• Skip to primary navigation
  • Skip to main content

臨床分子栄養医学研究会

あなたのサプリが効かない理由教えます

  • コース一覧
  • もう一本読む?
    • 分子栄養学基礎マスターコース 食事とサプリメント編
    • 分子栄養学の基礎 検査と根本原因
    • 分子栄養学アドバンス・コース
    • まごめじゅんの栄養講座
  • サクセスパス
    • 治療方針を決める
    • 必要な治療と順番を決める
    • 検査を行って確認する
    • 治療の実際
  • ごあいさつ
  • 受講者の声
    • 医療関係者
    • 一般の方
  • クリニック紹介
    • 分子栄養学の検査・治療を受けられるクリニック
    • 指導認定医・認定医一覧
    • 認定指導カウンセラー
    • 認定カウンセラー
    • PNTトレーナー
  • 会員サイト
    • 総合案内
    • 研究会会員サイト
    • 第24期会員サイト
  • Show Search
Hide Search
現在の場所:ホーム / アーカイブ個人差と根本原因

個人差と根本原因

生活習慣と睡眠

宮澤賢史 · 2023年4月23日 ·

「精神」、「感情」、「肉体」のどの動き一つとっても、睡眠の質に影響されないものはありません。

しかし、めまぐるしいスピードで動く世の中となったいま、慢性的な睡眠不足に陥って睡眠の質が低下するという悪影響に苛まれている人が多くいます。睡眠不足は先進国に共通する問題となっています。

十分な睡眠を取らずにいると、何をするのも遅くなり、想像力は衰えストレス増大し、仕事のパフォーマンスが下がります。要するに自分の能力のごく一部しか使えなくなります。

また、睡眠不足は、知らないうちに脳と体へのダメージを与える危険因子を蓄積させ、その先には免疫の衰えや糖尿病、がん、肥満、うつ、物忘れの増加など様々な不利益をもたらします。

それゆえに、身体が必要とする睡眠がとれない元凶に目を向けることが必要となります。睡眠の質を上げるために今夜から何ができて慢性的な睡眠不足に陥らないようにするために何ができるかをご紹介していきます。

睡眠は人生のすべてを左右する

睡眠が脳と体を作り変える

私たちの体内では、目覚めているときに異化作用(外から摂取した物体を体内で分解する過程)が起こり、眠っているときに同化作用(外から摂取した物質を合成する過程)が起こります。

睡眠時は同化作用が活発になるといわれ、免疫力、骨、筋肉の成長や再生が促進されます。つまり、眠ることで身体が再生され、若さが保てるということです。

良質な睡眠を取ると、免疫系が強化され、ホルモンバランスが安定し、新陳代謝が促進されます。体のエネルギーが増加し、脳の働きも改善されます。 

運動の効果を引き出すには睡眠が必要

運動には驚くべき力があり、一番健康な状態でいたいなら、運動は必要不可欠です。

ただ、運動による様々なメリットがもたらされるのは、それを受け入れる準備が整っている(必要な睡眠を取っている)身体だけです。

運動後、眠っている間に体のためになるホルモンが大量に分泌され、以前よりも強い体にするための修復プログラムが発動し、身体を回復させることでトレーニングの効果を身体に吸収させることができます。

睡眠不足がミスを生む科学的な理由

睡眠不足になると、脳に送られるグルコースの量が低下してしまいます。

脳内でのグルコース減少量は均等ではなく、減少量が大きい部位が前頭前皮質と頭頂葉で実質12~14%失われてしまいます。それらの部位は衝動を抑制したり、複数の考えを区別したりするときに必要となる領域です。

 睡眠不足で脳がエネルギー不足になり、脳機能低下し、ちゃんと頭が働いていれば絶対しなかったようなまずい判断をしてしまったり、理性と欲望のせめぎ合いで欲望に負けてしまったりもします。

睡眠は学習の質に影響を与える

睡眠を取ると脳がリフレッシュされ、新しいことを学習する準備ができます。

また、学習してから眠ることで新しい記憶が脳に定着します。

必要な情報を保管するだけでなく、いらない情報を捨てる役割もあります。それにより、脳が必要な情報を探すときに余分なエネルギーを使わずに済みます。

睡眠を削れば作業する時間は増えますが、作業の質や効率性は損なわれてしまいます。

睡眠は脳をきれいにする

脳は多くの働きをする結果、大量の老廃物を産生します。老廃物を除去することで新たな成長や発達の余地が生まれるため、脳が機能するうえで老廃物除去は欠かせません。

脳の老廃物除去システムは、昼もそれなりに働いていますが、活性の本番は睡眠中です。眠っている間、そのシステムは目覚めているときの10倍以上も活発になります。しかも、眠っている間は脳細胞が約60%まで縮小しニューロンの間の隙間が広がり老廃物を流す脳脊髄液が流れやすくなり、老廃物除去率は更に高まります。

睡眠不足になると瞬く間にアミロイドβや他のアルツハイマーに関係する毒素が蓄積します。寝ないことは、軽度の脳の損傷になり、睡眠は脳の掃除になるということです。

若い頃から慢性的に睡眠不足の人はアルツハイマー病リスクが高くなります。

脳細胞から老廃物が排泄される過程が私たちの良質な睡眠がかかせないことと深くかかわっています。

睡眠不足と感情コントロール

怒りや不安などの感性を生む扁桃体の反応が睡眠不足によって増幅し感情が暴走しやすくなります。

また、睡眠不足の人が報酬への期待や快楽を経験すると、ドーパミン分泌に関与する線条体が過活動になります。

睡眠を十分にとった人は、感情のアクセル作用のある扁桃体と、ブレーキ作用のある前頭前皮質の連携のバランスがよく、感情をコントロールしています。

一晩ぐっすり眠ると感情のブレーキを司る前頭前皮質と扁桃体のつながりが強化されて感情コントロールしやすくなります。

一晩起きているタイプの睡眠不足でも短い時間が何日か続くタイプの睡眠不足でも、脳の感情抑制機能は同じように影響受けます。

十分寝ることで理性を確保しないと、感情が暴走してしまいます。

睡眠不足と依存症

睡眠不足は各種の依存治療で失敗の原因ともなります。

アルコールやドラッグを求める気持ちを抑えられず、理性を司る前頭前皮質のコントロールが効かないからです。

睡眠不足と心血管疾患

睡眠不足によって血圧が上がると、血管そのものもダメージを受けます。特に大きく損傷するのが心臓に血液を送り込む冠状動脈です。睡眠不足によって冠状動脈が詰まると、心臓に十分な血液がいきわたらなくなり、冠状動脈性心臓発作のリスクが飛躍的に高まります。

