• Skip to primary navigation
  • Skip to main content

臨床分子栄養医学研究会

あなたのサプリが効かない理由教えます

  • コース一覧
  • もう一本読む?
    • 分子栄養学基礎マスターコース 食事とサプリメント編
    • 分子栄養学の基礎 検査と根本原因
    • 分子栄養学アドバンス・コース
    • まごめじゅんの栄養講座
  • サクセスパス
    • 治療方針を決める
    • 必要な治療と順番を決める
    • 検査を行って確認する
    • 治療の実際
  • ごあいさつ
  • 受講者の声
    • 医療関係者
    • 一般の方
  • クリニック紹介
    • 分子栄養学の検査・治療を受けられるクリニック
    • 指導認定医・認定医一覧
    • 認定指導カウンセラー
    • 認定カウンセラー
    • PNTトレーナー
  • 会員サイト
    • 総合案内
    • 研究会会員サイト
    • 第26期会員サイト
  • Show Search
Hide Search
現在の場所:ホーム / アーカイブ宮澤賢史

宮澤賢史

糖質制限してよい人いけない人

宮澤賢史 · 2021年8月28日 ·

15年前に低血糖症と診断した患者さんに糖質制限を指導して、症状が悪化してしまった時の事を今でも昨日のように覚えています。糖質制限は自律神経を整え、ケトン体生成を可能にしてくれる素晴らしい治療ですが、適応になる人とならない人が存在します。糖質制限今日は分子栄養学とは何なのか、また分子栄養学実践講座はどのような内容なのかを、糖質制限の観点からご説明します。まずは一番良く聞かれるご質問「普通の栄養学」と「分子栄養学」は何が違うのかから説明していきましょう。

1.普通の栄養学と「分子栄養学」は何が違うのか

分子栄養学という言葉をご存知ない方はいらっしゃらないと思いますが、分子栄養学とは何かと改めて聞かれるとなかなか説明しづらいですよね。

僕もいつもどのように説明しようか考えていますが、分子生物学を知らないと説明が難しいと思います。分子生物学と分子栄養学は一体どのような違いがあるのでしょうか。

1-1.親子の見た目が似ている理由

  • 黄色と緑のエンドウマメをかけ合わせると全て緑のエンドウマメになる
  • 黄色のエンドウマメ同士をかけ合わせると75%が黄色、25%が緑のエンドウマメになる

これをメンデルの法則と言います。このように、実際の現象から何らかの法則を発見して、そこから法則性を探っていくのが従来の生物学です。

この生物学の考え方を根底から覆したのがジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックです。1953年、彼らはDNAの二重らせん構造を発見しました。人間は細胞からできていて、細胞の中には核があり、核の中にはDNAがあり、DNAはタンパク質の設計図になっています。そしてDNAは両親から片方ずつ受け継いでいきます。DNAを受け継いで、そのDNAからタンパク質ができていて、そのタンパク質から人間ができているから親子は似ているのです。

生物学
子は親に似る(経験から法則性を探っていく)
⇒ DNAの二重らせん構造の発見 ⇒
分子生物学
遺伝子が受け継がれるため、そこから作られるたんぱく質の立体構造が似る
(法則を分子レベルで科学的に説明できる)

1-2. 壊血病と脚気は経験則から治療が発見された

航海中の船は食物の供給がままならないため、栄養不足になりやすい場所です。

1600年代の大航海時代には、長期間航海を行う船員の半分の人が壊血病で亡くなりました。ジェームス・リンド医師が船にビタミンCを含むライムを積んだことでこの問題は解消しました。

1920年ごろの日本の海軍は脚気に悩まされていました。発症率は20%以上、5人に1人がかかっていました。当時は原因がはっきり分からず、軍医の高木先生が食事に問題があると言って、欧米にならい麦飯と肉などタンパク質を導入したら、2年で発症率が23%から1%以下に激減しました。当時ははっきり原因は分かりませんでしたが、経験的に良いだろうと積み重ねたのが従来の生物学です。それからビタミンB1が発見されて、ミトコンドリアの機能が生科学的に説明できるようになりました。

経験から法則を探るのが従来の栄養学、生化学的な理論で突き詰めるのが分子栄養学です。これで説明になっているでしょうか?

栄養学
大日本帝国海軍で軍医の高木兼寛が麦飯を導入したところ、脚気の発症率が2年で23.1%から 1%未満に激減した(経験則による)
分子栄養学
脚気はビタミンB1を補酵素とするPDHの機能低下による
ミトコンドリア病(疾患を分子レベルで科学的に説明できる)

1-3. 脚気の生化学的原因

脚気とは、ビタミンB1を補酵素とするピルビン酸デヒドロゲナーゼの機能低下だと説明することができます。このように、分子栄養学は分子レベルの科学的な説明ができることが大きな違いです。

根本原因が分かるので疾患の原因をピンポイントで特定できます。つまり、細胞やミトコンドリア、分子などに着目すると、目に見えない病気の原因を突き止めることができるようになります。

これはジェノバダイアグノスティックス社の検査です。

炭水化物、脂肪、タンパク質などそれぞれの栄養素がTCA回路というエネルギー回路のミトコンドリアの中に入って燃えていく図を表しています。

炭水化物が分解されてブドウ糖から出来るのがピルビン酸です。ピルビン酸はアセチルCoAになってミトコンドリアの中に入っていきます。もし検査データで、ピルビン酸や乳酸が多くてクエン酸が少なく出れば、ピルビン酸をアセチルCoAやクエン酸に変換する経路が働いていないということが分かります。重要な段階である律速段階でピルビン酸デヒドロゲナーゼが働くためにビタミンB1が重要なので、これが不足しているということがピンポイントで推測できます。

分子栄養学的に見れば、脚気とはミトコンドリア機能障害です。ミトコンドリアが障害されるので、ミトコンドリアをたくさん含む心臓の働きが低下して心不全を起こしたりします。脚気を症状から診断するのは難しいですが、生体内物質の量や、変換に必要な酵素の活性を測定できれば、原因の特定は難しくありません。

1-4. 必要な栄養は人によって異なる

クエン酸回路の図は、首都高の渋滞マップのようです。新宿からディズニーランドに行く時に箱崎を通って行くこともできるし、箱崎が渋滞していたらレインボーブリッジを渡って行くこともできます。レインボーブリッジが封鎖されていたら箱崎は少し混んでいたとしてもそこを通らざるを得ません。中にはどちらも渋滞している人もいます。このように、体内の代謝状態は人によって大きく異なり、これを個体差と呼んでいます。

言い換えれば、個体差とは体内における酵素と基質の反応力です。これは鍵と鍵穴の関係に例えられます。鍵穴の形をした酵素の設計図はDNAです。DNAは一人一人違うために鍵穴の形も人によって異なります。鍵穴の形が変形してる人は、潤滑油の補酵素を使わないと鍵がスムーズに入りません。

このように人によって必要な栄養素が異なることを知り、実際の個人データを測り、分子栄養学をベースにした個別化栄養療法の勉強会を行っているのが分子栄養学実践講座です。

2. 糖質制限を考慮してもよい人

今日はこの見解をベースに、糖質制限について考えてみたいと思います。「先生は糖質制限推進派ですか?そうではない派ですか?」とよく聞かれますが、そのどちらでもなく、「人によって変える派」です。

一般的に糖質制限を考慮しても良い人とは、食事療法の選択肢として考える糖尿病の患者です。アメリカの糖尿病学会は、2013年に糖質制限を食事療法の選択肢の一つとして認めるとアナウンスをしました。もっとも100%糖質制限だけが良いというわけではなく、カロリー制限も地中海食も選択肢として良いのですが、人によっては糖質制限も合うだろうというコメントをしています。

特に糖質制限に適しているのは、インスリンが効きにくい人です。インスリンが効きにくいためにインスリンが沢山出て、脂肪細胞がどんどん大きくなってしまうことを「インスリン抵抗性がある」といいます。糖質制限はインスリン抵抗性を下げるのに有効だという報告も多々あり、特に減量時に有効です。

薬がなかなか効かない難治性のてんかんの選択肢として、ケトン体が出る糖質制限も良いでしょう。

また、がんは種類によってエネルギーが糖質依存になります。そのためがんの成長期に糖質制限をするのは人によったら良いかもしれません。

糖質制限して良い人
・糖尿病の食事指導の選択肢の一つ
・インスリン抵抗性の患者が減量する場合
・難治性てんかん
・がん患者

2-1. ケトン食療法の適応となるてんかん

  • 2剤以上の抗てんかん薬を十分な量、十分な期間使用しても効果が不十分な難治性てんかん患者
  • ただし、West症候群などのてんかん性脳症などでは早めに検討して良い
  • てんかん外科の適応のある患者さんでは外科手術が優先される

2剤以上の抗てんかん薬を入れても効果がない人は、てんかん食を試したら良いでしょう。日本ではまだ完全に認知されてませんが、アメリカや韓国では標準の治療の中に組み込まれています。

ケトン体は脂肪酸と比べて分子量が小さいため、脳血液関門(B.B.B)を通過して脳のエネルギー源となり得ます。また、ケトン体には抗酸化作用もあります。

2-2. 糖尿病の食事療法についての議論

・2008年 DIRECT 研究(2+4年)
低脂肪食に比較して地中海食と低炭水化物食では減量効果が優っており、
両群では血中脂質やインスリン抵抗性が改善。
・2013年 米国糖尿病学会のstatement
肥満者の減量を図るためには、低炭水化物食、低脂肪食あるいは地中海食は、短期間(2年間まで)では有効であるかもしれない(ガイドラインの変更)
・日本糖尿病学会の提言 2013年
「総エネルギー摂取量は過剰でも、炭水化物さえ制限すれば減量効果がある」という解釈は短絡的。炭水化物を制限することによって起きる、たんぱく質あるいは脂質摂取増加の影響が調整されていない。

糖質制限が糖尿病の治療として認められるようになったのは、2008年のDIRECT研究がきっかけです。それまでも糖質制限が良いとは言われていましたが、第一級のエビデンスレベルのある論文がありませんでした。医学の世界では、このように論文が出ると急に見方が変わることがよくあります。低炭水化物食と地中海食では減量効果が勝っており、脂質やインスリン抵抗性が改善したので、選択肢の一つになりました。ただこれには個体差があります。

2-3. 脳腫瘍に対する糖質制限

癌に関しては、多くの悪性細胞はミトコンドリア機能が障害されてしまうため、糖質を代謝するようになります。ブドウ糖はインスリンレベルを高くしますが、このインスリン様成長因子も高くします。インスリンには細胞増殖作用があるため、ガンが進行するという理屈です。癌患者はみんな糖質制限した方が良いだろうと思いきや、効かない人もいます。

神経膠芽腫に対するケトジェニックダイエットを用いた治験
Pilot Feasibility Stud. 2017 Nov 28;3:67.
Ketogenic diets as an adjuvant therapy in glioblastoma (the KEATING trial): study protocol for a randomised pilot study.

神経膠腫にケトジェニックダイエットが有効
Cancer Metab. 2015; 3: 3.
Published online 2015 Mar 25. doi:  10.1186/s40170-015-0129-1

神経膠芽腫は脳の悪性腫瘍の中で一番悪性で、平均寿命が1年ぐらいです。放射線治療にも手術にもなかなか反応しないので難渋しますが、この神経膠芽腫には特別に糖質制限が効くという報告が出始めていて、二重盲検試験のトライアルがされている最中です。こういう極端な場合は糖質制限していいかどうかわかりやすいのですが、神経膠芽腫じゃない場合、髄膜腫の場合、膵臓癌、白血病の場合は糖質制限が良いのか悪いのかは分かりません。実際に糖質制限をしてみても良いですが、がん幹細胞検査がお勧めです。

2-4. がん幹細胞検査

インスリン様成長因子受容体

加齢、腫瘍成長に関わる この数値が高ければ、
*放射線治療と化学療法への抵抗性
*強い炎症ががんのベースにある
*成長にエネルギーが必要、特に砂糖で成長

がん幹細胞検査とは、採血するだけでがんの性質が分かる検査です。がんは直径2mmになると血中に一部分出ているため、その一部分を採血で末梢から取ることによって、そのがんを様々な物質にさらして感受性を見たり、遺伝子レベルを検索したりして見ます。この検査をして、インスリン様成長因子の受容体であるIGFR1の数字が30%あると陽性です。この数値が陽性の人は放射線や化学療法が効きにくいので、この数値が上がっていたらがんのベースにある炎症を抑えるような治療した方が良いでしょう。

そして、成長にエネルギーを使う、特に砂糖で成長するという特徴があるので、僕ならがんになったらこれを調べて、この数字が高ければ糖質制限をします。個体差があるので、抗がん作用があると言われているビタミンCの点滴が効くかどうかもこの検査でわかります。

3. 糖質制限をしてはダメな人

糖質制限の最初の提唱者である江部先生によると、糖質制限をしてはいけない人とは、腎不全、膵炎、肝硬変、長鎖脂肪酸の代謝異常がある人です。この人たちは、糖質以外の栄養の摂取、吸収、代謝に問題があります。糖質制限では、主に脂質をエネルギーとして使わなければいけないため、その経路に問題があったらできません。

このリスト以外にも糖質制限をしてはいけない代表的な疾患があります。それは副腎疲労です。副腎疲労も立派な糖代謝異常です。僕が糖質制限を勧めて悪化した患者さんは、ステージ3の副腎疲労だったのです。

