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宮澤賢史

生活習慣と女性ホルモンバランス

宮澤賢史 · 2023年4月23日 ·

女性が健康的なライフスタイルを維持するために重要な女性ホルモン。

女性ホルモンには、排卵や月経のコントロール、妊娠・出産のサポートのほか、女性の美しさと健康を守るための様々な働きがあり、一定の周期でそれぞれの分泌量を調整しながら、女性の心と体を健康な状態に保っています。

しかし、女性ホルモンがアンバランスになると、PMSや生理痛、片頭痛、性欲低下、不妊、更年期症状などが強く出てくるようになります。

ホルモンがアンバランスになる原因の大本は、貧弱な食事、ストレス、運動、睡眠などの生活習慣や内部かく乱物質暴露などの影響です。

原因の大本になっていることを改善していくとホルモンバランスも整ってきて、症状も軽快していくことが多いようです。

もちろん、それだけでは上手くいかない場合もあり、その場合は医療機関の力を借りる必要がありますが、それでも、生活習慣の改善もプラスして取り組む必要があります。

今回は、ホルモンバランスを整えるため、自身でできる健康的な生活習慣とからだづくりについてご紹介します。

女性ホルモンの働き

女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があります。エストロゲンは妊娠の準備、女性らしいカラダづくり、プロゲステロンは妊娠の維持、体温を上昇させる、過剰なエストロゲンの働きを抑えるといったような働きがあります。

ホルモンバランスとは

思春期から閉経までの間、エストロゲンとプロゲステロンの2つのホルモンが正常に働くと、女性の身体を妊娠可能な環境にし、一定の周期で月経が起こります。月経後にエストロゲンが増加し、ピークを迎えるとそれをきっかけに排卵が起こります。

一方、プロゲステロンは排卵後から月経前まで増えていき、妊娠に備えて受精卵が着床しやすい状態に子宮内膜を整えたりしています。そして、月経前には両ホルモンが減少していきます。

この周期はおよそ28日間で繰り返されますが、これらのホルモンの分泌量バランスが女性の心と身体の変化に影響します。

妊娠があった場合はプロゲステロン量が増え、子宮内膜は排泄されず、受精卵を維持します。妊娠期間が進行するとプロゲステロンの生産現場は胎盤に移行し生産量増加します。

ホルモンの量の増減

エストロゲンとプロゲステロンの量の増減が毎月の月経周期を形成しています。

また、それら以外にも性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)なども女性ならではの体の働きと深い関わりを持つホルモンがいくつかあります。

女性ホルモンは、脳からの指令によって卵巣から分泌されます。

女性の体は、脳(視床下部と下垂体)と卵巣、子宮がうまく協調して働くことにより正常な月経周期が成立します。

まず、脳の視床下部はホルモンの司令塔として性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を分泌し、その刺激で脳下垂体から、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が分泌されます。それらのホルモンに刺激されて、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが分泌される仕組みになっています。

卵巣にある卵胞はFSHの刺激によりエストロゲンを分泌し、卵胞の成熟や子宮内膜の細胞の増殖を促します。卵胞が成熟しエストロゲンのレベルがピークを迎えると、下垂体から排卵を促すホルモンLHが急激に分泌されます。排卵を促すために放出されるLHは、排卵前に急激に上昇してすぐに下がることからこの現象をLHサージと呼びます。

LHサージに反応して成長した卵胞が破れ、中から卵子が排出されます。これが排卵です。

卵子が出ていくと、排卵後の卵胞は黄体に変化して、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌します。プロゲステロンはエストロゲンによって厚くなった子宮内膜に作用し、さらに受精卵が着床しやすいように妊娠の準備を整えます。

卵巣にはこれら女性ホルモンの分泌量を脳にフィードバックする働きがあります。脳は女性ホルモンが多いときは分泌量を控え、少ないときは多く分泌させるなど、必要に応じて視床下部に指令を出させます。

妊娠しなかった場合は黄体が消え、エストロゲンとプロゲステロンの生成は低下し、子宮内膜を体外に排出する引き金になります。

血液中のエストロゲンとプロゲステロンのレベルは代謝されたり、肝臓(胆汁)や尿を通じて体外に排出されることによって低下します。

女性ホルモンの乱れる原因

1)ストレス

ホルモンバランスが乱れるのは、ストレスが最も大きな原因と考えられています。2つの女性ホルモンの分泌を指令するのが脳の視床下部です。ここからホルモン分泌を促す指令が正しいタイミングで出される必要があります。

