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臨床分子栄養医学研究会

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現在の場所:ホーム / アーカイブ宮澤賢史

宮澤賢史

一番確実な根本原因の見つけ方

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

今日は「根本原因の見分け方」についてお話したいと思います。

分子栄養学に関わらず、医学の世界では、患者さんの主訴を元にして、病気の根本原因を探っていきます。

その過程の中で、時には様々な検査が必要になってきます。
主訴や現病歴から「どのような検査が必要か」を見分ける能力が要求されるわけです。
では、どうやってそれを見分けるのでしょうか。

その答えは「フレームワーク」です。

「フレームワーク」とは、検査の選択の行うための基礎となるアイデア集みたいなものです。
分子栄養学講座で使用しているものの一部をご紹介します。

Identify the Causes! (根本原因を見つけ出せ!)

もしあなたが車を運転中に警告等がついたとしましょう。それをディーラーに持っていったら、

「とりあえず警告灯のランプはずしておきました。」と言われたらどうでしょうか?

サービスマンにボンネットを開けて、原因を精査してもらいたいですよね。
ちゃんとしたディーラーなら、車をジャッキアップしてチェックしてくれるでしょう。

車の場合、「原因を見つけ出して、その上で対処する」のが当たり前ですが、人間の場合はしばしば、違っています。

血圧が高ければ、血圧の薬がでます。高血圧の原因を徹底的に調べて薬を出されている患者さんは少ないとおもいます。

病気の根本原因がわからないままに対症療法を受けている患者さんは山ほどいます。
これではクルマ以下の扱いです。

私は患者さんの現病歴を聞きながら、根本原因を見つけ出すという事をしています。
それに必要なものの一つは詳細な問診表で、もう一つは、この語呂合わせです。

IDENTIFY THE CAUSES

Infection 感染  ウイルス、細菌、真菌の過剰増殖はしばしば隠れている
Digestion 消化  胃酸分泌不良、消化酵素分泌不全、腸内フローラ不全Emotion 感情   非常に問題で、さらに不健康な関連を引き起こすNutrients 栄養   栄養不良、吸収不良、または代謝的なブロック
Toxins 毒    鉛、水銀などの重金属、残留農薬、除草剤など
Inflamation 炎症 「○○炎」を引き起こす慢性的な引き金、食習慣
Foods 食事  隠れた食事の悪影響が臓器のダメージ、食物依存症を引き起こす
You 貴方  貴方の決断が貴方の病気に与える影響がわからないという思い込み
Thyroid dysfunction 通常の検査では検出する事ができない甲状腺機能異常
Hypoglycemia 低血糖 炭水化物、糖質、インスリン、その他のホルモン分泌不全などが関わる
Endocrine disorders ホルモンの分泌異常、分泌不全が加齢、機能不全を引き起こす
Candida overgrowth  過剰な抗生剤、ステロイド、砂糖、ストレス
Adrenal Fatigue 副腎疲労、副腎機能低下 低血糖、病気や人生への負担などが原因
Underactivity 自分の能力を十分鍛えないこと「使わなければ駄目になる
Stress or spiritual critis  不必要な活動でいっぱいになってしまうこと;無意味
Enviromental 環境  満たされない、機能しない、むしろ害のある家庭、仕事、遊びの場
Structural 構造   肉体的、精神的、感情的な要素の不一致、不整合が痛みや機能障害を引き起こす

私が数年前に、米国Riordan Clinic所長のハニング・ハーキー先生に教えて頂いたものです。

なんと、頭文字が IDENTIFY THE CAUSES になっていますので、比較的覚えやすいのではないでしょうか。

このような思考の枠組みである「フレームワーク」を使用する事で、原因は「何か?」でなく、「どれか?」という様に考えられるようになります。

あとは、順番に考えていけば、だれでも全ての可能性をもれなく、ダブりなく、吟味する事ができます。

吟味をして、疑わしいと思った病態に応じた検査を選べばよいわけです。
非常に画期的です。

実際、私はこのフレームワークを元に、副腎疲労症候群について66名に治験を行い、2008年に副腎疲労症候群の研究発表会を開いたり、Ⅱ型甲状腺機能低下症を研究したりしました。

現在、よく行っている腸内環境検査も、これから派生しているものです。

このフレームワークの特徴は、標準的な医療で見逃されがちな病態にフォーカスしているところです。

世界50ヶ国から難病の患者が集まっているクリニックで使用されているだけのことはありますね!