糖質制限してはダメな人
・腎不全
・活動性膵炎
・非代償期の肝硬変
・長鎖脂肪酸代謝異常
・副腎疲労

3-1. 35歳男性 副腎疲労

  • うつ病にて投薬治療中。再発を何度も繰り返す。
  • 倦怠感、疲れやすい、頭重感、夜中に数回目が覚める、不安感。
  • 低血糖症という言葉を知り、糖質制限を始めました。
  • 起床時に憂うつ、不安、恐怖感があり、なかなか起きられない。睡眠が浅い、頭がぼーっとして、頭と体が重たい、疲労感、イライラ

上記は35歳の男性の問診ですが、夜中に数回目が覚めているという症状から、低血糖を起こしていることが分かります。血糖値を保てなくなり、自律神経が緊張しています。糖質制限を始めたところ、症状は悪化したそうです。

副腎疲労の原因は、長年のストレスです。長年のストレスが脳に効き、脳から出る副腎刺激ホルモンが出て抗ストレスホルモンが出ていますが、副腎が疲れてくると、この抗ストレスホルモンであるコルチゾールが5年、10年単位で出なくなってきます。

3-1. 人は糖新生で血糖値を保っている

人は糖新生で血糖値を保っているため、食事をしたら血糖値は上がりますが、せいぜい保つのは2時間です。残りは貯蔵型の糖であるグリコーゲンで、血糖値を保っています。肝臓に12時間ぐらい蓄えていますが、そもそも糖質を食べなければグリコーゲンの蓄積がありません。ではどのように糖質を保つかというと、糖新生です。

肝硬変は、肝臓の機能が落ちているため、糖新生の力が弱いということで問題があります。肝硬変になったらもちろんグリコーゲン貯蔵量も減ります。肝臓の機能が働いていない人に糖質制限は合いません。糖新生を促すためのコルチゾールが出ない疾患である副腎疲労の人にも糖質制限は、難しいです。

食事中のブドウ糖 2時間
グリコーゲン  12時間
両者を使い果たしたら、糖新生(体のアミノ酸を分解してブドウ糖を作る)
①肝硬変  ②副腎疲労

糖新生というのは身体のアミノ酸を分解してブドウ糖を作ることです。この糖新生ができない人は糖質制限NGとなります。

副腎疲労は肝臓に働いて糖新生をうながす

3-3. アラニン回路が働かない人は糖質制限をしてはいけない

これはリブレという簡易血糖測定器です。いつでも血糖値を測れて便利なので、副腎疲労の患者さんにトライアルをしています。

今の僕の血糖値は112ですが、食事をすると上がったり下がったり、リアルタイムで見れるので便利です。正確には血糖値とは違いますが、血糖値のトレンドを追うのにはとても適してます。

これは僕の2月3日の土曜日の0時から24時までの血糖値です。

金曜日に多少お酒をたしなむ機会があり、あまり食事をしませんでした。食事をしないとグリコーゲンの蓄積がないため、低血糖になりやすくなります。しかも、お酒が入ると糖新生の仕組みがうまく働かないため、夜中に低血糖を起こします。糖尿病患者にもよくあることですが、副腎疲労の人はお酒を飲むのはよくないということわかります。

副腎疲労は、唾液中のコルチゾールで測れます。

朝、昼、夕方、夜に唾液中のコルチゾールを測りますが、この方の場合は完全にコルチゾール分泌が枯渇していました。夜中も血糖値がなかなか保ちにくい状態です。

血液検査を見ると、好中球が63.5%で自律神経の過緊張をあらわしています。夜中に低血糖を起こし、副腎がアドレナリンを分泌して血糖を保つので、副腎がアドレナリンを常に分泌させらて、副腎に24時間負担がかかります。

筋肉にはアラニンというアミノ酸があり、アラニン経路でグルコースを作ってくれる経路があるため、筋肉が沢山あれば肝臓のカバーはしてくれます。

この経路はとても重要な経路ですが、アラニンとピルビン酸の切り替えがうまくいかないときちんと働きません。アラニンとピルビン酸の切り替えをうまくしている酵素とは、みなさんご存知のALTという酵素です。

ピルビン酸がアラニンになる時に、このアミノ基が転移します。

グルタミン酸のアミノ基が転移するため、アミノ基転移酵素といいます。このアミノ基転移酵素の補酵素はビタミンB6です。ビタミンB6が不足していると、GOTとGPTの差が激しくなりますが、そういった人は糖質制限をしてもうまくいかないでしょう。

3-4. 長鎖脂肪酸代謝異常症

「このカルニチンサプリを摂ってから身体が軽くなった気がする」「そうなの、じゃあ私もやってみようかな。」これが従来の経験に基づく栄養学です。

それに比べて「このカルニチン摂ってから身体が軽くなったような気がする。有機酸検査でアジピン酸とスベリン酸が低下したし基礎代謝も5%上がったし。」

「え、そうなの?じゃあ私も有機酸検査と基礎代謝測って脂肪酸代謝経路に異常がないか見てみようかな。」これが分子栄養学です。

長鎖脂肪酸代謝異常症は、平成22年度に厚労省の指定難治性疾患に指定されています。

一般検査の異常所見
1)代謝性アシドーシス、2)高アンモニア血症、3)CPK、AST、ALTの高値

日本において毎年10人〜50人の新患が発生と言われていますが、脂肪酸代謝異常の人を何人も見ているのでそんなに少ないわけはないと思います。

この長鎖脂肪酸代謝異常症の人は、本当に極端な異常症です。脂肪をエネルギーに変えることができないので最終的にアシドーシスを起こしたり、横紋筋融解症を起こしますが、こう言った人はごく少数です。ただし長鎖脂肪酸の代謝が止まっている人は多数います。脂肪酸は、ミトコンドリアの中に入るときにカルニチンが必要なため、リジンやメチオニンなどの栄養素が一つでも欠けているとカルニチンがうまく作られません。

カルニチンは75%食事から摂りますが、25%は身体の中で作られています。低カルニチン食の人で栄養欠損があると、長鎖脂肪酸の代謝不全があるかもしれません。

これに関しては、有機酸検査で分かります。アジピン酸、スベリン酸、エチルマオンが上がっている人は脂肪酸の代謝が障害されています。そういう人は、糖質制限をしてはいけません。

もう一つ考えなければいけないことは、糖質制限をしたら脂質とタンパク質でエネルギーをまかなうために何を食べるのかということです。

タイム誌の1984年と2010年の表紙を比べてみると、30年前はコレステロールを悪者にしていますが、最近では考え方が全く変わって”Eat butter”とあります。脂質を制限するのが問題だと言っていますが、何を食べるかも重要です。

厚労省は2015年に高コレステロール血症の上限を撤廃しました。コレステロールが高いのは良いことですが、どういう脂肪を摂るかを細胞に立ち返って考えてみてください。食べる前に細胞の細胞膜のリン脂質の組成はどのくらいかなと考えてください。肉の油を沢山食べて飽和脂肪酸が増えてくると、細胞膜が硬くなって、細胞膜の経路が低下してくるかもしれません。神経の伝達に支障をきたすかもしれないし、オートファゴーゾーム(細胞内で二重膜に囲まれた球状の構造)が正常に働かなくなるかもしれません。

細胞膜のリン脂質組成を測ることもできます。タンパク質を多く摂ろうとすることの問題は、消化吸収の手間です。タンパク質は三大栄養素の中で一番消化と吸収に手間がかかります。

日本人はもともと胃酸が少なく、消化酵素が少なく腸が長いため、ペプシノゲンが70以上ある人はあまりいません。大量のタンパクの消化には向いてない人が多いです。

3-5. 45歳女性コレステロール高値

  • 半年前、食事方法をマクロビから糖質制限に変更
  • 3ヶ月前の血液検査ではいきなりコレステロールが200から350へ上昇
  • 理由がわからないために来院

この方は45歳の女性ですが、コレステロールが異常に高くなったということでご相談にみえました。半年前に食事方法をマクロビオティックスから糖質制限に変更したそうです。それ以来、とても調子良くなりましたが、3ヶ月前の血液検査で1年前200だったコレステロール値が350まで急に上がてしまいました。何か体に異変が起きているのではないかといらっしゃいました。

3-6. 急激な糖質制限は甲状腺トラブルとホルモンバランスの乱れを招く

この理由は代謝の低下で、 LOWT3症候群といいます。人間は飢餓状態になると自らの代謝を落とすように働きます。身体の代謝をコントロールするものはいくつかありますが、そのうちの一つが甲状腺ホルモンです。甲状腺ホルモンというのは、ヨードが4つついているT4と、3つついているT3があります。そのT4がT3に変わる時に、不活性型のreverseT3に変わってしまうのがLOWT3症候群です。

実際の血液検査ではこのreverseT3もT3として勘定されるので、はっきりと甲状腺機能低下と出ません。普通コレステロールが高ければコレステロールが高く上がり、CPKが高く上がれば誰でも甲状腺機能低下症と考えると思いますが、血液検査を見ると甲状腺ホルモンが正常範囲内にあるので、問題ないですと言われる人も結構多いです。最近になってこのreverseT3も測れるようになりました。

このように現在では、疾患の原因が明確に分かるようになってきています。潜在性の甲状腺機能低下症になると、このreverseT3を測らなくてもこれらの甲状腺を刺激する甲状腺刺激ホルモンのTSHという数字が上がってくる人は多くいます。通常の血液検査からも、潜在性の機能低下症を検出することができますが、甲状腺の問題は大変奥が深いです。

このような飢餓状態になってる人は糖質制限はしてはいけません。タンパク質や脂肪も摂って、エネルギーをきちんと摂ってるのに糖質制限したらどうして飢餓状態になるのか。脂肪からのエネルギーはパイプが細いですが、炭水化物は非常に効率の良いエネルギー源になっていてパイプが太いから、糖はいくらでもエネルギー化できます。普通の人の安静時だと脂肪と糖のエネルギーの比率は大体2:1です。安静にしているときは脂肪のエネルギーを主に使っていますが、運動負荷がかかってくると、糖質の比率が高くなってきて逆転します。

糖質はグリコーゲンなので、肝臓で500、筋肉で1,500、あわせて2,000~2,500キロカロリーしか貯められませんが、エネルギーの蓄積量として大体10万キロカロリーぐらいは体の中の脂肪にあります。備蓄はあっても供給のパイプは細く、脂肪をエネルギーに使うためにはまず脂肪細胞から取ってきます。脂肪は水に溶けないため、アルブミンに乗せて血液中を運搬しなくてはいけません。ミトコンドリアの中に入る前にカルニチンが必要で、何段階もあって使いにくい供給源です。だから特別にそこの供給源が細い人は、糖質制限してはいけません。

4. まとめ

糖尿病の食事の選択肢としては、HOMA-Rを測ると良いでしょう。インスリン抵抗性が大きい人は5時間糖負荷試験をしてみて、インスリンが出すぎてる人は糖質制限が有効でしょう。逆にインスリンがあまり出ない無反応型の低血糖症の人は、糖質制限はしない方がいいです。

癌の人は幹細胞検査をしてみてください。

糖質制限をしてはいけない人で腎不全、肝不全というのは、血液、肝機能、膵機能を見れば大体分かりますし、アミノ基転移反応を見るのはGOTとGPTです。その他に、長鎖脂肪酸代謝異常というのはカルニチンの代謝検査、有機酸検査をすれば良いです。タンパク質の消化悪い人は、便検査をして消化酵素の量とか食物残渣による悪性菌の増加などもチェックした方がいいかもしれません。

5. 勘に頼るサプリ処方からデータに基づく栄養療法へ

便検査、有機酸検査、毛髪検査、血液検査など実践講座で推奨されている検査を一通りやるとこれらのことが全て分かるようになっています。これらは、個体差を見るための検査です。勉強していくと糖質制限して良いのか悪いのかということが、一目で分かるようになると思います。

栄養療法はただの大量のサプリメントを処方するものだけでは決してありません。体内の代謝を司ってるのは栄養ですが、全ての疾患がサプリメントの投与で治るほど甘くありません。慢性疾患を持つ人はどこかで代謝が止まっています。その場所を様々な問診と検査で突き止め、適切な対処をすることで初めて身体が栄養をうまく使えるようになってくるのです。

アルツハイマーの原因と治療法

宮澤賢史 · 2021年8月10日 ·

アルツハイマー病の本当の原因をご存知ですか?身近な病気である一方、未だ完璧な治療法が見つからないため、得体の知れない不安感をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも最も多く、脳の一部が萎縮していく過程で起こります。アミロイドβの蓄積が原因とされてきましたが、それはあくまでも結果であり、真の原因は、「炎症」「栄養の欠乏」「毒物」これら3つにあることがわかってきました。

1. アルツハイマー病の本当の原因

1-1. アルツハイマー型認知症とは?

