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宮澤賢史

糖質制限してよい人いけない人

宮澤賢史 · 2021年8月28日 ·

15年前に低血糖症と診断した患者さんに糖質制限を指導して、症状が悪化してしまった時の事を今でも昨日のように覚えています。糖質制限は自律神経を整え、ケトン体生成を可能にしてくれる素晴らしい治療ですが、適応になる人とならない人が存在します。糖質制限今日は分子栄養学とは何なのか、また分子栄養学実践講座はどのような内容なのかを、糖質制限の観点からご説明します。まずは一番良く聞かれるご質問「普通の栄養学」と「分子栄養学」は何が違うのかから説明していきましょう。

1.普通の栄養学と「分子栄養学」は何が違うのか

分子栄養学という言葉をご存知ない方はいらっしゃらないと思いますが、分子栄養学とは何かと改めて聞かれるとなかなか説明しづらいですよね。

僕もいつもどのように説明しようか考えていますが、分子生物学を知らないと説明が難しいと思います。分子生物学と分子栄養学は一体どのような違いがあるのでしょうか。

1-1.親子の見た目が似ている理由

  • 黄色と緑のエンドウマメをかけ合わせると全て緑のエンドウマメになる
  • 黄色のエンドウマメ同士をかけ合わせると75%が黄色、25%が緑のエンドウマメになる

これをメンデルの法則と言います。このように、実際の現象から何らかの法則を発見して、そこから法則性を探っていくのが従来の生物学です。

この生物学の考え方を根底から覆したのがジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックです。1953年、彼らはDNAの二重らせん構造を発見しました。人間は細胞からできていて、細胞の中には核があり、核の中にはDNAがあり、DNAはタンパク質の設計図になっています。そしてDNAは両親から片方ずつ受け継いでいきます。DNAを受け継いで、そのDNAからタンパク質ができていて、そのタンパク質から人間ができているから親子は似ているのです。

生物学
子は親に似る(経験から法則性を探っていく)
⇒ DNAの二重らせん構造の発見 ⇒
分子生物学
遺伝子が受け継がれるため、そこから作られるたんぱく質の立体構造が似る
(法則を分子レベルで科学的に説明できる)

1-2. 壊血病と脚気は経験則から治療が発見された

航海中の船は食物の供給がままならないため、栄養不足になりやすい場所です。

1600年代の大航海時代には、長期間航海を行う船員の半分の人が壊血病で亡くなりました。ジェームス・リンド医師が船にビタミンCを含むライムを積んだことでこの問題は解消しました。

1920年ごろの日本の海軍は脚気に悩まされていました。発症率は20%以上、5人に1人がかかっていました。当時は原因がはっきり分からず、軍医の高木先生が食事に問題があると言って、欧米にならい麦飯と肉などタンパク質を導入したら、2年で発症率が23%から1%以下に激減しました。当時ははっきり原因は分かりませんでしたが、経験的に良いだろうと積み重ねたのが従来の生物学です。それからビタミンB1が発見されて、ミトコンドリアの機能が生科学的に説明できるようになりました。

経験から法則を探るのが従来の栄養学、生化学的な理論で突き詰めるのが分子栄養学です。これで説明になっているでしょうか?

栄養学
大日本帝国海軍で軍医の高木兼寛が麦飯を導入したところ、脚気の発症率が2年で23.1%から 1%未満に激減した(経験則による)
分子栄養学
脚気はビタミンB1を補酵素とするPDHの機能低下による
ミトコンドリア病(疾患を分子レベルで科学的に説明できる)

1-3. 脚気の生化学的原因

脚気とは、ビタミンB1を補酵素とするピルビン酸デヒドロゲナーゼの機能低下だと説明することができます。このように、分子栄養学は分子レベルの科学的な説明ができることが大きな違いです。

根本原因が分かるので疾患の原因をピンポイントで特定できます。つまり、細胞やミトコンドリア、分子などに着目すると、目に見えない病気の原因を突き止めることができるようになります。

これはジェノバダイアグノスティックス社の検査です。

炭水化物、脂肪、タンパク質などそれぞれの栄養素がTCA回路というエネルギー回路のミトコンドリアの中に入って燃えていく図を表しています。

炭水化物が分解されてブドウ糖から出来るのがピルビン酸です。ピルビン酸はアセチルCoAになってミトコンドリアの中に入っていきます。もし検査データで、ピルビン酸や乳酸が多くてクエン酸が少なく出れば、ピルビン酸をアセチルCoAやクエン酸に変換する経路が働いていないということが分かります。重要な段階である律速段階でピルビン酸デヒドロゲナーゼが働くためにビタミンB1が重要なので、これが不足しているということがピンポイントで推測できます。

分子栄養学的に見れば、脚気とはミトコンドリア機能障害です。ミトコンドリアが障害されるので、ミトコンドリアをたくさん含む心臓の働きが低下して心不全を起こしたりします。脚気を症状から診断するのは難しいですが、生体内物質の量や、変換に必要な酵素の活性を測定できれば、原因の特定は難しくありません。

1-4. 必要な栄養は人によって異なる

クエン酸回路の図は、首都高の渋滞マップのようです。新宿からディズニーランドに行く時に箱崎を通って行くこともできるし、箱崎が渋滞していたらレインボーブリッジを渡って行くこともできます。レインボーブリッジが封鎖されていたら箱崎は少し混んでいたとしてもそこを通らざるを得ません。中にはどちらも渋滞している人もいます。このように、体内の代謝状態は人によって大きく異なり、これを個体差と呼んでいます。

言い換えれば、個体差とは体内における酵素と基質の反応力です。これは鍵と鍵穴の関係に例えられます。鍵穴の形をした酵素の設計図はDNAです。DNAは一人一人違うために鍵穴の形も人によって異なります。鍵穴の形が変形してる人は、潤滑油の補酵素を使わないと鍵がスムーズに入りません。

このように人によって必要な栄養素が異なることを知り、実際の個人データを測り、分子栄養学をベースにした個別化栄養療法の勉強会を行っているのが分子栄養学実践講座です。

2. 糖質制限を考慮してもよい人

今日はこの見解をベースに、糖質制限について考えてみたいと思います。「先生は糖質制限推進派ですか?そうではない派ですか?」とよく聞かれますが、そのどちらでもなく、「人によって変える派」です。

一般的に糖質制限を考慮しても良い人とは、食事療法の選択肢として考える糖尿病の患者です。アメリカの糖尿病学会は、2013年に糖質制限を食事療法の選択肢の一つとして認めるとアナウンスをしました。もっとも100%糖質制限だけが良いというわけではなく、カロリー制限も地中海食も選択肢として良いのですが、人によっては糖質制限も合うだろうというコメントをしています。

特に糖質制限に適しているのは、インスリンが効きにくい人です。インスリンが効きにくいためにインスリンが沢山出て、脂肪細胞がどんどん大きくなってしまうことを「インスリン抵抗性がある」といいます。糖質制限はインスリン抵抗性を下げるのに有効だという報告も多々あり、特に減量時に有効です。

薬がなかなか効かない難治性のてんかんの選択肢として、ケトン体が出る糖質制限も良いでしょう。

また、がんは種類によってエネルギーが糖質依存になります。そのためがんの成長期に糖質制限をするのは人によったら良いかもしれません。

糖質制限して良い人
・糖尿病の食事指導の選択肢の一つ
・インスリン抵抗性の患者が減量する場合
・難治性てんかん
・がん患者

2-1. ケトン食療法の適応となるてんかん

  • 2剤以上の抗てんかん薬を十分な量、十分な期間使用しても効果が不十分な難治性てんかん患者
  • ただし、West症候群などのてんかん性脳症などでは早めに検討して良い
  • てんかん外科の適応のある患者さんでは外科手術が優先される

2剤以上の抗てんかん薬を入れても効果がない人は、てんかん食を試したら良いでしょう。日本ではまだ完全に認知されてませんが、アメリカや韓国では標準の治療の中に組み込まれています。

ケトン体は脂肪酸と比べて分子量が小さいため、脳血液関門(B.B.B)を通過して脳のエネルギー源となり得ます。また、ケトン体には抗酸化作用もあります。

2-2. 糖尿病の食事療法についての議論

・2008年 DIRECT 研究(2+4年)
低脂肪食に比較して地中海食と低炭水化物食では減量効果が優っており、
両群では血中脂質やインスリン抵抗性が改善。
・2013年 米国糖尿病学会のstatement
肥満者の減量を図るためには、低炭水化物食、低脂肪食あるいは地中海食は、短期間(2年間まで)では有効であるかもしれない(ガイドラインの変更)
・日本糖尿病学会の提言 2013年
「総エネルギー摂取量は過剰でも、炭水化物さえ制限すれば減量効果がある」という解釈は短絡的。炭水化物を制限することによって起きる、たんぱく質あるいは脂質摂取増加の影響が調整されていない。

糖質制限が糖尿病の治療として認められるようになったのは、2008年のDIRECT研究がきっかけです。それまでも糖質制限が良いとは言われていましたが、第一級のエビデンスレベルのある論文がありませんでした。医学の世界では、このように論文が出ると急に見方が変わることがよくあります。低炭水化物食と地中海食では減量効果が勝っており、脂質やインスリン抵抗性が改善したので、選択肢の一つになりました。ただこれには個体差があります。

2-3. 脳腫瘍に対する糖質制限

癌に関しては、多くの悪性細胞はミトコンドリア機能が障害されてしまうため、糖質を代謝するようになります。ブドウ糖はインスリンレベルを高くしますが、このインスリン様成長因子も高くします。インスリンには細胞増殖作用があるため、ガンが進行するという理屈です。癌患者はみんな糖質制限した方が良いだろうと思いきや、効かない人もいます。

神経膠芽腫に対するケトジェニックダイエットを用いた治験
Pilot Feasibility Stud. 2017 Nov 28;3:67.
Ketogenic diets as an adjuvant therapy in glioblastoma (the KEATING trial): study protocol for a randomised pilot study.

神経膠腫にケトジェニックダイエットが有効
Cancer Metab. 2015; 3: 3.
Published online 2015 Mar 25. doi:  10.1186/s40170-015-0129-1

神経膠芽腫は脳の悪性腫瘍の中で一番悪性で、平均寿命が1年ぐらいです。放射線治療にも手術にもなかなか反応しないので難渋しますが、この神経膠芽腫には特別に糖質制限が効くという報告が出始めていて、二重盲検試験のトライアルがされている最中です。こういう極端な場合は糖質制限していいかどうかわかりやすいのですが、神経膠芽腫じゃない場合、髄膜腫の場合、膵臓癌、白血病の場合は糖質制限が良いのか悪いのかは分かりません。実際に糖質制限をしてみても良いですが、がん幹細胞検査がお勧めです。

2-4. がん幹細胞検査

インスリン様成長因子受容体

加齢、腫瘍成長に関わる この数値が高ければ、
*放射線治療と化学療法への抵抗性
*強い炎症ががんのベースにある
*成長にエネルギーが必要、特に砂糖で成長

がん幹細胞検査とは、採血するだけでがんの性質が分かる検査です。がんは直径2mmになると血中に一部分出ているため、その一部分を採血で末梢から取ることによって、そのがんを様々な物質にさらして感受性を見たり、遺伝子レベルを検索したりして見ます。この検査をして、インスリン様成長因子の受容体であるIGFR1の数字が30%あると陽性です。この数値が陽性の人は放射線や化学療法が効きにくいので、この数値が上がっていたらがんのベースにある炎症を抑えるような治療した方が良いでしょう。

そして、成長にエネルギーを使う、特に砂糖で成長するという特徴があるので、僕ならがんになったらこれを調べて、この数字が高ければ糖質制限をします。個体差があるので、抗がん作用があると言われているビタミンCの点滴が効くかどうかもこの検査でわかります。

3. 糖質制限をしてはダメな人

糖質制限の最初の提唱者である江部先生によると、糖質制限をしてはいけない人とは、腎不全、膵炎、肝硬変、長鎖脂肪酸の代謝異常がある人です。この人たちは、糖質以外の栄養の摂取、吸収、代謝に問題があります。糖質制限では、主に脂質をエネルギーとして使わなければいけないため、その経路に問題があったらできません。

このリスト以外にも糖質制限をしてはいけない代表的な疾患があります。それは副腎疲労です。副腎疲労も立派な糖代謝異常です。僕が糖質制限を勧めて悪化した患者さんは、ステージ3の副腎疲労だったのです。

糖質制限してはダメな人
・腎不全
・活動性膵炎
・非代償期の肝硬変
・長鎖脂肪酸代謝異常
・副腎疲労

3-1. 35歳男性 副腎疲労

  • うつ病にて投薬治療中。再発を何度も繰り返す。
  • 倦怠感、疲れやすい、頭重感、夜中に数回目が覚める、不安感。
  • 低血糖症という言葉を知り、糖質制限を始めました。
  • 起床時に憂うつ、不安、恐怖感があり、なかなか起きられない。睡眠が浅い、頭がぼーっとして、頭と体が重たい、疲労感、イライラ

上記は35歳の男性の問診ですが、夜中に数回目が覚めているという症状から、低血糖を起こしていることが分かります。血糖値を保てなくなり、自律神経が緊張しています。糖質制限を始めたところ、症状は悪化したそうです。

副腎疲労の原因は、長年のストレスです。長年のストレスが脳に効き、脳から出る副腎刺激ホルモンが出て抗ストレスホルモンが出ていますが、副腎が疲れてくると、この抗ストレスホルモンであるコルチゾールが5年、10年単位で出なくなってきます。

3-1. 人は糖新生で血糖値を保っている

人は糖新生で血糖値を保っているため、食事をしたら血糖値は上がりますが、せいぜい保つのは2時間です。残りは貯蔵型の糖であるグリコーゲンで、血糖値を保っています。肝臓に12時間ぐらい蓄えていますが、そもそも糖質を食べなければグリコーゲンの蓄積がありません。ではどのように糖質を保つかというと、糖新生です。

肝硬変は、肝臓の機能が落ちているため、糖新生の力が弱いということで問題があります。肝硬変になったらもちろんグリコーゲン貯蔵量も減ります。肝臓の機能が働いていない人に糖質制限は合いません。糖新生を促すためのコルチゾールが出ない疾患である副腎疲労の人にも糖質制限は、難しいです。

食事中のブドウ糖 2時間
グリコーゲン  12時間
両者を使い果たしたら、糖新生(体のアミノ酸を分解してブドウ糖を作る)
①肝硬変  ②副腎疲労

糖新生というのは身体のアミノ酸を分解してブドウ糖を作ることです。この糖新生ができない人は糖質制限NGとなります。

副腎疲労は肝臓に働いて糖新生をうながす

3-3. アラニン回路が働かない人は糖質制限をしてはいけない

これはリブレという簡易血糖測定器です。いつでも血糖値を測れて便利なので、副腎疲労の患者さんにトライアルをしています。

今の僕の血糖値は112ですが、食事をすると上がったり下がったり、リアルタイムで見れるので便利です。正確には血糖値とは違いますが、血糖値のトレンドを追うのにはとても適してます。

これは僕の2月3日の土曜日の0時から24時までの血糖値です。

金曜日に多少お酒をたしなむ機会があり、あまり食事をしませんでした。食事をしないとグリコーゲンの蓄積がないため、低血糖になりやすくなります。しかも、お酒が入ると糖新生の仕組みがうまく働かないため、夜中に低血糖を起こします。糖尿病患者にもよくあることですが、副腎疲労の人はお酒を飲むのはよくないということわかります。

副腎疲労は、唾液中のコルチゾールで測れます。

朝、昼、夕方、夜に唾液中のコルチゾールを測りますが、この方の場合は完全にコルチゾール分泌が枯渇していました。夜中も血糖値がなかなか保ちにくい状態です。

血液検査を見ると、好中球が63.5%で自律神経の過緊張をあらわしています。夜中に低血糖を起こし、副腎がアドレナリンを分泌して血糖を保つので、副腎がアドレナリンを常に分泌させらて、副腎に24時間負担がかかります。

筋肉にはアラニンというアミノ酸があり、アラニン経路でグルコースを作ってくれる経路があるため、筋肉が沢山あれば肝臓のカバーはしてくれます。

この経路はとても重要な経路ですが、アラニンとピルビン酸の切り替えがうまくいかないときちんと働きません。アラニンとピルビン酸の切り替えをうまくしている酵素とは、みなさんご存知のALTという酵素です。

ピルビン酸がアラニンになる時に、このアミノ基が転移します。

グルタミン酸のアミノ基が転移するため、アミノ基転移酵素といいます。このアミノ基転移酵素の補酵素はビタミンB6です。ビタミンB6が不足していると、GOTとGPTの差が激しくなりますが、そういった人は糖質制限をしてもうまくいかないでしょう。

3-4. 長鎖脂肪酸代謝異常症

「このカルニチンサプリを摂ってから身体が軽くなった気がする」「そうなの、じゃあ私もやってみようかな。」これが従来の経験に基づく栄養学です。

それに比べて「このカルニチン摂ってから身体が軽くなったような気がする。有機酸検査でアジピン酸とスベリン酸が低下したし基礎代謝も5%上がったし。」

「え、そうなの?じゃあ私も有機酸検査と基礎代謝測って脂肪酸代謝経路に異常がないか見てみようかな。」これが分子栄養学です。

長鎖脂肪酸代謝異常症は、平成22年度に厚労省の指定難治性疾患に指定されています。

一般検査の異常所見
1)代謝性アシドーシス、2)高アンモニア血症、3)CPK、AST、ALTの高値

日本において毎年10人〜50人の新患が発生と言われていますが、脂肪酸代謝異常の人を何人も見ているのでそんなに少ないわけはないと思います。

この長鎖脂肪酸代謝異常症の人は、本当に極端な異常症です。脂肪をエネルギーに変えることができないので最終的にアシドーシスを起こしたり、横紋筋融解症を起こしますが、こう言った人はごく少数です。ただし長鎖脂肪酸の代謝が止まっている人は多数います。脂肪酸は、ミトコンドリアの中に入るときにカルニチンが必要なため、リジンやメチオニンなどの栄養素が一つでも欠けているとカルニチンがうまく作られません。

カルニチンは75%食事から摂りますが、25%は身体の中で作られています。低カルニチン食の人で栄養欠損があると、長鎖脂肪酸の代謝不全があるかもしれません。

これに関しては、有機酸検査で分かります。アジピン酸、スベリン酸、エチルマオンが上がっている人は脂肪酸の代謝が障害されています。そういう人は、糖質制限をしてはいけません。

もう一つ考えなければいけないことは、糖質制限をしたら脂質とタンパク質でエネルギーをまかなうために何を食べるのかということです。

タイム誌の1984年と2010年の表紙を比べてみると、30年前はコレステロールを悪者にしていますが、最近では考え方が全く変わって”Eat butter”とあります。脂質を制限するのが問題だと言っていますが、何を食べるかも重要です。

厚労省は2015年に高コレステロール血症の上限を撤廃しました。コレステロールが高いのは良いことですが、どういう脂肪を摂るかを細胞に立ち返って考えてみてください。食べる前に細胞の細胞膜のリン脂質の組成はどのくらいかなと考えてください。肉の油を沢山食べて飽和脂肪酸が増えてくると、細胞膜が硬くなって、細胞膜の経路が低下してくるかもしれません。神経の伝達に支障をきたすかもしれないし、オートファゴーゾーム(細胞内で二重膜に囲まれた球状の構造)が正常に働かなくなるかもしれません。

細胞膜のリン脂質組成を測ることもできます。タンパク質を多く摂ろうとすることの問題は、消化吸収の手間です。タンパク質は三大栄養素の中で一番消化と吸収に手間がかかります。

日本人はもともと胃酸が少なく、消化酵素が少なく腸が長いため、ペプシノゲンが70以上ある人はあまりいません。大量のタンパクの消化には向いてない人が多いです。

3-5. 45歳女性コレステロール高値

  • 半年前、食事方法をマクロビから糖質制限に変更
  • 3ヶ月前の血液検査ではいきなりコレステロールが200から350へ上昇
  • 理由がわからないために来院

この方は45歳の女性ですが、コレステロールが異常に高くなったということでご相談にみえました。半年前に食事方法をマクロビオティックスから糖質制限に変更したそうです。それ以来、とても調子良くなりましたが、3ヶ月前の血液検査で1年前200だったコレステロール値が350まで急に上がてしまいました。何か体に異変が起きているのではないかといらっしゃいました。

3-6. 急激な糖質制限は甲状腺トラブルとホルモンバランスの乱れを招く

この理由は代謝の低下で、 LOWT3症候群といいます。人間は飢餓状態になると自らの代謝を落とすように働きます。身体の代謝をコントロールするものはいくつかありますが、そのうちの一つが甲状腺ホルモンです。甲状腺ホルモンというのは、ヨードが4つついているT4と、3つついているT3があります。そのT4がT3に変わる時に、不活性型のreverseT3に変わってしまうのがLOWT3症候群です。

実際の血液検査ではこのreverseT3もT3として勘定されるので、はっきりと甲状腺機能低下と出ません。普通コレステロールが高ければコレステロールが高く上がり、CPKが高く上がれば誰でも甲状腺機能低下症と考えると思いますが、血液検査を見ると甲状腺ホルモンが正常範囲内にあるので、問題ないですと言われる人も結構多いです。最近になってこのreverseT3も測れるようになりました。

このように現在では、疾患の原因が明確に分かるようになってきています。潜在性の甲状腺機能低下症になると、このreverseT3を測らなくてもこれらの甲状腺を刺激する甲状腺刺激ホルモンのTSHという数字が上がってくる人は多くいます。通常の血液検査からも、潜在性の機能低下症を検出することができますが、甲状腺の問題は大変奥が深いです。

このような飢餓状態になってる人は糖質制限はしてはいけません。タンパク質や脂肪も摂って、エネルギーをきちんと摂ってるのに糖質制限したらどうして飢餓状態になるのか。脂肪からのエネルギーはパイプが細いですが、炭水化物は非常に効率の良いエネルギー源になっていてパイプが太いから、糖はいくらでもエネルギー化できます。普通の人の安静時だと脂肪と糖のエネルギーの比率は大体2:1です。安静にしているときは脂肪のエネルギーを主に使っていますが、運動負荷がかかってくると、糖質の比率が高くなってきて逆転します。

糖質はグリコーゲンなので、肝臓で500、筋肉で1,500、あわせて2,000~2,500キロカロリーしか貯められませんが、エネルギーの蓄積量として大体10万キロカロリーぐらいは体の中の脂肪にあります。備蓄はあっても供給のパイプは細く、脂肪をエネルギーに使うためにはまず脂肪細胞から取ってきます。脂肪は水に溶けないため、アルブミンに乗せて血液中を運搬しなくてはいけません。ミトコンドリアの中に入る前にカルニチンが必要で、何段階もあって使いにくい供給源です。だから特別にそこの供給源が細い人は、糖質制限してはいけません。

4. まとめ

糖尿病の食事の選択肢としては、HOMA-Rを測ると良いでしょう。インスリン抵抗性が大きい人は5時間糖負荷試験をしてみて、インスリンが出すぎてる人は糖質制限が有効でしょう。逆にインスリンがあまり出ない無反応型の低血糖症の人は、糖質制限はしない方がいいです。

癌の人は幹細胞検査をしてみてください。

糖質制限をしてはいけない人で腎不全、肝不全というのは、血液、肝機能、膵機能を見れば大体分かりますし、アミノ基転移反応を見るのはGOTとGPTです。その他に、長鎖脂肪酸代謝異常というのはカルニチンの代謝検査、有機酸検査をすれば良いです。タンパク質の消化悪い人は、便検査をして消化酵素の量とか食物残渣による悪性菌の増加などもチェックした方がいいかもしれません。

5. 勘に頼るサプリ処方からデータに基づく栄養療法へ

便検査、有機酸検査、毛髪検査、血液検査など実践講座で推奨されている検査を一通りやるとこれらのことが全て分かるようになっています。これらは、個体差を見るための検査です。勉強していくと糖質制限して良いのか悪いのかということが、一目で分かるようになると思います。

栄養療法はただの大量のサプリメントを処方するものだけでは決してありません。体内の代謝を司ってるのは栄養ですが、全ての疾患がサプリメントの投与で治るほど甘くありません。慢性疾患を持つ人はどこかで代謝が止まっています。その場所を様々な問診と検査で突き止め、適切な対処をすることで初めて身体が栄養をうまく使えるようになってくるのです。

アルツハイマーの原因と治療法

宮澤賢史 · 2021年8月10日 ·

アルツハイマー病の本当の原因をご存知ですか?身近な病気である一方、未だ完璧な治療法が見つからないため、得体の知れない不安感をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも最も多く、脳の一部が萎縮していく過程で起こります。アミロイドβの蓄積が原因とされてきましたが、それはあくまでも結果であり、真の原因は、「炎症」「栄養の欠乏」「毒物」これら3つにあることがわかってきました。

1. アルツハイマー病の本当の原因

1-1. アルツハイマー型認知症とは?

アルツハイマー型認知症(以下、アルツハイマー)は、認知機能の低下と人格の変化を症状とする認知症の一種であり、脳の萎縮を伴います。認知症の中でも最も多く、今後もますます増えると予測されています。

脳血管認知症は、脳梗塞などに伴って起こる認知症で、脳の血管が詰まるとその部分が壊死するので一気に発症します。一方、アルツハイマーは脳の変性が徐々に進行するため、症状も徐々に進行するというのが特徴です。アルツハイマーで問題なのは、最終的には寝たきりになって、死に至るということです。症状経過の途中で、被害妄想や幻覚、暴力、徘徊などを伴うケースが多く、患者本人だけではなく、周囲の人のメンタルにも大きな影響を及ぼすことも問題になっています。

1-2. アルツハイマー治療の問題点

認知症そのものを抑える薬はなく、今のところは周辺症状を止める治療薬に主眼が置かれているような状況です。つまり、問題は進行を止めたり回復する治療法が存在していないということです。大部分は65歳以上で発病しますが、5%は若年性アルツハイマーとしてそれ以前に発病することがあります。早期認知症の検査は、ネットでもダウンロードが可能です。

そんなアルツハイマーですが、2050年までに1億6千万人が発症すると予測されています。それにもかかわらず、薬物治療がことごとく失敗しています。アリセプトやエミニール、メモリー、リバスタッチなど、アルツハイマー型認知症薬として現在5種類の治療薬が日本で認可されていますが、いずれも治すための薬ではなく、症状を遅らせるための薬です。米国アルツハイマー協会も、アルツハイマーを治す薬はないと発表してます。フランスでは効果が認められないということで、全ての治療薬が保険適用外になりました。

フランスの保健省は2018年6月1日、アルツハイマー型認知症治療薬の保険償還を8月1日から停止すると発表した。同国高等保健機構(HAS)が公表した「勧告」を受け、アルツハイマー型認知症治療薬4剤について「公的医療保険の適用を正当化するための医療上の利益が不十分」だと結論づけた。

アリセプトはアセチルコリンを増やす薬です。アルツハイマー患者には、脳内のアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質が減少していることがわかっています。また、メマリーという治療薬はNMDA受容体拮抗薬です。アルツハイマー患者はNMDA受容体(グルタミン酸受容体の一種)が亢進するという特徴があり、そこを抑えることで興奮が抑えられます。しかし、アリセプトもメマリーも、根本治療とは程遠いものです。

1-3. アミロイドベータは原因ではなく結果だった

アルツハイマー病患者の脳には、アミロイドβという老人斑が見られます。このアミロイドβの蓄積がアルツハイマーの原因とされ、これを除去する薬の開発競争がずっと続いてきました。しかし、アミロイドβを除去してもアルツハイマーが治らず、治験はことごとく失敗に終わっています。実は、アミロイドβが本当の原因ではなく、様々な病因による結果として出てくるものだということが最近明らかになってきました。

アミロイドβの塊

その病因が、「炎症」と「栄養・ホルモン不足」と「毒物」です。脳がこれらの脅威に晒されると、そこから身を守るためにアミロイドβを増やすのです。確かにアミロイドβは神経ネットワークを破壊するのですが、見方を変えれば、重要な脳の神経の部分を守るためのダウンサイジングとも捉えることができます。様々な病因の影響で、脳機能を維持できないと脳自身が判断すると、優先順位の低い脳細胞をリストラして、必要最低限のところまでサイズを小さくするのです。アルツハイマー患者の脳が萎縮するのは、こうした理由からです。

アルツハイマーは、炎症、栄養・ホルモン不足、毒物に対する防御反応である。

リストラには「最後に雇われたものが最初に解雇される法則」というのがありますが、脳も同じで、新しく覚えたことは生命維持に重要ではないので、新しい記憶からなくなっていきます。昔のことはよく覚えているのに最近のことは思い出せない、という症状は、脳のリストラが行われている結果なのです。

1-4. アルツハイマーを改善するリコード法

「アルツハイマー病の真実と終焉」(デール・プレデセン著)には、アルツハイマー病患者100人の改善報告がまとめられています。プレデセン博士は、アミロイドβが増える理由を様々な角度から研究し、36個の因子を突き止めました。そして、患者1人1人に対して、その因子に該当するかを1つずつ調べていき、当てはまる要素を取り除いていくというアプローチを取りました。この本に書いてあるのは、個体差を見つけてそこに応じて治療するという分子栄養学の考え方そのものです。

ここからは、この本に書かれているリコード法に基づいて、脳機能を改善する方法を見ていきましょう。アルツハイマーには、脳血管性の4型や5型もありますが、今回は栄養や炎症に関わる1~3型について詳しく解説します。リコード法の手順としては、まずはじめに、1型(炎症性)、2型(栄養性)、3型(毒性)のどれに該当するかを探ります。次に、36個の因子のどれに当てはまるかを特定し、それに応じた食事、睡眠、運動、ストレス対策などの治療計画を練ります。

  • リコード法は、アルツハイマーでなくともブレインフォグの治療にも応用できる
  • アルツハイマーと診断されていなくても、リコード法を行う価値がある
  • リーキーブレインを起こすもの(グルテン、カゼイン、高血圧、リーキーガット)は、全て1型アルツハイマーの原因と考える
  • チェックリストを作って、全てに対処する

2. 1型(炎症性)アルツハイマー

2-1. 特徴

1型アルツハイマーが疑われる症状は、ダニや感染症、関節炎、糖尿病、メタボリックシンドローム、副鼻腔炎、ピロリ、根尖病巣などです。これらは全て炎症です。炎症があって、炎症マーカーも上がっていたら、1型アルツハイマー、もしくは脳機能の変性があるかもしれません。

1型アルツハイマーが疑われる症状
☑️ ダニに噛まれたことがある
☑️ 関節炎がある
☑️ 糖尿病にかかっている
☑️ メタボリックシンドローム
☑️ 副鼻腔炎、慢性の鼻づまりがある
☑️ ピロリ菌感染がある
☑️ 歯の根幹治療を行なっている

炎症マーカーの挙動

1型は炎症性のため、血液データの炎症マーカーが高くなります。CRP、ホモシステインが上がり、A/G比は下がります。IL-6やTNFといった炎症性サイトカインの数値も上がります。炎症があるとメチレーション回路が回らなくなるため、ホモシステインは高くなります。本には書かれていませんが、おそらくフェリチンも高くなると考えられます。

炎症の原因物質

最も気をつけるべきは腸の炎症です。他にも、口腔や喉、胃、肝臓の炎症も関連します。腸に炎症を起こすものは、あらゆる病原菌と、砂糖、グルテン、カゼイン、トランス脂肪酸といったリーキーガットを誘発する食材です。また、内臓脂肪にも注意が必要です。脂肪細胞は、サイズが小さいときには、アディポネクチンやレプチンといった痩せる物質が分泌されますが、サイズが大きくなると炎症性物質であるTNFαが分泌されます。これは、インスリン抵抗性を惹起する物質でもあります。インスリンを排泄する物質とアミロイドβを排泄する物質が同じなので、その結果として脳にアミロイドβの蓄積が促進されてしまいます。

ApoE4の存在

ApoE4遺伝子を持っているとアルツハイマーの発症リスクが高まります。ApoE4遺伝子は炎症を促進させ、炎症抑制の遺伝子を抑制する働きがあります。抗炎症のサプリを飲むだけでは対策としては不十分で、炎症場所を特定し局所の対策を講じる必要があります。

海馬の萎縮

炎症があると慢性的にコルチゾールが分泌されるため、海馬が萎縮すると言われています。

2-2. アマルガムとアルツハイマーの関係

「本当に怖い歯の詰め物」の著者である歯科医のハル・ハギンス博士は、アマルガム(水銀と他の金属との合金)の毒性を世に知らしめました。本には、慢性疲労や白血病など、水銀がもたらす様々な疾患がまとめられています。

同じくハギンス博士の著書に「歯科治療に潜む致命的な危険性」という本があります。これは根尖病巣について書かれており、博士に会ったときに、根尖病巣とアマルガムどちらが悪いかと聞いたら、根尖病巣が圧倒的に悪いという答えが返ってきました。

アマルガムからは、有機水銀、無機水銀、水銀蒸気、3つの形態で水銀が流出します。蒸気になると、脳や肺に入って影響を及ぼします。また、有機水銀は細胞膜を通過できるため、脂肪細胞や脳に直接影響します。日本歯科医学会では、無機水銀は安全だとしていますが、ハギンス博士は、口腔内や腸管で容易にメチル化されてメチル水銀になるので非常に危険だと訴えています。

もう一つ、アマルガムを外しただけでよくなる人とよくならない人の違いなんですか?という質問をしてみました。すると、アポリポ蛋白E(ApoE)のアイソフォームの違いだろうという答えが返ってきました。現在ほど遺伝子解析が進んでいなかった当時から、博士はApoEのアイソフォームに言及していたのです。ApoEによるアルツハイマーは1型です。アマルガムは毒物なので3型に該当します。ハギンス博士は、3型は40代で発症するのが一般的だけど、1型と3型が合併している人は30代で発症するよとおっしゃっていました。

2-3. ApoEとアルツハイマーの発症リスク

ApoEは、VLDL、IDL、HDLなどのリポ蛋白を構成している主要なアポリポ蛋白の1つで、コレステロールや脂肪酸の運搬に関与しています。アポリポ蛋白とは、コレステロールを運んでいるタンパク質のことで、コレステロールと輸送体タンパク質を合わせたものをリポ蛋白と呼びます。ApoEにはε2、ε3、ε4という3つの遺伝子変異があり、それに対応してタンパク質にもE2、E3、E4というアイソフォームが存在します。ApoE4はSirt1(サーチュイン)を抑制し、炎症促進物質であるNFκBを増やします。ApoE4がいくつあるかによってアルツハイマーの生涯発症リスクが決まり、1つもない場合は9%、1つで30%、2つで50~90%と言われています。発症年齢にも影響を与え、一般的には65歳以上ですが、ApoE4が1つあると50代後半で発症する確率が高くなります。

遺伝子検査でApoEの変異を調べることは決して無駄ではありません。自分のアルツハイマー発症リスクがわかるだけでなく、炎症を起こしやすいかどうかという体質チェックにもなります。ApoE4の変異があった場合の対処法は、炎症を起こしている部位を特定し除去すること、そしてもう一つは抗酸化対策です。

2-4. 抗酸化対策

ApoE4を有する高齢女性において、血中ビタミンC濃度を高めると将来の認知機能低下リスクが減少することが金沢大学の研究で明らかになりました。

J Alzheimers Dis. 2018;63(4):1289-1297.
Higher Blood Vitamin C Levels are Associated with Reduction of Apolipoprotein E E4-related Risks of Cognitive Decline in Women: The Nakajima Study
https://doi.org/10.3233/JAD-170971.

