今回は、毎年アメリカで行われている統合精神医療学会のIMMH(Integrative Medicin for Mental Health Conference)の講演内容をヒントに、精神疾患に対する栄養療法のまとめをお話しします。特に、ドーパミン、セロトニン、ヒスタミン、グルタミンなど代表する脳の神経伝達物質の評価と調整についてスポットを当ててみます。
1.精神疾患の原因、精神神経疾患を診るコツ、問診項目について
1-1. 精神疾患の原因
- 食物アレルギー
- 腸内環境
- ヘキサクロロフェン(消毒薬)
- 脳の可塑性
- ライム病
- 脂質過酸化
- マイコトキシン(カビの毒素)
- グリアジン(小麦のグルテンの成分)
- 不眠
- トラウマ
- 薬
- フェイスブック
これらすべて、精神疾患の原因として考えられるものだそうです。
有機酸検査の開発元であるグレートプレーンズ社長のウィリアム・ショー博士は、ヘキサクロロフェンという消毒薬の害や、日本でも徐々に話題になりつつあるライム病、脳の脂質の過酸化の問題、プロスタグランジンの代謝の問題などを指摘しています。
彼はマイコトキシンについても触れていました。日本は湿気が高い国なのでカビの毒素に暴露している人は多いはずです。クリニックで実際に測ってみるとマイコトキシンが出てこない人はいません。
また、グルテンの中身であるグリアジン抗体が統合失調症の1/3位の人に見られたという報告がありました。幻覚や妄想を見る統合失調症はドーパミンの過剰により起こるという仮説が近年支持されていましたが、陰性症状や無気力について説明できないと言われていました。最近ドーパミンに加えて話題になっているのはグルタミン酸で、グリアジンが関係しています。その他に、不眠やトラウマ、薬、Facebookが精神疾患の原因になっているそうです。
下のグラフは、10歳から14歳のアメリカの子どもの自殺率です。
自動車事故は徐々に減ってきていますが、2007年から自殺が増えていて、2013年に自動車事項を上回っている理由は、2007年1月にiPhoneが発売された事と関係あるのではないかという話も出ていました。
1-2. 精神神経疾患を診るコツ
ショー博士によると、精神神経疾患を診るコツとして、症状だけを診ないことが重要だそうです。セロトニン不足、ドーパミン、グルタミン過剰も、脳内で起きていて表に出ている症状だけだと見分けがつかないこともあるため、脳の中で何が起きているのかを推測せよということをお話しされていました。
特にトラウマや幼少期の経験が重症になればなるほど、精神疾患に深く影響します。統合失調症はその典型ですがHSPも同様で、ハイパーセンシティブな人々は幼少期のトラウマや、母親のお腹の中にいるときの経験が深く関係しているため、問診のときにはそこをよく洗い出す必要があります。
脳は全身と繋がっていて影響を受けやすいため、根本原因のピラミッドの一番上に脳とメチレーションがあります。特に全身の炎症や感染には、免疫状態が深く関与していますが、これに最も関与しているのは腸です。精神疾患を治すためには、全身の状態を調べて、炎症や免疫状態を調整してコントロールしていく必要があるんです。
僕はウィリアム・ウォルシュ博士の鬱病のメソッドも取り入れていますが、その理由の一番はエビデンスです。彼は、セロトニンやドーパミンを、ナイアシンや葉酸など栄養で動かせるという数万人単位のエビデンスを蓄積しています。ショー博士とウォルシュ博士のメソッドを組み合わせて使うと最強です。
さて今日は、ドーパミン、セロトニン、ヒスタミン、グルタミンなど代表する4つの神経伝達物質の評価と調整が、精神疾患の治療に役立つだろうと思い、これらにスポットを当ててみます。
1-3. 問診項目について
- ドーパミン ↓意欲低下 ↑ 緊張
- セロトニン ↓疲労、うつ ↑ 不安、緊張
- ヒスタミン ↓学習低下 ↑ 神経的興奮
- グルタミン ↓学習 ↑ 興奮
- 腸の症状
- 全身の感染
- 毒素への暴露
これらの神経伝達物質は元々脳の中にあるのではなく、毎日作られては壊されていきます。うまく作られなかったり代謝や分解がうまくいかなかったりすると、問題がでてきます。ウォルシュ博士のメチレーションで出てくるのはドーパミンとセロトニンですが、特にお子さんの場合はグルタミン酸やヒスタミンも非常に脳に関わってきます。
2. ドーパミンの調整、DBH(ドーパミンβヒドロキラーゼ)
2-1. ドーパミンの調整
ドーパミンはやる気の神経伝達物質なので、ドーパミンが低下しているとやる気が出ない、意欲の欠如という症状が出ることが多いです。反対にドーパミン過剰だと、興奮、幻覚が出るので多すぎても少なすぎてもいけません。ドーパミンは脳にとっての神経毒なので多すぎると調整が必要です。僕がどのようにドーパミンを調整しているかと言うと次の5つです。
- メチレーション(OMならナイアシン)
- GF,CF,Sugar,Cafeine free
- DBH(腸内環境)
- ビタミンD+チロシン
- BH4(アンモニア、アルミ、MTHFR1298)
メチレーションが回っているかは症状と好塩基球数で評価しますが、好塩基球数が30以下ならオーバーメチレーション、70以上ならアンダーメチレーションとウォルシュ博士は定義しています。