アルツハイマー型認知症(以下、アルツハイマー)は、認知機能の低下と人格の変化を症状とする認知症の一種であり、脳の萎縮を伴います。認知症の中でも最も多く、今後もますます増えると予測されています。

脳血管認知症は、脳梗塞などに伴って起こる認知症で、脳の血管が詰まるとその部分が壊死するので一気に発症します。一方、アルツハイマーは脳の変性が徐々に進行するため、症状も徐々に進行するというのが特徴です。アルツハイマーで問題なのは、最終的には寝たきりになって、死に至るということです。症状経過の途中で、被害妄想や幻覚、暴力、徘徊などを伴うケースが多く、患者本人だけではなく、周囲の人のメンタルにも大きな影響を及ぼすことも問題になっています。

1-2. アルツハイマー治療の問題点

認知症そのものを抑える薬はなく、今のところは周辺症状を止める治療薬に主眼が置かれているような状況です。つまり、問題は進行を止めたり回復する治療法が存在していないということです。大部分は65歳以上で発病しますが、5%は若年性アルツハイマーとしてそれ以前に発病することがあります。早期認知症の検査は、ネットでもダウンロードが可能です。

そんなアルツハイマーですが、2050年までに1億6千万人が発症すると予測されています。それにもかかわらず、薬物治療がことごとく失敗しています。アリセプトやエミニール、メモリー、リバスタッチなど、アルツハイマー型認知症薬として現在5種類の治療薬が日本で認可されていますが、いずれも治すための薬ではなく、症状を遅らせるための薬です。米国アルツハイマー協会も、アルツハイマーを治す薬はないと発表してます。フランスでは効果が認められないということで、全ての治療薬が保険適用外になりました。

フランスの保健省は2018年6月1日、アルツハイマー型認知症治療薬の保険償還を8月1日から停止すると発表した。同国高等保健機構(HAS)が公表した「勧告」を受け、アルツハイマー型認知症治療薬4剤について「公的医療保険の適用を正当化するための医療上の利益が不十分」だと結論づけた。

アリセプトはアセチルコリンを増やす薬です。アルツハイマー患者には、脳内のアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質が減少していることがわかっています。また、メマリーという治療薬はNMDA受容体拮抗薬です。アルツハイマー患者はNMDA受容体(グルタミン酸受容体の一種)が亢進するという特徴があり、そこを抑えることで興奮が抑えられます。しかし、アリセプトもメマリーも、根本治療とは程遠いものです。

1-3. アミロイドベータは原因ではなく結果だった

アルツハイマー病患者の脳には、アミロイドβという老人斑が見られます。このアミロイドβの蓄積がアルツハイマーの原因とされ、これを除去する薬の開発競争がずっと続いてきました。しかし、アミロイドβを除去してもアルツハイマーが治らず、治験はことごとく失敗に終わっています。実は、アミロイドβが本当の原因ではなく、様々な病因による結果として出てくるものだということが最近明らかになってきました。

アミロイドβの塊

その病因が、「炎症」と「栄養・ホルモン不足」と「毒物」です。脳がこれらの脅威に晒されると、そこから身を守るためにアミロイドβを増やすのです。確かにアミロイドβは神経ネットワークを破壊するのですが、見方を変えれば、重要な脳の神経の部分を守るためのダウンサイジングとも捉えることができます。様々な病因の影響で、脳機能を維持できないと脳自身が判断すると、優先順位の低い脳細胞をリストラして、必要最低限のところまでサイズを小さくするのです。アルツハイマー患者の脳が萎縮するのは、こうした理由からです。

アルツハイマーは、炎症、栄養・ホルモン不足、毒物に対する防御反応である。

リストラには「最後に雇われたものが最初に解雇される法則」というのがありますが、脳も同じで、新しく覚えたことは生命維持に重要ではないので、新しい記憶からなくなっていきます。昔のことはよく覚えているのに最近のことは思い出せない、という症状は、脳のリストラが行われている結果なのです。

1-4. アルツハイマーを改善するリコード法

「アルツハイマー病の真実と終焉」(デール・プレデセン著)には、アルツハイマー病患者100人の改善報告がまとめられています。プレデセン博士は、アミロイドβが増える理由を様々な角度から研究し、36個の因子を突き止めました。そして、患者1人1人に対して、その因子に該当するかを1つずつ調べていき、当てはまる要素を取り除いていくというアプローチを取りました。この本に書いてあるのは、個体差を見つけてそこに応じて治療するという分子栄養学の考え方そのものです。

ここからは、この本に書かれているリコード法に基づいて、脳機能を改善する方法を見ていきましょう。アルツハイマーには、脳血管性の4型や5型もありますが、今回は栄養や炎症に関わる1~3型について詳しく解説します。リコード法の手順としては、まずはじめに、1型(炎症性)、2型(栄養性)、3型(毒性)のどれに該当するかを探ります。次に、36個の因子のどれに当てはまるかを特定し、それに応じた食事、睡眠、運動、ストレス対策などの治療計画を練ります。

  • リコード法は、アルツハイマーでなくともブレインフォグの治療にも応用できる
  • アルツハイマーと診断されていなくても、リコード法を行う価値がある
  • リーキーブレインを起こすもの(グルテン、カゼイン、高血圧、リーキーガット)は、全て1型アルツハイマーの原因と考える
  • チェックリストを作って、全てに対処する

2. 1型(炎症性)アルツハイマー

2-1. 特徴

1型アルツハイマーが疑われる症状は、ダニや感染症、関節炎、糖尿病、メタボリックシンドローム、副鼻腔炎、ピロリ、根尖病巣などです。これらは全て炎症です。炎症があって、炎症マーカーも上がっていたら、1型アルツハイマー、もしくは脳機能の変性があるかもしれません。

1型アルツハイマーが疑われる症状
☑️ ダニに噛まれたことがある
☑️ 関節炎がある
☑️ 糖尿病にかかっている
☑️ メタボリックシンドローム
☑️ 副鼻腔炎、慢性の鼻づまりがある
☑️ ピロリ菌感染がある
☑️ 歯の根幹治療を行なっている

炎症マーカーの挙動

1型は炎症性のため、血液データの炎症マーカーが高くなります。CRP、ホモシステインが上がり、A/G比は下がります。IL-6やTNFといった炎症性サイトカインの数値も上がります。炎症があるとメチレーション回路が回らなくなるため、ホモシステインは高くなります。本には書かれていませんが、おそらくフェリチンも高くなると考えられます。

炎症の原因物質

最も気をつけるべきは腸の炎症です。他にも、口腔や喉、胃、肝臓の炎症も関連します。腸に炎症を起こすものは、あらゆる病原菌と、砂糖、グルテン、カゼイン、トランス脂肪酸といったリーキーガットを誘発する食材です。また、内臓脂肪にも注意が必要です。脂肪細胞は、サイズが小さいときには、アディポネクチンやレプチンといった痩せる物質が分泌されますが、サイズが大きくなると炎症性物質であるTNFαが分泌されます。これは、インスリン抵抗性を惹起する物質でもあります。インスリンを排泄する物質とアミロイドβを排泄する物質が同じなので、その結果として脳にアミロイドβの蓄積が促進されてしまいます。

ApoE4の存在

ApoE4遺伝子を持っているとアルツハイマーの発症リスクが高まります。ApoE4遺伝子は炎症を促進させ、炎症抑制の遺伝子を抑制する働きがあります。抗炎症のサプリを飲むだけでは対策としては不十分で、炎症場所を特定し局所の対策を講じる必要があります。

海馬の萎縮

炎症があると慢性的にコルチゾールが分泌されるため、海馬が萎縮すると言われています。

2-2. アマルガムとアルツハイマーの関係

「本当に怖い歯の詰め物」の著者である歯科医のハル・ハギンス博士は、アマルガム(水銀と他の金属との合金)の毒性を世に知らしめました。本には、慢性疲労や白血病など、水銀がもたらす様々な疾患がまとめられています。

同じくハギンス博士の著書に「歯科治療に潜む致命的な危険性」という本があります。これは根尖病巣について書かれており、博士に会ったときに、根尖病巣とアマルガムどちらが悪いかと聞いたら、根尖病巣が圧倒的に悪いという答えが返ってきました。

アマルガムからは、有機水銀、無機水銀、水銀蒸気、3つの形態で水銀が流出します。蒸気になると、脳や肺に入って影響を及ぼします。また、有機水銀は細胞膜を通過できるため、脂肪細胞や脳に直接影響します。日本歯科医学会では、無機水銀は安全だとしていますが、ハギンス博士は、口腔内や腸管で容易にメチル化されてメチル水銀になるので非常に危険だと訴えています。

もう一つ、アマルガムを外しただけでよくなる人とよくならない人の違いなんですか?という質問をしてみました。すると、アポリポ蛋白E(ApoE)のアイソフォームの違いだろうという答えが返ってきました。現在ほど遺伝子解析が進んでいなかった当時から、博士はApoEのアイソフォームに言及していたのです。ApoEによるアルツハイマーは1型です。アマルガムは毒物なので3型に該当します。ハギンス博士は、3型は40代で発症するのが一般的だけど、1型と3型が合併している人は30代で発症するよとおっしゃっていました。

2-3. ApoEとアルツハイマーの発症リスク

ApoEは、VLDL、IDL、HDLなどのリポ蛋白を構成している主要なアポリポ蛋白の1つで、コレステロールや脂肪酸の運搬に関与しています。アポリポ蛋白とは、コレステロールを運んでいるタンパク質のことで、コレステロールと輸送体タンパク質を合わせたものをリポ蛋白と呼びます。ApoEにはε2、ε3、ε4という3つの遺伝子変異があり、それに対応してタンパク質にもE2、E3、E4というアイソフォームが存在します。ApoE4はSirt1(サーチュイン)を抑制し、炎症促進物質であるNFκBを増やします。ApoE4がいくつあるかによってアルツハイマーの生涯発症リスクが決まり、1つもない場合は9%、1つで30%、2つで50~90%と言われています。発症年齢にも影響を与え、一般的には65歳以上ですが、ApoE4が1つあると50代後半で発症する確率が高くなります。

遺伝子検査でApoEの変異を調べることは決して無駄ではありません。自分のアルツハイマー発症リスクがわかるだけでなく、炎症を起こしやすいかどうかという体質チェックにもなります。ApoE4の変異があった場合の対処法は、炎症を起こしている部位を特定し除去すること、そしてもう一つは抗酸化対策です。

2-4. 抗酸化対策

ApoE4を有する高齢女性において、血中ビタミンC濃度を高めると将来の認知機能低下リスクが減少することが金沢大学の研究で明らかになりました。

J Alzheimers Dis. 2018;63(4):1289-1297.
Higher Blood Vitamin C Levels are Associated with Reduction of Apolipoprotein E E4-related Risks of Cognitive Decline in Women: The Nakajima Study
https://doi.org/10.3233/JAD-170971.

日本人の場合、E3/E3に比べ、E3/E4ではアルツハイマー発症リスクが約4倍になります。しかし、ビタミンCの血中濃度を高めておくと、認知症発症リスクが低下し、認知機能低下発症リスクも有意に下がります。

ビタミンEでも同様の結果が得られています。抗酸化ネットワークの相互作用により、ラジカルになったビタミンEをビタミンCが戻すので、抗酸化にはビタミンCとE、両方とも大切な栄養素です。これら2つの栄養素が特に優れているのは、ラジカルが安定していることです。通常、電子を失った物質は不安定になってラジカル連鎖反応を起こしますが、ビタミンCとEは電子共鳴によって安定化しているので、連鎖反応を起こしません。

2-5. 抗酸化サプリメント

抗酸化サプリメントとしては、リポソーマルビタミンCやフェルラ酸が良いでしょう。フェルラ酸は、脳の抗酸化物質としての働きを持ち、日本認知症予防学会などで推奨されています。通常のフェルラ酸はiHerbなどで購入できますが、12時間体内で効果を維持できるように加工されたフェルガードというサプリメントもあります。

余談ですが、とある先生が、フェルラ酸を受験生のお子さんに使うとおっしゃっていました。脳の抗酸化対策は脳機能の向上に直結するので、アルツハイマーだけではなく、様々なことに応用できます。

2-6. 鼻腔の炎症

鼻腔は炎症を起こしやすい場所の一つです。鼻は直接脳と繋がっているため、慢性副鼻腔炎や慢性鼻炎を抱えていると、脳へのダメージもかなり大きくなります。また、長期間にわたって抗生物質を使うと、鼻腔の悪性細菌が作るバイオフィルムにより耐性ができるため、通常の抗生物質では効きが悪くなってしまいます。

プレデセン博士は、バイオフィルムクレンジングの成分が配合されたスプレーを使って鼻炎を治療しています。バイオフィルムクレンジングのEDTAと3種類の抗生剤を入れたBEG1スプレーというものです。残念ながら日本では取り扱いがないため、京都市にあるうさぎ堂薬局さんで調合してもらえるようにしました。処方箋があれば購入することができます。鼻炎があるとデトックスにも影響するため、ここは早めに治しておきたいところです。

3. 2型(栄養性)アルツハイマー

3-1. 特徴

2型を疑う症状として、以下の項目が挙げられます。栄養・ホルモンの欠乏が原因のため、当然のことながら、それに関連した症状が強く出ます。

2型アルツハイマーが疑われる症状
☑️ 更年期障害が強い
☑️ 子宮、卵巣を切除している
☑️ 甲状腺機能低下症状
☑️ ビタミンD不足

BDNFの減少

脳シナプスを保つためのBDNF(脳由来神経栄養因子)は、アルツハイマー病に最も重要な脳の部位前脳基底部の受容体と結合し、アポトーシス(細胞死)を抑制します。したがって、BDNFが減少するとアポトーシスが亢進し、2型アルツハイマーが発症します。またアミロイドβは、BDNFが受容体に結合するのを邪魔する抗栄養因子として働くため、さらに悪化します。

