレスに弱いので、ストレスがある場合は量を増量して、ストレスが終わったら元の投薬に戻すと良いでしょう。
3-8. 遊離銅過剰の場合
セルロプラスミンを測っている方は、遊離銅を計算してみてください。
- 自閉症の多くの症状は酸化ストレスと関連
- 脳内酸化ストレス過剰が統合失調症の特徴
- 抗酸化物質+ビタミンA(CPを増やす効果)
- βカロテンでなくビタミンAを使う事
- 高齢者では念のため血中濃度チェックを
- 亜鉛ももちろん
遊離銅は酸化ストレスと関係していて、特に自閉症や統合失調症の場合は酸化ストレスの調整がとても重要です。セルロプラスミンを増やすために抗酸化物質とビタミンAを使ってください。ビタミンAはベータカロチンではない方が良いです。ベータカロチンはビタミンAの医療体ですが、体の中でうまくビタミンAに分かれてくれないと言われています。
ビタミンAをどれくらい使うかは人により違い、僕は3〜6万IUぐらい使いますが、高齢者の場合、念の為血中濃度をチェックした方がいいです。
3-9. 低ビタミンD
- 正常範囲は 25-30 ng/mL以上だが、50-100ng/mL を目指す
- 最低1000IUできれば2000IU以上
- 半減期は2週間なので週1回まとめての摂取でもOK
- (脂肪吸収がちゃんとできていれば) 投与開始後3ヶ月で再検査を
ビタミンDは、50ng/mLぐらいあった方がいいです。日焼けを毎日していれば、必ずしもサプリメントで摂る必要はないです。ただし必要な日焼け量には、毎日水着で歩くくらいの日照時間が必要となり難しいし、ビタミンDの産生能力は体質にもよります。血中濃度を上げるには、最低2,000IU以上摂るのが良いです。半減期は15日なので、週一回まとめての摂取でもOKと言われていますが、脂溶性ビタミンなので胆汁が出てるかどうか確認が必要です。コレステロールが低い人は難しいでしょう。
上記はビタミンDの血中レベルを上げると、どれだけの疾患が予防できるかという表です。
癌や1型糖尿病、多発性硬化症のような疾患は、ビタミンDの血中レベルと防御率が密接に関係しています。40〜50のビタミンDレベルあった方が良いと思います。多くの疾患はこれくらいのレベルにしておけば防ぐことができると書いてます。ドーパミンが少なめの人、下痢型の過敏性腸の症状がある人は特にビタミンDを投与した方がいいです。
3-10. 甲状腺機能低下
- チラージン末(乾燥甲状腺末)は販売中止
- ARMOUR THYROID
- チラージンとチロナミンを使い分ける。
- チラージンと鉄、セレンを併用する
- T3過剰は不安、動悸
- 副腎疲労を治す
甲状腺が低下していたら昔はチラージン末を使っていましたが、震災で工場が閉鎖して、製造中止になってしまいました。このチラージン末は天然のブタの乾燥甲状腺で、T4とT3が自然な形で入っていたのですがもう販売していないので、ARMOUR THYROIDを使うか、もしくはT4とT3の製剤を使い分けるかで調整する場合があります。
僕はよくT4に加えて、鉄やセレンなどT4からT2に変換を促す栄養素も一緒に摂ってもらいます。甲状腺機能低下症は副腎疲労のベースの上に乗っかってくるので、一番大事なのは副腎疲労を治すことです。副腎疲労があったら、副腎疲労を最初に治してください。
3-11. 服用の際の注意
- ほとんどの物は食後(亜鉛、B6は特に)
- 甲状腺ホルモンやSAMeは食間に
- 統合失調症、自閉症、躁うつ病では高用量が必要
- コンプライアンス低下、成長期、ストレス過多、
- 吸収不良、頭部外傷、薬物乱用、低血糖症では効果まで時間がかかる
- UMではホモシステイン上昇に注意
- (B6,B12,TMG,セリンで治療)
- 高用量亜鉛による銅症状に注意
- 亜鉛倍量で9ずつ上昇
- バルプロ酸、ヒスチジン、サイアザイド利尿薬は
- 亜鉛濃度を下げる
サプリメントの服用の際の注意点は、ほとんどの場合は食後で良いですが、甲状腺ホルモンやSAMeは食間の方が良いです。
