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臨床分子栄養医学研究会

あなたのサプリが効かない理由教えます

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宮澤賢史

初心者のための栄養療法ロードマップ

宮澤賢史 · 2021年6月19日 ·

栄養療法を勉強したいけど、何から始めればよいかわからない、という方はいらっしゃいませんか?実践講座にはたくさんの動画がアップされているので、どれから見たらよいか迷うと思います。

初心者の方はまず、体の仕組みを知ることから始めてください。これを理解しないことには体の不調に対処できないからです。例えば、エネルギーが生まれる仕組みを知らずに慢性疲労に対処することはできないし、炎症を起こす仕組みと抑える仕組み、両方を知らずして慢性炎症を治すことは難しいでしょう。したがって、最初に学ぶべきは生物学や生化学なのです。

そして、それを理解するために用意した講座がこの『栄養療法成功へのロードマップ』です。ロードマップは5つのステップで構成されており、全てを網羅すると、サプリメントをとっても疲れが取れない理由や、タンパク質をたくさん摂っているのに低タンパク質が治らない理由が理解できると思います。それではさっそくその中身を見ていきましょう。

1. 栄養療法ロードマップの位置付け

「人生を変える80対20の法則」(リチャード・コッチ著)という本があります。80対20の法則はイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が提唱したもので、パレートの法則とも呼ばれています。例えば、売上げの8割は全顧客の2割が生み出していることがわかっています。その2割の顧客はロイヤルカスタマーと呼ばれ、企業にとって最も大切にされる存在になります。また、住民税の8割は全住民の2割の富裕層が担っています。国の経済政策が富裕層向けになる理由がここにあります。物事には全て偏りがあり、その傾向を見つけ出すと人生のあらゆる場面で役立つという話です。これは経済の話ですが、それ以外にも様々なことに当てはまります。

例えば、私のiPhoneに入っているアプリの数は140個です。でも、そのうち頻繁に使うのは30個程度、つまり21%でした。これも80対20の法則に当てはまりますね。140個全てのアプリの使い方を習得するよりも、30個のアプリに精通して使いこなす方が効率的ということです。これは栄養療法にも同じことが言えます。

『栄養療法成功へのロードマップ』の内容は、栄養療法に必要な知識のうちの2割程度ですが、約8割の栄養的問題はこれだけで解決できると思います。メチレーション、ホルモンバランス、デトックスなど、学ぶべきことはたくさんあるのですが、そこに手をつける前にこの2割に集中した方がいいだろうと考えています。逆に言うと、ここを十分把握しないままより高度な栄養療法の知識を求めても、あまり役に立たないでしょう。

2. サプリメントで疲れが取れないワケ

ミトコンドリアサプリを摂っても疲れがとれない、と感じている方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?宮澤医院に来院される患者さんにはサプリメントに詳しい方が多いのですが、うまくいっていないケースがほとんどです。なぜうまくいかないのか?それは、効いているサプリメントが20%程度で、残り80%が無駄になっているからかもしれません。私の仕事は、代謝が止まっている根本原因を見つけ出し、80%の無駄なサプリメントを取り除くことから始まります。

2-1. エネルギーの生産工場はミトコンドリア

ミトコンドリアは細胞の中にある小器官で、エネルギーを生み出す場所です。エネルギーの大部分はこのミトコンドリアで作られています。

エネルギーが作られるには、糖質、タンパク質、脂質の3大栄養素に加え、ビタミンやミネラルなどの補助因子が必要です。これら5つが組み合わさって、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーが作られます。

2-2. ミトコンドリアサプリの中身

ミトコンドリアサプリは、現代の食事で不足しがちなビタミンやミネラルなどの補助因子をまとめて詰め込んだものです。補助因子というのは、CoQ10やマグネシウム、亜鉛、ビタミンB群などです。

こちらのミトコンドリアサプリを見てみると、ビタミンB群、マグネシウム、CoQ10に加え、脂肪を燃焼するためのカルニチン、活性酸素を抑えるためのビタミンCなどが配合されています。しっかり食事を摂ってサプリメントを補給すれば、栄養的には万全に思えますよね?でも実際はうまくいかない人が本当に多いのです。

2-3. 疲れやすくなる3つの原因

疲れやすくなる原因として、大きく分けて3つのパターンがあります。

  1. ミトコンドリアでうまくエネルギーを作れないパターン
  2. 糖質や脂質が細胞やミトコンドリアの中に入れない、もしくは供給が不安定なパターン
  3. エネルギーは作れているが、無駄に消費されているパターン

これらのパターンを一つずつ詳しく解説していきましょう。

3. その1. ミトコンドリアでうまくエネルギーを作れないパターン

3-1. 人間のエネルギー回路はたったの3つ

人間のエネルギー回路は、解糖系、TCA回路、電子伝達系、これら3つだけです。解糖系はブドウ糖からピルビン酸を作る回路です。TCA回路はミトコンドリアの中にあり、ピルビン酸から水素を作っています。電子伝達系はミトコンドリア膜にあり、TCA回路で作られた水素を使って一気にエネルギーを生み出します。エネルギーの約9割がこの電子伝達系で作られます。

ポイントは、人間の体内でこれ以外にエネルギーを作る回路がないということです。したがって、エネルギー不足の人は、これらの代謝のうち少なくとも1つが滞っているということになります。

3-2. ミトコンドリアに必要な栄養素

ミトコンドリアサプリは、エネルギー産生に必要な栄養素を補うことを目的に設計されています。これらの栄養素をサプリメントで摂っても疲れが取れないということは、栄養素がうまく消化、吸収、利用できていない可能性があるということです。

ミトコンドリアに必要な栄養素
☑️ 解糖系にはビタミンB群
☑️ TCA回路にはビタミンB群、鉄、マグネシウム
☑️ 電子伝達系にはビタミンB2、鉄、CoQ10
☑️ 鉄を錆びさせないためのビタミンC、ポリフェノール

ビタミンB群、鉄、マグネシウム、CoQ10、これらの栄養素をあなたはうまく使えていますか?さっそくチェックしていきましょう。

3-3. 鉄吸収が悪い原因

体内に鉄が十分あるかどうかは、健康診断の貧血の項目からある程度推測できますが、より確実性を求めるならフェリチン値を測定するとよいでしょう。ヘモグロビン値が12以上あっても、フェリチン値が20以下であれば鉄欠乏症状が出ます。食事由来の鉄摂取量が不十分な場合、サプリメントで補給するとフェリチン値はすぐに上昇します。

しかし、鉄剤や鉄サプリを摂っているにも関わらず、フェリチン値が上がらない人もいます。原因は大きく3つ考えられます。1つめは炎症です。炎症が強いと、肝臓でヘプシジンというタンパク質が作られ、フェロポーチンの動きを止めてしまいます。フェロポーチンは、腸上皮細胞の鉄や、マクロファージからリサイクルされる鉄、肝細胞に貯蔵されている鉄などを血液中に排出する役割を担うタンパク質です。すなわち、炎症があるとヘプシジンが鉄の吸収と放出を止めてしまうということです。血液データ上では血清鉄が低い値を示します。この場合、いくら鉄サプリメントを摂ってもうまくいきません。炎症を治すことが最優先です。

Vitamins and Hormones. Volume 110, 2019, Pages 101-129
Chapter Five – Regulators of hepcidin expression
https://doi.org/10.1016/bs.vh.2019.01.005

2つめは乳製品です。鉄吸収を阻害する食品の代表格が乳製品です。乳製品はヘム鉄と非ヘム鉄、両方の吸収を阻害します。貧血が治らない人は、乳製品を摂ってはいけません。他にも、食品添加物やタンニン、フィチン酸などが鉄吸収を阻害します。

3つめは腸カンジダです。カンジダは健常人の腸にも住んでいますが、過剰に増殖すると腸に炎症を起こします。カンジダや腸内病原性微生物は人と鉄を取り合います。鉄は全生物の生存に必要な栄養素だからです。

鉄吸収が悪い原因
☑️ 炎症・・・ヘプシジンが鉄の動きを止める
☑️ 乳製品・・・ヘム鉄と非ヘム鉄の吸収を阻害する
 (他にも、食品添加物、タンニン、フィチン酸など)
☑️ 腸カンジダ・・・人と鉄を取り合う
 (他にも、腸内病原性微生物など)

3-4. 鉄は諸刃の剣

鉄はTCA回路にも使われるし、電子伝達系でエネルギーを生み出す際にも必要です。また、赤血球のへモグロビンのヘムに含まれており、酸素の運搬に関わっています。鉄は生命維持にとって重要なミネラルである一方、活性酸素の発生源になるという側面もあります。また、病原性微生物の栄養になり、増殖を促してしまうこともあります。

私の場合、患者さんに最初から鉄サプリメントを処方することはまずありません。高拍出性心不全(貧血の進行により酸欠状態になり、酸素を補おうとして心臓が頻脈になることで起こる不全)のような緊急時を除いては、最初から鉄を摂ってもあまりいいことがないからです。摂取した鉄が全てカンジダの餌になることで腹部膨満感が強くなったり、便秘がひどくなることもあります。また、炎症がある時に鉄を入れても、活性酸素の害がひどくなるだけです。鉄は体の状態を考慮して使うべき栄養素なのです。

3-5. 鉄の体内分布

体重にもよりますが、体内の鉄は3~4gで、そのうち65%は赤血球内でヘムとして存在し、残りの35%は脾臓やマクロファージ内でフェリチンとして存在します。下図の左がヘム、右がフェリチンですが、鉄が遊離すると活性酸素の発生源になってしまうので、簡単に遊離しないよう厳重に守られた状態で存在しています。

血液中の鉄は血清鉄と呼ばれ、トランスフェリンというタンパク質と結合して運ばれています。ヘムやフェリチンに比べ、鉄とトランスフェリンの結合は非常に弱いため、簡単に外れて活性酸素の発生源になります。そのため、血清鉄量は全体の0.1%と最小限に押さえられています。炎症を起こすと、体を炎症から守る仕組みが働き、血清鉄がさらに減ります。

鉄の体内分布
☑️ 体内の鉄は3~4%
☑️ 65%は赤血球内でヘムとして存在
☑️ 35%は脾臓、マクロファージ内でフェリチンとして存在
☑️ 血清鉄は全体の0.1%

ヘム鉄は吸収効率が良いと言われており、フェリチンを上げるのに有効です。ヘム鉄で上がらない場合は、キレート鉄で上がることもあります。ヘム鉄は非ヘム鉄に比べると安全な鉄ですが、そのヘム鉄でさえもずっと飲み続けると様々な害が出てきます。鉄を摂り過ぎて良いことは何にもありません。私がヘム鉄やキレート鉄を処方する場合は、必要最低限の量に留めています。それでフェリチンが上がってこないとか、貧血が改善しないのであれば、鉄吸収を阻害する要因を調べたほうがいいでしょう。炎症を抑えると、鉄サプリを摂らなくても勝手にフェリチンが上がるケースが多く見られます。また、女性の場合は、エストロゲンとプロゲステロンのバランスを整えると改善するケースもあります。

3-6. マグネシウムの重要性

エネルギーを作る際も使う際もマグネシウムが必要です。ATP(アデノシン3リン酸)は、アデニンとリボースに3つのリンが結合したもので、そこからリンが1つ離れると、その時にエネルギーを放出してADP(アデノシン二リン酸)に戻ります(ATP-ADPサイクル)。このようにリンがくっついたり離れたり、ぐるぐる繰り返しています。

電子伝達系の最後のステップで、ADPにリンが結合してATPになり、このATPがまたADPに戻る時にエネルギーが作られます。このリンを離す際に働くATPアーゼという酵素の補酵素がマグネシウムです。

マグネシウムが吸収されにくい原因はいくつか考えられます。まず1つめに、カルシウムとマグネシウムが配合されたサプリメントを使っている場合です。カルシウムとマグネシウムの吸収は拮抗します。もし、ALP(アルカリホスファターゼ)が上がらない、なかなか疲れが取れないなど、マグネシウムの枯渇が疑われる所見がある場合は、カルシウムを含まないマグネシウムだけのサプリメントにしてみて下さい。

The Journal of Nutrition, Volume 122, Issue 3, March 1992, Pages 580–586.
Interaction of Calcium and Phosphate Decreases Ileal Magnesium Solubility and Apparent Magnesium Absorption in Rats
https://doi.org/10.1093/jn/122.3.580

カルシウムとマグネシウムが一緒になっているサプリメントは比較的多く出回っていますが、その理由として原料的に供給しやすいことが挙げられます。ドロマイトといって、石灰岩の一部がマグネシウムに置き換わった鉱石がよく使われており、カルシウムとマグネシウムが2:1で含まれています。カルシウムとマグネシウムの比率は2:1が良いと言われていましたが、ミトコンドリア機能の改善を目的とするなら、1:1、あるいはマグネシウム単体のサプリメントの方がよいでしょう。余談ですが、カルシウム単独のサプリメントは決して取らないでください。心臓発作を起こすリスクが高まるので注意が必要です。

3-7. マグネシウムサプリの選び方

マグネシウムサプリを選ぶポイントは1つ、イオン化しているものまたはキレート化しているものを選ぶということです。マグネシウムは他のミネラル同様、腸上皮細胞のイオンチャンネルを通って体内に入るので、イオン化されている方が吸収率が上がります。イオンは水に溶けると電気を通す物質で、マグネシウムは水に溶けるとイオン化します。

BBA-Biomembranes. Volume 1828, Issue 11, November 2013, Pages 2778-2792
The structure and regulation of magnesium selective ion channels
https://doi.org/10.1016/j.bbamem.2013.08.002

私が使っているイオン化ミネラルは、Bio Nativus社のものです。アメリカのユタ州にあるグレートソルトレイクから採取した水で、塩分を取り除いて製品化されたものです。海水で一番問題になるのは水銀ですが、この湖は閉鎖系なので水銀汚染の影響を受けにくいと言われています。主成分は塩化マグネシウムです。水溶性の塩化マグネシウムは非常に吸収が良いので、1つの方法としてはこれがいいと思います。

もう1つの方法は経皮吸収させることです。マグネシウムはとても経皮吸収力が高いので、エプソムソルトを多めにお風呂に入れても十分吸収されます。「奇蹟のマグネシウム」(キャロリン・ディーン著)という書籍に詳しく書かれていますが、心臓発作や喘息の改善などに効果があるとされています。

次にキレートされたマグネシウムについてです。キレートとは、吸収されにくいミネラルをアミノ酸やクエン酸などの有機酸でカニバサミのようにはさみ込んで、吸収されやすい形に変えることを言います。イオン化マグネシウムとは異なり、アミノ酸が吸収される入り口から入っていくので、圧倒的に吸収がよくなります。ただし、法制上、キレート加工は日本のサプリメントメーカーはできないことになっているので、海外製のサプリメントを使うことになります。クエン酸マグネシウムやグリシン酸マグネシウムなどを使うのも手だと思います。

Magnes Res. 2003 Sep;16(3):183-91.
Mg citrate found more bioavailable than other Mg preparations in a randomised, double-blind study
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14596323/

ここまでマグネシウムサプリの紹介をしてきましたが、サプリメントを摂る前にやっておくべきことがあります。それは、腸を整えることです。腸を整え、乳酸菌を摂り、水溶性食物繊維の摂取量を増やすと、短鎖脂肪酸が増えてきます。短鎖脂肪酸はマグネシウムをキレートするので、自然なキレート効果が期待できます。したがって、腸を整えて海藻を摂るというのがマグネシウム吸収をよくするポイントです。

Z Ernahrungswiss. 1990 Sep;29(3):162-8.
Effects of short chain fatty acids and K on absorption of Mg and other cations by the colon and caecum
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2251858/

3-8. マグネシウム吸収の阻害要因

腸に炎症があるとマグネシウム吸収が落ちることがわかっています。腸の炎症が進行するとクローン病などに繋がってしまいます。宮澤医院を受診した150名のアンケートを集計したところ、マグネシウムを摂っていた人は16%で、そのうちの半分はカルシウムとマグネシウムが一体になったサプリメントを摂取していました。サプリメントを摂取していても、ALPが低いなど、Mgが欠乏している人がほとんどでした。そして、便中のライソザイムで腸の炎症を確認したところ、3分の2に腸の炎症がありました。

マグネシウムを効かせるためには、サプリの種類を選ぶこと、腸内環境を整えることが重要です。塩化マグネシウムはとても良いのですが、欠点は美味しくないことですよね。慣れてくると徐々に摂れるようになりますが、マグネシウムが足りない人ほどまずく感じると言われます。どうしても飲めないという人には、キシリトール入りの子供用マグネシウムパウダーを使うこともあります。エプソムソルトもおすすめではありますが、毎日入浴時に使うと疲れてしまうので、副腎疲労が強い人は頻度を考えて使うと良いと思います。1日の最低必要量は体重1kgあたり6mgです。鉄とは違い、マグネシウムは積極的に摂取したいミネラルです。

3-9. CoQ10の役割

CoQ10は電子伝達系の中心的な役割を担っており、不足するとエネルギーを十分に作ることができなくなります。また、CoQ10は加齢とともに減少します。特に心臓のCoQ10は80歳で半分以下まで減少します。医薬品としてのCoQ10は、1日30mgの用量で承認されていますが、あまり効果は出ていません。効かせるためには100~400mg必要だろうと言われています。

CoQ10はアセチルCoAからコレステロールと共に体内合成されます。血中コレステロールが低い人は、CoQ10もうまく作れていないと予測できますね。CoQ10レベルは、男性の年齢や女性の総コレステロール、セレンに相関関係があるという報告があります。CoQ10を摂るとコレステロール値が下がったり、CoQ10により動脈硬化が改善するとも言われています。

Biofactors. 1999;9(2-4):319-23.
High serum coenzyme Q10, positively correlated with age, selenium and cholesterol, in Inuit of Greenland. A pilot study
https://doi.org/10.1002/biof.5520090230

3-10. 栄養の負の連鎖

ミトコンドリアを正常に動かすためには、十分量のCoQ10が必要です。LDLコレステロールの結果を見直してみてください。LDLコレステロールが100以下の場合、おそらくあなたは十分にCoQ10を作れていないでしょう。低コレステロールは、疲れやすい人に共通する大きな問題です。ではコレステロールを上げればいいかというと、そううまくはいきません。なぜならコレステロールの体内合成にはエネルギー(ATP)をたくさん使うので、ミトコンドリア機能が低下している人にとっては、コレステロールを上げること自体とても難しいことなのです。

ミトコンドリア機能が低下しているから、コレステロールが低くなる、CoQ10も低くなる、さらにミトコンドリア機能が低下する、まさに栄養の負の連鎖です。実に多くの人がこの連鎖に陥っています。負の連鎖から脱出するためには、CoQ10サプリメントをうまく効かせることがポイントになります。

3-11. CoQ10の吸収には胆汁が必要

問題はCoQ10がイソプレノイド側鎖を持つ脂溶性の物質だということです。つまり、胆汁が十分に分泌されていないと吸収できないということです。胆汁はCoQ10や脂溶性ビタミンの吸収に欠かせない存在です。油を摂りすぎると下痢をしたり胃がもたれる人は、食後にCoQ10サプリメントを摂るとか、胆汁サプリやタウリンと一緒に摂るなどの工夫が必要です。CoQ10サプリは、還元型やミセルタイプのものがおすすめです。還元型のCoQ10であれば1日50mgで十分とも言われています。

3-12. ビタミンB群が枯渇するケース

ビタミンB群は、ミトコンドリアを動かすために最も重要な栄養素です。ここまで説明してきた鉄やマグネシウムといったミネラル、脂溶性のCoQ10は、吸収が難しい栄養素でした。一方、ビタミンB群は水溶性で、腸でもたくさん作られています。

日本栄養・食糧学会誌 Vol.37 No.2 157-164 1984
ヒト由来Bifidobacteriumによるビタミン産生
https://doi.org/10.4327/jsnfs.37.157

一見、不足することがなさそうな栄養ですが、最近問題となっているのは糖分の摂りすぎによるビタミンB群不足です。

原因不明の心不全、ビタミンB1欠乏かも脚気は過去の病ではない。イオン飲料多飲で肺高血圧症を起こす幼児も。

白米ばかり食べていた江戸時代の大名の多くがかかり、昭和20年代まで国民病といわれた「脚気」。豊かな食生活を送る現代人には無縁と思われているが、偏った食生活を背景にビタミンB1欠乏を来すケースは少なくない。離乳期を中心とした乳幼児がイオン飲料を多飲し、脚気衝心(ビタミンB1欠乏による心不全)などの深刻な障害を招く事例も報告されており、専門医は注意を喚起している。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201703/550405.html