BDNFを保つための栄養素

BDNFを保つためには、ビタミンD、ホルモン、葉酸といった栄養素と運動が欠かせません。また、BDNFはコレステロールからできているので、低コレステロールの人は特に注意が必要です。

ホモシステイン高値

2型は葉酸が不足するのでホモシステインが高くなりがちです。

2型の診断

これらのチェックは、血中のホルモン濃度やビタミン濃度を測ることで把握することができます。

3-2. ホモシステインを減らすためには

ホモシステインはそれ自身が酸化物質であるため、過剰に蓄積すると体内で活性酸素を発生させたり、動脈硬化を引き起こします。メチレーション回路の中で、ホモシステインが代謝される経路は3つあります。これら3つの経路を適度に回す必要があります。高い場合にはまず、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸を摂ることから始めてください。

ホモシステインからメチオニンに代謝される際に働くMTRは、炎症に対して影響を受けやすい酵素です。炎症でこの代謝が止まっている人は、メチルビタミンB12のサプリメントを使って、この代謝を強制的に動かすこともあります。もしくは、ベタインを使うとBHMTを介してメチオニンに行く経路が回るため、ホモシステインが下がりやすくなります。

4. 3型(毒性)アルツハイマー

4-1. 特徴

この3型は宮澤医院の患者さんに多いタイプで、症状が副腎疲労とものすごくオーバーラップします。40代の患者さんで、「注意力が低下していて、頭が全く働かないんです」という方は結構いらっしゃいます。そのようなケースでは、単なる副腎疲労と診断せずに、3型アルツハイマーの合併がないかもチェックが必要です。

☑️ 40代から発症(更年期頃に起きやすい)
☑️ うつ病が認知機能的かに先行する
☑️ 記憶低下<集中力低下、計算不能
☑️ 強いストレスがトリガー
☑️ マイコトキシン、もしくは重金属への曝露
☑️ 副腎疲労あり
☑️ 血中TG低値
☑️ 血清亜鉛低値
☑️ HPA軸↓、プレグネロノロン↓、DHEA↓

4-2. 解毒のしくみ

解毒には、3つのフェーズがあります。フェーズ1が活性化、フェーズ2が抱合、フェーズ3が輸送です。フェーズ1の「活性化」は、反応としては「酸化」することです。活性化したままでは酸化物質が溜まっていく一方なので、フェーズ2で水溶性にして細胞外に排出できる状態にします。そしてフェーズ3では、MRP輸送体を通して細胞外に送り出し、肝臓または腎臓経由で体外に排出します。

4-3. デトックスの順番

デトックスにおいて重要なことは、フェーズ1, 2, 3を逆から攻めるということです。例えば、フェーズ2の準備ができてないのにフェーズ1が進行してしまうと、酸化物質が体に溜まって逆効果になってしまいます。また、フェーズ3の前にフェーズ2を行うと、毒物を体外に排出できず溜め込むことになります。最初にやるべきは、フェーズ3、すなわち腸内環境を改善して便秘を解消するということです。その次は肝臓のケアです。肝臓は、フェーズ1とフェーズ2を大部分を行っている場所なので、肝機能を向上させると毒物がスムーズに排出されます。

4-4. グルクロン酸抱合

フェーズ2(抱合)は、難水溶性物質を水溶性に変えるプロセスです。薬物、ビリルビン、ステロイドなどは、体内に滞留するとがん、神経障害、内分泌障害など重篤な疾病を引き起こします。これらの物質は肝臓にあるUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT; UDP-glucuronosyl transferase)によって、グルクロン酸が付加されて水溶性のグルクロナイドに変換されます。

グルクロン酸にはOH基がたくさん付いているので、抱合により難水溶性物質が水溶性になります。水溶性になった薬物は、血流にのって腎臓で濾過され、尿中に排出されます。グルタチオンもグルクロン酸と同様の働きをします。グルクロン酸と結合するとグルクロン酸抱合、グルタチオンと結合するとグルタチオン抱合と呼ばれます。

4-5. グルクロン酸抱合に欠かせないUGTs

グルクロン酸抱合の際に働くUGTsには、1A1、1A6、2B1など、いくつかの分子種が存在します。分子種によって抱合する難水溶性物質の種類が決まっており、UGT1A1はビリルリンやモルヒネを代謝することがわかっています。ギルバート症候群やクリグラー・ナジャー症候群といった疾患では、UGT1A1のSNPによりグルクロン酸抱合が障害され、ビリルビンが高値を示します。血液検査の項目にある直接ビリルビンは抱合後、間接ビリルビンは抱合される前の状態を表しています。

4-6. スルフォラファンの効果

UGT1A1の酵素を活性化するのがスルフォラファンです。スルフォラファンはブロッコリーから抽出される物質で、ASDの行動改善にも効果があるという報告があります。

Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Oct 28;111(43):15550-5.
Sulforaphane treatment of autism spectrum disorder (ASD)
https://doi.org/10.1073/pnas.1416940111
18週間毎日スルフォラファンを摂取したグループで、異常行動と対人応答性のスコアが、プラセボに比べて大幅に低下し改善がみられた。摂取をやめるとスコアが上昇した。

スルフォラファンがUGT1A1、GSTA1のmRNAレベルを増加させ、UGT1A1タンパク合成、およびビリルビングルクロン酸抱合を2~8倍増加させたという報告もあります。

Carcinogenesis. 2002 Aug;23(8):1399-404
Sulforaphane and its glutathione conjugate but not sulforaphane nitrile induce UDP-glucuronosyl transferase (UGT1A1) and glutathione transferase (GSTA1) in cultured cells
https://doi.org/10.1093/carcin/23.8.1399.

スルフォラファンは、UGT1A1の酵素を活性化する以外にも、MRP輸送体自体をも活性化すると言われています。

4-7. 重金属の蓄積量と排泄力を評価する

解毒力の評価は、毛髪ミネラル検査で蓄積量と排泄量を把握し、両者を比較することで行います。マグロをたくさん食べていたり、アマルガムが歯に入っていたりするのに、毛髪からの水銀検出量が少なければ、排泄力が弱く体内に水銀を溜め込んでいるということになります。逆に、毛髪からの水銀が振り切れるほど出ていれば、それは排泄力があることを意味します。後者は比較的軽症ですが、問題となるのは水銀を溜め込んでいる前者のケースです。

4-8. デトックスの検査

毛髪ミネラル検査以外にも、デトックスに関連した検査はたくさんあります。例えば、フェーズ2のグルタチオン抱合を評価する検査として、オリゴスキャンが有効です。

また、ジェノバ社のキレーション・プロファイルは、フェーズ 1とフェーズ2における酵素のSNPを調べる検査です。フェーズ1は、シトクロームP450による酸化の工程ですが、CYP 1A1は排ガス、 1B1はエストロゲン…と対応する毒物が決まっているので、自分が排泄しにくいものがよくわかります。

キレーション プロファイル
  • CYP1A1;排ガス
  • CYP1B1;エストロゲン水酸化
  • CYP2C19;PPI、抗痙攣薬
  • CYP2D6;SSRI、抗うつ薬
  • CYP3A4;処方薬の50%、ステロイド

フェーズ2においては、COMTにSNPがあればエストロゲンやドーパミンが代謝しにくくなります。その他に、Nアセチルトランスフェラーゼ、GST、グルタチオントランスフェラーゼ(グルタチオンの抱合を助ける酵素)、SOD(酸化ストレスの起こりやすさの指標)などのSNPを調べることで、自分が避けるべき毒物を特定することができるのです。該当する毒物の曝露を避けた上で、ブロッコリーやキャベツ、玉ねぎ、ニンニク、ウコン、ローズマリー、クミンといった食材を使いながら肝臓のクレンジングを行うと良いでしょう。

キレーション プロファイル

4-9. デトックスサプリメント

フェーズ2で重要なポイントは、抱合して胆汁から排泄するというステップです。私がよく使うのは、ミルクシスルとNアセチルシステインが配合されたSeeking Health社のLiver Nutrientsです。肝臓の滋養強壮に良いサプリメントです。それともう 1つ、Optimal Liposomal Glutathioneです。抱合に関してはグルタチオンが欠かせないため、グルタチオンの前駆体であるNアセチルシステイン、もしくはリポソーマルタイプのグルタチオンやクリームタイプのグルタチオンを使って、消化酵素で分解されないように摂取すると良いでしょう。医薬品としては、ウルソ(ウルソデオキシコール酸)やタチオン(グルタチオン)などがあります。ウルソは、脂肪吸収促進とデトックス、両方の効果が期待できます。

フェーズ3で重要なポイントは、胆汁から排泄された毒素をキャッチしてあげることです。メチル水銀は胆汁から排泄されますが、メチオニンと形が似ているので、再吸収されてしまうリスクがあります。私が使っているのは、クロレラ、ケイ素、チャコール、そして医薬品のクレメジンです。

このように、フェーズ 1、2、3を理解し、うまくデトックスが進むように自分でプロトコルを組み立ててみてください。

4-10. 脳機能改善にはDHA

脳機能改善には、アセチルコリンやDHAを補充することも効果的です。この論文では、DHAを補うことで認知症を抑制することを示しています。

J Nutr. 2010 Apr;140(4):869-74. 
DHA may prevent age-related dementia
https://doi.org/10.3945/jn.109.113910. 

脳神経の樹状突起がDHAによって維持されているため、脳の細胞膜機能の改善には、やはりDHAが良いでしょう。細胞膜からのデトックスの作用も強まると考えられます。MSS社のuDHAは酵素処理により抗酸化力を高めたDHAが配合されています。また、ヘルシーパス社のスマートコリンも脳の認知機能向上に効果が示されています。

5. アルツハイマーの治療方針

炎症、栄養・ホルモン、毒物を根本原因ピラミッドに照らし合わせてみましょう。1型は一番下の腸・炎症、2型はエネルギーとホルモン、3型はデトックスに該当します。これらを順番に治療していくと、結果として脳機能が改善します。基本的には下から順番に進めていくのが良いでしょう。

6. 実際の症例と治療方法

6-1. 症状

ここからは実際の症例に基づいて、治療のアプローチを解説します。ピラミッドの下から順にアプローチしていき、認知機能の改善に結びつけた事例です。

年齢・性別
38歳、女性

主訴
・10年来の慢性疲労
・めまい、立ちくらみ、朝が起きられない
・時々胃を掴まれるような痛み
・手の湿疹、頻尿、関節痛
・集中力が続かない、物忘れがひどい

所見
・他院でのカンジダハーブ治療で胃痛と下痢が出現
・子宮筋腫あり
・不眠気味、入眠障害あり
・唇がよく乾く、話し声のかすれがある、無性に甘いものが食べたくなる
・お菓子、コーヒー時々
・虫歯既往あり、抜髄歯あり
・腹部膨満、ガス多量
・頸部リンパ節腫脹なし
・眼球結膜貧血なし

活力レベル
朝:2、昼:5、15~17時:3、23時:8

飲んでいるサプリメント
DHEA、ビタミンD、ヘム鉄、ビタミンB、亜鉛

現在の食事
糖質制限、グルテンフリー、カゼインフリー

活力レベルを見ると、朝は低く、夜に向けて徐々に元気になるという典型的な副腎疲労の症状を示しています。ビタミンD、ヘム鉄、亜鉛のサプリメントを飲んでいるので、血液濃度は高めですが、感覚的には効いていないとおっしゃっていました。糖質制限とグルテン・カゼインフリーをやっているとのことですが、お菓子を食べていることから、完全ではないことが見受けられます。腹部膨満があり、お腹が張ってパンパンでした。

6-2. メチレーションの状態

こちらはウォルシュ博士によるうつ病の生化学的分類に基づいた問診票です。Aは低メチレーション、Bは高メチレーション、Dはピロール障害のチェックです。Dにたくさん◯がついていますね。ピロール障害は慢性的な亜鉛とビタミンB6欠乏により起こりますが、症状としては副腎疲労に酷似してます。

6-3. 血液データ

血液データでは、特にタンパク質と中性脂肪の低さが目立ちます。これは低血糖のパターンです。血清銅に対して亜鉛がかなり高い値を示しているのは、サプリメントを飲んでいることが原因と考えられます。

6-4. 栄養療法ピラミッドは低血糖の海に浮いている

2005年に、「脳に効く栄養」という本の出版記念講演で、マイケル・レッサー博士の講演を聴く機会がありました。その講演の中で博士は、統合失調症の要因として、ホルモンバランス、ピロール障害、アレルギー、毒物などを挙げていました。毒物の影響、次いでビタミン欠乏が大きな要因になっています。ここで博士が強調していたのは、要因は様々だが、全ての要因は低血糖の海の上に浮いている(Schizophrenias float in the ocean of hypoglycemia )ということです。だからまずは低血糖をなんとかしないと次に進めない、というお話をされていました。

同じように、栄養療法ピラミッドも低血糖の海に浮いているのです。腸内環境改善も副腎疲労も、低血糖をなんとかしないと治療に入れません。低血糖がある程度落ち着いてから、ピラミッドを下から戦略していくというアプローチになります。症例の女性の治療もそんな感じで始まりました。

6-5. 毛髪ミネラル検査

毛髪ミネラル検査を見ると、カウンティングルールに当てはめるとミネラル輸送障害はありませんでした。水銀の曝露も少なく、水銀は十分に出ていて、ミネラルのバランスも整っています。

6-6. 総合便検査(CSA)