うつ病とADHDと、統合失調症と自閉症はそもそもの根本が違います。うつ病と躁鬱病とは全く違う病態です。これらの疾患では高容量必要になることが多いです。
ホモシステインを事前に調べている方は、アンダーメチレーションではSAMeを使いますが、SAMeを使うと回路がぐるぐる回ってホモシステインが急激に上がり、動脈硬化のリスクになる場合があるので注意をしてください。ホモシステインが元々高い人は、最初にB6、B12を摂ると下がります。
4. 症例
4-1. 症例1 33歳女性、うつ、慢性疲労
症状
■朝起き上がれない
■首、肩、背中、腰のこり、痛み
■倦怠感が続く
■頭がぼんやりとする
■疲れて眠気がくるのに、寝付けない
■アレルギー(幼少より皮膚疾患。良くなったことが一度ない。
花粉症は高校生の頃より)
■精神的に鬱気味
これらの症状による問診と血液検査などの検査結果の両方とも重要なので、現病歴をいかに詳しく聞くかが、メチレーション状態や生化学インバランスを診るコツです。
僕の場合は、問診票を使って洗い出していますが、それをもとにさらに聞き込みをします。自分からは言いたくないこともあり、聞かれれば答えるというセンシティブな患者さんは、トラウマや依存症のことなどを僕に話さず他のスタッフに話していたりします。聞きにくいことは、スタッフに聞いてもらっても良いと思います。
それをもとに問診をして先ほどの症状別の表を元に、これに当てはまるかとか、これはどうですかとかいうのを質問してください。
問診票
- 表現が難しい症状もある
- 症状の重症度の経過を追っていくとよいでしょう。
- スタッフが問診できるようになってもらいましょう
- 一緒に見て、項目を解説し、適切に項目を埋めるられるように手伝ってあげましょう
- 症状表を読み込む
- それぞれの症状のバランス感覚が大切。
- 100%の特徴を満たす人はいない
- 40%ならそれはすごく特徴を満たしている
症状には重要度がありそれらを全て聞くのは大変なので、確定的な症状を中心に聞いていくと良いと思います。アンダーメチレーションだったら完璧主義ですかとか、毎日靴下を同じ方から履かないと気が済まないですかとか。水道の元栓を何度も締めないと気が済まないかなど聞いてみてください。
大事なことはバランス感覚で、100%の特徴を満たす人はいません。どちらかに40%当てはまれば上々です。
これまでの対処
心療内科 使用の薬:リボトリール、レンドルミン
サプリメントビタミンCビタミンB系、ビオチン亜鉛ボスウェルケルセチンミヤリサン
ブルーベリーエキス 他
体調に変化の自覚症状があったのは、ビタミン系サプリ、亜鉛、整腸系
生活習慣
◇喫煙 30歳くらいの頃、あまりの体調の悪さに吸えなくなってしまい、以後1年以上禁煙状態となったが、その後仕事のストレスから喫煙再開。
◇飲酒 もともと好んでいたのにも加え、20代の頃は、仕事や生活のストレス、不眠等の解消の為、ほぼ毎日。休肝日はほぼ無い状態。28歳頃より体調の悪化に比例して、少しずつ飲めなくなり、一時禁酒状態になるも最近は体調が良い時には時々たしなむように。
◇幼少より甘いものが苦手だったが、喫煙をやめた後好む傾向になる。味の濃いものや塩味・タンパク質系は好物。糖質制限をすると調子がいい
これらのことを踏まえてさらに見ていきましょう。
これまではリボトリールやレンドルミンという睡眠薬や、色々なサプリメントを使って、自覚症状が変化あったのはビタミン系、亜鉛、整腸系でした。生活習慣では喫煙と飲酒がやめられないっという依存状態が見られます。
食の嗜好としては、塩味、たんぱく質系が好物とあり、塩味が好きなのは副腎疲労の可能性があります。糖質制限をすると調子が良いというのは要するにタンパク嗜好だということです。タンパクを摂ると調子が良いということは、メチオニンを摂るとSAMeがいっぱいできて、メチレーション回路が回るのかもしれません。
血液データも見てみましょう。
