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宮澤賢史

自閉症児が増えた本当の原因その2

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

前回は、「遺伝的に弱い赤ちゃんは、生まれた後もフォローが必要」という話でした。

https://orthomolecularmedicine.tokyo/cause/

今回は、葉酸とがんの関係の話からはじめたいと思います。

葉酸とがんの関係

葉酸の乳がんの成長と進行に対する影響については以前から賛否両論があります。

乳がんに対する防御効果を持つという報告もありますが、一方で高用量の葉酸は乳がんの成長を促進するという報告もあります。

カナダ・トロント大学のキム博士ら研究グループは、2014年2月に「高用量の葉酸サプリメントの摂取が、ラットの乳腺組織にあるがん細胞の成長を促進する」と発表しました。

キム博士は、

このことは非常に重要な意味合いを持っています。
なぜなら、北米の乳がん患者は、葉酸強化食品やサプリメントによって大量の葉酸を摂取することが多いからです。
彼女らは、ビタミンをはじめとしたサプリメントを使うことが多く、その割合は乳がん患者がもっとも高いのです。

とコメントしています。

前回お話しした政府の政策によって、北米における葉酸の消費量は過去15年間にドラマチックに上昇しています。

PLOS ONE
Folic Acid Supplementation Promotes Mammary Tumor Progression in a Rat Mode
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0084635

なぜ、葉酸を補充するとだめなのか?

さてここで、ひとつ疑問が生じてきます。

前回お話ししたように、葉酸はDNAの合成に関わるビタミンです。

葉酸はプリンとピリミジンの生合成に必須の補酵素であり、DNA合成に重要な働きをしています。

だから、葉酸が欠乏したままでは細胞分裂がうまくいかなくなります。
理屈で考えれば、葉酸を補充することは正常な細胞分裂を助け、がんを予防するように思えます。

なのになぜ、葉酸サプリメントががんを増やしてしまうのでしょうか?

前回にご紹介したベン・リンチ博士がこの疑問に対しても明確に答えをだしています。

理由は、「(一部を除く)サプリメントの葉酸は未活性型の葉酸だから」です。

前回お話ししましたように葉酸には活性型と未活性型があります。

https://orthomolecularmedicine.tokyo/cause/

緑黄色野菜のサラダには、活性型と未活性型の両方の葉酸が含まれています。それに対してサプリメントの葉酸は、すべて未活性型です。未活性型の葉酸が活性化されるためには、いくつもの過程が必要です。

その活性化を行う酵素や補酵素が十分でなかったり、うまく働かない場合、活性型葉酸は十分つくられず、未活性の葉酸が体内にたまってしまいます。

また、活性化葉酸が働くのには、葉酸結合蛋白(FBP)が必要ですが、非活性型の葉酸サプリメントを摂った女性の体内の葉酸結合蛋白は激減することがわかっています。

Am J Clin Nutr. 2009 Jan;89(1):216-20.

つまり、葉酸の活性化がうまくいかない人が、葉酸サプリメントを摂取すると、活性化葉酸の働きも邪魔されてしまう恐れがあるのです。

自閉症と葉酸とメチレーション

話は、自閉症に戻ります。

乳幼児が言葉を喋り始めるようになるために、葉酸は非常に重要な役割を担っています。

活性化葉酸が、様々な物質をメチル化することによって、

  • DNAが合成されたり
  • 神経伝達物質を作ったり
  • 炎症を抑えたり
  • 解毒をおこなったり

することができるようになるからです。

メチル化というのは、化学反応のひとつで、この一連の反応の事をメチル化経路、もしくはメチレーション回路と言います。

葉酸が活性化されないと、神経伝達物質が作られないので、脳の発達が十分進まず、言語の習得に困難が生じます。

自閉症の予防、治療には葉酸をうまく働かせ、メチレーション回路を回すことが大変重要です。

葉酸がうまく働いていない人

「葉酸がうまく働いていない人が、葉酸サプリメントを飲んだら悪化する可能性がある」

ということですが、葉酸サプリが悪影響を及ぼしそうな人は葉酸の活性化がうまくいかない人です。

だから、葉酸の活性化ができるかどうかというのは、非常に重要な話なのです。

そういうわけで前回の繰り返しになりますが、葉酸活性化酵素(MTHFR)の遺伝子を測定することが大切です。葉酸の活性化のカギを握る遺伝子であり、日本人の40%以上に変異が見られることがわかっています。

