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臨床分子栄養医学研究会

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現在の場所:ホーム / アーカイブ個人差と根本原因

個人差と根本原因

40歳になったら自分のお腹の症状はあてにしない

宮澤賢史 · 2019年2月23日 ·

慢性疲労治療のコツの1つは、腸のわずかな炎症をみつけてケアすることです。おなかの自覚症状はあてにならないため、感度の高い検査を使い炎症を見逃さないようにしましょう。

腸の炎症が万病の元

慢性疲労を長く患っている患者さんには炎症を持っている人が多いようです。慢性鼻炎、脂肪肝、歯周病、上咽頭炎などの炎症は副腎に負担をかけ、様々なサプリメントの効果を打ち消してしまいます。中でも特に影響が強いのが腸の炎症です。腸はサプリメントの入り口であり、免疫の調整臓器でもあるので、吸収不良からアトピーまで様々な病気に関わっています。

オーダーメイドでサプリを処方する個別化栄養療法を行うためには、腸内環境を調べて腸の炎症の有無や程度をあらかじめ知っておくことが不可欠です。といっても、大腸の内視鏡検査で異常なしだからといって、炎症がないと決めつけるわけにはいきません。肉眼的にはわからない軽度の炎症でさえも全身への影響は少なくありません。

腫瘍や炎症がないのに腹部症状を伴う過敏性腸炎も、顕微鏡で腸組織をみると炎症が存在することがわかっています。

便中リゾチームは最も感度が高い腸炎の検査

私は腸内環境の把握のためにドクターズ・データ社の総合便検査分析を使用しています。この研究所は代替医療の分野では有名で、世界中のクリニックに臨床検査を提供しています。

この検査では、一般的な病院の検査ではわからない腸内細菌バランスや免疫状態など様々な腸内の状況を知ることができます。

その中でも重宝するのが腸の炎症の指標である便中リゾチームです。リゾチームは、細菌の細胞壁を分解する働きを持っており、炎症の程度に応じて便中のリゾチーム濃度が増えます。おおまかにいうと、病原性細菌が増えると中等度(200~600程度)、炎症性腸疾患があれば高度(2,000以上)増加します。

慢性疲労の患者さんの多くに中等度の炎症が見られますが、この程度では大腸内視鏡検査で異常を認める事は殆どありません。この検査は通常なら見逃されてしまう位の軽度の炎症を見つけることができるのです。これは副腎疲労の治療の成功率を大きく左右します。炎症は例え軽症でもコルチゾールの分泌を促すため副腎に負担をかけ続けるからです。

ところで、一体どのくらいの人がこの軽度の腸の炎症を自覚しているでしょうか。自覚症状がなければ、腸の検査や食事治療に考えが及ぶこともないでしょう。そこで当院を受診中の患者さんの自覚症状と便検査の結果を比較してみました。

腸の炎症を自覚できる人は意外と多くない

最近1ヶ月半に来院され、便検査を行った65名の慢性疲労、副腎疲労、低血糖の患者さん(7~63才、男28名、女37名)に対して腸内環境の問診票と便中リゾチームの上昇度を比較しました。

すると、65名中50名(77%)に便中リゾチーム軽度上昇(>200)が認められました。疲労や低血糖を持つ患者さんの腸がいかに炎症を起こしているかがよくわかります。

次にそのような軽度の腸炎を持つ50名のうち、過敏性腸炎の症状がある方を調べました。

〈過敏性腸炎の診断基準〉
腹痛もしくは腹部不快感が半年前からあり、かつ最近3か月の中で月に3日以上あり、さらに下記の項目のうち2つ以上を満たす。

  • 排便により軽快する。
  • 症状の有無と排便頻度が関連している。(例:腹痛があるとき排便回数が増える)
  • 症状の有無と便の状態が関連している。(例:腹部不快感があるとき下痢状便になる)

その結果、症状を持つ人は26名、ない人は24名でした。

つまり、便中リゾチームが高く腸に炎症がある人でも、腹痛や腹部不快感などのはっきりした過敏性腸炎症状を持つ人は半分に過ぎないのです。

この状況は年齢が上がると顕著になります。先ほどの50名を40歳を区切りに2つに分けてみました。すると、40歳未満では症状ありが67%を占めるのに対して、40歳以上で症状が出ている人は38%に過ぎませんでした。40歳になると自分の腸の炎症に気がつく事が出来るのは3人にひとりなのです。

まとめ

腸の炎症があるのに自覚症状に乏しい人は意外と多く、特に40歳になるとそれが顕著です。慢性疲労、低血糖がなかなか治らない方は、お腹の症状が全くなくても一度腸内環境検査をしてみましょう。

検査は便のサンプルを郵送するだけで体への負担も最低限です。

宮澤医院では炎症の程度や腸内細菌バランス、免疫の低下度などを考慮して治療内容や治療期間の目安を決定しています。多少時間と手間をかけてでも根本原因を把握しておくことが迷いのない治療方針を生み出し、結局は治療期間も短くて済みます。ちょっとお高い検査ですが、40歳超えたら一度やってみて損はないです。

副腎疲労と腸内環境の関係

宮澤賢史 · 2019年2月23日 ·

副腎疲労というと副腎だけが悪いという印象をもちがちです。しかし副腎はネットワーク臓器であり、様々な臓器と深くつながっています。悪化した他の臓器を修復するために副腎が働かされた結果、副腎疲労になっているパターンはとても多いのです。

そんなつながりの深い臓器の中でも筆頭と言えるのが腸です。連続するストレスや、副腎疲労によって起こる低血糖症状をカバーするために食生活がめちゃくちゃになってしまい、その結果腸内環境が悪化している人は少なくありません。