ドーパミンの調整で誰もが最初に行うべきは腸内環境です。GF(グルテンフリー),CF(カゼインフリー),Sugar(シュガーフリー),Caffeine free(カフェインフリー)で、これらはドーパミンに影響します。
低血糖は、ドーパミン、ノルエピネフリンに関係します。
カフェインはドーパミンの代謝を遅らせるので、興奮作用があります。ウィリアム・ショー博士がいつも強調するのはドーパミンβヒドロキシラーゼ(DBH)です。これは、ドーパミンをノルエピネフリンに変換する酵素で、腸内環境の悪化によるクロストリジウムの存在によってしばしば阻害されます。ドーパミンβヒドロキシラーゼを測る一番良い方法は、有機酸検査でフェニルアラニンとチロシンの代謝物を診ることです。
2-2. DBH(ドーパミンβヒドロキラーゼ)欠乏症
これは5年位前の僕のドーパミン検査です。
この時はあんまり腸が良くなかったからだと思いますが、ドーパミン2.0とノルエピネフリン0.17の値から推測すると、ドーパミンからノルエピネフリンへの変換が阻害されていると考えられます。
ドーパミンの原料はチロシンというアミノ酸ですが、このドーパミンが補酵素の銅とビタミンCによりノルエピネフリンに変換されて、ドーパミンβヒドロキシラーゼになります。活性中心の銅が酸化されないためには、ビタミンCが必要です。銅過剰タイプの場合、ドーパミンからノルエピネフリンに過剰転換され、反対にクロストリジウムが過剰だとドーパミンβヒドロキシラーゼが阻害され、ドーパミンは多くなり、ノルエピネフリンが少なくなります。
ドーパミン代謝の基本はここで、このドーパミンがノルエピネフリンに変わるドーパミンβヒドロキシラーゼ阻害要因は3つあります。一つはクロストリジウムの増殖、一つは元々の遺伝子変異であるドーパミンβヒドロキシラーゼ欠乏症。また、鉛の蓄積もドーパミンβヒドロキシラーゼを阻害します。ご自分の有機酸検査の結果を見て、ドーパミンに対してノルエピネフリンが極端に低くなってる人は何らかの要因によってDBHが阻害されていると考えられます。遺伝子多型によるものの場合の特徴は、交感神経欠如症状、特に起立性低血圧と眼瞼下垂の症状が小児期から出現します。
このDBH欠乏症は 、夏に症状が悪化し、欧米での有病率は4%だそうです。WHOが発表しているうつ病の有病率が大体3〜5%なので、4%というのはうつ病の有病率と同じなので、もしかしたら皆さんの中にもいらっしゃるかもしれません。こういった場合はどう対処すればいいのでしょうか。ノルエピネフリンが低下している場合は、集中力がなくなり、ドーパミンがたまってイライラするかもしれません。
2-3. LowDBHの患者さんをチロシンで治療するな
集中力を増すために、チロシンを追加するのはよく使われる方法です。チロシンはチロシンヒドロキシラーゼという酵素の元で、Lドーパからドーパミンに変換されます。そのドーパミンがノルエピネフリンに変わっていくのでチロシンを摂るとこれら全部が上がっていくので、一見良い方法に見えますが実はそうではありません。
その理由は、ドーパミンとノルエピネフリンのバランスが崩れるからです。ノルエピネフリンはある程度作られると、ネガティブフィードバックをかけて、チロシンからドーパミンへの生成を抑えます。DBHがうまく働かない人というのは、ドーパミンばかりが増えてノルエピネフリンは増えないため、このネガティブフィードバックが働きません。つまりドーパミンβヒドロキシラーゼが働かない人がチロシンを大量に摂ると、ドーパミンとノルエピネフリンのアンバランスがさらに加速してしまいます。
ドーパミンは神経毒で、活性酸素を発生するホモバリニン酸に代謝されます。ドーパミンというのは過剰だと毒となり、この毒物が脳内で増えると活性酸素を発生させて脳内グルタチオンを枯渇させます。ショー博士によると、その状況が長く続くのが一番の問題だそうです。
やる気がない人には、ドーパミンを増やそうとしてついついチロシンとビタミンDを投与しがちですが、その前に必ずDBHを見て、腸内環境が悪ければまずはDBHを働かせるためにクロストリジウム対策をします。有機酸検査でクロストリジウムが上がってるかどうかはわかります。ただしDBHを阻害するのは、クロストリジウムだけではありません。様々な腸内悪性細菌が阻害すると言われていますので、腸内環境はドーパミンの代謝を整える第一歩だ、ということをこの発表を見て改めて思いました。
2-4. Low DBHを疑う症状
LowDBHを疑う症状は、以下の通りです。
- 疲労、運動不耐性、低血圧。
- 自然流産、自閉症の男の子
- ADHDが増加し、活動性が低下した
- 7歳を超える年長児の夜尿症(遺尿)
- アルツハイマー病
- 統合失調症
- うつ病
- アルコール依存症
アルコール依存がある人は、LowDBHの可能性があります。是非、まだ検査していない人は、全ての検査の基本である有機酸検査を受けてみてください。
3. クロストリジウムは手強い、ADHDの68%は銅過剰
3-1. クロストリジウムは手強い
クロストリジウムは、一般的にメトロニダゾールとバンコマイシンという薬を投与するのが標準プロトコールです。芽胞を形成し胞子を作って抗生剤耐性になるので、簡単には除菌できません。メトロニダゾールをストップすると再発してしまいます。HPHPAというのはクロストリジウムの産生物で、抗生剤を何度使っても再発してしまうので、何らかの対策が必要です。