MTHFR遺伝子の型によって、血液中の活性化葉酸と未活性型葉酸の濃度に違いが出ることも報告されています。

J. Nutr. December 1, 2012 vol. 142 no. 12 2154-2160

2000年以降、遺伝子検査の価格崩壊が進みました。そのおかげで、この分野の研究はかなりすすみました。

今までお話しした

  • 実は、サプリメントの葉酸(folic acid)と食事中葉酸(folate)は異なるものである
  • サプリメントの葉酸は、食事の葉酸より活性化されにくく、蓄積されやすい
  • サプリメントの葉酸は、活性化葉酸の働きを弱める
  • MTHFRの遺伝子変異は多くの人に見られる(アジア人では40%以上)
  • 遺伝子変異があると最高70%活性化の働きが落ちる
  • 自閉症児の多くにMTHFR遺伝子の変異が見られる

という話は、ここ10年で明確になってきた、サプリメント業界の最新情報です。

自閉症がこれほどまでに増えた原因は、統計的にみるとおそらく化学物質による汚染が第1の原因かもしれません。

しかし、今回ご紹介した

葉酸摂取によって、本来は死産であった胎児が無事に生まれるようになったこと
しかし、出生後は遺伝的な弱さをカバーしてくれるしくみがないこと
葉酸サプリメントは実は葉酸の活性化を邪魔すること

という要素は現状に少なからぬ影響を与えているのは間違いのないところです。

まとめ

自閉症は、1990年以降、妊婦に対して世界各国が葉酸サプリメント摂取を推奨し始めてから劇的に増加しています。

皮肉なことに、「通常なら死産になる子供が葉酸のおかげでちゃんと生まれることができるようになったから」というのが理由の一つです。

神経管異常を起こす遺伝子と、自閉症を起こす遺伝子が一部共通していることが近年の研究でわかっています。

妊娠中に葉酸を投与する事で神経管異常のリスクは逃れることができるようになりました。

しかし、残念ながら現時点では、各国の対応は、出生時の神経異常の防止のみにとどまっており、生まれた後のフォロープログラムはありません。

また、神経系に問題を引き起こすMTHFR遺伝子変異はアジア系に多いという事がわかっています。

以上の事から考えて、今後もアジア圏における自閉症の発症頻度に注意する必要があります。

ただ「活性化葉酸サプリ」をとればいいという単純なものではありません。

サプリメントをとることでかえって問題が複雑になる場合もあります。

遺伝子検査のすすめ

今後出産を予定している方(特に高齢出産や流産の既往のある方、遺伝的に心配のある方)、お子さんが自閉症と診断された方に、私がお勧めするのは、MTHFRをはじめとした遺伝子検査を受けてみることです。

そこで遺伝子変異があるなら、まずは、この分野について勉強してみるのがよいと思います。

もちろんこの分野に詳しい医師に相談してみるのもよいでしょう。

さて、この葉酸活性化の問題ですが、解決手段の一つとして、すでに活性化されている葉酸サプリメントを使うという方法があります。

すでに活性化されているのでMTHFRの遺伝子変異があっても、その問題を回避することができます。

しかし、使い方を間違って問題を起こしている方が多数います。

 サプリメントが効かない、サプリメントで症状が悪化する
 爆発的行動、突然怒り出す

ということを経験された方は特に気を付けてください。

この分野に詳しいドクターの間では、活性型葉酸は全体の回路を整えた後に使うのが常識です。

自閉症児が増えた本当の原因

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

自閉症の発症率は68人に1人

アメリカ疾病予防管理センターが発表した米国における自閉症の発症率です。

Centers for Disease Control & Prevention
米国における自閉症の発症率
https://www.cdc.gov/ncbddd/autism/data.html

これは、2000年の調査における150人に1人と比べて、2倍以上の数字です。ここ10数年、自閉症の発症率の伸びが止まりません。

1970年には1万人に1人だった自閉症発症率がここまで上昇した原因は一体なんなのでしょう?