この人の場合は、白血球6,420で、好塩基球パーセンテージが1.1なので、好塩基球数の実数は70ぐらいです。ギリギリでアンダーメチレーションになります。血液データ的に色々問題はありますが、アレルギーや鬱があるのはアンダーメチレーション、寝付けないのは両方の働きがあります。不安が強いのは、オーバーメチレーションの症状でしょう。
リボトリールやレンドルミンなどの睡眠薬系が効くのはオーバーメチレーションの人の特徴なんですけども、必ずしもそうとは限りませんので注意してください。依存症体質はアンダーメチレーション、タンパク質好物もアンダーメチレーションです。この方にはアンダーメチレーションの治療をしました。
4-2. 低メチル化の特徴
- 治療に抵抗性のあるうつ
- 表向きは落ち着いているが、内心は神経質
- 強迫神経症の傾向、もしくは強迫神経症
- 学生時代は自発的であった
- 完璧主義者
- 学校やスポーツ、もしくは他の分野で競争心が強い
- 内向的:孤立しがち
- 権力者に対して反抗的
- 柔軟性がない
- ヘビースモーカー、ギャンブラー、その他の刺激性の強い物事への依存
- ベンゾを長く使うほど、悪化する。メチル基を枯渇させるから。
アンダーメチレーションの人でも睡眠薬が効く人は効きます。ただ大事なことは、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬を長期間使ってる人はメチル基が枯渇しているので、アンダーメチレーションを助長してる場合があります。薬を漸減していくことが求められます。薬の離脱症状を最小限に抑えるには、高タンパク食が有効です。
4-3. 症例2 35歳女性
会社業務非常に多忙
朝9時から夜19時まで4年間激務⇒ストレスの調節がうまくいかない
その後、非常に疲れやすくなった。それが3年くらい続いている。
症状
■朝、起きることが出来ない。⇒ 朝弱く、夜に強い
■倦怠感が強い
■月に1回は疲れて寝込んでしまう。
■月経前症候群が強い
■便秘傾向
食事
朝はスムージーのみ、昼、夜の2食⇒朝は食事、サプリが飲めない
甘いもの、コーヒーが大好き 但し、食後に眠くなる
この方は、典型的な副腎疲労タイプのパターンです。
ヘモグロビンが11で、フェリチンが6.5しかないので貧血がひどいですが、他のデータを見てみるとGOTとGPTの差が離れていて、亜鉛とALPが低いですから、一見して亜鉛とB6不足です。メチレーションを表す数字は白血球の8,400と、0.7%かけると、好塩基球の実数は70くらいなのでメチレーションは正常だと思います。
4-4. ピロール障害の特徴
- 極度な感情の起伏がある
- 幼少時代から高い頻度で発生する恐怖感。
- 短期記憶障害
- 本が読めない
- ストレスに弱い
- ヒステリー
- 夢を覚えていない
- 朝の吐き気
- 朝食をとらない
- 宵っ張り
ストレスの調節が悪い、朝弱い、朝食を抜いてるというところはピロール障害の可能性大です。ご自分では言わないことがあるかもしれないので、夢を見るか、ストレスに弱いか、子どもの頃のことについてを問診で追加して聞いてください。
4-5. 症例3 40歳女性 気分の落ち込み、慢性疲労、妊娠希望
症状
■肺炎と副鼻腔炎を患い、以降疲労が抜けない。
■最近2ヶ月は特に顕著で頭痛と少しめまいがある。
■少し外出しても疲労を感じるようになった。
■気分の落ち込みあり。
■ 空腹時に動悸、めまいすることも2度あった。
■ 不妊治療のため、8ヶ月前から漢方医のもとさまざまな栄養補助食品は摂取している。
■ 少し改善したように思われたが、ここ最近疲労感が強くなった。
■フルタイム勤務で二人目不妊。
この方の症状の原因は、重金属の影響です。結構アマルガムが入っているのにもかかわらず、水銀が振り切れるほど出ていないので、恐らく重金属の排泄障害があるのでしょう。身体の中にどこかに炎症を起こしていたり、腸内環境がうまくいってない場合、上咽頭炎がある場合は、炎症のせいでグルタチオンが枯渇していて水銀がうまく排出できなくなってしまいます。
4-6. 重金属タイプの特徴
- イライラ、しばしば怒り