腸内環境検査では、良性細菌である乳酸菌、ビフィズス菌は十分ありましたが、境界型菌も多く存在しました。カンジダは他の検査では検出されましたが、便検査では検出されませんでした。便検査では実際の3割程度しか検出しないので、現在はDNA検査に移行しています。

ただ、この検査の良いところは、消化酵素、短鎖脂肪酸の産生、炎症、免疫の状態が複合的に把握できる点です。症例の女性の場合、炎症がとても強く出ました。炎症マーカーのラクトフェリンが高く、ライソザイムのマーカーも527とかなり上昇していました。免疫も亢進していることがわかります。

6-7. SIBO検査

腹部膨満感も強かったため、SIBOの検査も一緒に行いました。SIBO検査では、呼気中の水素とメタンガスを経時的に調べます。最初の方は小腸に溜まっているガスが出て、ある時から大腸のガスが出るようになります。この女性の場合は初期段階から水素ガスが出ているので、小腸にも細菌が増殖していることがわかります。治療方針としては、まずは低血糖を治して、それから腸内環境改善としてSIBO治療に着手することにしました。

6-8. 治療に使用したサプリメント

腸内環境改善には、これらのサプリメントを使用しました。

  • ウルトラフローラ(乳酸菌)
  • ビタミンA
  • トレースミネラル
  • グルタミン

腸のバリアは、乳酸菌、免疫、機械的バリアの三重層になっています。タイトジャンクションを繋げて炎症を抑制するのはグルタミン、免疫グロブリンA(IgA)の材料になり免疫を上げるのはグルタミンとビタミンAです。そして腸内細菌叢のバランスを整えるために乳酸菌を使います。炎症が治まったタイミングで、以下のサプリメントを使いました。

  • DaVinciリポソーマルC
  • カンジダアウェイ
  • リフキシマ
  • インターフェーズ

腸内環境を少し酸性にした方がカンジダ治療には効果的なので、抗真菌ハーブと胃酸が配合されているカンジダアウェイを使用しました。SIBO治療に使われるリフキシマを 1日3錠、1ヶ月使いました。それと一緒に、インターフェーズというバイオフィルムをクレンジングする消化酵素も処方しました。消化酵素は、食物の消化をサポートする以外に、腸にこびりついているバイオフィルムを削る作用もあります。バイオフィルムクレンジングには食物繊維の消化酵素が効果的です。これを2ヶ月飲んでもらったところ、4ヶ月後には湿疹、頻尿、腹部膨満はすっかり良くなったので、次にデトックスを行いました。

  • ミヤリ酸
  • Liver Nutrients
  • グルタチオン
  • ビタミンB12(ヒドロキシコバラミン)
  • 葉酸(フォリン酸)
  • クロレラ
  • ケイ素

これらを3ヶ月間続けてもらったところ、8ヶ月後には関節痛、手湿疹がほぼ消失しました。また、認知機能も改善しました。

7. 最後に

日々患者さんを診てきて感じることは、考える力が湧いてくると自分の治療に対する姿勢が変わってくるということです。そうすると、治療の効果が一気に加速していくような感じがあります。患者さんご本人が自分でやらなければいけないことが結構多いからですね。

今回は、アルツハイマーの治療法をテーマにしましたが、アルツハイマーに使えるということは、脳機能全体の治療に使えるということなので、非常に応用性が広いと思います。脳機能の改善に至るまでには、低血糖の改善から炎症、腸、デトックス…と一つずつ積み上げていく必要がありますが、ご自分でプロトコルを組み立てて、サプリメントをうまく活用しながら取り組んでみてください。

水銀デトックスで免疫力を高める

宮澤賢史 · 2021年8月4日 ·

あなたは自分の免疫力に自信がありますか?免疫力を上げるにはまず、免疫力を低下させる原因を知る必要があります。

免疫力を低下させる大きな要因の一つに、水銀の蓄積があります。マグロなどの大型魚を週に何度も食べる方、歯に金属の詰め物がある方は、ご自身が持っている本来の免疫力を発揮できていないかもしれません。そこで行いたいのが、水銀デトックスです。体に溜まった水銀を体外に排泄することにより、免疫力を上げ、ウイルスに打ち勝つ体づくりができるのです。

1. 水銀デトックスは免疫の要

1-1. なぜ水銀デトックスが重要なのか?

抗生物質の一つであるヒドロキシクロロキンは、抗炎症効果があるため、自己免疫疾患の治療に使われていますが、体内に水銀が溜まっていると効きが悪くなります。なぜなら、水銀は細胞分裂の活発な部位に入りやすく、骨髄に蓄積すると多発性硬化症(MS)や白血病などの自己免疫疾患を誘発するからです。花粉症などのアレルギー症状にも水銀が影響しているケースがあります。

亜鉛には下気道感染の予防効果がありますが、亜鉛と水銀が同族元素なので、お互いに拮抗します。したがって、亜鉛の働きをよくするためには、水銀デトックスが欠かせません。

抗生物質のジスロマックは、リボゾームに作用するため、ウイルスへの効果が期待されています。日本では約20年前から最も使われている薬のうちの1つですが、あまりにも使われすぎて、薬剤耐性が問題になっています。水銀は耐性菌を誘導することが知られており、水銀が体内に蓄積しているとますます抗生物質が効きにくい体になってしまいます。

このように、いざというときに備えて薬が効く体にしておくためには、水銀デトックスは不可欠ということがお分かりいただけたかと思います。

1-2. 解毒の3フェーズと水銀の関連性

人間の解毒の仕組みは、3つのフェーズに別れています。フェーズ1は活性化、フェーズ2は抱合、フェーズ3は輸送です。解毒がうまくいっていない人は、フェーズ1、 2、3のどこに原因があるかを探らなければなりません。

フェーズ2は、毒素がグルタチオンやグルクロン酸により抱合されて水溶性になるプロセスです。細胞内に溜まった毒素は脂質に溶けて安定化しているため、細胞外に出るには水溶性の物質と結合する必要があります。

フェーズ3は、細胞内から細胞外に出る工程と、尿や便から排出されるプロセスです。細胞膜にあるMRP1(薬剤耐性タンパク1:Multidrug resistance-associated Protein 1)輸送体は、水銀の他に抗生物質などの薬剤も排出する働きがあります。したがって、MRP1輸送体が活性化している人は、水銀と一緒に抗生物質も排出してしまうので、当然抗生物質の効きは悪くなります。

また、水銀は多剤耐性関連タンパク質遺伝子を誘発することがわかっています。水銀をたくさん蓄積している人は、細胞外に排出しようとする働きが強まり、その過程で抗生物質も排出されてしまうのです。

Toxicol Lett. 2005 Jan 15;155(1):143-50.
Mercury induces multidrug resistance-associated protein gene through p38 mitogen-activated protein kinase
https://doi.org/10.1016/j.toxlet.2004.09.007

他にも、1993年の論文では、アマルガムが水銀耐性細菌や抗生物質耐性細菌の増加を引き起こすことが報告されています。

Antimicrob Agents Chemother. 1993 Apr;37(4):825-34. 
Mercury released from dental “silver” fillings provokes an increase in mercury- and antibiotic-resistant bacteria in oral and intestinal floras of primates
https://doi.org/10.1128/AAC.37.4.825.

このような知見から、患者さんに抗生物質を処方する場合は、必要に応じて水銀のデトックスを行っています。

2. 検査の読み方と治療方針

2-1. 蓄積量・排泄力・対処法を適切に把握する

水銀デトックスをするためには、ご自身の水銀蓄積量と排泄力、そして自分に合った対処法を適切に把握することが大切です。今回は、水銀の排泄量を評価できる毛髪ミネラル検査に加え、重金属の蓄積量や対処法などの情報を与えてくれるオリゴスキャンを紹介します。

症例: 28歳男性 非淋菌性尿道炎と全身倦怠感

主訴
・尿道炎症状、発熱、下痢、食欲低下、倦怠感、手足のしびれ
・疹、手足のさかむけ、
・脱力感、手足の筋肉量低下

この男性は、尿道炎を何度も繰り返して泌尿器科を受診していましたが、全く改善がみられず、しまいには手足の痺れや脱力感、倦怠感が強くなり、宮澤医院に来院されました。舌にびらんがあり、筋力も低下していました。排尿時痛がずっと続いており、関節痛や微熱もあったため、マイコプラズマ感染の疑いがありました。マイコプラズマ・ファーメンタンス(尿道炎からくるマイコプラズマ)の検査をしたところ、陽性を示したので、マイコプラズマ感染による非淋菌性尿道炎と慢性疲労症候群と診断しました。

症状
・舌にびらん、上下肢の筋力低下、排尿時痛、
・頭のもやもや感、関節痛、微熱
・フェリチン152ng/ml, AST26,ALT27,γGTP21
・マイコプラズマによる非淋菌性尿道炎と慢性疲労症候群と診断

マイコプラズマ感染症は、関節リウマチや慢性疲労症候群、線維筋痛症など、さまざまな病気を引き起こすことがわかっており、微熱、発熱、筋肉痛、といった症状がある人には必ずマイコプラズマ検査を行っています。通常のマイコプラズマ検査ではなく、私はエムバイオテック社の抗原抗体検査を用いています。マイコプラズマ・ファーメンタンス検査は、尿道炎の原因菌となるマイコプラズマを検出できます。

最初は抗生物質であるミノマイシンを使って治療を行いましたが、なかなか改善しませんでした。抗生物質に対する耐性があると考え、水銀デトックスのDMPSと、鉛やカドミウムのデトックスに使うEDTAキレーション点滴を5クールにわたって行いました。かなり時間はかかりましたが、今はほとんどの症状が消失しています。慢性疲労症候群の患者さんで、マイコプラズマが陽性の場合、ミノマイシンを処方して1~ 2ヶ月で治る人はたったの1割程度です。先にデトックス治療を行うことにより、抗生物質の効きをよくすることができるのです。

症例の28歳男性の重金属蓄積量をオリゴスキャンで確認してみたところ、鉛は低下していましたが、僅かに増えている重金属もあり、重金属の蓄積量にほとんど変化がありませんでした。蓄積量が変わらないのに、なぜ症状が改善したのでしょうか?

2-2. オリゴスキャンの結果が教えてくれること

オリゴスキャンは、手のひらに光を照射し、体内の重金属の蓄積量を測定する装置です。蓄積量だけではなく、有害金属毒性、酸化ストレスなど、デトックスに関する様々な情報を与えてくれます。症例の男性の場合、重金属の蓄積量だけを見ると変化は少ないのですが、有害重金属のトータル毒性は減少していました。また、酸化ストレスが低下し、抗酸化力が向上していました。この辺りが影響し、症状が軽快したと推察されます。

有害金属毒性の項目に、「硫黄との結合が十分でないため有害金属の代謝不良」とありますが、これはフェーズ3(毒物の輸送)のことを指しています。硫黄と水銀は非常に親和性が高く、摂取した硫黄が水銀と結合して排出されているかという指標がここに現れます。赤から黄色に好転していますが、これが緑になるように硫黄をもう少し摂った方が良いということがわかります。硫黄を豊富に含むアブラナ科の植物や肉を積極的に摂るようにします。

2-3. 酸化ストレスは解毒力を低下させる

フェーズ2(抱合)の過程では、グルタチオンの活性化が重要になります。グルタチオンは抗酸化にも使わてしまうので、酸化ストレスが強い人はグルタチオンがうまく働きません。したがって、オリゴスキャンの酸化ストレスマーカーと、血液検査の肝臓機能マーカーを確認し、酸化ストレスが強い場合はそちらの対処をします。肝臓機能を確認する理由は、フェーズ1とフェーズ 2が主に肝臓で行われるからです。慢性の肝臓疲労や肝炎がある場合は、フェーズ2の力が落ちます。症例の男性の場合、フェリチンが152もありました。フェリチンが100以上ある場合は炎症と捉えます。抗炎症のアプローチ、もしくは肝臓のケアを行った方が良いでしょう。毛髪検査も行ったところ、ミネラル輸送障害に当てはまりました。まだ水銀の害が残っていることを示します。

以上のことから今後の治療では、ミネラルのバランスが整うように、抗炎症のアプローチと肝臓ケア、そしてもう少し水銀のデトックスが必要だと考えています。症状自体はだいぶ回復したので、メンテナンスをしながらゆっくりとしたペースで行っていきます。

2-4. 毛髪ミネラル検査とは

毛髪ミネラル検査とは、毛髪中のミネラルを測定し、重金属の排泄力を評価する検査です。髪は1ヶ月に1cm伸びるので、毛髪の根元から3cmの部分を測定すると、過去3ヶ月の平均の排泄量がわかります。毛髪は、細胞外液のミネラルの経時変化を表す記録紙と言えます。

2-5. 耐容量を超えなければ大丈夫?

水銀は、下垂体からのACTH分泌や副腎からのコルチゾール分泌をブロックします。したがって、体内に水銀が溜まっている人はだいたい副腎疲労になります。

症例: 45歳女性、副腎疲労

この症例の女性は、歯にアマルガムが9本もありましたが、毛髪ミネラル検査を行ったところ、水銀は1.1ppmしか検出されませんでした。

厚生労働省の国立水俣病総合研究センターのWEBサイトを見ると、毛髪中の水銀量が重症度を全て表しているという考えで、耐容許容量5ppmを超えなければ問題ないとされています。耐容許容量は十分な安全性を考慮して決められた値で、これを超えない限り影響はないと書かれています。症例の方に当てはめると、全く問題ないとみなされてしまいますが、果たしてそうでしょうか?