睡眠不足が交感神経を過活動にさせます。身体は「戦うか逃げるか」モードに入りっぱなしになります。

それにより、まず心拍数の加速ブレーキ機能が低下します。また、慢性的にコルチゾール分泌過多になります。

すると、血管に送り出される血液量増加し、血管収縮し、成長ホルモンの分泌が低下して傷ついた血管内壁補修できず内壁がだんだん剥がれていき、血管そのものが弱くなってしまいます。そこに睡眠不足による高血圧が血管を攻撃します。

睡眠不足と生殖機能

睡眠時間が少なかったり睡眠の質が悪すぎる男性は、十分な睡眠を取っている男性と比べると、精子の量が少ない上精子自体の質も悪くなっています。またテストステロンの量も減少しています。テストステロンの少ない男性は一日を通して倦怠感が抜けません。また、テストステロンと脳の集中力の間には大きな関係があるので、仕事中も目の前の作業に集中することができません。また、テストステロンには骨密度を保ち、筋肉の量も増やす働きがあるので、すべての年代の男性にとって睡眠がいかに大切かよくわかります。

睡眠不足で生殖機能が脅かされるのは男性だけでなく女性も同じです。

日常的に睡眠時間が6時間以下の人は、卵胞刺激ホルモンの量が20%減少してしまい受精にも影響を与えます。

睡眠は男女の生殖機能にとって欠かせません。生殖に必要なホルモン、臓器、それに外見的な魅力までも睡眠に大きな影響をうけます。

睡眠不足が食欲を増し、代謝低下させる

睡眠不足でインスリン抵抗性が増加してしまいます。

そして食欲に関与するホルモンのレプチン(食欲抑制作用)が低下し、グレリン(食欲亢進)が増加、神経伝達物質のエンドカンナビノイド(食欲亢進で間食渇望)が増加して、空腹感がコントロールできなくなってしまいます。

さらに睡眠不足のため活力がなくなり、活動量低下して肥満につながってしまいます。

睡眠はダイエットの強い味方

十分な睡眠は脳内の衝動コントロール(衝動を司る扁桃体と理性を司る前頭前皮質の連携バランス)を回復させ、更に食欲に影響するホルモンや、神経伝達物質バランス整い、異常な食欲にブレーキを掛けやすくなります。

眠りとは何か

人は眠りに落ちてから目覚めるまで、ずっと同じように眠っているわけではありません。

眠りにはレム睡眠(脳は起きているが、身体は眠っている)とノンレム睡眠(脳も体も眠っている)の2種類があり、それを繰り返しながら眠っています。

寝付いたあと、すぐに訪れるのはノンレム睡眠です。

とりわけ最初の90分間のノンレム睡眠は睡眠全体の中で最も深い眠りです。

レム睡眠は入眠後およそ90分後に訪れるのがレム睡眠です。ノンレム睡眠とレム睡眠を明け方くらいまでに4、5回繰り返し現れ、明け方になるとレム睡眠の出現時間が長くなります。

睡眠メンテナンスで意識したいのが、最初のノンレム睡眠をいかに深くするかということです。ここで深く眠れれば、その後の睡眠リズムも整い、自律神経やホルモンの働きも良くなり、翌日のパフォーマンスも上がります。

睡眠ホルモンを自ら作り出す

太陽光が睡眠の質を決める

夜ぐっすり眠るための行動は、朝目覚めた瞬間に始まります。

私たちの体には24時間周期の体内時計があります。24時間周期で訪れる睡眠サイクルは日中に浴びる太陽光の量に左右されます。

24時間体内時計の管理は視床下部にある視交叉上核でされています。この時計が概日リズムとコミュニケーションを取りながら、脳のすべての部位と、体内のすべての臓器に信号を出して、決まった時間に決まったホルモンが分泌されるようになっています。このリズムによって、目を覚ましている時間と眠る時間が決まっています。

この体内時計に大きく影響するのが太陽光です。

朝の光は、視床下部や光に反応する臓器や腺に「起きなさい」という警告を送る役割を果たします。

太陽光には、日中に分泌されるべきホルモンや、体内時計を調節する神経伝達物質の生成を促す力があります。太陽光が引き金となって、身体にとって最適な量の生成が始まります。

体内時計の調節にセロトニンは欠かせません。

セロトニンの生成が夜に熟睡する準備を整えることになるためです。

セロトニン生成は何を食べ、どの程度身体を動かし、自然光をどのくらい浴びるかでその生産量が変わってきます。

私たちの目には脳の中心に情報を送る特別な光受容体があり、その働きが引き金となってセロトニンが生成されます。

人間の皮膚にはセロトニンを生成し、それをメラトニンに変える力があります。

これも太陽光の影響を強く受けます。

熟睡に不可欠なメラトニン

熟睡の一番の立役者はメラトニンです。

視交叉上核は「メラトニン」を使って夜と昼の情報を脳と身体に送り続けています。

メラトニンの生成と分泌は光を浴びた量に大きく左右されます。適切な時間に適切な光を浴びなかったら、そのメカニズムは台無しになりかねません。

太陽が発する光のスペクトルは、メラトニンを生成するサイクル調節に役立ちます。

つまり、日中に太陽光を浴びる量を増やし、夜に浴びる光を減らせば熟睡に役立つということです。

日が沈んであたりが暗くなると、視交叉上核は「メラトニンを分泌せよ」という指令を出します。

すると、脳の奥深くにある松果体という部位から血中にメラトニンが分泌されます。

メラトニンは、脳と身体に向かって「暗くなった」という情報を送ることにより、眠りにつく「タイミング」をコントロールしています。ただし、メラトニンは眠りそのものを生み出しているわけではありません。実際に睡眠を発生させる脳の部位をスタートラインに誘導することです。

睡眠が始まると体内のメラトニンは、夜から朝にかけてゆっくり減っていきます。太陽の光が目を通して脳に入ってくると(瞼を閉じていても光を感知できる)松果体にブレーキが掛けられてメラトニン分泌が止まります。血中にメラトニンがなくなると、脳と身体は「睡眠時間終了」というメッセージを受け取ります。

この体内時計と化学物質のバランスによって日中は覚醒し、夜になると眠くなるというリズムが出来上がっています。そして睡眠の質も一部はこのバランスによって決まっています。

睡眠と覚醒

眠りをコントロールする要素は大きく分けて2つあります。

一つは視交叉上核が司る24時間単位の概日リズムで、二つ目はアデノシンから送られる睡眠圧です。

目覚めているあいだ中、脳細胞は活発に動いています。その結果「アデノシン(抑制の働きを持つ)」という副産物が生まれます。脳内にアデノシンが増えると眠りたいという欲求が高まります。この現象が「睡眠圧」です。アデノシンの量がピークに達すると、眠くて眠くてたまらないという状態になります。たいていの人は12~16時間起きているとこの状態になります。

概日リズムの覚醒力活動の低下と大量のアデノシンの組み合わせにより、強い眠気が引き起こされます。睡眠中の脳内では、その日に蓄積されたアデノシンを取り除く作業が行われています。大人の場合、8時間ほどぐっすり眠れば、脳内のアデノシンは一掃されます。