このフレームワークの詳細な使い方については「分子栄養学実践講座」で行いますので、もし、上記を読んでもいまひとつ自分で応用するのが難しいと思われる方は、是非受講をお考えください。

根本原因は「何か?」でなく、「どれか?」と考える

毛髪ミネラル検査について

宮澤賢史 · 2019年2月26日 ·

毛髪ミネラル分析検査は、その名の通り毛髪からのミネラルの排泄量とバランスを見る検査です。髪は最も早く成長する体組織であり、1か月で1cm伸びます。細胞外液に浸かっている毛包中の毛細胞が成長する際、システインがミネラルを巻き込むため、毛髪は細胞外液のミネラル濃度の経時変化の記録紙である、ということができます。

血液検査はミネラルの評価に向いていない

尿や毛髪検査を用いて重金属の蓄積やミネラルのアンバランスを測定する事は分子栄養学の処方を決めるうえで重要事項です。血液検査でもミネラルを測定する事は可能です。しかし、体内のミネラルの過不足を診断するためには、血液検査は不適当です。例えばカルシウムやマグネシウムなどは、血中濃度が狂わないように厳重に微調整がされているからです。

血液は、常に補正されているので、検査のタイミングで結構数値が変わります。しかし、毛髪検査は毛根から3cmの毛髪をすべて検体として提出することで、3か月の平均値を求めることができます。だから、基準値の設定が細かく、ミネラルのわずかな過不足を判定できるのです。

血液検査

採血した瞬間のミネラル濃度を測定するため、タイミングによって大きく値が変化する。そのため基準値を広くとる必要がある

毛髪検査

3ヶ月間のミネラル濃度の経時変化の平均を測定できるため、基準値をより細かく設定できる。だから、わずかな過不足を判定できる

また、マグロをはじめとした大型魚に含まれる水銀は、体内に入ると血中濃度が上がりますが、それはすぐに組織に吸収されてしまいます。水銀の血中濃度が上がるのはマグロを食べてから3時間の間だけです。だから、経時変化に影響を受けにくく、安定した値が得られる尿検査や毛髪検査を行うのです。

日本人は重金属まみれ

数多くの毛髪ミネラル結果を見てきましたが、重金属の全くたまっていない日本人はいません。水銀、鉛、ヒ素、カドミウムをはじめとして多彩な重金属レベルが高いのがごく普通です。いかに日本人が重金属汚染にまみれているかということがわかります。

検査会社で結果は大きく違う

髪ミネラル検査を行っている検査会社にはいくつかあります。しかし、日本人と欧米人では重金属の蓄積量が違いますので、各検査会社の重金属検査の基準値にも影響しています。これは、同一人物の毛髪を同時に2社にオーダーしたものです。

ドクターズデータ社(米国)
ら・べるびい社(日本)(以下、ら社)

このように、各ミネラルの値に関しては両社でほぼ同じですが、基準値が大きく違うため、同じ検査の値でも「 一方では正常範囲なのにもう一方ではかなり足りない 」という検査結果の解釈の違いが生じます。

例えば、21歳から40歳における、ド社の水銀の基準値は400ppb以下ですが、ら社のそれは、2183~6946ppbと、かなりかけ離れています。私の水銀値は、ら社の検査結果では基準値よりやや高い程度ですが、ド社では、飛びぬけて高くでていました。同様に、リチウムの基準値は、ド社は7~23ppb、ら社は0.32~8.4ppbです。私のリチウム結果は、ら社では、基準範囲の真ん中ですが、ド社では、最低値までグラフが振り切れています。

これらの差異は、両国に住む人の食習慣だけでなく、生活環境や、両社の測定器のセッティング等様々な要素に左右されます。これらの差異を頭に入れてデータを読んでいかないと、思わぬ落とし穴に引っかかる事があります。

40歳になったら自分のお腹の症状はあてにしない

宮澤賢史 · 2019年2月23日 ·

慢性疲労治療のコツの1つは、腸のわずかな炎症をみつけてケアすることです。おなかの自覚症状はあてにならないため、感度の高い検査を使い炎症を見逃さないようにしましょう。

