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臨床分子栄養医学研究会

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宮澤賢史

Fanapt依存から抜け出す「脳と身体の土台づくり」

宮澤賢史 · 2026年1月31日 ·

Fanapt(一般名イロペリドン)は統合失調症や双極性障害に使われる「非定型抗精神病薬」だけれど、15年ほど使われてきたわりに長期使用のデータがまだまだ少ないです。

血糖・体重増加、心電図異常、不随意運動、肝障害、白血球減少、プロラクチン上昇、認知機能低下などが懸念されるとのことです。

さらにFanaptはアセチルコリンを強くブロックする「抗コリン作用」が強く、便秘・尿が出にくい・目のかすみ・認知機能の低下・心臓や眼のトラブル、ひどくなると「赤い・乾いた・見えない・おかしい・熱い・尿が出ない」といった中毒症状まで起こりえます。

僕、昔から「映画の中の精神科シーン」をつい職業目線で見ちゃうタイプで。
主人公が薬を飲んでフラフラしながらも「まあ落ち着いてるからいいか」みたいな描かれ方、けっこうありますよね。

でも現場で話を聞いていると、リアルはだいぶ違う。
たとえば、

– 「夜は眠れるようになったけど、感情まで眠った感じがする」
– 「イライラは減ったけど、頭にモヤがかかったまま」
– 「太った、体が重い、やる気も出ない → さらに自己肯定感が下がる」

こんな声を、何年も同じ薬を続けている人から本当にたくさん聞きます。

—

僕から見ると、Fanaptに限らず「長期の抗精神病薬」を考えるときのポイントは、ざっくり言うとこんな感じです。

– ①「症状を消す」役割
→ 火事の火を消す消火器みたいなもの。急性期にはすごく大事。

– ②「脳と体のブレーキ」を踏みっぱなしにする負担
→ 年単位で続けると、
– ドーパミン:やる気・快楽のシステムが鈍る
– アセチルコリン:記憶・集中・自律神経・筋肉のコントロールが落ちる
こういう「見えにくいコスト」がじわじわ溜まる。

– ③「薬だけでバランスを取ろうとする」ことの限界
→ 生活・栄養・腸内環境・ホルモン・ストレスの構造がそのままだと、
どこかで「効かない」「副作用がきつい」「増量の繰り返し」になりがち。

だから、僕は栄養療法を「薬の敵」ではなく「薬の足場づくり」として使います。
頭の中のイメージはこんな感じ。

薬だけ:
「ぐらぐらのテーブルの上に、重たい花瓶を無理やり置いて立たせてる」って状態。

薬+栄養・生活の立て直し:
「まずテーブルの脚を補強する → そのうえで、花瓶を少し軽くしても倒れないようにする」ってこと。

—

臨床経験から言うと、Fanaptのような抗精神病薬を使っている方で「栄養状態がボロボロ」のケース、本当に多いです。

典型的なパターンをいくつか挙げると、

– そもそも食べてない/食べられない
→ 朝:コーヒーだけ
→ 昼:パンかおにぎり1個
→ 夜:コンビニ弁当+お菓子

– たんぱく質と鉄・亜鉛不足
→ 神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン)を作る材料が足りない
→ 抗精神病薬を減らそうとしても、脳に「予備体力」がないから悪化しやすい

– ビタミンB群・マグネシウム不足
→ 解毒・代謝の能力が落ちている
→ 同じ量の薬でも「効きすぎる+副作用が出やすい」体になっている

– 腸内環境がガタガタ
→ 便秘or下痢、不規則な生活、甘いものと小麦やめられない
→ セロトニンの多くは腸で作られるのに、ここが炎症だらけ

こういう土台のままFanaptを何年も続けると、
記事にあるような「アセチルコリン抑制」「血糖・脂質の乱れ」「認知機能の低下」が、
生活習慣と合わさって一気に表に出てくるんです。

—

ここで「栄養療法って何をするの?」を、Fanaptの話と絡めて超シンプルに整理すると、

1. 抗コリン作用でダメージを受けやすいところを守る
 → 脳(記憶・集中)、心臓、消化、目、膀胱
 → 具体的には:
  - 良質な脂質(魚・亜麻仁・えごま)で神経の膜を守る
  – B群・マグネシウムで神経と代謝を回す
– 食物繊維と水分で便秘を最小限にして、腸からの毒素を減らす