この司令塔である視床下部はストレスの影響を受けやすいといわれています。

視床下部がストレスの影響を受けて混乱すると、女性ホルモンのバランスが崩れてきます。

脳はホルモンレベルと管理する一番大切なスイッチです。

その調節をするのは視床下部と下垂体

①ストレス②環境化学物質の両方が脳を混乱させる

 ⇩

ホルモンレベルに影響

性腺が頭脳からのメッセージ受け取ってない

⇩

ホルモンバランス崩れる

性ホルモンのバランスは、副腎の健全さと複雑に結びついています。

なぜなら、ストレスで副腎が疲労することで性ホルモン産生低下、性ホルモンのアンバランスに影響するためです。

多くの女性が仕事、子育て、妻などといった多くの役割を掛け持つ必要性に迫られ、過剰なストレス晒されています。すると、「生存確保」のためにプロゲステロンを使って、副腎ホルモンが最優先で作られ、他のあらゆるホルモンを作る材料としてプロゲステロンは足りなくなり、エストロゲンとのバランスもとれなくなってしまいます。

エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモン産生のメインは卵巣で、若い時期には副腎で補助的にそれ等を作りますが、更年期になり閉経に向けて卵巣の働きが低下してくると副腎メインでそれらを作るようになります。

副腎が疲弊していると、女性ホルモンを作る役割が果たせなくなり、ただでさえ減少している女性ホルモンが余計に減少してしまいます。

ストレスによるコルチゾール分泌異常がで甲状腺機能に影響し、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)上昇させ、それに連動して母乳産生に関与するプロラクチンレベルを上げ、間接的にプロゲステロン産生を減少させてしまいます。

つまり、ストレスが副腎、甲状腺に影響し、更にそれらが、性ホルモン分泌システムに干渉して性ホルモンの分泌バランスを崩し、エストロゲン優勢の状態を招いてしまうということです。

2)質の悪い食事

①カロリー過剰

脂肪細胞増加でエストロゲン産生増加します。

②アルコール過剰

余分なエストロゲンの処理をしてくれる肝臓の機能能低下を起こすようなアルコール過剰などがあると、それができなくなるため、エストロゲン優勢になる可能性が高まります。

③悪い脂肪摂取割合過剰

 プロスタグランディンの生産は、私たちが食べる脂肪や油で決まります。そのため、プロスタグランディンのバランスの良いままを保ってくれる脂肪を食べることが大切です。

赤肉をたくさん食べると増える、プロスタグランディンE2は乳細胞のステロイドをエストロゲンに変換するアロマターゼ酵素の活性を増やしてしまいます。

オメガ6系脂肪酸を含むコーン油やサフラワー油は炎症促進プロスタグランディン増やし、活性酸素でDNAが傷つく量を増やしてしまいます。また細胞増殖や遊離エストロゲン量も同時に増やします。

逆にオメガ3系脂肪酸は、抗炎症として働き、細胞の増殖を抑制させます。

キャノーラ油もオリーブオイルのような一価不飽和脂肪酸で安定した油ですが、高度に精製されてしまっているので、トランス脂肪酸を含んでいます。使うにしても時々にするのが無難です。

3)植物性食品の不足

植物性食品には、エストロゲン作用を緩和してくれる植物エストロゲンや、エストロゲン排泄を促進してくれる食物繊維が含まれています。

逆をいえば、植物性食品が不足すると、エストロゲン優勢リスク増加させます。

4)環境エストロゲンへの暴露

現代では石油化学製品が広く使われているため、人間のエストロゲンより毒性の強い環境エストロゲンや合成エストロゲンなどの体外ホルモンが身の回りにあふれています。

これらは、エストロゲン的な影響持ち、エストロゲン過剰症状作り出します。人間の体で分解しにくいため、エストロゲンの悪い作用が強く出てしまいます。そのため、完全に使用を避けるのは不可能ですが、できるだけ暴露量を少なくすることが大切です。

エストロゲン優勢原因のプロゲステロン欠乏

エストロゲンとのバランスをとるためにプロゲステロンは重要ですが、なぜ、不足してくるのでしょうか?