ショー博士のプロトコールも参考にしてみましょう。
- バンコマイシン10 mg / Kg /日divを3回投与10日
- フラジル(メトロニダゾール)30 mg / Kg /日を3回に分けて10日
- 乳酸菌アシドフィルスGG1日あたり1,000億
- ラクトバチルスラムノサス、Culturell VSL#3、サッカロマいセス
- セルグルタチオンまたはNアセチルシステイン
- 脳のグルタチオンを増やし、神経毒性ドーパミン代謝物を減らす
- 高タンパク質食(フェニルアラニン、チロシン)は、有毒なクロストリジウム代謝物の生産を増加させるかも
バンコマイシンとメトロニダゾールの薬は10日間使いますが、それ以外にも色々な乳酸菌を使っています。
CulturelleのVSR#3はi Herbでも売っていますが、通常は5〜20ビリオンですが、112ビリオン入っていて、8種類のマルチの乳酸菌ということがポイントです。
1種類の乳酸菌だと耐性ができやすいので8種類の乳酸菌を使うということ、冷蔵された生菌を使うと良いとショー博士はおっしゃっていました。
アメリカでは冷蔵庫で売られている乳酸菌ですが、日本では冷蔵便で配送されないこともあり死菌だから大丈夫と謳っていますが、実際効果はありません。EPA、フィッシュオイル、乳酸菌は鮮度が重要なので、サプリメントは購入場所を選ぶべきです。
ミセルグルタチオンまたはNアセチルシステインを使う理由は、ドーパミンの代謝物が溜まってる人が多いため、これを減らして脳のグルタチオンを増やすためです。そしてあまり高タンパク質食はお勧めしないということをおっしゃっていました。
クロストリジウムは難しいですが、善玉クロストリジウムのミアリ酸を使っています。クロストリジアおよびDBH欠乏症には、ドーパミンが増加して症状が悪化するため追加のチロシンを与えないでください。
ドーパミンが上がっていて、ノルエピネフリンが下がっているパターンなら、まず腸内環境を調整しますが、中には両方下がっている人もいます。ドーパミンも低く、ノルエピネフリンも低い場合は、元々のドーパミンの材料が少ないのが原因なので、チロシン、フェニルアラニン、そして不活剤のビタミンDを投与します。
勉強に集中できない、最後まで仕事を終わらせられないなどでADHDと診断を受けた人には、ドーパミンとノルエピネフリンの両方が下がっている場合、チロシンとビタミンDを摂ってもらっています。
3-2. ADHDの68%は銅過剰
ADHDの方は、コンサータ、もしくはストラテラというお薬を飲んでいる方が多いです。コンサータは中枢神経刺激薬(ドーパミン再取り込み阻害薬)なので、一種麻薬と同じです。ストラテラはノルアドレナリンの再取り込み阻害薬です。コンサータだと集中力が高まり、ストラテラだと冷静になると言われていていますが、腸内環境を良くして、特に銅過剰の人は亜鉛を沢山入れてDBHの働きを調整してあげるとこの薬が効くだろうと思います。
僕の場合は、とりあえず食事をみて、腸内環境を治して、その次がビタミンDとチロシンの投与です。それでもうまくいかない場合はBH4(テトラヒドロビオプテリン)の調整をします。ビオプテリンというのはチロシンからLドーパをつくる酵素の補酵素です。このテトラヒドロビオプテリンがうまく働くのを阻害する要因は、アンモニアの蓄積にBH4が使われるからです。他にも、アルミの蓄積、そしてMTHFR1298の遺伝子変異です。この遺伝子変異は仕方ないとしても、アンモニアの解毒とアルミのデトックスをして、アンモニアを貯めないようにすると徐々にドーパミン代謝が良くなっていくと思います。
ストラテラの薬の働きがとても強いので、依存してしまう患者さんが多いですが、これらを総合的にやっていくと、薬の量を将来的に減らすことができると思います。ただその過程には年単位かかるので、全て自然にやろうとすると、やる気が出ないまま1年、2年人生を過ごしてしまうかもしれないので、僕は薬を推奨しています。薬を止めたことによってかえって副作用が出る人がいますが、この原因として考えられるのは、第一に栄養失調です。栄養をきちんと入れてあげると、薬の離脱がスムーズにいきます。
4. セロトニンの調整、グルタミンの調整、症例
4-1. セロトニンの調整
セロトニンも同じくメチレーションです。特にSSRIがこれだけ蔓延しているところを見ると、メチレーションの与える影響は非常に大きいです。完璧主義、儀式的な行動、季節アレルギー、いつも決まったいつも同じ食事、いつも同じ服、いつも同じ道順で家に帰る人は低メチレーションですから、セロトニンが少ないです。
下記は、セロトニンがどこで作られてるかという図になります。
セロトニンの9割は腸で作られます。緑のところは、腸のクロム親和性細胞(Enterochromaffin Cell)です。セロトニンを作る5HTを作る細胞というのは、脳からの命令でも、腸内環境からの影響を受けても作ります。そのため、腸脳相関がとても重要だという話です。