概日リズムは目が覚める数時間前から概日リズムの活動が上昇し、活動が上昇すると脳と身体に目覚めを促す信号が送られます。そして健康な大人の場合、ほとんどの人が午後の早い時間に概日リズムのピークを迎えます。

朝になり、アデノシンがなくなって、代わりに概日リズムの覚醒力が増してくると、自然と目が覚めるようになっています。

概日リズムは実際に眠っているか起きているかに関係なく、独自の24時間リズムで動いています。脳内のアデノシンがどんな状態になっていようとも、決まった時間に睡眠を促し、決まった時間に覚醒を促します。

眠りを妨げるもの

何が睡眠パターンや熟睡する能力を私たちから奪っているのでしょうか。

夜は明るい人工光に晒され、朝は早くから仕事や学校に行かなければならない、自然の温度変化も感じられない環境で暮らしカフェインやアルコールの攻撃も受けています。自然な眠りとは相容れない環境でぐっすり眠れないのも当たり前です。

通勤・通勤時間が長いこと、そしてテレビやインターネットのせいで就寝が先延ばしされていること。まずこの2つのせいで睡眠時間は朝と夜の両方が削られます。それは大人も子どもも同じです。

現代の明かりの深い闇

夜の人工光はたとえ弱い光であっても視交叉上核に「今は昼だ」と信じ込ませることができます。メラトニン分泌は日の入りとともに増加してくるはずですが、人工光が存在する限り、その分泌が抑制され遅れてしまいます。人工光に脳がだまされ、就寝時間となってもまだ昼だと思い込んでいます。

目の中にあって光を感知し、視交叉上核に「今は昼だ」と伝える光受容器は、青い光の中にある短い波長をもっとも敏感に感じ取ります。

この光を強く発するものは、多くの人が何時間も見つめているパソコン、スマートフォン、タブレットなどです。

これらを寝る前に2時間使うと、メラトニン分泌が20%以上抑えられ、分泌の時間も遅くなるといわれます。

アルコール

アルコールは睡眠を断片的にしまい、夜中に何度も目が覚め、寝ても疲れがとれません。

そして、もっとも強力なレム睡眠抑制因子の一つとなります。

カフェイン

カフェインは神経に強い影響を与える刺激物です。

カフェインにより神経が刺激されれば、上質な睡眠はとても得られません。

とはいえ、コーヒーや紅茶、チョコレートなどカフェインが含まれているものは全般的においしい上、人体と親和性が高く身も心も状況が上向きになるため日常的に摂取されています。

カフェインとアデノシンは構造が類似しているため、カフェインがあると、アデノシンの受容体と結合してしまいます。

すると、アデノシンから出る睡眠信号を遮断し、眠気を覚ますことができます。

カフェインの影響は神経系だけでなく、内分泌系にも及びます。副腎に刺激を与え、睡眠を阻害するアドレナリンやコルチゾール分泌促進してしまいます。

体内のカフェインは飲んでからおよそ30分後にピークを迎えます。しかし、カフェインの半減期は平均して5~7時間になります。たった半分体にカフェインが残っている状態とはいえ、カフェインはかなり強力であり、もう半分を分解するという大変な作業もまだ残っています。脳は夜通しカフェインの影響と闘うことになるので、その状態で熟睡はできません。

カフェインの刺激は時間の経過とともに消えていきます。カフェインの分解は、肝臓から分泌される酵素によって行われます。この酵素による分解速度は、人によって異なり、大部分は遺伝で決まっています。特に分解の早い人は、夕食時にエスプレッソを飲んでも午前0時ごろにぐっすり眠ることができます。しかし多くの人はそんなことはできません。体内から完全にカフェインが消えるまでかなり時間がかかるためカフェインの覚醒の影響を受けやすくなります。

カフェインはその効果が切れたことでエネルギーレベルがガクッと低下し、集中力が切れ、頭がうまく働かなくなり、強烈な眠気が襲ってきます。

カフェインが体内にある間は、眠気を誘うアデノシンはカフェインによってブロックされていますが、それでも量は増え続けています。

しかし、カフェインの分解が終わり、受容体のブロックが解除されると、アデノシンの影響が一気に襲ってきます。コーヒーを飲む2~3時間前に感じていた眠気に加え、その間に増えたアデノシンによる眠気も感じることになります。これをカフェインクラッシュといいます。このアデノシンの猛攻に対抗するために、さらにカフェインを摂取するようになり、カフェイン依存を招いてしまいます。

深部体温の低下を阻害する環境

身の回りの温度は寝つきの良さにも、眠りの質にも影響を与えます。部屋の室温、寝るときに着ているもの、布団が温度を決めています。

深部体温の低下が睡眠には欠かせません。入眠前に皮膚温度(手足)が上がって、熱放散し、深部体温が下がるとすると視交叉上核はメラトニン分泌を始めます。

夜に体温が通常より高くなると、強い覚醒状態となり、身体が体内の温度調節器をリセットしようとしてなかなか寝付けません。

メラトニン分泌を促す情報は日が暮れて暗くなることだけでなく、深部体温が下がることも必要です。

工業化された社会に暮らす私たちは自然の気温の変化とは切り離された生活を送っています。夜になっても室温が下がらないので視床下部はメラトニンを放出するタイミングを掴めません。それに体も衣類や室温で常に暖かい状態に保たれているので放熱がうまくいかず、深部体温が下がりにくくなっています。

★夜遅い運動は睡眠のためにはならない

夜遅くに運動すると、深部体温が大幅に上昇するという問題があります。しかも運動によって代謝が上がっているのでますます体温は下がりにくくなります。寝る間際に運動して深部体温をあげてしまうと最高の睡眠を得ることはできません。

寝室の電気を消す2~3時間前には運動を終わらせるようにしましょう。

そのころには運動によって分泌されているコルチゾールは下がり、副交感神経が体内の舵を握っているので、深部体温は眠いと感じるぐらいまで下がっています。

また、負荷がかかりすぎる運動はコルチゾールがなかなか下がらず、交感神経の興奮も収まらず、覚醒作用が続くので、睡眠を阻害しないために適度な量と強度の運動にしましょう。

★悩みや心配事、落ち込みや不安などの精神的要因が間接的に深部体温をあげる

体内の温度調節器は視床下部にあります。それを正常に動かすためには脳の働きをサポートすることが重要です。

視床下部には様々な反応系列がある中でHPA軸(視床下部―下垂体―副腎)と呼ばれるストレスに一番反応する系列があります。

それゆえ、ストレスが交感神経系を過活動にし、脳を緊張状態にして覚醒するとともに、代謝率をあげ、深部体温を上げてしまいます。ストレス社会の今、ストレス対策も絶対に必要となります。