腸の炎症が万病の元

慢性疲労を長く患っている患者さんには炎症を持っている人が多いようです。慢性鼻炎、脂肪肝、歯周病、上咽頭炎などの炎症は副腎に負担をかけ、様々なサプリメントの効果を打ち消してしまいます。中でも特に影響が強いのが腸の炎症です。腸はサプリメントの入り口であり、免疫の調整臓器でもあるので、吸収不良からアトピーまで様々な病気に関わっています。

オーダーメイドでサプリを処方する個別化栄養療法を行うためには、腸内環境を調べて腸の炎症の有無や程度をあらかじめ知っておくことが不可欠です。といっても、大腸の内視鏡検査で異常なしだからといって、炎症がないと決めつけるわけにはいきません。肉眼的にはわからない軽度の炎症でさえも全身への影響は少なくありません。

腫瘍や炎症がないのに腹部症状を伴う過敏性腸炎も、顕微鏡で腸組織をみると炎症が存在することがわかっています。

便中リゾチームは最も感度が高い腸炎の検査

私は腸内環境の把握のためにドクターズ・データ社の総合便検査分析を使用しています。この研究所は代替医療の分野では有名で、世界中のクリニックに臨床検査を提供しています。

この検査では、一般的な病院の検査ではわからない腸内細菌バランスや免疫状態など様々な腸内の状況を知ることができます。

その中でも重宝するのが腸の炎症の指標である便中リゾチームです。リゾチームは、細菌の細胞壁を分解する働きを持っており、炎症の程度に応じて便中のリゾチーム濃度が増えます。おおまかにいうと、病原性細菌が増えると中等度(200~600程度)、炎症性腸疾患があれば高度(2,000以上)増加します。

慢性疲労の患者さんの多くに中等度の炎症が見られますが、この程度では大腸内視鏡検査で異常を認める事は殆どありません。この検査は通常なら見逃されてしまう位の軽度の炎症を見つけることができるのです。これは副腎疲労の治療の成功率を大きく左右します。炎症は例え軽症でもコルチゾールの分泌を促すため副腎に負担をかけ続けるからです。

ところで、一体どのくらいの人がこの軽度の腸の炎症を自覚しているでしょうか。自覚症状がなければ、腸の検査や食事治療に考えが及ぶこともないでしょう。そこで当院を受診中の患者さんの自覚症状と便検査の結果を比較してみました。

腸の炎症を自覚できる人は意外と多くない

最近1ヶ月半に来院され、便検査を行った65名の慢性疲労、副腎疲労、低血糖の患者さん(7~63才、男28名、女37名)に対して腸内環境の問診票と便中リゾチームの上昇度を比較しました。

すると、65名中50名(77%)に便中リゾチーム軽度上昇(>200)が認められました。疲労や低血糖を持つ患者さんの腸がいかに炎症を起こしているかがよくわかります。

次にそのような軽度の腸炎を持つ50名のうち、過敏性腸炎の症状がある方を調べました。

〈過敏性腸炎の診断基準〉
腹痛もしくは腹部不快感が半年前からあり、かつ最近3か月の中で月に3日以上あり、さらに下記の項目のうち2つ以上を満たす。

  • 排便により軽快する。
  • 症状の有無と排便頻度が関連している。(例:腹痛があるとき排便回数が増える)
  • 症状の有無と便の状態が関連している。(例:腹部不快感があるとき下痢状便になる)

その結果、症状を持つ人は26名、ない人は24名でした。

つまり、便中リゾチームが高く腸に炎症がある人でも、腹痛や腹部不快感などのはっきりした過敏性腸炎症状を持つ人は半分に過ぎないのです。

この状況は年齢が上がると顕著になります。先ほどの50名を40歳を区切りに2つに分けてみました。すると、40歳未満では症状ありが67%を占めるのに対して、40歳以上で症状が出ている人は38%に過ぎませんでした。40歳になると自分の腸の炎症に気がつく事が出来るのは3人にひとりなのです。

まとめ

腸の炎症があるのに自覚症状に乏しい人は意外と多く、特に40歳になるとそれが顕著です。慢性疲労、低血糖がなかなか治らない方は、お腹の症状が全くなくても一度腸内環境検査をしてみましょう。