- 学業成績と精神状態が比例
- トリガーもなく突然発症
- 人格の変化
- 持続する腹痛(食事によらない)
- 口腔内金属味
- 息がくさい デトックス治療で軽快
重金属によるうつの症状は、突然の発症や、腹痛を伴う、口腔内に金属の管があるなどがありますが、治療的診断によればデトックス治療をしたら軽快するということが一番の特徴だと思います。
4-7. 症例4 39歳女性
- 高校生からレクサプロ、ジアゼパム、トラムセット、マイスリーなど使用
- ヒスタミン72 銅102 亜鉛102 CP23.2 KP20.78
- ヒスタミン↑からUM しかし、ジアゼパムに依存性あり
- UM+KPの処方にて徐々に良くなっていた。 しかしストレスにより最近増悪し、2㎎を1時間おきに使用しても収まらず、OMと考えるようになった。
- 症状はUM,OMの両者の特徴をもっている
- 不安とうつと自殺念慮があるが、二人の子供がいるため思いとどまっている様子
- 彼女にはレクサプロとベンゾの両者が必要に思える。
- 同様に彼女にはSAMeとナイアシンの両者を投与すべき?
ヒスタミン72はやや高く、銅102、亜鉛102、CPはセルロプラスミン23.2、KPとはクリプトピロールで20.78、ピロールが高いです。
アンダーメチレーション、ピロール、銅が102ですが、亜鉛は低くないですが、セルロプラスミンが23.2で少し低いです。この方の場合はアンダーメチレーションとピロールの処方をして徐々に良くなったそうですが、ストレスによって増悪してうまくいかないということでした。診断が間違ってオーバーメチレーションだったのではないかと考えるようになったそうです。
症状はアンダーメチレーション、オーバーメチレーション両者の特徴があります。オーバーメチレーションの特徴の自殺念慮があって、不安が強いです。二人の子どもがいるためになんとか自殺を思いとどまってる状態です。
アンダーとオーバーの両方があるから、SAMeとナイアシン両方入れた方がいいのではないか。その場合、葉酸をどうすればいいかという問題になります。ウォルシュリサーチ・インスティチュートの掲示板にあった症例ですが、両方あると確かに迷います。
一般にアンダーメチレーションの人はSAMeを使いますが、有機酸検査で葉酸不足と出る人もいます。ただ、アンダーメチレーションの人は、葉酸は摂ってはいけないので、この場合どうしたらいいのでしょうか。多くのアンダーメチレーション患者は葉酸欠乏ですが、うつ病症状にある場合は葉酸は避けるべきというのが、ウォルシュの答えです。
4-8. 葉酸どうすればいい?
患者がUMで、SAMeでうまく反応したが、有機酸検査では葉酸不足と出ている。葉酸を摂るべきでしょうか?
- 多くのUM患者は葉酸欠乏。しかし うつ病、不安、強迫障害、運動障害が主な症状である場合、葉酸は避けるべき。
- 多くの場合、メチルフォレートがメチル化を改善するが、全ての形態の葉酸は強力な脱アセチル化酵素阻害剤として働き、セロトニン神経伝達を低下させるため、悪化する。
- その一方で、低セロトニンが病態に関係しないUM患者(自閉症患者など)は葉酸治療が奏功する。
- 患者治療プログラムを考えるときにはメチレーションとエピジェネティクス両者を考慮する必要がある。
うつ病や不安など低セロトニンが病態に関係しないアンダーメチレーションの人は葉酸を摂るべきです。自閉症の人は低メチレーションなので、葉酸を摂ったほうがいいです。セロトニンが第一義に関係しないからです。セロトニンが第一義に関係するうつ病の場合は、葉酸を避けた方がいいということです。
シナプスにおけるメチレーションと、全身におけるメチレーションがあり、葉酸はメチレーション回路を回します。ですがシナプスにおいて葉酸を入れると、メチレーションを低下させます。そのためうつ病や低メチレーションの人には葉酸は使わない方が良いですが、自閉症の人の低メチレーションは使った方がいいです。
4-9. 症例5 61歳女性 ベンゾジアゼピンが手放せない