ここでは

  • 副腎疲労患者150名の腸内環境検査の結果
  • それに対する治療法

について宮澤医院を受診した患者さんのデータを元に説明します。

1 副腎疲労患者は腸内環境が悪い

副腎疲労の患者さんが一番を多く訴える症状は「疲労」です。これは当たり前だと思いますが、意外にも2番目に多い主訴は腹部の症状です。

これは、宮澤医院を受信された150名の患者さんの主訴を多い順に並べたものです。

副腎疲労の患者さんには胃腸機能の低下がよくみられます。副腎疲労がなかなか治らない大きな原因の一つが胃腸問題なのです。

  • 腹部の膨満感
  • 便の形が不安定
  • 便のにおいが強い
  • 下腹部痛がある

これらは、腸内で悪玉菌が増え、異常発酵がおこっているサインです。

宮澤医院を受診する患者さんの8割に腸内環境異常があります。その中には、少し乳酸菌をとるだけで大分楽になる人もいるのです。また、腸が炎症を起こしていることもよくみられ、それを抑えるために必要なのが副腎ホルモンの「コルチゾール」です。体内に炎症があると副腎ホルモンが出っ放しになり、副腎が休む暇がなくなります。腸内環境の悪さが副腎に負担をかけ、また副腎疲労が腸内環境をさらに悪化させるという悪循環が起きます。腸が悪いとサプリが効かない

また、腸が悪いと副腎疲労の治療に必要な栄養が消化吸収されにくくなります。ビタミンCなどは多少胃腸が悪くとも体内に入っていきますから、サプリメントを摂取していれば、壊血病になることはまずありません。

しかし、ミネラルやたんぱく質などは消化、吸収に手間がかかるため、栄養を摂っていても不足という状態がありえるのです。日本人を含むアジア人は欧米人に比べて、

  • 胃酸分泌量が少ない
  • 消化酵素分泌量が少ない
  • 腸が長い

という特徴を持っています。このためにタンパク質やミネラルの消化吸収が阻害されたり、体から出ていくべき重金属や化学物質がうまく排泄されなかったりして、病態をさらに複雑にしています。特に腸管が炎症を起こしている場合は、吸収不良がひどくなります。吸収されなかったたんぱく質は腸内で腐敗し、悪玉腸内細菌のエサになります。

2 腸内環境を知る方法

副腎疲労が治らないと言って来院される患者さんの7割以上が腸の問題を抱えています。
宮澤医院では、腸内環境が悪化する原因を徹底的に検査しています。

2-1 問診

便の回数、色、臭い、形は腸内環境の鏡です。また、腹部膨満感、胃痛、腹痛、胸焼けなどの情報から、胃腸のどの部分に問題があるのか推測できます。

〈消化不良症状〉
胃もたれ、胸焼け、げっぷ、食欲不振、胃腸炎症状、腹痛、
胃のむかつき、小腸疾患、膵機能低下、腹部膨満、ガス多量、
便の形が不安定、便の匂いが強い、未消化便、下痢気味、
大腸下腹部痛、膨満感、便秘、頻回に便意をもよおす

家族歴や既往歴も重要な情報です。生まれてくる時に産道を通ることで、母親由来の乳酸菌が子供に移行します。また、ステロイド、ピル、抗生剤の使用歴、糖尿病,過敏性腸炎などは、全て腸漏れ症候群(リーキーガット)を起こす要因となります。

2-2 腹部の診察、超音波検査

長期間にわたり胃腸の機能が低下している方は、触診で明らかに胃腸が固くなっています。腹部膨満がある場合、胆汁や消化酵素が少なくなっているかもしくは悪性細菌の過剰な増殖なども疑われます。

2-3 食物アレルギー検査、腸内環境検査

良性、悪性細菌、真菌のバランスを見ます。通常腸内フローラ(様々な種類の腸内細菌が腸壁にお花畑のように生息していること)では、乳酸菌など良性菌が多くを占めていますが、ストレスや加齢、食生活や薬の副作用などにより、良性菌が減ると、悪性細菌や真菌などが多く増殖してきます。悪性細菌はガスを多く産生し、腹部膨満(ふくぶぼうまん)の元になりますし、カンジタ菌はアンモニアやアセトアルデヒドを作り、疲労感や頭に霧がかかったような症状を引き起こします。

消化酵素が十分に出ているかどうかも重要な情報です。消化酵素不足では、タンパク質が十分に消化されないまま腸の壁を通り抜け、体内でアレルギー反応を起こすからです。食物アレルギー検査はそのような状況を反映します。またそのような状態では、しばしば腸内に炎症が起きています。炎症が起きれば副腎は疲弊するし、免疫が反応してアレルギー症状を引き起こすこともあります。

腸内環境検査では、大腸の内視鏡検査ではわからない軽度の炎症(それでも十分副腎疲労をひきおこします)を見つける事が出来ます。治療がうまくいかない場合は、検査をして根本原因がどこにあるかを確認するのが結局早道です。

2-4 毛髪ミネラル検査

腸内環境が悪くなると、特にミネラルの吸収が悪くなり、重金属が体から出にくくなります。その状況を毛髪検査から把握していきます。

3 リーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群)

炎症などによって腸粘膜に穴が開いてしまい、体に悪影響を及ぼす物質が体内に入ってきてしまう事を腸漏れ症候群(リーキーガット症候群)と呼んでいます。小腸は胃で胃酸によって細かく分解された食物の栄養素を吸収する器官です。小腸にはバリアのような膜があって分子が小さな物質は通すことができるが、大きな分子は通さないような構造になっています。