この記事のように、スポーツドリンクを日常的に飲んでた乳幼児が、脚気による心不全で病院に運ばれるケースが頻発しています。500mLのスポーツドリンクには、角砂糖に換算して5~8個の糖が入ってます。ブドウ糖がミトコンドリアでエネルギー変換される際には、ビタミンB群をたっぷり使います。したがって、過剰な糖分が体内のビタミンB群を枯渇させてしまい、脚気等の症状を引き起こすのです。特に低血糖症状がある人は、気がつかないうちに糖質を過剰に摂ってしまうので、ビタミンB群がうまく効いていないと感じたら、自分が摂取している糖質の量をチェックしてみてください。

3-13. その他のミトコンドリア機能低下要因

ここまでは、ミトコンドリアに必要な栄養がうまく消化吸収利用できてないパターンについて解説してきました。他にも、水銀などの金属や、農薬などの有機溶剤、電磁波など、ミトコンドリア機能を低下させる要因は様々あります。大切なことは、足りない栄養をサプリで摂るだけではなく、足りなくなる原因を突き止めてそこに対処することなのです。

その他のミトコンドリア機能低下要因
☑️ 水銀などの金属
☑️ 農薬などの有機溶剤
☑️ 電磁波
☑️ 小胞体ストレス
☑️ 廃用性萎縮

4. その2. 糖質や脂質が細胞やミトコンドリアの中に入れない、もしくは供給が不安定なパターン

ここからは、糖質や脂質が細胞やミトコンドリアの中に入れない、もしくは供給が不安定なパターンについて解説していきます。糖質が細胞の中に入れないと言うと、特殊な病気を想像しがちですが、とても身近な病気があります。それは、糖尿病です。

4-1. グルコースが取り込まれる仕組み

血糖値が下がると膵臓からインスリンが出ます。トランスポーターという糖の取込み口になるタンパク質があり、インスリンがこの受容体に結合すると、GLUT4(グルコース輸送タンパク)が細胞の中に引き込まれて細胞膜と一体化し、グルコースを取り込みます。細胞内に入ってきたグルコースはミトコンドリアで使われます。糖尿病の場合、インスリンが受容体に結合してもその後の経路がうまく働かないため、GLUT4が細胞の方にグルコースを引っ張ってくれないのです。

引用:https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=49360981

「糖尿病=血糖値が上がる病気」というイメージがあるかもしれませんが、糖尿病の本質は細胞内飢餓です。グルコースを取り込めなくて細胞内飢餓になるから、その結果としてグルコースが余って血糖値が上がるのです。もう1つ、栄養療法的に重要な細胞内飢餓状態があります。それは低血糖症です。

4-2. 低血糖症と副腎疲労の関係

低血糖の原因は副腎疲労です。度重なるストレスによって徐々に副腎が疲れてくると、血糖を上げる副腎ホルモンの分泌が滞ります。副腎ホルモンは朝にピークを迎え、夕方に向けて減っていきますが、副腎ホルモンが十分出ないと、特に昼食後から夕食前にかけての血糖値が不安定になります。血糖値が不安定で低血糖を起こすと、細胞内への糖質供給も不安定になり細胞内飢餓を起こします。朝が起きられない、起きてもボーッとする、何もする気力が湧かない、物忘れがひどい、立ちくらみがする、といった症状は低血糖のサインです。

副腎疲労の原因は、慢性的な体内の炎症、慢性的なストレス、そして繰り返す低血糖発作です。これらを一つ一つ丁寧に対処してくことが必要になります。体内の炎症で自覚症状に乏しい部位は腸と喉です。一方で、腸や喉は特に免疫が発達しており、全身への影響が大きいため、よく調べておく必要があります。あとはピロリ菌に代表される胃の炎症、肝臓の炎症、口腔内の炎症も確認しましょう。女性の場合は骨盤内の炎症が、男性の場合は慢性前立腺炎が影響している場合もあります。

副腎疲労や低血糖を抱えている場合、最初に行うべきは食事の見直しです。決して副腎サプリだけが対策ではありません。食事については基礎講座で詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。

4-3. 過緊張は筋肉を崩壊させる

低血糖発作を起こすと、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、体が過緊張状態になりやすいので注意が必要です。過緊張は筋肉を崩壊させます。特に分解されやすいのはグルタミンです。グルタミンは体内合成できる非必須アミノ酸で、低血糖時に最も分解されやすいアミノ酸の一つです。グルタミンはストレスや腸の炎症で消費されやすいので、どんどん分解が進みます。腸が悪い人、ストレスが多い人はグルタミンが枯渇しやすいので、積極的に摂取すべきでしょう。

ポイント
☑️ 過緊張は筋肉を崩壊させる
☑️ 特に分解されやすいのはグルタミン

グルタミンは、宮澤医院に来院する患者さんに最もよく使うサプリメントの1つです。ほぼ全ての人に処方しているといっても過言ではありません。グルタミンはグルタミン酸に変換され、それが最終的にGABAに変わるのですが、グルタミン酸をGABAに変換するグルタミン脱水素酵素がうまく働かないお子さんの場合は、急にグルタミンを摂取すると神経が興奮して落ち着かなくなることがあります。それ以外の人はグルタミンを摂ると逆に気分が安定するはずです。グルタミンは腸の第1の栄養源であり、腸の炎症を取り去り、低血糖を予防してくれ、ストレス対策にもなるというすばらしいアミノ酸です。

慢性的に低血糖を起こしていると、筋肉が分解されて低タンパク質になります。プロテインを摂っても総タンパク質がなかなか上がってこない人は、低血糖発作によってたんぱく異化を起こしている可能性が高いでしょう。睡眠時に低血糖を起こすケースが多いので、寝る前に飲むのも良いでしょう。

4-4. 低血糖を診断する項目

低血糖の指標となるのは中性脂肪です。血糖値やヘモグロビンA1cも血糖状態を示すますが、低血糖症=血糖値が下がる病気ではありません。血糖値が不安定になること自体が低血糖症なので、血糖値が乱高下している場合は平均血糖が落ちず、ヘモグロビンA1cでは判定できないことがあります。判定のポイントは、細胞内が飢餓状態になっているかどうかを見極めることなので、それを診断するためには中性脂肪が鍵になります。なぜなら細胞内飢餓が起こると、脂質をエネルギーとして使うように体がシフトするからです。中性脂肪が分解され遊離脂肪酸になり、ミトコンドリアに取り込まれます。したがって、中性脂肪は細胞内飢餓の指標であり低血糖の指標でもあります。目安として、中性脂肪が70以下の場合は低血糖を起こしている可能性が高いでしょう。

ポイント
☑️ 細胞内飢餓が起こると脂質をエネルギーとして使うようになる
☑️ その際に中性脂肪が分解され脂肪酸になり、ミトコンドリアに取り込まれる

もう1つの指標はALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)です。ALTはアラニンとピルビン酸を媒介している酵素で、肝臓と筋肉に存在しています。筋肉には糖新生の酵素がないので、ピルビン酸をアラニンに変換し、それを肝臓に運んでもう一度ピルビン酸に戻すことで糖新生を行います。これらの反応を仲介しているのがALTです。ALTの数値が1桁だったり、ASTとALTの差が2以上ある場合、筋グリコーゲンがうまく使えず、低血糖を起こしやすくなっていると判断します。

ヘモグロビンA1cが4.5以下であればまず間違いなく低血糖を起こしていますが、そうでなくとも、中性脂肪やALTが低い場合も低血糖を疑ってください。あとは副腎疲労の症状とセットで考えるといいでしょう。私が普段使ってる指標は大体こんなところです。

血液検査
好中球(Neu)>60%
中性脂肪<70
ALT, AST共に20以下かつその差が2以上(AST – ALT >2)、またはALTが1桁
血糖値<90
ヘモグロビンA1c<4.7
1.5AG>15
LDLコレステロール<100

毛髪検査
ナトリウム <16th
クロム<16th

オプションの検査(必ずしも行わなくてもよい)
唾液中コルチゾール検査(副腎疲労)
5時間糖負荷検査(低血糖)

低血糖の人は、過緊張気味なので好中球が上がっていることが多いです。また、低LDLコレステロールは副腎ホルモンを作れないことを意味するので、副腎疲労の指標になります。毛髪検査を受けた方は、ナトリウムとクロムの値も確認してください。ナトリウムは副腎疲労度を反映します。クロムはインスリンの働きに関係しているので、毛髪中のクロムが低い人はインスリンがうまく働いていない可能性があります。インスリンの初期応答が低いので、血糖値が一気に上がってしまうのです。インスリンの初期応答が悪いと、反応性低血糖を起こすことがあります。

副腎疲労が疑わしい方は、唾液中のコルチゾール検査を受けてみるといいと思います。一般的に低血糖症は、5時間糖負荷検査が確定診断と言われていますが、検査自体の負担が大きいので、具合の悪い人が受けるのはお勧めできません。検査中に体調が悪化して途中で止める人もいます。代替案として、唾液コルチゾール検査や、リブレでの血糖値測定をおすすめします。リブレは、血糖値の傾向を見るには大いに参考になりますし、食事内容を修正するのにも役立ちます。

5. その3. エネルギーは作れているが、無駄に消費されているパターン

最後はエネルギー漏れのパターンです。いくらミトコンドリアでエネルギーを作っても、片っ端から無駄づがいしてしまえば、本来の目的にエネルギーを使うことができません。副腎疲労を提唱したジェームズ・ウィルソン博士の言葉を借りると、「自分のエネルギー泥棒を見つけ出せ」です。エネルギー泥棒を見つけ出さない限り、副腎疲労は完治しません。例えば、副腎疲労を抱えるの人の多くは人の頼み事を断れないタイプですよね。

ストレスは脳が受け取って、HPA軸(視床下部、下垂体、副腎)に影響を及ぼします。昔は副腎疲労と言えば副腎の問題とされてきましたが、今はHPA軸全体の問題と捉えられています。脳はミトコンドリアの数がとても多く、無駄な思考や定まらない思考などでエネルギーを著しく消費します。やりたくないことをやるのは、ミトコンドリア的にもマイナスに働くのです。一緒に会話していて、どっと疲れる相手はいませんか?そういう人からはぜひ距離をおいて下さい。慢性疲労から脱出するためには、心理的アプローチが必要になることもあります。栄養療法が長期間に及んでる人がいらっしゃれば、ぜひ検討してみてください。

6. 栄養療法成功への5つのステップ ー実践編

栄養療法を理解するということは、細胞や分子や代謝経路など、目に見えないものを系統的に理解して頭に入れることです。そのためには正しく学んで欲しいと思います。80対20の法則のように、分子栄養学全体の2割ほどを学べば、8割は理解できるかなと思って作ったのが、栄養療法成功へのロードマップです。最初の5ステップはそれぞれ穴埋め式になっていて、全部埋められれば、慢性疲労や慢性炎症に対してある程度対処できるようになると思います。ここからは実際に頭と手を動かしながら読み進めていきましょう。

6-1. ステップ① 分子栄養学の基本的な考え方を理解する

分子栄養学は、栄養学・医学・生物学・生化学で構成されますが、その中で1番最初に越えなければならない山が生化学です。生化学がわからないと、人間の体で何が起こっているのか、どうやって炎症が起こるのかなど、体系的に理解できないからです。ここをスルーしてどのサプリメントがいいかという話になってしまうと、サプリメントの罠に陥ってしまいます。

まずは細胞の仕組みを理解しましょう。細胞の構成要素はたくさんありますが、その中でも重要なのは、核、ミトコンドリア、細胞膜、小胞体です。これらの要素がどんな働きを持っていて、機能を維持するためにどのような栄養素が必要か、この表を全部埋められるようにしましょう。

細胞内の要素 働き 機能を維持するために
必要な栄養
核    
ミトコンドリア    
細胞膜    
小胞体    

<ヒントと補足>

核の役割はDNAの貯蔵庫です。人間が持つ37兆個の細胞は、全て共通のDNAを持っていますが、DNAの読む場所が細胞によって異なるため、ある細胞は目になり、ある細胞は皮膚になり、ある細胞は肝臓になっていきます。DNAという設計図のどこを読むかという命令は、環境や栄養によって左右されます。

ミトコンドリアの重要な役割はエネルギー産生ですが、その他にアポトーシス(プログラムされた細胞死)にも関与します。ミトコンドリア機能低下や小胞体ストレスがあると、正常なアポトーシスが行えず癌の原因になったりします。

細胞膜は一部が切り取られてプロスタグランジンを作るため、炎症に関わります。炎症の抑制や促進は、細胞膜が大きく関わっています。細胞膜を構成するリン脂質の組成が、飽和脂肪酸なのか不飽和脂肪酸なのか、不飽和脂肪酸の種類が、エイコサペンタエン酸なのかアラキドン酸なのかによって、炎症を起こしやすいかどうかが決まります。

小胞体はタンパク質の工場と倉庫の役割を担っています。タンパク質を作る設計図は核にありますが、実際に作るところは小胞体です。小胞体機能が低下(小胞体ストレス)するとミトコンドリアの機能も一緒に落ちるので、ミトコンドリアと小胞体は一心同体です。ミトコンドリアの働きを上げるためには小胞体ストレスをなくすということが重要になってきます。

次に栄養素の持つ性質を理解しましょう。水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンとミネラルの性質を理解するということです。ビタミンは有機物で比較的吸収はいいのですが、脂溶性ビタミンの吸収には胆汁が必要です。ミネラルは難吸収性で、腸内環境を整えることが絶対条件です。それぞれの性質を理解すると、効果的な摂り方がわかります。

栄養素 性質 効果的な摂り方
水溶性ビタミン    
脂溶性ビタミン    
ミネラル    

6-2. ステップ② 3大栄養素と細胞の働きを関連づける

糖・脂質・タンパク質の順番に穴埋めしていきましょう。ミトコンドリアでのエネルギー産生に関わるのは糖質です。疲れやすくなる原因は、ミトコンドリアの機能低下によるエネルギー不足でしたね。慢性的なエネルギー不足に陥ると、糖分やカフェインを過剰に欲するので、ますます低血糖や副腎疲労が悪化してしまいます。

ミトコンドリアを
動かす栄養素
どのような時に足りなくなるか?
ビタミンB群  
鉄  
マグネシウム  
CoQ10  

ミトコンドリア機能低下と副腎疲労と低血糖はセットで起きていることがほとんどです。さらに、たんぱく異化も亢進するので、低タンパク質も併発します。その場合、むやみにサプリメントやプロテインを摂ってもうまくいきません。疲れを取るためには、エネルギー代謝のどこが滞っているのかを知り、そこを狙って修復する必要があります。そのためには、食べ物がどのようにエネルギーに転換されるか、細胞分子レベルで理解しましょう。解糖系、TCA、電子伝達系の大枠をおさえたら、どんな栄養素、どんな酵素が働いているかなど、もう少し深く見ていきましょう。

次は、脂質と細胞膜の関係です。栄養療法に必要な脂質の知識は、中性脂肪・コレステロール・細胞膜を構成するリン脂質、この3つです。

脂質の種類 働きは? 症状との関わりは?
中性脂肪    
コレステロール    
細胞膜(リン脂質)    

<ヒントと補足>

中性脂肪はエネルギー状態を反映します。脂肪と名前が付いていますが、どちらかというと糖質との関わりが強い物質です。糖質が欠乏すると中性脂肪が下がるので、細胞内飢餓状態の指標になります。糖質を摂りすぎたり、お酒を飲みすぎたりすれば上がり、低血糖が続いたり食事をあまり摂らなければ下がります。

コレステロールは細胞膜、ホルモン、胆汁酸の原料になります。約80%は胆汁酸として使われるので、コレステロールが低いと胆汁の分泌が低下し、脂溶性ビタミンの吸収が滞ります。細胞膜は、脳の炎症、炎症の調整、脳の機能に関わっています。特に炎症に関わるのはEPA(エイコサペタエン酸)、脳機能に関わるのはDHA(ドコサヘキサエン酸)です。ここを理解することで、炎症体質を緩和する方法や副腎疲労を治す方法、エネルギーを無駄遣いしない方法が見えてくると思います。

3つめはタンパク質です。タンパク質で重要なのはINOUTバランスです。タンパク質代謝を学んで、低タンパク質状態から脱出する方法を理解しましょう。タンパク質はどこから来て(IN)、どこに行くのか(OUT)、自分の普段の食事のタンパク質量がどれぐらいなのか、そしてタンパク質を消耗する原因、これらを列挙してみましょう。

タンパク質INはどこから来る?  
タンパク質OUTはどこへ行く?  
自分の普段の食事のタンパク質量は
どのくらい?
 
タンパク質を消耗する原因
(体タンパクの異化が亢進する原因)
をあげてください
 

<ヒントと補足>

タンパク質は食事由来よりも体内でのリサイクルによる供給が多いので、リサイクル率を上げるという視点は重要です。タンパク質のOUTが多すぎる原因に、低血糖によるたんぱく異化亢進が挙げられます。低タンパク質は、多くの場合ストレスが原因で起こります。そんな人はグルタミンを足してくださいね。また低血糖の場合、糖原性アミノ酸であるBCAAを摂ると改善する人もいます。個人差があるので、リブレなどでモニタリングしながら、効果を確かめると良いでしょう。

6-3. ステップ③ 栄養学的な血液検査の読み方

ステップ2の次は、血液検査の読み方を学びましょう。人によって必要な栄養素やその量は全く異なり、このことを個体差と呼びます。個体差を見るのが栄養療法の基本です。約50項目の血液検査からわかることはたくさんあります。例えば、胃腸の状態、炎症、溶血、タンパク代謝、糖質代謝、脂質代謝、貧血、ミネラル代謝、血糖調節障害、自律神経の緊張度、酸化ストレス、抗酸化力、ミトコンドリア活性などです。慣れている方は全部読み込めるようになりましょう。初めての方は、まずはご自身の健康診断結果をもとに、
☑️ ミトコンドリアに必要な栄養素の過不足がないか
☑️ 自律神経の過緊張はないか
これら2つを読み取ることからスタートしましょう。その次に活性酸素や抗酸化力なども評価します。

胃酸分泌を見る項目  
炎症を見る項目  
溶血を見る項目  
タンパク代謝を見る項目  
ミトコンドリア機能を見る項目  
抗酸化力を見る項目  

<ヒントと補足>

ミトコンドリア機能は、酵素活性を示す数値を見ればわかります。GOT(AST)やGPT(ALT)、アミラーゼ、LDHといった酵素活性の高低が指標になります。GOTやGPTはビタミンB6依存性なので、ビタミンB群を摂取すると割と早く上がってくる数値です。逆に上げるのが難しい項目は、コレステロールや尿酸値です。尿酸値はあまり上がりすぎると、尿酸結石や痛風発作が起きてしまいますが、低すぎるのも問題です。尿酸は人間が体内合成できる優れた抗酸化物質なので、抗酸化力を見ることができます。

また、ATP-ADPサイクルの過程で一部が分解され、そこに含まれるプリン体の代謝産物として尿酸ができます。ですから、細胞の新陳代謝が悪い人は尿酸値が低めです。尿酸値は少なくとも4、できれば5ぐらいほしいところです。このサイクルが回り、エネルギーを作れるようになると、尿酸値も上がってきます。コレステロールと尿酸が上がればだいぶ改善したとみて良いでしょう。

6-4. ステップ④ 腸内環境

血液検査が読めるようになったら、次は腸内環境について学びましょう。具体的には、消化不良、ディスバイオーシス、リーキーガット、この3つの言葉を覚えて、これらがどういう意味を持つのかを理解してください。

  原因 どんな検査で
わかる?
対策
(食事とサプリ)
消化不良      
ディスバイオーシス      
リーキーガット      

<ヒントと補足>

消化不良は、消化酵素と胃酸の分泌が不十分な場合に起こります。タンパク質分解酵素であるペプシノーゲンは胃酸によって活性化し、ペプシンになることでタンパク質を分解します。したがって、胃酸が正常に分泌されないと、タンパク質消化の大きな障害になります。副腎疲労などで自律神経の過緊張があり胃酸が出にくい人は、プロテインを摂らない方がいいということになります。最初に取るべきは消化酵素です。胃の炎症が治ったら胃酸の成分を摂るのも良いと思います。朝1番にレモンを丸ごと食べるとか、梅干しを食べるとか、食事面でも胃酸のサポートを考えた方が良いでしょう。胃酸の分泌にはATPをたくさん使います。したがって、ミトコンドリアが働いていない人は胃酸が出ないので、負のループに陥ります。その場合はミトコンドリア機能に立ち戻って考えてみてください。

ディスバイオーシスは、腸内細菌の多様性が失われることを意味します。当然、日和見菌のカンジダや悪性細菌が増えてきてしまいます。食品添加物の多い食事、抗生剤、ステロイド、ストレス、甘いものなどで腸内環境が悪化している人が非常に多いという現状があります。心当たりがある方は、ぜひ一度サイキンソー社の腸内細菌検査などをやってみてください。腸内細菌の多様性がひと目でわかります。

リーキーガットはいわゆる腸漏れ症候群のことです。腸に穴が開くと、未消化物、ウイルス、異物などが腸管から体内に侵入し、体のあらゆるところで炎症やアレルギー反応を起こします。これをずっと放置しておくと自己免疫疾患にも繋がります。また、リーキーガットを起こすと、リーキーブレインにも繋がります。異物が脳に入って、脳に炎症を起こしてしまうのです。

6-5. ステップ⑤ 副腎疲労と低血糖

3大ホルモンである、副腎、甲状腺、性ホルモンの中でも、特におさえておく必要があるのは副腎です。体にとって最も影響が大きいからです。多くの人が抱えている低血糖症は、エネルギー供給を不安定にする最大の要因です。この低血糖症を引き起こす根源が副腎疲労です。では副腎疲労の原因は何かと言うと、ミトコンドリア機能の低下、ストレス、炎症、低血糖発作です。ミトコンドリア機能が低下すると副腎疲労になり、副腎疲労になるとミトコンドリア機能が低下して低血糖を起こす、こんな悪循環を繰り返すことで全身の機能を低下させている人がほとんどです。ですから、単純に副腎サプリやミトコンドリアサプリを飲むだけでは良くなりません。一度この表を使って整理してみましょう。

あなたに当てはまる
副腎疲労の症状は?
 