クロストリジウムの芽胞から短鎖脂肪酸(SCFA)が情報伝達物質として働いているというのは有名です。クロム親和性細胞に働いて、セロトニンを分泌します。セロトニンがうまく働いていない人、幸が薄い人というのは、やっぱり脳にストレスがかかっている人で、腸内環境が悪い人ということがよくわかります。
4-2. 炎症はセロトニンを枯渇させる
もう一つセロトニンに大きな影響を与えるのは、炎症です。炎症があるとトリプトファンの10%しかないセロトニンの産生経路がブロックされて、全てキノリン酸経路になってしまいます。そのためセロトニンが少ない人は全身の炎症をいかに抑えるかということが非常に重要になります。
この論文は、イラスト入りでわかりやすいので色々なところで見かけますが、チロシンをドーパミンに変換するチロシンヒドロキシラーゼという酵素の補酵素はBH4です。
同じくトリプトファンをセロトニンに変換するトリプトファンヒドロキシラーゼの補酵素もBH4です。BH4がないと、ドーパミンもノルエピネフリンもセロトニンもできません。もしドーパミン、セロトニン代謝がうまくいかなかったらBH4の3本柱であるアルミとアンモニアにも留意してみてください。
- ドーパミン ↓意欲低下 ↑ 緊張
- セロトニン ↓疲労、うつ ↑ 不安、緊張
- ヒスタミン ↓学習低下 ↑ 神経的興奮
- グルタミン ↓学習 ↑ 興奮
- 腸の症状
- 全身の感染
- 毒素への暴露
ドーパミンとセロトニンは、メチレーションの影響が大きいです。実際にドーパミンやセロトニンを作る方と、ドーパミンやセロトニンが効く方、受容体に挟まる方と、それと再取り込みされるのと、色々な要素がありますが、再取り込みの要素が大きいです。それ以外にドーパミンの生成経路とかセロトニンの生成経路も関係しますので、そこも併せて見ておくと理解が深まると思います。
4-3.グルタミンの調整
グルタミン酸は学習に不可欠の神経伝達物質です。 計算力や記憶力が高い人というのはグルタミン酸が沢山出ています。グルタミンの調整は、ビタミンB6とグルタミン酸受容体のほどよい刺激と、グリアジンの問題があります。
グルタミン酸神経には色々な種類がありますが、問題があるのは脳の炎症を引き起こすNMDA型のグルタミン酸受容体です。このグルタミン酸受容体が異常興奮してしまうと、グルタミン酸過剰症状が出ます。その過剰症状が起こすのはグルタミン酸そのもの、ビタミンB6によるGABAへの転換不足、そしてマグネシウムなしのカルシウムが、グルタミン酸神経を興奮させます。グリシンと低血糖発作があると、興奮しやすくなり、一旦感情的になると止まらなくなることがあります。
グルテンの構成成分であるグリアジンについて発表がありましたが、統合失調症の1/3の人にグリアジンの抗体の上昇があったということです。このグリアジンとNMDA受容体はタンパク構造が似ています。そのためグリアジンに抗体がある人は、酵素反応をして、グルタミン酸受容体も攻撃されてしまい、その結果グルタミン酸神経系が過敏になるということが十分考えられます。
統合失調症にグルタミン酸神経が関係するのもこれが原因だと思います。確かに統合失調症に関するグルテンフリーの論文は沢山あります。もちろんグルテンフリーは、リーキーガットや、リーキーブレーンを防止する役目もありますが、グルタミン酸神経を抑えるというのもこの食事療法の重要な意味だということを、統合失調症の栄養療法専門医のキャリー先生がおっしゃっていました。統合失調症の方にはグルテンフリーにしてもらってカンジタを除菌することがコツです。
グルタミン酸はGABAに変換されるので、グルタミン酸からGABAへの変換ができない人は、大勢の話し声の中で相手の声だけを聞き取ることができません。そのため、群衆の中で人の声が聞こえなくなったり、理解ができなくなってくるというのは、GABAの不足している人の典型的な症状です。そういう人はグルタミン酸神経の興奮も伴っていることが多いです。対処として一番簡単なのは、ビタミンB6です。ある患者さんはやはり集団の中で話し声が聞き取れないと言うことで、ビタミンB6を400mg摂っていました。それでもうまくいかなかったので、とりあえず活性型ビタミンB6をもう少し摂るようにしてもらいました。ビタミンB6を活性型ビタミンB6に変換できない人というのは、GABA不足の原因になっている人が多いので、GABAそのものを飲んでいただくことで症状は改善することが多いです。
グルタミン酸をGABAに変換するGAD(グルタミン酸脱水素酵素)の補酵素はビタミンB6ですが、他に亜鉛も大きく関与しています。亜鉛はビタミンB6を活性型にするためにも必要です。水銀の蓄積はGADを阻害するので、それでも効果がなければデトックスします。僕はガヤガヤしている居酒屋に行くと人の話が聞こえなくなりますが、ビタミンB6を飲んでから行くと全然違います。
5. 症例、ヒスタミンの調整
5-1. 48歳、鬱病、過敏性腸症候群
48歳女性鬱病の患者の毛髪検査です。
この方はカウンティングルールで言うところの3番に引っかかるので、ミネラルの輸送障害があります。ただこの方の特徴は、カルシウムとマグネシウムが非常に高くてナトリウムとカリウムが低いことです。副腎疲労が結構疲弊期にかかっていると思われますが、カルマグが高いので脱灰が亢進してると読めます。脱灰が亢進してる人は、往々にしてカルシウムが過剰です。カルマグが高く低血糖症があると、グルタミン酸神経が興奮しやすくなります。普段は何ともなくても、興奮するとなかなか興奮が自分で止められない、非常に疲れやすいのも特徴です。