食物はまず口で咀嚼によって細かくし唾液と混ざって胃に行きます。その後胃で胃酸によってさらに細かく正常に分解された食物の栄養素は、小腸のバリアを通り、腸壁のすぐ後ろにある血管へ流れこみ、身体の必要な場所へ運ばれます。

腸の壁の絨毛には薄い膜がバリアのようにはられていて、異物が貼ることを防ぐのと同時に、胃で細かく分解された食物の中の栄養素を吸収できる仕組みになっています。このバリアや破られると、異物が体内に侵入して重い感染症や様々なトラブルがおきるだけでなく、胃で十分に消化分解されなかった大きな食物の分子が血液中に入ってしまいます。未消化のタンパク質や、細菌、食品添加物などが血液の中に取り込ませてしまうと、身体はそれを異物とみなして攻撃することでアレルギー反応が起き、炎症が引き起こされます。

〈リーキーガット症候群の症状〉
下痢、過敏性腸症候群、月経前症候群、食物アレルギー、
ニキビ、肌荒れ、湿疹、リウマチ様症状、橋本病様症状、
セリアック病、抑うつ感、不安感、ADD、ADHA、花粉症、乾癬

日本人の7割がリーキーガット症候群の恐れがあると言われています。原因は食生活の悪化、抗生物質、ステロイド、ピル等の長期使用、食品添加物やカフェイン、アルコールの摂取、重金属、カンジダの増殖などです。便総合検査は「リーキーガット症候群」の原因を究明するのに最も適した検査の一つです。

4 便総合検査

便総合検査は、腸内環境について詳細な情報を提供してくれる検査です。腸内環境検査でわかることと、150名の副腎疲労患者さんに対して当院で行った検査結果について説明します。

4-1 良性、悪性細菌のバランス

この検査では、便中の腸内細菌を培養し、それを良性、悪性細菌、境界型菌にわけて表示してくれます。結果を見れば、良性菌が多いのか、悪性細菌が多いのか、一目瞭然です。

菌数は1+から4+の数値で表されます。数値が多いほど、菌数も多いということです。例えば、乳酸菌なら3+か4+くらいが、理想的な範囲です。

実際に副腎疲労患者の腸内環境検査では、乳酸菌が理想的(3+、4+)の人は23%しかいませんでした。

また、乳酸菌が3+、4+の人で悪性細菌が出ている人は殆どいなかったのも特徴的です。つまり、腸内のフローラは細菌がびっしり生えており、乳酸菌が十分な量があれば、悪性菌が増殖するスペースはないのです。

抗生剤やステロイドの使用などで良性細菌が少なくなると、その空いたスペースに悪性菌が生えてきてしまいます。

4-2 消化酵素

次にこのデータは、患者さんの腹部膨満がある人とない人、そして消化酵素が正常の人、低下している人の割合を示したものです。膨満感が強い人は全体の41%、消化酵素が減少している人は43%の人に見られました。

このデータによると、腹部膨満感がある人もない人も同様の確率で消化酵素が低下していることがわかります。腹部膨満感症状と消化酵素の不足にはあまり関係性を見出せませんでした。

これは、「腸内環境が改善しない人は、たとえ腹部膨満感がなくとも消化酵素を足してみて様子をみる」ことが無駄ではないことを示しています。

次に、腹部膨満感、胃痛、下痢と悪性細菌数との関係をみてみましょう。
悪性菌の種類数と腹部症状の間に相関関係がみられます。腹部膨満感、胃痛、下痢という症状は、SIBO(Small Intestinal Bacterial Overgrowth)
小腸内細菌過剰繁殖という病態でよくみられるものです。

通常、十二指腸・小腸内のバクテリアの数は大腸内に 比べて、はるかに少ないが、SIBO患者においては十二指腸・小腸内に多数のバクテリアが繁殖し、しかもその種類は 大腸内のバクテリアに類似すると言われています。

この繁殖したバクテリアが宿主の食べた食物を 分解・発酵させる過程で、十二指腸・小腸内においてガスが 発生し、これらのバクテリアに起因する物質が下痢や 倦怠感などを引き起こすというわけです。これらの症状には、抗生剤、プロバイオティクス、成分栄養などの治療が有効だとされています。

4-4 免疫と炎症マーカー

副腎疲労の方の3分の2に免疫異常や炎症を認めました。それは、腸の炎症の修復のために副腎が酷使されている可能性があることを意味します。副腎疲労の治療では、腸の炎症の修復を常に頭に入れておく必要があります。

4-5 まとめ

平均的な副腎疲労患者さんの腸内環境像は以下の通りでした。

 乳酸菌が少なく(77%)
 腹部膨満感が強く(59%)
 時には悪性細菌が多く(25%)
 炎症を起こしており(64%)
 免疫異常がある(65%)

5 腸内環境改善の治療方法

食事

以上の理由から、副腎疲労患者にとって食事治療は極めて重要です。脳に霧がかかっていて、まともに献立も考えられないという方はまずここから始めましょう。そしてだんだんと回復してきて自分の食事に気が回るようになったらより詳しく食事状態を見直していくのです。

サプリメント

上記の結果は多くの患者さんの結果をまとめて平均化したものであり、個々の患者さんの状態は人によって全く異なります。実際には診察と検査の結果からサプリメントをセレクトしていきます。

・胸焼け、食物の味が残っている、胃もたれなどの症状が強い場合→消化酵素の摂取

・便の大きさ形、臭い、回数、色が悪い場合→乳酸菌の摂取(形はバナナ状、臭いは無臭、回数は1日2回、色は茶褐色がベストです)

