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臨床分子栄養医学研究会

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個人差と根本原因

初心者のための栄養療法ロードマップ

宮澤賢史 · 2021年6月19日 ·

栄養療法を勉強したいけど、何から始めればよいかわからない、という方はいらっしゃいませんか?実践講座にはたくさんの動画がアップされているので、どれから見たらよいか迷うと思います。

初心者の方はまず、体の仕組みを知ることから始めてください。これを理解しないことには体の不調に対処できないからです。例えば、エネルギーが生まれる仕組みを知らずに慢性疲労に対処することはできないし、炎症を起こす仕組みと抑える仕組み、両方を知らずして慢性炎症を治すことは難しいでしょう。したがって、最初に学ぶべきは生物学や生化学なのです。

そして、それを理解するために用意した講座がこの『栄養療法成功へのロードマップ』です。ロードマップは5つのステップで構成されており、全てを網羅すると、サプリメントをとっても疲れが取れない理由や、タンパク質をたくさん摂っているのに低タンパク質が治らない理由が理解できると思います。それではさっそくその中身を見ていきましょう。

1. 栄養療法ロードマップの位置付け

「人生を変える80対20の法則」(リチャード・コッチ著)という本があります。80対20の法則はイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が提唱したもので、パレートの法則とも呼ばれています。例えば、売上げの8割は全顧客の2割が生み出していることがわかっています。その2割の顧客はロイヤルカスタマーと呼ばれ、企業にとって最も大切にされる存在になります。また、住民税の8割は全住民の2割の富裕層が担っています。国の経済政策が富裕層向けになる理由がここにあります。物事には全て偏りがあり、その傾向を見つけ出すと人生のあらゆる場面で役立つという話です。これは経済の話ですが、それ以外にも様々なことに当てはまります。

例えば、私のiPhoneに入っているアプリの数は140個です。でも、そのうち頻繁に使うのは30個程度、つまり21%でした。これも80対20の法則に当てはまりますね。140個全てのアプリの使い方を習得するよりも、30個のアプリに精通して使いこなす方が効率的ということです。これは栄養療法にも同じことが言えます。

『栄養療法成功へのロードマップ』の内容は、栄養療法に必要な知識のうちの2割程度ですが、約8割の栄養的問題はこれだけで解決できると思います。メチレーション、ホルモンバランス、デトックスなど、学ぶべきことはたくさんあるのですが、そこに手をつける前にこの2割に集中した方がいいだろうと考えています。逆に言うと、ここを十分把握しないままより高度な栄養療法の知識を求めても、あまり役に立たないでしょう。

2. サプリメントで疲れが取れないワケ

ミトコンドリアサプリを摂っても疲れがとれない、と感じている方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?宮澤医院に来院される患者さんにはサプリメントに詳しい方が多いのですが、うまくいっていないケースがほとんどです。なぜうまくいかないのか?それは、効いているサプリメントが20%程度で、残り80%が無駄になっているからかもしれません。私の仕事は、代謝が止まっている根本原因を見つけ出し、80%の無駄なサプリメントを取り除くことから始まります。

2-1. エネルギーの生産工場はミトコンドリア

ミトコンドリアは細胞の中にある小器官で、エネルギーを生み出す場所です。エネルギーの大部分はこのミトコンドリアで作られています。

エネルギーが作られるには、糖質、タンパク質、脂質の3大栄養素に加え、ビタミンやミネラルなどの補助因子が必要です。これら5つが組み合わさって、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーが作られます。

2-2. ミトコンドリアサプリの中身

ミトコンドリアサプリは、現代の食事で不足しがちなビタミンやミネラルなどの補助因子をまとめて詰め込んだものです。補助因子というのは、CoQ10やマグネシウム、亜鉛、ビタミンB群などです。