2. ドーパミン・セロトニンの「材料」をしっかり入れる
 → たんぱく質(肉・魚・卵・大豆)、鉄、亜鉛、ビタミンC
 → 薬の量をいじる前に、「ガソリンタンクを満タンにしておく」イメージ

3. 血糖と体重コントロールを、薬任せにしない
 → 白米・パン・ジュース中心の「血糖ジェットコースター」生活をやめる
 → 低GIの主食+たんぱく質+脂質をセットにして、血糖の波を小さくする
 → これだけで、
  - イライラ
  - 急な不安
  - 集中切れ
  がかなりマイルドになるケースが多いです。

4. 「減薬の耐性」をつける
 → いきなり薬を減らすんじゃなくて、先に
  - 睡眠
  – 食事
– 日中の光浴び
– 軽い運動
  を整えておく
 → ここができている人は、同じペースで減らしても「ブレーキの戻り」がゆるやかになる印象があります。

—

読者の頭の中を勝手に代弁すると、

– 「薬をやめたいけど、またあのツラい状態に戻るのは絶対イヤ」
– 「でも、このまま一生飲み続けて、体がボロボロになるのも怖い」
– 「どこから手をつけたらいいか分からないし、主治医にどう相談すればいいのかも分からない」

こんな感じだと思うんです。

ここで整理すると、

– いきなりの断薬 → リスク高すぎ
– 主治医任せで「ただ飲み続ける」 → 体の長期リスクが見えないまま
– 自分でできる一歩 → 栄養と生活習慣で「脳と体の下地づくり」

ってこと。

だから僕は、
「薬の是非」より前に、まず

– 血糖のジェットコースターをおさえる
– たんぱく質とミネラルを増やす
– 腸を整える

この3つを、Fanaptみたいな強い薬を飲んでいる人こそ、最優先で学ぶべきだと思っています。
薬の量をどうするかを話し合うのは、その「基礎工事」が少しでも進んでからの方が、安全だし選択肢も増えるからです。

また書きますね!

参考にした記事:
Fanapt Long-Term Effects: Understanding the Risks

リアルタイム更年期ケア:ホルモン波を読み解く栄養戦略

宮澤賢史 · 2026年1月29日 ·

こんにちは、宮澤です。

先日、「Kara Fitzgerald, NDによれば…」という形で紹介されていたウェビナー告知を読んだんですが、要はこういう内容です。更年期・周閉経期のホルモンって、血液検査を数ヶ月に1回ポンと測るだけだと“瞬間の一枚写真”にすぎず、本当の姿が見えにくい。そこで、Miraという在宅ホルモンモニタリングツールを使って、エストロゲンやFSHなどを連続的に追いかけると、診断の精度が上がるし、HRT(ホルモン補充療法)の効果判定や調整もしやすくなる。実際の症例とサイクルチャートをもとに、「リアルタイムでホルモンを見ると、こんなふうに意思決定が変わるよ」という具体的なケーススタディをやりますよ、というのがこの記事の主旨なんです。

僕、ついこの前もNetflixで家族ドラマを見ていて、「お母さんが急にイライラして家族に当たってしまう」みたいなシーンに妙にリアリティを感じてしまって。臨床でも、40代後半〜50代前後の女性が「仕事も家もそこそこうまくいってるのに、心と体がジェットコースターみたいで自分じゃないみたい」と話してくれることがすごく多いんです。でも、その状態で病院に行って、採血を1回だけして「ホルモンは年齢相応ですね、様子みましょう」で終わるケースも少なくない。これって、映画の1シーンだけ切り取って「はい、この人はこういうキャラです」と決めつけるようなもので、本当はもっと波があって、背景があって、日によって全然違う顔をしているのに…という違和感をいつも持っていました。

僕から見ると、更年期のホルモンって「毎日値札が変わる株価」みたいなもので、月1回の株価チェックだけで投資戦略を立てるのは、さすがに無謀だよね、って感覚なんです。臨床経験から言うと、患者さんの頭の中はたいていこんな感じです。
→「夜中に何度も目が覚める」
→「イライラしたくないのに夫や子どもにキツくあたってしまう」
→「検査すると“異常なし”って言われる」
→「じゃあこのツラさは気のせい?メンタルの問題?」
このギャップを埋めるのに、リアルタイムなホルモンデータ+栄養療法の組み合わせは、かなり強力なツールだと思っています。