マグネシウムが不足してカルシウムの脱灰を止められず、ミトコンドリアが少ない人には、まず低血糖を確認します。もちろん腸内環境も確認する必要がありますが、低血糖があったらまずそこを治していくと、かなり楽になります。マグネシウムを投与して、カルマグの数字が下がると体調が戻ってきます。毛髪中のカルシウムは、グルタミン酸神経の過剰興奮を測る指標にも使えるということになると思います。
5-2. ヒスタミンの調整
ヒスタミンは学習、認知に非常に重要な働きをしています。ヒスタミンの受容体は、1〜4まであります。風邪薬や抗アレルギーの薬など抗ヒスタミン薬を飲むと頭がぼーっとするのは、脳のヒスタミン神経が抑えられるからです。ヒスタミンは、脳にとって重要な働きをしています。不足も良くないですが、過剰だと興奮して問題になります。脳神経細胞を興奮させることが学習につながるためある程度の興奮は必要ですが、過剰な興奮は神経細胞死を引き起こすので、適切な量の調整が必要です。これは、グルタミン酸やドーパミンも同様です。
「頭の回転の速さ」に脳内ヒスタミンが関与
前頭葉のヒスタミンH3受容体と作業記憶が関係していることを発見。前頭葉のヒスタミンH3受容体密度が低い人ほど、作業記憶に重要な前頭葉の活動が高い。
https://www.qst.go.jp/site/press/1183.html
5-3. 好塩基球数を求める
メチレーションの状態を測るのに好塩基球数を見ると良いのは、好塩基球数がヒスタミンの代謝に関わっているからです。
- 白血球数4800×好塩基球(BASO)の割合(%)2.5÷100
- 好塩基球数<30 なら OM
- 好塩基球数>70 なら UM
ヒスタミン代謝も推定できる
血中のヒスタミンは98%以上好塩基球に存在しているので、ヒスタミン濃度は、末梢血中の好塩基球数と相関します。好塩基球数が30以下だったらオーバーメチレーション、70以上だったらアンダーメチレーションです。ヒスタミンを代謝するメチル基が余っているか足りないかを見ますが、この好塩基球数はメチレーションを見ると同時にヒスタミンの代謝も見ることができます。好塩基球数が多いということは、ヒスタミンが余っているということです。
上の検査結果の人は、白血球が4,800で好塩基球数が2.5%の人は4,800×2.5÷100なので120です。好塩基球が120は結構多く、アンダーメチレーションで、ヒスタミンが過剰です。ヒスタミンはヒスチジンから出来ますが、少なすぎても多すぎても良くありません。
5-4. ヒスタミン量はSAME、DAOで決まる
メチレーションによってNメチルヒスタミンに代謝されるか、もしくはDAO(ジアミンオキシダーゼ)によって代謝されます。メチレーションがダメでDAOがダメだったらヒスタミンが溜まっていくので、ヒスタミンの過剰が問題になるのは特に低メチレーションの人です。低メチレーションの人は、このDAOが不活性がうまくいっているかでヒスタミン過敏症かどうかが決まります。
もし熟成した魚を食べて、解離が出たりイライラする人はヒスタミン過敏です。そういう方にはメチレーションとSAMeを回してあげる、もしくはヒスタミンブロックという中身がDAOのサプリメントを摂るのがよいでしょう。
DAOをコードしている遺伝子というのは、AOC1という遺伝子です。上記は僕の23andMeという遺伝子検査の結果ですが、AOC1のところがC/Cとあるので遺伝子変異がなかったんですが、ここに遺伝子変異がある人はDAOの活性が悪いので、ヒスタミン過敏の症状が強ければ一度遺伝子検査をしてみるのも良いでしょう。
それぞれの問診と検査について評価して、どドーパミン、セロトニン、ヒスタミン、グルタミンの4つのどれかが過剰か欠乏になっていないかを見ることが、精神疾患の栄養療法に不可欠な要素だと思います。
6. 精神科統合医療の検査項目、免疫亢進のプロセス
6-1. 精神科総合医療の検査項目
我が国の栄養療法では血液検査を診て、その血液検査からいろんな状態を診るというのが普及していますけれども、他の国ではどうなのでしょうか?
ある精神科の統合医療の先生のいつも行っている検査項目は、下記項目でした。
- 副腎
- 甲状腺
- リンパ球サブセット
- 抗体検査
- 浸透圧 (2(NA+k)+BS/18+Bun/2.8)=290くらい
- 有機酸検査
副腎と甲状腺機能、そしてリンパ球のサブセットを測っていきます。リンパ系のサブセットというのは、リンパ球というのはCD4とCD8というT細胞の割合ですが、ヘルパーT細胞と細胞傷害性のT細胞の比率を測ります。その比率がおかしいと、免疫が不活されていることが分かります。免疫反応が動いてるということは、体のどこかに炎症や感染、毒素が入っているので、それが動いているのかどうかを診るために、リンパ球サブセットと抗体検査、IgGとIgAを診るそうです。
精神疾患の先生も、副腎、甲状腺と全身の免疫反応はやはり診ていますが、免疫や炎症が脳にいかに影響しているかということを表しています。他に頻繁に測るのは、浸透圧検査だそうです。浸透圧が上がっていたら、毒素が体に入っていることを意味するそうです。