日本人の場合、E3/E3に比べ、E3/E4ではアルツハイマー発症リスクが約4倍になります。しかし、ビタミンCの血中濃度を高めておくと、認知症発症リスクが低下し、認知機能低下発症リスクも有意に下がります。

ビタミンEでも同様の結果が得られています。抗酸化ネットワークの相互作用により、ラジカルになったビタミンEをビタミンCが戻すので、抗酸化にはビタミンCとE、両方とも大切な栄養素です。これら2つの栄養素が特に優れているのは、ラジカルが安定していることです。通常、電子を失った物質は不安定になってラジカル連鎖反応を起こしますが、ビタミンCとEは電子共鳴によって安定化しているので、連鎖反応を起こしません。

2-5. 抗酸化サプリメント

抗酸化サプリメントとしては、リポソーマルビタミンCやフェルラ酸が良いでしょう。フェルラ酸は、脳の抗酸化物質としての働きを持ち、日本認知症予防学会などで推奨されています。通常のフェルラ酸はiHerbなどで購入できますが、12時間体内で効果を維持できるように加工されたフェルガードというサプリメントもあります。

余談ですが、とある先生が、フェルラ酸を受験生のお子さんに使うとおっしゃっていました。脳の抗酸化対策は脳機能の向上に直結するので、アルツハイマーだけではなく、様々なことに応用できます。

2-6. 鼻腔の炎症

鼻腔は炎症を起こしやすい場所の一つです。鼻は直接脳と繋がっているため、慢性副鼻腔炎や慢性鼻炎を抱えていると、脳へのダメージもかなり大きくなります。また、長期間にわたって抗生物質を使うと、鼻腔の悪性細菌が作るバイオフィルムにより耐性ができるため、通常の抗生物質では効きが悪くなってしまいます。

プレデセン博士は、バイオフィルムクレンジングの成分が配合されたスプレーを使って鼻炎を治療しています。バイオフィルムクレンジングのEDTAと3種類の抗生剤を入れたBEG1スプレーというものです。残念ながら日本では取り扱いがないため、京都市にあるうさぎ堂薬局さんで調合してもらえるようにしました。処方箋があれば購入することができます。鼻炎があるとデトックスにも影響するため、ここは早めに治しておきたいところです。

3. 2型(栄養性)アルツハイマー

3-1. 特徴

2型を疑う症状として、以下の項目が挙げられます。栄養・ホルモンの欠乏が原因のため、当然のことながら、それに関連した症状が強く出ます。

2型アルツハイマーが疑われる症状
☑️ 更年期障害が強い
☑️ 子宮、卵巣を切除している
☑️ 甲状腺機能低下症状
☑️ ビタミンD不足

BDNFの減少

脳シナプスを保つためのBDNF(脳由来神経栄養因子)は、アルツハイマー病に最も重要な脳の部位前脳基底部の受容体と結合し、アポトーシス(細胞死)を抑制します。したがって、BDNFが減少するとアポトーシスが亢進し、2型アルツハイマーが発症します。またアミロイドβは、BDNFが受容体に結合するのを邪魔する抗栄養因子として働くため、さらに悪化します。

BDNFを保つための栄養素

BDNFを保つためには、ビタミンD、ホルモン、葉酸といった栄養素と運動が欠かせません。また、BDNFはコレステロールからできているので、低コレステロールの人は特に注意が必要です。

ホモシステイン高値

2型は葉酸が不足するのでホモシステインが高くなりがちです。

2型の診断

これらのチェックは、血中のホルモン濃度やビタミン濃度を測ることで把握することができます。

3-2. ホモシステインを減らすためには

ホモシステインはそれ自身が酸化物質であるため、過剰に蓄積すると体内で活性酸素を発生させたり、動脈硬化を引き起こします。メチレーション回路の中で、ホモシステインが代謝される経路は3つあります。これら3つの経路を適度に回す必要があります。高い場合にはまず、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸を摂ることから始めてください。

ホモシステインからメチオニンに代謝される際に働くMTRは、炎症に対して影響を受けやすい酵素です。炎症でこの代謝が止まっている人は、メチルビタミンB12のサプリメントを使って、この代謝を強制的に動かすこともあります。もしくは、ベタインを使うとBHMTを介してメチオニンに行く経路が回るため、ホモシステインが下がりやすくなります。

4. 3型(毒性)アルツハイマー

4-1. 特徴

この3型は宮澤医院の患者さんに多いタイプで、症状が副腎疲労とものすごくオーバーラップします。40代の患者さんで、「注意力が低下していて、頭が全く働かないんです」という方は結構いらっしゃいます。そのようなケースでは、単なる副腎疲労と診断せずに、3型アルツハイマーの合併がないかもチェックが必要です。

☑️ 40代から発症(更年期頃に起きやすい)
☑️ うつ病が認知機能的かに先行する
☑️ 記憶低下<集中力低下、計算不能
☑️ 強いストレスがトリガー
☑️ マイコトキシン、もしくは重金属への曝露
☑️ 副腎疲労あり
☑️ 血中TG低値
☑️ 血清亜鉛低値
☑️ HPA軸↓、プレグネロノロン↓、DHEA↓

4-2. 解毒のしくみ

解毒には、3つのフェーズがあります。フェーズ1が活性化、フェーズ2が抱合、フェーズ3が輸送です。フェーズ1の「活性化」は、反応としては「酸化」することです。活性化したままでは酸化物質が溜まっていく一方なので、フェーズ2で水溶性にして細胞外に排出できる状態にします。そしてフェーズ3では、MRP輸送体を通して細胞外に送り出し、肝臓または腎臓経由で体外に排出します。

4-3. デトックスの順番

デトックスにおいて重要なことは、フェーズ1, 2, 3を逆から攻めるということです。例えば、フェーズ2の準備ができてないのにフェーズ1が進行してしまうと、酸化物質が体に溜まって逆効果になってしまいます。また、フェーズ3の前にフェーズ2を行うと、毒物を体外に排出できず溜め込むことになります。最初にやるべきは、フェーズ3、すなわち腸内環境を改善して便秘を解消するということです。その次は肝臓のケアです。肝臓は、フェーズ1とフェーズ2を大部分を行っている場所なので、肝機能を向上させると毒物がスムーズに排出されます。

4-4. グルクロン酸抱合

フェーズ2(抱合)は、難水溶性物質を水溶性に変えるプロセスです。薬物、ビリルビン、ステロイドなどは、体内に滞留するとがん、神経障害、内分泌障害など重篤な疾病を引き起こします。これらの物質は肝臓にあるUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT; UDP-glucuronosyl transferase)によって、グルクロン酸が付加されて水溶性のグルクロナイドに変換されます。

グルクロン酸にはOH基がたくさん付いているので、抱合により難水溶性物質が水溶性になります。水溶性になった薬物は、血流にのって腎臓で濾過され、尿中に排出されます。グルタチオンもグルクロン酸と同様の働きをします。グルクロン酸と結合するとグルクロン酸抱合、グルタチオンと結合するとグルタチオン抱合と呼ばれます。

4-5. グルクロン酸抱合に欠かせないUGTs

グルクロン酸抱合の際に働くUGTsには、1A1、1A6、2B1など、いくつかの分子種が存在します。分子種によって抱合する難水溶性物質の種類が決まっており、UGT1A1はビリルリンやモルヒネを代謝することがわかっています。ギルバート症候群やクリグラー・ナジャー症候群といった疾患では、UGT1A1のSNPによりグルクロン酸抱合が障害され、ビリルビンが高値を示します。血液検査の項目にある直接ビリルビンは抱合後、間接ビリルビンは抱合される前の状態を表しています。

4-6. スルフォラファンの効果

UGT1A1の酵素を活性化するのがスルフォラファンです。スルフォラファンはブロッコリーから抽出される物質で、ASDの行動改善にも効果があるという報告があります。

Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Oct 28;111(43):15550-5.
Sulforaphane treatment of autism spectrum disorder (ASD)
https://doi.org/10.1073/pnas.1416940111
18週間毎日スルフォラファンを摂取したグループで、異常行動と対人応答性のスコアが、プラセボに比べて大幅に低下し改善がみられた。摂取をやめるとスコアが上昇した。

スルフォラファンがUGT1A1、GSTA1のmRNAレベルを増加させ、UGT1A1タンパク合成、およびビリルビングルクロン酸抱合を2~8倍増加させたという報告もあります。

Carcinogenesis. 2002 Aug;23(8):1399-404
Sulforaphane and its glutathione conjugate but not sulforaphane nitrile induce UDP-glucuronosyl transferase (UGT1A1) and glutathione transferase (GSTA1) in cultured cells
https://doi.org/10.1093/carcin/23.8.1399.

スルフォラファンは、UGT1A1の酵素を活性化する以外にも、MRP輸送体自体をも活性化すると言われています。

4-7. 重金属の蓄積量と排泄力を評価する

解毒力の評価は、毛髪ミネラル検査で蓄積量と排泄量を把握し、両者を比較することで行います。マグロをたくさん食べていたり、アマルガムが歯に入っていたりするのに、毛髪からの水銀検出量が少なければ、排泄力が弱く体内に水銀を溜め込んでいるということになります。逆に、毛髪からの水銀が振り切れるほど出ていれば、それは排泄力があることを意味します。後者は比較的軽症ですが、問題となるのは水銀を溜め込んでいる前者のケースです。

4-8. デトックスの検査

毛髪ミネラル検査以外にも、デトックスに関連した検査はたくさんあります。例えば、フェーズ2のグルタチオン抱合を評価する検査として、オリゴスキャンが有効です。

また、ジェノバ社のキレーション・プロファイルは、フェーズ 1とフェーズ2における酵素のSNPを調べる検査です。フェーズ1は、シトクロームP450による酸化の工程ですが、CYP 1A1は排ガス、 1B1はエストロゲン…と対応する毒物が決まっているので、自分が排泄しにくいものがよくわかります。

キレーション プロファイル
  • CYP1A1;排ガス
  • CYP1B1;エストロゲン水酸化
  • CYP2C19;PPI、抗痙攣薬
  • CYP2D6;SSRI、抗うつ薬
  • CYP3A4;処方薬の50%、ステロイド

フェーズ2においては、COMTにSNPがあればエストロゲンやドーパミンが代謝しにくくなります。その他に、Nアセチルトランスフェラーゼ、GST、グルタチオントランスフェラーゼ(グルタチオンの抱合を助ける酵素)、SOD(酸化ストレスの起こりやすさの指標)などのSNPを調べることで、自分が避けるべき毒物を特定することができるのです。該当する毒物の曝露を避けた上で、ブロッコリーやキャベツ、玉ねぎ、ニンニク、ウコン、ローズマリー、クミンといった食材を使いながら肝臓のクレンジングを行うと良いでしょう。

キレーション プロファイル

4-9. デトックスサプリメント

フェーズ2で重要なポイントは、抱合して胆汁から排泄するというステップです。私がよく使うのは、ミルクシスルとNアセチルシステインが配合されたSeeking Health社のLiver Nutrientsです。肝臓の滋養強壮に良いサプリメントです。それともう 1つ、Optimal Liposomal Glutathioneです。抱合に関してはグルタチオンが欠かせないため、グルタチオンの前駆体であるNアセチルシステイン、もしくはリポソーマルタイプのグルタチオンやクリームタイプのグルタチオンを使って、消化酵素で分解されないように摂取すると良いでしょう。医薬品としては、ウルソ(ウルソデオキシコール酸)やタチオン(グルタチオン)などがあります。ウルソは、脂肪吸収促進とデトックス、両方の効果が期待できます。

フェーズ3で重要なポイントは、胆汁から排泄された毒素をキャッチしてあげることです。メチル水銀は胆汁から排泄されますが、メチオニンと形が似ているので、再吸収されてしまうリスクがあります。私が使っているのは、クロレラ、ケイ素、チャコール、そして医薬品のクレメジンです。

このように、フェーズ 1、2、3を理解し、うまくデトックスが進むように自分でプロトコルを組み立ててみてください。

4-10. 脳機能改善にはDHA

脳機能改善には、アセチルコリンやDHAを補充することも効果的です。この論文では、DHAを補うことで認知症を抑制することを示しています。

J Nutr. 2010 Apr;140(4):869-74. 
DHA may prevent age-related dementia
https://doi.org/10.3945/jn.109.113910. 

脳神経の樹状突起がDHAによって維持されているため、脳の細胞膜機能の改善には、やはりDHAが良いでしょう。細胞膜からのデトックスの作用も強まると考えられます。MSS社のuDHAは酵素処理により抗酸化力を高めたDHAが配合されています。また、ヘルシーパス社のスマートコリンも脳の認知機能向上に効果が示されています。

5. アルツハイマーの治療方針

炎症、栄養・ホルモン、毒物を根本原因ピラミッドに照らし合わせてみましょう。1型は一番下の腸・炎症、2型はエネルギーとホルモン、3型はデトックスに該当します。これらを順番に治療していくと、結果として脳機能が改善します。基本的には下から順番に進めていくのが良いでしょう。

6. 実際の症例と治療方法

6-1. 症状

ここからは実際の症例に基づいて、治療のアプローチを解説します。ピラミッドの下から順にアプローチしていき、認知機能の改善に結びつけた事例です。

年齢・性別
38歳、女性

主訴
・10年来の慢性疲労
・めまい、立ちくらみ、朝が起きられない
・時々胃を掴まれるような痛み
・手の湿疹、頻尿、関節痛
・集中力が続かない、物忘れがひどい

所見
・他院でのカンジダハーブ治療で胃痛と下痢が出現
・子宮筋腫あり
・不眠気味、入眠障害あり
・唇がよく乾く、話し声のかすれがある、無性に甘いものが食べたくなる
・お菓子、コーヒー時々
・虫歯既往あり、抜髄歯あり
・腹部膨満、ガス多量
・頸部リンパ節腫脹なし
・眼球結膜貧血なし

活力レベル
朝:2、昼:5、15~17時:3、23時:8

飲んでいるサプリメント
DHEA、ビタミンD、ヘム鉄、ビタミンB、亜鉛

現在の食事
糖質制限、グルテンフリー、カゼインフリー

活力レベルを見ると、朝は低く、夜に向けて徐々に元気になるという典型的な副腎疲労の症状を示しています。ビタミンD、ヘム鉄、亜鉛のサプリメントを飲んでいるので、血液濃度は高めですが、感覚的には効いていないとおっしゃっていました。糖質制限とグルテン・カゼインフリーをやっているとのことですが、お菓子を食べていることから、完全ではないことが見受けられます。腹部膨満があり、お腹が張ってパンパンでした。

6-2. メチレーションの状態

こちらはウォルシュ博士によるうつ病の生化学的分類に基づいた問診票です。Aは低メチレーション、Bは高メチレーション、Dはピロール障害のチェックです。Dにたくさん◯がついていますね。ピロール障害は慢性的な亜鉛とビタミンB6欠乏により起こりますが、症状としては副腎疲労に酷似してます。

6-3. 血液データ

血液データでは、特にタンパク質と中性脂肪の低さが目立ちます。これは低血糖のパターンです。血清銅に対して亜鉛がかなり高い値を示しているのは、サプリメントを飲んでいることが原因と考えられます。

6-4. 栄養療法ピラミッドは低血糖の海に浮いている

2005年に、「脳に効く栄養」という本の出版記念講演で、マイケル・レッサー博士の講演を聴く機会がありました。その講演の中で博士は、統合失調症の要因として、ホルモンバランス、ピロール障害、アレルギー、毒物などを挙げていました。毒物の影響、次いでビタミン欠乏が大きな要因になっています。ここで博士が強調していたのは、要因は様々だが、全ての要因は低血糖の海の上に浮いている(Schizophrenias float in the ocean of hypoglycemia )ということです。だからまずは低血糖をなんとかしないと次に進めない、というお話をされていました。

同じように、栄養療法ピラミッドも低血糖の海に浮いているのです。腸内環境改善も副腎疲労も、低血糖をなんとかしないと治療に入れません。低血糖がある程度落ち着いてから、ピラミッドを下から戦略していくというアプローチになります。症例の女性の治療もそんな感じで始まりました。

6-5. 毛髪ミネラル検査

毛髪ミネラル検査を見ると、カウンティングルールに当てはめるとミネラル輸送障害はありませんでした。水銀の曝露も少なく、水銀は十分に出ていて、ミネラルのバランスも整っています。

6-6. 総合便検査(CSA)

腸内環境検査では、良性細菌である乳酸菌、ビフィズス菌は十分ありましたが、境界型菌も多く存在しました。カンジダは他の検査では検出されましたが、便検査では検出されませんでした。便検査では実際の3割程度しか検出しないので、現在はDNA検査に移行しています。

ただ、この検査の良いところは、消化酵素、短鎖脂肪酸の産生、炎症、免疫の状態が複合的に把握できる点です。症例の女性の場合、炎症がとても強く出ました。炎症マーカーのラクトフェリンが高く、ライソザイムのマーカーも527とかなり上昇していました。免疫も亢進していることがわかります。

6-7. SIBO検査

腹部膨満感も強かったため、SIBOの検査も一緒に行いました。SIBO検査では、呼気中の水素とメタンガスを経時的に調べます。最初の方は小腸に溜まっているガスが出て、ある時から大腸のガスが出るようになります。この女性の場合は初期段階から水素ガスが出ているので、小腸にも細菌が増殖していることがわかります。治療方針としては、まずは低血糖を治して、それから腸内環境改善としてSIBO治療に着手することにしました。

6-8. 治療に使用したサプリメント

腸内環境改善には、これらのサプリメントを使用しました。

  • ウルトラフローラ(乳酸菌)
  • ビタミンA
  • トレースミネラル
  • グルタミン

腸のバリアは、乳酸菌、免疫、機械的バリアの三重層になっています。タイトジャンクションを繋げて炎症を抑制するのはグルタミン、免疫グロブリンA(IgA)の材料になり免疫を上げるのはグルタミンとビタミンAです。そして腸内細菌叢のバランスを整えるために乳酸菌を使います。炎症が治まったタイミングで、以下のサプリメントを使いました。

  • DaVinciリポソーマルC
  • カンジダアウェイ
  • リフキシマ
  • インターフェーズ

腸内環境を少し酸性にした方がカンジダ治療には効果的なので、抗真菌ハーブと胃酸が配合されているカンジダアウェイを使用しました。SIBO治療に使われるリフキシマを 1日3錠、1ヶ月使いました。それと一緒に、インターフェーズというバイオフィルムをクレンジングする消化酵素も処方しました。消化酵素は、食物の消化をサポートする以外に、腸にこびりついているバイオフィルムを削る作用もあります。バイオフィルムクレンジングには食物繊維の消化酵素が効果的です。これを2ヶ月飲んでもらったところ、4ヶ月後には湿疹、頻尿、腹部膨満はすっかり良くなったので、次にデトックスを行いました。

  • ミヤリ酸
  • Liver Nutrients
  • グルタチオン
  • ビタミンB12(ヒドロキシコバラミン)
  • 葉酸(フォリン酸)
  • クロレラ
  • ケイ素

これらを3ヶ月間続けてもらったところ、8ヶ月後には関節痛、手湿疹がほぼ消失しました。また、認知機能も改善しました。

7. 最後に

日々患者さんを診てきて感じることは、考える力が湧いてくると自分の治療に対する姿勢が変わってくるということです。そうすると、治療の効果が一気に加速していくような感じがあります。患者さんご本人が自分でやらなければいけないことが結構多いからですね。

今回は、アルツハイマーの治療法をテーマにしましたが、アルツハイマーに使えるということは、脳機能全体の治療に使えるということなので、非常に応用性が広いと思います。脳機能の改善に至るまでには、低血糖の改善から炎症、腸、デトックス…と一つずつ積み上げていく必要がありますが、ご自分でプロトコルを組み立てて、サプリメントをうまく活用しながら取り組んでみてください。

水銀デトックスで免疫力を高める

宮澤賢史 · 2021年8月4日 ·

あなたは自分の免疫力に自信がありますか?免疫力を上げるにはまず、免疫力を低下させる原因を知る必要があります。

免疫力を低下させる大きな要因の一つに、水銀の蓄積があります。マグロなどの大型魚を週に何度も食べる方、歯に金属の詰め物がある方は、ご自身が持っている本来の免疫力を発揮できていないかもしれません。そこで行いたいのが、水銀デトックスです。体に溜まった水銀を体外に排泄することにより、免疫力を上げ、ウイルスに打ち勝つ体づくりができるのです。

1. 水銀デトックスは免疫の要

1-1. なぜ水銀デトックスが重要なのか?

抗生物質の一つであるヒドロキシクロロキンは、抗炎症効果があるため、自己免疫疾患の治療に使われていますが、体内に水銀が溜まっていると効きが悪くなります。なぜなら、水銀は細胞分裂の活発な部位に入りやすく、骨髄に蓄積すると多発性硬化症(MS)や白血病などの自己免疫疾患を誘発するからです。花粉症などのアレルギー症状にも水銀が影響しているケースがあります。

亜鉛には下気道感染の予防効果がありますが、亜鉛と水銀が同族元素なので、お互いに拮抗します。したがって、亜鉛の働きをよくするためには、水銀デトックスが欠かせません。

抗生物質のジスロマックは、リボゾームに作用するため、ウイルスへの効果が期待されています。日本では約20年前から最も使われている薬のうちの1つですが、あまりにも使われすぎて、薬剤耐性が問題になっています。水銀は耐性菌を誘導することが知られており、水銀が体内に蓄積しているとますます抗生物質が効きにくい体になってしまいます。

このように、いざというときに備えて薬が効く体にしておくためには、水銀デトックスは不可欠ということがお分かりいただけたかと思います。

1-2. 解毒の3フェーズと水銀の関連性

人間の解毒の仕組みは、3つのフェーズに別れています。フェーズ1は活性化、フェーズ2は抱合、フェーズ3は輸送です。解毒がうまくいっていない人は、フェーズ1、 2、3のどこに原因があるかを探らなければなりません。

フェーズ2は、毒素がグルタチオンやグルクロン酸により抱合されて水溶性になるプロセスです。細胞内に溜まった毒素は脂質に溶けて安定化しているため、細胞外に出るには水溶性の物質と結合する必要があります。

フェーズ3は、細胞内から細胞外に出る工程と、尿や便から排出されるプロセスです。細胞膜にあるMRP1(薬剤耐性タンパク1:Multidrug resistance-associated Protein 1)輸送体は、水銀の他に抗生物質などの薬剤も排出する働きがあります。したがって、MRP1輸送体が活性化している人は、水銀と一緒に抗生物質も排出してしまうので、当然抗生物質の効きは悪くなります。

また、水銀は多剤耐性関連タンパク質遺伝子を誘発することがわかっています。水銀をたくさん蓄積している人は、細胞外に排出しようとする働きが強まり、その過程で抗生物質も排出されてしまうのです。

Toxicol Lett. 2005 Jan 15;155(1):143-50.
Mercury induces multidrug resistance-associated protein gene through p38 mitogen-activated protein kinase
https://doi.org/10.1016/j.toxlet.2004.09.007

他にも、1993年の論文では、アマルガムが水銀耐性細菌や抗生物質耐性細菌の増加を引き起こすことが報告されています。

Antimicrob Agents Chemother. 1993 Apr;37(4):825-34. 
Mercury released from dental “silver” fillings provokes an increase in mercury- and antibiotic-resistant bacteria in oral and intestinal floras of primates
https://doi.org/10.1128/AAC.37.4.825.

このような知見から、患者さんに抗生物質を処方する場合は、必要に応じて水銀のデトックスを行っています。

2. 検査の読み方と治療方針

2-1. 蓄積量・排泄力・対処法を適切に把握する

水銀デトックスをするためには、ご自身の水銀蓄積量と排泄力、そして自分に合った対処法を適切に把握することが大切です。今回は、水銀の排泄量を評価できる毛髪ミネラル検査に加え、重金属の蓄積量や対処法などの情報を与えてくれるオリゴスキャンを紹介します。

症例: 28歳男性 非淋菌性尿道炎と全身倦怠感

主訴
・尿道炎症状、発熱、下痢、食欲低下、倦怠感、手足のしびれ
・疹、手足のさかむけ、
・脱力感、手足の筋肉量低下

この男性は、尿道炎を何度も繰り返して泌尿器科を受診していましたが、全く改善がみられず、しまいには手足の痺れや脱力感、倦怠感が強くなり、宮澤医院に来院されました。舌にびらんがあり、筋力も低下していました。排尿時痛がずっと続いており、関節痛や微熱もあったため、マイコプラズマ感染の疑いがありました。マイコプラズマ・ファーメンタンス(尿道炎からくるマイコプラズマ)の検査をしたところ、陽性を示したので、マイコプラズマ感染による非淋菌性尿道炎と慢性疲労症候群と診断しました。

症状
・舌にびらん、上下肢の筋力低下、排尿時痛、
・頭のもやもや感、関節痛、微熱
・フェリチン152ng/ml, AST26,ALT27,γGTP21
・マイコプラズマによる非淋菌性尿道炎と慢性疲労症候群と診断

マイコプラズマ感染症は、関節リウマチや慢性疲労症候群、線維筋痛症など、さまざまな病気を引き起こすことがわかっており、微熱、発熱、筋肉痛、といった症状がある人には必ずマイコプラズマ検査を行っています。通常のマイコプラズマ検査ではなく、私はエムバイオテック社の抗原抗体検査を用いています。マイコプラズマ・ファーメンタンス検査は、尿道炎の原因菌となるマイコプラズマを検出できます。

最初は抗生物質であるミノマイシンを使って治療を行いましたが、なかなか改善しませんでした。抗生物質に対する耐性があると考え、水銀デトックスのDMPSと、鉛やカドミウムのデトックスに使うEDTAキレーション点滴を5クールにわたって行いました。かなり時間はかかりましたが、今はほとんどの症状が消失しています。慢性疲労症候群の患者さんで、マイコプラズマが陽性の場合、ミノマイシンを処方して1~ 2ヶ月で治る人はたったの1割程度です。先にデトックス治療を行うことにより、抗生物質の効きをよくすることができるのです。

症例の28歳男性の重金属蓄積量をオリゴスキャンで確認してみたところ、鉛は低下していましたが、僅かに増えている重金属もあり、重金属の蓄積量にほとんど変化がありませんでした。蓄積量が変わらないのに、なぜ症状が改善したのでしょうか?

2-2. オリゴスキャンの結果が教えてくれること

オリゴスキャンは、手のひらに光を照射し、体内の重金属の蓄積量を測定する装置です。蓄積量だけではなく、有害金属毒性、酸化ストレスなど、デトックスに関する様々な情報を与えてくれます。症例の男性の場合、重金属の蓄積量だけを見ると変化は少ないのですが、有害重金属のトータル毒性は減少していました。また、酸化ストレスが低下し、抗酸化力が向上していました。この辺りが影響し、症状が軽快したと推察されます。

有害金属毒性の項目に、「硫黄との結合が十分でないため有害金属の代謝不良」とありますが、これはフェーズ3(毒物の輸送)のことを指しています。硫黄と水銀は非常に親和性が高く、摂取した硫黄が水銀と結合して排出されているかという指標がここに現れます。赤から黄色に好転していますが、これが緑になるように硫黄をもう少し摂った方が良いということがわかります。硫黄を豊富に含むアブラナ科の植物や肉を積極的に摂るようにします。

2-3. 酸化ストレスは解毒力を低下させる

フェーズ2(抱合)の過程では、グルタチオンの活性化が重要になります。グルタチオンは抗酸化にも使わてしまうので、酸化ストレスが強い人はグルタチオンがうまく働きません。したがって、オリゴスキャンの酸化ストレスマーカーと、血液検査の肝臓機能マーカーを確認し、酸化ストレスが強い場合はそちらの対処をします。肝臓機能を確認する理由は、フェーズ1とフェーズ 2が主に肝臓で行われるからです。慢性の肝臓疲労や肝炎がある場合は、フェーズ2の力が落ちます。症例の男性の場合、フェリチンが152もありました。フェリチンが100以上ある場合は炎症と捉えます。抗炎症のアプローチ、もしくは肝臓のケアを行った方が良いでしょう。毛髪検査も行ったところ、ミネラル輸送障害に当てはまりました。まだ水銀の害が残っていることを示します。

以上のことから今後の治療では、ミネラルのバランスが整うように、抗炎症のアプローチと肝臓ケア、そしてもう少し水銀のデトックスが必要だと考えています。症状自体はだいぶ回復したので、メンテナンスをしながらゆっくりとしたペースで行っていきます。

2-4. 毛髪ミネラル検査とは

毛髪ミネラル検査とは、毛髪中のミネラルを測定し、重金属の排泄力を評価する検査です。髪は1ヶ月に1cm伸びるので、毛髪の根元から3cmの部分を測定すると、過去3ヶ月の平均の排泄量がわかります。毛髪は、細胞外液のミネラルの経時変化を表す記録紙と言えます。

2-5. 耐容量を超えなければ大丈夫?

水銀は、下垂体からのACTH分泌や副腎からのコルチゾール分泌をブロックします。したがって、体内に水銀が溜まっている人はだいたい副腎疲労になります。

症例: 45歳女性、副腎疲労

この症例の女性は、歯にアマルガムが9本もありましたが、毛髪ミネラル検査を行ったところ、水銀は1.1ppmしか検出されませんでした。

厚生労働省の国立水俣病総合研究センターのWEBサイトを見ると、毛髪中の水銀量が重症度を全て表しているという考えで、耐容許容量5ppmを超えなければ問題ないとされています。耐容許容量は十分な安全性を考慮して決められた値で、これを超えない限り影響はないと書かれています。症例の方に当てはめると、全く問題ないとみなされてしまいますが、果たしてそうでしょうか?

私が強く言いたいのは、「検出されない=問題ない」は間違いということです。むしろ、水銀の曝露量が多いにも関わらず、毛髪検査で検出されないケースの方が重症なのです。

2-6. 自閉症児の毛髪分析

ここで、自閉症児の毛髪分析結果の報告を見てみましょう。自閉症児の母親は、対照児の母親に比べて、明らかに水銀曝露歴が高かったにも関わらず、子供の毛髪からの排泄パターンは少なかったそうです。毛髪の水銀レベルが少ないほど、自閉症の重症度が高かったという結果も出ています。

Int J Toxicol. 2003 Jul-Aug;22(4):277-85.
Reduced levels of mercury in first baby haircuts of autistic children.
https://doi.org/10.1080/10915810305120.

  • 94人の自閉症児と、年齢、性別をマッチさせた45人の対照児の毛髪分析を行った
  • 自閉症児の母親は、対照児の母親に比べて免疫グロブリン注射や歯科アマルガムなど顕著に高レベルの水銀曝露歴があったにもかかわらず、自閉症児の毛髪からの排泄パターンは対照児に比べて明らかに少なかった
  • 対照児の毛髪水銀レベルは、母親のアマルガムの個数と魚の摂取量、そして幼少期のワクチン接種と優位に相関していたが、自閉症児には相関が見られなかった
  • 自閉症児は、症状の重症度が高いほど毛髪の水銀レベルが少なかった

毛髪は水銀の排泄器官です。したがって、水銀の排泄障害が重度であるほど、症状も重篤になると言えます。

2-7. 毛髪ミネラル検査からわかること

毛髪ミネラルの結果は、有害金属の排泄力を表しています。アマルガムの詰め物がたくさんある人でも、毛髪検査の水銀レベルが高い人は比較的軽症です。曝露量と排泄量が一致しているからです。

もう1つ、毛髪ミネラル検査で得られる重要な情報が、ミネラルバランスです。ミネラルバランスを見れば、水銀の排泄能力をある程度推測できます。水銀が体内に溜まっていないから排泄量が少ないのか、それともたくさん溜まってるのに排泄できていないのか、一見しただけでは区別がつきません。その場合はミネラルバランスを確認します。検査結果で、左右のミネラルバランスが整っている場合、水銀の排泄量=水銀の蓄積量とみなしてよいでしょう。一方、ミネラルバランスが崩れている場合は、重金属排泄不良を起こしており、水銀が蓄積していると考えます。

2-8. 毛髪レベルとオリゴスキャンを比較する

水銀が体内にないのか、排出できていないのかを知る上でより確実な方法は、毛髪レベルとオリゴスキャンを比較することです。比較することで、どのぐらい排泄できていないのか、どのぐらい蓄積しているのかがはっきりわかります。オリゴスキャンと毛髪ミネラル検査を同時に行うことで、的確なデトックスの治療方針を立てられるようになるのです。

症例: 48歳女性、慢性疲労

  • 原発性アルドステロン症にて左副腎摘出
  • 摘出後から疲労感増強、歩行不可能
  • 3ヶ月経過も改善が見られないため、副腎機能低下を疑い来院
  • 血中ACTH 27.4pg/mL, コルチゾール 11.3μg/dL(基準範囲内)
  • フェリチン 17.5 ng/mL, AST 25, ALT 17, γ-GTP 11
  • 唾液中コルチゾールが顕著に低下
  • 歯科アマルガムあり

この女性は、原発性アルドステロン症という副腎の癌を発症し、左副腎を摘出していました。この疾患は、もう片方の副腎が萎縮するため、オペ後に副腎疲労の症状が強く出るケースが多くみられます。副腎摘出後から疲労感が増し、歩行も困難になりました。3ヶ月しても改善が見られず、副腎疲労を疑い来院されました。血中のACTHとコルチゾールは基準値内でしたが、唾液中コルチゾールが顕著に低下していました。この方も歯にアマルガムがありました。治療は、腸と副腎ケア、デトックスを行い、歯科受診を勧めました。

治療前後の毛髪ミネラル検査の結果です。治療前はミネラルバランスが左に寄っていましたが、治療後は左右のバランスがとれています。この結果は、デトックスで水銀をある程度出してあげると、ミネラル輸送が回復することを示しています。ここまで回復すれば、あとは自然デトックス(サウナや運動など)で水銀を排泄できるようになります。この方は治療に4年かかりましたが、歩行が可能になり、仕事復帰し、通常の生活に戻ることができました。

ミネラル輸送が回復した時のオリゴスキャンと毛髪ミネラル検査を比較すると、アルミやカドミウムは、蓄積量が多く、排出量は少なくなっています。ヒ素の蓄積は標準レベルですが、排泄量はかなり多くなっています。

このように、ミネラル輸送障害がなければ、蓄積量(オリゴスキャン)と排泄量(毛髪ミネラル検査)は反比例する傾向があります。今後の治療方針としては、オリゴスキャンでフェーズ3がNGとなっているため、食事やα-リポ酸などのサプリメントで硫黄を補給します。また、抗酸化力が黄色なので、抗酸化アプローチも行います。フェリチンは17.5で、強い炎症がみられないため、ビタミンCを足す程度で良いと考えています。

毛髪検査の下にあるのは有機酸検査の結果です。有機酸検査では、グルタチオンレベルを確認することができます。58番のピログルタミン酸はグルタチオンが不足すると数値が上がります。この女性の場合は値が低いため、グルタチオンは足りていると判断します。2-ヒドロキシ酪酸は、グルタチオンが作られる経路(硫酸経路)の生成物です。この数値が上がっていれば、体内で解毒が活性化されていることを意味します。

2-9. 自己免疫疾患と水銀デトックス

症例: 51歳女性、線維筋痛症

  • 5年半にわたり、線維筋痛症治療を継続
  • 副腎疲労の症状に当てはまることが多数あり来院
  • 歯科アマルガム多数
  • 時々熱が出る。CRP 0.1 ng/dL
  • フェリチン51.4 mg/mL, AST 20, ALT 17, γ-GTP 11

この女性は、5年半にわたって線維筋痛症の治療を継続しており、副腎疲労の疑いもあって来院されました。歯科アマルガムも多数確認できました。時々微熱が出るということなので、マイコプラズマ検査を行ったところ陽性でした。したがって、副腎ケア、ミノマイシン、デトックスを行いました。

抗生物質が効かない人や効きにくい人には、多くのケースでデトックス治療を行っています。『Overcoming Arthritis』(David Brownstein著)には、リウマチに対してミノマイシンを投与したところ改善がみられたと書かれています。関節リウマチもマイコプラズマ感染が原因であることを示しています。

関節リウマチ患者に対して、48週間にわたる二重盲試験でミノサイクリン200mgを投与した群(109名)は、しない群(110名)に比べて優位に関節の腫張(54%, 39%)、関節の圧痛(56%, 41%)の改善がみられた。

Ann Intern Med. 1995 Jan 15;122(2):147-8.
Minocycline treatment of rheumatoid arthritis
https://doi.org/10.7326/0003-4819-122-2-199501150-00012

この女性のデトックスで注意すべきことが、硫黄に対する過敏反応があるということでした。通常のデトックス治療で使用する、DMSA、モリブデン、グルタチオン、タウリンが使えなかったため、毒物に拮抗するミネラルを多めに摂ってもらい、自然デトックスから始めました。幸いなことに、ミネラル輸送障害は見られず、重金属の排泄は良好でした。

DMSA、モリブデン、グルタチオン、タウリンに過剰反応あり

オリゴスキャンの結果から抗酸化力が低いことがわかったため、ビタミンCを摂取してもらいました。フェーズ3も赤色ですが、硫黄系のサプリメントが使えないため、一旦保留にしています。良くなったり悪くなったりを繰り返していましたが、甲状腺機能を上げると一気に症状が軽快しました。

症例: 38歳男性、慢性疲労

  • 性行為後にインフルエンザ症状が出現
  • その後、尿道炎を繰り返し、抗生剤治療で軽快するも再発。関節炎や皮膚湿疹も出現したため当院を受診
  • 湿疹、関節痛、咽頭痛、口内違和感あり
  • 口腔内アマルガム多数
  • フェリチン 71ng/mL, AST 48, ALT 54, γ-GTP 34

この男性は、性行為後にインフルエンザ症状が出現し、尿道炎を繰り返していました。典型的なマイコプラズマ感染症です。肝機能を示す数値がかなり高い状態でした。

アマルガムが多数あるにも関わらず、水銀レベルが低いため、水銀の排泄障害があると考えられました。DMPSとEDTAのキレーションを行ったところ、多くの有害金属の排出が確認できました。キレーションに効果があると確信し、DMPSとEDTAのキレーション治療を3クール行いました。その結果、ミネラルバランスは概ね整いましたが、アルミニウムの蓄積は持続していました。

この方は、3年目あたりから急に良くなって、今は慢性疲労の症状はほとんど消失しました。ただ、問題は肝機能の数値が上がってしまうことです。肝機能の数値が上がるということは、肝臓の解毒力が低下していることを意味します。オリゴスキャンの結果では、フェーズ3とフェーズ2がNGになっています。化学物質過敏症の症状が出るようになったため、ウルソやミルクシツルを使って肝臓ケアを行っています。

症例: 71歳男性、掌蹠膿疱症

5年間、掌蹠膿疱症の緩解、増悪を繰り返している方です。関節リウマチと掌蹠膿疱症の症状があり、ミネラルバランスも大きく崩れていたため、デトックスを行いました。水銀レベルがかなり高かったのですが、チオラとウラリットによるキレーションを徹底的に行ったところ、ある程度ミネラルバランスが整うようになりました。現在は、関節痛も掌蹠膿疱症もほぼ改善しています。

オリゴスキャンの結果を見ると、有害金属の代謝不良、抗酸化力の低下がみられました。関節リウマチがあったため、CRPがなかなか下がりませんでした。肝臓の数値が少し高いため、グルタチオンやビタミンCを用いて、フェーズ2, 3へのアプローチを集中的に行っています。

3. まとめ

解毒には、フェーズ1(活性化), 2(抱合), 3(輸送)の3つのステップがあります。フェーズ1にはチトクロームP450が関わっており、SNPを調べることにより評価はできますが、治療の介入が難しい部分です。一方、フェーズ2と3は治療による改善が可能です。

解毒の要素オリゴスキャン毛髪ミネラルその他の評価法
フェーズ1
(活性化)
チトクロームP450のSNP
フェーズ2
(抱合)
◯
(抗酸化)
肝機能、フェリチン、有機酸検査
フェーズ3
(輸送)
◯
(硫黄結合)
蓄積量◯
排泄力◯
水銀の影響◯

フェーズ2はオリゴスキャンで確認できます。その他にも、肝機能やフェリチン値、有機酸検査のグルタチオンレベルを調べることで評価できます。フェーズ3は、オリゴスキャンの硫黄結合の項目で評価することができます。毛髪ミネラル検査では、重金属の排泄力と水銀の影響、ミネラル輸送障害の有無を評価することができます。

重症度と重金属の蓄積量は必ずしも相関しません。複数の検査と合わせて総合的に体内を理解する必要性があります。毛髪ミネラル検査、オリゴスキャン、血液検査、これら3つの検査結果を総合的に判断することで、治療方針が立てやすくなるでしょう。

  • 症状の重症度と重金属蓄積量は必ずしも相関しない 
  • 他の検査と合わせて総合的に体内を理解する必要がある 
  • オリゴスキャンは重金属蓄積量に加えて、 デトックスのフェーズ2、3を評価できる 
  • 毛髪ミネラル検査は重金属の排泄力、水銀によるミネラル輸送障害を評価できる
  • オリゴスキャンを読み解く鍵は重金属蓄積量以外にある 

根本原因に対する個別化栄養療法のすすめ

宮澤賢史 · 2021年7月26日 ·

栄養療法を学ぶ目的は人それぞれですが、薬に頼る治療方法に限界を感じてこのサイトにたどり着いた方もたくさんいらっしゃると思います。では、そもそも栄養療法の何が優れているのでしょうか?