多くのプロゲステロンは排卵時にできる黄体で作られます。排卵がなければプロゲステロンは低下します。プロゲステロン欠乏になると、体はエストロゲン優勢になります。

更年期以降も女性は少量のエストロゲン作りますが、プロゲステロンはほとんど全く作りません。このため、更年期に起きるプロゲステロンレベルの低下は、エストロゲンレベルの下がり方に比べはるかに大きくなります。そのため、ホルモンバランスはエストロゲン優勢に傾きます。

プロゲステロン欠乏原因の無排卵月経はなぜ起こる?

無排卵月経とは、排卵しない女性に起こる現象です。子宮に送るべき卵子が卵管に放出されないのが無排卵で、これだとプロゲステロンが作れません。無排卵でもエストロゲンはちゃんとあるので、月経は続きます。しかし、プロゲステロンを作る黄体ができないのでその量は減ります。

(無排卵月経は卵子の残りが1000個くらいになる更年期になると、月経を起こすエストロゲンは作られますが、排卵はめったに起こらなくなってきます。)

30代半ばの女性によく起こり、更年期のずっと前に始まっていることが多いようです。

無排卵月経を起こす原因としては、前述した女性ホルモンバランス乱れる原因と同じで、栄養、過度なストレス、運動過剰、不規則な生活、環境エストロゲンです。

これらのような日常生活の継続により、脳と卵巣と子宮の協調がうまく取れなくなってしまうことで排卵しなくなってしまいます。

排卵がなければ、黄体はできないのでプロゲステロンも作れません。すると、以下のようなことが体に起こってきます。

  • エストロゲン優勢
  • プロゲステロンの骨形成促進作用の効能受けられず骨粗鬆症に影響
  • 無排卵でプロゲステロン生産されないと、副腎ホルモンの生産に悪影響

*コルチゾールが産生できないとストレスダメージ増加で、また無排卵にといった負のスパイラルに陥る

無排卵月経対策

脳と卵巣と子宮の連携をよくするため、日常の生活では、以下のようなことを心がけましょう。

毒性の強い環境エストロゲンや合成エストロゲン暴露を減らす

暴露量を少なくするために、以下のことを気にかけましょう。

  • 動物性脂肪、特に脂肪の多い肉・乳製品の消費控える

これらの動物は早く太らせて市場に出す目的にエストロゲン作用のある飼料を与えられていることが多く環境エストロゲンは動物性食品の脂肪に蓄積されています。

このような可能性のある食品の消費を少なくするか、無しにしましょう。もしも、赤身の肉、鶏肉、卵、魚など食べるのであれば、有機飼料で育ったホルモンや抗生物質を使っていないものにしましょう。

  • 石油化学製品の殺虫剤、除草剤、殺カビ剤、熱を加えると環境エストロゲンを発散するプラスチックなどの使用を大幅に少なくしましょう。
  • カーペットより木か石のなど自然の素材のものにしましょう。カーペットの裏に使う接着剤や溶剤が長い間には有害な分子を放出します。
  • ホルモン補充療法は慎重に

これらのことから、プラスチックを使うもの少なくし、ホルモン剤の入らない肉や有機農法の作物を買い、洗剤なども安全な物を使う。石油化学製品よりも自然な物を使うようにすることが未来の世代の生殖器官やその機能の健康を保証することになります。

健全なホルモンバランスのために

食事や生活を変えるだけでも、ホルモンバランスを整えるのに役立ちます。環境を最適にすれば、体は自分でホルモンのアンバランスを改善する能力を持っているためです。

ただ、長期間、精白、精製された加工食品を食べ、運動をせず、環境エストロゲン、過剰なストレスにも晒されてきたなら、ホルモンバランスの回復は時間がかかるかもしれません。

その場合は、ストレスで疲弊した副腎や甲状腺機能を改善し、性ホルモン分泌システムへの干渉を軽減させるため、生活改善や食事改善とともに医療機関の力も借りて治療しましょう。