ここから栄養療法の話に自然に入りますが、僕がやっていることをざっくり書くと、

– からだ全体の「ホルモンを作る・運ぶ・代謝する」インフラを整える
– そのうえで、必要ならHRT(ホルモン補充)やサプリを“狙って”足す
– できるだけ「感覚」と「データ」を合わせていく

ってことなんです。

顧客(患者さん)の頭の中を、もう少しリアルに想像してみると…

– 「ホットフラッシュがいつ出るか分からない」
– 「会議の大事な場面で汗が噴き出したらどうしよう」
– 「寝つきが悪いから、明日の朝もボーッとしてミスしそう」
– 「とりあえずサプリはいろいろ飲んでるけど、何が効いてるのか分からない」

こういう“見えない不安”が渦巻いている状態なんですよね。

ここにリアルタイムのホルモンモニタリングを乗せると、頭の中のモヤモヤが、少しずつこう変わっていきます。

→「この週はFSHが高めで、寝つきも悪くなるパターンだな」
→「このタイミングで、糖質を控えめにして、マグネシウムとビタミンB群を厚めに入れておこう」
→「エストロゲンが下がり気味の時期は、気分の波も出やすいから、予定の詰め込みすぎを避けよう」

つまり、「なんとなくしんどい」から「この時期の私のパターンはこれ」というふうに、セルフマネジメントができるようになっていくんです。

栄養療法的に見ると、更年期ケアの土台はすごくシンプルで、

– 良質なタンパク質(ホルモンの原料)
– オメガ3脂肪酸(炎症とメンタルの安定)
– ビタミンB群・マグネシウム(ストレス耐性と代謝)
– 食物繊維と発酵食品(腸内細菌とエストロゲン代謝)

これを「ただなんとなく」じゃなく、「自分のホルモンの波に合わせて微調整する」って発想がポイントなんです。
ここに、Miraみたいな在宅モニタリングでFSHやエストロゲンの変化をリアルタイムに確認できると、

– 「あ、今は体が頑張って卵巣を叩いてる(FSH↑)時期だから、睡眠とストレスケアを手厚くしよう」
– 「この1ヶ月、HRTを変えた結果、ホルモンの波が落ち着いてきてるな。じゃあ栄養面はこのまま継続」

といったふうに、「手応えのある自己管理」がしやすくなる、というイメージです。

臨床経験から言うと、更年期世代の方がほんとうに欲しいのは
「若い頃のホルモン値に戻すこと」じゃなくて
「これから何が起こるか、だいたい読めていて、対処のカードを自分で持てている感覚」
なんです。

そのためには、

– 点(年1の健診や採血)じゃなく、線(経時的なデータ)でホルモンを見ること
– データに振り回されず、「自分の体感」と「生活パターン」とセットで理解すること
– そして、土台としての栄養・睡眠・ストレスマネジメントを“地味に継続”すること

この3つを、できる範囲でいいから押さえておくのが大事だと僕は思っています。
だからこそ、「ホルモン検査を増やすかどうか?」より前に、「自分のホルモンの波を言語化して、栄養と生活を微調整するスキル」を学ぶべきなんです。
検査は、そのスキルを後押ししてくれる“ナビゲーションツール”くらいに考えると、すごく使いやすくなります。

また書きますね!

参考にした記事:
[Is Infrequent Serum Hormone Testing Failing Peri- & Menopause Care? A Real-Time, Case-Based Guide](https://www.drkarafitzgerald.com/2026/01/28/webinar-hormone-testing-menopause/)

「ちょっとだけ生活改善」でメンタルを安定させる方法

宮澤賢史 · 2026年1月15日 ·

こんにちは、宮澤です。

このあいだ久しぶりに昔の友人と会ったんです。
昔は毎晩のように飲み歩いてたメンバー。
ところが今回は、彼がノンアルコールビールを飲みながら、夜10時には帰るって言う。
理由を聞いたら「睡眠と腸内環境を整えたら、メンタルが安定してさ。薬の量も減ったんだよね」とサラッと言うわけです。
昔の彼しか知らない僕からすると、ほぼ別人。
でも、よくよく話を聞くと、やってることはすごく地味でシンプルなんです。