浸透圧の日本での計り方は、血液検査でわかります。ナトリウムとカリウムを足して2倍にしたのと血糖値を18で割った値とBunの2.8で割った値を全部足すと浸透圧が出ます。290くらいが平均値で、浸透圧は基本的には不変です。普通の人の場合は、血糖値が高くなったり、Bunが高くなった場合、ナトリウムとカリウムが低くなって補正します。
バソプレシンという抗利尿ホルモンを測るともおっしゃっていました。慢性のマイコトキシンが脳に与える影響で、浸透圧じゃなくて利尿に影響します。夜間に利尿が多くなったら、それは脳が慢性炎症を起こしている印です。
6-2. 免疫亢進のプロセス
免疫亢進のプロセスは、下記の通りです。
ばい菌(抗原)が入ると、マクロファージがそれを食べて、その情報をヘルパーT細胞に伝え、ヘルパーT細胞がB細胞、抗体を作ります。 IgGやIgAなど、その抗体値が上がってくるというのが、体の免疫反応です。このヘルパーT細胞の数字の変化や抗体の数字の変化を見て、体の中で免疫反応が起きているかどうかを診ていると先生はおっしゃっていました。
この免疫反応は、自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎や掌蹠膿疱症の患者さんで診ています。そのような免疫が関係する病気だと、これらの数字の変化が顕著で分かりやすいからです。例えば掌蹠膿疱症の患者の場合、免疫グロブリン濃度、ヘルパーT細胞の割合が増加しています。
- 掌蹠膿疱症 50歳女性
- ビオチン療法2年間でだいぶ良い
- ロキソニン量も減った
- 現在も頸椎、鎖骨中心の痛み持続
- 歯アマルガムあり
- 抜髄歯あり
- 根尖病巣はなし
- 潰瘍性大腸炎既往あり
- アマルガム除去後発疹あり
- α2グロブリン、γグロブリン、CRP上昇
- IgG 2169 mg/dl ↑
- IgA 399 mg/dl↑
- IgM 111 mg/dl
- リンパ球サブセット
- B細胞 正常
- T細胞 81%↑
- そのうちヘルパーT 58%↑
当院でビオチン療法をしていた50歳の女性は、ガンマグロブリン、抗体、IgG、IgA、リンパ球のサブセットのうちのT細胞の割合の全てが上昇していました。炎症は脳に非常に影響するので、炎症を取らないと根本的に治らないということもあるため、精神疾患の患者さんでもここを診ることは大切になります。
6-3. ヘルパーT細胞がTh2優位
免疫が異常に亢進していたら何を使うかと言うと、大体多くの人はT細胞が分化して1型と2型になるうちの2型が優位になります。
何故2型が優位かというと、アラキドン酸、プロスタグランジンE2がTh2への分化を促進するためです。多くの人がアラキドン酸優位の食事をしているため、T細胞に抗体を作らせて、アレルギー症状を引き起こしているという人が多いです。バランスを整えるために乳酸菌を摂ったり、1と2のバランスを整えるTreg細胞を活性化させるために酪酸を摂ったり、これが免疫に対するアプローチだと思います。
乳酸菌や酪酸のサプリメントで免疫の調整をするのは良いのですが、大事なことは免疫反応が上昇している根本原因を探ることです。この先生は、免疫反応が亢進していたらその時点で免疫反応の原因を考えるそうですが、免疫反応が亢進している原因のひとつは、隠れた感染であるステルス感染とおっしゃっていました。
もう一つは環境毒素です。環境毒素とは、ホルモンやミトコンドリア、免疫にも影響するので、末端的にはホルモン、ミトコンドリア、隠れた感染、重金属やカビ毒を見つけ流必要があります。
僕の場合はだいたい血液検査と有機酸検査で当たりをつけますが、この先生の場合は免疫反応を一回診て、免疫反応が動いていたらそこでこれらの検査を追加するプロセスを踏んでいるそうです。
7. カビと酵母、多症候性患者にナイスタチン、カンジタ除去について
7-1. 真菌にはカビと酵母がある
カンジタは、腹部膨満、慢性疲労、全身症状を起こします。カビは、カビ毒によるアレルギーやミトコンドリア機能障害が問題になります。酵母は、カンジタやサッカロマイセス、カビはアスペルギルスが有名ですが、カビの除菌をしてもカビ毒だけ残るので、カビ毒検査は必要です。カビ毒は脂溶性なので、脳の中に入り込んで集中力、記憶力を低下させます。炎症反応があったらカビ毒を診ておくべきです。有機酸検査の一番最初のところは真菌チェックなので、カビ、酵母、カンジタであがる項目があります。
これはショー博士の論文ですが、自閉症の子どもに対して、ナイスタチンを10日間使ったら、アラビノースなどの有機酸検査関係の項目が20%〜60%下がったというスタディです。
7-2. 多症候性患者にナイスタチンが有効
下記は様々な症状(多症候性)を持っている人にナイスタチンを投与した結果、様々な症状が全て軽減したというショー博士の論文です。
Effectiveness of nystatin in polysymptomatic patients. A randomized, double-blind trial with nystatin versus placebo in general practice
H Santelmann et al. Fam Pract. 2001 Jun.