1)理想の食事

  • 精製炭水化物を控える

高精製炭水化物食は、高血糖の原因になり性ホルモンの素のDHEA産生を低下させてしまいます。

  • アルコールを控える

肝臓の負担を減らしてエストロゲンデトックスを促進

  • カロリー過剰摂取に注意

必要以上に食べたカロリーは脂肪として蓄積され、それはエストロゲンも増やします。

  • 良い脂肪摂取割合増やし悪い脂肪控える

マーガリンやショートニングなど使ったトランス脂肪酸たっぷりの合成油ではなく、新鮮で加工されていない自然な脂肪を食べるようにしましょう。

脂肪の摂取については、抗炎症作用のあるω3系不飽和脂肪酸含有の亜麻仁油やエゴマ油、クルミ、魚油などの割合増やしω6系不飽和脂肪酸含むサラダ油、コーン油、サフラワー油、トランス脂肪酸含むマーガリンやショートニングなどを使った食品は避けるように。特にトランス脂肪酸は、良い脂肪の働きを抑制してホルモンバランスを狂わせます。オリーブオイルや控えめな量のバターを加熱料理や焼き料理に使うことは健康的です。遮光ガラスボトルに入ったエキストラ・バージンオリーブオイルを探すと良いです。

  • 可能な限り有機農法の食材

有機植物は汚染されていない土壌で、殺虫剤と名の付くもの(除草剤、カビ取り剤、害虫駆除剤を含む)は一切使わず、化学肥料、化学添加物も使わず、栽培されたものです。そして遺伝子操作もされていません。

普通の栽培法で育った果物や野菜は体外エストロゲン的な殺虫剤や化学肥料を使用されています。

また、卵や乳製品、肉類も可能な限り成長ホルモンや抗生物質の与えられていない有機農法のやり方で生産されたものを選ぶようにしましょう。

  • 植物性食品を積極的にとる

私たちが食べている植物には人間の健康を支える作用を持つ様々な成分が含まれています。

一つ目は植物エストロゲンです。これは人間のエストロゲンよりも作用が弱いので人体内に入ると、エストロゲンレセプターを体内のエストロゲンと競って奪い合います。植物エストロゲンが受容体に結合してしまえば、環境エストロゲンや人間のエストロゲンは作用できなくなり、エストロゲン優勢の害を減らすことが出来ます。

この特性を生かすためエストロゲン過剰が原因と考えられる症状の軽快を目的として使用されることあります。

大豆は植物エストロゲンの最も称賛されている供給源です。新鮮な野菜を種類多く食べ、週に数回、大豆製品を食べると、前述のような作用の恩恵を受けることができます。

ただ、大豆は要注意する点もあります。

亜鉛の吸収阻害成分のフィチン酸や甲状腺機能阻害するゴイトロゲンも含んでいるためです。

フィチン酸の害については、納豆、テンペ、味噌などの大豆発酵食品はこれらのフィチン酸の多くが分解されており、貴重なファイトケミカルを身体がより使いやすいものにしてくれています。そのためフィチン酸の害については大豆発酵食品についてはそれほど心配する必要はないようです。

大豆製品のゴイトロゲンと甲状腺機能に関しては賛否両論があるようですが、甲状腺ホルモン剤の吸収を抑制する報告があるので、その薬服用している方は大豆製品を摂取するタイミングを医師と相談したほうが良いようです。そうでない方は、通常の摂取量であれば神経質にならなくてもよいようです。

二つ目は、食物繊維です。植物性食品に含まれている食物繊維もしっかりとりましょう。植物繊維は過剰なエストロゲンを体外へ排泄してくれます。仕組みとしては、肝臓で代謝されたエストロゲンが胆汁に混ざって腸管に送られたものが、微生物によって活性エストロゲンに変換されて血流に再吸収されるのを阻害します。

2)運動

精神の安定、ストレス耐性をつけ、過剰な体脂肪から産生されるエストロゲンを運動により体脂肪削減でエストロゲンも減量させることができます。

3)副腎の働きを改善

健康な副腎がホルモンの適切なバランスのためにとても大切です。副腎の健康のためには、生活からストレスを減らし、十分な睡眠を取り、健康的でバランスの取れた食事をすることです。