・下痢や便秘を繰り返す、慢性の下痢、慢性の便秘→抗炎症サプリメントの摂取

特殊な場合を除き、乳酸菌や消化酵素は必須です。

6 まとめ

腸内環境を制する者が副腎疲労治療を制する事が出来ます。「急がば回れ」とはまさに腸内環境改善のことを言うのです。腸をよくするだけで、副腎疲労の症状が8割がた軽減してしまうことはよくあることです。腸内環境ケアには数か月かかりますが、根気よく取り組んでみてください。

副腎疲労と心のエネルギーの関係

宮澤賢史 · 2019年2月18日 ·

実際のセミナーの様子

PCM(Process Communication Model)の入口のセミナーである「Key To Me」というコミュニケーション講座を再受講しました。

家族や社内など一緒にいる人同士で受けると効果倍増だと聞いて、実践講座の仲間内での団体再受講を申し込んだのです。同じ講義でも再受講すると本当理解が深まります。

コミュニケーション・スキルも大変勉強になりましたが、個人的に一番刺さったのは「心の満たし方には個人差がある」という話でした。

非常に分子栄養学脳をくすぐられる話ですが、この考え方が「副腎疲労回復のカギ」になるかもしれません。

ストレスが継続していると副腎疲労は治りにくい

副腎疲労が治りにくい人は、ストレスが継続している人です。

そのような人は、暴言を吐いたり異常な落ち込みがみられたりとネガティブな振る舞いが見られますが、それは心のエネルギー不足のサインでもあるのです。

食欲、睡眠欲など生理的欲求は満たされないとわかりやすいけれども、心のエネルギーである心理的欲求はわかりにくいので放置されがちです。

しかし、心理的欲求が満たされなければ、治療のモチベーションが落ちてしまいます。栄養療法は食事なども含め結構モチベーションが必要な事が多いので、問題になります。

自分を最優先

これを維持するために重要なのは、第一に自分を最優先する事です。

副腎疲労の人は「私さえ我慢すれば・・」と自分の心理的欲求を放置して、相手を満たすことをしてしまいがちです。でも自分のパフォーマンスが落ちるので、結局相手にも満足してもらう事はできません。

まずは、自分を満たす事が最重要で、満たされたら次に周りの人たちのために役に立ってあげればよいのです。この順番を絶対に間違えてはなりません。

もう一つは「自分の心の満たし方」を知るということです。

心の満たし方にも個人差があります。

私の場合は、「自分の仕事の成果を褒めてもらう事」で心が満たされますが、うちのスタッフのほとんどは「いつもありがとうと言われる事」でした。

「自分に合うサプリや食事療法が他人にも合うとは限らない」という事を知ってる分子栄養学人なら「自分にとって良いことが他人にとって良いとは限らない」という考え方もスッと頭に入ってくるでしょう。

PCMセミナーは受講前に行われるアンケートに答えることで「自分の心の満たし方」がわかりますので、副腎疲労の方(と副腎疲労を治す治療家)皆さんに受けて頂くことをお勧めします。

ストレス回避は治療の最優先事項ですからね。これから受ける方はできれば家族や仲間と受けてください。コミュニケーションが楽になります。副腎疲労の人にありがちな人間関係のストレスも少し減るかもしれません。

増田トレーナー、ありがとうございました。各地でオープンセミナーを行っているようなので、ご興味あればぜひ。

ケーラー コミュニケーションズ ジャパン
https://www.kcj-pcm.com/

マイコトキシン(カビ毒)が慢性疾患の原因?含有食品と対策

宮澤賢史 · 2018年12月18日 ·

体の慢性的な疾患の原因はマイコトキシン(カビ毒)のせいかもしれません。

マイコトキシン(Mycotoxin)はまだ一般的に知られていなく、知らず知らずのうちに体内で蔓延している可能性があります。慢性的な疾患に悩んでいても、マイコトキシンが原因であることは、なかなか結びつけが難しいのが現状です。

マイコトキシンとはいわゆる「カビ毒」の事で汚染された食品の中に含まれていたり、カビが異常繁殖した環境下で発生します。カビにも多くの種類があり、人体に影響のある強い毒性をもつカビの事を「マイコトキシン」と呼んでいます。

日本は湿気が強いのでカビが生えやすい状況下にあります。また身近にある食品に、毒カビを含んでいる可能性があります。マイコトキシンを得ると体に様々な症状をきたします。食事にも気を遣って世間では「健康に良い」と言われている食べ物を積極的に摂っていても、また無理はしておらずストレス環境下にいなくても、体調が優れない方。原因不明の病気で苦しんでいる方。

この記事を読むことで、マイコトキシンとは何か。どのような食品に含まれるのか。対策は何なのかを知って頂き、排除と再発防止にむけてのお役にたてたら幸いです。

マイコトキシンの特徴

マイコトキシンは大変厄介なうえに、私達の生活の近くに潜んでいます。通常の食品カビは肉眼で発見できますから、見つけたらすぐに廃棄しますよね。ですがマイコトキシンは食品中で発生するので「カビ毒」を目で確認できません。また熱で完全死滅しないので、調理で加熱をしても残ってしまうのです。

マイコトキシンの症状

引き起こす病気は深刻で、時には死に至る事もあります。特にマイコトキシンの一つであるアフラトキシンは発がん性をもっているとも言われており、なるべく取込みを避けていくに越したことはありません。

慢性疾患は要因が多岐に渡るので、マイコトキシンが原因であると結び合わせするのが難しい状態です。また、体質や遺伝、身体の状態によっても身体への影響が大きく変わってきます。