  • 認知されたこと?
  • 自閉症の診断基準が変わったこと?
  • 環境が悪化したこと?
  • ワクチン接種?

など諸説ありますが、私は「妊娠期間中の母体にのみ葉酸サプリメント摂取が奨励されたこと」が大きな要因だと考えています。

今回と次回、2回にわたって葉酸と発達障害の関係について考察してみたいと思います。

葉酸摂取推奨の流れ

葉酸はビタミンBに分類される生理活性物質です。

DNAの合成に必要であり、欠乏するとお腹の中にいる時の赤ちゃんのように細胞分裂の盛んな場所に深刻な影響を与えます。

「二分脊椎」といのは、生まれつき脊椎の一部が形成されない状態で、運動麻痺、感覚障害などを引き起こしますが、このような発達異常もお腹の中にいる時の葉酸不足が大きく関わります。

そのような出生時障害を予防するために、厚労省が葉酸サプリメントの摂取を推奨したのは、平成12年のことです。

厚生労働省
妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取についてhttps://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1212/h1228-1_18.html

これによると、妊娠を計画している女性は、障害の発症リスクを減らすために、

  • 妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間、葉酸をはじめとした栄養のバランスのとれた食事をとること
  • 通常の食事からでは十分な葉酸摂取が困難なので、当面「食事に加えいわゆる栄養補助食品からの葉酸摂取」をすること

と勧告がなされています。

厚労省がこのような英断を行った背景には、日本における二分脊椎発症の増加と、諸外国における葉酸摂取推奨の流れがあります。

葉酸と神経管閉鎖障害の症例対照研究は1980年代に多く行われました。

その結果、英国、米国が1992年に、カナダ、アイルランド、ニュージランド、ノルウェーなどが1993年に強化食品、サプリメントによる1日0.4mgの葉酸摂取を勧告するに至りました。

その後、多くの国で二分脊椎の発症率の大幅な低下が報告されました。

活性型葉酸と不活性型葉酸

さて、先ほど「葉酸不足が二分脊椎の原因」と言いましたが、正確には、「体内で葉酸を活性化できない赤ちゃんの葉酸不足が原因」です。
葉酸には活性型と不活性型があり、働きをするのは活性化型のみです。

葉酸を活性化できない赤ちゃんには余計に葉酸を足してあげることで、本来の働きを助けてあげることができます。

1990年代当時、すでにこのことは動物実験で確認されていました。
このように酵素の働きを、栄養素の量で補ってあげるのは、まさに分子栄養学の考え方です。

葉酸の摂取量を多くすることで、遺伝的に弱い人でも活性化葉酸の体内量を確保できます。

この葉酸を活性化する酵素は、MTHFR酵素(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)と呼ばれています。

この酵素を作るための遺伝子に問題がある赤ちゃんが正しく成長するためには人より余計に葉酸が必要です。
というわけで、1990年代前半から始まった葉酸サプリメント摂取の推奨は、各国の二分脊椎の発症を減少させました。
その推移は、先ほどの厚労省のホームページにも記載されています。

厚生労働省
妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取についてhttps://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1212/h1228-1_18.html

この成果は素晴らしいものです。

しかし、その時各国政府はまだ気が付いていなかったのかもしれません。
同時期から、自閉症の発症率が増加し始めることに・・・

このグラフを見てください。

様々な国、年代で行われた自閉症の発症率調査をまとめたものです。
これを見て頂くと、1990年ころから劇的な増加(!)を示しているのがお分かり頂けるでしょう。
葉酸サプリ摂取が、「二分脊椎発症率の低下」と「自閉症の発症率の上昇」を同時に起こした?
なぜ、神経の発達に必要な葉酸の摂取で、自閉症の発症率があがるのでしょうか?