- 精神的、腹部および泌尿生殖器の訴えに顕著な効果
- 生殖器・・・膣の灼熱感、かゆみなど
- 腹部症状・・・膨満感、げっぷなど
- 精神症状・・・無気力、集中力低下、不安、アルコール酩酊(不適切な笑いなど)など
- 低血糖や疲労が強い場合も積極的治療の対象
特にカンジタは脳に影響するので、統合失調症にカンジタ除菌は必須だとおっしゃっていました。日本人も同じく糖質を摂る人にカンジタが増えているので、低血糖、カンジタ、水銀とセットで治療するのが重要です。
カンジタは治療しても免疫が落ちたり、水銀や毒素が溜まっていると再発しやすいです。僕の場合は、除菌した後にデトックスまですることをお勧めしています。
ナイスタチンというのは抗真菌薬で、それほど種類があるものではなく、人間の体でいうコレステロールの合成を阻害します。非吸収性でリーキーガットを治してから使うと効果が高く、副作用なく使えますが、そうでない場合副作用報告が多いです。
7-3. 蜂蜜はクオラムセンシングの減衰に効果的なポリフェノール
下記は、蜂蜜がカンジタのバイオフィルムの破壊に役立つという論文です。
Scaffold of Selenium Nanovectors and Honey Phytochemicals for Inhibition of Pseudomonas aeruginosaQuorum Sensing and Biofilm Formation
Prateeksha et al. Front Cell Infect Microbiol.2017.Free PMC article
バイオフィルムという消化酵素の中の微生物は、同調して同じリズムを保つクオラムセンシングをしています。
インドネシアの蛍10万匹が、お互いの信号を感知して一斉に光って一斉に消えることをクオラムセンシングといいます。そのクオラムセンシングの機能を阻害するのが蜂蜜で、この減衰に効果的です。低血糖の治療に蜂蜜を使っている人は、同時にバイオフィルムの破壊にも役立っているかもしれません。
免疫状態、環境毒素、自律神経、腸内環境、ゲノムの解析をするのが流れだとショー先生はおっしゃっていました。最初に4つの神経伝達物質を調べて、その流れに影響を与えるような要因を調べるというのが、現在の世界的な流れだと思います。
8. 症例解説
8-1. 症例
45歳の女性の問診と、血液検査以外の毛髪、便検査、有機酸検査の結果をみてみましょう。この方がどんな根本原因を持っていて、それに対してどのような対処が有効かを考えてみてください。
症例 45才女性
- 15歳の頃から疲れやすかった。
- 集中力がなく、考えることができない。
- 無理に考えようとするとイライラする。
- 突然泣きたくなることがある。
- 不安な気持ちが出始めると自分でコントロールが効かくなる。
- 慢性鼻炎がある眠りが浅い。朝が起きられない。
- 食事は、なるべく3食食べられるように頑張っている。
- グルテン、カゼインフリー食を行なっている。
- マルチビタミン、EPAを摂っていた。3年前にピロリ菌除菌終了。
15歳の頃から疲れやすかったということなので、子どもの頃からどれくらい症状があったかというのを確認するのも重要なポイントです。子どもの頃のトラウマや幼少期や中学生の頃の様子は、特に摂食障害などの典型的な精神疾患の場合は関係してきます。
この方の場合、精神疾患はありませんでしたが、生まれつきの副腎疲労なのか、成長期に伴って貧血が出てきたのかを確認します。女性の場合は特に、成長のスパートと生理が始まるのが同時期なので、貧血で症状が出る人も中にはいます。
集中力がなくてイライラするのは、ドーパミン、セロトニン、グルタミンが混ざっているような症状で特定できません。突然泣きたくなることがあるというのは、セロトニン症候群かもしれず、不安な気持ちが出始めるとコントロールが効かなくなるというのは、ドーパミン神経の過剰興奮なのかもしれないし、夕方に起きるのなら低血糖が助長されているのかもしれません。ただ確定的なことが言えないので、神経の状態を検査でも評価した方が良いでしょう。
慢性鼻炎があるので、その炎症が精神疾患に影響している可能性も否定できなくはないです。特に首から上の炎症というのは脳に近いため大きく関係します。慢性鼻炎がある人は上咽頭炎かもしれないし、上咽頭炎があれば不眠の原因になるかもしれなません。この人は眠りが浅くて朝起きられないので、いわゆる副腎疲労、低血糖のパターンを伴っているのかもしれません。甲状腺ホルモンや副腎ホルモンを測ることは重要です。
1日3食の食事、グルテン、カゼインフリー食を実践していますが、今のところ改善がないそうです。マルチビタミンとEPAは摂っていました。
この方は、資格の勉強しようと思ったけれど、全然頭に入ってこないことが一番辛かったそうです。脳機能をいかに改善するかという話になりますが、3年前にピロリ菌の除菌は終了しているので、やはり腸内環境が抗生剤を使って荒れてるんじゃないかなということも念頭において診ていきます。
最初にまず腸内環境を診ましょう。
腸内細菌バランスには良性、境界型、悪性とありますが、この方のイーストは0で、悪性菌も0ですが、境界型菌が結構います。バクテロイデスとビフィズス菌は3+で適量ありますが、ラクトバチルスが1+で、決定的に少ないです。乳酸菌は少ないと、境界型が増えていきます。
炎症や消化酵素を見ると、消化酵素は208でかなり少なくて消化不良だと思います。炎症マーカーを見るとラクトフェリンが3.2、カルプロテキシンが10で、炎症が少しありますがそれほど大きくはないと思います。ライソザイムは少し多いです。全部正常値をざっくりいうと、ラクトフェリンから順番に1、10、100くらいです。炎症は軽度ですが、免疫がすごく下がっているように思います。
分泌型のIgAは悪性菌が腸内フローラに寄り付かないように守っていますが、IgAが60しかないため悪性菌と良性菌がうまく区別できなくて、ディスバイオシスを起こす原因になるかもしれません。