こちらのミトコンドリアサプリを見てみると、ビタミンB群、マグネシウム、CoQ10に加え、脂肪を燃焼するためのカルニチン、活性酸素を抑えるためのビタミンCなどが配合されています。しっかり食事を摂ってサプリメントを補給すれば、栄養的には万全に思えますよね?でも実際はうまくいかない人が本当に多いのです。

2-3. 疲れやすくなる3つの原因

疲れやすくなる原因として、大きく分けて3つのパターンがあります。

  1. ミトコンドリアでうまくエネルギーを作れないパターン
  2. 糖質や脂質が細胞やミトコンドリアの中に入れない、もしくは供給が不安定なパターン
  3. エネルギーは作れているが、無駄に消費されているパターン

これらのパターンを一つずつ詳しく解説していきましょう。

3. その1. ミトコンドリアでうまくエネルギーを作れないパターン

3-1. 人間のエネルギー回路はたったの3つ

人間のエネルギー回路は、解糖系、TCA回路、電子伝達系、これら3つだけです。解糖系はブドウ糖からピルビン酸を作る回路です。TCA回路はミトコンドリアの中にあり、ピルビン酸から水素を作っています。電子伝達系はミトコンドリア膜にあり、TCA回路で作られた水素を使って一気にエネルギーを生み出します。エネルギーの約9割がこの電子伝達系で作られます。

ポイントは、人間の体内でこれ以外にエネルギーを作る回路がないということです。したがって、エネルギー不足の人は、これらの代謝のうち少なくとも1つが滞っているということになります。

3-2. ミトコンドリアに必要な栄養素

ミトコンドリアサプリは、エネルギー産生に必要な栄養素を補うことを目的に設計されています。これらの栄養素をサプリメントで摂っても疲れが取れないということは、栄養素がうまく消化、吸収、利用できていない可能性があるということです。

ミトコンドリアに必要な栄養素
☑️ 解糖系にはビタミンB群
☑️ TCA回路にはビタミンB群、鉄、マグネシウム
☑️ 電子伝達系にはビタミンB2、鉄、CoQ10
☑️ 鉄を錆びさせないためのビタミンC、ポリフェノール

ビタミンB群、鉄、マグネシウム、CoQ10、これらの栄養素をあなたはうまく使えていますか?さっそくチェックしていきましょう。

3-3. 鉄吸収が悪い原因

体内に鉄が十分あるかどうかは、健康診断の貧血の項目からある程度推測できますが、より確実性を求めるならフェリチン値を測定するとよいでしょう。ヘモグロビン値が12以上あっても、フェリチン値が20以下であれば鉄欠乏症状が出ます。食事由来の鉄摂取量が不十分な場合、サプリメントで補給するとフェリチン値はすぐに上昇します。

しかし、鉄剤や鉄サプリを摂っているにも関わらず、フェリチン値が上がらない人もいます。原因は大きく3つ考えられます。1つめは炎症です。炎症が強いと、肝臓でヘプシジンというタンパク質が作られ、フェロポーチンの動きを止めてしまいます。フェロポーチンは、腸上皮細胞の鉄や、マクロファージからリサイクルされる鉄、肝細胞に貯蔵されている鉄などを血液中に排出する役割を担うタンパク質です。すなわち、炎症があるとヘプシジンが鉄の吸収と放出を止めてしまうということです。血液データ上では血清鉄が低い値を示します。この場合、いくら鉄サプリメントを摂ってもうまくいきません。炎症を治すことが最優先です。

Vitamins and Hormones. Volume 110, 2019, Pages 101-129
Chapter Five – Regulators of hepcidin expression
https://doi.org/10.1016/bs.vh.2019.01.005

2つめは乳製品です。鉄吸収を阻害する食品の代表格が乳製品です。乳製品はヘム鉄と非ヘム鉄、両方の吸収を阻害します。貧血が治らない人は、乳製品を摂ってはいけません。他にも、食品添加物やタンニン、フィチン酸などが鉄吸収を阻害します。