葉酸活性化のできない赤ちゃんの出生率が上がった

MTHFR遺伝子研究の世界的な権威、ベン・リンチ博士は、こう言います。

妊娠期間中に母親が多量の葉酸を摂取した事で、MTHFR遺伝子変異を持つ幼児の流産の減少をひきおこし、自然淘汰の在り方を変えたという説がある。
これは、神経が発達する重要な時期に、より多量の葉酸を必要とする幼児の出生率が増加したことを意味している。
発達期により多くの葉酸を必要とする幼児が増えているのだとすれば、 子宮内にいた時と同等の葉酸濃度を維持することができない幼児の絶対数も増えているということ。
故に、自閉症のような発達障害を生じるケースは増加していると考えられる。

つまり、自閉症が1990年以降増加している理由の一つは、皮肉なことに、「通常なら死産や神経管異常で生まれてくる赤ちゃんが葉酸のおかげでちゃんと生まれることができるようになったから」なのです。

確かに妊娠中の葉酸によって、神経管異常のリスクは逃れることができるようになりました。
しかし、残念ながら現時点では、各国の対応は、出生時の神経異常の防止のみにとどまっており、生まれた後のフォロープログラムはありません。

葉酸摂取の推奨は、妊娠1ヶ月前~3ヶ月のみで、出生後のガイドラインはありません。

MTHFR遺伝子検査のすすめ

神経管異常を起こすMTHFR遺伝子変異は、自閉症の発症にもかかわりが深いことが近年の研究でわかっています。

しかし、新生児マススクリーニング検査(病気を早期発見するため赤ちゃん全員に対して、公費で行なわれる検査)には、MTHFR遺伝子検査はまだ入っていません。

以上の事から、我々の行うべき対応は、はっきりしています。

まずは、自分で検査をしてみましょう!

最近の技術発達のおかげで、MTHFR遺伝子は10,000円くらいで検査ができるようになりました。

この遺伝子変異はアジア系に多いという事もすでにわかっています。(日本人は40%以上)

生まれる前だけでなく、生まれた後も葉酸が必要

もう一つ重要な事は、生まれた後も葉酸のフォローが必要だということです。特に遺伝子変異がある幼児には葉酸の確保が欠かせません。

但し、葉酸サプリならなんでもいいというわけではありません。
ここが非常に重要な点です。

先ほどの厚労省のデータによると日本の神経管障害の発症率は70年代には10,000人に15人ほどでしたが、現在では、10,000人に5人ほどです。

仮に10,000人中、10人が神経管障害を逃れて、全員が自閉症になったとしても、爆発的な自閉症の発症率である68人に1人(10,000人中、147人)という数字とはかけ離れているように思えます。