この内容を一言で表すと、「根本原因に対する個別化栄養療法」と言えます。様々な検査や病態から個々人の根本原因を見つけ出し、一つ一つに対処していく治療方法です。様々な検査手法が確立し遺伝子解析が進む中、個別化栄養療法は今後ますます重要視されるようになるでしょう。

1. 個別化栄養療法とは何か

1-1. 効かないサプリメントは論外

2019年に国民生活センターが各社のサプリメントを一斉にテストしたところ、4割以上が規定時間内に溶けないことが明らかとなり、メディアで話題になりました。溶けないということは、体内をスルーして便で排出され、全く効果がないということです。実践講座ではサプリメントが効かない理由を探っていきますが、このような粗悪なサプリメントは論外です。本来「効く」はずのサプリメントがなぜ自分の体には「効かない」のか、それを考えるのが本講座の目的です。

1-2. 栄養療法との出会い

私が栄養療法を始めたのは、サプリメント会社が設立したクリニックの院長に就任したことがきっかけでした。当初は血液検査などをもとに、ミトコンドリア機能と低血糖症へのアプローチをメインに行っていました。

例えば、GOT(AST)とGPT(ALT)の関係を紐解くと、ミトコンドリア機能の状態がわかります。

  1. GOT≒GPT: 正常
  2. GOT>GPT(差が2以上): ビタミンB群代謝不足
  3. GOT>40: 心不全、筋肉障害
  4. GOT<GPT: 脂肪肝、ウイルス性肝炎
  5. GOT↑・GPT↑:ビタミンB群消費↑
    ⇨ ②+④の状態の時、一見①に見えることもある
    ⇨ GOT、GPTは↑でも↓でも補給を考える

低血糖の診断には5時間糖負荷試験が用いられます。当時、500人以上の患者さんに糖負荷試験を行いましたが、ほとんどの人が3~5時間で低血糖を起こしていました。この症例はうつ病の患者さんで、30分後に146mg/dLまで上がった後、240分後には52mg/dLまで下がっています。

低血糖症は血糖値の急激な上昇のリバウンドで起こることから、当時の患者さんには糖質制限を勧めました。しかしながら、ことごとく失敗に終わってしまいました。低血糖の陰には副腎疲労が隠れていることが多く、糖質制限によりかえって症状を悪化させてしまっていたのです。

1-3. リオルダンアプローチから学ぶこと

そんな時、研修で訪れたのが米国リオルダンクリニックでした。建物がドームの集合体になっており、ドーム1つ1つが研究所やクリニックになっています。そこで教わったのが、創設者であるヒュー・リオルダン博士が提唱した「リオルダンアプローチ」でした。

リオルダンアプローチ 7つの要素
☑️ Staff/Co-learner Relationships
☑️ Identify The Causes
☑️ Characterize Biochemical Individuality
☑️ Care for the Whole Person
☑️ Food As Medicine
☑️ Cultivate Healthy Reserve
☑️ Healing Power of Nature

1つ目に「Staff/Co-learner Relationships」とあります。リオルダン博士は、「患者」と呼ばずに「Co-learner(共に学ぶ人)」という表現を使っていました。クリニックにはオーガニックレストランやセミナー施設が併設されており、畑で採れたオーガニック野菜を使ったランチを食べながら、ランチョンセミナーも開催できます。スタッフとCo-learnerとの関係性を築くために、様々な工夫が施されていました。

2つ目にある「Identify The Causes」ですが、頭文字を取って病気や病態の原因を次のようにまとめることができます。

  • Infection(感染):ウイルス、細菌、真菌の増殖
  • Digestion(消化):消化不良、胃酸分泌不良、消化酵素分泌不全
  • Emotion(感情):非常に問題で、疾患を悪化させる
  • Nutrients(栄養):栄養不良、吸収不良、代謝的なブロック
  • Toxins(毒):鉛、水銀などの重金属、残留農薬、除草剤など
  • Inflammation(炎症):「○○炎」を引き起こす慢性的な引き金、食習慣
  • Foods(食事):臓器のダメージ、食物依存症を引き起こす
  • You(あなた自身):あなたの決断、思い込み、思考の方向性
  • Thyroid dysfunction(甲状腺機能障害):特に検査でわからない甲状腺機能異常
  • Hypoglycemia(低血糖症):炭水化物、糖質、インスリン、副腎と関わる
  • Endocrine disorders(ホルモン異常):加齢、機能不全を引き起こす
  • Candida overgrowth(カンジダ過剰増殖):過剰な抗生剤、ステロイド、砂糖、ストレス
  • Adrenal Fatigue(副腎疲労):低血糖、病気や人生への負担などが原因
  • Under activity(運動不足):自分の能力を十分に鍛えないこと
  • Stress or spiritual crisis(ストレス、精神的な危機):不必要な活動でいっぱいになってしまうこと
  • Environmental(環境):満たされない、機能しない、むしろ害になっている
  • Structural(構造):心と体の不一致

これはまさに、いま行っている栄養療法そのものです。この学びをもとに、腸内環境や解毒、炎症、甲状腺ホルモンに関する検査を導入しました。また、この時初めて副腎疲労の存在を知り、クリニックに持ち帰って治療に取り入れたところ、とてもいい効果が得られました。そんな経緯で副腎疲労に特化した外来を始めました。

1-4. メチレーションと脳機能

その他に影響を受けたのが、メチレーションの権威であるベン・リンチ博士とウィリアム・ウォルシュ博士との出会いです。2016年にはウィリアム・ウォルシュ博士に来て頂き、メチレーションのセミナーを開催しました。メチレーションは脳機能に影響します。脳機能のアンバランスは個別化分類できて、それに応じた栄養素を投与すればよいということが理解でき、治療に取り入れました。

1-5. 根本原因は共通している

宮澤医院に来院する患者さんは、リウマチや橋本病、うつ病、集中力の低下、慢性疲労など、疾患名は様々です。しかし、治療方法としては、腸、炎症、重金属・カビ毒、副腎疲労・低血糖、ミトコンドリア、脳機能、これら6つの根本原因があるかどうかを確認し、それを順番に対処していくと改善していくのです。

疾患名腸内環境炎症重金属
カビ毒
副腎疲労
低血糖
ミトコンドリア脳機能
リウマチ◯◯◯
慢性疲労◯◯◯
橋本病◯◯
集中力低下◯◯◯◯◯
うつ◯◯

1-6. 根本治療ピラミッド

私の経験をもとに作ったのが根本治療ピラミッドです。個別化栄養療法は、6つの根本原因の有無を確認し、それに応じて治療を進めていきます。このピラミッドが私のひとりよがりなものではないという証拠に、他の統合医療学会も同じような治療方針を掲げています。

例えば、米国の統合医療学会で今1番勢いのある機能性医療学会、Functional Medicineのトップページには、「機能医学は、各個人の病気の根本原因に対処することにより、病気が発生する方法と理由を判断し、健康を回復します」と書かれています。認定医になるためには、基本的なコースの他に、エネルギー(ミトコンドリア)、消化管、ホルモン、解毒などのコースが用意されています。

他にも、統合医療のWebセミナーを開催しているIntegrative Medicine Academyのオンラインプログラムは、副腎、甲状腺、血液化学を含む臨床検査、有機酸検査と代謝評価、栄養とサプリメントなどがカバーされており、解毒、ミトコンドリア機能、重金属、カビ毒などについても学ぶことができます。

また、先日参加した個別化ライフスタイル医療学会では、網膜疾患の根本原因についての発表があり、次のような項目が挙げられていました。

網膜疾患の根本原因
炎症
酸化ストレス
インスリンシグナル経路の調整不全
オートファジーの不活性化
免疫不全
ミトコンドリア機能低下
タンパク質異化亢進
視細胞、網膜組織の壊死、機能障害

免疫不全は、感染、炎症、毒素による免疫の誤作動によるものです。インスリンシグナル経路の調整不全も炎症から来ています。

アルツハイマー病も同じことが言えます。『アルツハイマー病 真実と終焉』(デール・プレデセン著)には、アルツハイマーは単一型の疾患ではなく、大きく3つの型に分類される病気であると書かれています。その3つの型が、炎症、栄養・ホルモン不足、毒素です。

このように、病名や病態は様々でも、根本原因は共通しているのです。もう一つ重要なことは、根本原因は遺伝や環境的影響によって疾患の要因となりやすい箇所にあるということです。

2. 遺伝子情報の重要性

2-1. 栄養療法と遺伝子解析

今後の栄養療法は遺伝子情報を元にしたアプローチが主流になるでしょう。特に、遺伝子解析先進国のアメリカではすごい勢いで研究が進んでいます。私が23andMeで遺伝子検査を受けてから5年以上経っていますが、得られる情報がどんどんアップデートされています。

2-2. 遺伝子解析の課題

万能に見える遺伝子解析にも大きな課題があります。それは、膨大な情報を網羅的に解析して判断する必要があることです。グルタミン→グルタミン酸→GABAの代謝を例に挙げると、グルタミン酸がGABAに代謝されにくい人は、グルタミン酸脱水素酵素(GAD)のSNP(スニップ:DNAの塩基配列における1塩基の違い)を調べれば根本原因を突き止めることができるかもしれません。しかし、GADにはGAD1とGAD2があり、そのSNPは少なくともGAD1で10個、GAD2で12個存在します。22個全てのSNPを網羅的に解析するのはとても複雑な作業です。

アメリカの多くのベンチャー企業が遺伝子解析に参入し、複雑な計算からリスクを算出しサービスとして提供しています。私の23andMeの生データを別のサービスで解析したところ、アルコールとニコチンはD-、つまり酒とタバコに溺れやすいという体質ということがわかりました。他にも様々な因子を解析してくれます。

こうしたサービスはインターネットとの相性がいいので、破竹の勢いで伸びています。まだ完全には「あなたはこういう体質です」と言えるところまで来ていませんが、そう遠くない将来にはより精度の高い解析が可能になるでしょう。

2-3. MTHFRは稀なケース

今お話ししたように、一般的にはSNPは多くの箇所の網羅的な解析が必要ですが、MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元型酵素)は、たった2つの遺伝子変異で酵素活性が決まる極めて稀な酵素です。1箇所にSNPがあると70%、2箇所にSNPがあると20%まで活性が落ちてしまいます。結果がクリアに出るので、MTHFRの遺伝子解析はとてもポピュラーなものになりました。このように、自己評価できる遺伝子のSNP情報は大いに活用できると思います。

2-4. デトックスプロファイル

これはGenovaDiagnostics社のデトックスプロファイルです。デトックスに関連する特定の酵素は、遺伝子の影響を強く受けるため、遺伝子検査がよく使われます。

解毒のフェーズは、フェーズ1(活性化)とフェーズ2(抱合)に分かれています。フェーズ1はCYP(シップ)という酵素が関係しており、CPY1A2にSNPがある場合はカフェインに弱いことを示します。コーヒーを飲むと心臓がドキドキしてしまう人ですね。この検査をすれば、カフェインやタバコ、特定の薬などの影響が全てわかります。

上の結果はグルタチオンの抱合に関わるグルタチオンSトランスフェラーゼのSNPなどを見ています。

3. なぜ薬ではなく栄養が重要なのか

3-1. 遺伝子型から表現型へ

2019年9月のサイエンス誌で、『Genotype to Phenotype(遺伝子型から表現型へ)』というトピックが特集されました。

「表現型」とは見た目や行動特性のことで、遺伝子をもとにタンパク質がどう発現したかによって結果が異なってきます。特に「形態」は遺伝子の影響を強く受けますが、同一の遺伝子型でさえも表現型は微妙に異なります。一卵性双生児はそっくりですが、親が見ればすぐに判別できますよね。また、一卵性双生児の片方が統合失調症になった場合、もう片方が発症する確率は50%しかありません。つまり、遺伝子型が全てではないということです。では、遺伝子型を理想的な表現型にするためにはどうすれば良いのでしょうか。

3-2. 遺伝的弱点は栄養によって補完できる

こうした研究はもう何十年も前から続いており、その間に様々なことがわかってきました。「人は栄養に支配されており、特に重要なのは食事である」ということも明らかになっています。食べ物が表現型の決定に大きな影響を及ぼしているということです。遺伝子発現を制御・伝達するシステムとその学術分野をエピジェネティクスと言います。そして、最大のエピジェネティクス要因は栄養です。だからこそ、薬ではなく個別化栄養療法が重要なのです。

☑️ 人は栄養に支配されている
☑️ 栄養の必要性は遺伝子によって決まる
☑️ 食物は表現型を決める栄養の代表的存在
Vol 365, Issue 6460, 27 September 2019
https://doi.org/10.1126/science.aax3710

例を挙げると、女王蜂と働き蜂は全く同じ遺伝子型を持っていますが、大きさも寿命も異なります。女王蜂はローヤルゼリー食べて寿命が3年。働き蜂は花粉を食べて寿命が1ヶ月です。食べ物で表現型が大きく変わるということをよく表しています。

これも有名な実験です。同じ親から生まれた同一の遺伝子を持つ糖尿病のモデルマウスの実験で、通常の食事を与えると、肥満遺伝子が発現して糖尿病になります。一方、メチル化を促す食事を与えると、メチレーションが働いて遺伝子の発現を抑え、肥満遺伝子が発現しないのです。

引用:A Tale of Two Mice July 2008

これらの研究結果は、遺伝的な弱点は栄養によって補完できるということを示しています。

4. 個別化栄養療法のすすめ

4-1. 検査の使い分け

脳機能に関しては、メチレーションの遺伝子検査がある程度役立ちます。しかし、メチレーション検査が網羅的ではないため、遺伝子検査の結果とその時の脳の状態が必ずしも一致しないケースも多く見られます。

遺伝子の影響が強い箇所は、遺伝子型と根本原因がリンクしやすいので、遺伝子検査で判断しても良いでしょう。そうでない場合、つまり、環境要因が強かったり、多くの遺伝子が影響する場合は、症状や他の検査結果から判断することになります。このように、検査を選択しながら自分の根本原因がどこにあるかを絞って治療を進めてほしいと思います。

4-2. 個別化栄養療法がうまくいっていない方へ

個別化栄養療法がうまくいっていない方は、「Identify The Causes」の色がついているところをもう一度確認してください。

  • Infection(感染):ウイルス、細菌、真菌の増殖
  • Digestion(消化):消化不良、胃酸分泌不良、消化酵素分泌不全
  • Emotion(感情):非常に問題で、疾患を悪化させる
  • Nutrients(栄養):栄養不良、吸収不良、代謝的なブロック
  • Toxins(毒):鉛、水銀などの重金属、残留農薬、除草剤など
  • Inflammation(炎症):「○○炎」を引き起こす慢性的な引き金、食習慣
  • Foods(食事):臓器のダメージ、食物依存症を引き起こす
  • You(あなた自身):あなたの決断、思い込み、思考の方向性
  • Thyroid dysfunction(甲状腺機能障害):特に検査でわからない甲状腺機能異常
  • Hypoglycemia(低血糖症):炭水化物、糖質、インスリン、副腎と関わる
  • Endocrine disorders(ホルモン異常):加齢、機能不全を引き起こす
  • Candida overgrowth(カンジダ過剰増殖):過剰な抗生剤、ステロイド、砂糖、ストレス
  • Adrenal Fatigue(副腎疲労):低血糖、病気や人生への負担などが原因
  • Under activity(運動不足):自分の能力を十分に鍛えないこと
  • Stress or spiritual crisis(ストレス、精神的な危機):不必要な活動でいっぱいになってしまうこと
  • Environmental(環境):満たされない、機能しない、むしろ害になっている
  • Structural(構造):心と体の不一致

私が初めてこのリストを目にした時は、何のことだかさっぱりわからなかったのですが、長年栄養療法に携わり、今はこの意味がよくわかります。心と体の不一致、思い込み、偏った考えや思考性、トラウマ、こうした問題を抱えている人は、それが治療の足かせになっている可能性があります。

4-3. 個別化栄養療法チェック

個別化栄養療法について、どこまで理解が深まっているか確認してみましょう。

Q1. あなたの根本原因は何ですか?
Q2. 腸内環境をどうやって判断していますか?
Q3. 重金属や毒素は溜まっていますか?
Q4. 体内の隠れた炎症が起きそうな場所をチェックしていますか?
Q5. 足りない栄養素は?
Q6. メチレーション状態は?
Q7. 副腎、甲状腺、その他のホルモンバランスは正常ですか?
(答えられれば1点、答えられなければ0点)

6-7点:適切な検査と問診を組み合わせることで根本原因は見つけられます。
3-6点:把握できていない根本原因をもう一度考えてみてください
2点以下:根拠もなく言われるがままにサプリを摂っていませんか?

4-4. 最低限受けるべき検査

根本原因に対する個別化アプローチのために最低限受けて欲しい検査は、「血液検査」「有機酸検査」「毛髪検査」この3つです。もう一つ付け加えるなら、便中カルプロテクチン検査です。これらの結果から根本原因を割り出すことが可能です。もし症状があれば、耳鼻科受診や歯科受診も検討してみてください。

4-5. 個別化医療市場の展望

メタジェニックス社によれば、世界の個別化医療市場は、2025年には倍近くになると予測されています。特に大きな部分を占めるのは、個別に診断する能力です。様々な検査手法が確立し、遺伝子解析によるリスク計算がより確実なものになれば、個別化栄養療法は今以上に重要視されてメジャーになってくるでしょう。

5. 最後に

臨床分子栄養医学研究会は、根本原因に対する個別化栄養療法を推奨しています。根本原因が見つけられていない人のために、実践講座を開催しています。個別化診療が主流になる新しい時代に向けて、ともに学んでいきましょう。

分子栄養学のロードマップ

宮澤賢史 · 2021年7月15日 ·

ロードマップというのは、実践講座で紹介している分子栄養学の勉強の順番を示した道案内の役割をする地図です。膨大な分子栄養学の世界を一段ずつ確実に上がっていけるために作りました。もうすでに分子栄養学マスターの方は、自分の抜けている場所のチェックリストとして使ってください。

ステップ1:基本的な考え方を身につける

まずは体の仕組みを知ることから始めてください。これを理解しないことには体の不調に対処できないからです。

例えば、エネルギーが生まれる仕組みを知らずに慢性疲労に対処することはできないし、炎症を起こす仕組みと抑える仕組み、両方を知らずして慢性炎症を治すことは難しいでしょう。

ビタミンとミネラルは似ているようで全く異なる性質を持っています。それを知って実際にサプリメントを試すところから始めましょう。

モジュール1 分子栄養学の基本的な考え方

どのような状況で、どのくらいの量のサプリを摂ったら良いか理解していますか?栄養素は摂る量により効果が異なる事を理解してください
必要な栄養の量が人によって異なることを知っていますか?なぜある人にとっての栄養になるものが他の人にとって毒になるのか、その仕組みを知りましょう
なぜ栄養が不足するのか、理解できていますか?根本原因の定義を知り、どのようなものが当てはまるかを考えてみましょう
ある人にとってその栄養素が必要かどうか疾患の場所から推定できますか?栄養素の局在について理解してください

モジュール2 細胞について理解する

人がエネルギーを生み出す仕組みと必要な栄養素を理解していますか?ミトコンドリアの構造とエネルギー産生の仕組みを知りましょう
情報のやり取り、炎症を起こしたり静めたりする機序を知っていますか?細胞膜とそれを構成する栄養素、その代謝を押さえてください
栄養、食事をはじめとした環境で作られるタンパク質が変わってくる仕組みをご存知ですか?体内でタンパク質が作られる仕組みとそれにメチル化が及ぼす影響をマスターしましょう
無駄なタンパク質を作らない方法、ミトコンドリアを若返らせる方法をマスターしていますか?小胞体とミトコンドリアの関係を学び、小胞体ストレスを軽減させる方法を習得してください

モジュール3 ビタミン、ミネラル、アミノ酸の使い方

水溶性ビタミンの性質を踏まえた効果的な摂り方を実践していますか?ビタミンCを効果的な方法で摂ってみましょう
脂溶性ビタミンの使い方をマスターしていますか?ビタミンAを摂ってドライスキンの改善を体験します
ミネラルがどのような効果をもち、どのように人体に貢献するかご存知ですか?マグネシウム・亜鉛の効果的な摂取方法について学び、実際に使ってみましょう
アミノ酸をうまく使う方法をマスターしていますか?グルタミンやBCAAの体内での働きを知り、実際に摂ってみましょう

第17期実践講座の実施概要はこちら

ステップ2:サプリと食事の基本をマスターする

次に目指すのはフードマスターです。

ビタミンやミネラルは三大栄養素の調整を行っていますが、食事の量や質が悪ければ、効果は期待できません。血糖値が乱高下しない食べ方や、脳のパフォーマンスを最大限にあげるための脂質の種類の選び方と調理方法、腸の炎症をとり疲れ知らずになる食事メニューなど、誰もが目指すべき食事内容について学んでください。症例検討会参加までにここまではマスターしておかれると話がスムーズになります。

モジュール4 三大栄養素の代謝をマスターする

食事を摂っていない時に血糖値が保たれる仕組みを理解していますか?解糖系・糖新生について理解しましょう
血糖値が乱高下しない糖質の種類や摂り方を知っていますか?補食の摂り方(タイミング、量、質)について学んでください
体内でタンパク質が作られる機序を理解していますか?タンパク質の作られ方について復習しましょう
体内のタンパク質の種類が頭に入っていますか?(機能性タンパク質と構造タンパク質)特に機能性タンパク質の種類と働きについて一通り押さえてください。
摂るべき油と避けるべき油の区別がつきますか?油の構造式から性質が読み取れるようになりましょう。
コレステロールが体内でどのような働きをしているか知っていますか?コレステロールの生成、コレステロールを原料にして作られるものを押さえます。
中性脂肪とリン脂質の違い、働きを理解していますか?中性脂肪がエネルギーに使われる機序、リン脂質の細胞膜における代謝を学んでください

モジュール5食事療法の基本をマスターする

引き算の栄養学を体験しましたか?カゼイン・グルテン・カフェイン・アルコールフリー生活を2週間やってみましょう
カンジタを減らす食事をマスターしていますか?カンジダ除菌中に摂るべきものと控えるものを知りましょう
グルテンとは何か?どのような影響を体に与えるかご存知ですか?グルテンの性質、交差反応について学びましょう
食物アレルギーと過敏症、不耐症の違いを理解していますか?それぞれの対処法についても理解してください
食事への依存はないですか?食事制限がうまくいかない場合は考えるべきです。

ステップ3:個体差を見極め対処する Personalize

ある人にとっての薬は他の人にとって毒になり得ますが、サプリや食事にも同じことが言えます。ここでは自分にあったサプリや食事を検査データから見分ける方法を学びます。結果を元にして必要なサプリメントと食事を細かく選んでいきます。

まずは足りない栄養素の補給法、そして次に体が受けているダメージをデータから読み取り、その対策をしていきます。血液検査だけでもわかることはたくさんあります。

モジュール6 足りない栄養素を知って補充する

自分に足りない栄養を把握できていますか?栄養素別のアンケートにチェックをして、どんな栄養が足りないのかあたりをつけましょう
自分に足りない栄養を検査したことがありますか?既定の血液検査を受けましょう
検査結果で足りないビタミン・ミネラルをチェックしてくださいVB3,B6,B12,Mg,Zn,Fe,K,Dなどのチェックを行いましょう
糖質代謝は問題なかったですか?低血糖のチェックにはALT,TGが特に有用です。
エネルギー状態はどうでしたか?ミトコンドリアが動いていない場合、代償的に解糖系が亢進します。

モジュール7体のダメージを知って対策する

体に起こっているダメージを把握していますか?活性酸素、炎症、インスリン抵抗性、タンパク異化の状態とその対応
炎症マーカーは上昇していますか?対策としてはCRPだけでなく、フェリチンや血小板、ガンマグロブリンなどもチェックしてください
インスリン抵抗性はありましたか?たとえ痩せていてもインスリン抵抗性は存在します。もれなくチェックしてください。
タンパク異化はどうですか?その程度は?データチェックと体感から読み取り対策しましょう
自律神経の緊張度はどうですか?自覚のない緊張にも注意しましょう。低血糖と合わせて理解してください。

ステップ4:根本原因にアプローチ1 Rootcause

問診と検査結果から自分にどのような根本原因が潜んでいるかを知り、それをどのような順番で対処するか計画を立てて実行します。

ここで重要なのはアプローチの順番です。人がどのように病気になるかを理解することで、アプローチの方法が見えてきます。まずは副腎、神経、ミトコンドリアを同時にケアすることで気分、体調を上げましょう。

モジュール8 病気になる順番、直す順番を理解する

頭の中に自分の治療モデルが描かれていますか?モデルの雛形に沿って自分のを作りましょう
多くの人が病気になる流れを掴んでいますか?全体像を学びましょう(生活習慣、腸内環境、ホルモンバランス、解毒)
多くの人に有効な治療の順番を知っていますか?自分の順番を組み上げましょう

モジュール9 副腎疲労の原因と対策

低血糖症状はないですか?リブレと合わせて低血糖の有無を確認し、あれば補食から始めましょう
自分のストレスを把握していますか?ストレス問診と唾液、血液検査結果、から自分のストレスタイプを決定し、対処法を考えます
睡眠は良好ですか?炎症と低血糖、ストレス状態を確認します
副腎ホルモンは低下していませんか?コルチゾール検査で日内リズムと覚醒反応を確認し、それに応じたサプリケアを始めましょう

モジュール10 神経伝達物質とミトコンドリアケア

気分の落ち込み、不安などの神経症状がありますか?検査と症状からセロトニンレベルを推定し、対策しましょう。(程度により病院受診が必要)
やる気の低下、もしくはイライラが強いなど症状がありますか?検査と症状からドーパミンレベルを推定し、対策しましょう
疲れやすさがありますか?ミトコンドリアの状況を有機酸検査から把握し、それに応じた対策を取りましょう

ステップ5:根本原因にアプローチ2Rootcause

副腎やミトコンドリアケア、抗炎症アプローチを終え、やっと腸内環境をきちんと治療する準備が整いました。いよいよ最終的な根本原因にアプローチしていきます。

感染症や毒素などの重大な根本原因は腸や肝臓などに存在しています。ここでもプロトコールに沿って順番に進めていきます。

モジュール11 腸内環境の改善

自分の腸内環境を知る方法を知っていますか?腸内環境検査をオーダーし、結果を解析しましょう
腸内環境は良好でしたか?結果に応じてサプリと食事内容で対処しましょう
消化不良はありませんか?採血検査と自覚症状から確認の上、サプリケアをしましょう
リーキーガット(腸漏れ)は起きていませんか?リーキーガットの程度に応じてケアを行います
腸にカンジダや悪性菌が増殖していませんか?便検査や有機酸検査で確認し必要に応じて対処しましょう。

モジュール12 解毒、ファスティング

検査で重金属が蓄積していましたか?毛髪検査で体内毒素の排泄力を推測します
問診で体内にカビが蓄積していそうですか?体内のカビ毒蓄積を確認して対処します
検査で毒素が溜まっていそうですか?セルフデトックスをしましょう
一通りデトックスが終わりましたか?デトックス体質に変換していきましょう
ファスティングをしたことがありますか?ファスティングにトライしてみましょう

根本原因とデトックス

宮澤賢史 · 2021年7月13日 ·

免疫を上げるには、睡眠や食事などのライフスタイル、つまり「環境」を改善することが大切といわれていますが、デトックスも同じで、どんなデトックスサプリを使うかよりも、どのようなデトックス環境を整えるかが重要となります。

本日は、何がどれくらい溜まっているかをどうやって知るのかという検査のことと、どうやって解毒すべきかというWhatとHowについてお話しします。

1. 何を解毒するべきなのか

1-1. 脳に蓄積し障害を起こすもの

根本原因とデトックスのピラミッド図をご覧頂くと分かるように、デトックスは様々な要因の影響を受けています。

では、一体何を解毒すべきなのでしょうか?基本的には、主に以下のものになります。

①脳に蓄積し、障害を引き起こしやすいもの

・脂溶性である水銀、カビ毒は脳に蓄積しやすい(『アルツハイマー病 真実と終焉』デール・ブレデセン著より)

・アマルガムが自閉症、発達障害慢性疲労、繊維筋痛症、化学物質過敏症、精神疾患の原因となる(『アマルガム・イルネス』 アンドリュー・カトラー著より)

上記の本にあるように、水銀とカビ毒は脂溶性のため脳に蓄積しやすく、BBB(血液関門)を通過しやすいものが中に入り込んで脳に溜まってしまいます。

②ミトコンドリアを障害するもの

フッ素、水銀、ヒ素、アンチモン、アルミニウムは、TCAサイクルの働きを止め、ミトコンドリア機能を阻害してしまいます。TCAサイクルだけではなく、右上の図のように電子伝達系にも影響を与えます。特にNADHが関わっている複合体一番の細胞膜にあるSH基とS基の間に水銀が入り込んで、タンパク質の構造を変化させてしまいます。

これらを調べるには、有機酸検査を受けることをお勧めします。有機酸検査の結果から、29番のクエン酸と28番のアコニット酸を比べてみます。クエン酸がアコニット酸に変わるのには、アコニターゼという酵素が必要ですが、このアコニターゼが水銀やヒ素に阻害されてしまいます。アコニット酸よりイソクエン酸が低くなっている場合には、アコニターゼが阻害されていると考えられ、水銀のデトックスが必要だと推測できます。

水銀は硫黄との親和性が非常に高く、硫黄と硫黄の間にあるSS結合の間に水銀が入りこみ、タンパク質の構造全体を狂わせてしまいます。

逆にそれを利用して、硫黄を含んだ食事やサプリメントを使って水銀と結合させて解毒することが可能になります。

下記は、ハル・ハギンス博士の『本当に怖い歯の詰め物』という書籍からの抜粋になります。

  • 85.0% 説明のつかない疲労感
  • 73.3% 説明のつかないいらつき
  • 72.0% 長時間のうつ
  • 67.3% 四肢のしびれ
  • 64.5% 夜間頻尿
  • 62.6% 四肢の冷感(温かい日でも)
  • 60.6% 食後の腹部膨満感
  • 58.0% 記憶障害(物事が思い出せない)
  • 55.5% 突然怒りが込み上げてくる
  • 54.6% 便秘

水銀中毒の症状にはイライラや、うつ、しびれがありますが、一番顕著な症状は疲労感で、これはミトコンドリア機能の低下からきていると考えられます。その原因は他にもあり、尿中のポルフィリン検査からヘムの合成過程が水銀によって妨害されるということがわかります。

ヘモグロビンが合成される過程で、いくつかのポルフィリン経路を経由します。その経路を水銀や鉛、カドミウムが阻害します。水銀が蓄積すると、途中で反応が止まりコプロポルフィリンやプレコプロポルフィリンが増えてしまいます。水銀はヘムの合成を阻害し、貧血を引き起こします。

また、1つの分子につき酸素を4つ結合する分子構造を持つヘモグロビンは、鉄と酸素の親和性よりも鉄と水銀の親和性の方が強いので、一旦そこに水銀がくっつくとなかなか離れません。酸素は肺でくっついて、末梢の臓器で離れることによって循環しますが、ヘモグロビンに水銀がくっついてしまうと使い物にならなくなってしまいます。

赤血球の寿命は120日なので、少なくとも120日間は水銀が結合した赤血球ということになります。実際にこのような状態であってもヘモグロビン自体が少なくなるわけではないので、見た目上は貧血ではなく、むしろ酸素飽和度が低下するために体はもう少し酸素が必要だと判断して造血を行います。その結果、ヘモグロビンの数値が高くなるというのが水銀中毒の人の一般的なデータとなります。このためヘモグロビンの数値より、注目すべきは酸素飽和度となります。ハル・ハギンス博士のデータによると、アマルガム除去をすると酸素飽和度は上昇します。

2. 何を解毒するべきなのか?