3つめは腸カンジダです。カンジダは健常人の腸にも住んでいますが、過剰に増殖すると腸に炎症を起こします。カンジダや腸内病原性微生物は人と鉄を取り合います。鉄は全生物の生存に必要な栄養素だからです。

鉄吸収が悪い原因
☑️ 炎症・・・ヘプシジンが鉄の動きを止める
☑️ 乳製品・・・ヘム鉄と非ヘム鉄の吸収を阻害する
 (他にも、食品添加物、タンニン、フィチン酸など)
☑️ 腸カンジダ・・・人と鉄を取り合う
 (他にも、腸内病原性微生物など)

3-4. 鉄は諸刃の剣

鉄はTCA回路にも使われるし、電子伝達系でエネルギーを生み出す際にも必要です。また、赤血球のへモグロビンのヘムに含まれており、酸素の運搬に関わっています。鉄は生命維持にとって重要なミネラルである一方、活性酸素の発生源になるという側面もあります。また、病原性微生物の栄養になり、増殖を促してしまうこともあります。

私の場合、患者さんに最初から鉄サプリメントを処方することはまずありません。高拍出性心不全(貧血の進行により酸欠状態になり、酸素を補おうとして心臓が頻脈になることで起こる不全)のような緊急時を除いては、最初から鉄を摂ってもあまりいいことがないからです。摂取した鉄が全てカンジダの餌になることで腹部膨満感が強くなったり、便秘がひどくなることもあります。また、炎症がある時に鉄を入れても、活性酸素の害がひどくなるだけです。鉄は体の状態を考慮して使うべき栄養素なのです。

3-5. 鉄の体内分布

体重にもよりますが、体内の鉄は3~4gで、そのうち65%は赤血球内でヘムとして存在し、残りの35%は脾臓やマクロファージ内でフェリチンとして存在します。下図の左がヘム、右がフェリチンですが、鉄が遊離すると活性酸素の発生源になってしまうので、簡単に遊離しないよう厳重に守られた状態で存在しています。

血液中の鉄は血清鉄と呼ばれ、トランスフェリンというタンパク質と結合して運ばれています。ヘムやフェリチンに比べ、鉄とトランスフェリンの結合は非常に弱いため、簡単に外れて活性酸素の発生源になります。そのため、血清鉄量は全体の0.1%と最小限に押さえられています。炎症を起こすと、体を炎症から守る仕組みが働き、血清鉄がさらに減ります。

鉄の体内分布
☑️ 体内の鉄は3~4%
☑️ 65%は赤血球内でヘムとして存在
☑️ 35%は脾臓、マクロファージ内でフェリチンとして存在
☑️ 血清鉄は全体の0.1%

ヘム鉄は吸収効率が良いと言われており、フェリチンを上げるのに有効です。ヘム鉄で上がらない場合は、キレート鉄で上がることもあります。ヘム鉄は非ヘム鉄に比べると安全な鉄ですが、そのヘム鉄でさえもずっと飲み続けると様々な害が出てきます。鉄を摂り過ぎて良いことは何にもありません。私がヘム鉄やキレート鉄を処方する場合は、必要最低限の量に留めています。それでフェリチンが上がってこないとか、貧血が改善しないのであれば、鉄吸収を阻害する要因を調べたほうがいいでしょう。炎症を抑えると、鉄サプリを摂らなくても勝手にフェリチンが上がるケースが多く見られます。また、女性の場合は、エストロゲンとプロゲステロンのバランスを整えると改善するケースもあります。

3-6. マグネシウムの重要性

エネルギーを作る際も使う際もマグネシウムが必要です。ATP(アデノシン3リン酸)は、アデニンとリボースに3つのリンが結合したもので、そこからリンが1つ離れると、その時にエネルギーを放出してADP(アデノシン二リン酸)に戻ります(ATP-ADPサイクル)。このようにリンがくっついたり離れたり、ぐるぐる繰り返しています。

電子伝達系の最後のステップで、ADPにリンが結合してATPになり、このATPがまたADPに戻る時にエネルギーが作られます。このリンを離す際に働くATPアーゼという酵素の補酵素がマグネシウムです。