ストレスが主に精神的なものであるなら、リラックスさせてくれる瞑想や適度な運動もお勧めです。

砂糖やカフェインは副腎を刺激するので控えるようにしましょう。

進行した副腎疲労がある場合は医療機関の力も借りましょう。

まとめ

女性が健康的なライフスタイルを送るために大きなカギを握る女性ホルモンバランス。そのバランスに影響を及ぼす、食事や睡眠、運動、ストレス、環境エストロゲン暴露なを最小限にするなど日常生活を整えるようにしましょう。それにより、脳、卵巣、子宮の連携をスムーズにして、ホルモンバランスを健全な状態に保てるようにしましょう。

参考書籍

医者も知らないホルモン・バランス ジョン・R・リー著 2020年10月31日 第6版発行

続・医者も知らないホルモンバランス ジョン・R・リー著 2000年11月10日 初版刷発行

「大豆で甲状腺機能低下症になるのか?(大豆と甲状腺)」長崎甲状腺クリニックホームページ 2019年3月30日

日本醸造協会誌 106巻12号 味噌など大豆発酵食品による亜鉛栄養改善の可能性 橋本彩子、神戸大朋

日本醸造協会誌 106巻12号 味噌など大豆発酵食品による亜鉛栄養改善の可能性 橋本彩子、神戸大朋

HERS 「HERS世代は要注意!宇久人疲労で更年期障害が重くなることも」2016年9月号

副腎疲労度と甲状腺の関係 宮澤医院ホームページ

ヘム鉄を1年以上続けてる方は治っていません

宮澤賢史 · 2023年1月7日 ·

前回、血液検査だけでは病気の原因はわからないと書きましたら(記事はこちら)、「私は血液検査で鉄欠乏が判明して、ヘム鉄で改善しました。それからヘム鉄を3年続けており、今は貧血症状は全くありません。」とご意見を頂きました。
それ、治ってないです。

​ヘム鉄を摂り続けている人は意外と多い

栄養療法に詳しい方は、フェリチンが鉄欠乏の良い指標であることはご存知ですよね。
​
残念ながら日本では検診でフェリチン測定が行われないため、鉄欠乏が見逃されている事がよくあります。でもその場合鉄剤、もしくはヘム鉄を1,2ヶ月も摂ればフェリチンも上昇して解決です。
​
しかし、うちに来る患者さんはしばしばヘム鉄を摂り続けています。続けないとまたフェリチン値が下がってしまうからだそうです。
​
鉄を摂り続けなければ維持できない状態って、病気か身体機能の低下が隠れていることが多いです。

鉄が不足し続ける原因を突き止めよう

確かに日本人の鉄の摂取量は推奨量を下回ってはいるのですが、鉄代謝には恒常性維持機構が強く働いており、体内鉄が減少すると、吸収率は高く、同時に排泄量は少なくなる仕組みがあります。
​
貧血になる人は、何らかの原因でこのシステムがうまく働いていないのです。具体的には腫瘍や子宮筋腫などの他に、体内の炎症や腸内環境の悪化なども原因になります。
​
僕の経験上はピロリ菌やカンジダ感染の方は特に鉄欠乏を起こしやすいです。ピロリ菌は胃酸分泌を低下させて鉄吸収を邪魔するし、カンジダは成長のために鉄を人から奪うためです。ぜひ、まだ原因がわかっていないなら詳しい検査をお勧めします。
​
フェリチンが上がらないからといって、ヘム鉄サプリをただ増やすのだけはお勧めしません。ヘム鉄を摂れば摂るほどがんのリスクが高くなるからです。

栄養療法がうまくいっていない人の共通点

宮澤賢史 · 2023年1月4日 ·

こんにちは、宮澤です。栄養療法を始めて21年目の内科医です。

僕は普段慢性疲労やうつ、不妊や発達障害の人を多く診ています。また、クリニックに来院する患者さんの5割は治療がうまくいっていない人たちで、そんな方達にセカンドオピニオンを提供しています。

病気改善と健康増進は全く違う

今日は栄養療法がうまくいっていない人の共通点についてお話します。それは「病気の改善のために健康増進治療を行っていること」です。バカみたいな、ホントの話です。栄養療法を受ける人の目的は大きく分けると健康の増進か病気の改善です。