1-2. ミトコンドリアを障害するもの

水銀はこのように様々な悪さをして、貧血を起こしたりミトコンドリア機能も障害しますが、実はヒ素もメチル水銀と同様に血液脳関門を通過します。ミトコンドリアがヒ素毒性の重要なターゲットです。ミトコンドリア豊富な臓器である脳は、ミトコンドリア機能に大きく依存していて、ミトコンドリア異常=脳機能低下ということになります。

下記は、ミトコンドリア機能がヒ素の暴露によって低下しているという毛髪検査のレビューです。

ヒ素や水銀が一緒に多く出る場合は、海産物の摂取量が多いと推測できます。脳に蓄積して障害を起こすものは水銀、ヒ素、カビ毒で、ミトコンドリア機能を障害するものは、水銀と重金属ではヒ素です。揮発性毒物のトックス検査をすると、ミトコンドリアのDNAがどれくらい障害されているかを見ることができます。

ミトコンドリアDNAの障害の指標となるのは、チグリルグリシンというトックス検査の一番最後の項目です。もしその数値が上がっていたら、積極的なデトックスをしたほうがいいだろうということになります。日本人の毛髪水銀濃度は、世界中でも飛び抜けて高いですが、その理由は魚が汚染されているからで、世界の水銀の排出量のうち47.4%が東アジアに集中しています。これは火力発電所が沢山あるためで、魚の水銀汚染の主な起源というのは、石炭火力発電所から大気中に排泄された水銀です。

1-3. 内分泌撹乱物質・PMS・乳がん

次にPMSや乳がんを引き起こす内分泌撹乱物質を取り上げます。PMS症候群は、エストロゲンとプロゲステロンのアンバランスにより起こります。内分泌撹乱物質は、一般に環境ホルモンと言われていますが、受容体で結合してホルモンのふりをし、その働きを邪魔して、内分泌の一連の働きを乱す物資のことをいいます。

PCBのようにすでに製造中止になったものもありますが、今話題になってるのはビスフェノールAというプラスチックの原料や、ゴミの焼却の時に排出されるダイオキシン、水銀、鉛、カドミウムです。水銀の論文によると、甲状腺、副腎、卵巣、精巣機能など様々な内分泌臓器に影響を及ぼします。

アンドリュー・カトラー先生の『アマルガムイルネス』によると、甲状腺も副腎も性ホルモンも様々なところの受容体をブロックしたり、ホルモンの分泌を障害したりしますが、甲状腺の場合は、TSHの分泌、甲状腺の受容体、T 4から T 3への変換も全て阻害してしまいます。つまり甲状腺機能の低下があったら、水銀の害を考えた方が良いでしょう。

女性ホルモンには悪玉と善玉と言われるものがありますが、善玉が2-ヒドロキシエストロン(2-OHE1)で、悪玉が16-ヒドロキシエストロン(16a-OHE1)です。外因性の環境ホルモンや、ホルモン補充療法で使われるホルモンの原料は馬の尿ですが、これはバイオアイデンティカルではないので、人間のホルモンと違い代謝がゆっくりです。女性ホルモンの薬はすぐに代謝されないように作られているので、エストロゲンもプロゲストロンも体内に長く留まります。

ピルを飲むと99%の確率で排卵させない分体内に長く留まるので、発癌リスクも高まります。それに比べて天然のホルモンは、半減期が短いバイオアイデンティカルのため代謝されやすいです。天然のホルモンは効きを良くするために、経口ではなく経皮でゆっくり補充します。善玉のエストロゲンを増やすためには、DIM、インドール-3-酢酸、アマニ油、ブロッコリを摂ると良いです。

腸内環境への影響もあり、水銀は消化酵素のDPPⅣを阻害するため、グルテン・カゼインの分解が悪くなり、カンジダの悪性度を増します。水銀が蓄積しているとカンジダが増殖形態になりやすいので、私はカンジダを除菌した後は、ほぼ全員の人に水銀のデトックスを勧めています。

水銀の種類には、金属水銀、有機水銀と無機水銀の3つがあります。

金属水銀はアマルガムの他に、アフリカなどの採掘所では金属水銀の塊を使って金をろ過します。これらの金属水銀は蒸発して蒸気水銀になるため、採掘所で働く子供が水銀中毒になる問題を抱えています。

水銀の種類

左の図は、カルガリー大学の実験でアマルガムを擦って、水銀蒸気を出させる実験です。

このような金属水銀は簡単な刺激によって蒸発します。蒸気水銀になると吸入して肺から入り、脳に行ったところで酸化して蓄積し、脳から出られなくなってしまいます。水銀の中で害になるのは、この蒸発する金属水銀と、有機水銀です。メチル水銀はシステインと結合すると腸管から吸収され、 blood-brain barrier, BBB(血液脳関門)を通過して脳に届きます。

1-4. アマルガムを知らない人のために

  • 水銀を多く(50%)含む歯科材料。
  • 加工が容易で丈夫なため、20世紀を中心に歯の詰め物として使われてきた。
  • 水銀の害が知られ、今ではあまり使われなくなったが、2016年4月まで日本政府公認の治療材料。

アマルガムは水銀を多く含む歯科材料です。加工が容易で丈夫なので、20世紀を中心に歯の詰め物として使われてきました。殺菌作用が強く長持ちするため、水銀の害を除けば歯科材料としては最適です。『乳歯のアマルガム修復』という50年くらい前の本によると、当時は乳幼児にも積極的にアマルガムが使われていました。

今は保険適用外ですが、2016年までは日本政府公認の歯科材料として使われていました。とても便利なため、いまだに自費診療で使用している歯科医師もいます。日本人の場合は、水銀の源の大半は、魚か歯だと言われています。この二つの暴露源がないかをチェックし、もしあればそれを避けることが大切になります。

アマルガムは無機水銀のため、BBB(血液脳関門)を通過せず、脂肪に移行しないので安全であるというのがアメリカの歯科学会の主張ですが、実際には無機水銀は口腔内や腸内でメチル化するので、BBBを通過します。アマルガムは蒸発して肺から吸入し、目や脳、神経、肺、そして血中で酸化したものが口の中から胃腸を通過後にメチル化して胎盤、内分泌、細胞膜にも届きます。

1-5. 腸への影響

上記はハル・ハギンス先生に頂いたポスターで、どの水銀が体のどこに影響してるかという図です。左から金属水銀、イオン化している無機水銀、メチル水銀ですが、この金属水銀とか無機水銀に比べて、メチル水銀の人は頭がぼやっとしていて、ブレインフォグを起こしてます。手と足に痺れがあることからみても、BBBを通過してCentral nervous system(中枢神経系)、免疫系、生殖器系にも影響を及ぼしていることがわかります。

水銀蒸気は血液脳関門を通過し、無機水銀は通過しないので安全と言われていますが、メチル化して全てのバリアを通過し、胎盤を通過するので、母親が水銀に暴露していると子供の毛髪にも水銀が検出されます。そして内分泌かく乱も引き起こすので、どれだけ排泄できているかということがすごく大事になってきます。

1-6. アマルガムの水銀分布

上記は歯にアマルガムがある人の体内の水銀分布図です。

Tooth alveolar bone(歯槽骨)と、Gum mucosa(歯肉)の水銀濃度が高いのは当然ですが、胃の濃度が非常に高いことから、水銀が体内にも影響を与えていることが分かります。そして便中の濃度や、腎臓と肝臓という排泄機関の濃度も高いです。胃腸の濃度が高いことから、腸内細菌に影響を及ぼしていることも想像に難くないです。

アマルガムや魚の水銀はもともとメチル水銀です。

メチル水銀というのは、システインという必須アミノ酸と結合すると、メチオニンと同じく腸管から100%吸収されます。メチル水銀はデトックスで胆汁排泄されますが、胆汁から排出されたメチル水銀はメチオニンと間違えられて再度吸収されるので腸管循環を繰り返してしまいます。つまりデトックスは腸管循環を少なくして、便中にいかにメチル水銀を排出させるかということがポイントになります。

ハル・ハギンス先生のセミナーでは、アマルガムが開発されてから ALS(筋萎縮性側索硬化症)の発症率が異常に上昇しているというデータや、1832年にアマルガムがフランスで発明されてからしばらくして白血病の発症率も増えてきたというお話しがありました。

Multiple sclerosis(多発性硬化症)の発症率は、特に毒性が高いアマルガムが発明された1976年以降に、急に発症率が上がっているという話もありました。水銀は骨髄の中に入り込みやすいため、骨髄の免疫を壊して自己免疫疾患や白血病が発症しやすくなるのだろうとのことでした。

2. 溜まっているものを知る方法

体内に何がどのくらい溜まっているのかを、どのように調べるかということをお話しします。毛髪で水銀レベルを見るというのは、恐らくイラクで1971年に起こった水銀中毒事故のデータをベースにしていると思います。

  • 農薬のメチル水銀を使った小麦で作ったパン
  • 6,500人が水銀中毒
  • 血液、毛髪中水銀レベルデータが多数残っている
  • 毛髪中水銀レベルは血中の250倍

血中の水銀レベルは半減期が短く、暴露して3日もすると測定感度以下になってしまいますが、毛髪中の水銀のレベルは血中レベルの250倍ありました。

内閣府の食品安全委員会の資料によれば、例のイラクの事故を分析すると、母親の毛髪中の水銀モードが上がれば上がるほど、子供への発達の影響があるということがわかります。

母親の毛髪中の水銀モードが10〜20ppmを超えると胎児に影響があったため、それをもとに国立水俣病の胎児に影響を与える母親の最小値が11ppmとみなされました。このイラクの暴露事故から計算して、耐容摂取量、つまりこれを超えない限り影響はないと考えられる摂取量が5ppmに設定されたのです。

2-1. 45歳副腎疲労の女性

唾液中コルチゾールからは完全に副腎疲労と思われる45才女性の毛髪検査をしたら、1.1 ppmしか水銀が検出されませんでした。厚労省の設定した耐容摂取量5ppmの1/5だから全く問題はないだろうと考えがちですが、実際には歯の中に9本のアマルガムがあったので、水銀の暴露量は非常に多いと言えます。

水銀にこれだけ暴露しているのにかかわらず、毛髪から1.1ppmしか出ないということは、水銀の排泄の障害があると考えられます。水俣病のように大量の暴露をしたら、さすがに毛髪に出るとは思いますが、中には排出できない人がいるということが問題なのです。

実際に上記左側の34歳の慢性疲労の人は、アマルガムが歯の中にあって水銀が10ppm出ているので、明らかに水銀中毒です。ただ逆の見方をすれば、この人は水銀の排泄能力が保たれているということです。毛髪中の水銀濃度というのは、有機水銀メチル水銀の排泄能力とイコールだと考えていいと思います。実際、この方はアマルガムを除去したら元気になりました。それに対して右側の45歳の方は、アマルガムが何本も入っているにもかかわらず、水銀濃度が1.1ppmしかないということは、排泄能力が低下しているため、アマルガムを除去しても疲れが取れませんでした。

宮澤医院の150人の副腎疲労の患者さんを、アンドラー・カトラー博士が開発したカウンティングルールに基づいて調べたら、56%の人はミネラルの輸送障害がありました。

           軽症      中等症        重症
ミネラル輸送障害   なし      なし         あり
水銀レベル      低い      高い         低い
備考         問題なし   排泄機能は正常    排泄機能
                  症状ない人もいる   に異常がある
副腎疲労と水銀

副腎疲労の人は水銀を排泄する力が弱いため、ミトコンドリア機能が低下していることが多いです。残り半分の人は水銀レベルがとても高く、水銀の害が全くないと思われるような人は1%しかいなかったです。調べてみたら皆ことごとく水銀だったので、疲れている人はやっぱり水銀レベルを見た方がいいだろうと私は思っています。

2-2. 自閉症児の毛髪分析

自閉症の子供に関しては、水銀のレベルは低ければ低いほど重症です。

  • 94人の自閉症児と年齢、性別をマッチさせた45人の対照児の毛髪分析を行った。
  • 自閉症群の母親は対照群の母親に比べて免疫グロブリン注射や歯科アマルガムなどによって顕著に高レベルの水銀暴露歴があったにもかかわらず、自閉症群の毛髪からの排泄パターンは対照群に比べて明らかに減少していた。
  • 自閉症群では、毛髪の水銀レベルは症状の重症度が高いほど少なかった。
  • 対照群の毛髪水銀レベルは顕著に母親のアマルガムの個数と魚の摂取量、そして小児期のワクチン接種と相関していた。
  • この相関は自閉症群には見られなかった。
  • 自閉症の子供の毛髪からの水銀排泄はそうでない子供に比べて明らかに少なかった
  • Int J Toxicol. 2003 Jul-Aug;22(4):277-85. Reduced levels of mercury in first baby haircuts of autistic children.

なぜならば毛髪検査というのは蓄積量ではなくて排泄量をみるものだからです。母親の歯にアマルガムがあったり、高レベルの水銀の暴露歴があるにも関わらず、自閉症の子供からは毛髪中の水銀が出ませんでした。お子さんの場合は母親の暴露歴も聞いてください。メチル水銀は胎盤を通過します。

デトックスのために何か特別な治療をやらなければいけないのかというと、必ずしもそういうわけではありません。人間はもともと水銀を排泄する力があります。水銀の生物学的半減期、つまり体の中にある水銀が半分になるまでの期間は、50〜60日です。そのため正常な排泄する力を持っている人でしたら、魚を食べなければ150日あれば水銀は体から排泄されます。

文献検体    暴露物   半減期(日)
Miettinen et al.(1971)水銀/血液メチル水銀49.8
l-Shahristani and Shihab (1974)水銀/血液穀物中メチル水銀(Total) 72 (35–120),
(90%) 65 (35–100)
Kershaw et al.(1980)水銀/血液魚 (20 µg Hg/kg bw)52
Sherlock et al.(1984)水銀/血液水銀濃縮された魚、3か月50
Smith et al.(1994)メチル水銀/血液メチル水銀44.8 (35.1–52.8)
Albert et al.(2010)水銀/血液海産物65.4
Yaginuma-Sakurai et al.(2012)水銀/血液・毛髪魚(3.4 µg/kg/week)血液; 94 (58–155),
毛髪; 102 (60–192)
水銀の半減期には個人差がある

水銀を出す力には個人差があります。

平均は70日ぐらいですが、40日の人もいるし、100日の人もいます。100日以上かかる人はものすごくスローメタボライザーで代謝が遅いので、暴露量が微量でも体内に溜まってしまいます。そのような人は、デトックス体質になるかデトックス治療をしないと水銀の有害性が出てくる可能性があります。そこを見極めるために検査するわけです。

2-3. 人の解毒のしくみ

人の解毒は3段階になっています。

Phase1・2・3となっていて、Phase1は「活性化」、Phase2は「抱合」と言って、グルタチオン、グルクロン酸、硫酸などによる抱き合わせによって、細胞の外に出る準備をします。MRP1輸送隊という受容体を通って細胞の中から外に出て行きます。

その先のPhase3は「輸送」です。輸送の際、無機水銀は水溶性なので腎臓を通って尿へ、そして有機水銀の場合は、脂溶性のため肝臓を通って胆汁から便へ排泄されることになります。

何がどれぐらい溜まっていて、どれぐらいの排泄能力があるかを見ることが大切で、溜まっている量を見るのはオリゴスキャン、排泄能力を見るのは毛髪検査や尿検査が良いです。

腎臓からの排泄量は尿検査で直接分かりますが、胆汁からの便排泄の量というのは、直接見にくいのでメチル水銀を排泄している毛髪検査で代用します。毛髪はシステインを含んでいるため、メチル水銀がシステインと結合して肝臓の胆汁排泄を代表する代わりになるのが毛髪検査と言われています。

つまりオリゴスキャンでは蓄積量と対処法。そして毛髪ミネラル検査では排泄量と「カウンティングルール」で主に把握することができます。

蓄積量と対処法                       排泄量

水銀が元々体内にないのか、排泄できずに低いのか、それを見分けるのが「カウンティングルール」です。水銀レベルからではなく、ミネラルのバランスから判断します。

 ミネラル輸送障害なし                         ミネラル輸送障害あり

ミネラルバランスが左の表のようではなく、真ん中や右側のように、左側や右側に偏りすぎてる場合、ミネラルの輸送障害が考えられます。ミネラルの輸送障害があるということは、水銀が溜まっているということを示唆します。これがカウンティングルールと言って、アンドリュー・カトラー先生の本に書いてあることですが、今のところエビデンスはほとんどありません。

ただ、他のアメリカの代替療法のセミナーでも、このカウンティングルールを使っていて、毛髪検査だけで水銀の蓄積量を完全に推定するのは不確定なので、オリゴスキャンで俯瞰するのが有力な方法じゃないかと考えています。実際に治療をすると、このミネラルバランスが戻ってくる人が多いので、治療経過としても使えると思います。先ほどの48歳の慢性疲労の女性のように、ミネラルのバランスが崩れている場合、水銀をある程度出すと症状も良くなりミネラルバランスが改善します。

水銀レベルを0にすることはできないので、どこまでデトックスを続けるかについては、ミネラルのバランスを取り戻すまでを治療期間にして、その後は自然デトックス、例えばサウナや運動に切り替えるようにしてもらっています。できればオリゴスキャンをしてご自分の毛髪検査と比べてみるといいと思います。排泄障害がない場合、排泄量と蓄積量は反比例していることが多いです。

2-4. 48歳女性 慢性疲労

この方の場合はミネラルの輸送障害がないので、例えばヒ素が多く出ている場合、ヒ素の溜まりは少ないといえます。オリゴスキャンの良い点は、Phase2とPhase3が働いているかを見る指標にもなってくれることです。酸化ストレスがあるかどうかは、Phase2がうまく働いているかどうかを見る指標となります。Phase2のセンターピンは細胞内グルタチオン濃度です。細胞内のグルタチオン濃度を保つためには、抗酸化力がとても重要です。有機酸検査のグルタチオン濃度がきちんと働いているかどうかをみるためには58番、59番に注目します。水銀は硫黄と結合することによって、体外に排出されやすくなるので、オリゴスキャンで硫黄との結合性をみてPhase3の輸送の評価もできます。

グルタチオン濃度を詳しく見たのが上記です。グルタチオンの指標物質の58番ピログルタミン酸は、グルタチオンの欠乏で上昇します。59番の2-ヒドロキシ酪酸は、このメチレーション回路が働いてグルタチオンが出来る時に副産物としてできるので、これが上昇していたら解毒回路が働いているということが分かります。つまり解毒で体内が忙しい時には、59番が上昇するということです。

この2つの上昇でグルタチオン不足だと急いでグルタチオンを補充するのではなく、まずは原因追及をして、なぜグルタチオンが足りないのか、なぜ解毒で忙しくなっているのかを突き止めることが大切です。そうしないといくらサプリがあっても足りなくなります。特に炎症があると、グルタチオンは全部使われてしまいます。

Phase1から3は、オリゴスキャン、毛髪ミネラル検査、血液検査などを見て把握してください。自分のどこが詰まっているのかを解明して、そこをターゲットにアプローチしていくのが正しいデトックス法です。

5. どうやって解毒していくか〜人の解毒の方法を知る方法

どうやって解毒していくかというと、本来の人間の解毒システムを知ってそれを強化してあげる方法がベストだと思います。

  • 暴露源を除去する
  • 毛髪検査をして特にヒ素・カドミウムが高い人は、水と米を変える
  • カビ毒がある人は、空気清浄機を買う
  • 引っ越しする
  • マグロをサンマにする
  • アマルガムを除去する

胎児に影響を及ぼさない母体中の毛髪水銀濃度は11ppmですが、そこから計算するとどれぐらい水銀を摂取しても大丈夫かという耐容週間摂取量は、2μg/kg/週になります。

普通に魚の摂取をしていると2μgを優に超えてしまいます。食品安全委員会は、マグロの代わりにサンマを食べるとこれを超えずに済むと提唱しています。食物連鎖の上にある魚ほど、水銀が沢山溜まっているので、マグロをサンマに変えるのは意味のあることだと思います。

5-1. キレーション・プロファイル

 Phase1は、シトクロムP450による酸化のことで、つまり活性化のことをいいます。酸化して活性化させて安定化している脂肪の中の毒物を出す準備をすることです。

第1相:シトクロムP450による酸化      第2相:グルタチオン等による抱合

CYP1A1  排ガス
CYP1B1  エストロゲン水酸化
CYP2C19 PPI,抗痙攣薬
CYP2D6  SSRI,抗うつ薬など
CPY3A4  処方薬の50%、ステロイド

Phase2がグルタチオンによる抱合ですが、まず最初に準備することは、暴露物をなくすことなので、マグロをサンマに変えたり、アマルガムを外すことになります。アマルガムは防御しないで外すと、脱力、頭痛、めまい、耳鳴りなどの症状が出ることがあります。特に水銀を排泄する力がない人、カウンティングルールでミネラルの輸送障害がある人は、アマルガムを外す時は気をつけたほうが良いです。アマルガムを削ると大量の水銀が一気に蒸発するため、急性水銀中毒になるからです。刺激なしの時の100倍の水銀の蒸気が脳に行ってしまうため、特にアマルガムが大きい場合はきちんと防御をして除去してくれる所に相談をしましょう。

キレーション療法とは「蟹のはさみ」という意味で、現在色々なクリニックで取り入られている治療法です。金属イオンをはさみこんで結合して、有害物質を体外に排出しやすくする方法です。キレートミネラルというサプリメントが体内に入り込みやすいのは、ミネラルではなくアミノ酸の扱いになるからです。アミノ酸の扱いになると、体の中に入るのも、出すのも容易になります。だからミネラルはキレートとして入れたり、キレートして出したりするのです。

キレートによく使われる薬が、EDTAです。EDTAは、このような形の構造をしているアミノ酸で、中に金属を挟み込むことができます。

EDTAのサプリメントは、経口摂取しても腸管からの吸収が悪いため、点滴で取り込むのが一番です。その代わりEDTAを飲めば、腸管の金属は除去することができます。慢性の副鼻腔炎の患者に使用している経鼻スプレーにはEDTAが入っていますが、これは金属を除去するのと、バイオフィルムを除去するという働きがあるからです。ただし体内には吸収されないので鼻腔や腸管啌などに使い、体内に入れたい場合は点滴をします。

その他、有名なのは DMSAやチオラですが、これの問題点は水銀を吸着することができないことです。水銀以外のカドミウムやアルミニウムは沢山入りますが、水銀をターゲットとして出すためにはSH基やヒドロキシル基を持った薬剤やサプリメントを使います。

DMSAは5年ぐらい前までi herbでも買えたましたが、日本では輸入できなくなりました。現在DMSAは薬剤扱いで、SH基は2つ結合しています。日本で買えるチオラは鉛中毒の薬で、SH基が1つです。これでも水銀も鉛も排出されると思いますが、一部のキレーションドクターの中ではSH基が2つないと水銀との親和性が低くなって途中で離してしまうので、DMSAだけを使う先生もいます。どちらにしても重要なのは血中濃度を保つことで、血中濃度が下がると水銀をキャッチしても途中で離してしまうので、体の中で他の場所に再分布してしまいます。

血中濃度をうまく保てるように、僕の場合はチオラを使うなら3時間おきに5回、1日5回摂ってもらうようにしています。僕の医院では行っていませんが、カトラー先生は、5時間おきに睡眠中も子供を起こしてチオラを摂取させる強行的なプログラムを行なっています。それほど血中濃度を保つことが大切ということになります。こういった薬を組み合わせて、挟み込んでくっつけて外に出す治療をキレーション治療と言いますが、この治療の問題点は、Phase3にしかアプローチできないことです。

5-2. 42才男性 脱力、乾癬

42歳男性

  • 医師
  • ストレスが強い
  • 倦怠感
  • 風邪をひきやすい(2ヶ月に1度)
  • 乾癬(左腕、左大腿部)
  • 不眠

倦怠感、風邪をひきやすく、アマルガムがある方を、 先ほどのEDTAという薬を点滴してキレーション治療をしたところ、鉛は出ましたが水銀はあまり出ませんでした。

Ca-EDTAによる誘発テスト

カルシウム入りEDTAとDMSAの点滴を入れたら、沢山出るようになってかなり頭が冴えるようになりました。このように細胞の外に水銀を出せる人の場合は良くなります。

僕の場合マグロを食べているせいか、毛髪中の水銀濃度がものすごく高いです。ミネラル輸送障害はなかったので、点滴治療で良くなりました。

5-3. 歯科医師 33歳男性

33歳の歯科医師の男性で、疲れやすく、痺れや痒みがある方にはやはり歯にアマルガムがあったのですが、食物アレルギーがあってデトックスしてもあまり上手くいきませんでした。

  • 疲れやすい、手にわずかなしびれ、かゆみ、背部痛、記憶力低下
  • 便の状態が日々変わる(腹部に症状は無い)
  • 現病歴 数年前から疲れやすさと記憶力が低下している感じがでて、
  •  最近わずかに指先がしびれる感じがある。
  • 身長178cm 体重68kg BMI:21.5
  • 筋肉量 標準 体脂肪量 標準
  • 歯科アマルガムあり

ミネラル輸送障害があって、細胞の中から外に出す力がないためPhase3のキレーション治療だけ行ってもうまくいかなかったと考えられます。

卵と乳製品に重度の食物アレルギー
水銀は体内でミネラルの輸送を阻害する

毛髪検査や尿検査でうまく排泄できている人は、必要に応じてキレーション治療を行えば良くなると思いますが、暴露量と排泄量が一致していない人は 、Phase1・2・3の評価をして、この機能を上げてあげるほうが良いだろうということです。

6. 解毒の3Phase

6-1. フェーズ1 活性化(脂肪内で安定化している毒物を刺激する)

上記は僕の遺伝子検査の結果ですが、物事を活性化する酵素というのは半分遺伝子によって決まります。僕の場合はCYP2D6が++になっているので、ここは少し弱いところです。CYP1A2も+/−になっていますが、これはカフェインの解毒に関係しています。もし遺伝子検査をすぐにしたいという方は、ジェネシスと検索してみてください。確か1万5千円くらいだったと思いますけども、唾液の採取で検査できます。結果が分かるのに1ヶ月近くかかりますが、非常に結果が分かりやすいです。

僕の場合は飲酒量が多い、ワインはやや好き、喫煙量は標準というふうに出ています。この飲酒量の有無は、アセトアルデヒド脱水素酵素から推測しているようです。カフェインの消費量は少ない傾向になっていますが、それは僕の場合はCYP1、CYPA2があまり良くないからだと思います。

つまりこの第一相のシトクロムP450対策は何かと言うと、事前に検査をして自分の排泄しづらいものは食べない、入れないということになります。CYPA1Aが排ガス、CYP2D6がSSRIとか抗うつになるので、僕の場合はこの薬は飲まないようにした方が良さそうです。

該当するもの暴露を避けるという意味では、第2相も同じです。エストロゲンの代謝はCOMTです。このCOMTの補酵素がビタミンB6です。COMTがある人はエストロゲンの暴露を避けると良いと思います。

また、グルタチオンは「抱合」といって、毒物と抱き合わせますが、そのための酵素がグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)です。スニップ(一塩基多型)があったら解毒しづらいということです。同じようにグルタチオンは活性酸素があると働かないので、 SODスーパーオキサイドディスムターゼという酸化ストレスを中和してくれるところにスニップがあるかどうかを見ると良いと思います。

ジェノバ社のデトックスプロファイルは値段が高いのであまりお勧めしませんが、一生に一度と思って検査しておいても良いかもしれません。何が溜まりやすいか分かるので、該当するものを下げられます。

6-2. フェーズ2 抱合水溶性物質と抱き合わせて排出の準備をする

Phas1を処置したら、次はPhase2(抱合)です。Phase2のポイントは、グルタチオンです。

グルタチオンというのは、アミノ酸(グルタミン酸、システイン、グリシン)からなるトリペプチドで、抗酸化と抱合の二つの役割をしています。どちらの役割が高いかと言うと抗酸化です。細胞内濃度が極めて高く、細胞内の酸化還元環境を維持しているトップはグルタチオンです。グルタチオン濃度をいかに保つかということが、全てと言ってもいいと思います。

細胞中の還元型と酸化型グルタチオンの比率が、細胞毒性の評価の指標です。還元型と酸化型グルタチオンが混在していますが、98%以上が還元型として存在しているので、このバランスが狂っているとまずいです。酸化されてもすぐにナイアシンによって還元されます。Phase2のセンターピンは細胞内グルタチオン濃度を適切に保つことです。センターピンというのはボーリングの一番前のピンのことで、そこを倒せば全部残りの9本も倒れます。

グルタチオンが活性酸素H2O2を組み合わせると、酸化されて水ができます。

上記の下の式が酸化型グルタチオンですが、これはナイアシンによってまた元のグルタチオンに戻してくれます。この抗酸化の働きをするためには、グルタチオンペルオキシダーゼという反応を触媒するものが必要で、ペルオキシダーゼの活性中心が有名なセレンです。

先ほどのオリゴスキャンにPhase2の抗酸化力とありましたが、抗酸化力が何故ミネラルの測定で分かるかというと、グルタチオンペルオキシダーゼの活性中心のセレンを測定しているからです。セレン、マンガン、亜鉛などが、高酸化酵素の活性化中心として必要で、ミネラルは抗酸化力の維持に関わっています。

メチレーション検査

細胞内グルタチオン濃度を測定するのは難しいので、血漿中のグルタチオン濃度を調べようというのがこのメチレーション検査です。メチレーション回路が回ると、体内で適切にグルタチオンが産生されます。このメチレーション検査では、グルタチオンの中でも酸化型と還元型のグルタチオン濃度を測ることができます。

上記はHDRI社のメチレーション検査です。この方の場合、酸化型(oxisidised)グルタチオンは基準範囲内ですが、還元型(reduced)グルタチオン濃度がちょっと低めなので、抗酸化能力が少し低くなっていて、恐らくメチレーション回路がうまく回ってないからだろうというのが分かります。

6-3. グルクロン酸抱合

グルタチオン以外にもグルクロン酸抱合や硫酸抱合などがあり、グルクロン酸はOHが沢山あるため水溶性だということが分かります。

  • 種々の薬物、ビリルビン,ステロイドホルモンなどは生体内に滞留すると発ガン・神経障害 ・内分泌障害など重篤な疾病をひき起こす。
  • 一般に、これらの難水溶性物質 は肝臓にあるUDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT) によって、グルクロン酸が付加され水溶性のグルクロナイドに変換される。
  • 水溶性になった薬物は細胞外に輸送され、血流にのって腎臓で濾過され尿中に排泄される。一方、ビリルビンのグルクロン酸抱合体は胆汁中に排泄される。このグルクロン酸抱合反応は、上記物質の生体内解毒反応の主役である。

抱合というのは水溶性にして外に出させるようにすることです。ビリルビン、ステロイドホルモンなど一部の薬は、グルクロン酸抱合でPhase2を引き起こします。このグルクロン酸抱合を起こすUDPグルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)を活性化するのが、ブロッコリースプラウトです。

スルフォラファンを摂取したら、ビリルビンやモルヒネを活性化して解毒が進むので、スルフォラファンを摂取したら自閉症のお子さんの症状が改善したというデータがあります。

6-4. グルタチオンを増やす方法

  • サプリで増やす(トリペプチドで分解されやすいので、リポソーム・タイプのものが細胞膜を通過して細胞内に入ることができる)
  • メチレーション回路を回す(体内のグルタチオン濃度を保つ)
  • 炎症を取る
  • 抗酸化サプリを摂る(ビタミンCを沢山摂ることで、抗酸化をビタミン C に任せ、グルタチオンを温存することができる)

5年前にハル・ハギンス先生を訪ねた時に伺ったのですが、実は先生がコロラドに行った理由は、コロラド州は比較的医療に関して寛容だからだそうです。6年前にすでにコロラド州とニューヨーク州では医療大麻が解禁されていました。医療大麻は、小児のてんかんに限って使用が認められたのですが、アマルガムを除去したり、水銀をデトックスするというのは、異端の医療で他で禁止されていて、先生も歯科免許を一回剥奪されたことがあるそうです。

そのため一時期はサン・ディエゴに住んで、オフィスはメキシコにおいて、話を聞くのはサンディエゴで、治療はアメリカでなくメキシコでやってたりしたそうです。今はさすがにもう大丈夫だと思いますが、栄養療法の最先端のことをやっている人は、迫害されたりすることはよくあります。

先生によると、アマルガムを取って良くなる人とそうじゃない人の違いは、アポリポ蛋白E のアイソザイムの違いだろうとおっしゃっていました。ApoE4が1つもない人に比べて、ApoE4が1つある人は、炎症促進してアルツハイマーになりやすいです。

ApoE4がひとつもない人のアルツハイマーの発症率が9%に比べて、ApoE4がひとつだと30%、ApoE4が2つ以上だと50%以上になります。

このApoE対策も抗酸化です。グルタチオンを摂るのに先駆けて、ビタミンCやビタミンEを摂ることによって、ApoE4を持っていても発症のリスクを抑えられるので、十分調べる価値がある検査だと思います。

このような人は、脳の抗酸化であるフェルガードや、リポゾームのビタミンCを摂ることをお勧めします。

phase2の細胞内グルタチオン濃度を上げるため、抗酸化はデトックス治療の一部です。細胞内グルタチオン濃度上げる方法をまとめると、まず暴露量を減らすこと。DMSAなどは細胞外液の水溶性分画にしか作用しないのでまず炎症を止めること、抗酸化治療をすること、そしてメチレーション回路を回すことです。自閉症の治療をするアメリカのDAN!という組織が、このプロトコールを推奨しています。

6-5. フェーズ3 排細胞内から細胞外へ肝・腎を経由して対外へ

Phase3は Phase 2に先駆けて行ってください。便秘をしないこと、そして腸管循環を抑制するために水溶性食物繊維を摂ること、キレーションもこのPhase3に入ります。細胞の中から外に出すためのMRP 蛋白を活性化してあげること、あとはメタロチオネインというカドミウムをくっつける蛋白を作るのもPhase3の要素の一つになります。

MRPタンパク質というのは細胞の外から中に変な化合物が入ってきた場合に大きく口を開けて、排出させる蛋白のことです。 Multi-drug resistance; MDR蛋白、つまり薬が入ってきて排出させるタンパクで、抗がん剤が効かないのはこのMRPたんぱく質が原因ということで、現在研究されています。デトックスの場合、MRPたんぱく質を活性化させなければいけないのですが、抗癌剤を効かせるためにはこの MRPタンパク質を阻害しなければならないので、その阻害剤というのが研究されているわけです。

デトックス目的の場合は、このMRPタンパク質を活性化させることですが、そもそもデトックスをすると疲れる理由は、ATPを消費するからです。ファスティングのメリットは、消化に使うATPを全部デトックスに回せることです。デトックスをすると次の日尿が濃いのは、MRP蛋白質がきちんと働けるからです。メチル水銀の排泄経路は90%は胆汁排泄で腸から出ますから、便秘をしないことです。

6-6. メタロチオネイン

メタロチオネインとは、重金属(特に銅、カドミウム、水銀)を結合するタンパク質のことで、これは亜鉛を摂ることで生成されます。

結合力  Zn < Cd < Cu< Hg Ag
亜鉛刺激で作られ、カドミウムがあれば入れ替わる
システイン摂取の必要性

ウィリアム・ウオルシュは、このメタロチオネインをプロモーションする治療を推奨していて、それはアミノ酸と亜鉛を摂ることです。そこで重要になってくるのが、亜鉛の血中濃度です。メタロチオネインを作るためには、亜鉛の血中濃度を100μgに上げることをウオルシュ博士は推奨しています。

6-7. 亜鉛の使用量

どれぐらい亜鉛を摂れば100μgになるかというと、下記の9パーセントルールを使用してください。

亜鉛摂取量を2倍にすると血清/血漿亜鉛状態が9%上昇した

9%ルールというのは、亜鉛を摂る量を2倍にすると、亜鉛の血中濃度が9%上昇するということです。これを計算するとどれくらい亜鉛を摂ったら血中濃度が100になるかが分かります。例えば血中濃度が70の人は、食事からの亜鉛が10mgとすると、亜鉛を150mg摂らなければいけないことになります。

150mgというのは食事で摂るととてつもない量ですが、普通の薬では150mgなので、このような目的によっては使用するのが良いです。ただ亜鉛を100mg以上摂る場合は、特に銅の欠乏が問題になります。銅は成長に必要なので、多すぎても少なすぎても問題です。亜鉛と銅はブラザーイオンなので亜鉛を沢山摂る場合は、血中濃度をモニタリングしながら専門家のもとで行ってください。

デトックスというのは、特に脂溶性のものは抱合して、胆汁から排泄させるもの、肝機能を高めるミルクシスルとかリポゾマルグルタチオン、還元型グルタチオン、ウルソや、タチオンとか使うのもいいでしょう。

そして出てきた毒素をキャッチして、再吸収による腸管循環を防ぐためには、クロレラやクレメジンのような活性炭の薬を使うのもいいでしょう。これら2つをうまく組み合わせることで、自然デトックスのPhase2とPhase3をコントロールすることができます。

炎症→腸→デトックス

まず炎症を取ること、そして腸内環境を改善して除菌をすること。その後にデトックスをすると良いでしょう。

7. デトックスのセンターピンは

最後にデトックスのセンターピン(物事の本質を見つけること)は何かというと、

根本原因ピラミッドPhase1というのは自分の排泄しにくいものを避けることです。そしてPhase2は、細胞内グルタチオン濃度を上げること、そして炎症を抑えること。Phase3は腸内環境を改善して腸管循環を抑えること、そしてミトコンドリア機能を改善することです。根本原因の色々な物を超えたアプローチをして、炎症、腸内環境、エネルギーを総合的に見ることが、結果としてデトックスになるということが分かります。

詳しくは与沢翼さんの『ブチ抜く力』という本を読んでみてください。この本には、センターピンを1つに絞ること、そして選択と集中をして、やり遂げることが重要とあります。理論が分かってもなかなか実行できないので、とにかく1つやることを絞って、最低3週間続けてみることです。3週間続けると習慣化するからです。

この与沢翼さんは、秒速で1億稼ぐと言われながらも破産して、マレーシアで投資に成功して今億万長者になった人ですけど、億万長者になって暇になったので生命保険に入ろうとしたのですが、太り過ぎという理由で生命保険から拒否されたそうですが、お金の事になるとモチベーションが上がって、2ヶ月で10 kg 減量に成功したそうです。

ダイエットのセンターピンは「食べないで鬼動くこと」と書いてありますけども、このダイエットの仕方は人をよほど選ぶので、ここだけは真似しないようにしてください。他はすごく参考になると思います。

デトックスのポイントは腸内環境改善とグルタチオンの使い方

宮澤賢史 · 2021年7月4日 ·

今回は、デトックスの中級編です。デトックス治療をするときの重要なポイントは共通しているので、デトックスのボトルネックをいかにして克服するかが大切になります。

1. 低血糖とミトコンドリア対策

1-1. Dr Kalishのmethod

機能性医学の権威、ダニエル・カリッシュ先生は、医療コンサルタントと栄養療法の講師をしています。彼曰く、患者さんが検査や治療に消極的なのは説明が悪いのが原因だそうです。患者にきちんと説明ができていないから、セールスにつながらない。つまり、売り上げというのは自分の技量の結果そのものなんですね。

さて、カリッシュ先生はいつも僕が解説している根本治療ピラミッドに似た概念を提唱しています。彼の治療ピラミッドは大きく、神経内分泌、消化器、デトックスの3つから成り立っています。

  • 神経内分泌 1.糖質代謝 2.エネルギー産生 3.神経伝達物質代謝
  • 消化器     4.バクテリア、クロストリジウム、イースト除菌
  • デトックス    5.デトックス 6.酸化 7.メチレーション

神経内分泌の1番の糖質代謝とは、低血糖を治すということです。2番目のエネルギー産生はミトコンドリア機能を上げること、3番目は神経伝達物質代謝で、アドレナリンの過剰分泌があるとデトックス効率が落ちるので、全て整えてからデトックスした方が良いということです。

デトックス治療が上手くいくかどうかは、環境を整えられるかどうかにかかっています。肝臓がデトックスの要なので、肝臓の機能が上がると、デトックス治療をしなくても自然に毒が排出されます。

1-2.遺伝子よりも症状が大切

メチレーションの大家のベン・リンチ博士も、メチレーションは最後にケアすべきと言います。「DIRTY GENES」という著書の中で、「いくら遺伝子解析をしても、遺伝子が環境によって汚されると思うようにタンパク質を発現できない。そのため治療すべきターゲットは、遺伝形式ではなくて実際の表現型だ」と言っています。遺伝子検査の結果に一喜一憂せず、実際の症状に目を向けましょう。

1-3. 低血糖とミトコンドリア対策

一番最初に取り組むべきは低血糖のケアです。低血糖があると、エネルギーの供給障害でミトコンドリア機能低下に直結します。糖質代謝がうまくいかないとエネルギー(ATP)産生もできなくなります。肝臓はエネルギーを大量に消費するので、ミトコンドリア機能低下=肝機能低下ということになります。

肝機能低下を表す代表的な数字が、ASTとALTです。両者は、アラニン経路の酵素なので、これらの数値が低いということはアラニン経路が異常に活性化されて、低血糖の代償が行われているということです。いくらビタミンB6を摂ってもASTとALTが上がってこない方は、糖質のエネルギーがうまく供給されないので、アミノ酸が異化されていきます。夜間低血糖を起こす人は、眠りが浅く、筋肉が緊張しているため、朝から肩が凝っています。プロテインを摂っていても、タンパク異化を起こして筋肉がどんどん痩せていきます。

人間は本来、血糖値を維持するためにグリコーゲンを蓄積することができますが、肝臓には500kcal分しか貯蔵することができません。そのため筋肉の1500kcal分のグリコーゲンを間接的に使うべくアラニン回路が働きます。低血糖を頻発する人はアラニン回路が過剰に亢進しているので、筋肉がどんどん分解されます。肝臓のグリコーゲンの分解刺激はグルカゴンですが、筋肉のグリコーゲンの分解刺激はコルチゾールとアドレナリンなので、低血糖を頻発してる人はこれらが過剰となります。

だから、補食をしたり、薬で副腎のケアをして低血糖を落ち着かせて、ミトコンドリア機能を安定させることがデトックスの最初の一歩なのです。そのあとに消化器のディスバイオシス、それからリーキーガットを治すという順序になります。

2. 腸内環境を整え肝臓の炎症を抑える

デトックスの第二のボトルネックは、肝臓の炎症です。炎症がデトックスの第二段階の抱合に必要なグルタチオンを無駄遣いしてしまうし、肝臓の炎症があると胆汁がうまく分泌できなくなります。肝臓の炎症は様々な要因で起こりますが、一番の要因は腸です。

2-1.ストレス、ディスバイオーシスとLPS

ストレスが腸の透過性を亢進することは昔から知られていました。これは1996年の論文で心臓手術を受けている患者にリーキーガットが多いことを示すものです。

バイパス手術を受けている患者はリーキーガットを引き起こしている
Intestinal permeability, gastric intramucosal pH, and systemic endotoxemia in patients undergoing cardiopulmonary bypass
JAMA 1996 Apr 3;275(13):1007-12.