疾患の原因がカビ毒による可能性がある人

  • カビ毒を含む食品をよく食べている(下記参照)
  • 腸内環境が悪化していて、免疫・抵抗性が低い

腸の炎症を促進する食品を摂っている方・ストレス環境下にいる方・その他様々な要因によって悪化します。

遺伝的要素がある
「カビ毒を受けやすい」遺伝体質ということでなく、体内に入ってきたカビ毒を解毒できない遺伝体質をもつ人もいます。

抗生物質・ホルモン剤を長期間服用している、またはしていた
抗生物質、ホルモン剤は菌を死滅させる為、腸内にいる乳酸菌などの良い菌も殺してしまいます。よって長い期間抗生物質を服用していた方は、腸内環境が良くない方が多く免疫が低下しています。

上記が当てはまる方で原因が不明の疾患をお持ちの方は、マイコトキシンによる影響を疑ってみてもよいかもしれません。

下記がカビ毒が誘発する症状の一部です。

症状
疲労・頭痛・集中力低下・下痢、腹痛・光過敏 など
疾患
肝障害・肝臓、食道がん・呼吸器障害・腎障害 など

このような方で、症状に自覚があれば、検査にいかれてもよいかもしれません。

マイコトキシンが原因かどうかを判断するには

マイコトキシンを疑ったら、まず検査をしましょう。検査内容はクリニックにて確認できます。

マイコトキシンの種類

先ほどお伝えしたとおり、カビにも多くの種類があり、その種類は300種以上に遡りますが、中での毒性のあるマイコトキシン(カビ毒)も種類があり、多くが食品の中にも含まれています。

主には穀物、ナッツなどの乾燥食品に多く、また豚などが食べている飼料がカビ毒を含んでいる事もあります。日本産・外国からの輸入品でもカビの検査は行ってますが、現在に至りカビ毒による被害が報告されている以上、精査が万全とは言えないのかもしれません。

以下が毒カビと言われる主なカビの種類と含む食品の一部です。

アフラトキシン:ナッツ類、穀類、落花生、トウモロコシ、乾燥果実、牛乳(飼料に含む)
オクラトキシン:穀類、豆類、乾燥果実、コーヒー豆、カカオ
トリコテセン類:麦類・豆類
フモニシン:トウモロコシ加工品など
パツリン:りんご加工品
ゼアラレノン:肉類(飼料に含む)

広く注目されているのはアフラトキシンとオクラトキシンですが、中でもアフラトキシンはカビ毒の中でももっとも発がん性が強いといわれています。

他にカビ毒が含まれる食品として、ビール・干しぶどう・ワイン・香辛料(ナツメグ、胡椒等)

マイコトキシン(カビ毒)対策でできること

見た目で判断出来ないので対策が難しいマイコトキシンですが、意識して行えることもあります。

注意①肉料理はしっかりと加熱

加熱によってカビ毒は100%消せませんが減らすことはできます。また牛乳も火を通して飲む方が安全です。そして期限を守って使い切りましょう。良く火を通して食べる事がカビだけでなくあらゆる菌を死滅することにも繋がります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24915313

注意②調理・管理

たとえオーガニックの食品を使っていても、防腐剤等が入っていない分、管理に気をつけなければなりません。

湿気の多い場所での保管は避け、長期間保存することは避けましょう。カビの発生源で多いのは輸入品です。怖いのは目に見えないことなのです。食品の選び方に気をつけましょう。腸内環境の悪化はカビ毒を受けやすい

どのような病気でも、自己免疫が低下している人の方がそうでない人に比べて発症率は高くなります。マイコトキシンは、解毒し、カビを体外へ排出していくことが治療手段となります。治療には薬で解毒していく方法がありますが、検査で陽性がでたら、毒を外に排出できる身体作りをしなければなりません。

体内に炎症が多く、免疫が低下している人の身体は、上手く解毒ができないので、体内で問題が発生しているのです。腸環境に問題があると、身体に入った有害なものを振り分けてくれる排除の関門組織が崩れ、身体に悪いものを取り込んでいってしまいます。

腸内環境を悪化させる食品

①加工食品・添加物

ハム、カニかま、コンビニの出来合いのお惣菜、冷凍食品、カップ麺

裏の食品表示をみると、添加物の有無が載っていますね。あちらは身体に有害なもので、腸内環境も悪化します。

②グルテン・カゼインが含まれた食品

グルテン:パン、パスタ、うどんなどの小麦を使った商品に含まれます。
カゼイン:牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品に含まれます

この2つは構造が複雑で消化に時間がかかり、腸に負担をかけます。よって、未消化のまま腸を荒らしてしまうのです。

③精製された砂糖を始めとする糖:砂糖、はちみつ

砂糖類は「カンジタ菌」の増殖を著しく促進させます。カンジタは常在菌として普段は体内にいるものですが、腸内環境が悪化した状態だと、増殖し体調不良の原因となります。詳しくはカンジタの食事をご覧下さい。

抗炎症作用の強い食ベもの・解毒作用の強い食べ物
身体の免疫を強くしておくことは、免疫をあげることです。免疫をしっかりと持っていればある程度の耐久性のある身体にすることができます。

言うまでもなく、抗炎症作用・解毒作用の強い食べ物は積極的に取り入れていきたいです。

抗炎症作用のある食品

腸に炎症がある場合、炎症を食品から止めていくことも効果の一つです。

人間は身体はPHによって酸性とアルカリ性でバランスを保っていますが、酸性に傾くと体内で炎症が起きやすくなってきます。

  • ココナッツオイル
  • ハーブ、スパイス(オレガノ・ローズマリー、にんにく、生姜、ターメリックなど)
  • オメガ3系の油(DHA.EPAが含まれる青魚

こちらは代表的な抗炎症作用の強い食品です。ただし青魚は食べすぎは注意です。(水銀が含まれるので)