うつや慢性疲労に対する栄養療法は病気の改善が目的で、

美容、アンチエイジングやアスリートのパフォーマンスの向上は健康増進です。

この両者に対するサプリの使い方は全く異なります。「サプリが効かない」といって私の外来に来る方はここを混同しています。

足りない栄養を摂ることはオリンピックに有効

20年前、僕は大学病院を辞めてサプリメント会社に就職しました。その会社がすごかったのは、会員全員に血液検査を推奨していたことです。

血液検査の結果から足りない栄養素や体のダメージが推定できます。それに対して鉄不足ならヘム鉄サプリ、活性酸素が多ければ抗酸化のビタミンCを摂る。

これが栄養療法の基本です。この方法は元々健康な人をさらに調子良くしたり、アスリートのパフォーマンスをアップするのに長けています。

実際にその会社は多くのスポーツ選手をサポートしており、2004年のアテネオリンピックの時にはサポートチームが金メダルを量産するのを目の当たりにしました。

しかし、その一方で病気にはあまり効果がなかったのも事実です。僕は慢性疲労、うつの人たちにサプリを処方をしたけど、根本的に改善することはほとんどありませんでした。
 

ポイントは身体機能の低下

検査して足りない栄養を摂っているのに、なんでこんなに効果がないのか?

なんでスポーツ選手にはこれほど効果のあるサプリが、慢性疾患の人を治してあげられないのか?

その理由は、病気の人は身体機能低下の結果として栄養が不足するからです。自律神経が緊張して栄養の消耗が激しいとか。腸が悪くて栄養を吸収できないとか。

つまり、病気の人の栄養不足は結果であり、原因ではありません。原因を治療しなければ栄養をいくら補充してもまた足りなくなります。

つまり、「健康の増進」と「病気の改善」でサプリを使い分けるとは、健康増進には足りない栄養素の補充を、病気の改善には栄養素を使って身体の修復を行なうということです。

言い換えれば、それは神経内分泌系や腸内環境、デトックス機能などの機能低下を探し出してそれぞれに対処することです。

病気の改善目的の栄養療法がうまくいっていない時は、自分の治療が「健康増進」治療になっていないかチェックしてみてください。

両者の治療の見分け方

え? 「健康の増進」と「病気の改善」治療、どうやって見分けるのかって?

簡単です。診察の時「サプリを一生続けてください」と言われたら健康増進治療です。

当たり前すぎる? ではもう一つの目安を教えましょう。

それは「血液検査以外の検査を受けているか?」です。

健康増進治療は足りない栄養素の補充とダメージの修復がメインになります。ダメージというのは活性酸素や炎症のことです。これは血液検査で判断できます。

でも、病気の改善には体の機能低下を見つける必要があります。例えば自律神経を見るには唾液検査、腸内環境には便検査、ミトコンドリア機能を知るためには特殊な尿検査が必要です。一般的な血液検査では詳しいことはわかりません。

だから、血液検査しか受けていなければ、今の治療は「健康増進治療」になっている可能性が高いです。ぜひしかるべき検査を受けて「病気の改善治療」にシフトしてください。

ついでに言えばこの方法は「健康増進目的で健康増進治療をしても効果がない人」にも有効です。

検査で足りない栄養を摂ってもダイエットがうまくいかない人、競技のタイムを縮められない人はぜひ体の機能低下チェックを行ったほうが良いでしょう。プロスポーツ選手でも身体機能が低下してる方は多いです。