ストレスは、炎症、リーキーガットを引き起こします。リーキーガットになれば未消化のタンパクや腸管の病原菌、ウイルスなど様々なものが血中を経由して肝臓に到達します。リーキーガットと肝臓の炎症には密接な関連がありそうです。

SIBOと脂肪肝に有意な関連性
Small intestinal bacterial overgrowth and nonalcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis
Eur J Gastroenterol Hepatol2020 May;32(5):601-608. 

腸内細菌のバランスが悪い人は炎症体質です。ディスバイオーシスとは、腸内細菌の多様性が失われている状態のことを指します。腸内細菌の数と種類が減ることで、悪性のグラム陰性桿菌の割合が増えて、その細胞壁の成分であるLPS(リポポリサッカライド)からエンドトキシンが分泌されて体の内外に炎症を引き起こします。

糖尿病性腎症の患者は、腸内細菌バランスが悪く、炎症レベルが高い
Dysbiosis of Gram-negative gut microbiota and the associated serum lipopolysaccharide exacerbates inflammation in type 2 diabetic patients with chronic kidney disease
Exp Ther Med. 2019 Nov; 18(5): 3461–3469.Published online 2019 Aug

2-2. LPSがMRPを抑制する

この全身に炎症を引き起こすLPSですが、実は解毒にも重大な悪影響を及ぼすことがわかっています。LPSは、肝臓に炎症を引き起こして肝機能を止め、細胞の外から入ってきた異物を捕まえて外に排出する多剤耐性タンパク(multi-drug resistance Protein ; MDP)の機能低下を引き起こします。

抗がん剤が効かない一番の理由がこのMRPタンパク質なので、近年非常に研究されています。細胞には元々異物を排出する仕組みが備わっているため、抗がん剤を大量に使っている人たちに対して、MRPをいかに阻害するかという薬を開発しています。デトックスをする人の場合、このMRPを逆に活性化するということが大切になってきます。

細胞内から細胞外に薬物を排出するためには、この図にあるように大量なエネルギーが必要です。細胞が活性化するためにミトコンドリア機能を上げる必要がありますが、このMRPが阻害される原因はLPSです。エンドトキシンは、第二相・第三相の解毒ともに阻害するので、腸内環境が悪い人は解毒ができません。まず腸を治すために、食事を変えて、ストレスを減らしてください。

さらに悪いことに、エンドトキシンは胆汁の流れを劇的に減少させます。胆汁は下記のように様々な機能を持っています。

  • 脂肪の消化
  • 解毒
  • 抗菌
  • 甲状腺ホルモン活性化(+胆汁が脂肪を分解して体が活発な甲状腺ホルモンを作るのを助ける)

胆汁が分泌されないと、脂溶性ビタミンも吸収できず、メチル水銀、農薬、マイコトキシン脂溶性などの毒物が解毒できず、甲状腺ホルモンの活性化も妨げられます。

マウスに胆汁を投与すると、褐色脂肪組織のエネルギー消費が増加して肥満とインスリン抵抗性が予防されます。胆汁は単なる消化液ではありません。油ものを食べると胃がもたれるという人は、解毒もできず、腸内の抗菌活性も保たれていないのでSIBOも起きやすく、甲状腺機能も低下していると思われます。

2-3. 胆汁分泌不全の兆候

Dr.サンドラ・カボットが、サイロイドと、リバーディスファンクションの関係の本を沢山出版されていますが、甲状腺機能低下の患者さんの半数以上は胆汁分泌に障害を持っているとおっしゃっています。

胆汁分泌が低下して出る症状は、下記の通りです。

  • 肩甲骨の間または胸郭の下の痛み
  • 明るい色または灰色の便
  • めまい
  • 脂肪の多い食事後の膨満感
  • 不眠症
  • 乾燥肌
  • 脱毛

ビタミンDのサプリメントを摂っているのにビタミンDの血中濃度が上がらない人も、一度胆汁分泌ができているかどうかを確かめてみると良いと思います。甲状腺機能の低下に関連した脱毛もあります。胆汁分泌不全の原因は、肝機能障害も然り、化学物質の曝露による毒素の蓄積や、ストレスホルモンであるコルチゾールの過多が胆汁分泌を妨げます。胆汁分泌も胃と同じように副交感神経支配だからです。

副交感神経の迷走神経は枝分かれしていて胃と胆のうに伸びているため、緊張すると胆のうや胃の動きも止めてしまいます。解決策として、Dr.サンドラ・カボットは、ココナッツオイルやMCT、クランベリーを推奨しています。甲状腺機能の低下が改善されない人は、リバークレンジングジュースで検索して、胆汁分泌を改善させてください。

2-4. LPS↑を疑う症状と検査

このエンドトキシンが悪さをして胆汁に炎症を引き起こし、胆汁分泌を止めてデトックスを妨げます。下記の症状がある方は要注意です。

症状

  • 鼓腸
  • 過敏性腸症候群
  • 膨満
  • 口臭
  • 食物アレルギー
  • うつ 不安

検査

  • 血中ゾヌリン↑
  • 良性細菌の低下
  • 細菌多様性の低下
  • 食物アレルギーIgG↑
  • アラビノース↑
  • カルプロテクチン↑

腸内環境の良し悪しは、腸と脳の症状で見ます。様々なエビデンスが出ていて、腸内環境の悪化=うつ、不安、緊張、パニック、などの精神症状を引き起こすため、精神症状が安定しない人は腸をチェックしてみてください。

検査での血中ゾヌリンはリーキーガットの良い指標です。CSA(腸内細菌検査)で良性細菌の低下、もしくは細菌の数や種類が減っていたら多様性の低下が考えられます。食物アレルギーが上昇していたり、カンジタならアラビノース、便中及び血中のカルプロテクチンは腸の炎症を表す良い指標のひとつです。これらを総合して、数値に問題がある人はデトックスはまだ時期早々か、行ったとしてもあまり効果が出ないでしょう。

まずは腸内細菌や腸内環境を改善してください。様々な方法がありますが、乳酸菌をサプリメントで入れるのが近道です。プロバイオティクスとプレバイオティクスをうまく使い分けるのがコツですが、プロバイオティクスを入れるということは強制的に腸内環境細菌を良くするということで、生着はしませんが便の状態が改善されます。

2-5. グルタミンの有用性

僕が一番重要視しているのはグルタミンです。特に低血糖からの流れで腸内環境が悪い人は、グルタミンが減少しています。低血糖の発作時に低血糖があると、筋肉で身体の中にアミノ酸が一番分解されるのはアラニンとグルタミンです。アラニンは糖新生に使われ、グルタミンも一部エネルギーとして使われますが、グルタミンの用途はストレスで失われるのと、腸粘膜の修復で失われるため、低血糖で腸内環境が悪い人はグルタミンが足りません。グルタミンを補給すれば夜間の低血糖の防止にもなり、筋肉が痩せていくのを抑制することができます。

グルタミンの使用量は、少ない人は5g〜でも十分ですが、多い人で50g、または15gを1日3回摂る人もいます。グルタミンは腸の水分量を調整するので、摂り過ぎると便秘になりますが、マグネシウムを併用することで便のコントロールはある程度可能です。便通に関しては、マグネシウムがアクセルで、グルタミンがブレーキとなります。ストレスで両方失われるので、両方摂ることをお勧めします。便中のカルプロテクチンを下げるのにグルタミンは有用です。リーキーガットが改善されるということは、肝炎が治るということです。肝炎が治って肝臓の細胞がきちんと働きだしたら、デトックスの第一相と第二相が働き出します。

グルタミンが重症熱傷患者の腸透過性を改善し、入院期間を短縮
Effects of enteral supplementation with glutamine granules on intestinal mucosal barrier function in severe burned patients
Clinical Trial Burns.2004 Mar;30(2):135-9.

2-6.まとめ

ディスバイオーシスは、

  • 肝臓に炎症を引き起こし
  • MRPタンパク質の発現を低下させ
  • 胆汁の流れを止める

まずは徹底的に腸を治療してください。ドクター・カリッシュのメソッドで、1番目が低血糖、糖質代謝の改善、2番目がミトコンドリア、3番目が神経伝達物質代謝です。そこを落ち着かせてから、4番目に腸内環境に取り掛かりましょう。

デトックス治療というのは、デトックスに最適な環境を整えることで、副腎疲労の治療と似ています。副腎疲労の治療というのは副腎サプリを摂ることではなく、副腎が治るのに最適な環境を整えてあげることです。引き算で考えて、炎症とストレスと低血糖発作を取ってあげることが大切です。

3. グルタチオン

デトックスのボトルネックの3番目は、細胞内グルタチオンの濃度が上がらないことでした。いかに細胞内グルタチオン濃度を上げるかという、ここからが本題となります。

3-1.グルタチオンとは

グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンという3つのアミノ酸から成るトリペプチドで、身体の中で2つの重要な機能を持っています。一つは細胞内の主要な抗酸化成分で、細胞内環境の抗酸化の集約です。それとともに、毒物や薬物の細胞外への排泄も執り行っています。他の抗酸化物質に比べてグルタチオンは特別に濃度が高く、酸化型と還元型のグルタチオンがありますが、NADHやビタミンB2、B3が働いて、細胞内の還元型グルタチオンを98%以上になるように保っています。

細胞内の還元型と酸化型のグルタチオンの比率が細胞毒性の評価指標、もしくは酸化ストレスの評価指標だと言われています。細胞内の指標は、血中濃度で測ることができます。メチレーションが低下している人は、この還元型と酸化型のグルタチオンの比率が低く、グルタチオンを還元する力が弱いです。

Phase1は酸化、活性化です。油の中に溶けている安定した毒物を排泄するために、活性化させて不安定にさせる必要があります。酸化させるためには、ビタミンB群が大量に必要で、実際に行うのはシトクロム、P450です。

Phase2は、活性化したものを抱合して水に溶けやすい物質と抱き合わせにします。その主役を担うのがグルタチオンで、Phase2のセンターピンは、細胞内グルタチオン濃度です。センターピンというのはボウリングの一番前に立っているピンのことです。ここのセンターピンを倒すと全部倒れるので、センターピンを外さないことです。

グルタチオンの半減期は12分なので、良いグルタチオンサプリを使っても即効性と持続性は両立しません。解毒の場合には細胞内グルタチオン濃度を高く保ち続けることが大切なので、やはり環境をいかに整えるかが大切になります。

3-2. グルタチオンの体内反応

グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)
中心にセレン
グルタチオンレダクターゼ

グルタチオンは、細胞の中で還元と解毒という2つの働きを持っています。上の式は、還元です。過酸化水素がグルタチオンと結合することによってグルタチオンが酸化されて、過酸化水素は還元されて水になります。過酸化水素を還元しています。

GS-SGは酸化されたグルタチオンです。これは、NADPH、ビタミンB3によってまたグルタチオンに還元されて、その反応が繰り返されます。

この酸化還元反応を触媒しているのがグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)という酵素で、補酵素はセレンです。グルタチオンがあるだけでは酸化還元反応は進みません。GPXという触媒が媒介してくれることによって、酸化還元反応が起きるので、セレンが不足している人は細胞内環境がうまくいきません。グルタチオンを働かせるためにはセレンとナイアシンを摂らなければいけないということが分かります。

これは、メチレーションの中の硫酸経路の図です。

ホモシステインは独立した動脈硬化の因子で、不安定な物質であるシステインに変換されると、活性酸素があったり、鉄が多く存在する環境ではシスチンに変化し、シスチンがリアクティブニトロゲンスペーシーズ(RNS)になります。活性酸素(ROS)とRNSは、友達みたいなものなのでホモシステインが多すぎると、活性酸素の元となります。

ホモシステインが高すぎる人は、ビタミンB6、B12、葉酸を適宜摂ってメチレーション回路を回してください。B6を摂ることによって、CBSという酵素が活性化されて、システインにどんどん代謝されていきます。CBSの酵素はSAMe、活性酸素、ビタミンB6はセレンによって活性化されます。逆にこれを止めるのはシステインとグルタチオンです。

身体の中でグルタチオンを作る経路はこれしかないので、システインに、グルタミン酸とグリシンが結合してグルタチオンになります。この上流にあるホモシステインが適度にあると良いんですが、10以上は高くて動脈硬化の原因となり、5以下でもグルタチオンを作る材料がないということで問題になります。

CBSの遺伝子変異がある人はこの経路が活性化しやすいと言われていますが、実際にはこのホモシステインの数字を見たほうが良いです。CBSは遺伝子変異もありますが、システイン、グルタチオン、SAMeなどCBS酵素に影響を与えるものが多いので、遺伝子型よりも表現型(実際の数字)を見て、治療に役立てたほうが良いでしょう。

4. 肝臓(フェーズ1とフェーズ2の動き)とデトックスの原則

4-1. 肝臓(フェーズ1とフェーズ2の動き)

下記は、肝臓の中でフェーズ1とフェーズ2がどのように動いてるかという図になります。

Phase1が、チトクロームP450酵素、Phase2は抱合(Conjugation )です。Phase1に必要な栄養素は、アミノ酸も必要ですが、活性化のためにはビタミンB群が主役です。

Phase2に至るために重要なのは抗酸化物質です。Phase1はビタミンB群、Phase2は抗酸化物質、そしてPhase3はS、硫黄です。これらの重要な栄養素は、BASと覚えると覚えやすいと思います。

ここで大事なのが、Phase1からPhase2に引っかかる人が多いということです。Phase1はビタミンB群で活性化されますが、実際はストレスやアルコールでも活性化されます。細胞内グルタチオンの濃度が低い、活性酸素が多い、体内で炎症を起こしているなど様々な理由で、細胞内グルタチオン濃度が低い人というのはPhase2で止まっていて、これが一番困るパターンです。活性化されがものがそのまま体に残ってしまうので、活性酸素を二次的に発生させて組織のダメージにつながってしまいます。細胞内環境の修復が急務です。そういう方には、肝臓の炎症を取ってからデトックス治療をしてください。

4-2. デトックスの原則

① 脂と水を適切量とること

  • 脂肪は中枢神経の60~80%を構成する
  • 不足すると水銀や農薬など脂溶性毒素の攻撃を受けやすい
  • 十分な水分がないと腎臓で適切な濾過ができなくなる
  • 水分を細胞内に入れ込むことが重要(そのためにはミネラル)

② 毒素の再分布は悪化を招く

  • 腸肝循環における再吸収
  • フェーズ1のみ活性化されるとデトックスクライシス
  • 経口での吸着物質なしでのキレーションは脳への再分布の可能性

デトックス治療で一番最初にやるべきことは質の良い油と水を適量取ることです。脂肪は脳の乾燥重量の6割から8割を占めているので、脂肪が不足すると水銀や農薬などの脂溶性毒素の攻撃を受けやすくなります。油は体に悪いのでなるべく摂らないようにしているという方がいますが、良い油を積極的に摂らないとデトックスにはならないです。

十分な水分がないと適切な毒素のろ過ができないので、水も沢山摂ってください。水を飲んでも細胞の外に入れ込むだけなので、細胞外液を増やすのではなく細胞の中に水分を入れ込むのがポイントです。そのために細胞内ミネラルを一緒に摂ることです。細胞内に多く存在するミネラルであるカリウムとマグネシウムを摂ることによって、細胞の中に水が供給されるようになります。それが解毒の第一歩です。

毒素の再分布が一番問題だということも覚えておいてください。再分布とは、腸肝循環における再吸収により、モルヒネなどの薬は肝臓で一度代謝されて、胆汁で排出されたあと、また腸から吸収されて肝臓に戻ります。それを何回か繰り返しているので、なかなか薬として抜けずに薬剤性肝障害の元となります。メチル水銀も腸管循環を繰り返していますが、腸が悪く便秘だとさらに腸肝循環が悪くなります。そのため水溶性食物繊維を意識して摂って、余計な毒物を排泄するというのがとても大事になってきます。

Phase1からPhase2にうまく繋げないと、活性化されたものが肝臓の中に溜まってしまい、毒素を悪化させる要因となります。これをデトックスクライシスと言います。最近、ミネラルをキレート化できる薬物を経口や点滴で入れるキレーション治療というものがあります。DMSAや、EDPAなどの硫黄や活性酸、クロレラなどの吸着物質が入っている薬を使います。これらを使わずにキレーションだけすると、脳に届いて悪化を招きます。

5. グルタチオンの上手い使い方

グルタチオンのサプリメントを使って細胞内グルタチオン濃度をあげる方法をご紹介します。

5-0.問診する

最初に重要なのは問診です。赤ワインを飲んだら不眠になるか、頭痛起こるかを聞いてください。何故かというと、グルタチオンには硫黄が含まれるからです。グルタチオンというのはグリシン、グルタミン酸、システインの3つのトリペプチドで、システインの中に硫黄を含み、硫黄負荷がかかります。

ROSおよびRNSとは何ですか?

活性窒素種は活性酸素種(ROS)と一緒に作用して細胞を損傷し、
ニトロソ化ストレスを引き起こします。
したがって、これらの2つの種はまとめてROS / RNSと呼ばれることがよくあります。

グルタチオンは、ある程度以上身体に入ると身体にフィードバックがかかってシステインをグルタチオンに変換する酵素の働きが悪くなるため抑制されて、硫黄を代謝する方向に流れます。硫黄を代謝する経路は、最終的に亜硫酸塩がSUOXで硫酸塩に変換され、尿になって身体から出ていきますが、炎症がある、モリブデンが足りない、ヒ素や胆のうが溜まっている、SUOXにスニップがある、遺伝子変異がある人というのは、硫黄を摂ると頭痛がしたり喘息が出たりします。

宮澤医院では、デトックス治療をする前に、硫黄アレルギー、玉ねぎ、ブロッコリー、にんにくなどを食べて具合が悪くなる方は申し出てくださいと伝えています。

ワインに含まれる酸化防止剤も亜硫酸塩なので、ワインを飲んで気持ち悪くなる人というのは硫黄代謝がうまくいってない人です。僕は3,000円以下のワインを買ったら、亜硫酸塩を飛ばすために、一杯だけグラスに注いでボトルを振ります。空気の隙間ができたらキャップをもう1回締めて、20回くらい振り、その後キャップを開けるとシューという音がします。これをすることによって悪酔いをしません。

5-1. 水を入れる

  • 脱水=毒素の濃縮
  • 水を補給するタイミングは「ちょっと脳が疲れたとき」
  • 脳は脱水に敏感

問診が終わったら、まず水を補給して毒素の濃縮を薄めることから始めます。特に脱水に敏感な臓器である脳のデトックスが大事なので、水を頻繁に補給してもらうようにしてください。ちょっと疲れたなと思ったらそれは脱水症状なので、カフェインを補給するではなくて、水分を補給してください。

5-2. ミネラルを補給する

正しい水分補給というのは細胞内ミネラルを摂ることと同義です。ミネラルは水を引っ張る性質があるので、細胞内ミネラルを摂ることが細胞内に水を引き込むことになるのです。カリウム、マグネシウムなどのミネラルを十分補給してください。

5-3. モリブデンを摂る

硫酸の活性化をするため、モリブデンを摂ってください。モリブデンといえばこの3つを覚えておいてください。

  • アセトアルデヒドの代謝
  • 硫黄の代謝(SUOXの補酵素)
  • 尿酸代謝(XOの補酵素)

黄色いのがモリブデンです。カンジタ治療をする時には、アセトアルデヒド脱水素酵素の補酵素としてマグネシウムと一緒にモリブデンを入れておくと、ダイオフが少なくて済みます。モリブデンを使って、硫黄の代謝をスムーズにしてください。グルタチオンが大切だと言うと、ついグルタチオンの量が増えてしまいますが、共に使う補酵素を消費するので、バランスが大事です。

モリブデンを使うと尿酸代謝が上がるので、元々尿酸が高い人は気をつけてください。尿酸が低くて活性酸素が足りずに抗酸化力が弱い人は、使用して大丈夫です。尿酸値を増やしたい人はモリブデンを使ってみましょう。尿酸値を減らしたい人は体をアルカリ化してください。尿酸は、アルカリ環境下で排泄が促進されます。

5-4. 抗酸化物質を摂る

抗酸化物質が足りないとグルタチオンが抗酸化に使われてしまうので、抗酸化物質を摂りましょう。

5-5. リボフラビンを摂る(グルタチオンの還元に必要)

ビタミンB2、B3は、グルタチオンの還元環境を保つのに必要です。

5-6. ブロッコリースプラウトを摂る

Phase2はグルタチオンが主役ですが、その他にグルクロン酸抱合も重要です。これを活性化してくれるのがブロッコリースプラウトです。ブロッコリースプラウトは安価のため、POORMAN’Sグルタチオンと言われていますが、グルタチオンに負けず劣らず効果が高いので、毎日摂るべきです。ラディッシュスプラウトと、ブロッコリスプラウトをミックスするとより効果が高いそうです。咀嚼することで活性化されるので、食べ物で摂ったほうが良いと思います。

5-7. 少量頻回に摂ること(半減期12分)

グルタチオンは、少量頻回の方が効きやすいです。白玉点滴というタチオンを入れる点滴があります。美白に効果が高く、モデルさんが使っているので白玉点滴という名前がついたようです。内容物は、グルタチオンで一つ200mgを5本、1,000mgくらい一度に点滴します。美白の効能については分かりませんが、肝機能の向上になり、お酒を飲んだ翌日は楽になると思います。

ただ、半減期が短く持続力はありません。細胞の膜を貫通して入るリポソーマルタイプのグルタチオンは、非常に即効性があります。リポソーマルグルタチオンを発売している会社のインタビューを見ると、「まずリポソーマルグルタチオンを飲んだら喉元に貯めておいてください。20秒、30秒〜1分くらい貯めておくと頭がスッキリしてきます」と言っています。即効性があり、細胞膜を超えて入ってくるので、良い使い方だと思います。脳に近く、細胞内の抗酸化をするから、頭がすっきりします。

ただし、持続と即効性は違うので、半減期が短いグルタチオンをうまく使うには、ティースプーン1杯を一度に摂るのではなく、1/4のティースプーンに4回に分けて摂ったほうが解毒に関しては効果が高いので、補酵素との影響を考えて少量頻回で摂って下さい。

5-8. 遺伝子について

グルタチオンに関しては、ホモシステインの数字を見て補酵素がきちんと働いているかどうかを見てください。ベン・リンチ博士は、色々な要素が大き過ぎて遺伝子変異だけでは予測がつかないので、ホモシステインからシステインに、システインからグルタチオンにどのくらい変換されているか、グルタチオンを過剰摂取したらフィードバックがかかる可能性と、その結果も考えながら上げる要素、下げる要素を理解して使いなさいと言っています。

では、どれくらいの量を摂ったらフィードバックがかかるでしょうか。グルタチオンは肝臓だけで1日10gくらい作られます。500mgのグルタチオンサプリを一度摂って、フィードバックがかかるかは疑問です。

ただし、身体は硫黄が大量に入ってくると硫酸経路を活性化させ、排泄する方向に動くので、フィードバックは実際にかかるということは試験管の中で確認されているようなので、そういう働きはあると思いますが、はっきりしたことはまだ分かっていません。

6. グルタチオンサプリの副作用

グルタチオン=グリシン+システイン(硫黄)+グルタミン酸

6-1. グルタミン酸による副作用

グルタチオンは、グリシン、システイン、グルタミン酸から成っています。システインの硫黄の負荷のことは以前お話しした通りですが、グルタミン酸による副作用が出る人もいるので気をつけてください。

グルタミン酸は脳のカルシウムチャンネルを開放します。カルシウム、低血糖は、グルタミン酸神経を刺激します。グルタミン酸神経が開放されて、カルシウムが沢山入ってくれば、炎症を引き起こして細胞死を起こします。これは、自閉症の子どもの脳によく起こるので、低グルタミン酸食にしてもらいます。イライラ、頭痛、MSG、過敏症、不眠症が起きている人は、グルタチオンによる副作用なのかもしれません。有機酸検査でキヌレニン経路が亢進して、脳に炎症が起きている人は副作用が起きやすいです。

グルタミン酸とキヌレニン酸、キノリン酸は、脳の神経毒物です。電磁波過敏症の人は、カルシウムチャンネルが開放を刺激するので、グルタチオンが足りていないことが多いです。5Gが怖いと思っている人は、細胞内グルタチオン濃度を上げてください。

6-2. 硫黄による副作用

前述したように、グルタチオンは硫黄の代謝物だということを忘れてはいけません。

7. どんなタイプのグルタチオンを使うべきか、基質と酵素のバランスが大事

7-1. グルタチオンレベルは低すぎても高すぎても問題

グルタチオンレベルが低いか高いかは、個人によって差があります。ブレインフォグ、頭がクリアでない程度に合わせて飲むグルタチオンの量を調整してください。リポソームグルタチオンなら2、3滴からスタートして、ティースプーンを1/4、半分、または1杯を1回に摂ってみて、症状に変化があるかを試してみてください。赤血球中のグルタチオン濃度を測るのは高価なので、症状で微調整するのが現実的でしょう。

7-2. どんなタイプのグルタチオンを使うべきか

グルタチオンのサプリメントは下記のように様々あります。

・S-acetylglutathione

グルタチオンはトリペプチドなので、胃酸で切られると効力がなくなりがちですが、最近出たiHerbで購入できるSアセチルグルタチオンというサプリはアセチル基だけが切られるので、細胞内グルタチオン濃度を上げるのに良いそうです。

・ラクトバチラス・ファーメンタンス(グルタチオン産生腸内細菌)

ラクトバチラス・ファーメンタンスという乳酸菌は、グルタチオンの産生能力がある菌だと言われています。ただし発酵して腹部膨満を起こす人がいるので、注意した方が良いかもしれません。

・NAC

他に有名なのはNACのNアセチルシステインです。システインがグルタチオンの前駆体なので、Nアセチルシステインを使うのは良い方法だと思います。前駆体を入れておけば身体の中で都合よく変換してくれるからです。Nアセチルシステインの問題点は、このGCLの酵素がマイコトキシンで阻害されるということです。これに関した論文がいくつかあるので、マイコトキシンの検査をして溜まってる人は NACではなくてグルタチオンそのものの方がいいかもしれません。

・グルタチオン点滴

グルタチオンの点滴に関しては、「リポゾーマルグルタチオンのサプリメントの方が、赤血球中グルタチオンレベルの上昇度が高い」というドクターズデータ社の検査の方の非公式コメントが出ています。点滴でも上がりますが性能が良いサプリメントの方が効果は高いらしいので、うまく組み合わせて使うのが良いだろうと思います。

大切なのは基質と酵素のバランスをとることです。グルタチオンはセレンがないと活性化できず、リボフラビンがあって初めてリサイクルでき、モリブデンがあって硫黄代謝ができます。グルタチオンだけ入れると、競合して使われる他の栄養素が枯渇するので気をつけてください。基質を入れる時はいつでも、酵素に負荷をかけすぎないように気をつけてください。

僕が今使っているのはこちらです。

ある先生が推奨していたのでこれを使っていますが、使っている一番の理由は不味くないからです。グルタチオンのサプリメントの欠点の一つは硫黄が入っているため不味いことです。 上記は、グルタチオンに加えて、リボフラビン、セレン、モリブデンが入っています。PQQというのは抗酸化の補酵素で、細胞膜を柔らかくするフォスファチジルコリンもセットで入っているので、基質と酵素のバランスが考えられていて使いやすいと思います。

このシーキングヘルス社のサプリはベン・リンチが作っていますが、彼のインタビューで、アンケートでは全く受け付けない人は3%しかいなかったとのことでした。それほど多数でないですが副作用として、痙攣と自己免疫の反応があるということです。アメリカではリーキーガットのせいか、癌や心臓病より自己免疫疾患の患者が飛び抜けて多くなっているので、そのような症状で困っている人がグルタチオンを使っていると推測します。

他に僕が使っているのはリサーチ・ドニュートリショナルというもので、グリセリンが沢山入っていてスイカ味とオレンジ味があって、味が中和されているために採用しました。また、個包装なので酸化しにくいと思います。沢山量を摂ることではなくて、細胞内環境を整えることが大事だと思うので、その補助として頻回に使うと良いでしょう。

これは、ウィリアム・ウォルシュ博士のスライドからお借りしたメチレーション、低メチレーションとオーバーメチレーションの原因の図です。

ホモシステインが高くなる人の多くは、低メチレーションが原因です。低メチレーションになる人の原因の一番は、MTHFRの遺伝子変異です。MTHFRはホモシステインが特に高い人は調べる価値があるかもしれません。

SAMeが沢山作れるかで、オーバーメチレーションかアンダーメチレーションかが決まりますが、SAMeは作られたものの7割が筋肉で使われるので、AGATやGAMTなど筋肉を作る酵素がうまく働いていない人は、筋肉が作られずメチル基が余ってしまいます。高メチル化の人は、いくら運動しても筋肉がつきません。低メチル化の人は少し運動すれば筋肉がつきます。筋肉がつきやすいということは筋肉を作るのにメチル基が全部持っていかれるため、低メチレーションになります。僕のホモシステインは7ぐらいなので、比較的低メチレーションだと思います。ホモシステインは、簡単に血中濃度を測れるので、ちょうど良い値になるように調整するように心がけてみてください。

8. 症例 46歳女性 慢性疲労

8-1. 主訴

  • 貧血でふらつく
  • だるい日はやるべきことが捗らない
  • 少しでもジャンクなものを食べると必ず体調が悪くなる
  • 夜になると動けなくなる
  • いつもはコーヒーを2杯ほど飲んでなんとか活動している
  • ここ2年で体重が8kg増えた
  • 元気にパワフルに過ごしたいです

症状で特筆すべきは、中性脂肪が極端に低いことです。中性脂肪が低い=エネルギー代謝が低いです。特にアドレナリンが沢山出ている人の場合は、アドレナリンが中性脂肪を分解して遊離脂肪酸に変えるため、低血糖があってエネルギー代謝が悪いことは容易に想像できると思います。

8-2. 血液データ

食後高血糖があるのか、1.5AGがとても低いです。炎症の影響なのか、銅亜鉛バランスも悪いため、銅過剰タイプなのかもしれません。炎症のマーカーはそれ程高くはないですが、ピロリ菌がいることが炎症の引き金になっているのかもしれません。ペプシノゲンが少し高いです。

フェリチンは37で、MCVは108です。つまり、鉄欠乏と大球性貧血が混在しているので、恐らく鉄欠乏に加えてB12の消化吸収の障害及び甲状腺機能の低下があるでしょう。実際にTSHおよびT3がとても低いです。T3が低くてTSHが低いというのはフィードバックがかけたくてもあまりかけられてない状態なので、長年に渡って中枢神経が抑制を受けてる状況じゃないかと考えられます。

このデータを見て、どうやってデトックスするのかということを考えてみてください。最初にお話ししたドクターカリッシュのメソッドを思い出してください。デトックスの一番最初にやることは低血糖の改善でした。2番目がミトコンドリア機能の改善でした。この方は低血糖症もあるし、ミトコンドリア機能低下もあるでしょう。

8-3. 腸内環境

腸内環境を見てみると、良性菌のラクトバチルスが1+と少なく、境界型菌が5つ出てますから、ディスバイオーシスは結構進んでいるのではと考えられます。

消化吸収マーカーを見てみると、エラスターゼが208と低下しています。これは500以上が標準なので消化酵素は低く、そのためにディスバイオーシスを起こしやすい原因になっています。下の炎症マーカーを見てみると、標準が1くらいのラクトフェリンが3.2、カルプロテクティンは10くらいでそれほど大きくありませんが、標準100のリゾチームが148で、炎症が少し見られます。

ディスバイオーシスがあり、消化酵素が落ちていて、炎症があるので、乳酸菌を足した方が良さそうです。消化酵素が少ないので、場合によってはSIBOの検査をした方が良いでしょう。

短鎖脂肪酸を見ると、トータルの総短鎖脂肪酸は6.7、その中の酪酸は1.8で、比較的低いので、もう少し足してあげたほうが良いです。元々この短鎖脂肪酸が低いのは乳酸菌が少ないせいです。短鎖脂肪酸は食物繊維が良性の細菌によって発酵されたもので、これが不足するとミネラルが吸収できなかったり、腸管循環が起きやすくなります。この方の場合は低血糖を治して、ミトコンドリア機能を上げて、腸内環境を治してあげることが重要です。腸内環境を治すには、乳酸菌を入れて炎症を抑えて消化酵素を少し足してください。だんだんお腹の調子が良くなってくるでしょう。

8-4. 毒物検査

46歳で、できれば妊娠もしたいというお話だったので、毒物検査もしていただきました。いくつかの毒物が出ましたが、特に高かったのは有機リンです。母体に有機リンがあると、自然流産やIUGRが起こりやすいので、デトックスしたいとご希望がありました。