あなたが抱えている
ストレスは?
 
その解消法は?  
あなたの抱えている
体内の炎症は?
 
その対策は?  
あなたが行うべき
低血糖対策の食事法は?
 

ここまでが1~5のステップです。表の穴埋めをするだけでも結構勉強になると思います。ステップ5までが終わったら、ここで改めて根本原因に目を向けましょう。

6-6. ステップ⑥ 根本原因ピラミッド

根本原因ピラミッドの頂点は脳機能ですが、実際は脳に対するアプローチを行う前に体調が良くなる人がほとんどで、それは80対20の法則で説明した通りです。しかし、重金属や農薬などの重篤な暴露を受けていたり、メチレーションのバランスが狂っていたり、甲状腺機能が大幅に低下しているなど、特定の原因によってうまくいかない人もいらっしゃいます。このような人たちに対して、根本原因アプローチは絶大な力を発揮します。自分に当てはまる根本原因のチェックリストをもとに、ご自身の体を振り返ってみてください。

炎症 炎症の部位は?
炎症体質の有無は?
ディスバイオーシス?
腸内環境 消化不良?
リーキーガット?
カンジダ感染?
毒素 重金属蓄積?
非金属(農薬、トルエン、排ガスなど)
カビ毒蓄積?
ホルモン 副腎疲労と低血糖の有無?
甲状腺機能低下?
ミトコンドリア 必要な栄養素の過不足?
脳機能 メチレーション? 銅亜鉛バランス?

<ヒントと補足>

炎症体質の有無は食べ物で決まります。外食に偏りがちでリノール酸過多になると炎症を起こしやすくなります。血中のオメガ3とオメガ6の比率を計ることもできますし、トランス脂肪酸の量を計ることもできます。様々な検査がありますので、興味がある人はぜひやってみてください。

消化不良はペプシノーゲン検査でわかります。血中アミラーゼも、消化酵素の分泌が低下していると低い数値になります。ディスバイオーシスが疑われる場合は、便検査で腸内環境を調べてみるとよいでしょう。リーキーガットの検査は様々ありますが、便中カルプロテクチン検査は比較的多くのところで取り扱っています。リーキーガットにより分泌されるゾヌリンを検出する検査もあります。

カンジダ感染の有無も必ずチェックしましょう。ミトコンドリア機能が低下して低血糖を起こしていると、糖質をたくさん摂ってしまうので、カンジダが増殖しやすくなります。いくら糖質をとってもカンジダに奪われて体のエネルギーにならないので、午後に猛烈に眠くなる、疲れが取れない、ブレインフォグがある、腹部膨満感がある、甘いものがやめられない、そういった症状があればカンジダを疑います。

毒素には、重金属と非金属、カビ毒があります。農薬やトルエン、排気ガスの暴露を日常的に受けている人は1度調べてみるといいと思います。重金属と非金属、どちらもイライラや疲れやすさといった症状が出ます。カビ毒に関しては、湿気が多い家に住んでいる人、ブレインフォグがなかなか取れない人は、検査を受けてみる価値があると思います。

ホルモンは、副腎疲労と甲状腺機能で判断します。甲状腺はエネルギーに関与するので、冷えが強い人やむくみが強い人は甲状腺機能を確認すると良いでしょう。

これらのことが大体わかってきたら、メチレーションの状態を見てみるのもいいと思います。メチレーションはとても複雑で、本によっては書いてあることが反対だったりする場合がありますが、実践講座の動画を使いながらじっくり学んでください。

6-7. ステップ⑦ それでもうまくいかない人へ

① 自分がどの根本原因に当てはまるかわからない人

7つの根本原因(ディスバイオーシス、脳、ミトコンドリア、ホルモン、毒素、炎症、消化不良)のうち、自分がどれに当てはまるかはっきりわからない人も中にはいらっしゃると思います。そんな人はぜひ『セルフケアコース』に参加してみてください。これは宮澤医院での7つの根本原因に対する診断治療のチェックリストと、その1つずつの項目に動画解説を加えたものです。ミトコンドリア機能低下があるのか、脳機能低下があるのか、カンジダ感染しているのか、はっきりわからない人のためにチェックリストも用意しています。ステップ5までのことを理解した上で、さらに学びたい方におすすめのコースです。

② 自律神経の過緊張が何をやっても取れない人

これは、家庭環境に起因する偏った考え方、原始反射の残存、幼少期のトラウマなどが原因になることがあります。精神的な要因も考えておくべきなので、心当たりのある人は小池雅美先生のセルフアップデートコースを受講してください。自律神経を乱す思考に気づきを与えて、自分とのコミュニケーションによって現状を抜け出すセルフアップデートを目的としたコースです。

最後に、1番効率がいい勉強方法はアウトプットです。ブログでも動画でも何でもいいので、アウトプットしていろんな人の意見を聞くといいと思います。ご自身の表現でどんどん発信してください。でもちょっと自信がないという方は、まずこのロードマップの表の穴埋めをして、栄養療法の基礎を習得してくださいね。

栄養療法外来の流れ 初診時

宮澤賢史 · 2021年6月1日 ·

最近「栄養外来を見学させてください」とか「実際にどのようにして診察を行っているのか知りたい」とおっしゃる先生が多いので、今回は、僕が宮澤医院の栄養療法外来で行っている流れについてご紹介します。

1 問診の流れ

1-1 自己紹介

最近紹介でいらっしゃる方が多くなりましたが、私のことを知らない患者さんには、私のバックグラウンドと治療方針をお話しています。消化器内科医として大学病院に勤務した後、サプリメントのクリニックに転職して、栄養療法を始めて15年になります、根本原因を探してサプリを減らす治療をしています、といった事をまずお話します。

1-2 ご紹介者について

次にどなたのご紹介かをお聞きしていてます。紹介者がわかると、今までどんな治療を受けていたか大体分かります。紹介でない方にも、今までどういうクリニックに通っていたかを必ず聞きます。栄養療法の治療歴と一般診療の受診歴共に重要で、ごく一般的な病気の原因を否定してあるかどうかは必ず確認します。副腎疲労かと思っていたら下垂体腫瘍だった、なんて笑えない話です。

1-3 栄養療法と保険診療の違いについて

ネット経由の患者さんは栄養療法のことをよく知っている事が多いですが、保険診療の患者さんに対しては栄養療法と保険診療の違いについて説明をします。一般診療は症状にアプローチし、栄養療法は原因にアプローチするということを中心にお話します。どちらも重要ですが、保険診療と栄養療法の違いについてをお伝えしています。

1-4 ラポール(信頼)の形成

問診票を見ながらさらに深く話を掘り下げていきます。ラポール(信頼)の形成と問診が同時進行となり、自動的に信頼関係の構築になるんです。信頼関係をつくる目的は、患者さんと友達になることではありません。患者さんには治療方針に従ってもらわなくてはいけないため、少し上の立場でいる必要があります。

1-5 知識=お金と心得る

プロにお金を払う場合、相手の知識にお金を払うということなので、その人よりも数段レベルが上なのが当然だし、それをわかって頂く必要もあります。知識が対価となるので、5分に1回専門用語を使います。1分に1回だと多過ぎます。「あなたはHPA軸がうまく機能してていないです。つまりそれは、脳と副腎がうまく連絡をとれていないことを意味します」というふうにお話をします。「唾液中コルチゾールが低下しています。副腎から出るストレスを打ち消してくれるホルモンです。これが低いから疲れやすいんです。」など専門用語を言ったあとに要約をつけるなど、専門用語と簡単な用語を混ぜて使うのがコツです。

1-6 言えないことを言ってもらう

受診までにネット上の問診票を全部埋めてから来てもらうようにしています。問診票は7つの根本原因のどこに原因があるかということを分かるように作り込んでいます。そこにチェックを入れてもらいますが、患者さんは本当に重要なことは問診票に書かないことが多いです。なぜならまだ信頼関係がないからです。信頼関係を構築するために、問診をうまくやる必要があります。人には言えないことを最終的に話してもらうのが問診の目的です。

ものすごく女性にモテる男の人がいて、どうしてそんなにモテるんですかと聞いたら、「信頼関係」だそうです。信頼関係とは何かを聞くと、それは他の人には言えないことを話してもらうことだと言うんです。人に話さないことを話してもらえるような関係になれば治療もうまくいきます。

2 問診から根本原因を探る方法

問診が一通り終わったら、次にすることは、問診事項を根本原因に転換することです。問診の中で、これは!と思う事項を絞り込むことから始めます。

2-1 根本原因ピラミッドを理解する

問診で一番重要なことは、根本原因が何かというのを見定めることですが、根本原因ピラミッドの一番下には、腸・炎症があります。その上にデトックスがあって、脳機能がくるのですが、低血糖の海が一番下の層となります。栄養療法的や機能生理学的な問題だと、病気の根本原因は、ストレス、食事、生活習慣のどれかなので、そのあたりを問診で確認します。

2-2 経過について聞く

その症状が急に発症したのか、それとも慢性的に出てきたのかと聞くことはとても重要です。慢性疲労、副腎疲労の場合は積み重なって症状が出てくるのに対して、慢性症候群は、風邪やストレスなどのトリガー(引き金)があって急にガクンと発症し、それを引き金に症状が続いてるというパターンが多々あります。

2-3 発症時に何が起きたのか聞く

発症時にどんな出来事があったのか、どういう状況だったのかを確認することはすごく重要なことです。ただしそれらは問診票には書いてもらえないことがほとんどです。ちょうど離婚したときだったとか、本当のお父さんとお母さんの子ではないと分かった日ですなどと問診票に書く人はいないです。つまりそういうことを掘り起こすための問診なのです。最初は聞けなくても、信頼関係を築くとだんだん判明していきます。

そこが分からないといくら治療をしてもうまくいきません。ストレスが今も継続しているのか、それとも過去の出来事なのかが大きな要素です。ストレスの継続は副腎疲労の回復を遅らせ、それによって起きる低血糖を始めとするホルモンのアンバランスが腸内細菌バランスを乱していたりします。アドレナリンが多い人は腸内細菌に悪玉菌が多いので、炎症が起きて解毒がだんだんできなくなり、肝臓がやられてくるというお決まりの流れとなります。

根本原因ピラミッドのより下層部のほうが原因になっているため下から治療する必要がありますが、低血糖のさらに下には、生活習慣、食事、ストレスがあります。もちろん便秘気味、下痢気味などの腸内環境については問診票に大体書いてありますので、その源流を問診の時に探ってください。

2-4 感情が行動を決める

人は感情で動く動物です、どういうときに検査をするとか、サプリメントを買うかというと、感情が動いたときです。マーケティングの本に書いてある通り、感情的に物を買って、これは自分に必要だったと後から論理をくっつけるものです。だから感情的にこの人からは買いたくないと思ったら話だけ聞いて、検査は他のところで受けてしまいます。こうなると大体うまくいきません。このような方は長く継続して受診されない傾向にあります。全てを委ねられて信頼されることが必要なのです。

問診の際には、患者さんの話が8割、自分が話すのが2割くらいがちょうど良いです。相手の話を聞いて、それで最後にまとめをします。最後にこれで大丈夫ですか、と確認すると、言い忘れたことがあるんですけど… となります。この言い忘れたという内容に、エッセンスがつまっていることが多いです。

2-5 主訴を3つにしぼり根本原因とつなげる

次にすることは、主訴を整理してしぼるということです。10個くらい主訴をおっしゃる方もいますが、一番辛いことを3つに絞ってもらいます。全てを一度に治療しようとすると治療がバラけるし、解決に繋がるのが難しくなります。10個全部の整合性が見えればそれでもいいですが、最初は上位3つ、一番辛いことはなんですか、と絞った方が良いと思います。

そして次には、それらを根本原因につなげるということをします。患者さんは色々な主訴を言います。大体ネットでも色々調べていますが、それは点と点でつながっていないことがほとんどです。その点と点を線につなげてあげるのがプロの仕事です。

3  症例1 47歳女性 PMS、のぼせ

というわけで、症状から根本原因への転換を実際にやってみましょう。まずは「疲れやすい・PMS・気分障害・のぼせ」を主訴とする47歳女性の方です。症状的にはエストロゲン過剰です。女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンという拮抗する二つのホルモンがありますが、47歳といった前更年期では、エストロゲンが過剰になりやすいんです。こういう人にはどのような根源が隠れているのでしょうか。

3-1 環境ホルモンの暴露

アメリカ産の牛肉とか牛乳にも成長ホルモンも沢山入っているし、環境汚染物質・アルミニウム・水銀・環境ホルモンなどが人工のエストロゲンです。その結果、プロゲステロンに対してエストロゲンが過剰になるので、色々な症状が出現するというわけです。対処法は暴露を避ける事ですね。牛乳、乳製品を避けることから始めます。

3-2 副腎疲労

コルチゾール・スティールも原因となります。コルチゾール・スティールというのは副腎疲労でコルチゾールが減ってしまうために、原料のコレステロールが女性ホルモンではなく全部コルチゾールに回ってしまうことを言います。そのため副腎疲労は女性ホルモンの問題につながります。

甲状腺や性ホルモンの問題は、副腎の問題を解決しないと根本的に解決しません。副腎疲労を放置したままで甲状腺ホルモンを足したり、女性ホルモンの補充療法をされている方がいますが、副腎疲労の原因が放置されているので、甲状腺ホルモンの治療も増えていく傾向にあります。このふたつのホルモンアプローチは、副腎疲労のアプローチとともに行うべきです。

3-3 肝臓の解毒不足

3番目の問題は、肝臓です。エストロゲンの代謝は肝臓で行われているため、エストロゲン過多、 PMS 、子宮内膜症、乳がんのようにエストロゲンが原因と言われる疾患に対して、栄養療法で一番最初にアプローチするべきは肝臓です。肝臓にアプローチをして解毒を促し、エストロゲンの代謝を亢進させるというのが非常に重要なアプローチとなります。COMTという酵素がエストロゲンを代謝しますが、補酵素としてビタミンB6が必要です。アドレナリンと代謝が拮抗するため、女性ホルモンがアンバランスになったときにはイライラしたり、PMSになったりします。

3-4 腸内細菌

最後に、腸の問題です。腸内環境とホルモンは切っても切れない関係です。例えばメラトニンとセロトニンは90%腸でつくられます。腸内環境を改善することなしに、睡眠の問題は改善できないです。アドレナリンもノルアドレナリンも腸内環境と密接につながっています。だから腸内環境をきちんと治さないと、ホルモンの問題も改善しないのです。

根本ピラミッド的には、ホルモンは3階層目です。腸を完全に治すことがホルモンを治すことになります。エストロゲンについても同様で、腸内細菌はエストロゲンを産生しています。エストロゲンは卵巣だけでなく、副腎でもつくられます。エストロゲンにはエストロン(E1)、エストリオール(E2)、エストラジオール(E3)と三種類あります。3つのエストロゲンがうまい具合に拮抗して、エストロゲン活性が強くならないように調整してるわけです。腸内細菌が少なくなるとエストロゲン活性が強くなります。

症例1のような患者さんが来たら、女性ホルモンの根本原因は、環境ホルモンへの暴露なのか、副腎を含めたホルモンバランスなのか、肝臓機能が低下している解毒の問題なのか、それとも腸内環境が悪化しているからなのか、この4つが根本原因になりうるから、この4つの状態がわかる検査をしませんか。と私なら提案します。主訴をまとめて、根本原因に転換していくのを初診時に行っていくわけです。もちろん原因は他にもいろいろあり、この4つだけではないですが、このような形で進めていけばいいと思います。

4  症例2 32歳男性 慢性疲労

次は「疲れやすい、痩せられない」を主訴とする32歳の男性です。この方の主訴は、どのような根本原因でに転換できるでしょうか?想像力次第で色々な考え方があると思いますが、自分なりの意見を見つけることが重要だと思います。

4-1 インスリン抵抗性

インスリン抵抗性を改善しないとダイエットは結局成功しません。長期間になればなるほど、食欲を抑制するのが難しくなるからです。長期間のダイエットを成功させるには、根性とかに頼らなくても良い方法を見つける必要があります。

4-2 消化不良

ダイエットに必要なエネルギーの元となるタンパク質とミネラルは、簡単に消化不良を引き起こします。マグネシウムはエネルギーミネラルなので、不足すると痩せられないですし、亜鉛不足は過食症を引き起こします。

4-3 解毒の問題

解毒の問題もあります。水銀やヒ素の蓄積はミトコンドリアを邪魔してエネルギーの消費を抑えてしまいます。また、金属の蓄積を排除しようとして生理的な浮腫が出ますが、その浮腫を肥満をとして主訴として訴える人もいます。

食事制限や糖質制限をしても痩せられないのは、もしかしたらこの辺りに原因があるかもしれません。このようにいくつか仮説を立てて検査を提案します。

5 根本原因を探すことに意味がある

現在、クリニック向けに患者の血液検査の結果の代行をしてくれるところがあるそうです。血液検査のレポートを作って、不足しているサプリを記載して送ってくれるそうです。それを参照しながら患者に説明すればとりあえずサプリは処方できてしまいますが、本質から考えると無意味でです。

患者の主訴を聞いて、根本原因にアプローチすることに一番の栄養療法のポイントがあるので、そこを外注してしまうと信頼関係も形成できず、足りない栄養だけ補充してもうまくいきません。

根本には必ず何かしら原因があるので、そこにアプローチするためには年単位の治療が必要です。つまり年単位で通い続けてもらわないといけないということなので、そこの信頼関係が築けないとうまくはいきません。この点は、私自身も大変苦労している部分ではあります。

すぐに信頼関係が構築できなくても、2回目、3回目の問診の際でも良いと思います。患者さんは最初から心を開いてくれないし、ブレインフォッグが辛くてそれどころじゃないという人もいます。その場合は、根本原因ピラミッドをただ順番に上がっていけば大丈夫です。

例えばグルテンフリーなどを提案してみて、患者さんのデトックスが進み、腸内環境が改善すると、リーキーガットが閉じて肝臓への負担が少なくなります。肝臓が解毒ができなくなる一番の要因はリーキーガット症候群です。腸と肝臓は門脈で直結しているので、腸の毒物は全部肝臓に行きます。そのため腸の炎症を抑えると肝臓が生き返ってきます。肝臓が生き返ってきて解毒が進むとだんだん脳が冴えてきます。脳が冴えてくると、何をすればいいか判ってくるという患者さんも少なくないです。だからそういう状態になってからあらためて同じ話をしてもいいと思います。そうするとより分かり合えるようになってきます。心理的・精神的なアプローチと、栄養的なアプローチの両面で攻めていく必要があり片方だけでは不十分です。

基本的にサプリメントは効率化の道具で、栄養が濃縮されて入っているものなので、不自然といえば不自然なものです。栄養療法の初期で、このピラミッドを上がるスピードをつけるためのブースター的な役割をするのがサプリメントなんです。だからそのブースターが効いて段々根本ピラミッドを上がってきたら、それに伴ってサプリメントは減らせるはずなのです。

栄養療法の説明をする時に必ず患者さんから質問されるのは、いつまでサプリメントを飲み続けなければいけないかということです。自費診療なのでそのあたりは明確に説明しないと信頼関係がうまく築けません。

腸内環境の改善には平均で2ヶ月から半年かかりますが、その結果は検査の結果によるということを初診のときに説明しています。腸の炎症が強くて悪性菌が多かったら回復に時間がかかることが多いです。悪性菌があったり特にカンジタが過剰増殖してる場合は、カンジタを除菌しないとリーキーガットは完全に閉じません。その場合、腸の炎症を止めて、カンジタを除菌するのに少なくとも4ヶ月はかかります。悪性菌があまりなければ1、2ヶ月ですみます。その見極めをするのに検査がどうしても必要で、検査の結果によって治療方針が違ってきます。その治療方針を決めるのにどうしても検査が必要だということをご説明します。