・夜更かしをやめて、同じ時間に寝る
・朝、10分だけ散歩
・白いパンとお菓子を減らして、野菜と魚を増やす
・お酒は週1に
・寝る前スマホはやめて、湯船につかる

「え、それだけ?」って思うかもしれませんが、まさにこういう生活の組み立てをメンタル治療に本気で取り入れよう、という流れが世界的に出てきていて、その一つが「ライフスタイル精神医学」。
Meredith Dunnによれば、栄養・運動・睡眠・依存のコントロール・ストレスマネジメント・人とのつながり・生きがいといった要素を、薬物療法やカウンセリングと同じくらい“主役”として扱うべきだ、という考え方です。
B12や葉酸、ビタミンD、鉄、オメガ3、マグネシウム、亜鉛みたいな栄養欠乏が、気分の落ち込みや不安、集中力低下、睡眠の質に直結していること。運動がBDNFという脳の成長因子を増やして、うつや不安、ADHDの症状をやわらげること。睡眠を整えることが、毎晩脳をリセットする作業になっていること。アルコールやネット・ゲームなどの依存行動が、ストレスや孤立感を増やしてメンタル不調を長引かせること。こういったエビデンスをベースに、薬だけに頼るのではなく、「生活を整えること」そのものを治療として組み込んでいこうという流れなんですね。

で、ここからが本題。
僕が栄養療法やライフスタイル介入をやっていてつくづく感じるのは、みんな「薬 VS 生活改善」みたいな二択で考えがちだけど、現実はぜんぜん違うってことです。
多くの人の頭の中って、たぶんこんな感じなんですよね。

– できれば薬は飲みたくない
– でも、生活を変える自信もない
– だから、とりあえず今のままで様子見…

→ そのまま数ヶ月〜数年たって、「やっぱりつらいまま」というパターン。

でも、臨床経験から言うと、いちばん結果が出やすいのは
「薬 + 生活の“ちょっとだけ”改善」
の組み合わせなんです。

例えばうつっぽさや不安が強い人には、いきなり
「砂糖やめましょう」
「毎日30分運動してください」
なんてまず言いません。
それ、ほぼ挫折するコースなので。

代わりにやるのは、こんな感じの“超ミニマム設計”。

– 朝:水をコップ1杯だけ必ず飲む
– 昼:白いパンを2日に1回、玄米おにぎりかそばに変えてみる
– 夜:寝る90分前からスマホはベッドに持ち込まない
– サプリ:血液検査で鉄やビタミンDが低ければ、そこだけピンポイントで補う
– 運動:1日トータル10分のゆっくり散歩(分割OK)

これくらいの「ハードルの低さ」だと、メンタルがしんどい時期でもなんとか続けられる。
そして、2〜3週間くらいすると

「朝のダルさがちょっとマシかも」
「イライラの波が少しゆるやか」
「午後の頭のボーッと感が減った」

みたいな“わかりにくいけど、じわっと効いてる変化”が出てきます。
ここで初めて、「もうちょっとやってみようかな」という気持ちが生まれる。
この小さな成功体験を積み重ねていくと、薬の量を減らせたり、ときには中止できたりするケースも出てきます。

僕から見ると、栄養療法って「根性で食生活を変える話」じゃなくて、
・脳の燃料(糖質の質や量)
・脳の材料(脂質・アミノ酸・ビタミン・ミネラル)
・脳のメンテナンス時間(睡眠)
・脳にかかるノイズ(アルコール・スマホ・ストレス)
を、できる範囲で調整していく「環境設定」なんです。

つまり、
気合いでメンタルを立て直すんじゃなくて、
「立て直せる土台を、身体側からちゃんと用意してあげる」ってこと。

だから、もし今あなたが
「カウンセリング受けてるけど、もう一歩スッキリしない」
「薬は効いてる気がするけど、だるさやモヤモヤは残ってる」
「頑張ろうと思っても、そもそも頑張るエネルギーが湧かない」
という状態なら、メンタル面だけを責めるんじゃなくて

→ 栄養 → 睡眠 → 運動 → 依存的な習慣

このあたりを“治療のど真ん中”として見直してみる価値がある、ってことなんです。
そして、それを自己流の根性論ではなく、「エビデンス+小さな習慣設計」として学ぶのが、これからの時代のメンタルケアだと僕は思っています。

だからこそ、僕は栄養療法やライフスタイル精神医学を「オプション」ではなく「必須科目」として学ぶべきだと考えています。
まずは今日の食事と睡眠、ちょっとだけ振り返ってみてください。そこが変わると、意外なくらい心が変わります。

また書きますね!