- 20才の時からずっと心配性、不眠が続いている。
- 治療方針について週に数回質問の電話がかかってくる。
- 非常に神経質。
- hsCRP 1.0
- Glu 83、インスリン5.6、HOMA-IR 1.1
- TSH 3.38 、fT4 1.3; fT3 2.6;
- フェリチン28 Cp 18
- Cu 69
- Zn 74
- FC%21.7
- FCI 15 WNL Cu:Zn 0.93
甲状腺機能は潜在的に低下していて、低血糖気味です。
4-10. ウィルソン病
- 常染色体劣性遺伝 胆汁中への銅排泄障害による
- 先天性銅過剰症。
- 血清セルロプラスミン低下(20mg/dL未満 )
- カイザー・フライシャー角膜輪
- 精神神経症状
この方は、遺伝的な銅の蓄積病であるウィルソン病です。角膜に、銅が溜まっていて、カイザー・フライシャー角膜輪ができる有名な病気で、精神症状も出ます。血中銅が下がってくるのが特徴的です。血中銅が低くてもほとんどはウィルソン病ではないですが、精神症状や肝硬変があり、血中銅が下がってたら、このような病気もたまに隠れています。
セルロプラスミンが低く、遊離の銅が低いのが特徴です。
4-11. 効果が出るまでの期間
SSRI 数時間〜 輸送体に結合し、 セロトニン活性を上げる | ||
ビタミンB6 1週間〜 血中濃度上昇 | ||
亜鉛 2ヶ月以内 MT合成亢進 | ||
ナイアシン、 1,2ヶ月 輸送タンパクの遺伝子発現亢進 葉酸など | ||
SAMe 3〜9ヶ月 輸送蛋白の遺伝子発言抑制、 タンパクの半減期に関わる |
治療の効果が出るまでの期間は、薬に比べて時間がかかることが多いです。時間がかかるということを最初からお伝えしておくと良いです。治療にはモニタリングが必要ですから、亜鉛、銅、セルロプラスミンは3ヶ月後に測ってみたら良いと思います。2ヶ月で変わることは多いですが、亜鉛のレベルは誤差が出ます。朝と晩で測っても異なるし、尿欠してたら亜鉛が高く出ます。亜鉛は摂っている量が倍になると、9〜10くらい血中濃度が上がってくるのが一般的です。そこから大きく外れてたら再検査してみてください。
マーケティング戦略の用語でUnder-promise and over-deliverという言い回しがありますが、約束を控えめにして結果を大きくした方が喜ばれることが多いです。特に治療期間の場合は、1年かかりますと言って3ヶ月で治ったら喜ばれますが、逆だとひどい目に合うので注意してください。
特に自覚症状の改善度については、こちらが改善してると思っていても、患者さんが自分で良くなってることに気が付いてないということは、良くなっていないということなので難しいところです。
4-12. 薬との使い分け
- 初期の数か月は併用が原則
- 後に明確な症状改善が得られていれば、精神科医の元での慎重な減薬を相談
- 減薬の目標は、向精神病薬の中止ではなく「最善の効果が得られ、副作用が少ない投与量を明確にすること」
自閉症、統合失調症、躁鬱病は減薬が難しい病態なので、完全に中止するのではなくて、副作用が少ない投与量まで減薬することを目標にしてください。
4-13. 副作用について
- 亜鉛、B6は嘔気を起こすことがある(特に初期から大量に入れた場合)
- 亜鉛が不安を起こす事がある(銅に影響するため)
- 亜鉛は鉄の吸収を阻害する
- UMにマンガン投与はパーキンソン症状悪化
- B6十分な人にB6投与は悪夢
- OMにメチオニンは不安、自殺企図
- ピロール以外の治療は時間がかかる 治療初期に悪化する事がある
亜鉛を飲んで吐き気を感じる方は、朝食に摂らずにお昼や夕食後に摂ってください。また、亜鉛と鉄欠乏がある方は、鉄は亜鉛の吸収を阻害するので、鉄欠乏が重度出ない限り同時に摂らないほうが良いでしょう。
アンダーメチレーションの方でマンガン投与する人はあまりいないと思いますが、ドーパミンを抑えるため、パーキンソン症状が悪化することがあります。