HPA軸機能異常(いわゆる副腎疲労)の検査と治療

宮澤賢史 · 2021年5月9日 ·

1 HPA軸機能障害の検査方法

1-1 血中コルチゾール

血中のコルチゾールの分泌量は、5~15mg/日ですが、生物学的に同じ一錠10gのコートリルという薬があります。これを飲むと一日のコルチゾールと同じくらいの量になります。コートリルを使う副腎疲労の治療もありますが、やはり副腎に負担をかけるので私はあまり使用していません。

1-2 唾液中コルチゾール

検査として一番優れていると思うのは、下記の理由により唾液中コルチゾールです。

  • ストレス研究と臨床で最もメジャーな存在
  • 活性化コルチゾールを測定できる
  • 侵襲がなく、特定の時間帯で測定できる
  • 血中濃度と密接な相関検査は唾液の流量、酵素による分解、凍結や解答による影響を受けない
  • 真夜中の唾液コルチゾールはクッシング症候群において信頼できる検査

その中でも、6回のコルチゾール検査をおすすめする理由は、CAR(Cortisol Awakening Response)を検出できるからです。健常人の唾液コルチゾールレベルは、起床時から30-45分後は35~60%上昇し、60分後までに低下します。このピークをコルチゾール覚醒反応と言います。CARはストレス関連HAP軸機能異常の臨床研究で最も多く用いられています。

コルチゾールはACTHに伴って朝上昇しますが、目覚めるまでは上昇がゆっくりしています。朝光が入って視交叉上核の刺激で、HPA軸が一気に活性化して上昇します。

皆さんも明日重大なイベントがあると考えて寝ると、パッと起きることがあると思います。何故かというと、人はストレスを予期する力があるため、そのイベントが過去の記憶と相まってコルチゾールアウェイクニングレスポンス(CAR)を高めるからです。朝のCARは平日と休日では違うため、この検査をするのは平日がお勧めです。潜在意識で明日は平日だから起きなくてはいけないと思っているとCARは上昇します。

このCARは非常に敏感なマーカーで、心理社会的燃え尽き、慢性疲労、PTSD、冬に下がったり、大きなストレスがあったり、鬱、排卵期、鬱で上がるなど微妙に変化します。女性の場合は排卵期の前後一日を避けて検査してください。

2 唾液中コルチゾール検査の読み方

2-1 CAR、日中リズムともに上昇しているパターン

青い線が正常として、正常よりもCARも高く日内変動も高いのは、高ストレス状態の人のパターンです。ストレス過多の人か、メランコリー型うつ病か、HPA軸機能異常でいえばステージ1です。予期ストレスでも上昇するというのが大きなポイントで、測定値は平日と休日では違います。

2-2 日中リズムが夕方に上昇しているパターン

このパターンの人は、コルチゾールが出続けているため、隠れた炎症が考えられます。この炎症が、睡眠障害を引き起こす可能性があるので注意が必要です

2-3 一見正常だが、症状がある場合

一見正常でCARも正常範囲に収まっていますが、疲れやすくて朝起きられないと言う人のパターンです。その場合、ステージ2の可能性があるのでDHEAを測ることをお勧めします。

DHEA/コルチゾール比率の重要性

DHEA /コルチゾール比率はHPA軸の機能を見る大切な要素で、多くの場合、コルチゾールレベルだけで判別するのは困難です。ステージ1の場合は、コルチゾールは上昇しますが、ステージ2では下降するので、一見コルチゾールレベルが正常と同じように見えますが、DHEAレベルは正常とは違います。もし症状と唾液中コルチゾール濃度が乖離するようだったらDHEAレベルも測ってみてください。

2-4 CARの低下、日中リズムは正常のパターン

日中は正常ですがアウェイキングレスポンスがない場合のパターンです。それを検出したくて新たに次の検査項目を増やしました。CARが低下している人は、下記のどれかに当てはまりますが、これらは通常の4回の唾液中コルチゾールでは検出できないポイントです。

  • PTSD
  • 慢性疲労症候群
  • 燃え尽き症候群
  • 季節性うつの冬季
  • 寝不足

2-5 全日で低下しているパターン

このパターンは、短期の強いストレスか長期の簡潔持続的ストレスにより起こります。短期のストレスの場合、PTSD、過剰フィードバックシステムによるコルチゾール低下なのでDHEAは低下しませんが、長期ストレス場合、多少のストレス増強があっても変化しません。まだコルチゾール検査をしたことがない人は、ぜひこの機会に一回計測してみてください。

3 HPA軸機能回復計画

HPA軸機能の回復方法ですが、副腎に関してはすでにケアされている方も多いと思います。今回強調したいのは、視床下部のストレス反応の正常化です。この4つを4つともケアするということが最終的に治療効果に影響しています。4つのうち1つでも欠けると、副腎疲労外来に長く通うことになるので是非この4つをケア率先してほしいというのが私からの提言です。

中枢神経副腎
視床下部のストレス反応の正常化
・低血糖対策
・知覚ストレスを減らす
・炎症対策
・概日リズム
副腎保護
・抗酸化
・アダプトゲン
フィードバック正常化
・PC(フォスファチジルセリン)
・アダプトゲン
ステロイドの原料補給
・ビタミンC
・ビタミンD
神経伝達物質のバランス
・神経伝達物質の前駆体、補酵素のサプリ補給
・DHEAやプレグネノロン
ステロイドの原料補給
・ビタミンC
・ビタミンB(B5,B3)
・ミネラル(Mg,Zn)
・副腎抽出物
副腎と脳を両方ケアすること

3-1 HPAとフィッシュオイル

副腎疲労が脳の問題だと分かると、フィッシュオイルの使用を試したくなると思います。実際、HPA軸にフィッシュオイル効果は、10年以上前から言われています。アダプトゲンやグネシウムも良いですが、検査でHPA軸障害を判別できたら、是非フィッシュオイルを使うことをお勧めします。ただ使用すべきフィッシュオイルの量は少し多めで、外人だと10gほどになります。あまり多いと辛いので、その場合は3gでも効果があると思います。

高城さんのメールマガジンで、C8だけの中鎖脂肪酸を使って一度他の食事を全部やめて油を使えるようにしてから、フィッシュオイルを使うと脳が入れ替わるということが書いてありましたが、副腎疲労の人には辛そうな治療だと思いました。ただ、脳機能を上げるためには重要だと思います。

3-2 運動でコルチゾールレベルが上がる

運動はコルチゾールレベルを上げるために大変重要で、ヨガ、太極拳、気功などで睡眠障害、フラッシュバック、怒りの爆発の大幅な減少など、PTSD症状の軽減ができます。マインドフルネスベースのストレッチと深呼吸運動8週間で、PTSD重症度が大幅に低下したり、認知行動療法・段階的な運動がコルチゾールを高めるとの報告が上がっています。

3-3 トラウマとHPA軸

HPA軸の調節不全は心理社会的ストレス、特に外傷性のライフイベントの結果として現れ、ストレッサーのHPA軸変化に対する適応反応は、CFSの素因となるアロスタティック負荷を与える可能性があります。

慢性疲労症候群の50%が子供の頃のトラウマ体験があり、そのトラウマにより、慢性疲労症候群の6倍のリスク増加というエビデンスがあります。ストレスにより母体の海馬のコルチゾール受容体のメチル化、その結果コルチゾールが上昇します。いろんな論文で散見されるのは、特に幼少期のストレスが、副腎疲労、HPA軸障害の発症に大きく影響しているということです。まだエビデンスは不足していますが、幼少期・若年期の経験や家族関係に取り組むセラピストが、とても重要な部分になる可能性があります。

この論文によると「脳はストレスへの反応の鍵となる器官である。何に脅威やストレスを感じるかだけでなく、適応できるのか損傷を与えるかといった生理学的、行動的反応まで決めてしまう」とありますが、生来の資質も非常に影響し、遺伝的素因、性格特性、内向性と低い自尊心、そして出生前と幼児期の経験はストレス反応を増幅します。この部分は、アプローチすべき必須の点だと思います。

4 まとめ

  1. HPA軸機能障害の病態鑑別に日中リズムとCARが有用
  2. 対策はコルチゾールの不適切な分泌をさせない事
  3. 心理学的アプローチ、トラウマ対策の重要性

病態の鑑別には日中リズムに加えて、コルチゾールアウェイキングレスポンス(CAR)を見ることで、PTSDやトラウマを発見でき、その場合は心理的アプローチが必要です。HPA軸が狂うのはコルチゾールの不適切な分泌があった場合に置きるため、それを予防することです。

心理的アプローチやトラウマ対策は重要だと思います。まず自分でできることは、自己肯定感を上げることです。色々な悩みは人が解決してくれるものではないので、自分自身が解決していくしかありません。何故解決しないかというと、勇気がないからかもしれないので、それを勇気づけてあげることはカウンセラーの仕事としてとても重要だと思います。

栄養外来に必要なコミュニケーション

宮澤賢史 · 2021年5月9日 ·

あなたは何のために栄養療法を学んでいますか?仕事に役立たせるためでしょうか?それともご自分と家族の健康のためでしょうか?もしくはその両方でしょうか?そんな方のために、今日は栄養療法外来で必要なコミュニケーションについてお話ししようと思います。栄養外来の成否は知識ではなく、コミュニケーション能力にかかっています。

1 まずは自分の健康を考える

栄養療法のプロになるという上で一番大事なことは、まず自分自身が健康になるということです。

一般医療の場合で抗がん剤を自分で試したことのあるガンの専門医や、向精神薬を全部飲んだことのある精神科の先生はあまりいないと思います。それに比べて栄養療法の医療というのは根本原因にアプローチするため、治療方法と健康増進の方法が一緒です。アプローチすればするほど病気は治り、健康の度合い(オプティマルヘルス)も上がっていきます。自分が健康でないと次のステップに行けないので、まず自分自身が健康になることが最重要課題で、全部自分で試してみるということがまず第一なんです。

医療関係者は貢献が求められがちなので、患者さんに貢献するために自分の健康を害している人が多数いらっしゃいます。徹夜で当直をして患者さんを救うことにより、多大なストレスがかかります。栄養療法は結果が出るのに時間がかかります。副腎疲労を完治するのに2年かかる人が多いです。生活習慣や食事を変えて、体が変わって、それに伴い意識が変わって、ストレスや食事、生活習慣が変わらないと駄目なんだと気がついて、そこから最短でも2年くらいかかります。

2年かけて人を治す間に自分が健康を害してしまったら話にならないので、自分の体をまず治して、長く続けられることをまず第一番に考えてください。

2 プロとしてやっていくのに必要な3つの知識

栄養療法の知識も得て、プロとして始める際必要な知識は下記の3つです。

  1. 栄養療法のスキル
  2. 経営のスキル
  3. コミュニケーション能力

2.の経営のスキルについてですが、最初はともかくそれで身を立てるということは、人からお金をもらうことなので副業で続けていても上手くいかないことが多いです。成功している人とそうでない人の違いは、本業か副業かということです。本業にしても数年かかるかもしれませんし、副業から本業に変えるタイミングが難しいですが覚悟を決めて腰を据えるしかないと思います。

そして一番大事なのが、3.のコミュニケーション能力です。普段の生活に於いては、コミュ障でもADHDでも問題はないですが、この職業の根本的なコミュニケーション能力というのは、患者さんの話をきちんと聞けるか、そして治療の需要性を患者さんに説明できるかということです。

3 コミュニケーション能力が売り上げを決める

私の最初のキャリアは、医者として保険診療という国に守られた診療で始まりました。保険診療と自費診療は少し事情が違っていて、栄養療法をするということは自費診療になるので、国の決まった治療ではない自分独自のサービスを提供するということになります。

保険診療とは定められた国の提供する医療の代理店みたいなものなので、国から約7割のお金が支払われます。それに比べ自費診療は全て自分で決めるため、例えるならば一戸建てを自分で買って、全部自分で内装を決めるという感じです。保険診療の中で栄養療法をすることももちろんできますが、賃貸物件の内装を一部変えてリフォームすることはできても、中にアイランドキッチンを作るなど内装を思い切って変えることはNGです。保険診療の中の栄養療法と、自費診療でやる栄養療法は違ってきます。全部自分で組み立てたいのなら、自費診療がいいです。自費診療とは、普通のセールスやオファーのように提供・提案することです。

栄養療法(オーソモラキュラーの三原則)は、次の3つです。

  • 個体差をみること
  • 生化学的なエビデンス(裏付け)をとること
  • 根本原因にアプローチすること

栄養療法の提供とは、検査をオファーし、その検査の結果から患者の根本原因を見つけ、その根本原因に合った食事を提案したり、サプリメントを販売することです。そのためセールスの技術は必要で、それは一般的には「教育」と言われたり、「コミュニケーション」と言われたりします。

クリニックとしての栄養療法の売上が悪いのは、患者さんが検査やサプリメントの重要性をきちんと理解できていないというのと全く同じです。栄養療法の知識がどれだけあっても、コミュニケーション能力が低いとそのことが患者さんにうまく伝わらないので、結果として売上が落ちて患者さんが来なくなって、口コミがなくなって、うまくいかなくなります。そのため、コミュニケーション能力はとても重要です。

4 コミュニケーションとは具体的に何か?

コミュニケーションとは、具体的に次の3つのことだと考えてください。

  1. 問診
  2. 教育
  3. コーチング

1.の問診とは患者さんの話を聞くことで、2.の教育とは患者さんに話をすることです。栄養療法はサプリメントを処方して終わりではなく、患者さん自身がやらなければいけないことが9割以上です。そのためコーチングというのは、ゴールの目標設定をしてそのゴールをよく見させて馬を走らせてあげることです。例えばグルテンフリーにしたら、どんなメリットがあるのかということを最初にきちんと説明すれば、毎日電話しなくても患者自身が努力してくれます。

ゴールというのは情報の塊なので、きちんとした情報・知識を教育をすれば、それ以上何も言わなくても勝手に行動してくれます。それが成功につながるので、そう言った意味でもコミュニケーション能力は非常に大切です。

5 どういう栄養外来にするか決めておく

栄養療法の知識だけでは不足だと思い、先日ドクター向けの栄養療法外来の養成支援講座を立ち上げましたが、これから始められる方向けに、問診に関しても最初に決めておいた方が良いことをいくつかお伝えします。

それは、まず「どういう栄養療法外来にするか」です。具体的には、お金と患者さんと時間の配分を決めるということです。栄養療法に100%の人生を賭けられる人がいたらそれでも良いですが、患者さんの難易度が上がると得られるお金が減って自分の時間も減ります。患者さんの難易度が下がると、経営的に上手くいって自分の時間も増えます。だからここをまずは具体的に、50%・50%にするのか、30%・70%にするのかを決めたほうが良いです。

栄養療法をされる先生方は保険診療と併用だと思うので、保険診療と自費診療との割合を決めなければなりません。どういう患者さんを診てどこまでは受けないのか、アレルギー、自閉症のお子さんはどこまで診るのか、検査はどこまでするのか、サプリメントの在庫はどこまで抱えるかなどです。自分が熱意を持って取り組める分野があれば色々なものを割いて用意したら良いですが、患者さんのニーズは多様なので自分ができる範囲とできない範囲の線引きをきちんとしておきましょう。

次に診察費用を決めましょう。自費診療外来にどのくらい患者さんが来るかは、開業する前までに流している情報量の多さによります。自費診療なので、プロになるとしたら1回の料金をどうするかということを自分で決めます。高すぎても誰も来ないし、安すぎると疲弊します。私は最初、自費診療の初診料を5,000円で始めたんですけど、今は30,000円にしています。

6 知る⇨好きになる⇨信頼する

自費診療とは需要と供給の関係なので、患者さんが増えてきたら当然価格も上げるものですが、その鍵は情報の発信量、つまりコミュニケーション能力です。まずは診療に来てもらうところからコミュニケーションは始まっています。そのあとは知る⇨好きになる⇨信頼するという流れになります。

信頼するというフェーズになって、初めてこの人に診てもらおうかという気になります。まず相手を知り、好きになって、信頼されるというところまで行くには、現状ならネット上でいかに沢山情報を出すかということです。情報を沢山出せば出すほど、価格は上げても大丈夫です。情報を出していない人は最初は無料にしてください。無料の情報をシェアすることで、コミュニケーションのネット上の仕組みができてきて、そこではじめてきちんと診療ができるようになります。

もちろん口コミや、保険診療で診察したことのある患者さんの付き合いが、ネット上よりベストです。保険診療の患者さんとコミュニケーションができていて信頼されているのであれば、自費診療の話をしても良いと思います。物事には順番があるので、どのようなスタイルでやるかを考えてみてください。私の場合は保険診療の患者さんに声をかけることはほとんどしていないため、ネット上で来た人が99%です。この信頼をネット上で得る仕組みを構築しています。

7 なぜ◯◯が必要なのかを伝える

栄養療法の勉強で一番勉強になるのは、他人に教えることです。他人をカウンセリングするというのが究極の形です。

検査をオファーしてサプリメントや治療を提案するときに、「何故この検査は必要なのですか?」「何故このメーカーのサプリメントでないとだめなんですか?」「何故一番最初にデトックスをやってはいけないんですか?」「何故最初に低血糖の治療からやらなければいけないんですか?」などの質問に答えられるでしょうか?自分でもきちんと理解した上で、クライアントに説明しないと当然上手く伝わりません。

例えば、メタジェニックス社の「グルテンダイジェスト」という製品は、消化酵素のサプリメントをお薦めする理由はこんな感じです。

「一般的に消化酵素はタンパク質の端から切っていきます。グルテンを端から切ることによって途中でモルヒネ様物質であるグリアドルフィンができます。そのためグルテンの消化が悪い子供がグルテンを摂ると、中途半端な消化によるモルヒネ様物質を脳内に作り出してしまいます。しかし、グルテンダイジェストにはグルテンタンパクを真ん中から切るという特殊な成分が入っています。真ん中を切ることで消化の効率も良くなりますしグリアドルフィンもできません。その成分を使っているのは、現在メタジェニックス社ともう一社だけです。」

このようにして、なぜこのサプリや検査が必要か、なぜこの順番でやらなくてはならないかなどを順番に説明していきます。

副腎疲労の正体はHPA軸機能異常

宮澤賢史 · 2021年5月9日 ·

副腎疲労は副腎から放出されるコルチゾールというホルモンが減って具合が悪くなるという疾患の概念です。僕が2007年に副腎疲労という概念を知ったのは、「Adrenal Fatigue」という本を見たのがきっかけです。この本の著者のジェームズ・ウィルソンという方は自然療法医で、カイロプラクターでもありました。彼がストレス生理学の分野の研究に基づいて、1998年に副腎疲労という用語を作り出しました。21世紀のストレス症候群として副腎疲労がクローズアップされると確信していたんですね。

1. きっかけはビタミンC

1979年、分子栄養学の創始者ライナス・ポーリング博士は、レイベン病院の外科部長のイーワン・キャメロン先生と共著で「Cancer and VitaminC」という本を出版しました。末期ガンの患者にビタミンCを点滴したら、ガンは治らなかったけど、生活の質が上がって、生存期間が伸びたことを記した本です。

同時に論文も発表されましたが、その後すぐにメイヨー・クリニックが反対論文を発表したため、結局ビタミンCの効能は医学会から忘れ去られました。そんな中、たった1人ビタミンC点滴を治療として続けたのが人体機能改善センターのH・リオルダン医師です。彼は変わり者呼ばわりされながらも、30年間研究を重ねて、2000年に高濃度ビタミンCががん細胞を殺傷するという論文を発表しました。(2005年にWHOがこの論文を元に追加試験を行い、その後すぐに世界的なビタミンC点滴ブームがおきました。)

2004年、リオルダン医師の友人だった師匠の紹介で、僕はカンザス州の人体機能改善センター(現リオルダン・クリニック)にビタミンC点滴のやり方を習いにいきました。リオルダン先生は点滴の方法を教えてくれただけでなく、慢性疲労や自閉症の患者さんの診察にも立ち合わせてくれました。

僕はここを訪れるまで、点滴のビタミンCを「効果は強くないが副作用も少ない抗がん剤」だと考えていたので、がんをどの位小さくできるかという事にばかり関心がありました。でも、リオルダン先生は、自宅の裏にある湖(写真左上)のボートの上で「抗がん作用はビタミンCの多くの作用のうちごく一部にすぎない。もっと全身の事を考えなさい。」という話をしてくれました。

帰国後してみると、クリニックにはビタミンC点滴の話を聞いた多くのがん患者さんが集まっており、早速治療を始めました。75g以上で抗がん効果があると聞いて、100gのビタミンCを週3回から6回点滴しました。静岡在住の患者さんに毎日新幹線で通ってもらって点滴していたら顔は真っ白になりました。ビタミンCの美白効果はてきめんでしたが、ガンはあまり小さくなりませんでした。多いときは月にビタミンCのバイアルを1000本以上使いました。溜まったマイルで家族でハワイにビジネス・クラスで年2回いきました。

結局、4年間で700名のがん患者さんに点滴を行いましたが、がんが完全に消失したのは2人だけでした。でも、がんは消えないけど、みんな元気なんです。よく考えてみたら、末期がんの人が静岡から渋谷のクリニックまで週6回元気に通ってくる事はすごい事です。ビタミンCには何か体を元気にする、特別な力があるんだと考えるようになりました。

2007年、再びリオルダン・センターに行きました。その時にクリニックの売店で見た本が、この「Adrenal Fatigue」だったのです。こんな病態があるのか!とても衝撃的だったことを覚えています。

2. ビタミンCは副腎に多い

帰国後ビタミンCの点滴を副腎疲労に利用しようと考えました。リオルダン・センターのロン先生の発表に「血管を1とすると、白血球には80倍、副腎の中には150倍の濃度のビタミンCが存在する」とあったので、ビタミンCは副腎に使えると思ったからです。

文献によれば、モルモットにビタミンC点滴をすると体内で脳や副腎、水晶体に偏って分布します(左上の図)。それなら、ヒトの副腎にもビタミンCは移行しやすいと考え、副腎疲労の患者さんに点滴を試してみたら、なんと63%に症状の改善効果が認められました。

ビタミンCは、無駄なコルチゾール分泌を抑え副腎の負担を取り去ってくれます。左上のグラフのパターンを示すのは過緊張の人ですが、このような人にビタミンCを点滴すると、緊張がとけてリラックスできます。ただし、元々コルチゾールが低めの人にビタミンC点滴を入れるとコルチゾールが激減して、立ちくらみを起こしてそのまま倒れてしまう場合があります。初めてのビタミンC点滴は、必ずリクライニング・チェアで受けることをお勧めします。

そんな経験から、副腎疲労とビタミンCの関係に確信を持ち、副腎疲労のホームページを作りました。 以来、グーグル検索で副腎疲労というキーワードで3年間1位を取りました。 おかげで患者さんがすごく増え、「副腎疲労とはなんぞや物語」という漫画を出版したり、2015年には副腎疲労脱出セミナーも開催しました。調子に乗ってたんですが、それは長続きはしませんでした。

3. アドレナル・ファティーグ神話

アドレナル・ファティーグをPubMed(論文検索サイト)で調べてみると一番上に出てくるのは「アドレナル・ファティーグは存在しない」と言う論文です。

例えば、筋肉疲労だったら乳酸が溜まったりしますよね。副腎に乳酸が溜まるわけでもないし、そもそも、副腎が疲れる事ってあるんでしょうか?