良質な睡眠を求めるなら、精神や感情を落ち着かせて自分自身がクールになることも必要です。

サプリはライフスタイルを見直した後に

ぐっすり眠りたくて薬やサプリに頼ろうとする人は多いですが、それには注意が必要です。サプリより先によく眠れない原因となっている生活習慣に対処するほうが先に来ないといけません。

薬やサプリに飛びついても症状が治まっただけで、長い目で見れば体に良くない何かに依存する可能性が高まります。

まずは自身のライフスタイルを改善し、それでもやはり必要だと感じたら睡眠を助けてくれる天然素材のサプリやハーブを取り入れると良いでしょう。

健やかな眠りのための12か条

1.いつも同じ時間に寝て同じ時間に起きる

人間は習慣の生き物。睡眠パターンがころころ変わると適応するのに苦労します。週末に寝だめしても平日の睡眠不足の埋め合わせにはなりません。

2.夜寝る前に運動してはいけない

運動は確かに健康に良いですが、あまり遅い時間にしてはいけません。最低でも30分の運動を定期的に行うことを推奨しますが、寝る2~3時間前までに終わらせるように。

3.カフェインとニコチンを摂取しない

カフェインの効果が完全に抜けるまで8時間かかることもあります。

*睡眠のためにはカフェインの摂取は控えたほうが良いのですが、どうしてもカフェイン飲料や食品がとりたい場合は、午後2時までを門限としましょう。カフェインに敏感な人はもっと早い時間を門限とするとよいでしょう。

ニコチンも刺激剤であり、喫煙者は眠りが浅いことが多いようです。

それにニコチンの禁断症状のために朝早く目が覚めてしまいます。

4.寝る前にアルコールを摂取しない。

あまり飲みすぎるとレム睡眠が失われ、眠りも浅くなります。また中途覚醒も多くなります。

5.可能なら睡眠を妨げるような薬を飲まない

心臓病、高血圧、ぜんそくの一般的な処方薬、市販の咳止めの漢方薬、風邪薬、アレルギー薬などには睡眠を妨げる成分が入っていることもあります。もし、不眠に悩んでいるなら、医師か薬剤師に相談してみましょう。

6.夜遅い時間に大量の飲食をしない

軽食なら構いませんが、夜遅くに食べ過ぎると消化不良を起こし、それが睡眠の妨げになります。また、寝る前に水分を取りすぎると夜中に何度も起きてトイレに行くことになります。

7.午後3時を過ぎたら昼寝をしない

昼寝は失われた睡眠を取り戻すいい方法ですが、午後の遅い時間に寝てしまうと夜に眠れなくなります。

8.寝る前にリラックスする

寝る直前までスケジュールを詰め込みすぎないように。

本を読む、音楽を聴くなどリラックスできる寝る前の習慣を作りましょう。

呼吸を深めることで副交感神経のスイッチを入れることができます。深呼吸には体の感覚を瞬時に変える力があります。この呼吸が身につけば副交感スイッチを自分の意志で切り替えられるようになるばかりか自分の思念を制御する力も高まります。

9.寝る前にお風呂につかる

お風呂から出たときに深部体温が下がり、自然な眠気が訪れる助けになります。それにお風呂につかること自体にリラックス効果があります。

10.寝室を暗くする、寝室を涼しくする、寝室にデジタル機器を持ち込まない

睡眠の妨げになるもの、音、明るい光、寝心地の悪い寝具、暖かすぎる室温などは寝室から一掃しましょう。

デジタル機器も睡眠の邪魔になります。

・就寝90分前にはブルーライトを遮断

 身体が必要としている深い睡眠を取るには少なくとも寝る90分前にはありとあらゆる画面の電源を切る必要があります。

・スマホの代わりになる楽しいことを見つける

 誰かと会話したり、本を読んだりするなど。

・自動通知機能をoffにする

 電子機器を取りたくなる合図をなくしましょう。設定を変えて自動通知を受け取らないようにしましょう。

・ツールの力を借りる

ブルーライトを遮断するツールやグッズを活用しましょう。

ブルーライトを抑えてくれる眼鏡や時間帯に応じて画面から出る有害なブルーライトを抑えてくれるソフトなど使うのもお勧めです。

11.日中に太陽の光を浴びる

太陽の光は体内時計を整えるカギとなる要素です。

毎日最低でも30分は外に出て日光を浴びるように。可能であれば、太陽の光で目覚めるようにしましょう。

12.眠れないままずっと布団の中にいない

20分以上寝付けなかったら、または寝付けなくてイライラしてきたら、布団から出て眠くなるまで何かリラックスできる活動をしましょう。眠れないという不安のせいでますます眠れなくなるためです。

まとめ

自分に必要な睡眠をしっかりとると、ホルモン機能が高まり、筋肉、細胞組織臓器を修復し、病気から身体を守り、思考を最高の状態で働かせることができ、これまで以上に能力を発揮しやすくなります。

睡眠が人生の成功への近道の手助けにもなるので、良い睡眠のための生活を習慣化するようにしましょう。

参考資料

最高の脳と身体を作る睡眠の技術 ショーン・スティーブンソン

睡眠こそ最強の解決策である マシュー・ウォーカー

スタンフォード式 最高の睡眠 西野精治

生活習慣と女性ホルモンバランス

宮澤賢史 · 2023年4月23日 ·

女性が健康的なライフスタイルを維持するために重要な女性ホルモン。

女性ホルモンには、排卵や月経のコントロール、妊娠・出産のサポートのほか、女性の美しさと健康を守るための様々な働きがあり、一定の周期でそれぞれの分泌量を調整しながら、女性の心と体を健康な状態に保っています。

しかし、女性ホルモンがアンバランスになると、PMSや生理痛、片頭痛、性欲低下、不妊、更年期症状などが強く出てくるようになります。

ホルモンがアンバランスになる原因の大本は、貧弱な食事、ストレス、運動、睡眠などの生活習慣や内部かく乱物質暴露などの影響です。

原因の大本になっていることを改善していくとホルモンバランスも整ってきて、症状も軽快していくことが多いようです。

もちろん、それだけでは上手くいかない場合もあり、その場合は医療機関の力を借りる必要がありますが、それでも、生活習慣の改善もプラスして取り組む必要があります。

今回は、ホルモンバランスを整えるため、自身でできる健康的な生活習慣とからだづくりについてご紹介します。

女性ホルモンの働き

女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があります。エストロゲンは妊娠の準備、女性らしいカラダづくり、プロゲステロンは妊娠の維持、体温を上昇させる、過剰なエストロゲンの働きを抑えるといったような働きがあります。

ホルモンバランスとは

思春期から閉経までの間、エストロゲンとプロゲステロンの2つのホルモンが正常に働くと、女性の身体を妊娠可能な環境にし、一定の周期で月経が起こります。月経後にエストロゲンが増加し、ピークを迎えるとそれをきっかけに排卵が起こります。

一方、プロゲステロンは排卵後から月経前まで増えていき、妊娠に備えて受精卵が着床しやすい状態に子宮内膜を整えたりしています。そして、月経前には両ホルモンが減少していきます。