実は、各国政府の行った葉酸政策の問題点は、今回お話しした「出生後の赤ちゃんのためのフォロー・プログラムがないこと」だけではありません。

「葉酸量の確保のためにサプリメントを推奨した」ということも非常に関係があることなのです。

次回に続きます。

https://orthomolecularmedicine.tokyo/cause2/

自閉症治療における最大のポイント

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

異常なスピードで増えている自閉症

数年前になりますが自閉症に関しての勉強会に参加しました。

かつて米国で1万人に1人といわれた自閉症ですが、2012年にはアメリカ疾病管理予防センターはその割合は88人に1人との推定を発表しています。

日本と米国で全く違う治療の実情

日本での治療は、トレーニング、家族のサポートと薬物治療が主です。

もちろん、薬は必要ですが、その目的は日中の精神状態の平穏を確保するためのものであり、根本治療ではないところが歯がゆいところです。

残念ながら、保険診療の範囲では、自閉症に対する根本原因を見つけるのは困難といわざるを得ません。

日本に比べると、米国には多くの自閉症治療機関や、患者さんの団体があります。自閉症の治療に関しては、日本と欧米では大分知識量に差が出ているとのことでした。

エイミー・ヤスコの治療方法

そんな中で、エイミー・ヤスコ先生は自閉症の根本治療を遺伝子レベルからアプローチする事で、多くの患者を改善に導いている先生です。

彼女によると、自閉症は原因がほぼ確定されています。

遺伝子変異、神経興奮毒素、連鎖球菌の感染、有害重金属の負荷、慢性ウイルス感染、性別・血液型・HLAタイプなどです。

これらが複雑に影響しあって、自閉症が生じます。

「なぜうちの子だけが自閉症になってしまったのか?」

という両親の質問に対して、彼女はダイアナ妃の事故を例にあげて説明するそうです。

あの時、車があれほどスピードを出してなかったら?
あの時、パパラッチがあれほど追いかけてこなかったら?
あの時、運転手がお酒を飲んでいなかったら?
あの時、シートベルトをちゃんとしていたら?

自閉症はそれらの多くのパズルのピースが組み合わさったときに発症します。

自閉症を治療するためには、まず体内の炎症、特に腸の炎症を抑えなくてはなりません。
ですから、サプリメントに加えて、食事の内容を様々な形で制限していくことが必要です。

結構大変なことだと思います。

自閉症治療の最大のポイント

これは講師の先生が教えてくれたのですが、

「2年以上かなり治療を頑張っていたのに結果がいまいちだった子供がいる。」とのこと。

何で治療が効かないんだろうと、思っていたが、つい最近、「実は、甘いものをやめさせることが出来なかった」とご両親から告白されたという事でした。

そのときは、そうなんだ、やはり大変なんだなと、あまり考えなかったのですが、先日、衝撃的な出来事があったのです。

発達障害の児童を教育する学校の校長先生と面談しました。

そこは、全寮制でお子様を預かることで、単に勉強を見るだけでなく、生活を全般にわたってみているということです。

驚いたのはいままで100%の人が留学もしくは復学を果たしていることです。

これはすごいことです。

食事、腸内環境が重要

なぜ、こんな効果がでるんだろう?といろいろ聞いてみてわかりました。

大きな理由のひとつは、「子供達に対するお菓子、甘いものの徹底禁止」だと思います。

これをするだけでも、子供の場合は格段に腸内環境がよくなります。
ここは全寮制なので、完全な指導ができるんですね。

食事を厳格にしないとなかなかよく治らない病態があります。
それは、腸内環境が絡む問題です。

特に子供の場合は顕著です。
甘いものや添加物、食物アレルギーをおこす食物は未熟な腸内環境を悪化させます。

サプリを含む様々な治療をしているのに自閉症が治らない人もいるのに、食事、生活指導でも改善する人もいる。

最近、測定した自分の検査結果がかなり低血糖になっているのをみて、改めて思いました。

「食事は大事です」

今回の話は一部の人にとっては当たり前だと思いますが、私を含め出来ていない人は食事の大切さを自覚しようね、という話でした。

遅延型アレルギーは食べ物を制限するための検査ではない

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

先日、次のようなご質問を頂きました。

遅延型アレルギーについてなのですが、欧米や米国のアレルギー学会では、遅延型アレルギーの科学的根拠は乏しいとする声明が上がってきており、同様に日本でも、日本小児アレルギー学会が推奨しないとの声明を発表した、というニュースを拝見しました。

また、免疫寛容が成立してくる過程で、IgG4が上がってくるという意見もありますよね。私の勤務先でも、遅延型アレルギーを実施しておりますが、このニュースを拝見して以降、この検査の是非について自分自身も混乱しております。