実は、ストレスで副腎が疲労する、もしくは機能しなくなるというエビデンスはありません。

4. ハンス・セリエのストレス反応

1952年に出版されたハンス・セリエ著の「適応症候群」。その中で、ラットにストレス負荷を与えて解剖してみると、副腎が腫れ上がり胸腺やリンパ節が小さくなり、免疫が低下した、とあります。彼は、副腎の腫脹と、リンパ節の萎縮、胃の出血を「セリエの三徴」と名付けました。

これがいわゆるストレス反応で、副腎疲労になると、副腎は萎縮するのかなと思いきや逆に腫れ上がります。なぜ腫れ上がるかの論文は見つからなかったのですが、恐らく副腎髄質のせいです。 副腎皮質はステロイドを作っていて、副腎髄質はアドレナリンを作っています。副腎髄質は作ったアドレナリンを貯めておけるのに比べて、副腎皮質はコルチゾールを貯めておくことはできず、ACTHの命令があったときにその場で作るのみです。

副腎疲労になると、足りないコルチゾールの働きを補うために、アドレナリンがいつも出るようになります。このような人は、副腎髄質が働きっぱなしなので副腎が腫脹します。足つぼ治療を受けた方はご存知だと思いますが、副腎の足のツボは真ん中にあります。副腎疲労の人はそこに痛みを感じますが、それはアドレナリンが出続けて副腎に負担がかかっているからです。

5. コルチゾールが減る理由

ではなぜ副腎ホルモンが減ってしまうのでしょうか。コルチゾールを出しているのは副腎の中でも皮質という部分です。副腎皮質が脳から受け取るACTHという信号と、副腎皮質内の酵素の2つがコルチゾールの出力を調整しています。コルチゾールが低下する原因は、外部信号が弱くなるか、酵素の活性が弱くなるかのどちらかなのです。副腎が疲れるからではありません。

下記の図は、脳にストレスがかかるとストレスホルモンが出続けてだんだん疲れてくるという副腎疲労の図ですが、私が独立したときに初めての副腎疲労の患者さんに作ってもらいました。Adrenal Fatigueの本の挿絵に擬人化された副腎が疲れているイラストがあったので、それを参考にしたんです。

でも正確には副腎が疲れることはありません。この図は正確ではないのに色々なところで真似されました。今でもネット上で似た様な図を沢山見かけます。繰り返しますが、疲労しているのは副腎ではなく脳(下垂体)です。この事実を踏まえて、図を書き直してもらいました。

ストレスがかかると脳からACTHというホルモンが放出され、それが副腎を刺激してコルチゾールが出ますが、副腎疲労の人では、ストレスがかかってもACTHが放出できません。つまり、副腎疲労の正体は下垂体疲労なんです。この様にストレスに対する下垂体の反応が悪い状態をHPA軸機能障害と呼びます。ストレスで副腎機能が低下するというエビデンスはありませんが、鬱などの様々な疾患でHPA軸の機能が低下するというエビデンスは沢山あります。

6. HPA軸機能障害

脳の視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が出て、下垂体がその命令を受けてACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌します。それを受けた副腎がコルチゾールを出し、コルチゾールが出過ぎないように視床下部と下垂体にネガティブフィードバックをかけます。これによってCRHとACTHがバランスを保ちます。これをHPA軸(hypothalamic-pituitary-adrenal Axis)と言います。この視床下部、下垂体、副腎の連携が上手く取れないことをHPA軸機能障害と言います。コルチゾールが出過ぎるパターン、出にくいパターンがあります。

6-1. 鬱病ではACTH、コルチゾールが出過ぎる

鬱病の人は、CRHもACTHも放出されて、その結果コルチゾールも沢山分泌されてしまいます。コルチゾールが大量に出たら普通はネガティブフィードバックがかかって、視床下部と下垂体にこれ以上刺激ホルモンを出さないように抑制しますが、鬱ではそこがうまく機能しません。その結果、ACTHとコルチゾールが出続けてしまいます。報告によれば、うつ病患者の50%は、血中グルココルチコイド濃度上昇によるHPA軸の負のフィードバック機能障害が認められています。

6-2. 慢性疲労、PTSDではACTH、コルチゾールが出にくい

それとは反対に、会社の社長(視床下部)が部長(下垂体)に叱咤激励するのにも関わらず、部長がやる気がなくて、その結果部下(副腎)も全く働かないというのがPTSDや慢性疲労のパターンです。論文によると、慢性疲労症候群と線維筋痛症(FM)の女性に基礎コルチゾールの優位な減少が見られたり、概日周期及び朝のACTH分泌レベルが低下しているとかいうことが分かっていて、慢性疲労症候群の人は下垂体レベルから疲労しています。

様々なタイプの精神疾患とHPA軸機能障害の関係についてBaumeisterらがこのように報告しています。

https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00127-014-0887-z

7. HPA軸が狂う4つの原因

副腎疲労の正体は、HPA軸機能障害です。HPA軸が狂う原因は、コルチゾールの過剰分泌にあります。コルチゾールの働きは6つあります。

  • 炎症抑制          
  • 血糖上昇
  • 抗ストレス効果
  • 日内変動
  • 免疫抑制
  • タンパク異化

そのため下記の4つの原因がコルチゾールの異常分泌を招きます。

  • 慢性炎症
  • 血糖の乱高下
  • 慢性ストレス
  • 慢性の夜更かし

副腎疲労を治すためには、つまりHPA軸異常を治すためには、この4つに切り込むことが必須であり、HPA軸機能障害の権威であるトーマス・ギリアム博士によればこの4つのストレスは十分修正可能ということです。

7-1. 慢性炎症

炎症性サイトカインがHPA軸を活性化し、コルチゾールを放出します。リウマチ、クローン、MS、喘息、皮膚炎などの炎症性、代謝生の炎症疾患でもHPA軸の低下が見られます。また、糖尿病の人もHPA軸が狂っています。長期の炎症はコルチゾール耐性を引き起こし、炎症を増加するので、炎症を治すことはとても重要です。

7-2 .血糖値の乱高下

炎症性サイトカインが過剰に分泌されると、インスリンの働きが悪くなり内臓脂肪が増えます。内臓脂肪は炎症性物質なので悪循環となります。ストレスに対してコルチゾールが過剰分泌されるHPA障害が、糖尿の原因の一つだと言われています。糖尿病に詳しい方はお分かりだと思いますが、血糖値を薬や食事、運動で一時的にコントロールをしても、気を抜くとすぐ血糖値上がります。このため糖尿病の完治はなかなか難しいですが、一つの可能性としてはHPA軸障害が挙げられます。HPA軸が障害されて、ちょっとしたストレスでコルチゾールが大量分泌されると、高血糖は治りません。

また、血糖値が50などの絶対値だけを問題視するのではなく、200から100に急に下がるといった変化量が大きい場合も、HPA軸に負担をかけます。

7-3. 夜更かし

睡眠障害とサーカディアンリズム(概日リズム)の低下は、強力なストレッサーとして機能し、HPA障害を起こしてとても疲れやすくなります。炎症も食事も気をつけているのに、深夜1時に就寝するという人は沢山います。副腎疲労をきちんと治そうと思ったら、11時までに寝ることが重要です。体を修復する成長ホルモンのピークが夜中の12時だからです。

なかなか概日リズムが治らない人は、とにかく朝起きて1度朝日を目に入れてください。視交叉上核という光を感じ取る脳の中に核があって、そこで概日リズムを調整しています。朝早く起きれば、この視交叉上核が光を感知してメラトニンの産生を止めます。朝メラトニンがダラダラ出てるからいつまでも眠くて、その結果夜にメラトニンが出なくて眠くならないので、その悪循環を止めることが重要です。どうしても眠かったらその後寝てもいいですが、朝に視交叉上核を起こすというのが大事です。

睡眠自体が難しい場合は、根本原因ピラミッド3つを考えてください。ホルモンと消化器と解毒です。ストレスと低血糖、 消化不良によるカルシウム・マグネシウム・亜鉛不足が睡眠不足を起こします。 また、トリプトファンがセロトニンを介してメラトニンになるので、タンパク不足も不眠の原因になります。肝臓の解毒のピークは午前1時から3時のため、解毒が上手くいってない人や毒物が沢山溜まっている人は、肝臓が働き過ぎて夜中に起きてしまう可能性があります。

概日リズムを積極的に整えて、それでも眠れない場合はこの3つを考えてみてください。特に不妊治療の人は、ミトコンドリア機能を上げていかないといけないため、夜10時には寝てください。ミトコンドリア機能を見る目安は基礎体温です。

7-4. ストレス(自分がストレッサーだと感じるものの存在)

ストレスの特徴の一つは、寒さや飢えなどの「本当の脅威」と精神的、感情的、心理社会的ストレスなどの「脅威と感じたもの」を区別出来ないことです。つまり森の中で熊にあったっていうストレスと、会社に行くのが嫌だというストレスの区別がつかずに、脳はどちらのストレスにも同じ反応をするということです。

2つ目のストレスの特徴は、脅威と感じるものは人によって異なるということです。過去のストレス経験やトラウマ、くせ、人格が神経伝達物質に大きく影響を与えます。ストレスは正式にはストレッサーといいます。飲み会は私にとってストレスだというのは、正しくは飲み会は私にとってストレッサーだ、となります。

ストレッサーに対する反応の大きさはストレッサーそのものではなくて、個人の認識に基づいています。そのため飲み会がストレスになる人とならない人がいるのです。同じように、人前で話すことをストレスに感じる人と感じない人がいます。僕はものすごく緊張して手先が冷たくなりストレスに感じます。みのもんたさんは朝の番組の前に必ず生ビールを一杯飲んでから話すと聞いて、みんな同じなんだと思って少し安心しました。

自分にとって何がストレッサーなのか知りたい方は「Percieved Stress Scale」という質問表をチェックしてください。他人にとってはほんの些細なことでも、自分がストレスと感じるものであれば、それはストレスになるのです。

8. コルチゾール分泌が続くと脳が萎縮する

慢性ストレスが続くと、コルチゾールが脳の分解をするため特に脳の海馬を含む組織が萎縮していきます。これを「アロスタティック負荷」と言います。これを防ぐためストレスがかかってもコルチゾールを分泌しないように身体が脳からの命令物質ACTHを出さない様に調整します。これをHPA軸のダウンレギュレーションと言います。副腎疲労は過剰なコルチゾールから身体を守るための、HPA軸のダウンレギュレーションなのです。

9. まとめ

副腎疲労の正体はHPA軸の機能障害です。僕も最近、診断書には「HPA軸機能障害」と書くように改めました。HPA軸機能障害の原因は、HPA軸に長期間にわたり負担がかかることです。

HPA軸障害の病態の鑑別には唾液中コルチゾールを測定して、日中リズムに加えて、コルチゾールアウェイキングレスポンス(CAR)を見ます。

HPA軸機能異常(いわゆる副腎疲労)の検査と治療

コルチゾール・スティールは存在しない

宮澤賢史 · 2021年3月17日 ·

副腎疲労は疾患の進行に伴い、コルチゾール・スティールという現象を引き起こすことが有名です。それに関連して「もともとエストロゲン過剰がある場合、副腎疲労でコルチゾール・スティールが行われたほうが、エストロゲンが減少してちょうどいいのでは?」とご質問がありました。コルチゾール・スティールとは何か?、本当に存在するのか?についてお答えします。

1 エストロゲン過剰について

まずは、エストロゲン過剰の話からです。生理周期に伴う二つの女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)は、生理の周期にしたがって、下記の図のように絶妙なバランスの上に成り立っています。生理開始から2週間(卵胞期)はエストロゲンのみが上昇し、排卵後の後半の2週(黄体期)はエストロゲンとプロゲステロンの両方が上昇します。卵胞から排卵し、それが黄体に変化して、黄体からプロゲステロンが分泌されるため、図のような形の大きな山が形成されます。

エストロゲンとプロゲステロンは、身体の中で反対の働きをします。お互いに押さえ込むような働きをするため、この二つのホルモンが両方とも同じように分泌されるのが理想ですが、このバランスが崩れる原因は下記の4通りです。

1 無排卵(排卵後の卵胞である黄体からプロゲステロンが作られる)
2 ダイオキシン、水銀、アルミニウム
3 前更年期(閉経するとEレベルは40-60%、Pレベルは120分の1に低下)
4 高脂肪食

2 エストロゲン過剰の原因

では、これらを一つずつ詳しく見ていきましょう。

2-1. 無排卵

排卵しないと黄体ができないため、プロゲステロンが分泌されません。多嚢胞性卵巣症候群や、インスリン抵抗性が強めの女性に無排卵の人が多いと言われています。
無排卵かどうかの判別は、基礎体温の計測でわかります。基礎体温は排卵の時期だけを知るためのものではありません。プロゲステロンは、甲状腺ホルモンの働きを介して体温を上げるので、健康な女性であれば、卵胞期に比べて黄体期は0.3度以上上がっているのが普通です。黄体期に体温が上がらない場合は、黄体機能不全かミトコンドリア機能不全のことが多いです。血液検査をするよりも、基礎体温を測ることで自律神経の緊張度合いとミトコンドリア機能が分かるので、特に若い女性にとって計測は不可欠です。

2-2.前更年期

35歳-60歳の間の前更年期には、生理的に女性ホルモンが減少します。エストロゲンは40-50%減りますが、プロゲステロンはもっと減り幅が広く、90-95%減ります。プロゲステロンの方が多く減るために、相対的にエストロゲン過剰になります。

2-3.ダイオキシン、水銀、アルミニウム

プラスチックのボトルや魚、ダイオキシンなどの環境ホルモンなどのホルモン撹乱物質は、エストロゲン様の働きを持っているためエストロゲンを優位にします。

2-4.高脂肪食

ホルモンの規制の問題でアメリカの牛肉は日本の牛肉の600倍のエストロゲンが入っているため、エストロゲンの働きを狂わせます。

これらの原因により、女性のみならず男性もエストロゲンの海に浮かんでいると言われていて、この状態を「エストロゲン優勢症候群」と言います。エストロゲン優勢症候群になると、様々な問題が起きます。エストロゲンは女性らしさを保つためにとても重要なホルモンですが、過剰に分泌されると乳がん、子宮がん、子宮内膜症、子宮筋腫など女性特有の問題を引き起こすことになります。

PMSや生理痛が強いのも立派なエストロゲン優勢症候群です。生理痛が強いということは、つまり物理的に子宮を曲げる力が強いということです。子宮を収縮させるのはエストロゲンとプロスタグランジンE2で、これには食生活が影響します。

3 コルチゾール・スティールとは

次は、コルチゾール・スティールの説明です。コレステロールからプレグネノロンを得て、コルチゾールとエストロゲンが生成されます。ストレスなどによってコルチゾールの需要が高まり、ホルモンの材料が全てコルチゾールに奪われてDHEAやエストロゲンが減少することを、一般的に「コルチゾール・スティール」と呼んでいます。

プレグネノロンはすべてのステロイドホルモンの前駆体なので、ストレスによるコルチゾールの過剰分泌は必然的にDHEAと他の下流ホルモンを製造するための前駆体として利用されるプレグネノロンを奪ってしまいます。

こちらのグラフは副腎疲労のステージ表です。非常にストレスがかかった副腎疲労の抵抗期のステージ1では、コルチゾールは上昇しますが、性ホルモンであるDHEAは減っています。このグラフで見るとあたかもプレグネノロンがコルチゾールに奪われてDHEAが下がっているように見えます。

副腎疲労に伴い、女性ホルモンが少なくなることを「コルチゾール・スティール」と言います。それでは、コルチゾール・スティールはエストロゲン過剰と同時に起きればちょうどいいんじゃないでしょうかというのが、冒頭のご質問の意味でした。

4 副腎皮質と主な生成物

下記は、ウィキペディアに掲載されているコレステロールの代謝マップです。

一番左上にある図が、コレステロールです。コレステロールが、各代謝によって様々な物質に変化していきます。右上にあるのは、コレステロールから生成されるアルドステロンです。コルチゾールも同じくコレステロールからできます。右下のピンクの三角形にあるのは女性ホルモンです。エストロゲンは、E1(エストリオール)、E2(エストラジオール)、E3(エストロン)の3つの総称ですが、全てコレステロールから生成されます。DHEAなどの様々なホルモンは、コレステロール骨格を持っています。副腎をウィキペディアで調べてみると、4層構造に分かれています。

副腎皮質と副腎髄質、真ん中にあるのは副腎髄質です。副腎皮質は、さらに球状層、束状層、網状層による三層構造に分かれています。球状層から主にアルドステロン、束状層からコルチゾール、網状層からDHEAというホルモンが生成されます。アドレナリン(エピネフリン)とノルアドレナリン(ノルエピネフリン)を作っている場所が副腎髄質で、その外側に副腎皮質があり、3層構造に分かれています。束状層は6割の大きさがあり、コルチゾールを生成しています。副腎皮質の場所によって主な生成物が違うということがこの図から分かります。

副腎皮質からはアルドステロンが分泌されて腎臓に働きます。2層目の束状層からはコルチゾールが分泌されて肝臓に働きます。内側の網状層は性ホルモンなので、生殖器に働きます。副腎髄質からは、エピネフリンが分泌されて心臓や血管に働きます。

コレステロールの代謝マップは、すべての代謝を一度に記載しているので誤解を招きがちです。実際にこのように全ての臓器で色々なホルモンが均等に生成される臓器や組織はありません。代謝マップの緑の縦の棒が酵素です。臓器や組織によって発現している酵素が違うので、組織によって生成物は異なってきます。

4-1球状層の場合

球状層の主な生成物はアルドステロンですが、その特徴はアンギオテンシンⅡ受容体が発現していることです。つまりアンギオテンシンⅡ受容体が球状層にくっついて、酵素反応が起きます。例えばCYP11B2遺伝子が発現しているところで、CYP17遺伝子は欠損しているため、下層には反応がいかなくなります。アンギオテンシンⅡ受容体が働くと、コレステロールがプレグネノロンに変換されます。プレグネノロンは本来下層にも働くのですが、CYP17遺伝子の酵素が欠損しているため右にしかいけません。青枠で囲まれた酵素が発現してるので、一部コルチゾールもできまが、腎臓でナトリウムの再吸収をするアルドステロンが生成されます。

4-2 束状層の場合

束状層は、副腎皮質刺激ホルモンの受容体があるためACTH(副腎皮質刺激ホルモン)に反応します。球状層とは違って、CYP17遺伝子が発現しているため二段目まではいけますが、17,20 lyaseの発現がないので三段目の性ホルモンには到達できず、コルチゾールが主な生成物になります。

4-3 網状層の場合


網状層の場合は、球状層とか束状層には存在しない17,20 lyaseが発現してるので、一番下層まで到達できます。それとは逆に、CYP21A2とCYP11βの酵素の発現がないため、右にはいけません。そのため網状層ではDHEAが生成されます。右下の四角内の赤がミトコンドリアで、緑が発現小胞体です。コレステロールがプレグネノロンに変換されるのは、細胞のミトコンドリアの中で行われます。小胞体ではタンパク質が生成されます。小胞体でこれらの酵素がつくられるかどうかはエピジェネティクスによって違います。つまり細胞や組織によって小胞体で生成される酵素が違うため反応が異なるということになります。

上の図のようにACTHやアンギオテンシンⅡなどの細胞外からの刺激によりミトコンドリアに指令があると、コレステロールが外膜から内膜に移動し、プレグネノロンに変換されます。プレグネノロンに変換されるとミトコンドリアの外に出て、小胞体の酵素によって形が変わっていきます。このプレグネノロンは小胞体で生産される臓器特異的(組織特異的)な酵素によって各ホルモンに代謝され、最終的に細胞外に分泌されます。それをまとめたのが下の図です。

球状層でコレステロールのプレグネノロンに変換されるのは、それぞれの副腎皮質細胞のミトコンドリアで起こります。そのミトコンドリアの中で、コレステロールがプレグネノロンに変換されて、プレグネノロンが組織特異性のある酵素で、アルドステロンやコルチゾール、DHEAに変換されます。つまり球状層のコレステロールは、アルドステロン専用、束状層のコレステロールは、コルチゾール専用、網状層のコレステロールはDHEA専用ということです。

「コルチゾール・スティール」というのは、コルチゾールが足りなくなるため他のDHEAをつくるための材料のコレステロールが全部奪われるということですが、球状層や束状層でコルチゾールを作るために、網状層のプレグネノロンやエストロゲンが奪われ、細胞壁を超えて移動するというエビデンスは今の所出ていません。

繰り返しますが、Wikipediaのコレステロール代謝マップは、各ステロイド産生組織間で異なる酵素活性度を示していないため、混乱しないようにしてください。

5 コルチゾールスティールは神話である

下記は、1996年出版のブラックウィル先生の「必須内分泌学」第三版に載っている図です。コルチゾール・スティールの説明のために少し修正されていますが、左下の丸から腎臓、肝臓、卵巣、精巣となります。General circulationとあり、全身の流れでこのようなことが起きているということが教科書に書いてあるので誤解を招きます。 PubMedでコルチゾール・スティールを調べてみると、たった10件しか検索結果が出てきません。コルチゾール・スティールがいかに一般医学会からは異端扱いされているかということが分かります。

この図を見ると、いかにも共通のコレステロールプールがプレグネノロンプールがあるように見えますが、タンパク質はローテーションしていても身体にアミノ酸プールがないように、全身のホルモンに共通したプレグネノロンプールは存在しません。

6 ではなぜ、コルチゾール↑DHEA↓が起こるのか?