この周期はおよそ28日間で繰り返されますが、これらのホルモンの分泌量バランスが女性の心と身体の変化に影響します。

妊娠があった場合はプロゲステロン量が増え、子宮内膜は排泄されず、受精卵を維持します。妊娠期間が進行するとプロゲステロンの生産現場は胎盤に移行し生産量増加します。

ホルモンの量の増減

エストロゲンとプロゲステロンの量の増減が毎月の月経周期を形成しています。

また、それら以外にも性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)なども女性ならではの体の働きと深い関わりを持つホルモンがいくつかあります。

女性ホルモンは、脳からの指令によって卵巣から分泌されます。

女性の体は、脳(視床下部と下垂体)と卵巣、子宮がうまく協調して働くことにより正常な月経周期が成立します。

まず、脳の視床下部はホルモンの司令塔として性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を分泌し、その刺激で脳下垂体から、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が分泌されます。それらのホルモンに刺激されて、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが分泌される仕組みになっています。

卵巣にある卵胞はFSHの刺激によりエストロゲンを分泌し、卵胞の成熟や子宮内膜の細胞の増殖を促します。卵胞が成熟しエストロゲンのレベルがピークを迎えると、下垂体から排卵を促すホルモンLHが急激に分泌されます。排卵を促すために放出されるLHは、排卵前に急激に上昇してすぐに下がることからこの現象をLHサージと呼びます。

LHサージに反応して成長した卵胞が破れ、中から卵子が排出されます。これが排卵です。

卵子が出ていくと、排卵後の卵胞は黄体に変化して、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌します。プロゲステロンはエストロゲンによって厚くなった子宮内膜に作用し、さらに受精卵が着床しやすいように妊娠の準備を整えます。

卵巣にはこれら女性ホルモンの分泌量を脳にフィードバックする働きがあります。脳は女性ホルモンが多いときは分泌量を控え、少ないときは多く分泌させるなど、必要に応じて視床下部に指令を出させます。

妊娠しなかった場合は黄体が消え、エストロゲンとプロゲステロンの生成は低下し、子宮内膜を体外に排出する引き金になります。

血液中のエストロゲンとプロゲステロンのレベルは代謝されたり、肝臓(胆汁)や尿を通じて体外に排出されることによって低下します。

女性ホルモンの乱れる原因

1)ストレス

ホルモンバランスが乱れるのは、ストレスが最も大きな原因と考えられています。2つの女性ホルモンの分泌を指令するのが脳の視床下部です。ここからホルモン分泌を促す指令が正しいタイミングで出される必要があります。

この司令塔である視床下部はストレスの影響を受けやすいといわれています。

視床下部がストレスの影響を受けて混乱すると、女性ホルモンのバランスが崩れてきます。

脳はホルモンレベルと管理する一番大切なスイッチです。

その調節をするのは視床下部と下垂体

①ストレス②環境化学物質の両方が脳を混乱させる

 ⇩

ホルモンレベルに影響

性腺が頭脳からのメッセージ受け取ってない

⇩

ホルモンバランス崩れる

性ホルモンのバランスは、副腎の健全さと複雑に結びついています。

なぜなら、ストレスで副腎が疲労することで性ホルモン産生低下、性ホルモンのアンバランスに影響するためです。

多くの女性が仕事、子育て、妻などといった多くの役割を掛け持つ必要性に迫られ、過剰なストレス晒されています。すると、「生存確保」のためにプロゲステロンを使って、副腎ホルモンが最優先で作られ、他のあらゆるホルモンを作る材料としてプロゲステロンは足りなくなり、エストロゲンとのバランスもとれなくなってしまいます。

エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモン産生のメインは卵巣で、若い時期には副腎で補助的にそれ等を作りますが、更年期になり閉経に向けて卵巣の働きが低下してくると副腎メインでそれらを作るようになります。

副腎が疲弊していると、女性ホルモンを作る役割が果たせなくなり、ただでさえ減少している女性ホルモンが余計に減少してしまいます。

ストレスによるコルチゾール分泌異常がで甲状腺機能に影響し、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)上昇させ、それに連動して母乳産生に関与するプロラクチンレベルを上げ、間接的にプロゲステロン産生を減少させてしまいます。

つまり、ストレスが副腎、甲状腺に影響し、更にそれらが、性ホルモン分泌システムに干渉して性ホルモンの分泌バランスを崩し、エストロゲン優勢の状態を招いてしまうということです。

2)質の悪い食事

①カロリー過剰

脂肪細胞増加でエストロゲン産生増加します。

②アルコール過剰

余分なエストロゲンの処理をしてくれる肝臓の機能能低下を起こすようなアルコール過剰などがあると、それができなくなるため、エストロゲン優勢になる可能性が高まります。

③悪い脂肪摂取割合過剰

 プロスタグランディンの生産は、私たちが食べる脂肪や油で決まります。そのため、プロスタグランディンのバランスの良いままを保ってくれる脂肪を食べることが大切です。

赤肉をたくさん食べると増える、プロスタグランディンE2は乳細胞のステロイドをエストロゲンに変換するアロマターゼ酵素の活性を増やしてしまいます。

オメガ6系脂肪酸を含むコーン油やサフラワー油は炎症促進プロスタグランディン増やし、活性酸素でDNAが傷つく量を増やしてしまいます。また細胞増殖や遊離エストロゲン量も同時に増やします。

逆にオメガ3系脂肪酸は、抗炎症として働き、細胞の増殖を抑制させます。

キャノーラ油もオリーブオイルのような一価不飽和脂肪酸で安定した油ですが、高度に精製されてしまっているので、トランス脂肪酸を含んでいます。使うにしても時々にするのが無難です。

3)植物性食品の不足

植物性食品には、エストロゲン作用を緩和してくれる植物エストロゲンや、エストロゲン排泄を促進してくれる食物繊維が含まれています。

逆をいえば、植物性食品が不足すると、エストロゲン優勢リスク増加させます。

4)環境エストロゲンへの暴露

現代では石油化学製品が広く使われているため、人間のエストロゲンより毒性の強い環境エストロゲンや合成エストロゲンなどの体外ホルモンが身の回りにあふれています。

これらは、エストロゲン的な影響持ち、エストロゲン過剰症状作り出します。人間の体で分解しにくいため、エストロゲンの悪い作用が強く出てしまいます。そのため、完全に使用を避けるのは不可能ですが、できるだけ暴露量を少なくすることが大切です。

エストロゲン優勢原因のプロゲステロン欠乏

エストロゲンとのバランスをとるためにプロゲステロンは重要ですが、なぜ、不足してくるのでしょうか?