副腎疲労を正確に診断し治療する必要性

宮澤賢史 · 2022年12月29日 ·

とある医師の専門雑誌があるのですが、そこの記事があまりにも気になったので、書きました。


開業医の先生が書かれた記事で、内容は「他院で副腎疲労治療中の患者さんがコートリル(ステロイド剤)が切れたので処方して欲しいとやってきたが、ステロイドを簡単に処方するわけにもいかず副腎疲労という病気を調べたら、Pubmed で adrenal fatigue doesnt exist. という論文に突き当たり、この病気の存在自体が怪しい。また、副腎機能低下ということで、患者さんに聞いてみたら血中ATCHをフォローしている訳でもないし、こんな怪しい副腎疲労外来と言う看板を掲げてる医者は大丈夫か?」というものです。
​
私が日本で副腎疲労外来を始めて15年になりますが、「副腎疲労外来」はとても増えたと思います。
​
中にはこのように表面上のことだけを理解して、コルチゾールの検査をせずに、ステロイドを処方してしまう先生もいるようですが、これが極端にひどい例であることを祈ります。その雑誌に書かれた先生のツッコミももっともだと思いますので、副腎疲労の概念、診断、治療に最低限守るべきことを書いておきます。
​
​1 副腎は疲労しない(正式にはストレスによるHPA軸の障害である)
2 ちゃんと診断しよう(除外診断も重要)
3 ステロイドは用いない
​
​
1 副腎は疲労しない
​
副腎疲労(Adrenal fatigue)は1990年代にカイロプラクターのJamesWilson博士により提唱された概念です。長年のストレスにより副腎が疲弊しコルチゾール分泌が減弱するというものです。 しかし、実際に副腎が疲弊する事実はありません。Pubmedの論文の記載通りです。
​
長年のストレスや慢性炎症などにより高コルチゾールが継続すると、下垂体から放出されるATCHのネガティブフィードバックのセットポイントが下がってきます。コルチゾールは体蛋白を異化させ、海馬を萎縮させるので、それを防ぐためかと思われます。
​
ついには、ACTH低下のためにコルチゾールも基準範囲を下回るようになります。これが俗に言う副腎疲労のステージ2です。つまり副腎疲労というのは言うなれば下垂体疲労なのです。 HPA軸(視床下部-下垂体-副腎)で言えば、視床下部からのCRHに下垂体からのACTHと副腎のコルチゾールが反応しない状態であり、正式な医学的名称はHPA-axis dysfunctionになります。
​
このHPA軸障害をpubmedで検索すると、うつやPTSDなど慢性ストレスを引き起こす疾患との関連論文が多数ヒットします。
​
(じゃあ、なんで副腎疲労外来と言う名前を残しているかというと、患者さんが理解しやすいからです。HPA軸の説明は難しく説明に時間がかかる。副腎が疲れると言うのは説明がしやすい。increased intestinal permabilityではなくリーキーガットを使うのと同じです。)
​
​2 ちゃんと診断しよう(除外診断も重要)​
​
HPA軸障害は下垂体性の低コルチゾール症で、器質性の下垂体腺腫やアディソン病などとは全く性質の違うものですが、時に重症化するとアディソン病などに類似した症状を呈することもあります。
​
だからと言って、慢性疲労や朝が起きられない、うつや「やる気のなさ」などの症状のみから診断を付ける事は殊に避けなければなりません。
​
HPA軸障害で低下するコルチゾールレベルは僅かなので、血中よりも唾液中レベル測定が適しています。
​
症状によっては内分泌専門科の受診、下垂体や副腎のCT検索などを併せて行うべきであり、そうでなくとも最低限血中のACTH、コルチゾールなどは検査し、基準値以内であることを確認すべきです。
​
​
​3 治療にはステロイドを用いない​
​
副腎疲労(HPA軸機能障害)は、慢性ストレスの結果HPA軸がダウンレギュレーションを起こした状態です。器質的な障害、下垂体の血流低下や副腎の萎縮などはなく、よほどの極期を除いて、ステロイドの使用は避けるべきです。
​
実際の治療は、HPA軸のストレス負荷を軽減した状態で、ステロイドを用いずに滋養強壮の生薬やホルモンの前駆体などを用いてコルチゾールレベルを修正していきます。
​
副腎の疲労を治すのではなく、歪んでしまったHPA軸を元に戻すのです。副腎疲労の治療のポイントは脳へのアプローチにあります。
​
実は、副腎疲労の診断で検査も受けず、ステロイドだけ処方されてる方、時々うちにもいらっしゃいますが、殆ど治ってないです。患者さんに良かれと思って投薬されているのでしょうが、ステロイドの離脱の分だけ余計に時間もお金もかかります。
​
中途半端でない系統的な治療にぜひ切り替えを!