B6も過剰摂取をすると悪夢が出ることがあるので、オーバーメチレーションの場合は、菜食主義にした方が良いです。アンダーメチレーションの人は、いっぱい肉を食べてメチオニンを作った方が良いでしょう。このようなことは、事前の説明が大事です。
4-14. 妊娠したらどうするか
SAMe
・依存している場合、出産までは50%減量。200mg以上を服用しない。
そうでない場合、最初の4ヶ月間は中止が推奨
・SAMeが優先的に胎児に行き、潜在的に問題を引き起こす可能性
・赤ちゃんが子宮内の非メチル化環境で発達することは理想的ではない
葉酸 ・毎日800μg以上(特に妊娠第2期まで、二分脊椎、自閉症の予防)
亜鉛 ・ 投与量の半分に減量。
・胎児の血管新生に対する銅の重要な効果を損なう可能性。
・亜鉛レベルが低すぎると胎児の成長が損なわれるので適量は必要
ビタミンB6 ・投与量を半分にする。水溶性ビタミンであるため、速やかに変化。
妊娠した場合、SAMeは出産まで50%減量してください。そうでない場合は、子宮の中のメチル化に影響しないためにも最初の4ヶ月間は中止が推奨されてます。妊娠後期なら非常に安全だといわれているため、産後うつの人にSAMe使う場合がありますが、統合医療の情報発信を見ると、安全性が確立されていないとあるため、慎重に扱われた方が良いと思います。
葉酸を摂ることに異議はないですし、亜鉛も胎児の成長に絶対必要ですが、多すぎると血管新生に役立つ銅が少なくなりすぎるので、投与量の半分に減量するのが推奨されてます。
この治療は根本治療ではありません。亜鉛やビタミンB6、SAMeもサプリをやめたら元に戻るので、そこが一番の問題点です。遺伝的な性質を改善する方法ではないということ、コストを常に考えないと続けられません。そのため症状が安定したらより経済的な方法を探っていく必要があります。
5. うつ以外への疾患への対応
5-1. ADHDの治療
不注意が主症状の場合
半数以上に葉酸、B12,亜鉛、コリンの欠乏が見られる。
これらサプリメンテ―ションで集中力改善が期待できる。
衝動性、多動が主症状の場合
銅亜鉛バランスが大きく崩れていることが多く、これがノルエピネフリン、
アドレナリン過剰症状をもたらす。
両者を合併している場合
さらにメチレーション異常、重金属負荷、ピロール異常などが背景に
あることも多く、検査による正確な診断が必要。
ADHDは、注意欠陥不安障害です。不注意が症状の場合と、多動が症状の場合でサプリメントの使い分けをしたらいいというのがウォルシュ博士の見解です。基本的にはメチレーションや、銅亜鉛バランスを見てください。
ADHDで注意することはタイプ別で治療が違うことです。ADHDの患者さんは不注意になったり過集中になったりしますが、これは注意が欠陥しているのではなくて、注意の調節力が欠陥しています。薬で対処できることとできないことがあるので、この注意力を調整するためには個別化医療による栄養素の投与が良いと思います。
行動障害が合併することがあるので、銅・亜鉛バランスがとても大事です。暴力行為は、銅・亜鉛バランスが狂っている人が多いです。その辺りについて、ウォルシュ博士の本にとても詳しく書いてありますのでぜひ買って読んでみてください。
半年以上の栄養療法で薬を中止できてる人は70%いるので、うつとADHDはどちらかというと軽症です。
5-2. 強迫神経症
比較的軽症な強迫神経症という病気があって、ほとんどの場合が低メチレーションです。このような方には、メチル化の治療をしたら良いと思います。グルタミン酸の障害もあるので、Nアセチルシステインがいいという報告もあります。
- 重症は殆ど低メチレーション、MTHFRに変異あり
- さらに、メチル葉酸にて症状悪化
- ドーパミン受容体活性の低下が報告されている。
- SAMeやメチオニンで効果が見られることが多いが事前に
- ホモシステインを評価する。心血管リスクがある例では
- 事前にB6などでホモシステインを下げておく。
- もう一つはNMDA受容体のSNPによるグルタミン酸