多くのプロゲステロンは排卵時にできる黄体で作られます。排卵がなければプロゲステロンは低下します。プロゲステロン欠乏になると、体はエストロゲン優勢になります。

更年期以降も女性は少量のエストロゲン作りますが、プロゲステロンはほとんど全く作りません。このため、更年期に起きるプロゲステロンレベルの低下は、エストロゲンレベルの下がり方に比べはるかに大きくなります。そのため、ホルモンバランスはエストロゲン優勢に傾きます。

プロゲステロン欠乏原因の無排卵月経はなぜ起こる?

無排卵月経とは、排卵しない女性に起こる現象です。子宮に送るべき卵子が卵管に放出されないのが無排卵で、これだとプロゲステロンが作れません。無排卵でもエストロゲンはちゃんとあるので、月経は続きます。しかし、プロゲステロンを作る黄体ができないのでその量は減ります。

(無排卵月経は卵子の残りが1000個くらいになる更年期になると、月経を起こすエストロゲンは作られますが、排卵はめったに起こらなくなってきます。)

30代半ばの女性によく起こり、更年期のずっと前に始まっていることが多いようです。

無排卵月経を起こす原因としては、前述した女性ホルモンバランス乱れる原因と同じで、栄養、過度なストレス、運動過剰、不規則な生活、環境エストロゲンです。

これらのような日常生活の継続により、脳と卵巣と子宮の協調がうまく取れなくなってしまうことで排卵しなくなってしまいます。

排卵がなければ、黄体はできないのでプロゲステロンも作れません。すると、以下のようなことが体に起こってきます。

  • エストロゲン優勢
  • プロゲステロンの骨形成促進作用の効能受けられず骨粗鬆症に影響
  • 無排卵でプロゲステロン生産されないと、副腎ホルモンの生産に悪影響

*コルチゾールが産生できないとストレスダメージ増加で、また無排卵にといった負のスパイラルに陥る

無排卵月経対策

脳と卵巣と子宮の連携をよくするため、日常の生活では、以下のようなことを心がけましょう。

毒性の強い環境エストロゲンや合成エストロゲン暴露を減らす

暴露量を少なくするために、以下のことを気にかけましょう。

  • 動物性脂肪、特に脂肪の多い肉・乳製品の消費控える

これらの動物は早く太らせて市場に出す目的にエストロゲン作用のある飼料を与えられていることが多く環境エストロゲンは動物性食品の脂肪に蓄積されています。

このような可能性のある食品の消費を少なくするか、無しにしましょう。もしも、赤身の肉、鶏肉、卵、魚など食べるのであれば、有機飼料で育ったホルモンや抗生物質を使っていないものにしましょう。

  • 石油化学製品の殺虫剤、除草剤、殺カビ剤、熱を加えると環境エストロゲンを発散するプラスチックなどの使用を大幅に少なくしましょう。
  • カーペットより木か石のなど自然の素材のものにしましょう。カーペットの裏に使う接着剤や溶剤が長い間には有害な分子を放出します。
  • ホルモン補充療法は慎重に

これらのことから、プラスチックを使うもの少なくし、ホルモン剤の入らない肉や有機農法の作物を買い、洗剤なども安全な物を使う。石油化学製品よりも自然な物を使うようにすることが未来の世代の生殖器官やその機能の健康を保証することになります。

健全なホルモンバランスのために

食事や生活を変えるだけでも、ホルモンバランスを整えるのに役立ちます。環境を最適にすれば、体は自分でホルモンのアンバランスを改善する能力を持っているためです。

ただ、長期間、精白、精製された加工食品を食べ、運動をせず、環境エストロゲン、過剰なストレスにも晒されてきたなら、ホルモンバランスの回復は時間がかかるかもしれません。

その場合は、ストレスで疲弊した副腎や甲状腺機能を改善し、性ホルモン分泌システムへの干渉を軽減させるため、生活改善や食事改善とともに医療機関の力も借りて治療しましょう。

1)理想の食事

  • 精製炭水化物を控える

高精製炭水化物食は、高血糖の原因になり性ホルモンの素のDHEA産生を低下させてしまいます。

  • アルコールを控える

肝臓の負担を減らしてエストロゲンデトックスを促進

  • カロリー過剰摂取に注意

必要以上に食べたカロリーは脂肪として蓄積され、それはエストロゲンも増やします。

  • 良い脂肪摂取割合増やし悪い脂肪控える

マーガリンやショートニングなど使ったトランス脂肪酸たっぷりの合成油ではなく、新鮮で加工されていない自然な脂肪を食べるようにしましょう。

脂肪の摂取については、抗炎症作用のあるω3系不飽和脂肪酸含有の亜麻仁油やエゴマ油、クルミ、魚油などの割合増やしω6系不飽和脂肪酸含むサラダ油、コーン油、サフラワー油、トランス脂肪酸含むマーガリンやショートニングなどを使った食品は避けるように。特にトランス脂肪酸は、良い脂肪の働きを抑制してホルモンバランスを狂わせます。オリーブオイルや控えめな量のバターを加熱料理や焼き料理に使うことは健康的です。遮光ガラスボトルに入ったエキストラ・バージンオリーブオイルを探すと良いです。

  • 可能な限り有機農法の食材

有機植物は汚染されていない土壌で、殺虫剤と名の付くもの(除草剤、カビ取り剤、害虫駆除剤を含む)は一切使わず、化学肥料、化学添加物も使わず、栽培されたものです。そして遺伝子操作もされていません。

普通の栽培法で育った果物や野菜は体外エストロゲン的な殺虫剤や化学肥料を使用されています。

また、卵や乳製品、肉類も可能な限り成長ホルモンや抗生物質の与えられていない有機農法のやり方で生産されたものを選ぶようにしましょう。

  • 植物性食品を積極的にとる

私たちが食べている植物には人間の健康を支える作用を持つ様々な成分が含まれています。

一つ目は植物エストロゲンです。これは人間のエストロゲンよりも作用が弱いので人体内に入ると、エストロゲンレセプターを体内のエストロゲンと競って奪い合います。植物エストロゲンが受容体に結合してしまえば、環境エストロゲンや人間のエストロゲンは作用できなくなり、エストロゲン優勢の害を減らすことが出来ます。

この特性を生かすためエストロゲン過剰が原因と考えられる症状の軽快を目的として使用されることあります。

大豆は植物エストロゲンの最も称賛されている供給源です。新鮮な野菜を種類多く食べ、週に数回、大豆製品を食べると、前述のような作用の恩恵を受けることができます。

ただ、大豆は要注意する点もあります。

亜鉛の吸収阻害成分のフィチン酸や甲状腺機能阻害するゴイトロゲンも含んでいるためです。

フィチン酸の害については、納豆、テンペ、味噌などの大豆発酵食品はこれらのフィチン酸の多くが分解されており、貴重なファイトケミカルを身体がより使いやすいものにしてくれています。そのためフィチン酸の害については大豆発酵食品についてはそれほど心配する必要はないようです。