解毒作用のある食品

カビ毒を外に出すにはデトックスして毒を排出しなければなりません。下記にデトックス作用のある食材をまとめました。イオン化合物を含む食材は有害物質を硫黄がキャッチし、外に押し出してくれます。主には野菜に含まれています。

食材:ニンニク・ニラ・玉ねぎ・長ネギ・パクチー

水分を普段あまり摂らない方は、水分補給も意識して行いましょう。カビ毒を受けないようにするにはまず身体の調子を普段から整えておくことが大切です。日本は湿度が高く、私達が普段頻繁に食す食材にカビ毒は多く含まれます。

原因不明の慢性疾患が、カビ毒が要因となっていることは可能性として十分考えられますので、不調がある方は是非検査をされてみてくださいね。

「物忘れ」は改善できる ~原因は加齢だけとは限らない~

宮澤賢史 · 2018年9月8日 ·

はじめに

私たちの日々の生活は記憶と忘却の連続です。いったん覚えたと思っていたことも、あっという間に忘れてしまいます。でもそれこそが、私たちの「脳」を守るべく健全なシステムなのです。「脳」は情報過多にならないように、日々入力される情報を取捨選択して、優先される情報だけを記憶として定着させ、その他の情報は削除する(忘れる)ことによって、また新しい情報を受け入れられる状態にして、日々、「脳」全体を更新しているのです。だから、「忘れる」ことは、「覚える」ことと同じくらい大切なことなのです。

そうは言うものの、私たち人間は社会のルールの中で生活をしていて、忘れてしまうことによって、自分も他人も苦しめてしまう、そんな「物忘れ」が重なれば、やはりそれを改善したいと願うのではないでしょうか。今回は、たかが「物忘れ」、されど「物忘れ」について考えていきたいと思います。

1.「物忘れ」は病気? ~「認知症」との関連~

「認知症」とは、何らかの原因(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症)によって、脳神経が損傷したために、さまざまな認知機能が障害され、社会生活を送ることが困難になった状態です。

平成24年(2012年)の厚生労働省の調査によると、65歳以上の高齢者総数3079万人のうち、認知症患者数は約462万人(7人に1人(有病率15.0%))、MCI(正常でもない・認知症でもない(正常と認知症の中間)状態の者)の有病者数は約400万人(8人に1人(有病率推定値13%))と報告されています。こうした高齢化に伴う認知症患者の増加への対応として、厚生労働省は関係省庁と共同で「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」に取り組んでいます。ちなみに、筆者も、認知症サポーター養成講座を受講・修了し、認知症サポーターとなっています(目印としてオレンジリングを持っています)。

「物忘れ」は、認知症の予備軍であるMCIで良く見られる症状であり、浦上克哉氏(鳥取大学医学部教授 日本認知症予防学会理事長)は、MCIの状態で予防活動を行えば1割が回復、4割が現状で留まるので、早期発見・早期対応が重要であると述べています。

また、「物忘れ」は、甲状腺疾患、精神疾患、低血糖症を含む様々な病気の症状、薬の副作用として表れてくることもありますので、現在起こっている「物忘れ」を引き起こしている原因の早期発見、改善への早期対応のためにも、信頼できる医師・医療機関でメディカルチェックを受けることをお勧めします。

2.「物忘れ」は誰でもあるの?

「物忘れ」は前述したように、MCIを含む様々な病気の症状として表れることがありますが、ここでは「忘れてしまう内容」に着目したいと思います。

下記に一般的に言われている「認知症による物忘れ」と「単なる物忘れ」について忘れる内容の違いをご紹介いたします。

<認知症の物忘れ><単なる物忘れ>
体験のすべてを忘れる体験の一部を忘れる
物忘れの自覚がない物忘れの自覚がある
親しい人やよく行く場所がわからなくなる親しい人やよく行く場所は忘れない
性格に変化がある性格は変わらない
自分の今いる場所や時間がわからなくなる自分の今いる場所や時間はわかる

<社会保険出版社 監修 鈴木隆雄 独立行政法人 国立長寿医療研究センター研究所長より引用>

ただ、注意しなくてはいけないのは、実際には「認知症による物忘れ」と「単なる物忘れ」が混在している方々も多くいらっしゃることです。

もし、ロボットであれば、正常な状態と故障状態を明確に分けて考えることができますが(正常な状態=0 or 故障した状態=1)、生物である私たちの脳は多くの神経細胞の集合体であり(脳全体では千数百億個、大脳には数百億個)、かつ、各々の神経細胞が平均数万個のシナプス(情報の受け渡しが行われる部分)を持ち、複雑で巨大なネットワークを形成しながら、物を覚えたり、忘れたりしているので、正常な状態と故障した状態を明確に区別することは極めて困難です(0 or 1ではなく、between 0 and 1を行き来していると考えて下さい)。

また、生物学的観点から考えますと、生物(細胞)の生命は永遠ではありません。それゆえ、生老病死は避けることはできません。神経細胞の老化現象とも言える「物忘れ」は、誰にでも起こり得る自然現象です。

3.「物忘れ」仕組みは?~記憶のメカニズム~

私たちの記憶は下記の順序で、情報の蓄積・抽出が行われています。

短期記憶(*海馬)➡感情(*扁桃核)を伴う記憶➡長期記憶(側頭連合野)に移行・膨大な記憶が蓄積➡作業記憶(前頭前野)必要な情報の抽出

「物忘れ」と関係しているのは作業記憶であり、膨大な情報量が蓄積されている長期記憶に優先順位をつけ、今、必要な情報を抽出する機能です。即ち、「物忘れ」とは一度覚えた記憶が消えてしまっているわけではなく、作業記憶が適切に機能していないことにより、今、必要な情報を抽出できない状態(「思い出せない」状態)だといえます。さらに細胞レベルで考えるならば、前頭前野の神経細胞、神経細胞間の情報伝達に何らかの障害が起こっていることが推測できます。

*海馬:側頭葉の奥に存在し、小指くらいの大きさで新しい記憶の貯蔵装置としての役割を担っている。
*扁桃核(偏桃体):側頭葉内側の奥に存在し、情動反応の処理と記憶において主要な役割を担っている。

4.「物忘れ」は改善できるの?