検査は便のサンプルを郵送するだけで体への負担も最低限です。

宮澤医院では炎症の程度や腸内細菌バランス、免疫の低下度などを考慮して治療内容や治療期間の目安を決定しています。多少時間と手間をかけてでも根本原因を把握しておくことが迷いのない治療方針を生み出し、結局は治療期間も短くて済みます。ちょっとお高い検査ですが、40歳超えたら一度やってみて損はないです。

副腎疲労と腸内環境の関係

宮澤賢史 · 2019年2月23日 ·

副腎疲労というと副腎だけが悪いという印象をもちがちです。しかし副腎はネットワーク臓器であり、様々な臓器と深くつながっています。悪化した他の臓器を修復するために副腎が働かされた結果、副腎疲労になっているパターンはとても多いのです。

そんなつながりの深い臓器の中でも筆頭と言えるのが腸です。連続するストレスや、副腎疲労によって起こる低血糖症状をカバーするために食生活がめちゃくちゃになってしまい、その結果腸内環境が悪化している人は少なくありません。

ここでは

  • 副腎疲労患者150名の腸内環境検査の結果
  • それに対する治療法

について宮澤医院を受診した患者さんのデータを元に説明します。

1 副腎疲労患者は腸内環境が悪い

副腎疲労の患者さんが一番を多く訴える症状は「疲労」です。これは当たり前だと思いますが、意外にも2番目に多い主訴は腹部の症状です。

これは、宮澤医院を受信された150名の患者さんの主訴を多い順に並べたものです。

副腎疲労の患者さんには胃腸機能の低下がよくみられます。副腎疲労がなかなか治らない大きな原因の一つが胃腸問題なのです。

  • 腹部の膨満感
  • 便の形が不安定
  • 便のにおいが強い
  • 下腹部痛がある

これらは、腸内で悪玉菌が増え、異常発酵がおこっているサインです。

宮澤医院を受診する患者さんの8割に腸内環境異常があります。その中には、少し乳酸菌をとるだけで大分楽になる人もいるのです。また、腸が炎症を起こしていることもよくみられ、それを抑えるために必要なのが副腎ホルモンの「コルチゾール」です。体内に炎症があると副腎ホルモンが出っ放しになり、副腎が休む暇がなくなります。腸内環境の悪さが副腎に負担をかけ、また副腎疲労が腸内環境をさらに悪化させるという悪循環が起きます。腸が悪いとサプリが効かない

また、腸が悪いと副腎疲労の治療に必要な栄養が消化吸収されにくくなります。ビタミンCなどは多少胃腸が悪くとも体内に入っていきますから、サプリメントを摂取していれば、壊血病になることはまずありません。

しかし、ミネラルやたんぱく質などは消化、吸収に手間がかかるため、栄養を摂っていても不足という状態がありえるのです。日本人を含むアジア人は欧米人に比べて、

  • 胃酸分泌量が少ない
  • 消化酵素分泌量が少ない
  • 腸が長い

という特徴を持っています。このためにタンパク質やミネラルの消化吸収が阻害されたり、体から出ていくべき重金属や化学物質がうまく排泄されなかったりして、病態をさらに複雑にしています。特に腸管が炎症を起こしている場合は、吸収不良がひどくなります。吸収されなかったたんぱく質は腸内で腐敗し、悪玉腸内細菌のエサになります。

2 腸内環境を知る方法

副腎疲労が治らないと言って来院される患者さんの7割以上が腸の問題を抱えています。
宮澤医院では、腸内環境が悪化する原因を徹底的に検査しています。

2-1 問診

便の回数、色、臭い、形は腸内環境の鏡です。また、腹部膨満感、胃痛、腹痛、胸焼けなどの情報から、胃腸のどの部分に問題があるのか推測できます。

〈消化不良症状〉
胃もたれ、胸焼け、げっぷ、食欲不振、胃腸炎症状、腹痛、
胃のむかつき、小腸疾患、膵機能低下、腹部膨満、ガス多量、
便の形が不安定、便の匂いが強い、未消化便、下痢気味、
大腸下腹部痛、膨満感、便秘、頻回に便意をもよおす

家族歴や既往歴も重要な情報です。生まれてくる時に産道を通ることで、母親由来の乳酸菌が子供に移行します。また、ステロイド、ピル、抗生剤の使用歴、糖尿病,過敏性腸炎などは、全て腸漏れ症候群(リーキーガット)を起こす要因となります。