私が強く言いたいのは、「検出されない=問題ない」は間違いということです。むしろ、水銀の曝露量が多いにも関わらず、毛髪検査で検出されないケースの方が重症なのです。

2-6. 自閉症児の毛髪分析

ここで、自閉症児の毛髪分析結果の報告を見てみましょう。自閉症児の母親は、対照児の母親に比べて、明らかに水銀曝露歴が高かったにも関わらず、子供の毛髪からの排泄パターンは少なかったそうです。毛髪の水銀レベルが少ないほど、自閉症の重症度が高かったという結果も出ています。

Int J Toxicol. 2003 Jul-Aug;22(4):277-85.
Reduced levels of mercury in first baby haircuts of autistic children.
https://doi.org/10.1080/10915810305120.

  • 94人の自閉症児と、年齢、性別をマッチさせた45人の対照児の毛髪分析を行った
  • 自閉症児の母親は、対照児の母親に比べて免疫グロブリン注射や歯科アマルガムなど顕著に高レベルの水銀曝露歴があったにもかかわらず、自閉症児の毛髪からの排泄パターンは対照児に比べて明らかに少なかった
  • 対照児の毛髪水銀レベルは、母親のアマルガムの個数と魚の摂取量、そして幼少期のワクチン接種と優位に相関していたが、自閉症児には相関が見られなかった
  • 自閉症児は、症状の重症度が高いほど毛髪の水銀レベルが少なかった

毛髪は水銀の排泄器官です。したがって、水銀の排泄障害が重度であるほど、症状も重篤になると言えます。

2-7. 毛髪ミネラル検査からわかること

毛髪ミネラルの結果は、有害金属の排泄力を表しています。アマルガムの詰め物がたくさんある人でも、毛髪検査の水銀レベルが高い人は比較的軽症です。曝露量と排泄量が一致しているからです。

もう1つ、毛髪ミネラル検査で得られる重要な情報が、ミネラルバランスです。ミネラルバランスを見れば、水銀の排泄能力をある程度推測できます。水銀が体内に溜まっていないから排泄量が少ないのか、それともたくさん溜まってるのに排泄できていないのか、一見しただけでは区別がつきません。その場合はミネラルバランスを確認します。検査結果で、左右のミネラルバランスが整っている場合、水銀の排泄量=水銀の蓄積量とみなしてよいでしょう。一方、ミネラルバランスが崩れている場合は、重金属排泄不良を起こしており、水銀が蓄積していると考えます。

2-8. 毛髪レベルとオリゴスキャンを比較する

水銀が体内にないのか、排出できていないのかを知る上でより確実な方法は、毛髪レベルとオリゴスキャンを比較することです。比較することで、どのぐらい排泄できていないのか、どのぐらい蓄積しているのかがはっきりわかります。オリゴスキャンと毛髪ミネラル検査を同時に行うことで、的確なデトックスの治療方針を立てられるようになるのです。

症例: 48歳女性、慢性疲労

  • 原発性アルドステロン症にて左副腎摘出
  • 摘出後から疲労感増強、歩行不可能
  • 3ヶ月経過も改善が見られないため、副腎機能低下を疑い来院
  • 血中ACTH 27.4pg/mL, コルチゾール 11.3μg/dL(基準範囲内)
  • フェリチン 17.5 ng/mL, AST 25, ALT 17, γ-GTP 11
  • 唾液中コルチゾールが顕著に低下
  • 歯科アマルガムあり

この女性は、原発性アルドステロン症という副腎の癌を発症し、左副腎を摘出していました。この疾患は、もう片方の副腎が萎縮するため、オペ後に副腎疲労の症状が強く出るケースが多くみられます。副腎摘出後から疲労感が増し、歩行も困難になりました。3ヶ月しても改善が見られず、副腎疲労を疑い来院されました。血中のACTHとコルチゾールは基準値内でしたが、唾液中コルチゾールが顕著に低下していました。この方も歯にアマルガムがありました。治療は、腸と副腎ケア、デトックスを行い、歯科受診を勧めました。

治療前後の毛髪ミネラル検査の結果です。治療前はミネラルバランスが左に寄っていましたが、治療後は左右のバランスがとれています。この結果は、デトックスで水銀をある程度出してあげると、ミネラル輸送が回復することを示しています。ここまで回復すれば、あとは自然デトックス(サウナや運動など)で水銀を排泄できるようになります。この方は治療に4年かかりましたが、歩行が可能になり、仕事復帰し、通常の生活に戻ることができました。

ミネラル輸送が回復した時のオリゴスキャンと毛髪ミネラル検査を比較すると、アルミやカドミウムは、蓄積量が多く、排出量は少なくなっています。ヒ素の蓄積は標準レベルですが、排泄量はかなり多くなっています。

このように、ミネラル輸送障害がなければ、蓄積量(オリゴスキャン)と排泄量(毛髪ミネラル検査)は反比例する傾向があります。今後の治療方針としては、オリゴスキャンでフェーズ3がNGとなっているため、食事やα-リポ酸などのサプリメントで硫黄を補給します。また、抗酸化力が黄色なので、抗酸化アプローチも行います。フェリチンは17.5で、強い炎症がみられないため、ビタミンCを足す程度で良いと考えています。

毛髪検査の下にあるのは有機酸検査の結果です。有機酸検査では、グルタチオンレベルを確認することができます。58番のピログルタミン酸はグルタチオンが不足すると数値が上がります。この女性の場合は値が低いため、グルタチオンは足りていると判断します。2-ヒドロキシ酪酸は、グルタチオンが作られる経路(硫酸経路)の生成物です。この数値が上がっていれば、体内で解毒が活性化されていることを意味します。

2-9. 自己免疫疾患と水銀デトックス

症例: 51歳女性、線維筋痛症

  • 5年半にわたり、線維筋痛症治療を継続
  • 副腎疲労の症状に当てはまることが多数あり来院
  • 歯科アマルガム多数
  • 時々熱が出る。CRP 0.1 ng/dL
  • フェリチン51.4 mg/mL, AST 20, ALT 17, γ-GTP 11

この女性は、5年半にわたって線維筋痛症の治療を継続しており、副腎疲労の疑いもあって来院されました。歯科アマルガムも多数確認できました。時々微熱が出るということなので、マイコプラズマ検査を行ったところ陽性でした。したがって、副腎ケア、ミノマイシン、デトックスを行いました。

抗生物質が効かない人や効きにくい人には、多くのケースでデトックス治療を行っています。『Overcoming Arthritis』(David Brownstein著)には、リウマチに対してミノマイシンを投与したところ改善がみられたと書かれています。関節リウマチもマイコプラズマ感染が原因であることを示しています。

関節リウマチ患者に対して、48週間にわたる二重盲試験でミノサイクリン200mgを投与した群(109名)は、しない群(110名)に比べて優位に関節の腫張(54%, 39%)、関節の圧痛(56%, 41%)の改善がみられた。

Ann Intern Med. 1995 Jan 15;122(2):147-8.
Minocycline treatment of rheumatoid arthritis
https://doi.org/10.7326/0003-4819-122-2-199501150-00012

この女性のデトックスで注意すべきことが、硫黄に対する過敏反応があるということでした。通常のデトックス治療で使用する、DMSA、モリブデン、グルタチオン、タウリンが使えなかったため、毒物に拮抗するミネラルを多めに摂ってもらい、自然デトックスから始めました。幸いなことに、ミネラル輸送障害は見られず、重金属の排泄は良好でした。

DMSA、モリブデン、グルタチオン、タウリンに過剰反応あり

オリゴスキャンの結果から抗酸化力が低いことがわかったため、ビタミンCを摂取してもらいました。フェーズ3も赤色ですが、硫黄系のサプリメントが使えないため、一旦保留にしています。良くなったり悪くなったりを繰り返していましたが、甲状腺機能を上げると一気に症状が軽快しました。

症例: 38歳男性、慢性疲労

  • 性行為後にインフルエンザ症状が出現
  • その後、尿道炎を繰り返し、抗生剤治療で軽快するも再発。関節炎や皮膚湿疹も出現したため当院を受診
  • 湿疹、関節痛、咽頭痛、口内違和感あり
  • 口腔内アマルガム多数
  • フェリチン 71ng/mL, AST 48, ALT 54, γ-GTP 34

この男性は、性行為後にインフルエンザ症状が出現し、尿道炎を繰り返していました。典型的なマイコプラズマ感染症です。肝機能を示す数値がかなり高い状態でした。

アマルガムが多数あるにも関わらず、水銀レベルが低いため、水銀の排泄障害があると考えられました。DMPSとEDTAのキレーションを行ったところ、多くの有害金属の排出が確認できました。キレーションに効果があると確信し、DMPSとEDTAのキレーション治療を3クール行いました。その結果、ミネラルバランスは概ね整いましたが、アルミニウムの蓄積は持続していました。

この方は、3年目あたりから急に良くなって、今は慢性疲労の症状はほとんど消失しました。ただ、問題は肝機能の数値が上がってしまうことです。肝機能の数値が上がるということは、肝臓の解毒力が低下していることを意味します。オリゴスキャンの結果では、フェーズ3とフェーズ2がNGになっています。化学物質過敏症の症状が出るようになったため、ウルソやミルクシツルを使って肝臓ケアを行っています。

症例: 71歳男性、掌蹠膿疱症

5年間、掌蹠膿疱症の緩解、増悪を繰り返している方です。関節リウマチと掌蹠膿疱症の症状があり、ミネラルバランスも大きく崩れていたため、デトックスを行いました。水銀レベルがかなり高かったのですが、チオラとウラリットによるキレーションを徹底的に行ったところ、ある程度ミネラルバランスが整うようになりました。現在は、関節痛も掌蹠膿疱症もほぼ改善しています。

オリゴスキャンの結果を見ると、有害金属の代謝不良、抗酸化力の低下がみられました。関節リウマチがあったため、CRPがなかなか下がりませんでした。肝臓の数値が少し高いため、グルタチオンやビタミンCを用いて、フェーズ2, 3へのアプローチを集中的に行っています。

3. まとめ

解毒には、フェーズ1(活性化), 2(抱合), 3(輸送)の3つのステップがあります。フェーズ1にはチトクロームP450が関わっており、SNPを調べることにより評価はできますが、治療の介入が難しい部分です。一方、フェーズ2と3は治療による改善が可能です。

解毒の要素オリゴスキャン毛髪ミネラルその他の評価法
フェーズ1
(活性化)
チトクロームP450のSNP
フェーズ2
(抱合)
◯
(抗酸化)
肝機能、フェリチン、有機酸検査
フェーズ3
(輸送)
◯
(硫黄結合)
蓄積量◯
排泄力◯
水銀の影響◯

フェーズ2はオリゴスキャンで確認できます。その他にも、肝機能やフェリチン値、有機酸検査のグルタチオンレベルを調べることで評価できます。フェーズ3は、オリゴスキャンの硫黄結合の項目で評価することができます。毛髪ミネラル検査では、重金属の排泄力と水銀の影響、ミネラル輸送障害の有無を評価することができます。

重症度と重金属の蓄積量は必ずしも相関しません。複数の検査と合わせて総合的に体内を理解する必要性があります。毛髪ミネラル検査、オリゴスキャン、血液検査、これら3つの検査結果を総合的に判断することで、治療方針が立てやすくなるでしょう。

  • 症状の重症度と重金属蓄積量は必ずしも相関しない 
  • 他の検査と合わせて総合的に体内を理解する必要がある 
  • オリゴスキャンは重金属蓄積量に加えて、 デトックスのフェーズ2、3を評価できる 
  • 毛髪ミネラル検査は重金属の排泄力、水銀によるミネラル輸送障害を評価できる
  • オリゴスキャンを読み解く鍵は重金属蓄積量以外にある 

根本原因に対する個別化栄養療法のすすめ

宮澤賢史 · 2021年7月26日 ·

栄養療法を学ぶ目的は人それぞれですが、薬に頼る治療方法に限界を感じてこのサイトにたどり着いた方もたくさんいらっしゃると思います。では、そもそも栄養療法の何が優れているのでしょうか?