大豆製品のゴイトロゲンと甲状腺機能に関しては賛否両論があるようですが、甲状腺ホルモン剤の吸収を抑制する報告があるので、その薬服用している方は大豆製品を摂取するタイミングを医師と相談したほうが良いようです。そうでない方は、通常の摂取量であれば神経質にならなくてもよいようです。

二つ目は、食物繊維です。植物性食品に含まれている食物繊維もしっかりとりましょう。植物繊維は過剰なエストロゲンを体外へ排泄してくれます。仕組みとしては、肝臓で代謝されたエストロゲンが胆汁に混ざって腸管に送られたものが、微生物によって活性エストロゲンに変換されて血流に再吸収されるのを阻害します。

2)運動

精神の安定、ストレス耐性をつけ、過剰な体脂肪から産生されるエストロゲンを運動により体脂肪削減でエストロゲンも減量させることができます。

3)副腎の働きを改善

健康な副腎がホルモンの適切なバランスのためにとても大切です。副腎の健康のためには、生活からストレスを減らし、十分な睡眠を取り、健康的でバランスの取れた食事をすることです。

ストレスが主に精神的なものであるなら、リラックスさせてくれる瞑想や適度な運動もお勧めです。

砂糖やカフェインは副腎を刺激するので控えるようにしましょう。

進行した副腎疲労がある場合は医療機関の力も借りましょう。

まとめ

女性が健康的なライフスタイルを送るために大きなカギを握る女性ホルモンバランス。そのバランスに影響を及ぼす、食事や睡眠、運動、ストレス、環境エストロゲン暴露なを最小限にするなど日常生活を整えるようにしましょう。それにより、脳、卵巣、子宮の連携をスムーズにして、ホルモンバランスを健全な状態に保てるようにしましょう。

参考書籍

医者も知らないホルモン・バランス ジョン・R・リー著 2020年10月31日 第6版発行

続・医者も知らないホルモンバランス ジョン・R・リー著 2000年11月10日 初版刷発行

「大豆で甲状腺機能低下症になるのか?(大豆と甲状腺)」長崎甲状腺クリニックホームページ 2019年3月30日

日本醸造協会誌 106巻12号 味噌など大豆発酵食品による亜鉛栄養改善の可能性 橋本彩子、神戸大朋

日本醸造協会誌 106巻12号 味噌など大豆発酵食品による亜鉛栄養改善の可能性 橋本彩子、神戸大朋

HERS 「HERS世代は要注意!宇久人疲労で更年期障害が重くなることも」2016年9月号

副腎疲労度と甲状腺の関係 宮澤医院ホームページ

ヘム鉄を1年以上続けてる方は治っていません

宮澤賢史 · 2023年1月7日 ·

前回、血液検査だけでは病気の原因はわからないと書きましたら(記事はこちら)、「私は血液検査で鉄欠乏が判明して、ヘム鉄で改善しました。それからヘム鉄を3年続けており、今は貧血症状は全くありません。」とご意見を頂きました。
それ、治ってないです。

​ヘム鉄を摂り続けている人は意外と多い

栄養療法に詳しい方は、フェリチンが鉄欠乏の良い指標であることはご存知ですよね。
​
残念ながら日本では検診でフェリチン測定が行われないため、鉄欠乏が見逃されている事がよくあります。でもその場合鉄剤、もしくはヘム鉄を1,2ヶ月も摂ればフェリチンも上昇して解決です。
​
しかし、うちに来る患者さんはしばしばヘム鉄を摂り続けています。続けないとまたフェリチン値が下がってしまうからだそうです。
​
鉄を摂り続けなければ維持できない状態って、病気か身体機能の低下が隠れていることが多いです。

鉄が不足し続ける原因を突き止めよう

確かに日本人の鉄の摂取量は推奨量を下回ってはいるのですが、鉄代謝には恒常性維持機構が強く働いており、体内鉄が減少すると、吸収率は高く、同時に排泄量は少なくなる仕組みがあります。
​
貧血になる人は、何らかの原因でこのシステムがうまく働いていないのです。具体的には腫瘍や子宮筋腫などの他に、体内の炎症や腸内環境の悪化なども原因になります。
​
僕の経験上はピロリ菌やカンジダ感染の方は特に鉄欠乏を起こしやすいです。ピロリ菌は胃酸分泌を低下させて鉄吸収を邪魔するし、カンジダは成長のために鉄を人から奪うためです。ぜひ、まだ原因がわかっていないなら詳しい検査をお勧めします。
​
フェリチンが上がらないからといって、ヘム鉄サプリをただ増やすのだけはお勧めしません。ヘム鉄を摂れば摂るほどがんのリスクが高くなるからです。

栄養療法がうまくいっていない人の共通点

宮澤賢史 · 2023年1月4日 ·

こんにちは、宮澤です。栄養療法を始めて21年目の内科医です。

僕は普段慢性疲労やうつ、不妊や発達障害の人を多く診ています。また、クリニックに来院する患者さんの5割は治療がうまくいっていない人たちで、そんな方達にセカンドオピニオンを提供しています。

病気改善と健康増進は全く違う

今日は栄養療法がうまくいっていない人の共通点についてお話します。それは「病気の改善のために健康増進治療を行っていること」です。バカみたいな、ホントの話です。栄養療法を受ける人の目的は大きく分けると健康の増進か病気の改善です。

うつや慢性疲労に対する栄養療法は病気の改善が目的で、

美容、アンチエイジングやアスリートのパフォーマンスの向上は健康増進です。

この両者に対するサプリの使い方は全く異なります。「サプリが効かない」といって私の外来に来る方はここを混同しています。

足りない栄養を摂ることはオリンピックに有効

20年前、僕は大学病院を辞めてサプリメント会社に就職しました。その会社がすごかったのは、会員全員に血液検査を推奨していたことです。

血液検査の結果から足りない栄養素や体のダメージが推定できます。それに対して鉄不足ならヘム鉄サプリ、活性酸素が多ければ抗酸化のビタミンCを摂る。

これが栄養療法の基本です。この方法は元々健康な人をさらに調子良くしたり、アスリートのパフォーマンスをアップするのに長けています。

実際にその会社は多くのスポーツ選手をサポートしており、2004年のアテネオリンピックの時にはサポートチームが金メダルを量産するのを目の当たりにしました。

しかし、その一方で病気にはあまり効果がなかったのも事実です。僕は慢性疲労、うつの人たちにサプリを処方をしたけど、根本的に改善することはほとんどありませんでした。
 

ポイントは身体機能の低下

検査して足りない栄養を摂っているのに、なんでこんなに効果がないのか?

なんでスポーツ選手にはこれほど効果のあるサプリが、慢性疾患の人を治してあげられないのか?