2-2 腹部の診察、超音波検査

長期間にわたり胃腸の機能が低下している方は、触診で明らかに胃腸が固くなっています。腹部膨満がある場合、胆汁や消化酵素が少なくなっているかもしくは悪性細菌の過剰な増殖なども疑われます。

2-3 食物アレルギー検査、腸内環境検査

良性、悪性細菌、真菌のバランスを見ます。通常腸内フローラ(様々な種類の腸内細菌が腸壁にお花畑のように生息していること)では、乳酸菌など良性菌が多くを占めていますが、ストレスや加齢、食生活や薬の副作用などにより、良性菌が減ると、悪性細菌や真菌などが多く増殖してきます。悪性細菌はガスを多く産生し、腹部膨満(ふくぶぼうまん)の元になりますし、カンジタ菌はアンモニアやアセトアルデヒドを作り、疲労感や頭に霧がかかったような症状を引き起こします。

消化酵素が十分に出ているかどうかも重要な情報です。消化酵素不足では、タンパク質が十分に消化されないまま腸の壁を通り抜け、体内でアレルギー反応を起こすからです。食物アレルギー検査はそのような状況を反映します。またそのような状態では、しばしば腸内に炎症が起きています。炎症が起きれば副腎は疲弊するし、免疫が反応してアレルギー症状を引き起こすこともあります。

腸内環境検査では、大腸の内視鏡検査ではわからない軽度の炎症(それでも十分副腎疲労をひきおこします)を見つける事が出来ます。治療がうまくいかない場合は、検査をして根本原因がどこにあるかを確認するのが結局早道です。

2-4 毛髪ミネラル検査

腸内環境が悪くなると、特にミネラルの吸収が悪くなり、重金属が体から出にくくなります。その状況を毛髪検査から把握していきます。

3 リーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群)

炎症などによって腸粘膜に穴が開いてしまい、体に悪影響を及ぼす物質が体内に入ってきてしまう事を腸漏れ症候群(リーキーガット症候群)と呼んでいます。小腸は胃で胃酸によって細かく分解された食物の栄養素を吸収する器官です。小腸にはバリアのような膜があって分子が小さな物質は通すことができるが、大きな分子は通さないような構造になっています。

食物はまず口で咀嚼によって細かくし唾液と混ざって胃に行きます。その後胃で胃酸によってさらに細かく正常に分解された食物の栄養素は、小腸のバリアを通り、腸壁のすぐ後ろにある血管へ流れこみ、身体の必要な場所へ運ばれます。

腸の壁の絨毛には薄い膜がバリアのようにはられていて、異物が貼ることを防ぐのと同時に、胃で細かく分解された食物の中の栄養素を吸収できる仕組みになっています。このバリアや破られると、異物が体内に侵入して重い感染症や様々なトラブルがおきるだけでなく、胃で十分に消化分解されなかった大きな食物の分子が血液中に入ってしまいます。未消化のタンパク質や、細菌、食品添加物などが血液の中に取り込ませてしまうと、身体はそれを異物とみなして攻撃することでアレルギー反応が起き、炎症が引き起こされます。

〈リーキーガット症候群の症状〉
下痢、過敏性腸症候群、月経前症候群、食物アレルギー、
ニキビ、肌荒れ、湿疹、リウマチ様症状、橋本病様症状、
セリアック病、抑うつ感、不安感、ADD、ADHA、花粉症、乾癬

日本人の7割がリーキーガット症候群の恐れがあると言われています。原因は食生活の悪化、抗生物質、ステロイド、ピル等の長期使用、食品添加物やカフェイン、アルコールの摂取、重金属、カンジダの増殖などです。便総合検査は「リーキーガット症候群」の原因を究明するのに最も適した検査の一つです。

4 便総合検査

便総合検査は、腸内環境について詳細な情報を提供してくれる検査です。腸内環境検査でわかることと、150名の副腎疲労患者さんに対して当院で行った検査結果について説明します。