- トランスポーター障害。これの正常化にNACがよい。
5-3. 脳に非可逆性変化が生じている栄養療法だけでは×な疾患
可塑性が関係する
•依存症
•過食症
酸化ストレスによるメチル化の恒久的変異(GSH,MTの枯渇)
•自閉症 3歳
•ウィルソン病 15歳
•統合失調症 20歳 双極性障害 25歳
栄養療法だけでうまくいかないのは、脳に非可逆性変化が生じている、例えば依存症や過食症など脳の可塑性が関係している場合です。もしくは、酸化ストレスで脳のメチル化のブックマークが変わってしまっている場合も難しいです。
酸化ストレスが強くなっている人は、グルタチオンやメタロチオネインが完全に枯渇しています。これらの疾患の特徴は、突然の発症で永続的な症状の継続です。普通、急性発症は急性の病気だから治るはずですが、急性に発症したのになかなか治らないのはこれが起きているからです。
自閉症3歳、ウィルソン病15歳、統合失調症20歳、双極性障害25歳など、病態は似ていますが、好発年齢が違います。これらの疾患には、栄養療法プラスαを行っていかなければなりません。
5-4. 統合失調症の治療
統合失調症の治療も同様で、メチレーションに応じて上記のような対処をしていきますが、抗酸化対策も重要です。本来、遺伝形式があると分かった時点での予防が大事です。
5-5. 自閉症
- エピジェネティクス障害により、異常な低メチル化、酸化過剰、重金属への脆弱性をもつ
- つまり「低メチル化の人が圧倒的な酸化ストレスを引き起こす
- 環境障害を経験する事で発症
- 予防の重要性(遺伝要因)
- 妊娠20~24日目が重要(サリドマイド児)
- 活性化葉酸、抗酸化対策
- 脳の成長時期に不可逆性変化
→治療の早期介入が重要
自閉症の特徴は、エピジェネティクス障害です。ほとんどの人が低メチレーション、酸化過剰で、重金属への脆弱性を持ってます。いろんな論文を重ね合わせると、低メチルの人が酸化ストレスを引き起こし、環境障害を経験することで発症します。予防が何より大切です。
サリドマイドという免疫抑制剤を使った場合、サリドマイドを妊娠20日〜24日に飲んでた人のみ発症しました。計画的に妊娠をして、遺伝子変異がある場合活性化葉酸を摂っておくことです。
自閉症は他の病気に比べて、発症時期が早いです。脳は4歳までに8割できてしまうので、4歳までの成長時期には不可逆性変化が起こることがとても大事です。そのため、早めに発見して対策をすることが望まれます。1歳と6歳で治療するのとでは、治療期間は3倍〜5倍違います。
統合失調や躁鬱は、なかなかうまくいかないことが多いので、栄養療法以外のことも重ね合わせないと難しいです。
5-6. 栄養療法の限界
- この治療は、栄養素を使って 神経伝達物質の代謝を促す。
- メチレーションを調節してシナプス間隙の神経伝達物質量を調整する。
- 神経細胞、シナプスの物理的変性には効果がない。
- 海馬、偏桃体の萎縮
- シナプスの可塑性による変異
栄養療法は、栄養素を使って神経伝達物質代謝を促すものなので、神経細胞やシナプスが物理的に変性してしまっている場合はうまくいきません。
5-7. 自律神経と体性神経
上記は自律神経と体性神経の図ですが、この二つの神経は別々のもので、交わることはありません。自分の意思で汗をかいたり、脈拍を早くしたり、鳥肌を立たせることができないでのは自律神経と体性神経が別々だからです。
でも、時には短路が生じることがあって、例えばびっくりして心臓が止まりそうになるとか、怖い話を聞いたら鳥肌が立つとか、ストレスで胃が痛くなるとか、それは交わりが起こることです。これが毎日びっくりしたり、毎日ストレスで胃が痛くなっているとだんだんこの神経が太くなってきます。
持続的に興奮するシナプスは、より容易に伝達が起こるようにどんどん変化していきます。これをシナプスの可塑性といいます。
解剖学的に、シナプスに達する軸索が枝分かれして、より広い面積でニュートン細胞体と向き合うようになります。
この結果シナプスの有効面積が増大し、より大量の伝達物質がシナプスで放出されるようになるのです。