マグネシウムが吸収されにくい原因はいくつか考えられます。まず1つめに、カルシウムとマグネシウムが配合されたサプリメントを使っている場合です。カルシウムとマグネシウムの吸収は拮抗します。もし、ALP(アルカリホスファターゼ)が上がらない、なかなか疲れが取れないなど、マグネシウムの枯渇が疑われる所見がある場合は、カルシウムを含まないマグネシウムだけのサプリメントにしてみて下さい。

The Journal of Nutrition, Volume 122, Issue 3, March 1992, Pages 580–586.
Interaction of Calcium and Phosphate Decreases Ileal Magnesium Solubility and Apparent Magnesium Absorption in Rats
https://doi.org/10.1093/jn/122.3.580

カルシウムとマグネシウムが一緒になっているサプリメントは比較的多く出回っていますが、その理由として原料的に供給しやすいことが挙げられます。ドロマイトといって、石灰岩の一部がマグネシウムに置き換わった鉱石がよく使われており、カルシウムとマグネシウムが2:1で含まれています。カルシウムとマグネシウムの比率は2:1が良いと言われていましたが、ミトコンドリア機能の改善を目的とするなら、1:1、あるいはマグネシウム単体のサプリメントの方がよいでしょう。余談ですが、カルシウム単独のサプリメントは決して取らないでください。心臓発作を起こすリスクが高まるので注意が必要です。

3-7. マグネシウムサプリの選び方

マグネシウムサプリを選ぶポイントは1つ、イオン化しているものまたはキレート化しているものを選ぶということです。マグネシウムは他のミネラル同様、腸上皮細胞のイオンチャンネルを通って体内に入るので、イオン化されている方が吸収率が上がります。イオンは水に溶けると電気を通す物質で、マグネシウムは水に溶けるとイオン化します。

BBA-Biomembranes. Volume 1828, Issue 11, November 2013, Pages 2778-2792
The structure and regulation of magnesium selective ion channels
https://doi.org/10.1016/j.bbamem.2013.08.002

私が使っているイオン化ミネラルは、Bio Nativus社のものです。アメリカのユタ州にあるグレートソルトレイクから採取した水で、塩分を取り除いて製品化されたものです。海水で一番問題になるのは水銀ですが、この湖は閉鎖系なので水銀汚染の影響を受けにくいと言われています。主成分は塩化マグネシウムです。水溶性の塩化マグネシウムは非常に吸収が良いので、1つの方法としてはこれがいいと思います。

もう1つの方法は経皮吸収させることです。マグネシウムはとても経皮吸収力が高いので、エプソムソルトを多めにお風呂に入れても十分吸収されます。「奇蹟のマグネシウム」(キャロリン・ディーン著)という書籍に詳しく書かれていますが、心臓発作や喘息の改善などに効果があるとされています。

次にキレートされたマグネシウムについてです。キレートとは、吸収されにくいミネラルをアミノ酸やクエン酸などの有機酸でカニバサミのようにはさみ込んで、吸収されやすい形に変えることを言います。イオン化マグネシウムとは異なり、アミノ酸が吸収される入り口から入っていくので、圧倒的に吸収がよくなります。ただし、法制上、キレート加工は日本のサプリメントメーカーはできないことになっているので、海外製のサプリメントを使うことになります。クエン酸マグネシウムやグリシン酸マグネシウムなどを使うのも手だと思います。

Magnes Res. 2003 Sep;16(3):183-91.
Mg citrate found more bioavailable than other Mg preparations in a randomised, double-blind study
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14596323/

ここまでマグネシウムサプリの紹介をしてきましたが、サプリメントを摂る前にやっておくべきことがあります。それは、腸を整えることです。腸を整え、乳酸菌を摂り、水溶性食物繊維の摂取量を増やすと、短鎖脂肪酸が増えてきます。短鎖脂肪酸はマグネシウムをキレートするので、自然なキレート効果が期待できます。したがって、腸を整えて海藻を摂るというのがマグネシウム吸収をよくするポイントです。