筆者が子供の頃は、神経細胞の発達に時期が決まっていて、成人になってから、新しい細胞がつくられることはなく加齢に伴って機能が失われていくと教わりました。しかし、最新の脳科学の研究において、年老いたマウスにおいても新しい神経細胞がつくられていること(Okada & Ohira(2017))、加齢に伴う脳容積の変化は部位によって違いがあること(Bagarinao et al., 2018)、良質な食事と脳容積は関係していること(Croll et al., 2018)、有酸素運動が高齢者の脳代謝に影響を与えること(Matura et al., 2017)等々、世界中の脳科学者たちから、「脳(神経細胞)は再生産されない」という過去の研究結果を否定する報告が次々となされています。

科学が大きな進化を遂げたことによって、今までの常識が覆されることは科学の歴史では決して珍しいことではありません。私たちの健康と直結する医学の分野においても、例外ではありません。それ故、私たちは、過去の常識へのこだわりを捨てて、新たな事実を受け入れ、科学的根拠に基づいた健康への努力を積み重ねることこそが賢い生き方ではないでしょうか。

生物には必ず個体差が存在します。ゆえに、「物忘れ」は、誰でも絶対に改善できますと断言することはできません。しかし、少なくとも世界中から続々と報告される最新科学の知見から言えることは、適切な生活習慣(食事、運動、環境等々)が、「物忘れ」を改善する可能性は、十分にあり得るということです。

5.「物忘れ」改善のために今から始めたいことは?

「物忘れ」の予防・改善のためには以下の3点(①食事 ②運動 ③人的環境)のリニューアルをお勧めします。

①食事 

脳は身体の中で最も栄養素を必要とする臓器です。言い換えれば、脳は最も栄養(食事)に影響を受けやすい臓器なのです。

脂質(約60%)とタンパク質(約40%)で構成されており、脂質は細胞膜、タンパク質は神経伝達物質や*受容体の材料となっています。

細胞は常に細胞膜を介して物質の出入りが行われており、細胞の健康は細胞膜が担っていると言っても過言ではありません。したがって、良質な油を摂取し、良質な細胞膜を作ることが大切になります。具体的には青魚の油、フラックスオイル(亜麻仁油)、クリルオイル(オキアミから抽出した油)のような*オメガ3が豊富に含まれている柔らかく流動性のある油を摂ることにより、神経細胞膜の柔軟性が増し、脳内の情報伝達もスムーズに行われるようになります。

タンパク質は、アミノ酸に分解されて血液中に吸収されて脳内に入り、ビタミンB群、鉄、マグネシウムが組み合わさることによって、神経伝達物質に合成されます。タンパク質(肉・魚・卵等)と一緒に、ビタミンやミネラルも摂ることが大切なのです。

その他、*抗酸化作用の高いもの(鮭・エビ・お茶・玉ねぎ・トマト・赤パプリカ・ほうれん草・ピーマン・ブロッコリー・ごぼう・黒ごま・いちご・大豆・チョコレート・スパイス・赤ワイン等)を摂って脳の細胞の老化を防ぐことも大切です。休養(心身の安定)も*活性酸素の防止につながります。

また、料理をすることにより、前頭葉が活性化される(献立を立てる材料を切って調理する盛り付けるいずれの場面でも前頭葉が活性化されていた)ことが実験的に証明されているので、前述した健康な細胞を作る具材を用いて、無理のない範囲で、料理にチャレンジして頂くことをお勧めします。

サプリメントについては、イチョウ葉エキスのように臨床的に効能(脳血流の改善、認知症の改善・予防)が既に確認されているものもありますが、気休めではなく、本格的に活用していきたいと思っている方には栄養療法に精通している医師(脳機能にも精通している医師であることが望ましい)に相談することをお勧めします。

*受容体:細胞外からやってく神経伝達物質を選択的に受容するタンパク質で、細胞膜、細胞内に存在する。
*オメガ3:不飽和脂肪酸の1つで、体内では合成できないため、食事などを通して補う必要がある。炎症、血栓を抑制したり、血管を拡張したりする作用がある。
*活性酸素:化学反応が起こりやすくなった酸素で、細胞を酸化(老化)させる。
*抗酸化作用:活性酸素の働きを抑え、細胞を守る働き

②運動

まず、最初にぜひ、ウォーキングをして下さい。

一昔前までは、気分転換によるリラックス効果だと考えられていましたが、現在は、ウォーキングのようなシンプルな運動が作業記憶(前頭前野)の容量を空け(同時に処理できる情報は5~7つだと考えられています)、空いた容量で長期記憶から情報を適切に抽出できるようになることが知られています(普段は思いつかないことがひらめいたりします)。また、前述したように、有酸素運動は脳機能を高めることもわかっていますので、いい事ずくめなのです。体力にも個人差がありますので、決して無理はせず、自分のペースで効果を実感しながら楽しんで行うことをお勧めします。