コルチゾール・スティールが起こらないとしたら、副腎疲労の第一期では、何故下の図のようにコルチゾールが上昇し、DHEAが下降するのでしょうか。現在考えられているのは、ストレスによる刺激応答への低下や、コルチゾール上昇に伴う耐糖能障害です。

高血糖が健常男性のDHEAレベルを急激に低下させます。コルチゾール↑、DHEA↓のコントロール不良2型糖尿病患者では、網状帯でのDHEA形成に必要な酵素(17,20リアーゼ)活性が低下。血糖コントロール改善後に、酵素活性が修正され、コルチゾール、DHEA、およびDHEA-Sレベルも正常化します。また、炎症性ストレス下では、網状帯がDHEA産生をダウンレギュレートします。

コルチゾールは血糖値を上げます。血糖値が上がると、DHEAは下がります。何故DHEAが下がるのかというと、コントロール不良2型糖尿病患者では、網状帯でもDHEA形成に必要な酵素である17,20リアーゼの活性が低下するからです。高血糖が一部の酵素活性を落とすということが明確になってきています。

もう一つDHEAのレベルを落とすのが、炎症です。炎症ストレス下では網状帯がDHEA産生をダウンレギュレーションします。その結果、コルチゾールが上昇して、DHEAが下降します。コルチゾールとDHEAの関係性は非常に大切で、コルチゾールはタンパクを異化するホルモンです。コルチゾール分泌が過多になると身体が分解していきますが、DHEAはその反対の働きをするアナボリック(タンパク同化)ホルモンなのです。コルチゾールが分泌されるとDHEAも同時に上がって、過剰なタンパクの異化を抑えるように身体の仕組みとしては働いているのですが、DHEAが急激に減少するということは、カタボリック(タンパク異化)が亢進するということなので、DHEAはとても大事になります。

7 コルチゾール・スティールがないと言えるもう一つの理由

そもそもコルチゾール・スティールが本当に存在するとしたら、朝コルチゾールが上昇するときに、エストロゲンの分泌が減るはずです。エストロゲンは日内変動はないのでここからもコルチゾール・スティールが当てはまらないと言うことが分かります。

エストラジオールとコルチゾールの血中濃度は、28.8~196.8pg/ml、コルチゾールは4.5万~21.1万pg/mlと、1000倍以上あることが分かりました。つまりコルチゾールは大量なので、エストラジオールが多少コルチゾールを盗んでも足しにはならないということが分かりました。

つまりコルチゾール・スティールは存在しませんが、エストロゲン過剰とコルチゾールの低下はそれぞれに対して個別に対処すべきというのが冒頭の質問の答えになります。

8 エストロゲン過剰への対処法

エストロゲン過剰に対しての対処法を知るのに参考になる本はプロゲステロンクリームを世に広めたジョン・リー先生の「医者も知らないホルモンバランス」という著書です。もうお亡くなりになられましたが、この本はとても有名で、今改訂版が出ているのでご興味ある方はぜひ読んでみてください。

「What your doctor may not tell you about」というシリーズで、「about Menopause」「about Psyroid」「about Oslo」などがあります。

「What your doctor may not tell you about」というシリーズで,日本語に訳されているのは3種類くらいですが、その中でもこれは良書です。この本には、プロゲステロンは大変万能な働きをしていて、その働きの一つには過剰なエストロゲンを抑えるとあります。だからエストロゲン過剰症候群が辛い人に、プロゲステロンクリームを使ったらいいのではないかと勧める本です。 ただなかにはプロゲステロンクリームの効果がない人もいます。そのような場合は、根本原因ピラミッドを遡って調べるのが良いと思います。根本原因ピラミッドの特に下の3つがとても重要です。ホルモン、消化器、デトックスです。

1.ホルモン

もしプロゲステロンクリームが効かない場合、まず最初に考えられるのは副腎疲労です。副腎ホルモンが、PMSや更年期症状などの女性ホルモン症状の主な原因となります。副腎ホルモンはホルモンヒエラルキーの一番下なので、女性ホルモンの問題を解決するためには、まず副腎をケアすることが鉄則です。

2. 消化器系

不安定な血糖値、炭水化物やお菓子の過剰摂取、消化機能の低下、食物過敏症はすべて、女性ホルモン問題の一因です。これらの原因により、血糖値が上下して腸の炎症が起きます。腸内細菌バランスもとても大切で、腸内細菌はエストロゲンを分泌しているので、腸内細菌バランスが崩れるとE1,E2,E3のバランスが崩れます。それがエストロゲン優勢症候群の原因とも言われています。

3. 解毒

副腎疲労も治したし、胃腸のケアもしているのにPMSが強い人は、デトックスをされてみてください。ピルの服用またはホルモン補充療法を受けた女性は、外部ソースからのホルモンを体が排除しようとする肝臓の解毒経路に余分な負担をかけます。エストロゲンは、肝臓でCOMTという酵素で代謝され、ビタミンB6がその補酵素となります。メチレーションが回っていない人や、ビタミンB6が不足している人は、エストロゲン過剰の症状が強く出ます。特にプロゲステロンクリームが効かない人、乳がん、子宮頸種、女性特有の問題を抱えている人が最初に取り組むべき栄養療法は、肝臓へのアプローチで女性ホルモンへの対処に大変重要です。 

プロゲステロンの働き

  • 妊娠の継続
  • 脳機能を保つ(脳細胞中のPレベルは血中の20倍、GABA-R に結合)
  • 体温を上昇させる
  • 過剰なエストロゲンの働きを抑える
  • 他のホルモンの前駆物質

分子栄養学で使われる検査

宮澤賢史 · 2021年3月15日 ·

血液検査

一般的な病院でも受けていただける検査ですが、ご相談は栄養療法を扱っているクリニックをお勧めいたします。

推奨項目
WBC RBC 血色素量 ヘマトクリット MCV MCH MCHC 血小板 網赤血球 白血球像
Fe TIBC UIBC フェリチン
HDL-C LDL-C TG FFA
GOT GPT γ-GTP ALP TTT T-BIL D-BIL LDH Ch-E
TP 蛋白分画 BUN Cre
Na K Cl Ca P  Mg CPK UA AMY CRP定量
亜鉛 銅 BS HBA1C インスリン
ヘリコバクタピロリ抗体 IgG
ペプシノーゲンⅠ ペプシノーゲンⅡ ペプシノーゲンⅠ/Ⅱ比
TSH,FT3,FT4(甲状腺ホルモン検査)
ホモシステイン、血中ビタミンD(25OH-D)濃度

有機酸検査

尿中の有機酸(代謝の過程で生成される化合物)を調べる検査です。例えば、腸に住んでいる酵母菌の産生物を見ます。この産生物はサイズが小さいため、正常の消化管でもある程度は吸収され、門脈から肝臓、腎臓を経由して、尿細管から排出されます。これによって、尿の検査をすることで消化管で何が起きているかを間接的に見ることができるのです。

また、多くの精神疾患で脳内のドーパミンレベルが高いことが報告されていますが、ドーパミンが代謝されずに残っていないか?なぜ、代謝が妨げられているのか?(原因は、銅やビタミンC不足、そして腸内のクロストリジウム)など、神経伝達物質の代謝を見ることもできます。他に、細胞の代謝(糖質、タンパク質、脂質の代謝)や、ビタミンの過不足などもわかる総合的な検査です。

通常は栄養療法クリニックのみでの取り扱いです。腸内環境からミトコンドリア機能、ビタミン不足、三大栄養素の代謝など幅広い項目をカバーしている検査です。米国のグレートプレーンズ研究所が提供しています。

毛髪ミネラル検査

毛髪中に含まれるミネラルや重金属を測定する検査です。毛髪は便や尿、汗と同じく人間の大事な排泄経路のひとつです。血液中のミネラルはいつもバランスが自動調整されているため、体内蓄積量を正確には反映しません。その一方で、体内のミネラル類は、血流を通じて毛髪に付着しやすい性質を持っており、毛髪は日々の栄養バランスを継続的に記録しながら伸長するため、体内のミネラルバランスの傾向をみるのに最適な検査といえます。

毛髪の根元から1cmごとに1ヶ月分のミネラル状態を表していると言われています。有害重金属、必須ミネラルの排泄量を測定することで、有害重金属の排泄能力、ミネラルバランス、腸内環境に異常があるかどうかがわかります。有害重金属とは、水銀、アルミニウム、カドミウム、ヒ素、鉛、ニッケル、ベリリウムなどがあります。必須ミネラルとは、人間にとって必要不可欠なミネラルのことで、カルシウムや、マグネシウム、亜鉛、銅などのことです。

有害重金属は食事、水、空気、日用品などから体内に取り込まれ、多彩な症状を引き起こし、老化や体調不良、様々な病気の原因になります。通常は栄養療法クリニックのみでの取り扱いです。毛髪中の必須ミネラルや重金属を検出する検査です。ミネラルバランスを把握し安いドクターズ・データ社の検査を推奨しています。

尿中ミネラル負荷検査

体内に重金属が蓄積している場合、薬剤やサプリメント、点滴を使用して重金属を排泄する治療を行います。これをキレーション治療といいます。

その際、多くの金属は便や尿中に排泄されていきます。キレーション治療を始めるにあたっては、薬剤の治療効果を把握しておく必要があります。そのために行うのが尿中ミネラル負荷検査です。実際にキレート剤を内服もしくは点滴後、一定時間蓄尿していただき、尿中に排泄された有害重金属の量を測定します。ある程度以上金属が含まれていれば、治療効果が見込まれると判断します。この検査は、キレーション治療後の効果判定にも使用します。

オリゴスキャン

手のひらに光をあてて、体内に蓄積している有害重金属と必須ミネラルを測定します。毛髪ミネラル検査や尿中ミネラル検査と一番違う点は、これらの検査が体外への排泄量を測定しているのに対して、オリゴスキャンは、体内の蓄積量を直接測定できる点です。

IgG食物アレルギー検査

ある特定の食べ物に対して、アレルギー反応を起こすかどうかの目安になるのが食物アレルギー検査です。食物アレルギーには、即時型(IgE)と遅延型(IgG)の2種類があります。

即時型は、食物摂取後すぐに典型的な症状が出るため、原因となる食物がわかりやすいのが特徴です。遅延型は、食物摂取後、症状が出るまで場合によっては数日以上かかるため、アレルギーの発症を自覚するのが困難になります。

身体的なものから精神的なものまで多彩な症状が出ます。
遅延型のアレルギー反応が出ている場合、必ずしもその食物にアレルギーがあるとは限りません。IgG反応は腸のバリア機能が低下していることを意味しています。

総合便検査

腸内環境を調べる検査です。便を採取して、腸の良性、悪性細菌、カンジタの有無(カンジタに効く抗生剤の種類もわかります)、炎症、消化酵素、免疫、エネルギー状態などを調べます。

食物アレルギー検査は腸のバリア機能を調べる事ができるよい検査です。多くの項目が陽性であればそれは、バリア機能低下(リーキーガット症候群)を意味します。
しかし、陽性となった食物を制限するだけでは根本解決にはなりません。バリア機能低下の原因を調べ、それに見合った対処をすることが重要なのです。
総合便検査はバリア機能低下の根本原因を見つけるのに欠かせない検査です。

ペプチド(カゼイン・グルテン)検査

尿中のペプチド(カソモルフィン・グリアドルフィン)を調べる検査です。この場合のペプチドとは未消化のタンパク質のことで、乳製品由来、小麦由来のタンパク質です。
尿中に未消化のペプチドが検出されるということは、血液中にも未消化のペプチドがあることを意味します。未消化のペプチドはモルヒネ成分と同じ作用があり、これが血液を介して脳に伝わると麻薬や覚せい剤と同じ症状が出ます。音への過敏性、話すことの障害、知覚機能に影響が及んだり、集中力の低下、多動症状の原因になります。

葉酸代謝遺伝子検査

葉酸の代謝に関係する酵素の遺伝子に変異があるかどうか調べます。遺伝子変異があると、酵素の働きが低下するため葉酸が不足しやすくなります。
葉酸が不足すると解毒にも影響します。また、血中ホモシステインが上昇しやすい傾向になり、動脈硬化、高血圧症、認知症などのリスクが高まります。

メチレーション検査

メチレーションとはすべての細胞の中で行われている体の基本反応の一つです。メチレーション回路は、遺伝子の調節や、化学物質や毒素の解毒、神経伝達物質の合成、ホルモンの代謝、エネルギーの合成、DNA・RNAの合成に関わっています。メチレーション検査では、回路の中の物質の過不足を調べます。

根本原因とデトックス

宮澤賢史 · 2020年9月2日 ·

1.デトックス環境を整えよう

免疫を上げるには、睡眠や食事などのライフスタイル、つまり「環境」を改善することが大切といわれています。デトックスも同じで、どの会社のどんなデトックスサプリメントを使うかよりも、どのようにデトックス環境を整えるかが重要となります。下の図のように、デトックスは様々な要因の影響を受けています。

  • 低血糖による自律神経の緊張→デトックス効率の低下
  • 炎症→胆汁分泌やミトコンドリア機能の低下、白血球の活動による過剰な活性酸素による抗酸化力の抑制
  • 有機水銀の80%は、便排泄
  • 解毒にはATPを大量に消費

2.デトックスのターゲット

ここではデトックス(解毒)治療のターゲットについて説明します。

2-1脳に障害を与えるもの

まずデトックスすべきは、脳に蓄積し、障害を引き起こしやすいものです。その筆頭は水銀です。有機水銀は脂溶性であり、脳に直接入り込んで障害を与えます。

・脂溶性である水銀、カビ毒は脳に蓄積しやすい(『アルツハイマー病 真実と終焉』デール・ブレデセン著)
・アマルガムが自閉症、発達障害慢性疲労、繊維筋痛症、化学物質過敏症、精神疾患の原因となる(『Amalgam Illness』 アンドリュー・カトラー著)

2-2. ミトコンドリアを障害するもの

次にデトックスすべきは、ミトコンドリア機能を障害するものです。フッ素、水銀、ヒ素、アンチモン、アルミニウムは、TCAサイクルの働きを止め、ミトコンドリア機能を阻害してしまいます。TCAサイクルだけではなく、右上の図のように電子伝達系にも影響を与えます。特にNADHが関わっている複合体一番の細胞膜にあるSH基とS基の間に水銀が入り込んで、タンパク質の構造を変化させてしまいます。

実際にミトコンドリアにどのくらいの影響が出ているかを調べるには、有機酸検査を受けることをお勧めします。29番のクエン酸と28番のアコニット酸を比べてください。クエン酸がアコニット酸に変わるのには、アコニターゼという酵素が必要ですが、このアコニターゼが水銀やヒ素に阻害されてしまいます。アコニット酸よりイソクエン酸が低くなっている場合には、アコニターゼが阻害されていると考えられ、水銀のデトックスが必要だと推測できます。

水銀は硫黄との親和性が非常に高く、硫黄と硫黄の間にあるSS結合の間に水銀が入りこみ、タンパク質の構造全体を狂わせてしまいます。逆にそれを利用して、硫黄を含んだ食事やサプリメントを使って水銀と結合させて解毒することが可能になります。

3. 水銀中毒の症状

3-1. 本当に怖い歯の詰め物

ハル・ハギンス博士の『本当に怖い歯の詰め物』によれば、水銀中毒の症状にはイライラや、うつ、しびれがありますが、一番顕著な症状は疲労感で、これはミトコンドリア機能の低下からきていると考えられます。その原因は他にもあり、尿中のポルフィリン検査をするとヘムの合成過程が水銀によって妨害されるということがわかります。

85.0% 説明のつかない疲労感
73.3% 説明のつかないいらつき
72.0% 長期間のうつ
67.3% 四肢のしびれ
64.5% 夜間頻尿
62.6% 四肢の冷感(温かい日でも)
60.6% 食後の腹部膨満感
58.0% 記憶障害(物事が思い出せない)
55.5% 突然怒りがこみ上げてくる
54.6% 便秘
54.2% 優柔不断

3-2. 水銀が酸欠を引き起こす

ヘモグロビンが合成される過程で、いくつかのポルフィリン経路を経由します。その経路を水銀や鉛、カドミウムが阻害します。水銀が蓄積すると、途中で反応が止まりコプロポルフィリンやプレコプロポルフィリンが増えてしまいます。水銀はヘムの合成を阻害し、貧血を引き起こします。

また、1つの分子につき酸素を4つ結合する分子構造を持つヘモグロビンは、鉄と酸素の親和性よりも鉄と水銀の親和性の方が強いので、一旦そこに水銀がくっつくとなかなか離れません。酸素は肺でくっついて、末梢の臓器で離れることによって循環しますが、ヘモグロビンに水銀がくっついてしまうと使い物にならなくなってしまいます。赤血球の寿命は120日なので、少なくとも120日間は水銀が結合した赤血球ということになります。

実際にこのような状態であってもヘモグロビン自体が少なくなるわけではないので、見た目上は貧血ではなく、むしろ酸素飽和度が低下するために体はもう少し酸素が必要だと判断して造血を行います。その結果、ヘモグロビンの数値が高くなるというのが水銀中毒の人の一般的なデータとなります。このためヘモグロビンの数値より、注目すべきは酸素飽和度となります。ハル・ハギンス博士のデータによると、アマルガム除去をすると酸素飽和度は上昇します。

3-3. ミトコンドリアがヒ素毒性の重要なターゲット

ミトコンドリアがヒ素毒性の重要なターゲットです。ヒ素もメチル水銀と同じく血液脳関門を通過します。ミトコンドリア豊富な臓器である脳は、ミトコンドリア機能に大きく依存していて、ミトコンドリア異常=脳機能低下ということになります。下記は、ミトコンドリア機能がヒ素の暴露によって低下しているという毛髪検査のレビューです。(PMID: 26510484)