これと同じことが、依存症にも起きます。依存症というのは、報酬系が過剰活性化された状態です。ドーパミンは嬉しいことがあると分泌されますが、嬉しいことを想像しただけでも分泌されます。
この報酬系の刺激は、常に刺激すると徐々に少しの刺激でも活性化されやすくなります。コカイン中毒の人はコカインを見ただけで興奮します。コカインやアルコールを辞める治療はありますが、単に罰則を厳しくしたり、グループの皆で話し合って終わりなど医学的に基づいていません。
報酬系が活性化されている状態を止めないと医学的には治らないです。それが活性化していくと、ついには潜在的な意識の働きかけでも同様の行動を刺激するようになります。例えば、コカイン中毒の人っていうのは一回辞めても、サブリミナルでテレビ見てるうちに0.01秒のコカインの画像を入れたらそれで反応して、またコカインをやりたくなります。潜在意識まで落ちてしまうとそういうことになります。
5-8. マインドフルネス瞑想法
- ストレスをコントロールできる
- 痛みをコントロールできる
- 集中力を高める
- ネガティブ思考からポジティブ思考へ
- 心と体をリラックスさせる
マインドフルネス瞑想法の実践
瞑想は、シナプスの可塑性を逆に戻す試みで、色々な文献を見るとマインドフルネスの実践を勧めています。“今”という瞬間に意識を集中するという方法で、仏教の瞑想法がベースになっています。
ドーパミンは興奮系神経ですが、それとは別に抑制系の神経があります。人間の場合、脳を抑制させてるのは前頭葉です。前頭葉で統合して、抑制させる抑制系の神経が弱っている人が依存症になってしまいます。
5-9. 不可逆性変化を伴う疾患への対策
- 自閉症、統合失調症、双極性障害
- 家族歴があれば、予防的処置。
- 特に酸化ストレスを抑制する。
- 自閉症は24~29週の妊娠期間が重要
- 脳神経再生治療(経頭蓋磁気治療、Edelfo)
経頭蓋磁気治療とは、うつ病の患者さんにも用いられている神経を刺激して抑制されている神経を元に戻す治療です。コカイン中毒の人の7割が改善しています。
Edelfoは、脳由来の神経栄養因子をサプリメントで投与して脳を戻す方法です。これらはコストがかかりますが、脳神経を戻すという意味では根本治療につながる可能性があります。自閉症、統合失調症、双極性障害にはこういった治療も混ぜることが必要かもしれません。
5-10. 双極性障害のメカニズムを解明
- 2018年5月8日、米国精神医学会での発表
- エピジェネティックな傷害が多数のイオンチャネル遺伝子の発現を突然、かつ永続的に変化させる。
- ニューロンの外側にカリウムイオンが過剰に蓄積し、膜電位を形成できなくなるため、局所の脳機能が低下しうつ症状が出る。
- 障害部位はゆっくりと回復し、細胞膜の外側のカリウムが除去されるにつれ躁病が戻る
- この発見は同疾患の画期的な治療につながる可能性がある。
上記は双極性障害のメカニズムは解明されたというウォルシュリサーチの最新の発表です。躁鬱病は、アンダーメチレーションとオーバーメチレーションが入れ替わるという不思議性があります。今までの治療は、躁のときは躁用、鬱の時は鬱の薬でした。躁鬱病とは、カリウムイオンが細胞の膜の外から中に入れない状況らしく、細胞が働かなくなるので鬱になり、カリウムが長年かけて入ってくるようになると、元々の躁が顔を出すという病態だということが解明されたので、恐らく新しい治療に繋がっていくのではないかと思います。
5-11. 穏やかに、忍耐強く!
薬、栄養素、磁気治療、マインドフルネス、神経再生、様々な治療を使い分けて最善の状態を目指しましょう。
患者さんがあなたに会いに来た理由を理解しましょう。
そのためには治したいリストを書いてもらうといいと思います。旅行に行けるようになりたいとか、そういうのを僕は書いてもらっています。
今回は触れませんでしたが、腸内環境と重金属の影響もとても大事ですので、この2つは常に考えるようにしてください。