最後にオリゴスキャンを見てみましょう。アルミニウム、銀、カドミウムが高いです。

日本人では標準な方ですが、有害金属の毒性を見るとトータル属性が高いので、デトックスをした方が良いと判断します。

あくまでも参考程度ですが、オリゴスキャンの検査ではPhase2とPhase3の状況が分かります。このPhase3の硫黄との結合状態に要注意と出ているのでうまくいってないだろうと思います。一番下の酸化ストレスと抗酸化薬は緑と黄色なので、酸化ストレスに関しては心配ないでしょう。ただこの検査だけでははっきり分からないので、有機酸検査や、他の血液検査から細胞内環境を推定していく必要はあります。尿酸値が低い、ビリルビンが高いというのは活性酸素が沢山出ているということです。

8-5. 有機酸検査

  • アラビノース
  • クロストリジウム
  • SIBO
  • シュウ酸
  • リボフラビン
  • ビタミンC
  • ミトコンドリア
  • キノリン酸
  • NAC
  • ピログルタミン酸
  • 2ヒドロキシ酪酸

解毒をする人はぜひ有機酸検査をしてみてください。有機酸検査では、解毒に必要なマーカーが10個くらいあり、これらを全部クリアしたらデトックスできるという印です。アラビノース、クロストリジウム、SIBO、アラビノースはカンジタの治療、クロストリジウムは腸内細菌バランス、SIBOも同じです。SIBOはDHPTAを見ればわかります。

有機酸検査で有用なのはシュウ酸がわかることです。シュウ酸というのはカンジタ感染や食べ物の多さで上がりますが、水銀と結びついてシュウ酸水銀になると水銀のデトックスができなくなるため、シュウ酸が高いうちにデトックスはしないでください。次に見るのはビタミンです。ビタミンCの血中濃度は有機酸検査では下がりやすい所ですが、抗酸化力の指標になります。

リボフラビンを見ると、ビタミンB2が見れます。ビタミンB2は有機酸検査では上がりやすい所です。グルタル酸というところで、ビタミンB2は低く出やすい場所です。なぜならばビタミンB2はカンジタの代謝で使われるからです。カンジタ感染を起こしている人はリボフラビンが低く出ます。甲状腺機能が低下している人も、リボフラビンが低く出ます。ビタミンB2が低いということはグルタチオンは還元できないということです。ここもチェックしておいてください。

ミトコンドリア機能を見るのも重要です。ミトコンドリアにはATPが必要ですが、解毒やMRPタンパク質を使うのにもミトコンドリアが必要です。キノリン酸Nアセチルシステインも測れます。

最後はピログルタミン酸と2ヒドロキシ酪酸。この二つはグルタチオンマーカーとして58番と59番に載ってます。この二つが高いということは解毒が体内で働いているか、グルタチオンが体内で枯渇しているかを表しています。有機酸検査でこの11個のマーカーを見て、解毒治療に役立ててください。

8-6. 治療経過

低血糖を治してミトコンドリアをフォローして、神経伝達物質バランスを治してください。この方の場合は銅亜鉛バランスがかなり悪いので、亜鉛を摂るのはとても有用です。ドーパミン代謝が悪いはずです。それが終わったら消化器と肝臓のケアをしてください。f僕がいつも使っているサプリメントをご紹介します。Phase2を助けるのは、こちらです。

Liver Nutrientsには、肝臓の胆汁排泄をあげるミルクシスルが入っています。

Nアセチルシステインとリポゾーマルグルタチオンを一緒に使うと、血中濃度細胞内グルタチオン濃度を安定させるのに有用です。グルタチオンの半減期は短いので、前駆体を入れることで安定します。タウリンは、胆汁排泄や、細胞内にマグネシウムを入れ込む時に役立ちます。他にメチレーションを回すためにベタインやトリメチルグリシンが入ってます。αリポ酸はSH基が付いているので、Phase3に役に立ちます。

リポソーマルグルタチオンにリボフラビンや補酵素が、リバーニュートリエンスにミルクシスル、Nアセチルシステインが入ってるので、この2つを僕は組み合わせて使うようにしています。場合によってはウルソという胆汁排泄用の薬と、たまに使うのがタチオン、iHerbで売っている還元型のグルタチオンを主に使って、抱合して胆汁排泄を促します。

胆汁から排泄してきたらその毒素をキャッチして再吸収を防ぐには、下記の活性炭、クレメジンという薬、クロレラをよく使うようにしています。ケイ素を入れると水銀の抗酸化に役立つとので一緒に使っています。

この方の場合は、甲状腺機能の低下症があったので途中からナチュラルサイロイドを使いました。

腸内環境処方

  • ウルトラフローラ
  • ビタミンA
  • トレースミネラル
  • DaVinci リポソーマルC
  • カンジダアウェイ
  • リフキシマ
  • インターフェーズ

デトックス処方

  • ミヤBM
  • リバー
  • 亜鉛・マグネシウム
  • グルタチオン
  • B12
  • 葉酸
  • クロレラ
  • ケイ素

ミトコンドリア機能を上げるのに、どうしても甲状腺機能がネックになる場合があって、その場合は起爆剤として甲状腺ホルモン(自然ホルモン)を使うとうまくいくことがあります。この方の場合は治療後のT3がも3.6まで上がりました。

治療後
デトックス治療前後での比較

治療期間は1年半くらいかかりましたが、貧血も治って低血糖症の症状も改善して表情も明るくなりました。デトックス後、有機リンはギリギリくらいまで下がり、症状も大分良くなりました。

ドーパミンとセロトニンの調節法

宮澤賢史 · 2021年6月30日 ·

今回は、毎年アメリカで行われている統合精神医療学会のIMMH(Integrative Medicin for Mental Health Conference)の講演内容をヒントに、精神疾患に対する栄養療法のまとめをお話しします。特に、ドーパミン、セロトニン、ヒスタミン、グルタミンなど代表する脳の神経伝達物質の評価と調整についてスポットを当ててみます。

1.精神疾患の原因、精神神経疾患を診るコツ、問診項目について

1-1. 精神疾患の原因

  • 食物アレルギー
  • 腸内環境
  • ヘキサクロロフェン(消毒薬)
  • 脳の可塑性
  • ライム病
  • 脂質過酸化
  • マイコトキシン(カビの毒素)
  • グリアジン(小麦のグルテンの成分)
  • 不眠
  • トラウマ
  • 薬
  • フェイスブック

これらすべて、精神疾患の原因として考えられるものだそうです。

有機酸検査の開発元であるグレートプレーンズ社長のウィリアム・ショー博士は、ヘキサクロロフェンという消毒薬の害や、日本でも徐々に話題になりつつあるライム病、脳の脂質の過酸化の問題、プロスタグランジンの代謝の問題などを指摘しています。

彼はマイコトキシンについても触れていました。日本は湿気が高い国なのでカビの毒素に暴露している人は多いはずです。クリニックで実際に測ってみるとマイコトキシンが出てこない人はいません。

また、グルテンの中身であるグリアジン抗体が統合失調症の1/3位の人に見られたという報告がありました。幻覚や妄想を見る統合失調症はドーパミンの過剰により起こるという仮説が近年支持されていましたが、陰性症状や無気力について説明できないと言われていました。最近ドーパミンに加えて話題になっているのはグルタミン酸で、グリアジンが関係しています。その他に、不眠やトラウマ、薬、Facebookが精神疾患の原因になっているそうです。

下のグラフは、10歳から14歳のアメリカの子どもの自殺率です。

自動車事故は徐々に減ってきていますが、2007年から自殺が増えていて、2013年に自動車事項を上回っている理由は、2007年1月にiPhoneが発売された事と関係あるのではないかという話も出ていました。

1-2. 精神神経疾患を診るコツ

ショー博士によると、精神神経疾患を診るコツとして、症状だけを診ないことが重要だそうです。セロトニン不足、ドーパミン、グルタミン過剰も、脳内で起きていて表に出ている症状だけだと見分けがつかないこともあるため、脳の中で何が起きているのかを推測せよということをお話しされていました。

特にトラウマや幼少期の経験が重症になればなるほど、精神疾患に深く影響します。統合失調症はその典型ですがHSPも同様で、ハイパーセンシティブな人々は幼少期のトラウマや、母親のお腹の中にいるときの経験が深く関係しているため、問診のときにはそこをよく洗い出す必要があります。

脳は全身と繋がっていて影響を受けやすいため、根本原因のピラミッドの一番上に脳とメチレーションがあります。特に全身の炎症や感染には、免疫状態が深く関与していますが、これに最も関与しているのは腸です。精神疾患を治すためには、全身の状態を調べて、炎症や免疫状態を調整してコントロールしていく必要があるんです。

僕はウィリアム・ウォルシュ博士の鬱病のメソッドも取り入れていますが、その理由の一番はエビデンスです。彼は、セロトニンやドーパミンを、ナイアシンや葉酸など栄養で動かせるという数万人単位のエビデンスを蓄積しています。ショー博士とウォルシュ博士のメソッドを組み合わせて使うと最強です。

さて今日は、ドーパミン、セロトニン、ヒスタミン、グルタミンなど代表する4つの神経伝達物質の評価と調整が、精神疾患の治療に役立つだろうと思い、これらにスポットを当ててみます。

1-3. 問診項目について

  • ドーパミン ↓意欲低下   ↑ 緊張
  • セロトニン ↓疲労、うつ  ↑ 不安、緊張
  • ヒスタミン ↓学習低下   ↑ 神経的興奮
  • グルタミン ↓学習     ↑ 興奮
  • 腸の症状
  • 全身の感染
  • 毒素への暴露

これらの神経伝達物質は元々脳の中にあるのではなく、毎日作られては壊されていきます。うまく作られなかったり代謝や分解がうまくいかなかったりすると、問題がでてきます。ウォルシュ博士のメチレーションで出てくるのはドーパミンとセロトニンですが、特にお子さんの場合はグルタミン酸やヒスタミンも非常に脳に関わってきます。

2. ドーパミンの調整、DBH(ドーパミンβヒドロキラーゼ)

2-1. ドーパミンの調整

ドーパミンはやる気の神経伝達物質なので、ドーパミンが低下しているとやる気が出ない、意欲の欠如という症状が出ることが多いです。反対にドーパミン過剰だと、興奮、幻覚が出るので多すぎても少なすぎてもいけません。ドーパミンは脳にとっての神経毒なので多すぎると調整が必要です。僕がどのようにドーパミンを調整しているかと言うと次の5つです。

  • メチレーション(OMならナイアシン)
  • GF,CF,Sugar,Cafeine free
  • DBH(腸内環境)
  • ビタミンD+チロシン
  • BH4(アンモニア、アルミ、MTHFR1298)

メチレーションが回っているかは症状と好塩基球数で評価しますが、好塩基球数が30以下ならオーバーメチレーション、70以上ならアンダーメチレーションとウォルシュ博士は定義しています。

ドーパミンの調整で誰もが最初に行うべきは腸内環境です。GF(グルテンフリー),CF(カゼインフリー),Sugar(シュガーフリー),Caffeine free(カフェインフリー)で、これらはドーパミンに影響します。

低血糖は、ドーパミン、ノルエピネフリンに関係します。

カフェインはドーパミンの代謝を遅らせるので、興奮作用があります。ウィリアム・ショー博士がいつも強調するのはドーパミンβヒドロキシラーゼ(DBH)です。これは、ドーパミンをノルエピネフリンに変換する酵素で、腸内環境の悪化によるクロストリジウムの存在によってしばしば阻害されます。ドーパミンβヒドロキシラーゼを測る一番良い方法は、有機酸検査でフェニルアラニンとチロシンの代謝物を診ることです。

2-2. DBH(ドーパミンβヒドロキラーゼ)欠乏症

これは5年位前の僕のドーパミン検査です。

この時はあんまり腸が良くなかったからだと思いますが、ドーパミン2.0とノルエピネフリン0.17の値から推測すると、ドーパミンからノルエピネフリンへの変換が阻害されていると考えられます。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1474/
DBH遺伝子の遺伝子多型により、DBHを欠乏させノルエピネフリンの低下を引き起こす。
小児期から交感神経欠如症状、特に起立性低血圧、眼瞼下垂が出現。
有病率4%

ドーパミンの原料はチロシンというアミノ酸ですが、このドーパミンが補酵素の銅とビタミンCによりノルエピネフリンに変換されて、ドーパミンβヒドロキシラーゼになります。活性中心の銅が酸化されないためには、ビタミンCが必要です。銅過剰タイプの場合、ドーパミンからノルエピネフリンに過剰転換され、反対にクロストリジウムが過剰だとドーパミンβヒドロキシラーゼが阻害され、ドーパミンは多くなり、ノルエピネフリンが少なくなります。

ドーパミン代謝の基本はここで、このドーパミンがノルエピネフリンに変わるドーパミンβヒドロキシラーゼ阻害要因は3つあります。一つはクロストリジウムの増殖、一つは元々の遺伝子変異であるドーパミンβヒドロキシラーゼ欠乏症。また、鉛の蓄積もドーパミンβヒドロキシラーゼを阻害します。ご自分の有機酸検査の結果を見て、ドーパミンに対してノルエピネフリンが極端に低くなってる人は何らかの要因によってDBHが阻害されていると考えられます。遺伝子多型によるものの場合の特徴は、交感神経欠如症状、特に起立性低血圧と眼瞼下垂の症状が小児期から出現します。

このDBH欠乏症は 、夏に症状が悪化し、欧米での有病率は4%だそうです。WHOが発表しているうつ病の有病率が大体3〜5%なので、4%というのはうつ病の有病率と同じなので、もしかしたら皆さんの中にもいらっしゃるかもしれません。こういった場合はどう対処すればいいのでしょうか。ノルエピネフリンが低下している場合は、集中力がなくなり、ドーパミンがたまってイライラするかもしれません。

2-3. LowDBHの患者さんをチロシンで治療するな

集中力を増すために、チロシンを追加するのはよく使われる方法です。チロシンはチロシンヒドロキシラーゼという酵素の元で、Lドーパからドーパミンに変換されます。そのドーパミンがノルエピネフリンに変わっていくのでチロシンを摂るとこれら全部が上がっていくので、一見良い方法に見えますが実はそうではありません。

その理由は、ドーパミンとノルエピネフリンのバランスが崩れるからです。ノルエピネフリンはある程度作られると、ネガティブフィードバックをかけて、チロシンからドーパミンへの生成を抑えます。DBHがうまく働かない人というのは、ドーパミンばかりが増えてノルエピネフリンは増えないため、このネガティブフィードバックが働きません。つまりドーパミンβヒドロキシラーゼが働かない人がチロシンを大量に摂ると、ドーパミンとノルエピネフリンのアンバランスがさらに加速してしまいます。

ドーパミンは神経毒で、活性酸素を発生するホモバリニン酸に代謝されます。ドーパミンというのは過剰だと毒となり、この毒物が脳内で増えると活性酸素を発生させて脳内グルタチオンを枯渇させます。ショー博士によると、その状況が長く続くのが一番の問題だそうです。

やる気がない人には、ドーパミンを増やそうとしてついついチロシンとビタミンDを投与しがちですが、その前に必ずDBHを見て、腸内環境が悪ければまずはDBHを働かせるためにクロストリジウム対策をします。有機酸検査でクロストリジウムが上がってるかどうかはわかります。ただしDBHを阻害するのは、クロストリジウムだけではありません。様々な腸内悪性細菌が阻害すると言われていますので、腸内環境はドーパミンの代謝を整える第一歩だ、ということをこの発表を見て改めて思いました。

2-4. Low DBHを疑う症状

LowDBHを疑う症状は、以下の通りです。 

  • 疲労、運動不耐性、低血圧。
  • 自然流産、自閉症の男の子
  • ADHDが増加し、活動性が低下した
  • 7歳を超える年長児の夜尿症(遺尿)
  • アルツハイマー病
  • 統合失調症
  • うつ病
  • アルコール依存症

アルコール依存がある人は、LowDBHの可能性があります。是非、まだ検査していない人は、全ての検査の基本である有機酸検査を受けてみてください。

3. クロストリジウムは手強い、ADHDの68%は銅過剰

3-1. クロストリジウムは手強い

クロストリジウムは、一般的にメトロニダゾールとバンコマイシンという薬を投与するのが標準プロトコールです。芽胞を形成し胞子を作って抗生剤耐性になるので、簡単には除菌できません。メトロニダゾールをストップすると再発してしまいます。HPHPAというのはクロストリジウムの産生物で、抗生剤を何度使っても再発してしまうので、何らかの対策が必要です。

ショー博士のプロトコールも参考にしてみましょう。

  • バンコマイシン10 mg / Kg /日divを3回投与10日
  • フラジル(メトロニダゾール)30 mg / Kg /日を3回に分けて10日
  • 乳酸菌アシドフィルスGG1日あたり1,000億
  • ラクトバチルスラムノサス、Culturell VSL#3、サッカロマいセス
  • セルグルタチオンまたはNアセチルシステイン
  • 脳のグルタチオンを増やし、神経毒性ドーパミン代謝物を減らす
  • 高タンパク質食(フェニルアラニン、チロシン)は、有毒なクロストリジウム代謝物の生産を増加させるかも

バンコマイシンとメトロニダゾールの薬は10日間使いますが、それ以外にも色々な乳酸菌を使っています。

CulturelleのVSR#3はi Herbでも売っていますが、通常は5〜20ビリオンですが、112ビリオン入っていて、8種類のマルチの乳酸菌ということがポイントです。

1種類の乳酸菌だと耐性ができやすいので8種類の乳酸菌を使うということ、冷蔵された生菌を使うと良いとショー博士はおっしゃっていました。

アメリカでは冷蔵庫で売られている乳酸菌ですが、日本では冷蔵便で配送されないこともあり死菌だから大丈夫と謳っていますが、実際効果はありません。EPA、フィッシュオイル、乳酸菌は鮮度が重要なので、サプリメントは購入場所を選ぶべきです。

ミセルグルタチオンまたはNアセチルシステインを使う理由は、ドーパミンの代謝物が溜まってる人が多いため、これを減らして脳のグルタチオンを増やすためです。そしてあまり高タンパク質食はお勧めしないということをおっしゃっていました。

クロストリジウムは難しいですが、善玉クロストリジウムのミアリ酸を使っています。クロストリジアおよびDBH欠乏症には、ドーパミンが増加して症状が悪化するため追加のチロシンを与えないでください。

ドーパミンが上がっていて、ノルエピネフリンが下がっているパターンなら、まず腸内環境を調整しますが、中には両方下がっている人もいます。ドーパミンも低く、ノルエピネフリンも低い場合は、元々のドーパミンの材料が少ないのが原因なので、チロシン、フェニルアラニン、そして不活剤のビタミンDを投与します。

勉強に集中できない、最後まで仕事を終わらせられないなどでADHDと診断を受けた人には、ドーパミンとノルエピネフリンの両方が下がっている場合、チロシンとビタミンDを摂ってもらっています。

3-2. ADHDの68%は銅過剰

ADHDの方は、コンサータ、もしくはストラテラというお薬を飲んでいる方が多いです。コンサータは中枢神経刺激薬(ドーパミン再取り込み阻害薬)なので、一種麻薬と同じです。ストラテラはノルアドレナリンの再取り込み阻害薬です。コンサータだと集中力が高まり、ストラテラだと冷静になると言われていていますが、腸内環境を良くして、特に銅過剰の人は亜鉛を沢山入れてDBHの働きを調整してあげるとこの薬が効くだろうと思います。

僕の場合は、とりあえず食事をみて、腸内環境を治して、その次がビタミンDとチロシンの投与です。それでもうまくいかない場合はBH4(テトラヒドロビオプテリン)の調整をします。ビオプテリンというのはチロシンからLドーパをつくる酵素の補酵素です。このテトラヒドロビオプテリンがうまく働くのを阻害する要因は、アンモニアの蓄積にBH4が使われるからです。他にも、アルミの蓄積、そしてMTHFR1298の遺伝子変異です。この遺伝子変異は仕方ないとしても、アンモニアの解毒とアルミのデトックスをして、アンモニアを貯めないようにすると徐々にドーパミン代謝が良くなっていくと思います。

ストラテラの薬の働きがとても強いので、依存してしまう患者さんが多いですが、これらを総合的にやっていくと、薬の量を将来的に減らすことができると思います。ただその過程には年単位かかるので、全て自然にやろうとすると、やる気が出ないまま1年、2年人生を過ごしてしまうかもしれないので、僕は薬を推奨しています。薬を止めたことによってかえって副作用が出る人がいますが、この原因として考えられるのは、第一に栄養失調です。栄養をきちんと入れてあげると、薬の離脱がスムーズにいきます。

4. セロトニンの調整、グルタミンの調整、症例

4-1. セロトニンの調整

セロトニンも同じくメチレーションです。特にSSRIがこれだけ蔓延しているところを見ると、メチレーションの与える影響は非常に大きいです。完璧主義、儀式的な行動、季節アレルギー、いつも決まったいつも同じ食事、いつも同じ服、いつも同じ道順で家に帰る人は低メチレーションですから、セロトニンが少ないです。

下記は、セロトニンがどこで作られてるかという図になります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6047317/

セロトニンの9割は腸で作られます。緑のところは、腸のクロム親和性細胞(Enterochromaffin Cell)です。セロトニンを作る5HTを作る細胞というのは、脳からの命令でも、腸内環境からの影響を受けても作ります。そのため、腸脳相関がとても重要だという話です。

クロストリジウムの芽胞から短鎖脂肪酸(SCFA)が情報伝達物質として働いているというのは有名です。クロム親和性細胞に働いて、セロトニンを分泌します。セロトニンがうまく働いていない人、幸が薄い人というのは、やっぱり脳にストレスがかかっている人で、腸内環境が悪い人ということがよくわかります。

4-2. 炎症はセロトニンを枯渇させる

もう一つセロトニンに大きな影響を与えるのは、炎症です。炎症があるとトリプトファンの10%しかないセロトニンの産生経路がブロックされて、全てキノリン酸経路になってしまいます。そのためセロトニンが少ない人は全身の炎症をいかに抑えるかということが非常に重要になります。

炎症はセロトニンを枯渇させる

この論文は、イラスト入りでわかりやすいので色々なところで見かけますが、チロシンをドーパミンに変換するチロシンヒドロキシラーゼという酵素の補酵素はBH4です。

同じくトリプトファンをセロトニンに変換するトリプトファンヒドロキシラーゼの補酵素もBH4です。BH4がないと、ドーパミンもノルエピネフリンもセロトニンもできません。もしドーパミン、セロトニン代謝がうまくいかなかったらBH4の3本柱であるアルミとアンモニアにも留意してみてください。

  • ドーパミン ↓意欲低下   ↑ 緊張
  • セロトニン ↓疲労、うつ  ↑ 不安、緊張
  • ヒスタミン ↓学習低下   ↑ 神経的興奮
  • グルタミン ↓学習     ↑ 興奮
  • 腸の症状
  • 全身の感染
  • 毒素への暴露

ドーパミンとセロトニンは、メチレーションの影響が大きいです。実際にドーパミンやセロトニンを作る方と、ドーパミンやセロトニンが効く方、受容体に挟まる方と、それと再取り込みされるのと、色々な要素がありますが、再取り込みの要素が大きいです。それ以外にドーパミンの生成経路とかセロトニンの生成経路も関係しますので、そこも併せて見ておくと理解が深まると思います。

4-3.グルタミンの調整

グルタミン酸は学習に不可欠の神経伝達物質です。 計算力や記憶力が高い人というのはグルタミン酸が沢山出ています。グルタミンの調整は、ビタミンB6とグルタミン酸受容体のほどよい刺激と、グリアジンの問題があります。

グルタミン酸神経には色々な種類がありますが、問題があるのは脳の炎症を引き起こすNMDA型のグルタミン酸受容体です。このグルタミン酸受容体が異常興奮してしまうと、グルタミン酸過剰症状が出ます。その過剰症状が起こすのはグルタミン酸そのもの、ビタミンB6によるGABAへの転換不足、そしてマグネシウムなしのカルシウムが、グルタミン酸神経を興奮させます。グリシンと低血糖発作があると、興奮しやすくなり、一旦感情的になると止まらなくなることがあります。

グルテンの構成成分であるグリアジンについて発表がありましたが、統合失調症の1/3の人にグリアジンの抗体の上昇があったということです。このグリアジンとNMDA受容体はタンパク構造が似ています。そのためグリアジンに抗体がある人は、酵素反応をして、グルタミン酸受容体も攻撃されてしまい、その結果グルタミン酸神経系が過敏になるということが十分考えられます。

統合失調症にグルタミン酸神経が関係するのもこれが原因だと思います。確かに統合失調症に関するグルテンフリーの論文は沢山あります。もちろんグルテンフリーは、リーキーガットや、リーキーブレーンを防止する役目もありますが、グルタミン酸神経を抑えるというのもこの食事療法の重要な意味だということを、統合失調症の栄養療法専門医のキャリー先生がおっしゃっていました。統合失調症の方にはグルテンフリーにしてもらってカンジタを除菌することがコツです。

グルタミン酸はGABAに変換されるので、グルタミン酸からGABAへの変換ができない人は、大勢の話し声の中で相手の声だけを聞き取ることができません。そのため、群衆の中で人の声が聞こえなくなったり、理解ができなくなってくるというのは、GABAの不足している人の典型的な症状です。そういう人はグルタミン酸神経の興奮も伴っていることが多いです。対処として一番簡単なのは、ビタミンB6です。ある患者さんはやはり集団の中で話し声が聞き取れないと言うことで、ビタミンB6を400mg摂っていました。それでもうまくいかなかったので、とりあえず活性型ビタミンB6をもう少し摂るようにしてもらいました。ビタミンB6を活性型ビタミンB6に変換できない人というのは、GABA不足の原因になっている人が多いので、GABAそのものを飲んでいただくことで症状は改善することが多いです。

グルタミン酸をGABAに変換するGAD(グルタミン酸脱水素酵素)の補酵素はビタミンB6ですが、他に亜鉛も大きく関与しています。亜鉛はビタミンB6を活性型にするためにも必要です。水銀の蓄積はGADを阻害するので、それでも効果がなければデトックスします。僕はガヤガヤしている居酒屋に行くと人の話が聞こえなくなりますが、ビタミンB6を飲んでから行くと全然違います。

5. 症例、ヒスタミンの調整

5-1. 48歳、鬱病、過敏性腸症候群

48歳女性鬱病の患者の毛髪検査です。

この方はカウンティングルールで言うところの3番に引っかかるので、ミネラルの輸送障害があります。ただこの方の特徴は、カルシウムとマグネシウムが非常に高くてナトリウムとカリウムが低いことです。副腎疲労が結構疲弊期にかかっていると思われますが、カルマグが高いので脱灰が亢進してると読めます。脱灰が亢進してる人は、往々にしてカルシウムが過剰です。カルマグが高く低血糖症があると、グルタミン酸神経が興奮しやすくなります。普段は何ともなくても、興奮するとなかなか興奮が自分で止められない、非常に疲れやすいのも特徴です。

マグネシウムが不足してカルシウムの脱灰を止められず、ミトコンドリアが少ない人には、まず低血糖を確認します。もちろん腸内環境も確認する必要がありますが、低血糖があったらまずそこを治していくと、かなり楽になります。マグネシウムを投与して、カルマグの数字が下がると体調が戻ってきます。毛髪中のカルシウムは、グルタミン酸神経の過剰興奮を測る指標にも使えるということになると思います。

5-2. ヒスタミンの調整

ヒスタミンは学習、認知に非常に重要な働きをしています。ヒスタミンの受容体は、1〜4まであります。風邪薬や抗アレルギーの薬など抗ヒスタミン薬を飲むと頭がぼーっとするのは、脳のヒスタミン神経が抑えられるからです。ヒスタミンは、脳にとって重要な働きをしています。不足も良くないですが、過剰だと興奮して問題になります。脳神経細胞を興奮させることが学習につながるためある程度の興奮は必要ですが、過剰な興奮は神経細胞死を引き起こすので、適切な量の調整が必要です。これは、グルタミン酸やドーパミンも同様です。

「頭の回転の速さ」に脳内ヒスタミンが関与

前頭葉のヒスタミンH3受容体と作業記憶が関係していることを発見。前頭葉のヒスタミンH3受容体密度が低い人ほど、作業記憶に重要な前頭葉の活動が高い。

https://www.qst.go.jp/site/press/1183.html

5-3. 好塩基球数を求める

メチレーションの状態を測るのに好塩基球数を見ると良いのは、好塩基球数がヒスタミンの代謝に関わっているからです。

  • 白血球数4800×好塩基球(BASO)の割合(%)2.5÷100
  • 好塩基球数<30 なら OM
  • 好塩基球数>70 なら  UM

ヒスタミン代謝も推定できる

血中のヒスタミンは98%以上好塩基球に存在しているので、ヒスタミン濃度は、末梢血中の好塩基球数と相関します。好塩基球数が30以下だったらオーバーメチレーション、70以上だったらアンダーメチレーションです。ヒスタミンを代謝するメチル基が余っているか足りないかを見ますが、この好塩基球数はメチレーションを見ると同時にヒスタミンの代謝も見ることができます。好塩基球数が多いということは、ヒスタミンが余っているということです。

上の検査結果の人は、白血球が4,800で好塩基球数が2.5%の人は4,800×2.5÷100なので120です。好塩基球が120は結構多く、アンダーメチレーションで、ヒスタミンが過剰です。ヒスタミンはヒスチジンから出来ますが、少なすぎても多すぎても良くありません。

5-4. ヒスタミン量はSAME、DAOで決まる

メチレーションによってNメチルヒスタミンに代謝されるか、もしくはDAO(ジアミンオキシダーゼ)によって代謝されます。メチレーションがダメでDAOがダメだったらヒスタミンが溜まっていくので、ヒスタミンの過剰が問題になるのは特に低メチレーションの人です。低メチレーションの人は、このDAOが不活性がうまくいっているかでヒスタミン過敏症かどうかが決まります。

もし熟成した魚を食べて、解離が出たりイライラする人はヒスタミン過敏です。そういう方にはメチレーションとSAMeを回してあげる、もしくはヒスタミンブロックという中身がDAOのサプリメントを摂るのがよいでしょう。

DAOをコードしている遺伝子というのは、AOC1という遺伝子です。上記は僕の23andMeという遺伝子検査の結果ですが、AOC1のところがC/Cとあるので遺伝子変異がなかったんですが、ここに遺伝子変異がある人はDAOの活性が悪いので、ヒスタミン過敏の症状が強ければ一度遺伝子検査をしてみるのも良いでしょう。

それぞれの問診と検査について評価して、どドーパミン、セロトニン、ヒスタミン、グルタミンの4つのどれかが過剰か欠乏になっていないかを見ることが、精神疾患の栄養療法に不可欠な要素だと思います。

6. 精神科統合医療の検査項目、免疫亢進のプロセス

6-1. 精神科総合医療の検査項目

我が国の栄養療法では血液検査を診て、その血液検査からいろんな状態を診るというのが普及していますけれども、他の国ではどうなのでしょうか?

ある精神科の統合医療の先生のいつも行っている検査項目は、下記項目でした。

  • 副腎
  • 甲状腺
  • リンパ球サブセット
  • 抗体検査
  • 浸透圧 (2(NA+k)+BS/18+Bun/2.8)=290くらい
  • 有機酸検査

副腎と甲状腺機能、そしてリンパ球のサブセットを測っていきます。リンパ系のサブセットというのは、リンパ球というのはCD4とCD8というT細胞の割合ですが、ヘルパーT細胞と細胞傷害性のT細胞の比率を測ります。その比率がおかしいと、免疫が不活されていることが分かります。免疫反応が動いてるということは、体のどこかに炎症や感染、毒素が入っているので、それが動いているのかどうかを診るために、リンパ球サブセットと抗体検査、IgGとIgAを診るそうです。

精神疾患の先生も、副腎、甲状腺と全身の免疫反応はやはり診ていますが、免疫や炎症が脳にいかに影響しているかということを表しています。他に頻繁に測るのは、浸透圧検査だそうです。浸透圧が上がっていたら、毒素が体に入っていることを意味するそうです。

浸透圧の日本での計り方は、血液検査でわかります。ナトリウムとカリウムを足して2倍にしたのと血糖値を18で割った値とBunの2.8で割った値を全部足すと浸透圧が出ます。290くらいが平均値で、浸透圧は基本的には不変です。普通の人の場合は、血糖値が高くなったり、Bunが高くなった場合、ナトリウムとカリウムが低くなって補正します。

バソプレシンという抗利尿ホルモンを測るともおっしゃっていました。慢性のマイコトキシンが脳に与える影響で、浸透圧じゃなくて利尿に影響します。夜間に利尿が多くなったら、それは脳が慢性炎症を起こしている印です。

6-2. 免疫亢進のプロセス

免疫亢進のプロセスは、下記の通りです。

掌蹠膿疱症患者では、血清免疫グロブリン濃度が上昇している
ヘルパーT細胞の割合が増加している

ばい菌(抗原)が入ると、マクロファージがそれを食べて、その情報をヘルパーT細胞に伝え、ヘルパーT細胞がB細胞、抗体を作ります。 IgGやIgAなど、その抗体値が上がってくるというのが、体の免疫反応です。このヘルパーT細胞の数字の変化や抗体の数字の変化を見て、体の中で免疫反応が起きているかどうかを診ていると先生はおっしゃっていました。

この免疫反応は、自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎や掌蹠膿疱症の患者さんで診ています。そのような免疫が関係する病気だと、これらの数字の変化が顕著で分かりやすいからです。例えば掌蹠膿疱症の患者の場合、免疫グロブリン濃度、ヘルパーT細胞の割合が増加しています。

  • 掌蹠膿疱症  50歳女性
  • ビオチン療法2年間でだいぶ良い
  • ロキソニン量も減った
  • 現在も頸椎、鎖骨中心の痛み持続
  • 歯アマルガムあり
  • 抜髄歯あり
  • 根尖病巣はなし
  • 潰瘍性大腸炎既往あり
  • アマルガム除去後発疹あり
  • α2グロブリン、γグロブリン、CRP上昇
  • IgG 2169 mg/dl ↑
  • IgA 399 mg/dl↑
  • IgM 111 mg/dl
  • リンパ球サブセット
  • B細胞 正常
  • T細胞 81%↑
  • そのうちヘルパーT 58%↑

当院でビオチン療法をしていた50歳の女性は、ガンマグロブリン、抗体、IgG、IgA、リンパ球のサブセットのうちのT細胞の割合の全てが上昇していました。炎症は脳に非常に影響するので、炎症を取らないと根本的に治らないということもあるため、精神疾患の患者さんでもここを診ることは大切になります。

6-3. ヘルパーT細胞がTh2優位

( Science. 2011 Jan 21;331(6015):337-41.)

免疫が異常に亢進していたら何を使うかと言うと、大体多くの人はT細胞が分化して1型と2型になるうちの2型が優位になります。

何故2型が優位かというと、アラキドン酸、プロスタグランジンE2がTh2への分化を促進するためです。多くの人がアラキドン酸優位の食事をしているため、T細胞に抗体を作らせて、アレルギー症状を引き起こしているという人が多いです。バランスを整えるために乳酸菌を摂ったり、1と2のバランスを整えるTreg細胞を活性化させるために酪酸を摂ったり、これが免疫に対するアプローチだと思います。

乳酸菌や酪酸のサプリメントで免疫の調整をするのは良いのですが、大事なことは免疫反応が上昇している根本原因を探ることです。この先生は、免疫反応が亢進していたらその時点で免疫反応の原因を考えるそうですが、免疫反応が亢進している原因のひとつは、隠れた感染であるステルス感染とおっしゃっていました。

もう一つは環境毒素です。環境毒素とは、ホルモンやミトコンドリア、免疫にも影響するので、末端的にはホルモン、ミトコンドリア、隠れた感染、重金属やカビ毒を見つけ流必要があります。

僕の場合はだいたい血液検査と有機酸検査で当たりをつけますが、この先生の場合は免疫反応を一回診て、免疫反応が動いていたらそこでこれらの検査を追加するプロセスを踏んでいるそうです。

7. カビと酵母、多症候性患者にナイスタチン、カンジタ除去について

7-1. 真菌にはカビと酵母がある

カンジタは、腹部膨満、慢性疲労、全身症状を起こします。カビは、カビ毒によるアレルギーやミトコンドリア機能障害が問題になります。酵母は、カンジタやサッカロマイセス、カビはアスペルギルスが有名ですが、カビの除菌をしてもカビ毒だけ残るので、カビ毒検査は必要です。カビ毒は脂溶性なので、脳の中に入り込んで集中力、記憶力を低下させます。炎症反応があったらカビ毒を診ておくべきです。有機酸検査の一番最初のところは真菌チェックなので、カビ、酵母、カンジタであがる項目があります。

これはショー博士の論文ですが、自閉症の子どもに対して、ナイスタチンを10日間使ったら、アラビノースなどの有機酸検査関係の項目が20%〜60%下がったというスタディです。

7-2. 多症候性患者にナイスタチンが有効

下記は様々な症状(多症候性)を持っている人にナイスタチンを投与した結果、様々な症状が全て軽減したというショー博士の論文です。

Effectiveness of nystatin in polysymptomatic patients. A randomized, double-blind trial with nystatin versus placebo in general practice

H Santelmann et al. Fam Pract. 2001 Jun.