ヒ素暴露後に脳のミトコンドリアが障害される

4.毛髪検査の有用性

ヒ素や水銀が一緒に多く出る場合は、海産物の摂取量が多いと推測できます。脳に蓄積して障害を起こすものは水銀、ヒ素、カビ毒で、ミトコンドリア機能を障害するものは、水銀と重金属ではヒ素です。揮発性毒物のトックス検査をすると、ミトコンドリアのDNAがどれくらい障害されているかを見ることができます。ミトコンドリアDNAの障害の指標となるのは、チグリルグリシンというTOX検査の一番最後の項目です。もしその数値が上がっていたら、積極的なデトックスをしたほうがいいだろうということになります。

日本人の毛髪水銀濃度は、世界中でも飛び抜けて高いですが、その理由は魚が汚染されているからで、世界の水銀の排出量のうち47.4%が東アジアに集中しています。これは火力発電所が沢山あるためで、魚の水銀汚染の主な起源というのは、石炭火力発電所から大気中に排泄された水銀です。

5. 内分泌かく乱物質とホルモンの関係

5-1. 重金属がホルモンをブロックする

次にPMSや乳がんを引き起こす内分泌かく乱物質を取り上げます。内分泌撹乱物質は、一般に環境ホルモンと言われていますが、受容体で結合してホルモンのふりをし、その働きを邪魔して、内分泌の一連の働きを乱す物資のことをいいます。

PCBのようにすでに製造中止になったものもありますが、今話題になってるのはビスフェノールAというプラスチックの原料や、ゴミの焼却の時に排出されるダイオキシン、それと水銀、鉛、カドミウムです。水銀の論文によると、甲状腺、副腎、卵巣、精巣機能など様々な内分泌臓器に影響を及ぼします。

アンドリュー・カトラー先生の『Amalgam Illness』によると、甲状腺も副腎も性ホルモンも様々なところの受容体をブロックしたり、ホルモンの分泌を障害したりしますが、甲状腺の場合は、TSHの分泌も、甲状腺の受容体も、そして T 4から T 3への変換も全て阻害してしまいます。つまり甲状腺機能の低下があったら、水銀の害を考えた方がいいということになります。

5-2.女性ホルモンのアンバランスと対処法

女性ホルモンには悪玉と善玉と言われるものがありますが、善玉が2-ヒドロキシエストロン(2-OHE1)で、悪玉が16-ヒドロキシエストロン(16a-OHE1)です。
外因性の環境ホルモンや、ホルモン補充療法で使われるホルモンの原料は馬の尿ですが、これはバイオアイデンティカル(人体が作るものと全く同じ化学構造を持つもの)ではないので、人間のホルモンと違い代謝がゆっくりです。女性ホルモンは薬の場合はすぐに代謝されないように作られているので、エストロゲンもプロゲストロンも体内に長く留まります。

ピルを飲むと99%の確率で排卵させない分体内に長く留まるので、発がんリスクも高まります。それに比べて天然のホルモンは、半減期が短いバイオアイデンティカルのため代謝しやすいです。天然のホルモンは効きを良くするために、経口ではなく経皮でゆっくり補充します。

善玉のエストロゲンを増やすためには、DIM、インドール-3-酢酸、亜麻仁油、ブロッコリーを摂ると良いです。腸内環境への影響もあり、水銀は消化酵素のDPP-Ⅳを阻害するため、グルテン・カゼインの分解が悪くなり、カンジダの悪性度を増します。d水銀が蓄積しているとカンジダが増殖形態になりやすいので、私はカンジダを除菌した後は、ほぼ全員の人に水銀のデトックスを勧めています。

6.水銀の種類

6-1.金属水銀・有機水銀・無機水銀

水銀の種類には、金属水銀・有機水銀・無機水銀の3つがあります。金属水銀はアマルガムの他に、アフリカなどの採掘所では金属水銀の塊を使って金をろ過することに使われています。これらの金属水銀は蒸発して蒸気水銀になるため、採掘所で働く子供が水銀中毒になる問題を抱えています。

このように金属水銀は簡単な刺激によって蒸発します。蒸気水銀になると吸入して肺から入り、脳で酸化して蓄積し、脳から出られなくなってしまいます。水銀の中で害になるのは、この蒸発する金属水銀と、有機水銀です。メチル水銀はシステインと結合すると腸管から吸収され、 血液脳関門を通過して脳に届きます。

6-2. 歯の詰め物アマルガム

アマルガムは水銀を多く含む歯科材料です。加工が容易で丈夫なので、20世紀を中心に歯の詰め物として使われてきました。殺菌作用が強く長持ちするため、水銀の害を除けば歯科材料としては最適です。『乳歯のアマルガム修復』という50年くらい前の本によると、当時は乳幼児にも積極的にアマルガムが使われていました。

今は保険適用外ですが、2016年までは日本政府公認の歯科材料として使われていました。とても便利なため、いまだに自費診療で使用している歯科医師もいます。日本人の場合は、水銀の源の大半は、魚か歯ではないかと言われています。この二つの暴露源がないかをチェックし、もしあればそれを避けることが大切になります。

6-3. 水銀は体のどこにたまる?

アマルガムは無機水銀で有機水銀ではないため、BBB(血液脳関門)を通過せず、脂肪にも移行しないので安全であるというのがアメリカの歯科学会の主張ですが、実際には無機水銀は口腔内や腸内でメチル化するので、BBBを通過します。

アマルガムは蒸発して肺から吸入し、目や脳、神経、肺、そして血中で酸化したものが口の中から胃腸を通過後にメチル化して胎盤、内分泌、細胞膜にも届きます。

上記はハル・ハギンス先生に頂いたポスターで、どの水銀が体のどこに影響してるかという図です。左から金属水銀、イオン化している無機水銀、メチル水銀ですが、この金属水銀とか無機水銀に比べて、メチル水銀の人は頭がぼやっとしていて、ブレインフォグを起こしてます。手と足に痺れがあることからみても、BBBを通過してCentral nervous system(中枢神経系)、免疫系、生殖器系にも影響を及ぼしていることがわかります。

水銀蒸気は血液脳関門を通過し、無機水銀は通過しないので安全と言われていますが、メチル化して全てのバリアを通過し、胎盤を通過するので、母親が水銀に暴露していると子供の毛髪にも水銀が検出されます。そして内分泌かく乱も引き起こすので、どれだけ排泄できているかということがすごく大事になってきます。

これは歯にアマルガムがある人の体内の水銀分布図です。Tooth alveolar bone(歯槽骨)と、Gum mucosa(歯肉歯槽粘膜)の水銀濃度が高いのは当然ですが、胃の濃度が非常に高いことから、水銀が体内にも影響を与えていることが分かります。そして便中の濃度や、腎臓と肝臓という排泄機関の濃度も高いです。胃腸の濃度が高いことから、腸内細菌に影響を及ぼしていることも想像できます。

6-4.水銀は便から出すのが基本

アマルガムや魚の水銀はもともとメチル水銀です。メチル水銀というのは、システインという必須アミノ酸と結合すると、メチオニンと同じく腸管から100%吸収されます。メチル水銀はデトックスで胆汁排泄されますが、胆汁から排出されたメチル水銀はメチオニンと間違えられて再度吸収されるので腸管循環を繰り返してしまいます。つまりデトックスは腸管循環を少なくして、便中にいかにメチル水銀を排出させるかということがポイントになります。

ハル・ハギンス先生のセミナーでは、アマルガムが開発されてから ALS(筋萎縮性側索硬化症)の発症率が異常に上昇しているというデータや、1832年にアマルガムがフランスで発明されてからしばらくして白血病の発症率も増えてきたというお話しがありました。Multiple sclerosis(多発性硬化症)の発症率は、特に毒性が高いアマルガムが発明された1976年以降に、急に発症率が上がっているという話もありました。水銀は骨髄の中に入り込みやすいため、骨髄の免疫を壊して自己免疫疾患や白血病が発症しやすくなるのだろうとのことでした。

7. 溜まっているものを知る方法

7-1.毛髪水銀レベル測定の根拠

体内に何がどのくらい溜まっているのかを、どのように調べるかということをお話しします。そもそも毛髪で水銀レベルを見るというのは、恐らくイラクで1971年に起こった水銀中毒事故のデータをベースにしていると思います。

メチル水銀を使用している農薬を使って栽培した小麦で作ったパンを食べて、6,500人が水銀中毒になり、500名が死亡するという衝撃的な事故がありました。妊婦も多く罹患し、当時の血液中と毛髪中のデータが多く残っています。血中の水銀レベルは半減期が短く、暴露して3日もすると測定感度以下になってしまいますが、毛髪中の水銀のレベルは、血中レベルの250倍あります。

上記は内閣府の食品安全委員会の資料ですが、例のイラクの事故を分析すると、母親の毛髪中の水銀モードが上がれば上がるほど、子供への発達の影響があるということがわかります。母親の毛髪中の水銀モードが10〜20ppmを超えると胎児に影響があったため、それをもとに国立水俣病の胎児に影響を与える母親の最小値が11ppmとみなされました。このイラクの暴露事故から計算して、耐容摂取量、つまりこれを超えない限り影響はないと考えられる摂取量を5ppmに設定しました。

7-2.水銀の暴露量と排泄力を比較する

副腎疲労と思われる45才女性の毛髪検査をしたところ、1.1 ppmしか水銀が検出されませんでした。厚労省の設定した耐容摂取量5ppmの1/5だから問題はないだろうと考えがちですが、実際には歯の中に9本のアマルガムがあったので、水銀の暴露量は非常に多いと言えます。

水銀にこれだけ暴露しているのにかかわらず、毛髪から1.1ppmしか出ないということは、水銀の排泄の障害があると考えられます。水俣病のように大量の暴露をしたら、さすがに毛髪に出るとは思いますが、中には排出できない人がいるということが問題なのです。

34歳女性 慢性疲労
焦燥感、肩の張り、冷汗、動悸

45歳女性 副腎疲労
慢性疲労が続いている

上記左側の34歳の慢性疲労の人は、アマルガムが歯の中にあって水銀が10ppm出ているので、明らかに水銀中毒です。ただ逆の見方をすれば、この人は水銀の排泄能力が保たれているということです。毛髪中の水銀濃度というのは、有機水銀メチル水銀の排泄能力とイコールだと考えていいと思います。実際、この方はアマルガムを除去だけで元気になりました。それに対して右側の45歳の方は、アマルガムが何本も入っているにもかかわらず、水銀濃度が1.1ppmしかありません。排泄能力が低下しているため、アマルガムを除去しただけでは疲れが取れませんでした。

宮澤医院の150人の副腎疲労の患者さんを、アンドラー・カトラー博士が開発したカウンティングルールに基づいて調べたところ、56%の人はミネラルの輸送障害がありました。副腎疲労の人は水銀を排泄する力が弱いため、ミトコンドリア機能が低下していることが多いです。残り半分の人は水銀レベルがとても高く、水銀の害が全くないと思われる人は1%しかいませんでした。調べてみると皆さんことごとく水銀だったので、疲労感が強い人は水銀レベルを見た方がいいだろうと私は思います。

7-3.自閉症と水銀

自閉症の子供に関しては、水銀のレベルは低ければ低いほど重症です。なぜならば毛髪検査というのは蓄積量ではなくて排泄量をみるものだからです。母親の歯にアマルガムがあったり、高レベルの水銀の暴露歴があるにも関わらず、自閉症の子供からは毛髪中の水銀が出ていませんでした。

子供の場合は母親の暴露歴も聞いてください。メチル水銀は胎盤を通過します。水銀をターゲットに話していますが、そもそもデトックスのために何か特別な治療をやらなければいけないのかというと、必ずしもそういうことではありません。

8 水銀排泄力には個人差がある

人間はもともと水銀を排泄する力があります。水銀の生物学的半減期、つまり体の中にある水銀が半分になるまでの期間は、50〜60日です。そのため正常な排泄する力を持っている人なら、魚を食べなければ150日あれば水銀は体から排泄されます。

水銀の半減期

100日以上かかる人はとても代謝が遅いので、暴露量が微量でも体内に溜まってしまいます。そのような人は、デトックス体質になるかデトックス治療をしないと水銀の有害性が出てくる可能性があります。そこを見極めるために検査します。

9. 解毒の仕組み

解毒の方法の話をする前に、人の解毒の仕組みを解説します。人の解毒は3段階になっています。Phase1・2・3となっていて、Phase1は「活性化」、Phase2は「抱合」、Phase3は「輸送」です。Phase2の「抱合」は、グルタチオン・グルクロン酸・硫酸などと抱き合わせることによって、細胞の外に出る準備をし、MRP1輸送体という受容体を通って細胞の中から外に出て行きます。

その先のPhase3の「輸送」ですが、輸送をする時に無機水銀は水溶性なので腎臓を通って尿へ、そして有機水銀の場合は、脂溶性のため肝臓を通って胆汁から便へ排泄されることになります。

10. 蓄積量と排泄力をみる検査

何がどれぐらい溜まっていて、どれぐらいの排泄能力があるかを見ることが大切です。溜まっている量を見るのはオリゴスキャン、排泄能力を見るのは毛髪検査や尿検査が良いでしょう。

腎臓からの排泄量は尿検査で直接分かりますが、胆汁からの便排泄の量というのは、直接見にくいのでメチル水銀を排泄している毛髪検査で代用します。毛髪はシステインを含んでいるため、メチル水銀がシステインと結合して肝臓の胆汁排泄を代表する代わりになるのが毛髪検査と言われています。

つまりオリゴスキャンでは蓄積量と対処法。そして毛髪ミネラル検査では排泄量と「カウンティングルール」で主に把握することができます。水銀が元々体内にないのか、それとも排泄できずに低いのか、それを見分けるのが「カウンティングルール」です。水銀レベルからではなく、ミネラルのバランスから判断します。

ミネラルバランスが左の表のようではなく、真ん中や右側のように、左側や右側に偏りすぎてる場合、ミネラルの輸送障害が考えられます。ミネラルの輸送障害があるということは、水銀が溜まっているということを示唆します。

このカウンティングルールは、アンドリュー・カトラー先生の著書に詳しく掲載されています。ただ、他のアメリカの代替療法のセミナーでも、このカウンティングルールを使っていて、毛髪検査だけで水銀の蓄積量を完全に推定するのは不確定なので、オリゴスキャンで俯瞰するのが有力な方法ではないかと考えています。

実際に治療をすると、このミネラルバランスが戻ってくる人が多いので、治療経過としても使えます。先ほどの48歳の慢性疲労の女性のように、ミネラルのバランスが崩れている場合、水銀をある程度出すと症状も良くなりミネラルバランスが改善します。

11.どこまでデトックスを続けるか

水銀レベルを0にすることはできないので、どこまでデトックスを続けるかについては、ミネラルのバランスを取り戻すまでを治療期間にして、その後は自然デトックス、例えばサウナや運動に切り替えるようにしてもらっています。できればオリゴスキャンをしてご自分の毛髪検査と比べてみてください。排泄障害がない場合、排泄量と蓄積量は反比例していることが多いです。

この人の場合はミネラルの輸送障害がないので、例えばヒ素が多く出ている場合、ヒ素の溜まりは少ないといえます。オリゴスキャンの良いところは、Phase2とPhase3が働いているかを見る指標にもなってくれることです。酸化ストレスがあるかどうかは、Phase2がうまく働いているかどうかを見る指標となります。Phase2のセンターピンは細胞内グルタチオン濃度です。

細胞内のグルタチオン濃度を保つためには、抗酸化力がとても重要です。有機酸検査のグルタチオン濃度がきちんと働いているかどうかをみるためには58番(ピログルタミン酸)、59番(2-ヒドロキシ酪酸)に注目します。水銀は硫黄と結合することによって、体外に排出されやすくなるので、オリゴスキャンで硫黄との結合性をみてPhase3の輸送の評価もできます。

グルタチオン濃度を知るには有機酸検査

グルタチオンの指標物質の58番ピログルタミン酸は、グルタチオンの欠乏で上昇します。59番の2-ヒドロキシ酪酸は、このメチレーション回路が働いてグルタチオンが出来る時に副産物としてできるので、これが上昇していたら解毒回路が働いているということが分かります。つまり解毒で体内が忙しい時には、59番が上昇するということです。

この2つの上昇でグルタチオン不足だと急いでグルタチオンを補充するのではなく、まずは原因追及をして、なぜグルタチオンが足りないのか、なぜ解毒で忙しくなっているのかを突き止めることが大切です。そうしないといくらサプリがあっても足りなくなります。特に炎症があると、グルタチオンは全部使われてしまいます。Phase1から3は、オリゴスキャン、毛髪ミネラル検査、血液検査などをみて把握してください。自分のどこが詰まっているのかを解明して、そこをターゲットにアプローチしていくのが正しいデトックス法です。

12.デトックスの実際

12-1. 人の本来の解毒の方法を知る

どうやって解毒していくかというと。本来の人間の解毒システムを知って、それを強化してあげる方法がベストだと思います。最初に暴露源を除去することです。毛髪検査をして特にヒ素・カドミウムが高い人は、水と米を変えましょう。カビ毒がある人は、空気清浄機を買いましょう。もしかしたら引っ越しした方が良いかもしれません。マグロをサンマにしましょう。アマルガムを除去しましょう。

胎児に影響を及ぼさない母体中の毛髪水銀濃度は11ppmですが、そこから計算するとどれぐらい水銀を摂取しても大丈夫かという耐容週間摂取量は、2μg/kg/週になります。普通に魚の摂取をしていると週に2μg/kgを優に超えてしまいます。食品安全委員会は、マグロの代わりにサンマを食べるとこれを超えずに済むと提唱しています。恐らくマグロをサンマに変えるのは意味のあることだと思います。

食物連鎖の上にある魚ほど、水銀が沢山溜まっています。Phase1は、シトクロムP450による酸化のことで、つまり活性化のことをいいます。酸化して活性化させて安定化している脂肪の中の毒物を出す準備をすることです。Phase2がグルタチオンによる抱合ですが、まず最初に準備することは、暴露物をなくすことなので、マグロをサンマに変えたり、アマルガムを外すことになります。

12-2.アマルガムは安全に除去する

アマルガムは危険なので外した方がいいですが、防御しないで外すと、脱力、頭痛、めまい、耳鳴りなどの症状が出ることがあります。特に水銀を排泄する力がない人、カウンティングルールでミネラルの輸送障害がある人は、アマルガムを外す時は気をつけたほうが良いです。なぜならアマルガムを削ると大量の水銀が一気に蒸発するため、急性水銀中毒になるからです。刺激なしの時の100倍の水銀の蒸気が脳に行ってしまうため、特にアマルガムが大きい場合はきちんと防御をして除去してくれる歯科医院に相談をしましょう。

研磨によって飛び散る水銀の量
Bio-Probe Newsletter, Vol 9(1):5-6, Jan.1993.