Z Ernahrungswiss. 1990 Sep;29(3):162-8.
Effects of short chain fatty acids and K on absorption of Mg and other cations by the colon and caecum
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2251858/

3-8. マグネシウム吸収の阻害要因

腸に炎症があるとマグネシウム吸収が落ちることがわかっています。腸の炎症が進行するとクローン病などに繋がってしまいます。宮澤医院を受診した150名のアンケートを集計したところ、マグネシウムを摂っていた人は16%で、そのうちの半分はカルシウムとマグネシウムが一体になったサプリメントを摂取していました。サプリメントを摂取していても、ALPが低いなど、Mgが欠乏している人がほとんどでした。そして、便中のライソザイムで腸の炎症を確認したところ、3分の2に腸の炎症がありました。

マグネシウムを効かせるためには、サプリの種類を選ぶこと、腸内環境を整えることが重要です。塩化マグネシウムはとても良いのですが、欠点は美味しくないことですよね。慣れてくると徐々に摂れるようになりますが、マグネシウムが足りない人ほどまずく感じると言われます。どうしても飲めないという人には、キシリトール入りの子供用マグネシウムパウダーを使うこともあります。エプソムソルトもおすすめではありますが、毎日入浴時に使うと疲れてしまうので、副腎疲労が強い人は頻度を考えて使うと良いと思います。1日の最低必要量は体重1kgあたり6mgです。鉄とは違い、マグネシウムは積極的に摂取したいミネラルです。

3-9. CoQ10の役割

CoQ10は電子伝達系の中心的な役割を担っており、不足するとエネルギーを十分に作ることができなくなります。また、CoQ10は加齢とともに減少します。特に心臓のCoQ10は80歳で半分以下まで減少します。医薬品としてのCoQ10は、1日30mgの用量で承認されていますが、あまり効果は出ていません。効かせるためには100~400mg必要だろうと言われています。

CoQ10はアセチルCoAからコレステロールと共に体内合成されます。血中コレステロールが低い人は、CoQ10もうまく作れていないと予測できますね。CoQ10レベルは、男性の年齢や女性の総コレステロール、セレンに相関関係があるという報告があります。CoQ10を摂るとコレステロール値が下がったり、CoQ10により動脈硬化が改善するとも言われています。

Biofactors. 1999;9(2-4):319-23.
High serum coenzyme Q10, positively correlated with age, selenium and cholesterol, in Inuit of Greenland. A pilot study
https://doi.org/10.1002/biof.5520090230

3-10. 栄養の負の連鎖

ミトコンドリアを正常に動かすためには、十分量のCoQ10が必要です。LDLコレステロールの結果を見直してみてください。LDLコレステロールが100以下の場合、おそらくあなたは十分にCoQ10を作れていないでしょう。低コレステロールは、疲れやすい人に共通する大きな問題です。ではコレステロールを上げればいいかというと、そううまくはいきません。なぜならコレステロールの体内合成にはエネルギー(ATP)をたくさん使うので、ミトコンドリア機能が低下している人にとっては、コレステロールを上げること自体とても難しいことなのです。

ミトコンドリア機能が低下しているから、コレステロールが低くなる、CoQ10も低くなる、さらにミトコンドリア機能が低下する、まさに栄養の負の連鎖です。実に多くの人がこの連鎖に陥っています。負の連鎖から脱出するためには、CoQ10サプリメントをうまく効かせることがポイントになります。

3-11. CoQ10の吸収には胆汁が必要

問題はCoQ10がイソプレノイド側鎖を持つ脂溶性の物質だということです。つまり、胆汁が十分に分泌されていないと吸収できないということです。胆汁はCoQ10や脂溶性ビタミンの吸収に欠かせない存在です。油を摂りすぎると下痢をしたり胃がもたれる人は、食後にCoQ10サプリメントを摂るとか、胆汁サプリやタウリンと一緒に摂るなどの工夫が必要です。CoQ10サプリは、還元型やミセルタイプのものがおすすめです。還元型のCoQ10であれば1日50mgで十分とも言われています。