4-1 良性、悪性細菌のバランス

この検査では、便中の腸内細菌を培養し、それを良性、悪性細菌、境界型菌にわけて表示してくれます。結果を見れば、良性菌が多いのか、悪性細菌が多いのか、一目瞭然です。

菌数は1+から4+の数値で表されます。数値が多いほど、菌数も多いということです。例えば、乳酸菌なら3+か4+くらいが、理想的な範囲です。

実際に副腎疲労患者の腸内環境検査では、乳酸菌が理想的(3+、4+)の人は23%しかいませんでした。

また、乳酸菌が3+、4+の人で悪性細菌が出ている人は殆どいなかったのも特徴的です。つまり、腸内のフローラは細菌がびっしり生えており、乳酸菌が十分な量があれば、悪性菌が増殖するスペースはないのです。

抗生剤やステロイドの使用などで良性細菌が少なくなると、その空いたスペースに悪性菌が生えてきてしまいます。

4-2 消化酵素

次にこのデータは、患者さんの腹部膨満がある人とない人、そして消化酵素が正常の人、低下している人の割合を示したものです。膨満感が強い人は全体の41%、消化酵素が減少している人は43%の人に見られました。

このデータによると、腹部膨満感がある人もない人も同様の確率で消化酵素が低下していることがわかります。腹部膨満感症状と消化酵素の不足にはあまり関係性を見出せませんでした。

これは、「腸内環境が改善しない人は、たとえ腹部膨満感がなくとも消化酵素を足してみて様子をみる」ことが無駄ではないことを示しています。

次に、腹部膨満感、胃痛、下痢と悪性細菌数との関係をみてみましょう。
悪性菌の種類数と腹部症状の間に相関関係がみられます。腹部膨満感、胃痛、下痢という症状は、SIBO(Small Intestinal Bacterial Overgrowth)
小腸内細菌過剰繁殖という病態でよくみられるものです。

通常、十二指腸・小腸内のバクテリアの数は大腸内に 比べて、はるかに少ないが、SIBO患者においては十二指腸・小腸内に多数のバクテリアが繁殖し、しかもその種類は 大腸内のバクテリアに類似すると言われています。

この繁殖したバクテリアが宿主の食べた食物を 分解・発酵させる過程で、十二指腸・小腸内においてガスが 発生し、これらのバクテリアに起因する物質が下痢や 倦怠感などを引き起こすというわけです。これらの症状には、抗生剤、プロバイオティクス、成分栄養などの治療が有効だとされています。

4-4 免疫と炎症マーカー

副腎疲労の方の3分の2に免疫異常や炎症を認めました。それは、腸の炎症の修復のために副腎が酷使されている可能性があることを意味します。副腎疲労の治療では、腸の炎症の修復を常に頭に入れておく必要があります。

4-5 まとめ

平均的な副腎疲労患者さんの腸内環境像は以下の通りでした。

 乳酸菌が少なく(77%)
 腹部膨満感が強く(59%)
 時には悪性細菌が多く(25%)
 炎症を起こしており(64%)
 免疫異常がある(65%)

5 腸内環境改善の治療方法

食事

以上の理由から、副腎疲労患者にとって食事治療は極めて重要です。脳に霧がかかっていて、まともに献立も考えられないという方はまずここから始めましょう。そしてだんだんと回復してきて自分の食事に気が回るようになったらより詳しく食事状態を見直していくのです。

サプリメント

上記の結果は多くの患者さんの結果をまとめて平均化したものであり、個々の患者さんの状態は人によって全く異なります。実際には診察と検査の結果からサプリメントをセレクトしていきます。

・胸焼け、食物の味が残っている、胃もたれなどの症状が強い場合→消化酵素の摂取

・便の大きさ形、臭い、回数、色が悪い場合→乳酸菌の摂取(形はバナナ状、臭いは無臭、回数は1日2回、色は茶褐色がベストです)

・下痢や便秘を繰り返す、慢性の下痢、慢性の便秘→抗炎症サプリメントの摂取

特殊な場合を除き、乳酸菌や消化酵素は必須です。

6 まとめ

腸内環境を制する者が副腎疲労治療を制する事が出来ます。「急がば回れ」とはまさに腸内環境改善のことを言うのです。腸をよくするだけで、副腎疲労の症状が8割がた軽減してしまうことはよくあることです。腸内環境ケアには数か月かかりますが、根気よく取り組んでみてください。