13.キレーション療法

キレーションは「蟹のはさみ」という意味で、多くのクリニックで取り入られている治療法です。金属イオンをはさみこんで結合して、有害物質を体外に排出しやすくします。キレートミネラルというサプリメントが体内に入り込みやすいのは、ミネラルではなくアミノ酸の扱いになるからです。アミノ酸と一緒になると、体の中に入るのも、出すのも容易になります。だからミネラルはキレートとして入れたり出したりするのです。キレートによく使われる薬がEDTAです。

EDTAのサプリメントは、経口摂取しても腸管からの吸収が悪いため、点滴で取り込むのが一番です。その代わりEDTAを飲めば、腸管の金属は除去することができます。慢性の副鼻腔炎の患者に使用している経鼻スプレーにはEDTAが入っていますが、これは金属を除去するのと、バイオフィルムを除去するという働きがあるからです。

経口摂取では体内には吸収されないので鼻腔や腸管啌のデトックスに使い、体内に入れたい場合は点滴をします。カドミウムやアルミニウムはよくデトックスできますが、水銀は吸着できません。水銀をターゲットとして出すためにはSH基を持った薬剤やサプリメントを使います。DMSAはSH基は2つ付いていて、5年ぐらい前までi herbでも買えたましたが、日本では輸入できなくなりました。現在DMSAは薬剤扱いです。

日本で購入できるチオラは鉛中毒の薬で、SH基が1つです。これでも結構水銀も鉛も出ますが、SH基が2つあるDMSAだけを使う先生もいます。どちらにしても重要なのは血中濃度を保つことで、血中濃度が下がると水銀をキャッチしても途中で離してしまうので、体内の他の場所に再分布してしまいます。血中濃度をうまく保てるように、私の場合はチオラを使うなら3時間おきに5回、1日5回摂ってもらうようにしています。私の医院では行っていませんが、カトラー先生は、5時間おきに睡眠中も子供を起こしてチオラを摂取させるプログラムを行なっています。それほど血中濃度を保つことが大切なんです。

こういった薬を組み合わせて、挟み込んでくっつけて外に出す治療をキレーション治療と言いますが、この治療の問題点は、Phase3にしかアプローチできないことです。倦怠感があって、風邪をひきやすく、アマルガムを歯に詰めていた男性にEDTAとDMSAの点滴版を入れたら、水銀が沢山出て、頭が冴えるようになりました。このように細胞の外に水銀を出せる人の場合は良くなります。私の場合マグロを食べているせいか、毛髪中の水銀濃度がものすごく高いです。ミネラル輸送障害はなかったので、点滴治療で良くなりました。

33歳の歯科医師の男性で、疲れやすく、痺れや痒みがある方にはやはり歯にアマルガムがあったのですが、食物アレルギーがあってデトックスしてもあまり上手くいきませんでした。ミネラル輸送障害があって、細胞の中から外に出す力がないためPhase3のキレーション治療だけ行ってもうまくいかなかったと考えられます。毛髪検査や尿検査でうまく排泄できている人は、必要に応じてキレーション治療を行えば良くなると思いますが、暴露量と排泄量が一致していない人は 、Phase1・2・3の評価をして、この機能を上げてあげるほうが良いだろうということです。

13. 解毒のフェーズ1.活性化

上記は私の遺伝子検査の結果ですが、物事を活性化する酵素というのは半分遺伝子によって決まります。私の場合はCYP2D6が++になっているので、ここは少し弱いところです。CYP1A2も+/−になっていますが、これはカフェインの解毒に関係しています。もし遺伝子検査をすぐにやりたいという方は、ジェネシスと検索してみてください。

確か15,000円くらいだったと思いますけども、唾液の採取で検査できます。結果が分かるのに1ヶ月近くかかりますが、非常に結果が分かりやすいです。私の場合は飲酒量が多い、ワインはやや好き、喫煙量は標準と出ています。

この飲酒量の有無は、アセトアルデヒド脱水素酵素から推測しているようです。カフェインの消費量は少ない傾向になっていますが、それは僕の場合はCYP1、CYPA2があまりよくないからだと思います。つまりこの第一相のシトクロムP450対策は何かと言うと、事前に検査をして自分の排泄しづらいものは食べない、入れないということになります。CYPA1Aが排ガス、CYP2D6がSSRIとか抗うつになるので、僕はこの薬は飲まないようにしようという話です。

14. 解毒のフェーズ2.抱合

14.1 グルタチオン濃度が重要

該当するもの暴露を避けるという意味では、第2相も同じです。エストロゲンの代謝はCOMTです。このCOMTの補酵素がビタミンB6です。COMTがある人はエストロゲンの暴露を避けると良いと思います。また、グルタチオンは「抱合」といって、毒物と抱き合わせますが、そのための酵素がグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)です。ここにSNP(スニップ:一塩基多型)があったら解毒しづらいということです。

同じようにグルタチオンは活性酸素があると働かないので、 SODスーパーオキサイドディスムターゼという酸化ストレスを中和してくれるところにSNPがあるかどうかを見ると良いと思います。

上記、ジェノバ社のデトックスプロファイルは値段が高いのであまりお勧めしませんが、一生に一度と思って検査しておいても良いかもしれません。何が溜まりやすいか分かるので、該当するものを下げられます。Phase1を処置したら、次はPhase2(抱合)です。Phase2のポイントは、グルタチオンです。

グルタチオンというのは、アミノ酸(グルタミン酸、システイン、グリシン)からなるトリペプチドで、抗酸化と抱合の二つの役割をしています。どちらの役割が高いかと言うと抗酸化です。細胞内濃度が極めて高く、細胞内の酸化還元環境を維持しているトップはグルタチオンです。グルタチオン濃度をいかに保つかということが、全てと言ってもいいと思います。

細胞中の還元型と酸化型グルタチオンの比率が、細胞毒性の評価の指標です。還元型と酸化型グルタチオンが混在していますが、98%以上が還元型として存在しているので、このバランスが狂っているとまずいということです。酸化されてもすぐにナイアシンによって還元されます。Phase2のセンターピンは細胞内グルタチオン濃度を適切に保つことです。センターピンというのはボーリングの一番前のピンのことで、そこを倒せば全部残りの9本も倒れます。

グルタチオンが活性酸素H2O2を組み合わせると、酸化されて水ができます。上記の下の式が酸化型グルタチオンですが、これはナイアシンによってまた元のグルタチオンに戻してくれます。この抗酸化の働きをするためには、グルタチオンペルオキシダーゼという反応を触媒するものが必要で、ペルオキシダーゼの活性中心が有名なセレンです。

さっきのオリゴスキャンにPhase2の抗酸化力とありましたが、抗酸化力が何故ミネラルの測定で分かるかというと、グルタチオンペルオキシダーゼの活性中心のセレンを測定しているからです。セレン、マンガン、亜鉛などが、高酸化酵素の活性化中心としてとても必要なのです。そう言った意味で、ミネラルは抗酸化力の維持に関わっています。

細胞内グルタチオン濃度を測定するのは難しいので、血漿中のグルタチオン濃度を調べようというのがこのメチレーション検査です。メチレーション回路がうまく回ると、体内で適切にグルタチオンが産生されます。このメチレーション検査では、グルタチオンの中でも酸化型と還元型のグルタチオン濃度を測ることができます。

上記はHDRI社のメチレーション検査です。この方の場合、酸化型(oxisidised)グルタチオンは基準範囲内ですが、還元型(reduced)グルタチオン濃度がちょっと低めなので、抗酸化能力が少し低くなっていて、恐らくメチレーション回路がうまく回ってないからだろうというのが分かります。グルタチオン以外にもグルクロン酸抱合や硫酸抱合などがあり、グルクロン酸はOHが沢山あるため水溶性だということが分かります。

抱合というのは水溶性にして外に出させるようにすることです。ビリルビン、ステロイドホルモンなど一部の薬は、グルクロン酸抱合でPhase2を引き起こします。このグルクロン酸抱合を起こすUDPグルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)を活性化するのが、ブロッコリースプラウトです。スルフォラファンを摂取したら、ビリルビンやモルヒネを活性化して解毒が進むので、スルフォラファンを摂取したら自閉症のお子さんの症状が改善したというデータがあります。

グルタチオンを増やす方法は、サプリで増やす、メチレーション回路を回すのどちらかですね。また、体内のグルタチオン濃度を保つためには、炎症を取ること、抗酸化サプリを摂ることが重要です。ビタミンCを沢山摂ることで、抗酸化をビタミン C に任せ、グルタチオンを温存することができます。

14.2 ApoE4とアルツハイマー

5年前にハル・ハギンス先生を訪ねた時に聞いたのですが、実は先生がコロラドに行った理由は、コロラド州は比較的医療に関して寛容だからだそうです。6年前にすでにコロラド州とニューヨーク州では医療大麻が解禁されていました。

医療大麻は、小児のてんかんに限って使用が認められたのですが、アマルガムを除去したり、水銀をデトックスするというのは、異端の医療で他で禁止されていて、先生も歯科免許を一回剥奪されたことがあるそうです。そのため一時期はサン・ディエゴに住んで、オフィスはメキシコにおいて、話を聞くのはサンディエゴで、治療はアメリカでなくメキシコでやってたりしたそうです。今はさすがにもう大丈夫だと思いますが、栄養療法の最先端のことをやっている人は、迫害されたりすることはよくあります。

先生によると、アマルガムを取って良くなる人とそうじゃない人の違いは、アポリポ蛋白E のアイソザイムの違いだろうとおっしゃっていました。ApoE4が1つもない人に比べて、ApoE4が1つある人っていうのは、炎症促進してアルツハイマーになりやすいです。

ApoE4がひとつもない人に比べて、ApoE4がひとつだとアルツハイマーの発症率が30%、ApoE4が2つ以上だと50%以上になります。このApoE対策も抗酸化です。グルタチオンを摂るのに先駆けて、ビタミンCやビタミンEを摂ることによって、ApoE4を持っていても発症のリスクを抑えられるので、これは十分調べる価値がある検査だと思いますね。このような人は、脳の抗酸化であるフェルガードとか、リポゾームのビタミンCを摂ることをお勧めします。

抗酸化はデトックス治療の一部です。phase2の細胞内グルタチオン濃度を上げるからですね。細胞内グルタチオン濃度上げる方法をまとめると、まず暴露量を減らすこと。DMSAなどは細胞外液の水溶性分画にしか作用しないのでまず炎症を止めること、抗酸化治療をすること、そしてメチレーション回路を回すことです。自閉症の治療をするアメリカのDAN!という組織が、このプロトコールを推奨していました。

15.解毒のPhase3、輸送

15-1.MRPタンパク

最後は輸送です。Phase3は Phase 2に先駆けてやっておくことです。便秘をしないこと、そして腸管循環を抑制するために水溶性食物繊維を摂ること、キレーションもこのPhase3に入ります。細胞の中から外に出すためのMRP 蛋白を活性化してあげること、あとはメタロチオネインというカドミウムをくっつける蛋白を作るのもPhase3の要素の一つになります。

MRP タンパク質というのは細胞の外から中に変な化合物が入ってきた場合にガバッと口を開けて、また排出させる蛋白のことです。 Multi-drug resistance; MDR蛋白、つまり薬が入ってきてそれを出させるタンパクで、抗がん剤が効かないのはこのMRPたんぱく質が原因なので、現在ものすごく研究されています。デトックスの場合は、MRPたんぱく質を活性化させなければいけないのですが、抗癌剤を効かせるためにはこの MRPタンパク質を阻害しなければならないので、その阻害剤というのが研究されているわけです。

デトックス目的の場合は、このMRPタンパク質を活性化させたほうがいいんですけども、そもそもデトックスをすると疲れる理由は、ATPを消費するからです。ファスティングのメリットは、消化に使うATPを全部デトックスに回せるからです。デトックスすると次の日尿が濃いのは、MRP蛋白質がきちんと働けるからですよね。メチル水銀の排泄経路は90%は胆汁排泄で腸から出ますから、便秘をしないことです。

最後になりますが、メタロチオネインとは、重金属(特に銅、カドミウム、水銀)を結合するタンパク質のことで、これは亜鉛を摂ることで生成されます。だからウィリアム・ウオルシュは、このメタロチオネインをプロモーションする治療を推奨していて、それはアミノ酸と亜鉛を摂ることです。

15-2.亜鉛の血中濃度を上げるためには

それで重要になってくるのが、亜鉛の血中濃度です。メタロチオネインを作るためには、亜鉛の血中濃度を100μgに上げることをウオルシュ博士は推奨しています。じゃあ、どれぐらい亜鉛を摂ったら100μgになるかというと、下記の9パーセントルールを使用してください。

9%ルールというのは、亜鉛を摂る量を2倍にすると、亜鉛の血中濃度が9%上昇するということです。これを計算するとどれくらい亜鉛を摂ったら血中濃度が100になるかが分かります。例えば血中濃度が70の人っていうのは、食事からの亜鉛が10mgとすると、亜鉛を150mg摂らなければいけないことになります。

150mgというのは食事で摂るととてつもない量ですが、普通の薬では150mgなので、このような目的によっては使用するのが良いと思います。ただ亜鉛を100mg以上摂る場合は、特に銅の欠乏が問題になってくると思います。銅は成長に必要なので多すぎても少なすぎても問題です。亜鉛と銅はブラザーイオンなので亜鉛を沢山摂る場合は、血中濃度をモニタリングしながら専門家のもとでやってください。

デトックスというのは、特に脂溶性のものは抱合して、胆汁から排泄させるもの、肝機能を高めるミルクシスルとかリポゾマルグルタチオン、還元型グルタチオン、あとはウルソとか、タチオンとか使うのもいいでしょう。そして出てきた毒素をキャッチして、再吸収による腸管循環を防ぐためには、クロレラとかクレメジンという活性炭の薬を使うのもいいでしょう。これらの2つをうまく組み合わせることで、自然デトックスのPhase2とPhase3をコントロールすることができます。

16.まとめ

全体の中でデトックスを考えるとしたらまず炎症を取ること、そして腸内環境を良くして除菌をすること。その後にデトックスするといいと思いますね。最後にデトックスのセンターピン(物事の本質を見つけること)は何かというと、詳しくは与沢翼さんの『ブチ抜く力』という本を見てください。

根本原因ピラミッドPhase1というのは自分の排泄しにくいものを避けることでした。そしてPhase2は、細胞内グルタチオン濃度を上げること、そして炎症を抑えること。Phase3は腸内環境を改善して腸管循環を抑えること、そしてミトコンドリア機能を改善することでした。

やはり根本原因の色々な物を超えたアプローチをして、炎症とか腸内環境とかエネルギーとかを総合的にみることが、結果としてデトックスになるということが分かります。センターピンについて勉強したい人はこの本を読んで下さい。センターピンを1つに絞ること、そして選択と集中という考え方ですけども、そうやってやり遂げることが重要と書いてあります。理論が分かってもなかなか実行できないので、とにかく1つやることを絞って、最低3週間続けてみることです。3週間続けると習慣化するからです。

ちなみにこの与沢翼さんは、秒速で1億稼ぐと言われながらも破産して、マレーシアで投資に成功して今億万長者になった人です。億万長者になって暇になったので生命保険に入ろうとしたのですが、太り過ぎという理由で生命保険から拒否されたそうです。

お金の事になると急にモチベーションが上がって、2ヶ月で10 kg 減量に成功したという人です。ダイエットのセンターピンは食べないで鬼動くことと書いてありますけども、このダイエットの仕方は間違っているので、ここだけは真似しないようにしてください。他は参考になると思います。

実践講座で習った事をカウンセラーはどのように活用したら良いのでしょうか?

宮澤賢史 · 2020年7月30日 ·

7月末は、多くの方から講座のご質問をいただく時期ですが、その中でも一番多いご質問についてお答えします。




その質問とは、これです。

「カウンセラーは、医師のようにデータを読んで診断したり、治療サプリを処方したりできないとの事ですが、じゃあ何ができるのでしょうか?」


答え

カウンセラーの仕事は、クライアントに解決策を直接提示する事ではありません。

クライアントが自らに向き合い、自分なりの理解に自発的にたどり着き、その結果、自分の問題に対応できるように導いてあげる事です。

で、この導くというのはとても重要な事なんです。なぜなら、栄養療法の成否は、患者さんのモチベーションで決まるからです。




栄養療法、どっちの方が結果が出やすいと思いますか?

A 患者さんを診断して、摂るべきサプリや食事方法を指導する

B 患者さんに自己診断の方法を教えて、自分で摂るサプリや食事を自分で決めてもらう

自分の頭で理解し、腑に落ちた治療法へのモチベーションは、単純にこれ飲んでと言われた場合と比べものになりません。

頭ごなしに「明日からグルテン、カゼイン、カフェイン、アルコール、精製糖質を完全に抜いてください。」と言われてもできる人はほとんどいないでしょう。

その一方で、「グルテンがゾヌリン蛋白を分泌させ、ゾヌリンが腸のタイトジャンクションを開いてしまうため、大量の異物が腸を通り抜けて体内に炎症を引き起こす事」、「自分の症状がそれから起きている可能性がある事」を理解できれば、グルテンを一定期間止めるのはそれほど大変な事ではないでしょう。



はっきり言って、診断治療よりカウンセリングの方が難しいです。

「あなたはB6とCとマグネシウムが足りないので、サプリで補給してください。」というのは簡単。

「足りない栄養と、症状を自覚させ、自らが対処できるように導いてあげる」ていうのは大変。





自分の検査結果を深く理解し、自分の体の声に耳を傾け、様々な食事やサプリを試行錯誤しながら試してみる。

そのようにして分子栄養学を深く理解しないと、カウンセリングはできません。





だからこそ、その場で簡単にできる診断法のような薄っぺらいことは教えていません。

基礎講座で三大栄養素の代謝からきっちり学んで、考え方のフレームワークを作っていただくように、骨太な講義になっているし、ズーム検討会で、他の方の自己分析結果を聞く事で、自らの気づきを促す訓練をしていただいているのです。



自ら「気づき」を得る事が、自分のクライアントにどのように気づきを起こさせるかの重要なヒントになります。

これは栄養療法を行う医師にとっても重要な事で、治療の成果は患者さんの食事や生活習慣のコンプライアンスをいかにあげるかにかかっていますが、それはどのように気づきを与えるかと同じ事を意味しています。

保険診療にどうやって栄養療法を導入すればいいのかわからない

宮澤賢史 · 2020年7月29日 ·

内科の医師の方からご質問いただいたのでお答えします。

Q

「保険診療にどうやって栄養療法を導入すればいいのかわからない。

 普段の診療に使えるのか?

 そもそもエビデンスはあるのか?」


A

「はじめにサプリありき」と考えないことです。

どうやってサプリを処方しようかを考え始めると、失敗します。

体内のメカニズムを把握し、個人差を踏まえて、最適な栄養、ライフスタイルを患者さんに提案することをお勧めします。



例えば、高血圧症。

高血圧の原因の一つは血管平滑筋の収縮による血管抵抗の増大です。血管平滑筋の収縮は、筋細胞内にカルシウムが流入してくることがトリガーとなります。カルシウムは細胞膜のカルシウムイオン・チャンネルを経由して流入しますので、ここのブロックが降圧に有用です。



ここに作用する代表的薬剤がカルシウム・ブロッカー(カルシウム拮抗薬)です。カルシウム・ブロッカーは、正確に言えば、カルシウム・イオンチャンネル・ブロッカーです。

栄養で同様の機序を持つのがマグネシウムです。マグネシウムはカルシウムと体内で拮抗し、細胞内へのカルシウム流入を抑えます。最近のメタアナライシスでもマグネシウムによる降圧効果が報告されています。



例えば糖尿病。

インスリン分泌機能低下が大きな原因の一つです。

膵β細胞において、インスリン分泌は、細胞外から内へカルシウムが流入することが引き金になって起こります。とすると、インスリン分泌を増やすためにはカルシウムサプリを摂れば良いように思えますが、それは逆効果です。

通常は細胞外と細胞内のカルシウム濃度は1万:1で、極端に細胞外濃度が高くなっています。だから微量のカルシウムが細胞内に入ることがシグナルとして認識されるのです。

インスリンの分泌の反応性を高めるためには、この濃度さを保つことが重要で、そのためには細胞外のカルシウムを増やすのではなく、細胞内のカルシウムを減らすことです。

マグネシウムは、細胞内外のカルシウムの濃度さを一定に保ち、インスリン分泌の恒常性を保ってくれます。

(マグネシウム摂取量とDM発症率は逆相関する)

というわけで、マグネシウムは高血圧や糖尿病の発症抑制に非常に有用ですが、問題は吸収の悪さです。酸化マグネシウムのように下剤として使用されていることから分かる通り、マグネシウムは吸収があまり良くなりミネラルです。名著「奇跡のマグネシウム」によると、マグネシウム阻害要因として一番大きいのは腸内環境の悪化です。

一番簡単な解決策は、一緒に食物繊維を摂ることです。食物繊維が乳酸発酵してできる短鎖脂肪酸は、腸間膜上皮でのイオン交換を促進します。

安心してください。栄養療法に関するエビデンスはだいぶ出揃ってきています。

メカニズムとエビデンスをバランスよく踏まえて「高血圧、糖尿病にマグネシウムが有用で、食物繊維と一緒に取ると効果が高い」という事を教えてあげれば良いのです。

治療へのモチベーションは情報から成り立っています。情報を得た患者さんは、こちらが勧めなくとも勝手に色々と調ベ始めます。

ついには、上記の情報を教えてくれた、自分の事をよく考えてくれてしかも栄養に詳しいドクターであるあなたに「マグネシウムのいいサプリメントないですか?」と聞いてきますから。

実際には、食事内容のアドバイスから始めます。マグネシウムを含むごま、桜海老、海藻などが摂れているか。ミネラル吸収を阻害するフィチン酸を含む玄米などの食べ過ぎがないか、ゴボウ、舞茸、もずくなど水溶性食物繊維がきちんと摂れているか。

その上で、さらに効果を得るためには、サプリメントで量を摂った方がいいかもしれないと伝えてあげれば良いと思います。必ずしも自費診療を導入する必要はないですし、こういった患者教育ができるスキルは勤務医の方にも今後欠かせないものになるでしょう。

そうです。

栄養療法は、病態の根本にアプローチできて、患者さんの利益に貢献できる、素晴らしい治療方法論です。

医師が導入しないなんて、もったいないですよ。

一つだけネックがあるとすれば、それは生理学と生化学という学問のハードルです。

栄養療法はメカニズムを知らないと、治療の組み立てがうまくいきません。

栄養素の代謝とか、マグネシウムの吸収の機序とか、細胞の働きと仕組みとか。

これを知らないと応用が効かないため、「高血圧にはマグネシウム」という1:1対応の単純な思考回路が出来上がり、あなたのクリニックがサプリの販売代理店と化してしまう恐れがあります。

大丈夫です。

臨床に長けている先生方でも、基礎医学は苦手な事は僕もよくわかっています。

実践講座は、その基礎をいかにわかりやすく、ステップバイステップでお教えするかに重点をおいています。

大学2年の時に、生理学、生化学、ドイツ語の単位を全て取れずに、留年しかかった僕でも分かるような内容になっています。

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