先生は、遅延型アレルギーについてどのようなお考えをお持ちですか?是非、ご意見を聞かせていただければと思います。

こちらについて回答させて頂きます。

 1 アレルギー学会はIgG抗体を否定

平成26年11月19日に、日本小児アレルギー学会が「食物アレルギーの原因食品の診断法としてIgG抗体を用いることを推奨しない」という声明を出しました。

内容を見ると、

  • IgG抗体の結果を信じて除去食を行っている患者がたくさんいる
  • IgG抗体は健常人でも上昇するので診断価値はない
  • IgG抗体の結果に基づく除去食のエビデンスは存在しない
  • この検査結果に基づく除去食は意味がないし、むしろ栄養失調になるので問題

という事のようです。

彼らは、IgGの上昇は免疫寛容の進行だと主張しています。

2 免疫寛容とアレルギーの違い

免疫寛容とは、特定の者に対して免疫を抑える仕組みのことです。肉はたんぱく質のかたまりで、人にとっては異物ですが、免疫寛容が起こることで食べ物として取り込むことができます。免疫寛容に異常をきたし、本来は異物とは認識されない飲食物を異物として攻撃するために起こるのが食物アレルギーです。

消化管には免疫を抑制する制御性T細胞が多く分布しています。この細胞の働きにより、経口摂取したものには免疫寛容が生じます「食物アレルギーが疑われても、免疫寛容を促すために、症状を誘発しない範囲で食物の摂取を進めるべき」だというのが、最新の食物アレルギーに関する考え方です。

これら一連の学会の主張は、一部を除いて非常に理にかなっていると思いますし、「食物アレルギーの原因食品の診断法としてIgG抗体を用いることを推奨しないこと」「アレルギーの根本治療として免疫寛容を促すこと」には私も賛成です。

しかし、私は「症状がなくてもIgG抗体が上昇する」「エビデンスがない」という2点については疑問を感じます。

3 食物アレルギーが精神症状を起こす事は認識されていない

IgG検査と症状の発現について、

「食物アレルギーIgG4検査は成人の慢性じんましんや他のアレルギー性皮膚疾患症状に対して診断価値がない」
(Int Arch Allergy Immunol. 2011;155(1):52-6)

など、典型的アレルギー症状とIgG検査の関連の論文は散見されますが、その一方で、精神症状とIgG検査の関連に言及した論文は見受けられないようです。

以下に示すのは、メイヨークリニックのホームページからとった、食物アレルギーの症状リストです。

  • 口内がひりひりする、うずく
  • じんましん、湿疹
  • 唇、顔、舌、のど、その他の部位が腫れる
  • 喘鳴、鼻づまり、または呼吸困難
  • 腹痛、下痢、吐き気または嘔吐
  • めまい、 もうろう状態または元気がなくなること
  • その他アナフィラキシー

この中には、「多動」とか「気分の落ち込み」、「疲労感」などはないですよね。

そう、一般的な医師の通念として、「精神症状は、食物アレルギーの症状としてとらえられていない」のです。

もともと、IgG検査は分子栄養学の世界で、特に精神症状を捉える指標として発達してきたものです。それが、いつのまにか一番大切な精神症状の把握が抜け落ちて、エビデンスの十分な蓄積がないまま簡便な臨床症状のマーカーとして商業ベースにのって広まってしまったのが実情でしょう。アレルギー症状とIgG抗体の上昇の関連については、精神症状を含めて再度評価しなおす必要があると思います。

もう一つの問題はIgG検査が単独で一人歩きしているということです。

4 食事とIgG抗体の関連性

私の調べる限りでは、IBS(過敏性腸症候群)患者において、食事とIgG抗体の関連性を認める報告があります。

IBS患者では対象に比べて、小麦や牛肉、豚肉やラム肉などのIgG抗体が上昇
(American Journal of Gastroenterology, Vol. 100, pp. 1558‐9.)

IgG抗体をもとにした食事の除去でIBSの症状が減弱
(Gut, Vol. 53, pp.1459‐64.)

また、その一方で精神疾患と腸内環境(リーキーガット症候群)に関する報告も多く認めます。

うつ病患者で、腸のグラム陰性桿菌に対する免疫グロブリンが上昇している
(J Affect Disord. 2007 Apr;99(1-3):237-40. Epub 2006 Sep 27.)