  • 精神的、腹部および泌尿生殖器の訴えに顕著な効果
  • 生殖器・・・膣の灼熱感、かゆみなど
  • 腹部症状・・・膨満感、げっぷなど
  • 精神症状・・・無気力、集中力低下、不安、アルコール酩酊(不適切な笑いなど)など
  • 低血糖や疲労が強い場合も積極的治療の対象

特にカンジタは脳に影響するので、統合失調症にカンジタ除菌は必須だとおっしゃっていました。日本人も同じく糖質を摂る人にカンジタが増えているので、低血糖、カンジタ、水銀とセットで治療するのが重要です。

カンジタは治療しても免疫が落ちたり、水銀や毒素が溜まっていると再発しやすいです。僕の場合は、除菌した後にデトックスまですることをお勧めしています。

ナイスタチンというのは抗真菌薬で、それほど種類があるものではなく、人間の体でいうコレステロールの合成を阻害します。非吸収性でリーキーガットを治してから使うと効果が高く、副作用なく使えますが、そうでない場合副作用報告が多いです。

7-3. 蜂蜜はクオラムセンシングの減衰に効果的なポリフェノール

下記は、蜂蜜がカンジタのバイオフィルムの破壊に役立つという論文です。

Scaffold of Selenium Nanovectors and Honey Phytochemicals for Inhibition of Pseudomonas aeruginosaQuorum Sensing and Biofilm Formation

Prateeksha et al. Front Cell Infect Microbiol.2017.Free PMC article

バイオフィルムという消化酵素の中の微生物は、同調して同じリズムを保つクオラムセンシングをしています。

インドネシアの蛍10万匹が、お互いの信号を感知して一斉に光って一斉に消えることをクオラムセンシングといいます。そのクオラムセンシングの機能を阻害するのが蜂蜜で、この減衰に効果的です。低血糖の治療に蜂蜜を使っている人は、同時にバイオフィルムの破壊にも役立っているかもしれません。

免疫状態、環境毒素、自律神経、腸内環境、ゲノムの解析をするのが流れだとショー先生はおっしゃっていました。最初に4つの神経伝達物質を調べて、その流れに影響を与えるような要因を調べるというのが、現在の世界的な流れだと思います。

8. 症例解説

8-1. 症例

45歳の女性の問診と、血液検査以外の毛髪、便検査、有機酸検査の結果をみてみましょう。この方がどんな根本原因を持っていて、それに対してどのような対処が有効かを考えてみてください。

症例 45才女性

  • 15歳の頃から疲れやすかった。
  • 集中力がなく、考えることができない。
  • 無理に考えようとするとイライラする。
  • 突然泣きたくなることがある。
  • 不安な気持ちが出始めると自分でコントロールが効かくなる。
  • 慢性鼻炎がある眠りが浅い。朝が起きられない。
  • 食事は、なるべく3食食べられるように頑張っている。
  • グルテン、カゼインフリー食を行なっている。
  • マルチビタミン、EPAを摂っていた。3年前にピロリ菌除菌終了。

15歳の頃から疲れやすかったということなので、子どもの頃からどれくらい症状があったかというのを確認するのも重要なポイントです。子どもの頃のトラウマや幼少期や中学生の頃の様子は、特に摂食障害などの典型的な精神疾患の場合は関係してきます。

この方の場合、精神疾患はありませんでしたが、生まれつきの副腎疲労なのか、成長期に伴って貧血が出てきたのかを確認します。女性の場合は特に、成長のスパートと生理が始まるのが同時期なので、貧血で症状が出る人も中にはいます。

集中力がなくてイライラするのは、ドーパミン、セロトニン、グルタミンが混ざっているような症状で特定できません。突然泣きたくなることがあるというのは、セロトニン症候群かもしれず、不安な気持ちが出始めるとコントロールが効かなくなるというのは、ドーパミン神経の過剰興奮なのかもしれないし、夕方に起きるのなら低血糖が助長されているのかもしれません。ただ確定的なことが言えないので、神経の状態を検査でも評価した方が良いでしょう。

慢性鼻炎があるので、その炎症が精神疾患に影響している可能性も否定できなくはないです。特に首から上の炎症というのは脳に近いため大きく関係します。慢性鼻炎がある人は上咽頭炎かもしれないし、上咽頭炎があれば不眠の原因になるかもしれなません。この人は眠りが浅くて朝起きられないので、いわゆる副腎疲労、低血糖のパターンを伴っているのかもしれません。甲状腺ホルモンや副腎ホルモンを測ることは重要です。

1日3食の食事、グルテン、カゼインフリー食を実践していますが、今のところ改善がないそうです。マルチビタミンとEPAは摂っていました。

この方は、資格の勉強しようと思ったけれど、全然頭に入ってこないことが一番辛かったそうです。脳機能をいかに改善するかという話になりますが、3年前にピロリ菌の除菌は終了しているので、やはり腸内環境が抗生剤を使って荒れてるんじゃないかなということも念頭において診ていきます。

最初にまず腸内環境を診ましょう。

腸内細菌バランスには良性、境界型、悪性とありますが、この方のイーストは0で、悪性菌も0ですが、境界型菌が結構います。バクテロイデスとビフィズス菌は3+で適量ありますが、ラクトバチルスが1+で、決定的に少ないです。乳酸菌は少ないと、境界型が増えていきます。

炎症や消化酵素を見ると、消化酵素は208でかなり少なくて消化不良だと思います。炎症マーカーを見るとラクトフェリンが3.2、カルプロテキシンが10で、炎症が少しありますがそれほど大きくはないと思います。ライソザイムは少し多いです。全部正常値をざっくりいうと、ラクトフェリンから順番に1、10、100くらいです。炎症は軽度ですが、免疫がすごく下がっているように思います。

分泌型のIgAは悪性菌が腸内フローラに寄り付かないように守っていますが、IgAが60しかないため悪性菌と良性菌がうまく区別できなくて、ディスバイオシスを起こす原因になるかもしれません。

短鎖脂肪酸は一応正常範囲ですが、メチル酸もトータルの短鎖脂肪酸も6.7なのでやや低めです。短鎖脂肪酸というのは、基本的には良性菌によって食物繊維が発酵してできるものですから、良性菌の乳酸菌が少なければ生成される短鎖脂肪酸も少ないです。

8-2. 腸内環境悪化のレベル

  • レベル1 良性細菌の減少、短鎖脂肪酸の減少
  • レベル2 消化酵素の低下、炎症、粘膜免疫の低下
  • レベル3 悪性細菌の増殖

カリシュ先生によると、腸内環境の悪化のレベルはレベル1〜3まであります。レベル1に当てはまると、良性細菌が減ってその結果腸内発酵がうまく働かないため、短鎖脂肪酸も減ってしまいます。

レベル2はどうかというと、消化酵素が低下して炎症があって、粘膜免疫が低下している、彼女はこれも当てはまるので、レベル2まで進んでいると考えられます。

レベル3になると悪性細菌が増殖してきます。CSAは培養検査なので、菌の培養が不確定ですが、これで見る限りはレベル1とレベル2に当てはまっています。有機酸検査ではカンジタが出てるから本当は悪性菌が出ていますが、ここまでではレベル2の腸内環境悪化だと分かります。

宮澤医院で行っている腸内環境検査を50例くらい見て、炎症が起きている人は前提として短鎖脂肪酸が減っていたり、良性菌が減っていたりするのか相関係数を取ってみましたが全く一致しませんでした。培養は大変参考にはなりますが正確ではないので、なかなか教科書通りにはいかないですが、これに当てはめてみると腸内環境の悪化はレベル2までいっていため、それぞれに対してアプローチが必要だということがわかります。やるべきことがはっきりするという意味ではこの検査は良い検査だと思います。良性菌、ミアリ酸、消化酵素、グルタミンとビタミンAを足してみました。

ストレスがある人、腸の炎症がある人、それと低血糖がある人には、是非グルタミンを摂ってもらってください。グルタミンは筋肉の崩壊にとても重要です。低血糖を起こしている人がほとんど筋肉が崩壊しています。低たんぱくだからといってプロテインを飲んでもっと失敗している人が多いです。低血糖に伴う低タンパクには低血糖の治療をしましょう。

8-3. 有機酸検査

次に有機酸検査を見てみましょう。

有機酸検査では1ページ目の1から18番までのところが腸内環境ですが、上がっているのが、アラビノース、4ヒドロキシ安息香酸でした。

アラビノースはカンジタのマーカーで、4ヒドロキシ安息香酸はバクテリアのマーカーで、3つくらい上がってます。クロストリジウムはあまり上がっていませんが、一般的な悪性細菌は少し多めかもしれません。カンジタも少し多いです。よく聞いたら腹部膨満の症状もあったので、あとからSIBOの検査も追加で行いました。

クロストリジウムが邪魔するというドーパミン代謝はどうかと言うと、クロストリジウムはあまり出ていなくて、ドーパミンとノルエピネフリンの差はそれほどでもなかったので、様々な症状が出ていたけれど、ドーパミン代謝は悪くないのかもしれません。

では、セロトニン代謝はどうかというと、セロトニンはとても低く、キノリン酸は少し上がっているので、少し炎症があるかもしれません。グルタミン酸代謝、低血糖とグルタミン酸代謝にもしかしたら症状の原因があるのかもしれないと推測できます。

グルタミン酸受容体にキノリン酸がくっつくので、グルタミン酸代謝ではキノリン酸も考えなければいけません。炎症を起こして今後キノリン酸がものすごくはねていたら、そのキノリン酸によってグルタミン酸神経が過剰興奮している可能性もありますが、このデータから見る限りそれもないようです。

その他、カンジタで上がってくる一つはシュウ酸です。この方はカンジダ感染があるので、シュウ酸が若干上がっています。カンジタがあるとシュウ酸結石があり、他に影響しやすいものはコハク酸です。

ミトコンドリアマーカーは24から29番までですが、26番のリンゴ酸が少し上がっていて、それ以外は下がっています。有機酸検査では色々な基質が他の基質に転換される時に、邪魔されていたら邪魔される手前が上がって、邪魔された後が下がるっていう、その高低差を見ています。このリンゴ酸を除いたら、全ての基質が足りないので酵素不足ではなくて基質不足、つまり三大栄養素が足りないということです。

エネルギー不足の原因には多くの場合、低血糖が絡んでいます。低血糖の人のパターンは、ミトコンドリアのマーカーが左にはり付いていることが多いです。タンパク不足、糖質不足、エネルギー不足です。それによってミトコンドリアが動いていないことがわかります。

ドーパミンは見て、メチレーションやケトン体は大丈夫です。アジピン酸、スベリン酸もそれほど上がってないから大丈夫です。栄養素メーカーはB5が上がっていますけど、これはサプリメントを摂っていらっしゃるからで、その他大きな問題はなかったです。

グルタチオンなどの毒性マーカーもそんなに多くはないです。

毒が溜まっているとグルタチオンが不足していて出せないのかもしれませんが、今のところ大きく上がっていません。アミノ酸代謝も大丈夫でしょう。

8-4. SIBOの検査

次に見たいのは、このSIBOの検査です。

SIBOの検査は、小腸で発生している水素とメタンガスの量を見ます。呼気を180分に渡って全部調べますが、左端から120分までは小腸のガスを、そして120分以降は大腸のガスを反映しています。大腸には乳酸菌がいるので、大腸のところでガスが出るのは正常です。大腸に行く前の小腸のところでいっぱいガスが発生していたら異常で、ガスの種類にはメタンと水素があります。

この緑の線がメタン、青い線が水素です。この方の場合は、メタンが引っかかっていますが、そんなに大きく跳ねていません。主に跳ねているのは大腸なので、bacterial overgrowth is not suspected(SIBOではありませんでした)という結果になっています。

SIBOの治療は大変ですが、この方はカンジダの除去をしたら膨満感がなくなりました。SIBOにもメタン型と水素型があり、普通SIBOは抗生剤を使って治療しますが、メタン型のSIBOの場合、低FODMAP食を長めに続けてもらう必要があると思います。

初心者のための栄養療法ロードマップ

宮澤賢史 · 2021年6月19日 ·

栄養療法を勉強したいけど、何から始めればよいかわからない、という方はいらっしゃいませんか?実践講座にはたくさんの動画がアップされているので、どれから見たらよいか迷うと思います。

初心者の方はまず、体の仕組みを知ることから始めてください。これを理解しないことには体の不調に対処できないからです。例えば、エネルギーが生まれる仕組みを知らずに慢性疲労に対処することはできないし、炎症を起こす仕組みと抑える仕組み、両方を知らずして慢性炎症を治すことは難しいでしょう。したがって、最初に学ぶべきは生物学や生化学なのです。

そして、それを理解するために用意した講座がこの『栄養療法成功へのロードマップ』です。ロードマップは5つのステップで構成されており、全てを網羅すると、サプリメントをとっても疲れが取れない理由や、タンパク質をたくさん摂っているのに低タンパク質が治らない理由が理解できると思います。それではさっそくその中身を見ていきましょう。

1. 栄養療法ロードマップの位置付け

「人生を変える80対20の法則」(リチャード・コッチ著)という本があります。80対20の法則はイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が提唱したもので、パレートの法則とも呼ばれています。例えば、売上げの8割は全顧客の2割が生み出していることがわかっています。その2割の顧客はロイヤルカスタマーと呼ばれ、企業にとって最も大切にされる存在になります。また、住民税の8割は全住民の2割の富裕層が担っています。国の経済政策が富裕層向けになる理由がここにあります。物事には全て偏りがあり、その傾向を見つけ出すと人生のあらゆる場面で役立つという話です。これは経済の話ですが、それ以外にも様々なことに当てはまります。

例えば、私のiPhoneに入っているアプリの数は140個です。でも、そのうち頻繁に使うのは30個程度、つまり21%でした。これも80対20の法則に当てはまりますね。140個全てのアプリの使い方を習得するよりも、30個のアプリに精通して使いこなす方が効率的ということです。これは栄養療法にも同じことが言えます。

『栄養療法成功へのロードマップ』の内容は、栄養療法に必要な知識のうちの2割程度ですが、約8割の栄養的問題はこれだけで解決できると思います。メチレーション、ホルモンバランス、デトックスなど、学ぶべきことはたくさんあるのですが、そこに手をつける前にこの2割に集中した方がいいだろうと考えています。逆に言うと、ここを十分把握しないままより高度な栄養療法の知識を求めても、あまり役に立たないでしょう。

2. サプリメントで疲れが取れないワケ

ミトコンドリアサプリを摂っても疲れがとれない、と感じている方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?宮澤医院に来院される患者さんにはサプリメントに詳しい方が多いのですが、うまくいっていないケースがほとんどです。なぜうまくいかないのか?それは、効いているサプリメントが20%程度で、残り80%が無駄になっているからかもしれません。私の仕事は、代謝が止まっている根本原因を見つけ出し、80%の無駄なサプリメントを取り除くことから始まります。

2-1. エネルギーの生産工場はミトコンドリア

ミトコンドリアは細胞の中にある小器官で、エネルギーを生み出す場所です。エネルギーの大部分はこのミトコンドリアで作られています。

エネルギーが作られるには、糖質、タンパク質、脂質の3大栄養素に加え、ビタミンやミネラルなどの補助因子が必要です。これら5つが組み合わさって、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーが作られます。

2-2. ミトコンドリアサプリの中身

ミトコンドリアサプリは、現代の食事で不足しがちなビタミンやミネラルなどの補助因子をまとめて詰め込んだものです。補助因子というのは、CoQ10やマグネシウム、亜鉛、ビタミンB群などです。

こちらのミトコンドリアサプリを見てみると、ビタミンB群、マグネシウム、CoQ10に加え、脂肪を燃焼するためのカルニチン、活性酸素を抑えるためのビタミンCなどが配合されています。しっかり食事を摂ってサプリメントを補給すれば、栄養的には万全に思えますよね?でも実際はうまくいかない人が本当に多いのです。

2-3. 疲れやすくなる3つの原因

疲れやすくなる原因として、大きく分けて3つのパターンがあります。

  1. ミトコンドリアでうまくエネルギーを作れないパターン
  2. 糖質や脂質が細胞やミトコンドリアの中に入れない、もしくは供給が不安定なパターン
  3. エネルギーは作れているが、無駄に消費されているパターン

これらのパターンを一つずつ詳しく解説していきましょう。

3. その1. ミトコンドリアでうまくエネルギーを作れないパターン

3-1. 人間のエネルギー回路はたったの3つ

人間のエネルギー回路は、解糖系、TCA回路、電子伝達系、これら3つだけです。解糖系はブドウ糖からピルビン酸を作る回路です。TCA回路はミトコンドリアの中にあり、ピルビン酸から水素を作っています。電子伝達系はミトコンドリア膜にあり、TCA回路で作られた水素を使って一気にエネルギーを生み出します。エネルギーの約9割がこの電子伝達系で作られます。

ポイントは、人間の体内でこれ以外にエネルギーを作る回路がないということです。したがって、エネルギー不足の人は、これらの代謝のうち少なくとも1つが滞っているということになります。

3-2. ミトコンドリアに必要な栄養素

ミトコンドリアサプリは、エネルギー産生に必要な栄養素を補うことを目的に設計されています。これらの栄養素をサプリメントで摂っても疲れが取れないということは、栄養素がうまく消化、吸収、利用できていない可能性があるということです。

ミトコンドリアに必要な栄養素
☑️ 解糖系にはビタミンB群
☑️ TCA回路にはビタミンB群、鉄、マグネシウム
☑️ 電子伝達系にはビタミンB2、鉄、CoQ10
☑️ 鉄を錆びさせないためのビタミンC、ポリフェノール

ビタミンB群、鉄、マグネシウム、CoQ10、これらの栄養素をあなたはうまく使えていますか?さっそくチェックしていきましょう。

3-3. 鉄吸収が悪い原因

体内に鉄が十分あるかどうかは、健康診断の貧血の項目からある程度推測できますが、より確実性を求めるならフェリチン値を測定するとよいでしょう。ヘモグロビン値が12以上あっても、フェリチン値が20以下であれば鉄欠乏症状が出ます。食事由来の鉄摂取量が不十分な場合、サプリメントで補給するとフェリチン値はすぐに上昇します。

しかし、鉄剤や鉄サプリを摂っているにも関わらず、フェリチン値が上がらない人もいます。原因は大きく3つ考えられます。1つめは炎症です。炎症が強いと、肝臓でヘプシジンというタンパク質が作られ、フェロポーチンの動きを止めてしまいます。フェロポーチンは、腸上皮細胞の鉄や、マクロファージからリサイクルされる鉄、肝細胞に貯蔵されている鉄などを血液中に排出する役割を担うタンパク質です。すなわち、炎症があるとヘプシジンが鉄の吸収と放出を止めてしまうということです。血液データ上では血清鉄が低い値を示します。この場合、いくら鉄サプリメントを摂ってもうまくいきません。炎症を治すことが最優先です。

Vitamins and Hormones. Volume 110, 2019, Pages 101-129
Chapter Five – Regulators of hepcidin expression
https://doi.org/10.1016/bs.vh.2019.01.005

2つめは乳製品です。鉄吸収を阻害する食品の代表格が乳製品です。乳製品はヘム鉄と非ヘム鉄、両方の吸収を阻害します。貧血が治らない人は、乳製品を摂ってはいけません。他にも、食品添加物やタンニン、フィチン酸などが鉄吸収を阻害します。

3つめは腸カンジダです。カンジダは健常人の腸にも住んでいますが、過剰に増殖すると腸に炎症を起こします。カンジダや腸内病原性微生物は人と鉄を取り合います。鉄は全生物の生存に必要な栄養素だからです。

鉄吸収が悪い原因
☑️ 炎症・・・ヘプシジンが鉄の動きを止める
☑️ 乳製品・・・ヘム鉄と非ヘム鉄の吸収を阻害する
 (他にも、食品添加物、タンニン、フィチン酸など)
☑️ 腸カンジダ・・・人と鉄を取り合う
 (他にも、腸内病原性微生物など)

3-4. 鉄は諸刃の剣

鉄はTCA回路にも使われるし、電子伝達系でエネルギーを生み出す際にも必要です。また、赤血球のへモグロビンのヘムに含まれており、酸素の運搬に関わっています。鉄は生命維持にとって重要なミネラルである一方、活性酸素の発生源になるという側面もあります。また、病原性微生物の栄養になり、増殖を促してしまうこともあります。

私の場合、患者さんに最初から鉄サプリメントを処方することはまずありません。高拍出性心不全(貧血の進行により酸欠状態になり、酸素を補おうとして心臓が頻脈になることで起こる不全)のような緊急時を除いては、最初から鉄を摂ってもあまりいいことがないからです。摂取した鉄が全てカンジダの餌になることで腹部膨満感が強くなったり、便秘がひどくなることもあります。また、炎症がある時に鉄を入れても、活性酸素の害がひどくなるだけです。鉄は体の状態を考慮して使うべき栄養素なのです。

3-5. 鉄の体内分布

体重にもよりますが、体内の鉄は3~4gで、そのうち65%は赤血球内でヘムとして存在し、残りの35%は脾臓やマクロファージ内でフェリチンとして存在します。下図の左がヘム、右がフェリチンですが、鉄が遊離すると活性酸素の発生源になってしまうので、簡単に遊離しないよう厳重に守られた状態で存在しています。

血液中の鉄は血清鉄と呼ばれ、トランスフェリンというタンパク質と結合して運ばれています。ヘムやフェリチンに比べ、鉄とトランスフェリンの結合は非常に弱いため、簡単に外れて活性酸素の発生源になります。そのため、血清鉄量は全体の0.1%と最小限に押さえられています。炎症を起こすと、体を炎症から守る仕組みが働き、血清鉄がさらに減ります。

鉄の体内分布
☑️ 体内の鉄は3~4%
☑️ 65%は赤血球内でヘムとして存在
☑️ 35%は脾臓、マクロファージ内でフェリチンとして存在
☑️ 血清鉄は全体の0.1%

ヘム鉄は吸収効率が良いと言われており、フェリチンを上げるのに有効です。ヘム鉄で上がらない場合は、キレート鉄で上がることもあります。ヘム鉄は非ヘム鉄に比べると安全な鉄ですが、そのヘム鉄でさえもずっと飲み続けると様々な害が出てきます。鉄を摂り過ぎて良いことは何にもありません。私がヘム鉄やキレート鉄を処方する場合は、必要最低限の量に留めています。それでフェリチンが上がってこないとか、貧血が改善しないのであれば、鉄吸収を阻害する要因を調べたほうがいいでしょう。炎症を抑えると、鉄サプリを摂らなくても勝手にフェリチンが上がるケースが多く見られます。また、女性の場合は、エストロゲンとプロゲステロンのバランスを整えると改善するケースもあります。

3-6. マグネシウムの重要性

エネルギーを作る際も使う際もマグネシウムが必要です。ATP(アデノシン3リン酸)は、アデニンとリボースに3つのリンが結合したもので、そこからリンが1つ離れると、その時にエネルギーを放出してADP(アデノシン二リン酸)に戻ります(ATP-ADPサイクル)。このようにリンがくっついたり離れたり、ぐるぐる繰り返しています。

電子伝達系の最後のステップで、ADPにリンが結合してATPになり、このATPがまたADPに戻る時にエネルギーが作られます。このリンを離す際に働くATPアーゼという酵素の補酵素がマグネシウムです。

マグネシウムが吸収されにくい原因はいくつか考えられます。まず1つめに、カルシウムとマグネシウムが配合されたサプリメントを使っている場合です。カルシウムとマグネシウムの吸収は拮抗します。もし、ALP(アルカリホスファターゼ)が上がらない、なかなか疲れが取れないなど、マグネシウムの枯渇が疑われる所見がある場合は、カルシウムを含まないマグネシウムだけのサプリメントにしてみて下さい。

The Journal of Nutrition, Volume 122, Issue 3, March 1992, Pages 580–586.
Interaction of Calcium and Phosphate Decreases Ileal Magnesium Solubility and Apparent Magnesium Absorption in Rats
https://doi.org/10.1093/jn/122.3.580

カルシウムとマグネシウムが一緒になっているサプリメントは比較的多く出回っていますが、その理由として原料的に供給しやすいことが挙げられます。ドロマイトといって、石灰岩の一部がマグネシウムに置き換わった鉱石がよく使われており、カルシウムとマグネシウムが2:1で含まれています。カルシウムとマグネシウムの比率は2:1が良いと言われていましたが、ミトコンドリア機能の改善を目的とするなら、1:1、あるいはマグネシウム単体のサプリメントの方がよいでしょう。余談ですが、カルシウム単独のサプリメントは決して取らないでください。心臓発作を起こすリスクが高まるので注意が必要です。

3-7. マグネシウムサプリの選び方

マグネシウムサプリを選ぶポイントは1つ、イオン化しているものまたはキレート化しているものを選ぶということです。マグネシウムは他のミネラル同様、腸上皮細胞のイオンチャンネルを通って体内に入るので、イオン化されている方が吸収率が上がります。イオンは水に溶けると電気を通す物質で、マグネシウムは水に溶けるとイオン化します。

BBA-Biomembranes. Volume 1828, Issue 11, November 2013, Pages 2778-2792
The structure and regulation of magnesium selective ion channels
https://doi.org/10.1016/j.bbamem.2013.08.002

私が使っているイオン化ミネラルは、Bio Nativus社のものです。アメリカのユタ州にあるグレートソルトレイクから採取した水で、塩分を取り除いて製品化されたものです。海水で一番問題になるのは水銀ですが、この湖は閉鎖系なので水銀汚染の影響を受けにくいと言われています。主成分は塩化マグネシウムです。水溶性の塩化マグネシウムは非常に吸収が良いので、1つの方法としてはこれがいいと思います。

もう1つの方法は経皮吸収させることです。マグネシウムはとても経皮吸収力が高いので、エプソムソルトを多めにお風呂に入れても十分吸収されます。「奇蹟のマグネシウム」(キャロリン・ディーン著)という書籍に詳しく書かれていますが、心臓発作や喘息の改善などに効果があるとされています。

次にキレートされたマグネシウムについてです。キレートとは、吸収されにくいミネラルをアミノ酸やクエン酸などの有機酸でカニバサミのようにはさみ込んで、吸収されやすい形に変えることを言います。イオン化マグネシウムとは異なり、アミノ酸が吸収される入り口から入っていくので、圧倒的に吸収がよくなります。ただし、法制上、キレート加工は日本のサプリメントメーカーはできないことになっているので、海外製のサプリメントを使うことになります。クエン酸マグネシウムやグリシン酸マグネシウムなどを使うのも手だと思います。

Magnes Res. 2003 Sep;16(3):183-91.
Mg citrate found more bioavailable than other Mg preparations in a randomised, double-blind study
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14596323/

ここまでマグネシウムサプリの紹介をしてきましたが、サプリメントを摂る前にやっておくべきことがあります。それは、腸を整えることです。腸を整え、乳酸菌を摂り、水溶性食物繊維の摂取量を増やすと、短鎖脂肪酸が増えてきます。短鎖脂肪酸はマグネシウムをキレートするので、自然なキレート効果が期待できます。したがって、腸を整えて海藻を摂るというのがマグネシウム吸収をよくするポイントです。

Z Ernahrungswiss. 1990 Sep;29(3):162-8.
Effects of short chain fatty acids and K on absorption of Mg and other cations by the colon and caecum
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2251858/

3-8. マグネシウム吸収の阻害要因

腸に炎症があるとマグネシウム吸収が落ちることがわかっています。腸の炎症が進行するとクローン病などに繋がってしまいます。宮澤医院を受診した150名のアンケートを集計したところ、マグネシウムを摂っていた人は16%で、そのうちの半分はカルシウムとマグネシウムが一体になったサプリメントを摂取していました。サプリメントを摂取していても、ALPが低いなど、Mgが欠乏している人がほとんどでした。そして、便中のライソザイムで腸の炎症を確認したところ、3分の2に腸の炎症がありました。

マグネシウムを効かせるためには、サプリの種類を選ぶこと、腸内環境を整えることが重要です。塩化マグネシウムはとても良いのですが、欠点は美味しくないことですよね。慣れてくると徐々に摂れるようになりますが、マグネシウムが足りない人ほどまずく感じると言われます。どうしても飲めないという人には、キシリトール入りの子供用マグネシウムパウダーを使うこともあります。エプソムソルトもおすすめではありますが、毎日入浴時に使うと疲れてしまうので、副腎疲労が強い人は頻度を考えて使うと良いと思います。1日の最低必要量は体重1kgあたり6mgです。鉄とは違い、マグネシウムは積極的に摂取したいミネラルです。

3-9. CoQ10の役割

CoQ10は電子伝達系の中心的な役割を担っており、不足するとエネルギーを十分に作ることができなくなります。また、CoQ10は加齢とともに減少します。特に心臓のCoQ10は80歳で半分以下まで減少します。医薬品としてのCoQ10は、1日30mgの用量で承認されていますが、あまり効果は出ていません。効かせるためには100~400mg必要だろうと言われています。

CoQ10はアセチルCoAからコレステロールと共に体内合成されます。血中コレステロールが低い人は、CoQ10もうまく作れていないと予測できますね。CoQ10レベルは、男性の年齢や女性の総コレステロール、セレンに相関関係があるという報告があります。CoQ10を摂るとコレステロール値が下がったり、CoQ10により動脈硬化が改善するとも言われています。

Biofactors. 1999;9(2-4):319-23.
High serum coenzyme Q10, positively correlated with age, selenium and cholesterol, in Inuit of Greenland. A pilot study
https://doi.org/10.1002/biof.5520090230

3-10. 栄養の負の連鎖

ミトコンドリアを正常に動かすためには、十分量のCoQ10が必要です。LDLコレステロールの結果を見直してみてください。LDLコレステロールが100以下の場合、おそらくあなたは十分にCoQ10を作れていないでしょう。低コレステロールは、疲れやすい人に共通する大きな問題です。ではコレステロールを上げればいいかというと、そううまくはいきません。なぜならコレステロールの体内合成にはエネルギー(ATP)をたくさん使うので、ミトコンドリア機能が低下している人にとっては、コレステロールを上げること自体とても難しいことなのです。

ミトコンドリア機能が低下しているから、コレステロールが低くなる、CoQ10も低くなる、さらにミトコンドリア機能が低下する、まさに栄養の負の連鎖です。実に多くの人がこの連鎖に陥っています。負の連鎖から脱出するためには、CoQ10サプリメントをうまく効かせることがポイントになります。

3-11. CoQ10の吸収には胆汁が必要

問題はCoQ10がイソプレノイド側鎖を持つ脂溶性の物質だということです。つまり、胆汁が十分に分泌されていないと吸収できないということです。胆汁はCoQ10や脂溶性ビタミンの吸収に欠かせない存在です。油を摂りすぎると下痢をしたり胃がもたれる人は、食後にCoQ10サプリメントを摂るとか、胆汁サプリやタウリンと一緒に摂るなどの工夫が必要です。CoQ10サプリは、還元型やミセルタイプのものがおすすめです。還元型のCoQ10であれば1日50mgで十分とも言われています。

3-12. ビタミンB群が枯渇するケース

ビタミンB群は、ミトコンドリアを動かすために最も重要な栄養素です。ここまで説明してきた鉄やマグネシウムといったミネラル、脂溶性のCoQ10は、吸収が難しい栄養素でした。一方、ビタミンB群は水溶性で、腸でもたくさん作られています。

日本栄養・食糧学会誌 Vol.37 No.2 157-164 1984
ヒト由来Bifidobacteriumによるビタミン産生
https://doi.org/10.4327/jsnfs.37.157

一見、不足することがなさそうな栄養ですが、最近問題となっているのは糖分の摂りすぎによるビタミンB群不足です。

原因不明の心不全、ビタミンB1欠乏かも脚気は過去の病ではない。イオン飲料多飲で肺高血圧症を起こす幼児も。

白米ばかり食べていた江戸時代の大名の多くがかかり、昭和20年代まで国民病といわれた「脚気」。豊かな食生活を送る現代人には無縁と思われているが、偏った食生活を背景にビタミンB1欠乏を来すケースは少なくない。離乳期を中心とした乳幼児がイオン飲料を多飲し、脚気衝心(ビタミンB1欠乏による心不全)などの深刻な障害を招く事例も報告されており、専門医は注意を喚起している。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201703/550405.html

この記事のように、スポーツドリンクを日常的に飲んでた乳幼児が、脚気による心不全で病院に運ばれるケースが頻発しています。500mLのスポーツドリンクには、角砂糖に換算して5~8個の糖が入ってます。ブドウ糖がミトコンドリアでエネルギー変換される際には、ビタミンB群をたっぷり使います。したがって、過剰な糖分が体内のビタミンB群を枯渇させてしまい、脚気等の症状を引き起こすのです。特に低血糖症状がある人は、気がつかないうちに糖質を過剰に摂ってしまうので、ビタミンB群がうまく効いていないと感じたら、自分が摂取している糖質の量をチェックしてみてください。

3-13. その他のミトコンドリア機能低下要因

ここまでは、ミトコンドリアに必要な栄養がうまく消化吸収利用できてないパターンについて解説してきました。他にも、水銀などの金属や、農薬などの有機溶剤、電磁波など、ミトコンドリア機能を低下させる要因は様々あります。大切なことは、足りない栄養をサプリで摂るだけではなく、足りなくなる原因を突き止めてそこに対処することなのです。

その他のミトコンドリア機能低下要因
☑️ 水銀などの金属
☑️ 農薬などの有機溶剤
☑️ 電磁波
☑️ 小胞体ストレス
☑️ 廃用性萎縮

4. その2. 糖質や脂質が細胞やミトコンドリアの中に入れない、もしくは供給が不安定なパターン

ここからは、糖質や脂質が細胞やミトコンドリアの中に入れない、もしくは供給が不安定なパターンについて解説していきます。糖質が細胞の中に入れないと言うと、特殊な病気を想像しがちですが、とても身近な病気があります。それは、糖尿病です。

4-1. グルコースが取り込まれる仕組み

血糖値が下がると膵臓からインスリンが出ます。トランスポーターという糖の取込み口になるタンパク質があり、インスリンがこの受容体に結合すると、GLUT4(グルコース輸送タンパク)が細胞の中に引き込まれて細胞膜と一体化し、グルコースを取り込みます。細胞内に入ってきたグルコースはミトコンドリアで使われます。糖尿病の場合、インスリンが受容体に結合してもその後の経路がうまく働かないため、GLUT4が細胞の方にグルコースを引っ張ってくれないのです。

引用:https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=49360981

「糖尿病=血糖値が上がる病気」というイメージがあるかもしれませんが、糖尿病の本質は細胞内飢餓です。グルコースを取り込めなくて細胞内飢餓になるから、その結果としてグルコースが余って血糖値が上がるのです。もう1つ、栄養療法的に重要な細胞内飢餓状態があります。それは低血糖症です。

4-2. 低血糖症と副腎疲労の関係

低血糖の原因は副腎疲労です。度重なるストレスによって徐々に副腎が疲れてくると、血糖を上げる副腎ホルモンの分泌が滞ります。副腎ホルモンは朝にピークを迎え、夕方に向けて減っていきますが、副腎ホルモンが十分出ないと、特に昼食後から夕食前にかけての血糖値が不安定になります。血糖値が不安定で低血糖を起こすと、細胞内への糖質供給も不安定になり細胞内飢餓を起こします。朝が起きられない、起きてもボーッとする、何もする気力が湧かない、物忘れがひどい、立ちくらみがする、といった症状は低血糖のサインです。

副腎疲労の原因は、慢性的な体内の炎症、慢性的なストレス、そして繰り返す低血糖発作です。これらを一つ一つ丁寧に対処してくことが必要になります。体内の炎症で自覚症状に乏しい部位は腸と喉です。一方で、腸や喉は特に免疫が発達しており、全身への影響が大きいため、よく調べておく必要があります。あとはピロリ菌に代表される胃の炎症、肝臓の炎症、口腔内の炎症も確認しましょう。女性の場合は骨盤内の炎症が、男性の場合は慢性前立腺炎が影響している場合もあります。

副腎疲労や低血糖を抱えている場合、最初に行うべきは食事の見直しです。決して副腎サプリだけが対策ではありません。食事については基礎講座で詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。

4-3. 過緊張は筋肉を崩壊させる

低血糖発作を起こすと、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、体が過緊張状態になりやすいので注意が必要です。過緊張は筋肉を崩壊させます。特に分解されやすいのはグルタミンです。グルタミンは体内合成できる非必須アミノ酸で、低血糖時に最も分解されやすいアミノ酸の一つです。グルタミンはストレスや腸の炎症で消費されやすいので、どんどん分解が進みます。腸が悪い人、ストレスが多い人はグルタミンが枯渇しやすいので、積極的に摂取すべきでしょう。