次に、毎日、手の指を動かして下さい。

カナダの脳外科医ペンフィールド氏は、人間の身体の様々な部位の機能が、大脳のどの領域に対応しているかを表す脳地図(*ホムンクルスの図)を作成しました。この図から手や指の領域がとても広いことがわかります(大脳の約3分の1が手や指のコントロールに使われています)。すなわち、指を動かすことで、「脳」の広い領域を活性化することができるのです。

①食事で、料理をして頂くことをお勧めしましたが、料理は指を動かすという作業によっても、脳を活性化しているのです。

特に、親指を動かすことが、より「脳」を活性化し、血流も上げることがわかっています。親指は5本の指の中で最も器用に動かすことができ、その時、「脳」は複雑な指令を親指に送っています。人間は親指を使ってはじめて、望む動作を行えることから、「親ゆびは‶意欲”の象徴である」と考えられています(長谷川嘉哉(2015))。

毎日、親指を動かし続けることによって、あなたの脳はより活性化され、気がついたら意欲に満ちた毎日を送っていることでしょう。

*ホムンクルス:ラテン語で小人の意

③人的環境

人間の存在には生物学的側面、心理学的側面、社会学的側面があり、この3つの側面が複雑に絡み合っています。

①食事 ②運動は、主に生物学的側面に焦点を当てて書いていますが、本当に大切なこと、すなわち①と②の基盤となるものこそ、③人的環境なのかもしれません。

「食事、運動を見直して、今日から頑張るぞ!」と決め、実行に移そうとしたその時に、「あなたの性格では無理、無理、できるわけない。それに生活習慣と脳なんて関係しているはずが無い。何をやっても脳は衰えていくだけだから。」と言われたとしましょう。もちろん、周囲の言葉など全く気にせず、ひたすら我が道を進んでいける方も中にはいらっしゃると思いますが、多くの方々は少しだけ心が折れてしまうのではないでしょうか。

扁桃核は上記のような感情を含め、「快・不快」に関わる感情を司り、意思決定において作業記憶と深く関連しています。認知症では、感情の起伏が乏しくなることで、脳の機能全体が低下すると言われています。

 つまり、感情豊かな生活を送ることをお勧めしたいのです。

「快・不快」のどちらの感情も、脳に刺激を与えます。ただ、あまりに「不快」な感情が続けば、それが大きなストレスになり、「物忘れ」の改善どころか、重篤な心身の不調をもたらします。しかし、日常生活の中ではよほど特別な人的環境でない限り、「快」だけの人間関係を持つことは不可能です。

でも、安心して下さい。世界の総人口74億人です。あなたが年齢を重ねても幅広い(多様な)出会いを求め続ければ、あなたの「快」を刺激してくれる人との出会いも相対的に増え、扁桃核は「快」の感情を中心に作業記憶とのネットワークを強化し、フル回転し始めます。

ぜひ、今まで築いてきた人間関係を大切にしつつ、多くの出会いを求め、必要に応じて人間関係のリニューアルを行って下さい。

「脳」に優しい食事・運動・人間関係が「物忘れ」を改善させるベースとなるのです。

【引用・参考文献】

1)宮澤賢史: 医者が教える「あなたのサプリが効かない理由」. イーストブレス出版, 2018
2)那須由紀子: 栄養で人生は変わる. 旭屋出版, 2018
3)長谷川嘉哉: 一生使える脳. PHP新書, 2018
4)Epifanio Bagarinao, et al: An unbiased data-driven age-related structural brain parcellation for the identification of instrinsic brain volume change over the adult lifespan. Neuroimage. 169: 134-144, 2018
5)Croll PH, et al: Better diet quality relate to larger brain tissue volume:The Rotterdam Study. Neurology. 90(24): e2166-e2173, 2018
6)主婦の友インフォス(編): 物忘れ・認知症を自力で食い止め、脳力をどんどん高めるコツがわかる本. 主婦の友社, 2017
7)Matura S, et al: Effect of aerobics execise on brain metabolism and grey matter volume in older adults: result of the randomized controlled SMART trial. Transl Psychiatry. 7: e1172, 2017
8)Yuka Okada & Koji Ohira: Population dynamics of neural progenitor cells during aging in the celebral cortex. Biochemical and Biophysical Research Communications. 493: 182-187, 2017
9)橋本道男: 食事・運動と認知予防. 老年期認知予防研究会誌. Vol.20 No.4: 26-31, 2016
10)長谷川嘉哉: 親ゆびを刺激すると脳がたちまち若返りだす. サンマーク出版, 2015
11)茂木健一郎, 羽生善治: 「ほら、あれだよ、あれ」がなくなる本. 徳間書店, 2015
12)山田豊文: なぜ、マーガリンは体に悪いのか?. 健康人新書, 2015
13)主婦の友社(編): 食べて飲んで脳が若返る、物忘れが治る. 主婦の友社, 2015
14)久垣辰博: 食品成分による脳老化改善・認知症予防の可能性. 化学と生物. Vol.54 No.12: 892-900, 2013
15)山崎恒夫: 物忘れのはじまりのはじまり. Kitakanto Med J: Vol.63: 177-178, 2013
16)溝口徹: 「脳の栄養不足」が老化を早める. 青春出版社, 2009
17)鈴木はる江: 心身健康科学 5巻1号: 8-14, 2009
18)井関栄三: 物忘れの症状と病態. 順天堂医学. Vol.51: 392-396, 2005

作成者:中村 江里(臨床分子栄養医学研究会 認定カウンセラー /認定ライター)

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