3-12. ビタミンB群が枯渇するケース

ビタミンB群は、ミトコンドリアを動かすために最も重要な栄養素です。ここまで説明してきた鉄やマグネシウムといったミネラル、脂溶性のCoQ10は、吸収が難しい栄養素でした。一方、ビタミンB群は水溶性で、腸でもたくさん作られています。

日本栄養・食糧学会誌 Vol.37 No.2 157-164 1984
ヒト由来Bifidobacteriumによるビタミン産生
https://doi.org/10.4327/jsnfs.37.157

一見、不足することがなさそうな栄養ですが、最近問題となっているのは糖分の摂りすぎによるビタミンB群不足です。

原因不明の心不全、ビタミンB1欠乏かも脚気は過去の病ではない。イオン飲料多飲で肺高血圧症を起こす幼児も。

白米ばかり食べていた江戸時代の大名の多くがかかり、昭和20年代まで国民病といわれた「脚気」。豊かな食生活を送る現代人には無縁と思われているが、偏った食生活を背景にビタミンB1欠乏を来すケースは少なくない。離乳期を中心とした乳幼児がイオン飲料を多飲し、脚気衝心(ビタミンB1欠乏による心不全)などの深刻な障害を招く事例も報告されており、専門医は注意を喚起している。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201703/550405.html

この記事のように、スポーツドリンクを日常的に飲んでた乳幼児が、脚気による心不全で病院に運ばれるケースが頻発しています。500mLのスポーツドリンクには、角砂糖に換算して5~8個の糖が入ってます。ブドウ糖がミトコンドリアでエネルギー変換される際には、ビタミンB群をたっぷり使います。したがって、過剰な糖分が体内のビタミンB群を枯渇させてしまい、脚気等の症状を引き起こすのです。特に低血糖症状がある人は、気がつかないうちに糖質を過剰に摂ってしまうので、ビタミンB群がうまく効いていないと感じたら、自分が摂取している糖質の量をチェックしてみてください。

3-13. その他のミトコンドリア機能低下要因

ここまでは、ミトコンドリアに必要な栄養がうまく消化吸収利用できてないパターンについて解説してきました。他にも、水銀などの金属や、農薬などの有機溶剤、電磁波など、ミトコンドリア機能を低下させる要因は様々あります。大切なことは、足りない栄養をサプリで摂るだけではなく、足りなくなる原因を突き止めてそこに対処することなのです。

その他のミトコンドリア機能低下要因
☑️ 水銀などの金属
☑️ 農薬などの有機溶剤
☑️ 電磁波
☑️ 小胞体ストレス
☑️ 廃用性萎縮

4. その2. 糖質や脂質が細胞やミトコンドリアの中に入れない、もしくは供給が不安定なパターン

ここからは、糖質や脂質が細胞やミトコンドリアの中に入れない、もしくは供給が不安定なパターンについて解説していきます。糖質が細胞の中に入れないと言うと、特殊な病気を想像しがちですが、とても身近な病気があります。それは、糖尿病です。

4-1. グルコースが取り込まれる仕組み

血糖値が下がると膵臓からインスリンが出ます。トランスポーターという糖の取込み口になるタンパク質があり、インスリンがこの受容体に結合すると、GLUT4(グルコース輸送タンパク)が細胞の中に引き込まれて細胞膜と一体化し、グルコースを取り込みます。細胞内に入ってきたグルコースはミトコンドリアで使われます。糖尿病の場合、インスリンが受容体に結合してもその後の経路がうまく働かないため、GLUT4が細胞の方にグルコースを引っ張ってくれないのです。