腸漏出症候群を治療することで慢性疲労症候群の臨床症状も改善する
(Neuro Endocrinol Lett. 2008 Dec;29(6):902-10.)

うつ病は脳の慢性炎症であることが最近の研究で明らかになっていますが、その炎症の元として腸は非常に有力視されているのです。
(So depression is an inflammatory disease, but where does the
inflammation come from?:BMC Medicine 2013, 11:200)

5 IgG検査は腸管バリア機能を評価するためにある

また、ポーランド、ルブリン大学の精神科医 Karakuła氏は、「ゾヌリンなどにより、何らかの形で腸粘膜のタイトジャンクションが開いてしまうと、腸管の透過性が亢進する(俗にいうリーキーガットの状態)。これによってより大きな分子が腸管バリアを潜り抜け血流に達するので、それが遅延型食物アレルギーを引き起こす。この状態は免疫反応を亢進させ、炎症性サイトカインを放出させ、それがうつ症状を引き起こす。だからうつ病患者において、腸の透過性とIgGレベルを測定するのは有用ではないかと思われる。」と報告しています。(Nutr Neurosci. 2014 Sep 30.)

この考え方は、至極当然であり、そもそも、IgG検査は食物を制限するための検査ではなく、腸管バリア機能を評価するための検査です。IgGと腸管は切っても切り離せない関係なんです!IgGと腸管免疫の関係を一切考慮せず、IgGだけをみて「エビデンスが不十分」とするのはそれこそ考慮がないと思います。

以上から、私は「IgG抗体上昇に伴うアレルギー症状としての精神症状が見逃されている可能性がある」「IgG単独のエビデンスは少ないが、腸内環境と精神疾患の関係を示すエビデンスは豊富であり、これらをまとめて総合的にとらえるべき」だと考えています。

6 問題は検査だけが独り歩きする事

そもそも、前出の日本小児アレルギー学会の主張の元になっているこのカナダアレルギー臨床免疫学会の見解(Allergy Asthma Clin Immunol. 2012; 8(1): 12.)を見て頂きたいのですが、彼らが心配しているのは、

  • 十分な説明がないまま、キットだけが業者から直接消費者に売られていること
  • 十分な知識のない医師や薬剤師のいるクリニックの待合室、薬局などにおいてあること
  • その結果が間違って理解され、食物制限をした子供が発育障害を起こすこと

なのです。

IgG食物アレルギー検査は、その検査の有用性と欠点を合わせて知っている経験のある分子栄養学医にとっては、貴重な情報です。問題は検査の使い方であり、検査だけが独り歩きすることがないようにしてほしいものです。

7 検査をうまく使いこなすために

もちろん、IgG検査の欠点もたくさんあります。やってみた人はわかると思いますが、検査会社ごとに結果のばらつきが非常にあります。特に、各食物に対するアレルギーを鵜呑みにしないことが大切です。栄養療法においては、IgG検査に限らず、いかに腸内環境を把握するかが治療の成否を分けます。なぜなら、栄養サプリメントは腸管から吸収されるからです。

  • 腸内環境を把握しないまま、サプリメントを大量摂取して、腹部の膨満感が続くばかりで症状改善がない人
  • 腹部症状が改善していないのに、カンジタの除菌や、重金属デトックス治療を行い、副作用が多くて失敗した人

がとても多いです。

一番確実な根本原因の見つけ方

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

今日は「根本原因の見分け方」についてお話したいと思います。

分子栄養学に関わらず、医学の世界では、患者さんの主訴を元にして、病気の根本原因を探っていきます。

その過程の中で、時には様々な検査が必要になってきます。
主訴や現病歴から「どのような検査が必要か」を見分ける能力が要求されるわけです。
では、どうやってそれを見分けるのでしょうか。

その答えは「フレームワーク」です。

「フレームワーク」とは、検査の選択の行うための基礎となるアイデア集みたいなものです。
分子栄養学講座で使用しているものの一部をご紹介します。

Identify the Causes! (根本原因を見つけ出せ!)