この内容を一言で表すと、「根本原因に対する個別化栄養療法」と言えます。様々な検査や病態から個々人の根本原因を見つけ出し、一つ一つに対処していく治療方法です。様々な検査手法が確立し遺伝子解析が進む中、個別化栄養療法は今後ますます重要視されるようになるでしょう。

1. 個別化栄養療法とは何か

1-1. 効かないサプリメントは論外

2019年に国民生活センターが各社のサプリメントを一斉にテストしたところ、4割以上が規定時間内に溶けないことが明らかとなり、メディアで話題になりました。溶けないということは、体内をスルーして便で排出され、全く効果がないということです。実践講座ではサプリメントが効かない理由を探っていきますが、このような粗悪なサプリメントは論外です。本来「効く」はずのサプリメントがなぜ自分の体には「効かない」のか、それを考えるのが本講座の目的です。

1-2. 栄養療法との出会い

私が栄養療法を始めたのは、サプリメント会社が設立したクリニックの院長に就任したことがきっかけでした。当初は血液検査などをもとに、ミトコンドリア機能と低血糖症へのアプローチをメインに行っていました。

例えば、GOT(AST)とGPT(ALT)の関係を紐解くと、ミトコンドリア機能の状態がわかります。

  1. GOT≒GPT: 正常
  2. GOT>GPT(差が2以上): ビタミンB群代謝不足
  3. GOT>40: 心不全、筋肉障害
  4. GOT<GPT: 脂肪肝、ウイルス性肝炎
  5. GOT↑・GPT↑:ビタミンB群消費↑
    ⇨ ②+④の状態の時、一見①に見えることもある
    ⇨ GOT、GPTは↑でも↓でも補給を考える

低血糖の診断には5時間糖負荷試験が用いられます。当時、500人以上の患者さんに糖負荷試験を行いましたが、ほとんどの人が3~5時間で低血糖を起こしていました。この症例はうつ病の患者さんで、30分後に146mg/dLまで上がった後、240分後には52mg/dLまで下がっています。

低血糖症は血糖値の急激な上昇のリバウンドで起こることから、当時の患者さんには糖質制限を勧めました。しかしながら、ことごとく失敗に終わってしまいました。低血糖の陰には副腎疲労が隠れていることが多く、糖質制限によりかえって症状を悪化させてしまっていたのです。

1-3. リオルダンアプローチから学ぶこと

そんな時、研修で訪れたのが米国リオルダンクリニックでした。建物がドームの集合体になっており、ドーム1つ1つが研究所やクリニックになっています。そこで教わったのが、創設者であるヒュー・リオルダン博士が提唱した「リオルダンアプローチ」でした。

リオルダンアプローチ 7つの要素
☑️ Staff/Co-learner Relationships
☑️ Identify The Causes
☑️ Characterize Biochemical Individuality
☑️ Care for the Whole Person
☑️ Food As Medicine
☑️ Cultivate Healthy Reserve
☑️ Healing Power of Nature

1つ目に「Staff/Co-learner Relationships」とあります。リオルダン博士は、「患者」と呼ばずに「Co-learner(共に学ぶ人)」という表現を使っていました。クリニックにはオーガニックレストランやセミナー施設が併設されており、畑で採れたオーガニック野菜を使ったランチを食べながら、ランチョンセミナーも開催できます。スタッフとCo-learnerとの関係性を築くために、様々な工夫が施されていました。

2つ目にある「Identify The Causes」ですが、頭文字を取って病気や病態の原因を次のようにまとめることができます。

  • Infection(感染):ウイルス、細菌、真菌の増殖
  • Digestion(消化):消化不良、胃酸分泌不良、消化酵素分泌不全
  • Emotion(感情):非常に問題で、疾患を悪化させる
  • Nutrients(栄養):栄養不良、吸収不良、代謝的なブロック
  • Toxins(毒):鉛、水銀などの重金属、残留農薬、除草剤など
  • Inflammation(炎症):「○○炎」を引き起こす慢性的な引き金、食習慣
  • Foods(食事):臓器のダメージ、食物依存症を引き起こす
  • You(あなた自身):あなたの決断、思い込み、思考の方向性
  • Thyroid dysfunction(甲状腺機能障害):特に検査でわからない甲状腺機能異常
  • Hypoglycemia(低血糖症):炭水化物、糖質、インスリン、副腎と関わる
  • Endocrine disorders(ホルモン異常):加齢、機能不全を引き起こす
  • Candida overgrowth(カンジダ過剰増殖):過剰な抗生剤、ステロイド、砂糖、ストレス
  • Adrenal Fatigue(副腎疲労):低血糖、病気や人生への負担などが原因
  • Under activity(運動不足):自分の能力を十分に鍛えないこと
  • Stress or spiritual crisis(ストレス、精神的な危機):不必要な活動でいっぱいになってしまうこと
  • Environmental(環境):満たされない、機能しない、むしろ害になっている
  • Structural(構造):心と体の不一致

これはまさに、いま行っている栄養療法そのものです。この学びをもとに、腸内環境や解毒、炎症、甲状腺ホルモンに関する検査を導入しました。また、この時初めて副腎疲労の存在を知り、クリニックに持ち帰って治療に取り入れたところ、とてもいい効果が得られました。そんな経緯で副腎疲労に特化した外来を始めました。

1-4. メチレーションと脳機能

その他に影響を受けたのが、メチレーションの権威であるベン・リンチ博士とウィリアム・ウォルシュ博士との出会いです。2016年にはウィリアム・ウォルシュ博士に来て頂き、メチレーションのセミナーを開催しました。メチレーションは脳機能に影響します。脳機能のアンバランスは個別化分類できて、それに応じた栄養素を投与すればよいということが理解でき、治療に取り入れました。

1-5. 根本原因は共通している

宮澤医院に来院する患者さんは、リウマチや橋本病、うつ病、集中力の低下、慢性疲労など、疾患名は様々です。しかし、治療方法としては、腸、炎症、重金属・カビ毒、副腎疲労・低血糖、ミトコンドリア、脳機能、これら6つの根本原因があるかどうかを確認し、それを順番に対処していくと改善していくのです。

疾患名腸内環境炎症重金属
カビ毒
副腎疲労
低血糖
ミトコンドリア脳機能
リウマチ◯◯◯
慢性疲労◯◯◯
橋本病◯◯
集中力低下◯◯◯◯◯
うつ◯◯

1-6. 根本治療ピラミッド

私の経験をもとに作ったのが根本治療ピラミッドです。個別化栄養療法は、6つの根本原因の有無を確認し、それに応じて治療を進めていきます。このピラミッドが私のひとりよがりなものではないという証拠に、他の統合医療学会も同じような治療方針を掲げています。

例えば、米国の統合医療学会で今1番勢いのある機能性医療学会、Functional Medicineのトップページには、「機能医学は、各個人の病気の根本原因に対処することにより、病気が発生する方法と理由を判断し、健康を回復します」と書かれています。認定医になるためには、基本的なコースの他に、エネルギー(ミトコンドリア)、消化管、ホルモン、解毒などのコースが用意されています。

他にも、統合医療のWebセミナーを開催しているIntegrative Medicine Academyのオンラインプログラムは、副腎、甲状腺、血液化学を含む臨床検査、有機酸検査と代謝評価、栄養とサプリメントなどがカバーされており、解毒、ミトコンドリア機能、重金属、カビ毒などについても学ぶことができます。

また、先日参加した個別化ライフスタイル医療学会では、網膜疾患の根本原因についての発表があり、次のような項目が挙げられていました。

網膜疾患の根本原因
炎症
酸化ストレス
インスリンシグナル経路の調整不全
オートファジーの不活性化
免疫不全
ミトコンドリア機能低下
タンパク質異化亢進
視細胞、網膜組織の壊死、機能障害

免疫不全は、感染、炎症、毒素による免疫の誤作動によるものです。インスリンシグナル経路の調整不全も炎症から来ています。

アルツハイマー病も同じことが言えます。『アルツハイマー病 真実と終焉』(デール・プレデセン著)には、アルツハイマーは単一型の疾患ではなく、大きく3つの型に分類される病気であると書かれています。その3つの型が、炎症、栄養・ホルモン不足、毒素です。

このように、病名や病態は様々でも、根本原因は共通しているのです。もう一つ重要なことは、根本原因は遺伝や環境的影響によって疾患の要因となりやすい箇所にあるということです。

2. 遺伝子情報の重要性

2-1. 栄養療法と遺伝子解析

今後の栄養療法は遺伝子情報を元にしたアプローチが主流になるでしょう。特に、遺伝子解析先進国のアメリカではすごい勢いで研究が進んでいます。私が23andMeで遺伝子検査を受けてから5年以上経っていますが、得られる情報がどんどんアップデートされています。

2-2. 遺伝子解析の課題

万能に見える遺伝子解析にも大きな課題があります。それは、膨大な情報を網羅的に解析して判断する必要があることです。グルタミン→グルタミン酸→GABAの代謝を例に挙げると、グルタミン酸がGABAに代謝されにくい人は、グルタミン酸脱水素酵素(GAD)のSNP(スニップ:DNAの塩基配列における1塩基の違い)を調べれば根本原因を突き止めることができるかもしれません。しかし、GADにはGAD1とGAD2があり、そのSNPは少なくともGAD1で10個、GAD2で12個存在します。22個全てのSNPを網羅的に解析するのはとても複雑な作業です。

アメリカの多くのベンチャー企業が遺伝子解析に参入し、複雑な計算からリスクを算出しサービスとして提供しています。私の23andMeの生データを別のサービスで解析したところ、アルコールとニコチンはD-、つまり酒とタバコに溺れやすいという体質ということがわかりました。他にも様々な因子を解析してくれます。

こうしたサービスはインターネットとの相性がいいので、破竹の勢いで伸びています。まだ完全には「あなたはこういう体質です」と言えるところまで来ていませんが、そう遠くない将来にはより精度の高い解析が可能になるでしょう。

2-3. MTHFRは稀なケース

今お話ししたように、一般的にはSNPは多くの箇所の網羅的な解析が必要ですが、MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元型酵素)は、たった2つの遺伝子変異で酵素活性が決まる極めて稀な酵素です。1箇所にSNPがあると70%、2箇所にSNPがあると20%まで活性が落ちてしまいます。結果がクリアに出るので、MTHFRの遺伝子解析はとてもポピュラーなものになりました。このように、自己評価できる遺伝子のSNP情報は大いに活用できると思います。

2-4. デトックスプロファイル

これはGenovaDiagnostics社のデトックスプロファイルです。デトックスに関連する特定の酵素は、遺伝子の影響を強く受けるため、遺伝子検査がよく使われます。

解毒のフェーズは、フェーズ1(活性化)とフェーズ2(抱合)に分かれています。フェーズ1はCYP(シップ)という酵素が関係しており、CPY1A2にSNPがある場合はカフェインに弱いことを示します。コーヒーを飲むと心臓がドキドキしてしまう人ですね。この検査をすれば、カフェインやタバコ、特定の薬などの影響が全てわかります。

上の結果はグルタチオンの抱合に関わるグルタチオンSトランスフェラーゼのSNPなどを見ています。

3. なぜ薬ではなく栄養が重要なのか

3-1. 遺伝子型から表現型へ

2019年9月のサイエンス誌で、『Genotype to Phenotype(遺伝子型から表現型へ)』というトピックが特集されました。

「表現型」とは見た目や行動特性のことで、遺伝子をもとにタンパク質がどう発現したかによって結果が異なってきます。特に「形態」は遺伝子の影響を強く受けますが、同一の遺伝子型でさえも表現型は微妙に異なります。一卵性双生児はそっくりですが、親が見ればすぐに判別できますよね。また、一卵性双生児の片方が統合失調症になった場合、もう片方が発症する確率は50%しかありません。つまり、遺伝子型が全てではないということです。では、遺伝子型を理想的な表現型にするためにはどうすれば良いのでしょうか。

3-2. 遺伝的弱点は栄養によって補完できる

こうした研究はもう何十年も前から続いており、その間に様々なことがわかってきました。「人は栄養に支配されており、特に重要なのは食事である」ということも明らかになっています。食べ物が表現型の決定に大きな影響を及ぼしているということです。遺伝子発現を制御・伝達するシステムとその学術分野をエピジェネティクスと言います。そして、最大のエピジェネティクス要因は栄養です。だからこそ、薬ではなく個別化栄養療法が重要なのです。

☑️ 人は栄養に支配されている
☑️ 栄養の必要性は遺伝子によって決まる
☑️ 食物は表現型を決める栄養の代表的存在
Vol 365, Issue 6460, 27 September 2019
https://doi.org/10.1126/science.aax3710

例を挙げると、女王蜂と働き蜂は全く同じ遺伝子型を持っていますが、大きさも寿命も異なります。女王蜂はローヤルゼリー食べて寿命が3年。働き蜂は花粉を食べて寿命が1ヶ月です。食べ物で表現型が大きく変わるということをよく表しています。

これも有名な実験です。同じ親から生まれた同一の遺伝子を持つ糖尿病のモデルマウスの実験で、通常の食事を与えると、肥満遺伝子が発現して糖尿病になります。一方、メチル化を促す食事を与えると、メチレーションが働いて遺伝子の発現を抑え、肥満遺伝子が発現しないのです。

引用:A Tale of Two Mice July 2008

これらの研究結果は、遺伝的な弱点は栄養によって補完できるということを示しています。

4. 個別化栄養療法のすすめ

4-1. 検査の使い分け

脳機能に関しては、メチレーションの遺伝子検査がある程度役立ちます。しかし、メチレーション検査が網羅的ではないため、遺伝子検査の結果とその時の脳の状態が必ずしも一致しないケースも多く見られます。

遺伝子の影響が強い箇所は、遺伝子型と根本原因がリンクしやすいので、遺伝子検査で判断しても良いでしょう。そうでない場合、つまり、環境要因が強かったり、多くの遺伝子が影響する場合は、症状や他の検査結果から判断することになります。このように、検査を選択しながら自分の根本原因がどこにあるかを絞って治療を進めてほしいと思います。