栄養療法で行き詰まっている人がするべき2つの質問

宮澤賢史 · 2022年12月29日 ·

栄養療法を受けている友達との会話


友達「ちょっと相談があるんだけど。」
宮澤「どうしたの?」
​
「半年前から栄養療法のクリニック通ってるんだけどさ」
​
「ああ、そうだったね。 治療は順調にいってるの?
前よりは元気そうに見えるけど。」
​
「確かに調子はよくなってきてるのよ。
蕁麻疹は出なくなったし、不安な気持ちになることも少なくなった。
でも、まだ疲れは取れないし、夜もよく眠れないのよね。」
​
「今後どうしたらいいのかと思って。」
​
「そんなこと言ってたよね。
ところで主治医の先生に聞いた? 例の質問」
​
「聞いたよ。この2つの質問ね。」
・なぜ私の具合が悪くなっているのか?(私の症状の根本原因はなんですか?)
・どのようにすれば治るのか?(その根本原因の治療プランはなんですか?)
​
「それで答えは?」
​
「ビタミンB不足でエネルギーが出ていないこと、活性酸素が溜まっていること、腸のカンジダ感染症が原因だって。実際に治療はビタミンBや抗酸化サプリが処方してもらって、カンジダ除菌も終わったんだけど。
​
でも、まだ完全じゃないし、いつまでサプリを摂ったらいいですか?って聞いたら、「一生摂る必要がある」って言われたのよね。」
​
「残念ながら、それらは全て根本原因じゃないな。栄養不足っていうのはなんらかの原因があって起きるんだよ。例えば、ビタミンBは糖質と一緒に使われるから、糖質を摂りすぎればビタミンB不足を起こすんだよね。」

「ついつい甘いものが欲しくなるんだよね。」
​
「そう、多分低血糖が前提にあるから甘いものに手が伸びるようになって、その結果ビタミンB不足になってるんだよ。低血糖治さなきゃ、永遠にビタミンBを摂る事になるよ」
​
「そうなんだ! でもカンジダは根本原因じゃないの?」
​
「確かにカンジダを除菌すれば、甘いものを欲しくなくなるし、エネルギーも戻ってくるよ。でもカンジダっていうのは常在菌で多くの人が元々もっているんだよね。
​
増えすぎた場合問題になるから除菌するんだけど、同時になんで増えすぎるのか?を考えないといけない。その要因を潰さないと何度もカンジダ除菌を繰り返すことになるから。」
​
「確かに言われてみればその通りかも。
 大丈夫かな?  私の治療うまく行ってるのかしら?​
 治療がうまくいってるかどうかわかる簡単な目安とかってないの? 」

「 一番簡単な目安はサプリの量だね。
  半年前と比べてサプリの量は増えてる?減ってる?
  治療がうまく行っていれば、だんだんサプリは減ってくるよ。
  栄養不足は結果であって原因ではないから。 
 原因にアプローチできなければサプリはどんどん増えることになるよ 


もう1つの目安は治療期間ね。根本原因が明確ならそれに対する治療期間もはっきりするはず。副腎機能の改善は半年から2年くらい、病原菌の除菌は1週間から3ヶ月、デトックスは3−6ヶ月間くらいが多いよ。
​
もし本当に栄養不足が根本原因なら、一生摂り続けなければならないけど、一部の遺伝的な疾患を除いてそうなる事はほとんどないよ。」
​
「なるほど、治療から半年経ってサプリも減る気配がないし、一生摂り続けるのもいやだから、先生に根本原因の事、治療方針の事もう一度確かめてみるわ! ありがとう。」

​​自分の受けている栄養療法をチェックする質問 まとめ​
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​1「なぜ私の具合が悪くなっているのか?」
自分の根本原因が何か?ということを聞く。
​
​
(重要)栄養素の不足(タンパク不足とかB群不足とか低フェリチンとか)が根本原因になることは殆んどない。足りない栄養を補うと調子が良くなるが、根本原因にプローチは別に必要。
​
​2「どのようにすれば治るのか?」
根本原因別の治療プランを組み合わせを具体的に聞く
​
​
(重要)合わせてそれぞれのプランの治療期間を聞くこと。
(例)副腎疲労半年間、腸内除菌2ヶ月間、デトックス3ヶ月間


サプリがいらない体、なんでも食べられる体を作るのが栄養療法のゴールと設定すると、栄養療法の治療効果を最大化できます。
​
もし自分の治療に行き詰まりを感じたら、上記の2点に関して主治医の先生とよく話し合ってみることが大いに参考になるでしょう。

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