短鎖脂肪酸は一応正常範囲ですが、メチル酸もトータルの短鎖脂肪酸も6.7なのでやや低めです。短鎖脂肪酸というのは、基本的には良性菌によって食物繊維が発酵してできるものですから、良性菌の乳酸菌が少なければ生成される短鎖脂肪酸も少ないです。
8-2. 腸内環境悪化のレベル
- レベル1 良性細菌の減少、短鎖脂肪酸の減少
- レベル2 消化酵素の低下、炎症、粘膜免疫の低下
- レベル3 悪性細菌の増殖
カリシュ先生によると、腸内環境の悪化のレベルはレベル1〜3まであります。レベル1に当てはまると、良性細菌が減ってその結果腸内発酵がうまく働かないため、短鎖脂肪酸も減ってしまいます。
レベル2はどうかというと、消化酵素が低下して炎症があって、粘膜免疫が低下している、彼女はこれも当てはまるので、レベル2まで進んでいると考えられます。
レベル3になると悪性細菌が増殖してきます。CSAは培養検査なので、菌の培養が不確定ですが、これで見る限りはレベル1とレベル2に当てはまっています。有機酸検査ではカンジタが出てるから本当は悪性菌が出ていますが、ここまでではレベル2の腸内環境悪化だと分かります。
宮澤医院で行っている腸内環境検査を50例くらい見て、炎症が起きている人は前提として短鎖脂肪酸が減っていたり、良性菌が減っていたりするのか相関係数を取ってみましたが全く一致しませんでした。培養は大変参考にはなりますが正確ではないので、なかなか教科書通りにはいかないですが、これに当てはめてみると腸内環境の悪化はレベル2までいっていため、それぞれに対してアプローチが必要だということがわかります。やるべきことがはっきりするという意味ではこの検査は良い検査だと思います。良性菌、ミアリ酸、消化酵素、グルタミンとビタミンAを足してみました。
ストレスがある人、腸の炎症がある人、それと低血糖がある人には、是非グルタミンを摂ってもらってください。グルタミンは筋肉の崩壊にとても重要です。低血糖を起こしている人がほとんど筋肉が崩壊しています。低たんぱくだからといってプロテインを飲んでもっと失敗している人が多いです。低血糖に伴う低タンパクには低血糖の治療をしましょう。
8-3. 有機酸検査
次に有機酸検査を見てみましょう。
有機酸検査では1ページ目の1から18番までのところが腸内環境ですが、上がっているのが、アラビノース、4ヒドロキシ安息香酸でした。
アラビノースはカンジタのマーカーで、4ヒドロキシ安息香酸はバクテリアのマーカーで、3つくらい上がってます。クロストリジウムはあまり上がっていませんが、一般的な悪性細菌は少し多めかもしれません。カンジタも少し多いです。よく聞いたら腹部膨満の症状もあったので、あとからSIBOの検査も追加で行いました。
クロストリジウムが邪魔するというドーパミン代謝はどうかと言うと、クロストリジウムはあまり出ていなくて、ドーパミンとノルエピネフリンの差はそれほどでもなかったので、様々な症状が出ていたけれど、ドーパミン代謝は悪くないのかもしれません。
では、セロトニン代謝はどうかというと、セロトニンはとても低く、キノリン酸は少し上がっているので、少し炎症があるかもしれません。グルタミン酸代謝、低血糖とグルタミン酸代謝にもしかしたら症状の原因があるのかもしれないと推測できます。
グルタミン酸受容体にキノリン酸がくっつくので、グルタミン酸代謝ではキノリン酸も考えなければいけません。炎症を起こして今後キノリン酸がものすごくはねていたら、そのキノリン酸によってグルタミン酸神経が過剰興奮している可能性もありますが、このデータから見る限りそれもないようです。
その他、カンジタで上がってくる一つはシュウ酸です。この方はカンジダ感染があるので、シュウ酸が若干上がっています。カンジタがあるとシュウ酸結石があり、他に影響しやすいものはコハク酸です。
ミトコンドリアマーカーは24から29番までですが、26番のリンゴ酸が少し上がっていて、それ以外は下がっています。有機酸検査では色々な基質が他の基質に転換される時に、邪魔されていたら邪魔される手前が上がって、邪魔された後が下がるっていう、その高低差を見ています。このリンゴ酸を除いたら、全ての基質が足りないので酵素不足ではなくて基質不足、つまり三大栄養素が足りないということです。
エネルギー不足の原因には多くの場合、低血糖が絡んでいます。低血糖の人のパターンは、ミトコンドリアのマーカーが左にはり付いていることが多いです。タンパク不足、糖質不足、エネルギー不足です。それによってミトコンドリアが動いていないことがわかります。
ドーパミンは見て、メチレーションやケトン体は大丈夫です。アジピン酸、スベリン酸もそれほど上がってないから大丈夫です。栄養素メーカーはB5が上がっていますけど、これはサプリメントを摂っていらっしゃるからで、その他大きな問題はなかったです。
グルタチオンなどの毒性マーカーもそんなに多くはないです。
毒が溜まっているとグルタチオンが不足していて出せないのかもしれませんが、今のところ大きく上がっていません。アミノ酸代謝も大丈夫でしょう。
8-4. SIBOの検査
次に見たいのは、このSIBOの検査です。
SIBOの検査は、小腸で発生している水素とメタンガスの量を見ます。呼気を180分に渡って全部調べますが、左端から120分までは小腸のガスを、そして120分以降は大腸のガスを反映しています。大腸には乳酸菌がいるので、大腸のところでガスが出るのは正常です。大腸に行く前の小腸のところでいっぱいガスが発生していたら異常で、ガスの種類にはメタンと水素があります。
この緑の線がメタン、青い線が水素です。この方の場合は、メタンが引っかかっていますが、そんなに大きく跳ねていません。主に跳ねているのは大腸なので、bacterial overgrowth is not suspected(SIBOではありませんでした)という結果になっています。
SIBOの治療は大変ですが、この方はカンジダの除去をしたら膨満感がなくなりました。SIBOにもメタン型と水素型があり、普通SIBOは抗生剤を使って治療しますが、メタン型のSIBOの場合、低FODMAP食を長めに続けてもらう必要があると思います。