ポイント
☑️ 過緊張は筋肉を崩壊させる
☑️ 特に分解されやすいのはグルタミン

グルタミンは、宮澤医院に来院する患者さんに最もよく使うサプリメントの1つです。ほぼ全ての人に処方しているといっても過言ではありません。グルタミンはグルタミン酸に変換され、それが最終的にGABAに変わるのですが、グルタミン酸をGABAに変換するグルタミン脱水素酵素がうまく働かないお子さんの場合は、急にグルタミンを摂取すると神経が興奮して落ち着かなくなることがあります。それ以外の人はグルタミンを摂ると逆に気分が安定するはずです。グルタミンは腸の第1の栄養源であり、腸の炎症を取り去り、低血糖を予防してくれ、ストレス対策にもなるというすばらしいアミノ酸です。

慢性的に低血糖を起こしていると、筋肉が分解されて低タンパク質になります。プロテインを摂っても総タンパク質がなかなか上がってこない人は、低血糖発作によってたんぱく異化を起こしている可能性が高いでしょう。睡眠時に低血糖を起こすケースが多いので、寝る前に飲むのも良いでしょう。

4-4. 低血糖を診断する項目

低血糖の指標となるのは中性脂肪です。血糖値やヘモグロビンA1cも血糖状態を示すますが、低血糖症=血糖値が下がる病気ではありません。血糖値が不安定になること自体が低血糖症なので、血糖値が乱高下している場合は平均血糖が落ちず、ヘモグロビンA1cでは判定できないことがあります。判定のポイントは、細胞内が飢餓状態になっているかどうかを見極めることなので、それを診断するためには中性脂肪が鍵になります。なぜなら細胞内飢餓が起こると、脂質をエネルギーとして使うように体がシフトするからです。中性脂肪が分解され遊離脂肪酸になり、ミトコンドリアに取り込まれます。したがって、中性脂肪は細胞内飢餓の指標であり低血糖の指標でもあります。目安として、中性脂肪が70以下の場合は低血糖を起こしている可能性が高いでしょう。

ポイント
☑️ 細胞内飢餓が起こると脂質をエネルギーとして使うようになる
☑️ その際に中性脂肪が分解され脂肪酸になり、ミトコンドリアに取り込まれる

もう1つの指標はALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)です。ALTはアラニンとピルビン酸を媒介している酵素で、肝臓と筋肉に存在しています。筋肉には糖新生の酵素がないので、ピルビン酸をアラニンに変換し、それを肝臓に運んでもう一度ピルビン酸に戻すことで糖新生を行います。これらの反応を仲介しているのがALTです。ALTの数値が1桁だったり、ASTとALTの差が2以上ある場合、筋グリコーゲンがうまく使えず、低血糖を起こしやすくなっていると判断します。

ヘモグロビンA1cが4.5以下であればまず間違いなく低血糖を起こしていますが、そうでなくとも、中性脂肪やALTが低い場合も低血糖を疑ってください。あとは副腎疲労の症状とセットで考えるといいでしょう。私が普段使ってる指標は大体こんなところです。

血液検査
好中球(Neu)>60%
中性脂肪<70
ALT, AST共に20以下かつその差が2以上(AST – ALT >2)、またはALTが1桁
血糖値<90
ヘモグロビンA1c<4.7
1.5AG>15
LDLコレステロール<100

毛髪検査
ナトリウム <16th
クロム<16th

オプションの検査(必ずしも行わなくてもよい)
唾液中コルチゾール検査(副腎疲労)
5時間糖負荷検査(低血糖)

低血糖の人は、過緊張気味なので好中球が上がっていることが多いです。また、低LDLコレステロールは副腎ホルモンを作れないことを意味するので、副腎疲労の指標になります。毛髪検査を受けた方は、ナトリウムとクロムの値も確認してください。ナトリウムは副腎疲労度を反映します。クロムはインスリンの働きに関係しているので、毛髪中のクロムが低い人はインスリンがうまく働いていない可能性があります。インスリンの初期応答が低いので、血糖値が一気に上がってしまうのです。インスリンの初期応答が悪いと、反応性低血糖を起こすことがあります。

副腎疲労が疑わしい方は、唾液中のコルチゾール検査を受けてみるといいと思います。一般的に低血糖症は、5時間糖負荷検査が確定診断と言われていますが、検査自体の負担が大きいので、具合の悪い人が受けるのはお勧めできません。検査中に体調が悪化して途中で止める人もいます。代替案として、唾液コルチゾール検査や、リブレでの血糖値測定をおすすめします。リブレは、血糖値の傾向を見るには大いに参考になりますし、食事内容を修正するのにも役立ちます。

5. その3. エネルギーは作れているが、無駄に消費されているパターン

最後はエネルギー漏れのパターンです。いくらミトコンドリアでエネルギーを作っても、片っ端から無駄づがいしてしまえば、本来の目的にエネルギーを使うことができません。副腎疲労を提唱したジェームズ・ウィルソン博士の言葉を借りると、「自分のエネルギー泥棒を見つけ出せ」です。エネルギー泥棒を見つけ出さない限り、副腎疲労は完治しません。例えば、副腎疲労を抱えるの人の多くは人の頼み事を断れないタイプですよね。

ストレスは脳が受け取って、HPA軸(視床下部、下垂体、副腎)に影響を及ぼします。昔は副腎疲労と言えば副腎の問題とされてきましたが、今はHPA軸全体の問題と捉えられています。脳はミトコンドリアの数がとても多く、無駄な思考や定まらない思考などでエネルギーを著しく消費します。やりたくないことをやるのは、ミトコンドリア的にもマイナスに働くのです。一緒に会話していて、どっと疲れる相手はいませんか?そういう人からはぜひ距離をおいて下さい。慢性疲労から脱出するためには、心理的アプローチが必要になることもあります。栄養療法が長期間に及んでる人がいらっしゃれば、ぜひ検討してみてください。

6. 栄養療法成功への5つのステップ ー実践編

栄養療法を理解するということは、細胞や分子や代謝経路など、目に見えないものを系統的に理解して頭に入れることです。そのためには正しく学んで欲しいと思います。80対20の法則のように、分子栄養学全体の2割ほどを学べば、8割は理解できるかなと思って作ったのが、栄養療法成功へのロードマップです。最初の5ステップはそれぞれ穴埋め式になっていて、全部埋められれば、慢性疲労や慢性炎症に対してある程度対処できるようになると思います。ここからは実際に頭と手を動かしながら読み進めていきましょう。

6-1. ステップ① 分子栄養学の基本的な考え方を理解する

分子栄養学は、栄養学・医学・生物学・生化学で構成されますが、その中で1番最初に越えなければならない山が生化学です。生化学がわからないと、人間の体で何が起こっているのか、どうやって炎症が起こるのかなど、体系的に理解できないからです。ここをスルーしてどのサプリメントがいいかという話になってしまうと、サプリメントの罠に陥ってしまいます。

まずは細胞の仕組みを理解しましょう。細胞の構成要素はたくさんありますが、その中でも重要なのは、核、ミトコンドリア、細胞膜、小胞体です。これらの要素がどんな働きを持っていて、機能を維持するためにどのような栄養素が必要か、この表を全部埋められるようにしましょう。

細胞内の要素 働き 機能を維持するために
必要な栄養
核    
ミトコンドリア    
細胞膜    
小胞体    

<ヒントと補足>

核の役割はDNAの貯蔵庫です。人間が持つ37兆個の細胞は、全て共通のDNAを持っていますが、DNAの読む場所が細胞によって異なるため、ある細胞は目になり、ある細胞は皮膚になり、ある細胞は肝臓になっていきます。DNAという設計図のどこを読むかという命令は、環境や栄養によって左右されます。

ミトコンドリアの重要な役割はエネルギー産生ですが、その他にアポトーシス(プログラムされた細胞死)にも関与します。ミトコンドリア機能低下や小胞体ストレスがあると、正常なアポトーシスが行えず癌の原因になったりします。

細胞膜は一部が切り取られてプロスタグランジンを作るため、炎症に関わります。炎症の抑制や促進は、細胞膜が大きく関わっています。細胞膜を構成するリン脂質の組成が、飽和脂肪酸なのか不飽和脂肪酸なのか、不飽和脂肪酸の種類が、エイコサペンタエン酸なのかアラキドン酸なのかによって、炎症を起こしやすいかどうかが決まります。

小胞体はタンパク質の工場と倉庫の役割を担っています。タンパク質を作る設計図は核にありますが、実際に作るところは小胞体です。小胞体機能が低下(小胞体ストレス)するとミトコンドリアの機能も一緒に落ちるので、ミトコンドリアと小胞体は一心同体です。ミトコンドリアの働きを上げるためには小胞体ストレスをなくすということが重要になってきます。

次に栄養素の持つ性質を理解しましょう。水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンとミネラルの性質を理解するということです。ビタミンは有機物で比較的吸収はいいのですが、脂溶性ビタミンの吸収には胆汁が必要です。ミネラルは難吸収性で、腸内環境を整えることが絶対条件です。それぞれの性質を理解すると、効果的な摂り方がわかります。

栄養素 性質 効果的な摂り方
水溶性ビタミン    
脂溶性ビタミン    
ミネラル    

6-2. ステップ② 3大栄養素と細胞の働きを関連づける

糖・脂質・タンパク質の順番に穴埋めしていきましょう。ミトコンドリアでのエネルギー産生に関わるのは糖質です。疲れやすくなる原因は、ミトコンドリアの機能低下によるエネルギー不足でしたね。慢性的なエネルギー不足に陥ると、糖分やカフェインを過剰に欲するので、ますます低血糖や副腎疲労が悪化してしまいます。

ミトコンドリアを
動かす栄養素
どのような時に足りなくなるか?
ビタミンB群  
鉄  
マグネシウム  
CoQ10  

ミトコンドリア機能低下と副腎疲労と低血糖はセットで起きていることがほとんどです。さらに、たんぱく異化も亢進するので、低タンパク質も併発します。その場合、むやみにサプリメントやプロテインを摂ってもうまくいきません。疲れを取るためには、エネルギー代謝のどこが滞っているのかを知り、そこを狙って修復する必要があります。そのためには、食べ物がどのようにエネルギーに転換されるか、細胞分子レベルで理解しましょう。解糖系、TCA、電子伝達系の大枠をおさえたら、どんな栄養素、どんな酵素が働いているかなど、もう少し深く見ていきましょう。

次は、脂質と細胞膜の関係です。栄養療法に必要な脂質の知識は、中性脂肪・コレステロール・細胞膜を構成するリン脂質、この3つです。

脂質の種類 働きは? 症状との関わりは?
中性脂肪    
コレステロール    
細胞膜(リン脂質)    

<ヒントと補足>

中性脂肪はエネルギー状態を反映します。脂肪と名前が付いていますが、どちらかというと糖質との関わりが強い物質です。糖質が欠乏すると中性脂肪が下がるので、細胞内飢餓状態の指標になります。糖質を摂りすぎたり、お酒を飲みすぎたりすれば上がり、低血糖が続いたり食事をあまり摂らなければ下がります。

コレステロールは細胞膜、ホルモン、胆汁酸の原料になります。約80%は胆汁酸として使われるので、コレステロールが低いと胆汁の分泌が低下し、脂溶性ビタミンの吸収が滞ります。細胞膜は、脳の炎症、炎症の調整、脳の機能に関わっています。特に炎症に関わるのはEPA(エイコサペタエン酸)、脳機能に関わるのはDHA(ドコサヘキサエン酸)です。ここを理解することで、炎症体質を緩和する方法や副腎疲労を治す方法、エネルギーを無駄遣いしない方法が見えてくると思います。

3つめはタンパク質です。タンパク質で重要なのはINOUTバランスです。タンパク質代謝を学んで、低タンパク質状態から脱出する方法を理解しましょう。タンパク質はどこから来て(IN)、どこに行くのか(OUT)、自分の普段の食事のタンパク質量がどれぐらいなのか、そしてタンパク質を消耗する原因、これらを列挙してみましょう。

タンパク質INはどこから来る?  
タンパク質OUTはどこへ行く?  
自分の普段の食事のタンパク質量は
どのくらい?
 
タンパク質を消耗する原因
(体タンパクの異化が亢進する原因)
をあげてください
 

<ヒントと補足>

タンパク質は食事由来よりも体内でのリサイクルによる供給が多いので、リサイクル率を上げるという視点は重要です。タンパク質のOUTが多すぎる原因に、低血糖によるたんぱく異化亢進が挙げられます。低タンパク質は、多くの場合ストレスが原因で起こります。そんな人はグルタミンを足してくださいね。また低血糖の場合、糖原性アミノ酸であるBCAAを摂ると改善する人もいます。個人差があるので、リブレなどでモニタリングしながら、効果を確かめると良いでしょう。

6-3. ステップ③ 栄養学的な血液検査の読み方

ステップ2の次は、血液検査の読み方を学びましょう。人によって必要な栄養素やその量は全く異なり、このことを個体差と呼びます。個体差を見るのが栄養療法の基本です。約50項目の血液検査からわかることはたくさんあります。例えば、胃腸の状態、炎症、溶血、タンパク代謝、糖質代謝、脂質代謝、貧血、ミネラル代謝、血糖調節障害、自律神経の緊張度、酸化ストレス、抗酸化力、ミトコンドリア活性などです。慣れている方は全部読み込めるようになりましょう。初めての方は、まずはご自身の健康診断結果をもとに、
☑️ ミトコンドリアに必要な栄養素の過不足がないか
☑️ 自律神経の過緊張はないか
これら2つを読み取ることからスタートしましょう。その次に活性酸素や抗酸化力なども評価します。

胃酸分泌を見る項目  
炎症を見る項目  
溶血を見る項目  
タンパク代謝を見る項目  
ミトコンドリア機能を見る項目  
抗酸化力を見る項目  

<ヒントと補足>

ミトコンドリア機能は、酵素活性を示す数値を見ればわかります。GOT(AST)やGPT(ALT)、アミラーゼ、LDHといった酵素活性の高低が指標になります。GOTやGPTはビタミンB6依存性なので、ビタミンB群を摂取すると割と早く上がってくる数値です。逆に上げるのが難しい項目は、コレステロールや尿酸値です。尿酸値はあまり上がりすぎると、尿酸結石や痛風発作が起きてしまいますが、低すぎるのも問題です。尿酸は人間が体内合成できる優れた抗酸化物質なので、抗酸化力を見ることができます。

また、ATP-ADPサイクルの過程で一部が分解され、そこに含まれるプリン体の代謝産物として尿酸ができます。ですから、細胞の新陳代謝が悪い人は尿酸値が低めです。尿酸値は少なくとも4、できれば5ぐらいほしいところです。このサイクルが回り、エネルギーを作れるようになると、尿酸値も上がってきます。コレステロールと尿酸が上がればだいぶ改善したとみて良いでしょう。

6-4. ステップ④ 腸内環境

血液検査が読めるようになったら、次は腸内環境について学びましょう。具体的には、消化不良、ディスバイオーシス、リーキーガット、この3つの言葉を覚えて、これらがどういう意味を持つのかを理解してください。

  原因 どんな検査で
わかる?
対策
(食事とサプリ)
消化不良      
ディスバイオーシス      
リーキーガット      

<ヒントと補足>

消化不良は、消化酵素と胃酸の分泌が不十分な場合に起こります。タンパク質分解酵素であるペプシノーゲンは胃酸によって活性化し、ペプシンになることでタンパク質を分解します。したがって、胃酸が正常に分泌されないと、タンパク質消化の大きな障害になります。副腎疲労などで自律神経の過緊張があり胃酸が出にくい人は、プロテインを摂らない方がいいということになります。最初に取るべきは消化酵素です。胃の炎症が治ったら胃酸の成分を摂るのも良いと思います。朝1番にレモンを丸ごと食べるとか、梅干しを食べるとか、食事面でも胃酸のサポートを考えた方が良いでしょう。胃酸の分泌にはATPをたくさん使います。したがって、ミトコンドリアが働いていない人は胃酸が出ないので、負のループに陥ります。その場合はミトコンドリア機能に立ち戻って考えてみてください。

ディスバイオーシスは、腸内細菌の多様性が失われることを意味します。当然、日和見菌のカンジダや悪性細菌が増えてきてしまいます。食品添加物の多い食事、抗生剤、ステロイド、ストレス、甘いものなどで腸内環境が悪化している人が非常に多いという現状があります。心当たりがある方は、ぜひ一度サイキンソー社の腸内細菌検査などをやってみてください。腸内細菌の多様性がひと目でわかります。

リーキーガットはいわゆる腸漏れ症候群のことです。腸に穴が開くと、未消化物、ウイルス、異物などが腸管から体内に侵入し、体のあらゆるところで炎症やアレルギー反応を起こします。これをずっと放置しておくと自己免疫疾患にも繋がります。また、リーキーガットを起こすと、リーキーブレインにも繋がります。異物が脳に入って、脳に炎症を起こしてしまうのです。

6-5. ステップ⑤ 副腎疲労と低血糖

3大ホルモンである、副腎、甲状腺、性ホルモンの中でも、特におさえておく必要があるのは副腎です。体にとって最も影響が大きいからです。多くの人が抱えている低血糖症は、エネルギー供給を不安定にする最大の要因です。この低血糖症を引き起こす根源が副腎疲労です。では副腎疲労の原因は何かと言うと、ミトコンドリア機能の低下、ストレス、炎症、低血糖発作です。ミトコンドリア機能が低下すると副腎疲労になり、副腎疲労になるとミトコンドリア機能が低下して低血糖を起こす、こんな悪循環を繰り返すことで全身の機能を低下させている人がほとんどです。ですから、単純に副腎サプリやミトコンドリアサプリを飲むだけでは良くなりません。一度この表を使って整理してみましょう。

あなたに当てはまる
副腎疲労の症状は?
 
あなたが抱えている
ストレスは?
 
その解消法は?  
あなたの抱えている
体内の炎症は?
 
その対策は?  
あなたが行うべき
低血糖対策の食事法は?
 

ここまでが1~5のステップです。表の穴埋めをするだけでも結構勉強になると思います。ステップ5までが終わったら、ここで改めて根本原因に目を向けましょう。

6-6. ステップ⑥ 根本原因ピラミッド

根本原因ピラミッドの頂点は脳機能ですが、実際は脳に対するアプローチを行う前に体調が良くなる人がほとんどで、それは80対20の法則で説明した通りです。しかし、重金属や農薬などの重篤な暴露を受けていたり、メチレーションのバランスが狂っていたり、甲状腺機能が大幅に低下しているなど、特定の原因によってうまくいかない人もいらっしゃいます。このような人たちに対して、根本原因アプローチは絶大な力を発揮します。自分に当てはまる根本原因のチェックリストをもとに、ご自身の体を振り返ってみてください。

炎症 炎症の部位は?
炎症体質の有無は?
ディスバイオーシス?
腸内環境 消化不良?
リーキーガット?
カンジダ感染?
毒素 重金属蓄積?
非金属(農薬、トルエン、排ガスなど)
カビ毒蓄積?
ホルモン 副腎疲労と低血糖の有無?
甲状腺機能低下?
ミトコンドリア 必要な栄養素の過不足?
脳機能 メチレーション? 銅亜鉛バランス?

<ヒントと補足>

炎症体質の有無は食べ物で決まります。外食に偏りがちでリノール酸過多になると炎症を起こしやすくなります。血中のオメガ3とオメガ6の比率を計ることもできますし、トランス脂肪酸の量を計ることもできます。様々な検査がありますので、興味がある人はぜひやってみてください。

消化不良はペプシノーゲン検査でわかります。血中アミラーゼも、消化酵素の分泌が低下していると低い数値になります。ディスバイオーシスが疑われる場合は、便検査で腸内環境を調べてみるとよいでしょう。リーキーガットの検査は様々ありますが、便中カルプロテクチン検査は比較的多くのところで取り扱っています。リーキーガットにより分泌されるゾヌリンを検出する検査もあります。

カンジダ感染の有無も必ずチェックしましょう。ミトコンドリア機能が低下して低血糖を起こしていると、糖質をたくさん摂ってしまうので、カンジダが増殖しやすくなります。いくら糖質をとってもカンジダに奪われて体のエネルギーにならないので、午後に猛烈に眠くなる、疲れが取れない、ブレインフォグがある、腹部膨満感がある、甘いものがやめられない、そういった症状があればカンジダを疑います。

毒素には、重金属と非金属、カビ毒があります。農薬やトルエン、排気ガスの暴露を日常的に受けている人は1度調べてみるといいと思います。重金属と非金属、どちらもイライラや疲れやすさといった症状が出ます。カビ毒に関しては、湿気が多い家に住んでいる人、ブレインフォグがなかなか取れない人は、検査を受けてみる価値があると思います。

ホルモンは、副腎疲労と甲状腺機能で判断します。甲状腺はエネルギーに関与するので、冷えが強い人やむくみが強い人は甲状腺機能を確認すると良いでしょう。

これらのことが大体わかってきたら、メチレーションの状態を見てみるのもいいと思います。メチレーションはとても複雑で、本によっては書いてあることが反対だったりする場合がありますが、実践講座の動画を使いながらじっくり学んでください。

6-7. ステップ⑦ それでもうまくいかない人へ

① 自分がどの根本原因に当てはまるかわからない人

7つの根本原因(ディスバイオーシス、脳、ミトコンドリア、ホルモン、毒素、炎症、消化不良)のうち、自分がどれに当てはまるかはっきりわからない人も中にはいらっしゃると思います。そんな人はぜひ『セルフケアコース』に参加してみてください。これは宮澤医院での7つの根本原因に対する診断治療のチェックリストと、その1つずつの項目に動画解説を加えたものです。ミトコンドリア機能低下があるのか、脳機能低下があるのか、カンジダ感染しているのか、はっきりわからない人のためにチェックリストも用意しています。ステップ5までのことを理解した上で、さらに学びたい方におすすめのコースです。

② 自律神経の過緊張が何をやっても取れない人

これは、家庭環境に起因する偏った考え方、原始反射の残存、幼少期のトラウマなどが原因になることがあります。精神的な要因も考えておくべきなので、心当たりのある人は小池雅美先生のセルフアップデートコースを受講してください。自律神経を乱す思考に気づきを与えて、自分とのコミュニケーションによって現状を抜け出すセルフアップデートを目的としたコースです。

最後に、1番効率がいい勉強方法はアウトプットです。ブログでも動画でも何でもいいので、アウトプットしていろんな人の意見を聞くといいと思います。ご自身の表現でどんどん発信してください。でもちょっと自信がないという方は、まずこのロードマップの表の穴埋めをして、栄養療法の基礎を習得してくださいね。

栄養療法外来の流れ 初診時

宮澤賢史 · 2021年6月1日 ·

最近「栄養外来を見学させてください」とか「実際にどのようにして診察を行っているのか知りたい」とおっしゃる先生が多いので、今回は、僕が宮澤医院の栄養療法外来で行っている流れについてご紹介します。

1 問診の流れ

1-1 自己紹介

最近紹介でいらっしゃる方が多くなりましたが、私のことを知らない患者さんには、私のバックグラウンドと治療方針をお話しています。消化器内科医として大学病院に勤務した後、サプリメントのクリニックに転職して、栄養療法を始めて15年になります、根本原因を探してサプリを減らす治療をしています、といった事をまずお話します。

1-2 ご紹介者について

次にどなたのご紹介かをお聞きしていてます。紹介者がわかると、今までどんな治療を受けていたか大体分かります。紹介でない方にも、今までどういうクリニックに通っていたかを必ず聞きます。栄養療法の治療歴と一般診療の受診歴共に重要で、ごく一般的な病気の原因を否定してあるかどうかは必ず確認します。副腎疲労かと思っていたら下垂体腫瘍だった、なんて笑えない話です。

1-3 栄養療法と保険診療の違いについて

ネット経由の患者さんは栄養療法のことをよく知っている事が多いですが、保険診療の患者さんに対しては栄養療法と保険診療の違いについて説明をします。一般診療は症状にアプローチし、栄養療法は原因にアプローチするということを中心にお話します。どちらも重要ですが、保険診療と栄養療法の違いについてをお伝えしています。

1-4 ラポール(信頼)の形成

問診票を見ながらさらに深く話を掘り下げていきます。ラポール(信頼)の形成と問診が同時進行となり、自動的に信頼関係の構築になるんです。信頼関係をつくる目的は、患者さんと友達になることではありません。患者さんには治療方針に従ってもらわなくてはいけないため、少し上の立場でいる必要があります。

1-5 知識=お金と心得る

プロにお金を払う場合、相手の知識にお金を払うということなので、その人よりも数段レベルが上なのが当然だし、それをわかって頂く必要もあります。知識が対価となるので、5分に1回専門用語を使います。1分に1回だと多過ぎます。「あなたはHPA軸がうまく機能してていないです。つまりそれは、脳と副腎がうまく連絡をとれていないことを意味します」というふうにお話をします。「唾液中コルチゾールが低下しています。副腎から出るストレスを打ち消してくれるホルモンです。これが低いから疲れやすいんです。」など専門用語を言ったあとに要約をつけるなど、専門用語と簡単な用語を混ぜて使うのがコツです。

1-6 言えないことを言ってもらう

受診までにネット上の問診票を全部埋めてから来てもらうようにしています。問診票は7つの根本原因のどこに原因があるかということを分かるように作り込んでいます。そこにチェックを入れてもらいますが、患者さんは本当に重要なことは問診票に書かないことが多いです。なぜならまだ信頼関係がないからです。信頼関係を構築するために、問診をうまくやる必要があります。人には言えないことを最終的に話してもらうのが問診の目的です。

ものすごく女性にモテる男の人がいて、どうしてそんなにモテるんですかと聞いたら、「信頼関係」だそうです。信頼関係とは何かを聞くと、それは他の人には言えないことを話してもらうことだと言うんです。人に話さないことを話してもらえるような関係になれば治療もうまくいきます。

2 問診から根本原因を探る方法

問診が一通り終わったら、次にすることは、問診事項を根本原因に転換することです。問診の中で、これは!と思う事項を絞り込むことから始めます。

2-1 根本原因ピラミッドを理解する

問診で一番重要なことは、根本原因が何かというのを見定めることですが、根本原因ピラミッドの一番下には、腸・炎症があります。その上にデトックスがあって、脳機能がくるのですが、低血糖の海が一番下の層となります。栄養療法的や機能生理学的な問題だと、病気の根本原因は、ストレス、食事、生活習慣のどれかなので、そのあたりを問診で確認します。

2-2 経過について聞く

その症状が急に発症したのか、それとも慢性的に出てきたのかと聞くことはとても重要です。慢性疲労、副腎疲労の場合は積み重なって症状が出てくるのに対して、慢性症候群は、風邪やストレスなどのトリガー(引き金)があって急にガクンと発症し、それを引き金に症状が続いてるというパターンが多々あります。

2-3 発症時に何が起きたのか聞く

発症時にどんな出来事があったのか、どういう状況だったのかを確認することはすごく重要なことです。ただしそれらは問診票には書いてもらえないことがほとんどです。ちょうど離婚したときだったとか、本当のお父さんとお母さんの子ではないと分かった日ですなどと問診票に書く人はいないです。つまりそういうことを掘り起こすための問診なのです。最初は聞けなくても、信頼関係を築くとだんだん判明していきます。

そこが分からないといくら治療をしてもうまくいきません。ストレスが今も継続しているのか、それとも過去の出来事なのかが大きな要素です。ストレスの継続は副腎疲労の回復を遅らせ、それによって起きる低血糖を始めとするホルモンのアンバランスが腸内細菌バランスを乱していたりします。アドレナリンが多い人は腸内細菌に悪玉菌が多いので、炎症が起きて解毒がだんだんできなくなり、肝臓がやられてくるというお決まりの流れとなります。

根本原因ピラミッドのより下層部のほうが原因になっているため下から治療する必要がありますが、低血糖のさらに下には、生活習慣、食事、ストレスがあります。もちろん便秘気味、下痢気味などの腸内環境については問診票に大体書いてありますので、その源流を問診の時に探ってください。

2-4 感情が行動を決める

人は感情で動く動物です、どういうときに検査をするとか、サプリメントを買うかというと、感情が動いたときです。マーケティングの本に書いてある通り、感情的に物を買って、これは自分に必要だったと後から論理をくっつけるものです。だから感情的にこの人からは買いたくないと思ったら話だけ聞いて、検査は他のところで受けてしまいます。こうなると大体うまくいきません。このような方は長く継続して受診されない傾向にあります。全てを委ねられて信頼されることが必要なのです。

問診の際には、患者さんの話が8割、自分が話すのが2割くらいがちょうど良いです。相手の話を聞いて、それで最後にまとめをします。最後にこれで大丈夫ですか、と確認すると、言い忘れたことがあるんですけど… となります。この言い忘れたという内容に、エッセンスがつまっていることが多いです。

2-5 主訴を3つにしぼり根本原因とつなげる

次にすることは、主訴を整理してしぼるということです。10個くらい主訴をおっしゃる方もいますが、一番辛いことを3つに絞ってもらいます。全てを一度に治療しようとすると治療がバラけるし、解決に繋がるのが難しくなります。10個全部の整合性が見えればそれでもいいですが、最初は上位3つ、一番辛いことはなんですか、と絞った方が良いと思います。

そして次には、それらを根本原因につなげるということをします。患者さんは色々な主訴を言います。大体ネットでも色々調べていますが、それは点と点でつながっていないことがほとんどです。その点と点を線につなげてあげるのがプロの仕事です。

3  症例1 47歳女性 PMS、のぼせ

というわけで、症状から根本原因への転換を実際にやってみましょう。まずは「疲れやすい・PMS・気分障害・のぼせ」を主訴とする47歳女性の方です。症状的にはエストロゲン過剰です。女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンという拮抗する二つのホルモンがありますが、47歳といった前更年期では、エストロゲンが過剰になりやすいんです。こういう人にはどのような根源が隠れているのでしょうか。

3-1 環境ホルモンの暴露

アメリカ産の牛肉とか牛乳にも成長ホルモンも沢山入っているし、環境汚染物質・アルミニウム・水銀・環境ホルモンなどが人工のエストロゲンです。その結果、プロゲステロンに対してエストロゲンが過剰になるので、色々な症状が出現するというわけです。対処法は暴露を避ける事ですね。牛乳、乳製品を避けることから始めます。

3-2 副腎疲労

コルチゾール・スティールも原因となります。コルチゾール・スティールというのは副腎疲労でコルチゾールが減ってしまうために、原料のコレステロールが女性ホルモンではなく全部コルチゾールに回ってしまうことを言います。そのため副腎疲労は女性ホルモンの問題につながります。

甲状腺や性ホルモンの問題は、副腎の問題を解決しないと根本的に解決しません。副腎疲労を放置したままで甲状腺ホルモンを足したり、女性ホルモンの補充療法をされている方がいますが、副腎疲労の原因が放置されているので、甲状腺ホルモンの治療も増えていく傾向にあります。このふたつのホルモンアプローチは、副腎疲労のアプローチとともに行うべきです。

3-3 肝臓の解毒不足

3番目の問題は、肝臓です。エストロゲンの代謝は肝臓で行われているため、エストロゲン過多、 PMS 、子宮内膜症、乳がんのようにエストロゲンが原因と言われる疾患に対して、栄養療法で一番最初にアプローチするべきは肝臓です。肝臓にアプローチをして解毒を促し、エストロゲンの代謝を亢進させるというのが非常に重要なアプローチとなります。COMTという酵素がエストロゲンを代謝しますが、補酵素としてビタミンB6が必要です。アドレナリンと代謝が拮抗するため、女性ホルモンがアンバランスになったときにはイライラしたり、PMSになったりします。

3-4 腸内細菌

最後に、腸の問題です。腸内環境とホルモンは切っても切れない関係です。例えばメラトニンとセロトニンは90%腸でつくられます。腸内環境を改善することなしに、睡眠の問題は改善できないです。アドレナリンもノルアドレナリンも腸内環境と密接につながっています。だから腸内環境をきちんと治さないと、ホルモンの問題も改善しないのです。

根本ピラミッド的には、ホルモンは3階層目です。腸を完全に治すことがホルモンを治すことになります。エストロゲンについても同様で、腸内細菌はエストロゲンを産生しています。エストロゲンは卵巣だけでなく、副腎でもつくられます。エストロゲンにはエストロン(E1)、エストリオール(E2)、エストラジオール(E3)と三種類あります。3つのエストロゲンがうまい具合に拮抗して、エストロゲン活性が強くならないように調整してるわけです。腸内細菌が少なくなるとエストロゲン活性が強くなります。

症例1のような患者さんが来たら、女性ホルモンの根本原因は、環境ホルモンへの暴露なのか、副腎を含めたホルモンバランスなのか、肝臓機能が低下している解毒の問題なのか、それとも腸内環境が悪化しているからなのか、この4つが根本原因になりうるから、この4つの状態がわかる検査をしませんか。と私なら提案します。主訴をまとめて、根本原因に転換していくのを初診時に行っていくわけです。もちろん原因は他にもいろいろあり、この4つだけではないですが、このような形で進めていけばいいと思います。

4  症例2 32歳男性 慢性疲労

次は「疲れやすい、痩せられない」を主訴とする32歳の男性です。この方の主訴は、どのような根本原因でに転換できるでしょうか?想像力次第で色々な考え方があると思いますが、自分なりの意見を見つけることが重要だと思います。

4-1 インスリン抵抗性

インスリン抵抗性を改善しないとダイエットは結局成功しません。長期間になればなるほど、食欲を抑制するのが難しくなるからです。長期間のダイエットを成功させるには、根性とかに頼らなくても良い方法を見つける必要があります。

4-2 消化不良

ダイエットに必要なエネルギーの元となるタンパク質とミネラルは、簡単に消化不良を引き起こします。マグネシウムはエネルギーミネラルなので、不足すると痩せられないですし、亜鉛不足は過食症を引き起こします。

4-3 解毒の問題

解毒の問題もあります。水銀やヒ素の蓄積はミトコンドリアを邪魔してエネルギーの消費を抑えてしまいます。また、金属の蓄積を排除しようとして生理的な浮腫が出ますが、その浮腫を肥満をとして主訴として訴える人もいます。

食事制限や糖質制限をしても痩せられないのは、もしかしたらこの辺りに原因があるかもしれません。このようにいくつか仮説を立てて検査を提案します。

5 根本原因を探すことに意味がある

現在、クリニック向けに患者の血液検査の結果の代行をしてくれるところがあるそうです。血液検査のレポートを作って、不足しているサプリを記載して送ってくれるそうです。それを参照しながら患者に説明すればとりあえずサプリは処方できてしまいますが、本質から考えると無意味でです。

患者の主訴を聞いて、根本原因にアプローチすることに一番の栄養療法のポイントがあるので、そこを外注してしまうと信頼関係も形成できず、足りない栄養だけ補充してもうまくいきません。

根本には必ず何かしら原因があるので、そこにアプローチするためには年単位の治療が必要です。つまり年単位で通い続けてもらわないといけないということなので、そこの信頼関係が築けないとうまくはいきません。この点は、私自身も大変苦労している部分ではあります。

すぐに信頼関係が構築できなくても、2回目、3回目の問診の際でも良いと思います。患者さんは最初から心を開いてくれないし、ブレインフォッグが辛くてそれどころじゃないという人もいます。その場合は、根本原因ピラミッドをただ順番に上がっていけば大丈夫です。

例えばグルテンフリーなどを提案してみて、患者さんのデトックスが進み、腸内環境が改善すると、リーキーガットが閉じて肝臓への負担が少なくなります。肝臓が解毒ができなくなる一番の要因はリーキーガット症候群です。腸と肝臓は門脈で直結しているので、腸の毒物は全部肝臓に行きます。そのため腸の炎症を抑えると肝臓が生き返ってきます。肝臓が生き返ってきて解毒が進むとだんだん脳が冴えてきます。脳が冴えてくると、何をすればいいか判ってくるという患者さんも少なくないです。だからそういう状態になってからあらためて同じ話をしてもいいと思います。そうするとより分かり合えるようになってきます。心理的・精神的なアプローチと、栄養的なアプローチの両面で攻めていく必要があり片方だけでは不十分です。

基本的にサプリメントは効率化の道具で、栄養が濃縮されて入っているものなので、不自然といえば不自然なものです。栄養療法の初期で、このピラミッドを上がるスピードをつけるためのブースター的な役割をするのがサプリメントなんです。だからそのブースターが効いて段々根本ピラミッドを上がってきたら、それに伴ってサプリメントは減らせるはずなのです。

栄養療法の説明をする時に必ず患者さんから質問されるのは、いつまでサプリメントを飲み続けなければいけないかということです。自費診療なのでそのあたりは明確に説明しないと信頼関係がうまく築けません。

腸内環境の改善には平均で2ヶ月から半年かかりますが、その結果は検査の結果によるということを初診のときに説明しています。腸の炎症が強くて悪性菌が多かったら回復に時間がかかることが多いです。悪性菌があったり特にカンジタが過剰増殖してる場合は、カンジタを除菌しないとリーキーガットは完全に閉じません。その場合、腸の炎症を止めて、カンジタを除菌するのに少なくとも4ヶ月はかかります。悪性菌があまりなければ1、2ヶ月ですみます。その見極めをするのに検査がどうしても必要で、検査の結果によって治療方針が違ってきます。その治療方針を決めるのにどうしても検査が必要だということをご説明します。

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