その理由は、病気の人は身体機能低下の結果として栄養が不足するからです。自律神経が緊張して栄養の消耗が激しいとか。腸が悪くて栄養を吸収できないとか。

つまり、病気の人の栄養不足は結果であり、原因ではありません。原因を治療しなければ栄養をいくら補充してもまた足りなくなります。

つまり、「健康の増進」と「病気の改善」でサプリを使い分けるとは、健康増進には足りない栄養素の補充を、病気の改善には栄養素を使って身体の修復を行なうということです。

言い換えれば、それは神経内分泌系や腸内環境、デトックス機能などの機能低下を探し出してそれぞれに対処することです。

病気の改善目的の栄養療法がうまくいっていない時は、自分の治療が「健康増進」治療になっていないかチェックしてみてください。

両者の治療の見分け方

え? 「健康の増進」と「病気の改善」治療、どうやって見分けるのかって?

簡単です。診察の時「サプリを一生続けてください」と言われたら健康増進治療です。

当たり前すぎる? ではもう一つの目安を教えましょう。

それは「血液検査以外の検査を受けているか?」です。

健康増進治療は足りない栄養素の補充とダメージの修復がメインになります。ダメージというのは活性酸素や炎症のことです。これは血液検査で判断できます。

でも、病気の改善には体の機能低下を見つける必要があります。例えば自律神経を見るには唾液検査、腸内環境には便検査、ミトコンドリア機能を知るためには特殊な尿検査が必要です。一般的な血液検査では詳しいことはわかりません。

だから、血液検査しか受けていなければ、今の治療は「健康増進治療」になっている可能性が高いです。ぜひしかるべき検査を受けて「病気の改善治療」にシフトしてください。

ついでに言えばこの方法は「健康増進目的で健康増進治療をしても効果がない人」にも有効です。

検査で足りない栄養を摂ってもダイエットがうまくいかない人、競技のタイムを縮められない人はぜひ体の機能低下チェックを行ったほうが良いでしょう。プロスポーツ選手でも身体機能が低下してる方は多いです。

副腎疲労を正確に診断し治療する必要性

宮澤賢史 · 2022年12月29日 ·

とある医師の専門雑誌があるのですが、そこの記事があまりにも気になったので、書きました。


開業医の先生が書かれた記事で、内容は「他院で副腎疲労治療中の患者さんがコートリル(ステロイド剤)が切れたので処方して欲しいとやってきたが、ステロイドを簡単に処方するわけにもいかず副腎疲労という病気を調べたら、Pubmed で adrenal fatigue doesnt exist. という論文に突き当たり、この病気の存在自体が怪しい。また、副腎機能低下ということで、患者さんに聞いてみたら血中ATCHをフォローしている訳でもないし、こんな怪しい副腎疲労外来と言う看板を掲げてる医者は大丈夫か?」というものです。
​
私が日本で副腎疲労外来を始めて15年になりますが、「副腎疲労外来」はとても増えたと思います。
​
中にはこのように表面上のことだけを理解して、コルチゾールの検査をせずに、ステロイドを処方してしまう先生もいるようですが、これが極端にひどい例であることを祈ります。その雑誌に書かれた先生のツッコミももっともだと思いますので、副腎疲労の概念、診断、治療に最低限守るべきことを書いておきます。
​
​1 副腎は疲労しない(正式にはストレスによるHPA軸の障害である)
2 ちゃんと診断しよう(除外診断も重要)
3 ステロイドは用いない
​
​
1 副腎は疲労しない
​
副腎疲労(Adrenal fatigue)は1990年代にカイロプラクターのJamesWilson博士により提唱された概念です。長年のストレスにより副腎が疲弊しコルチゾール分泌が減弱するというものです。 しかし、実際に副腎が疲弊する事実はありません。Pubmedの論文の記載通りです。
​
長年のストレスや慢性炎症などにより高コルチゾールが継続すると、下垂体から放出されるATCHのネガティブフィードバックのセットポイントが下がってきます。コルチゾールは体蛋白を異化させ、海馬を萎縮させるので、それを防ぐためかと思われます。
​
ついには、ACTH低下のためにコルチゾールも基準範囲を下回るようになります。これが俗に言う副腎疲労のステージ2です。つまり副腎疲労というのは言うなれば下垂体疲労なのです。 HPA軸(視床下部-下垂体-副腎)で言えば、視床下部からのCRHに下垂体からのACTHと副腎のコルチゾールが反応しない状態であり、正式な医学的名称はHPA-axis dysfunctionになります。
​
このHPA軸障害をpubmedで検索すると、うつやPTSDなど慢性ストレスを引き起こす疾患との関連論文が多数ヒットします。
​
(じゃあ、なんで副腎疲労外来と言う名前を残しているかというと、患者さんが理解しやすいからです。HPA軸の説明は難しく説明に時間がかかる。副腎が疲れると言うのは説明がしやすい。increased intestinal permabilityではなくリーキーガットを使うのと同じです。)
​
​2 ちゃんと診断しよう(除外診断も重要)​
​
HPA軸障害は下垂体性の低コルチゾール症で、器質性の下垂体腺腫やアディソン病などとは全く性質の違うものですが、時に重症化するとアディソン病などに類似した症状を呈することもあります。
​
だからと言って、慢性疲労や朝が起きられない、うつや「やる気のなさ」などの症状のみから診断を付ける事は殊に避けなければなりません。
​
HPA軸障害で低下するコルチゾールレベルは僅かなので、血中よりも唾液中レベル測定が適しています。
​
症状によっては内分泌専門科の受診、下垂体や副腎のCT検索などを併せて行うべきであり、そうでなくとも最低限血中のACTH、コルチゾールなどは検査し、基準値以内であることを確認すべきです。
​
​
​3 治療にはステロイドを用いない​
​
副腎疲労(HPA軸機能障害)は、慢性ストレスの結果HPA軸がダウンレギュレーションを起こした状態です。器質的な障害、下垂体の血流低下や副腎の萎縮などはなく、よほどの極期を除いて、ステロイドの使用は避けるべきです。
​
実際の治療は、HPA軸のストレス負荷を軽減した状態で、ステロイドを用いずに滋養強壮の生薬やホルモンの前駆体などを用いてコルチゾールレベルを修正していきます。
​
副腎の疲労を治すのではなく、歪んでしまったHPA軸を元に戻すのです。副腎疲労の治療のポイントは脳へのアプローチにあります。
​
実は、副腎疲労の診断で検査も受けず、ステロイドだけ処方されてる方、時々うちにもいらっしゃいますが、殆ど治ってないです。患者さんに良かれと思って投薬されているのでしょうが、ステロイドの離脱の分だけ余計に時間もお金もかかります。
​
中途半端でない系統的な治療にぜひ切り替えを!

  • ページ 1
  • ページ 2
  • ページ 3
  • Interim pages omitted …
  • ページ 7
  • Go to Next Page »

臨床分子栄養医学研究会

Copyright © 2025 臨床分子栄養医学研究会

  • プライバシーポリシー
  • 会員規約および会員規定
  • 利用規約
  • 特定商取引法に基づく表記