4-2. 個別化栄養療法がうまくいっていない方へ

個別化栄養療法がうまくいっていない方は、「Identify The Causes」の色がついているところをもう一度確認してください。

  • Infection(感染):ウイルス、細菌、真菌の増殖
  • Digestion(消化):消化不良、胃酸分泌不良、消化酵素分泌不全
  • Emotion(感情):非常に問題で、疾患を悪化させる
  • Nutrients(栄養):栄養不良、吸収不良、代謝的なブロック
  • Toxins(毒):鉛、水銀などの重金属、残留農薬、除草剤など
  • Inflammation(炎症):「○○炎」を引き起こす慢性的な引き金、食習慣
  • Foods(食事):臓器のダメージ、食物依存症を引き起こす
  • You(あなた自身):あなたの決断、思い込み、思考の方向性
  • Thyroid dysfunction(甲状腺機能障害):特に検査でわからない甲状腺機能異常
  • Hypoglycemia(低血糖症):炭水化物、糖質、インスリン、副腎と関わる
  • Endocrine disorders(ホルモン異常):加齢、機能不全を引き起こす
  • Candida overgrowth(カンジダ過剰増殖):過剰な抗生剤、ステロイド、砂糖、ストレス
  • Adrenal Fatigue(副腎疲労):低血糖、病気や人生への負担などが原因
  • Under activity(運動不足):自分の能力を十分に鍛えないこと
  • Stress or spiritual crisis(ストレス、精神的な危機):不必要な活動でいっぱいになってしまうこと
  • Environmental(環境):満たされない、機能しない、むしろ害になっている
  • Structural(構造):心と体の不一致

私が初めてこのリストを目にした時は、何のことだかさっぱりわからなかったのですが、長年栄養療法に携わり、今はこの意味がよくわかります。心と体の不一致、思い込み、偏った考えや思考性、トラウマ、こうした問題を抱えている人は、それが治療の足かせになっている可能性があります。

4-3. 個別化栄養療法チェック

個別化栄養療法について、どこまで理解が深まっているか確認してみましょう。

Q1. あなたの根本原因は何ですか?
Q2. 腸内環境をどうやって判断していますか?
Q3. 重金属や毒素は溜まっていますか?
Q4. 体内の隠れた炎症が起きそうな場所をチェックしていますか?
Q5. 足りない栄養素は?
Q6. メチレーション状態は?
Q7. 副腎、甲状腺、その他のホルモンバランスは正常ですか?
(答えられれば1点、答えられなければ0点)

6-7点:適切な検査と問診を組み合わせることで根本原因は見つけられます。
3-6点:把握できていない根本原因をもう一度考えてみてください
2点以下:根拠もなく言われるがままにサプリを摂っていませんか?

4-4. 最低限受けるべき検査

根本原因に対する個別化アプローチのために最低限受けて欲しい検査は、「血液検査」「有機酸検査」「毛髪検査」この3つです。もう一つ付け加えるなら、便中カルプロテクチン検査です。これらの結果から根本原因を割り出すことが可能です。もし症状があれば、耳鼻科受診や歯科受診も検討してみてください。

4-5. 個別化医療市場の展望

メタジェニックス社によれば、世界の個別化医療市場は、2025年には倍近くになると予測されています。特に大きな部分を占めるのは、個別に診断する能力です。様々な検査手法が確立し、遺伝子解析によるリスク計算がより確実なものになれば、個別化栄養療法は今以上に重要視されてメジャーになってくるでしょう。

5. 最後に

臨床分子栄養医学研究会は、根本原因に対する個別化栄養療法を推奨しています。根本原因が見つけられていない人のために、実践講座を開催しています。個別化診療が主流になる新しい時代に向けて、ともに学んでいきましょう。

分子栄養学のロードマップ

宮澤賢史 · 2021年7月15日 ·

ロードマップというのは、実践講座で紹介している分子栄養学の勉強の順番を示した道案内の役割をする地図です。膨大な分子栄養学の世界を一段ずつ確実に上がっていけるために作りました。もうすでに分子栄養学マスターの方は、自分の抜けている場所のチェックリストとして使ってください。

ステップ1:基本的な考え方を身につける

まずは体の仕組みを知ることから始めてください。これを理解しないことには体の不調に対処できないからです。

例えば、エネルギーが生まれる仕組みを知らずに慢性疲労に対処することはできないし、炎症を起こす仕組みと抑える仕組み、両方を知らずして慢性炎症を治すことは難しいでしょう。

ビタミンとミネラルは似ているようで全く異なる性質を持っています。それを知って実際にサプリメントを試すところから始めましょう。

モジュール1 分子栄養学の基本的な考え方

どのような状況で、どのくらいの量のサプリを摂ったら良いか理解していますか?栄養素は摂る量により効果が異なる事を理解してください
必要な栄養の量が人によって異なることを知っていますか?なぜある人にとっての栄養になるものが他の人にとって毒になるのか、その仕組みを知りましょう
なぜ栄養が不足するのか、理解できていますか?根本原因の定義を知り、どのようなものが当てはまるかを考えてみましょう
ある人にとってその栄養素が必要かどうか疾患の場所から推定できますか?栄養素の局在について理解してください

モジュール2 細胞について理解する

人がエネルギーを生み出す仕組みと必要な栄養素を理解していますか?ミトコンドリアの構造とエネルギー産生の仕組みを知りましょう
情報のやり取り、炎症を起こしたり静めたりする機序を知っていますか?細胞膜とそれを構成する栄養素、その代謝を押さえてください
栄養、食事をはじめとした環境で作られるタンパク質が変わってくる仕組みをご存知ですか?体内でタンパク質が作られる仕組みとそれにメチル化が及ぼす影響をマスターしましょう
無駄なタンパク質を作らない方法、ミトコンドリアを若返らせる方法をマスターしていますか?小胞体とミトコンドリアの関係を学び、小胞体ストレスを軽減させる方法を習得してください

モジュール3 ビタミン、ミネラル、アミノ酸の使い方

水溶性ビタミンの性質を踏まえた効果的な摂り方を実践していますか?ビタミンCを効果的な方法で摂ってみましょう
脂溶性ビタミンの使い方をマスターしていますか?ビタミンAを摂ってドライスキンの改善を体験します
ミネラルがどのような効果をもち、どのように人体に貢献するかご存知ですか?マグネシウム・亜鉛の効果的な摂取方法について学び、実際に使ってみましょう
アミノ酸をうまく使う方法をマスターしていますか?グルタミンやBCAAの体内での働きを知り、実際に摂ってみましょう

第21期実践講座の実施概要はこちら

ステップ2:サプリと食事の基本をマスターする

次に目指すのはフードマスターです。

ビタミンやミネラルは三大栄養素の調整を行っていますが、食事の量や質が悪ければ、効果は期待できません。血糖値が乱高下しない食べ方や、脳のパフォーマンスを最大限にあげるための脂質の種類の選び方と調理方法、腸の炎症をとり疲れ知らずになる食事メニューなど、誰もが目指すべき食事内容について学んでください。症例検討会参加までにここまではマスターしておかれると話がスムーズになります。

モジュール4 三大栄養素の代謝をマスターする

食事を摂っていない時に血糖値が保たれる仕組みを理解していますか?解糖系・糖新生について理解しましょう
血糖値が乱高下しない糖質の種類や摂り方を知っていますか?補食の摂り方(タイミング、量、質)について学んでください
体内でタンパク質が作られる機序を理解していますか?タンパク質の作られ方について復習しましょう
体内のタンパク質の種類が頭に入っていますか?(機能性タンパク質と構造タンパク質)特に機能性タンパク質の種類と働きについて一通り押さえてください。
摂るべき油と避けるべき油の区別がつきますか?油の構造式から性質が読み取れるようになりましょう。
コレステロールが体内でどのような働きをしているか知っていますか?コレステロールの生成、コレステロールを原料にして作られるものを押さえます。
中性脂肪とリン脂質の違い、働きを理解していますか?中性脂肪がエネルギーに使われる機序、リン脂質の細胞膜における代謝を学んでください

モジュール5食事療法の基本をマスターする

引き算の栄養学を体験しましたか?カゼイン・グルテン・カフェイン・アルコールフリー生活を2週間やってみましょう
カンジタを減らす食事をマスターしていますか?カンジダ除菌中に摂るべきものと控えるものを知りましょう
グルテンとは何か?どのような影響を体に与えるかご存知ですか?グルテンの性質、交差反応について学びましょう
食物アレルギーと過敏症、不耐症の違いを理解していますか?それぞれの対処法についても理解してください
食事への依存はないですか?食事制限がうまくいかない場合は考えるべきです。

ステップ3:個体差を見極め対処する Personalize

ある人にとっての薬は他の人にとって毒になり得ますが、サプリや食事にも同じことが言えます。ここでは自分にあったサプリや食事を検査データから見分ける方法を学びます。結果を元にして必要なサプリメントと食事を細かく選んでいきます。

まずは足りない栄養素の補給法、そして次に体が受けているダメージをデータから読み取り、その対策をしていきます。血液検査だけでもわかることはたくさんあります。

モジュール6 足りない栄養素を知って補充する

自分に足りない栄養を把握できていますか?栄養素別のアンケートにチェックをして、どんな栄養が足りないのかあたりをつけましょう
自分に足りない栄養を検査したことがありますか?既定の血液検査を受けましょう
検査結果で足りないビタミン・ミネラルをチェックしてくださいVB3,B6,B12,Mg,Zn,Fe,K,Dなどのチェックを行いましょう
糖質代謝は問題なかったですか?低血糖のチェックにはALT,TGが特に有用です。
エネルギー状態はどうでしたか?ミトコンドリアが動いていない場合、代償的に解糖系が亢進します。

モジュール7体のダメージを知って対策する

体に起こっているダメージを把握していますか?活性酸素、炎症、インスリン抵抗性、タンパク異化の状態とその対応
炎症マーカーは上昇していますか?対策としてはCRPだけでなく、フェリチンや血小板、ガンマグロブリンなどもチェックしてください
インスリン抵抗性はありましたか?たとえ痩せていてもインスリン抵抗性は存在します。もれなくチェックしてください。
タンパク異化はどうですか?その程度は?データチェックと体感から読み取り対策しましょう
自律神経の緊張度はどうですか?自覚のない緊張にも注意しましょう。低血糖と合わせて理解してください。

ステップ4:根本原因にアプローチ1 Rootcause

問診と検査結果から自分にどのような根本原因が潜んでいるかを知り、それをどのような順番で対処するか計画を立てて実行します。

ここで重要なのはアプローチの順番です。人がどのように病気になるかを理解することで、アプローチの方法が見えてきます。まずは副腎、神経、ミトコンドリアを同時にケアすることで気分、体調を上げましょう。

モジュール8 病気になる順番、直す順番を理解する

頭の中に自分の治療モデルが描かれていますか?モデルの雛形に沿って自分のを作りましょう
多くの人が病気になる流れを掴んでいますか?全体像を学びましょう(生活習慣、腸内環境、ホルモンバランス、解毒)
多くの人に有効な治療の順番を知っていますか?自分の順番を組み上げましょう

モジュール9 副腎疲労の原因と対策

低血糖症状はないですか?リブレと合わせて低血糖の有無を確認し、あれば補食から始めましょう
自分のストレスを把握していますか?ストレス問診と唾液、血液検査結果、から自分のストレスタイプを決定し、対処法を考えます
睡眠は良好ですか?炎症と低血糖、ストレス状態を確認します
副腎ホルモンは低下していませんか?コルチゾール検査で日内リズムと覚醒反応を確認し、それに応じたサプリケアを始めましょう

モジュール10 神経伝達物質とミトコンドリアケア

気分の落ち込み、不安などの神経症状がありますか?検査と症状からセロトニンレベルを推定し、対策しましょう。(程度により病院受診が必要)
やる気の低下、もしくはイライラが強いなど症状がありますか?検査と症状からドーパミンレベルを推定し、対策しましょう
疲れやすさがありますか?ミトコンドリアの状況を有機酸検査から把握し、それに応じた対策を取りましょう

ステップ5:根本原因にアプローチ2Rootcause

副腎やミトコンドリアケア、抗炎症アプローチを終え、やっと腸内環境をきちんと治療する準備が整いました。いよいよ最終的な根本原因にアプローチしていきます。

感染症や毒素などの重大な根本原因は腸や肝臓などに存在しています。ここでもプロトコールに沿って順番に進めていきます。

モジュール11 腸内環境の改善

自分の腸内環境を知る方法を知っていますか?腸内環境検査をオーダーし、結果を解析しましょう
腸内環境は良好でしたか?結果に応じてサプリと食事内容で対処しましょう
消化不良はありませんか?採血検査と自覚症状から確認の上、サプリケアをしましょう
リーキーガット(腸漏れ)は起きていませんか?リーキーガットの程度に応じてケアを行います
腸にカンジダや悪性菌が増殖していませんか?便検査や有機酸検査で確認し必要に応じて対処しましょう。

モジュール12 解毒、ファスティング

検査で重金属が蓄積していましたか?毛髪検査で体内毒素の排泄力を推測します
問診で体内にカビが蓄積していそうですか?体内のカビ毒蓄積を確認して対処します
検査で毒素が溜まっていそうですか?セルフデトックスをしましょう
一通りデトックスが終わりましたか?デトックス体質に変換していきましょう
ファスティングをしたことがありますか?ファスティングにトライしてみましょう
  • « Go to Previous Page
  • ページ 1
  • Interim pages omitted …
  • ページ 4
  • ページ 5
  • ページ 6
  • ページ 7
  • ページ 8
  • Interim pages omitted …
  • ページ 18
  • Go to Next Page »

臨床分子栄養医学研究会

Copyright © 2026 臨床分子栄養医学研究会

  • プライバシーポリシー
  • 会員規約および会員規定
  • 利用規約
  • 特定商取引法に基づく表記