もしあなたが車を運転中に警告等がついたとしましょう。それをディーラーに持っていったら、

「とりあえず警告灯のランプはずしておきました。」と言われたらどうでしょうか?

サービスマンにボンネットを開けて、原因を精査してもらいたいですよね。
ちゃんとしたディーラーなら、車をジャッキアップしてチェックしてくれるでしょう。

車の場合、「原因を見つけ出して、その上で対処する」のが当たり前ですが、人間の場合はしばしば、違っています。

血圧が高ければ、血圧の薬がでます。高血圧の原因を徹底的に調べて薬を出されている患者さんは少ないとおもいます。

病気の根本原因がわからないままに対症療法を受けている患者さんは山ほどいます。
これではクルマ以下の扱いです。

私は患者さんの現病歴を聞きながら、根本原因を見つけ出すという事をしています。
それに必要なものの一つは詳細な問診表で、もう一つは、この語呂合わせです。

IDENTIFY THE CAUSES

Infection 感染  ウイルス、細菌、真菌の過剰増殖はしばしば隠れている
Digestion 消化  胃酸分泌不良、消化酵素分泌不全、腸内フローラ不全Emotion 感情   非常に問題で、さらに不健康な関連を引き起こすNutrients 栄養   栄養不良、吸収不良、または代謝的なブロック
Toxins 毒    鉛、水銀などの重金属、残留農薬、除草剤など
Inflamation 炎症 「○○炎」を引き起こす慢性的な引き金、食習慣
Foods 食事  隠れた食事の悪影響が臓器のダメージ、食物依存症を引き起こす
You 貴方  貴方の決断が貴方の病気に与える影響がわからないという思い込み
Thyroid dysfunction 通常の検査では検出する事ができない甲状腺機能異常
Hypoglycemia 低血糖 炭水化物、糖質、インスリン、その他のホルモン分泌不全などが関わる
Endocrine disorders ホルモンの分泌異常、分泌不全が加齢、機能不全を引き起こす
Candida overgrowth  過剰な抗生剤、ステロイド、砂糖、ストレス
Adrenal Fatigue 副腎疲労、副腎機能低下 低血糖、病気や人生への負担などが原因
Underactivity 自分の能力を十分鍛えないこと「使わなければ駄目になる
Stress or spiritual critis  不必要な活動でいっぱいになってしまうこと;無意味
Enviromental 環境  満たされない、機能しない、むしろ害のある家庭、仕事、遊びの場
Structural 構造   肉体的、精神的、感情的な要素の不一致、不整合が痛みや機能障害を引き起こす

私が数年前に、米国Riordan Clinic所長のハニング・ハーキー先生に教えて頂いたものです。

なんと、頭文字が IDENTIFY THE CAUSES になっていますので、比較的覚えやすいのではないでしょうか。

このような思考の枠組みである「フレームワーク」を使用する事で、原因は「何か?」でなく、「どれか?」という様に考えられるようになります。

あとは、順番に考えていけば、だれでも全ての可能性をもれなく、ダブりなく、吟味する事ができます。

吟味をして、疑わしいと思った病態に応じた検査を選べばよいわけです。
非常に画期的です。

実際、私はこのフレームワークを元に、副腎疲労症候群について66名に治験を行い、2008年に副腎疲労症候群の研究発表会を開いたり、Ⅱ型甲状腺機能低下症を研究したりしました。

現在、よく行っている腸内環境検査も、これから派生しているものです。

このフレームワークの特徴は、標準的な医療で見逃されがちな病態にフォーカスしているところです。

世界50ヶ国から難病の患者が集まっているクリニックで使用されているだけのことはありますね!

このフレームワークの詳細な使い方については「分子栄養学実践講座」で行いますので、もし、上記を読んでもいまひとつ自分で応用するのが難しいと思われる方は、是非受講をお考えください。

根本原因は「何か?」でなく、「どれか?」と考える

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