参考にした記事:
What is Lifestyle Psychiatry?

GLP-1により起こる摂食制限に対処する方法

宮澤賢史 · 2026年1月6日 ·

この記事によれば、GLP-1受容体作動薬(セマグルチドなど)の使用はここ数年で一般人口で700%増加し、糖尿病患者の4人に1人以上が処方を受けています。

GLP-1薬は血糖コントロールだけでなく、NF-κB抑制やTNFα・IL-6低下など、強い抗炎症作用を持ち、心血管疾患や認知症、炎症性腸疾患への応用も期待されています。

一方で、強い食欲抑制により「ほとんど食べない」「お腹がすいたときだけ高カロリージャンクを食べる」といった“無計画な摂食制限”が起こりやすく、その結果、食物繊維・タンパク質・ビタミン・ミネラルが不足し、腸内細菌叢の多様性低下とディスバイオシス(腸内環境の乱れ)を招く可能性が指摘されています。

Faecalibacterium prausnitzii、Bifidobacterium、Akkermansia、Lactobacillusといったキーストーン細菌や、酪酸などの短鎖脂肪酸が減少すると、腸粘膜バリアが弱まり、リーキーガットや慢性炎症、「インフラメイジング」(炎症性老化)につながるリスクがあります。

Doctors data社のマルコウスキー博士は、GLP-1使用患者では便検査(GI360など)で多様性・ディスバイオシス指数・キーストーン細菌・短鎖脂肪酸をモニターし、食物繊維・発酵食品・ポリフェノールを意識した栄養介入を同時に行うべきだと提案しています。

僕はGLP-1薬を「悪者」とは考えていません。むしろ、うまく使えば、血糖・体重・炎症を整える強力なツールになり得ます。ただし大事なのは、「薬で食欲を消す」ことと「体が必要とする栄養を満たす」ことは、まったく別物だということです。

問題の本質はGLP-1薬ではなく、「食事量が減るのに、質を上げていないこと」にあります。根本原因は、
・そもそもの食の質が低い(超加工食品中心)
・食欲が落ちたことで、さらに「楽でおいしいもの」だけを選びがち
・腸内細菌のことを誰も教えてくれない
この3つが重なって、ディスバイオシスに向かっていく、という構図です。

例えば同じGLP-1を使っていても、

– 少量でも、よく噛んで、野菜・豆・海藻・発酵食品をしっかり摂っている人
– 朝はコーヒーだけ、夕方になってフライドチキンとアイスで済ませる人

では、腸内環境も、将来の健康もまったく違います。

どんな薬を使うかよりも、「その人が毎日何を口にしているか」の方がはるかに重要です。

では、どうすればいいか。

ポイントは「食事を薬にする」という発想で、“少量高密度食”を組み立てることです。

1. 量ではなく“密度”を上げる
 食べる回数が減るほど、1回の食事に栄養を詰め込む必要があります。
 ・毎食に「たんぱく源+たっぷり野菜+良質な脂」をセットにする
 ・白い主食だけで終わらせない(雑穀・オーツ・豆類を混ぜる)

2. 腸内細菌への“差し入れ”を忘れない
 自分のためだけでなく、「お腹の中の住民」のために食べるイメージです。
 ・水溶性食物繊維:玉ねぎ、長ねぎ、ゴボウ、オクラ、海藻、オーツ、豆
 ・レジスタントスターチ:冷ましたご飯やじゃがいも、豆類
 ・発酵食品:味噌、納豆、キムチ、ヨーグルト、ぬか漬け

3. 個体差が重要
 GLP-1で便秘が悪化する人、逆に下痢しやすくなる人もいます。同じ「食物繊維」でも、合う量や種類は人によって違うので、
 ・少量から増やす
・お腹の張り・便の状態を毎日メモする
 といったフィードバックが不可欠です。

4. 自然のチカラを信じる
 短鎖脂肪酸のような抗炎症物質は、サプリではなく、もともと僕たちの腸内細菌が作る“自然の薬”です。GLP-1で食欲を調整しつつ、腸内細菌には食物繊維や発酵食品という“エサ”を届けてあげる。この二刀流こそ、薬と自然のチカラを両立させる道だと思います。