栄養療法の値段と医師のレベル

宮澤賢史 · 2019年2月23日 ·

分子栄養学が正しく広まるためには、正しい知識が広まることももちろんですが、「正しい治療が適切な値段で受けられること」が必要だと常々思っています。

原因不明の病に苦しむ患者さんにとって、栄養療法は確かな手ごたえを感じられる数少ない治療の一つです。

しかし、治療が始まってから患者さんは経済的な事で悩むようになります。

「なるべくサプリや検査に頼らない方法を知りたいです」

「患者さんのサプリメント購入については長期にわたってくると負担も大きくなります。なるべく食品から摂取できるものは食品から、最低限必要なものはサプリメントからという風に考えたい」

「手探りで解析結果に従って実行してきました。必要なサプリ量がどう変わるか?いずれは減らせるのか?サプリ代が予算的にあと1年ももつか?が心細い限りです。」

これらは、メール講座を受講している方から頂いた生の意見です。

もちろん、治療にかかわる先生方も、これをよしと思っているわけではなく、

「日常診療では、高額な自費検査や唾液検査などはほぼ不可能。」

「検査には費用がかかり、いいといわれるサプリメントは高額なものも少なくありません。自分自身が患者の立場で言うと、やはり経済的負担から、そこまで高額な検査や治療を望まないと思います。」

といったご意見も頂いています。

この治療が広まるためには、「患者さんが無理なく出せる」かつ「医師が適切な利益を得られる」値段設定が求められます。いくら正しい治療だといっても、この治療が健康保険の適応になるにはまだ時間がかかりますので。

では、どうしたらよいのでしょうか?

正解は「検査とサプリをできるだけ減らすこと」です。

極端な話ですが、問診と診察から患者さんの不調の根本原因が全てわかれば検査はいりません。

また、患者さんの体の状況を正確に把握することができれば、絶対必要なサプリメントは、3種類まで減らせるかもしれません。いわゆる「引き算の栄養学」ってやつです。

しかし、言葉でいうのは簡単ですが、実際にはなかなか難しいです。そもそも、問診と診察から根本原因が完全に絞りきれないから検査をするわけですし、何が効くかはっきりと断定できないので複数のサプリメントが出るのです。

栄養療法の医師にもレベルがあります。

レベル0 サプリメントを完全否定する
レベル1 サプリメントを容認する
レベル2 血液検査で足りないサプリを処方する
レベル3 様々な検査を駆使してサプリを処方する
レベル4 サプリを邪魔する原因を考える
レベル5 必要ないサプリを減らす
レベル6 必要ない検査を減らす

レベル7 会った瞬間に必要な治療がわかる

私自身も、過去15年間でこのような階段を上ってきました。もちろんレベル7には至っていませんが。

サプリメントを摂るのは簡単です。(効果を継続したまま)やめるのが難しいんです。

医師はレベル4以上に到達して、はじめて患者さんの懐状況と治療効果を天秤にかけた治療ができるようになります。

レベル5になると、サプリをどこまで減らすかということに思慮が及ぶようになるので「治療のゴール」を意識できるようになります。そうすることではじめて患者さんに「治療期間の目安」の話ができるようになります。

問診事項と症状から検査結果を予測して、一番効果的なサプリメントをピンポイントで使う。それはレベル6の医師にしかできないことです。

医師、歯科医師の方は「自分はどのレベルの栄養療法医」か、患者さんだったら「自分の主治医はどのレベルなのか?」よく考えてみてください。

このレベルが栄養療法にかかるコストを大きく左右します。

分子栄養学実践講座では、レベル6になるためのカリキュラムを組んであり、それに必要な資料(テキストとビデオ)を提供しています。

「○○地方で副腎疲労をみてもらえるクリニックをご紹介下さい」とお問い合わせを頂いた時、必ず実践講座を受講された先生をご紹介するのはそういった理由からです。

レベル6の「検査とサプリを減らせる医師」には患者さんはレベル3の医師の2倍の診察料でも惜しみなく払ってくれるでしょう。それでもトータルで考えれば、患者さんの負担はだいぶ減るからです。

2010年代の後半、栄養療法は半分当たり前のこととしてますます多くの人に受け入れられていくでしょう。

インターネット上には栄養に対する様々な知識があふれています。栄養療法を専門とする医師(管理栄養士も)であれば、最低レベル4まで達していないと今後は厳しく、淘汰されて行くと思います。

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