GLP-1を使うかやめるか、自己判断で振り回されるのではなく、「どういう食事なら、この薬のメリットを最大化してデメリットを減らせるか」を、一緒に考えてくれる医師・栄養の専門家と組むことが理想ですね。

ケトン食がひらく代謝精神医学

宮澤賢史 · 2025年12月16日 ·

ケトン食を用いた「代謝精神医学」が、機能性精神医学と従来のエビデンスベース精神医療をつなぐ新しいアプローチとして注目されています。

従来ダイエット法とみなされていたケトジェニック・ダイエットが、インスリン抵抗性、炎症、ミトコンドリア機能など「脳のエネルギー代謝」を改善することで、うつ病、双極性障害、統合失調症、不安障害などに有効である可能性が、臨床研究から示されつつあります。

ケトン体、とくにβ-ヒドロキシ酪酸は、ミトコンドリア効率を高め、NLRP3インフラマソームを阻害して神経炎症を抑えることが報告されています。

最新の試験では、双極性障害・統合失調症患者で代謝症候群が全員で改善し、精神症状も軽快。難治性のうつ・不安が数週間で寛解したケースシリーズ、大学生のうつ病で抑うつスコアが約7割改善した試験、PTSD・ADHD・過食など複数診断が同時に良くなった報告もあります。

精神科の領域では、長い間セロトニンなど神経伝達物質のバランスに注目してきました。でも、その神経伝達物質を作る材料も、放出・再取り込みを調整するエネルギーも、すべて「代謝」が支えています。ガソリンが入っていない車を、電子制御だけいじって直そうとしていたようなものです。

つまり、「血糖調節が悪く、慢性炎症とミトコンドリア機能低下を抱えた脳」を、ケトン体という代替エネルギー源でサポートすると、薬だけでは届かなかった部分が動き出すかもしれない、ということです。

とはいえ、全員にお勧めするわけではありません。重要なのは次の点です。

1. 根本原因を探す
 うつ、不安、集中力低下、過食の背景には、低血糖やインスリン抵抗性、栄養欠損(鉄、亜鉛、ビタミンB群など)、腸内環境の乱れ、睡眠障害、慢性炎症など、さまざまな根本要因が絡んでいます。
 今回の研究は「代謝異常」をターゲットにしてうまくいった例ですが、全員がそこに主因を持つとは限りません。血液検査や生活歴を丁寧に評価し、「本当に代謝から攻めるべき人なのか」を見極める必要があります。

2. 個体差を理解する
 ケトン食は、体質・持病・ライフスタイルによって、向き不向きがはっきり出る食事法です。
 ・甲状腺機能低下が強い人
 ・極端な脂質代謝の弱さがある人
 ・摂食障害の既往がある人
 などは、慎重な設計が必要です。
 「みんなに同じケトン比率・同じカロリー」ではなく、その人の代謝、嗜好、生活、価値観に合わせて微調整していく。

3. 自然のチカラを取り入れる
 ケトン食は、もともと人類が飢餓や冬を乗り越えるために備えてきた「代謝のスイッチ」を意図的に活かす方法です。人間の体は、ブドウ糖だけでなく、ケトン体でもきちんと働くよう、もともと設計されています。その意味で、これはとても「自然な」アプローチです。
 一方で、食事療法は一人では続きません。医師、栄養士、カウンセラー、家族などのサポートがあってはじめて、現実の生活の中に根づきます。治療家と患者さんが、「試行錯誤しながら一緒に根本原因に迫っていく」関係性がとても重要です。

ケトン食を中心とした代謝精神医学は、「薬か、それとも心理療法か」という二択に、第三の選択肢を加えてくれています。これを「みんながケトン食をすべき」と読むのではなく、「メンタルの不調にも、血糖・インスリン・ミトコンドリア・炎症といった“代謝の視点”を必ず含めよう」というメッセージとして受けとるべきです。

根本原因を探り、その人の体質と生活に合わせて、食事を薬として使いながら、より高い健康レベルを一緒に目指す。そうした栄養療法の中の一つの有力なツールとして、ケトン食を位置づけるのが、現時点で最も現実的で安全な使い方ではないでしょうか。

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