引用:https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=49360981

「糖尿病=血糖値が上がる病気」というイメージがあるかもしれませんが、糖尿病の本質は細胞内飢餓です。グルコースを取り込めなくて細胞内飢餓になるから、その結果としてグルコースが余って血糖値が上がるのです。もう1つ、栄養療法的に重要な細胞内飢餓状態があります。それは低血糖症です。

4-2. 低血糖症と副腎疲労の関係

低血糖の原因は副腎疲労です。度重なるストレスによって徐々に副腎が疲れてくると、血糖を上げる副腎ホルモンの分泌が滞ります。副腎ホルモンは朝にピークを迎え、夕方に向けて減っていきますが、副腎ホルモンが十分出ないと、特に昼食後から夕食前にかけての血糖値が不安定になります。血糖値が不安定で低血糖を起こすと、細胞内への糖質供給も不安定になり細胞内飢餓を起こします。朝が起きられない、起きてもボーッとする、何もする気力が湧かない、物忘れがひどい、立ちくらみがする、といった症状は低血糖のサインです。

副腎疲労の原因は、慢性的な体内の炎症、慢性的なストレス、そして繰り返す低血糖発作です。これらを一つ一つ丁寧に対処してくことが必要になります。体内の炎症で自覚症状に乏しい部位は腸と喉です。一方で、腸や喉は特に免疫が発達しており、全身への影響が大きいため、よく調べておく必要があります。あとはピロリ菌に代表される胃の炎症、肝臓の炎症、口腔内の炎症も確認しましょう。女性の場合は骨盤内の炎症が、男性の場合は慢性前立腺炎が影響している場合もあります。

副腎疲労や低血糖を抱えている場合、最初に行うべきは食事の見直しです。決して副腎サプリだけが対策ではありません。食事については基礎講座で詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。

4-3. 過緊張は筋肉を崩壊させる

低血糖発作を起こすと、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、体が過緊張状態になりやすいので注意が必要です。過緊張は筋肉を崩壊させます。特に分解されやすいのはグルタミンです。グルタミンは体内合成できる非必須アミノ酸で、低血糖時に最も分解されやすいアミノ酸の一つです。グルタミンはストレスや腸の炎症で消費されやすいので、どんどん分解が進みます。腸が悪い人、ストレスが多い人はグルタミンが枯渇しやすいので、積極的に摂取すべきでしょう。

ポイント
☑️ 過緊張は筋肉を崩壊させる
☑️ 特に分解されやすいのはグルタミン

グルタミンは、宮澤医院に来院する患者さんに最もよく使うサプリメントの1つです。ほぼ全ての人に処方しているといっても過言ではありません。グルタミンはグルタミン酸に変換され、それが最終的にGABAに変わるのですが、グルタミン酸をGABAに変換するグルタミン脱水素酵素がうまく働かないお子さんの場合は、急にグルタミンを摂取すると神経が興奮して落ち着かなくなることがあります。それ以外の人はグルタミンを摂ると逆に気分が安定するはずです。グルタミンは腸の第1の栄養源であり、腸の炎症を取り去り、低血糖を予防してくれ、ストレス対策にもなるというすばらしいアミノ酸です。

慢性的に低血糖を起こしていると、筋肉が分解されて低タンパク質になります。プロテインを摂っても総タンパク質がなかなか上がってこない人は、低血糖発作によってたんぱく異化を起こしている可能性が高いでしょう。睡眠時に低血糖を起こすケースが多いので、寝る前に飲むのも良いでしょう。

4-4. 低血糖を診断する項目

低血糖の指標となるのは中性脂肪です。血糖値やヘモグロビンA1cも血糖状態を示すますが、低血糖症=血糖値が下がる病気ではありません。血糖値が不安定になること自体が低血糖症なので、血糖値が乱高下している場合は平均血糖が落ちず、ヘモグロビンA1cでは判定できないことがあります。判定のポイントは、細胞内が飢餓状態になっているかどうかを見極めることなので、それを診断するためには中性脂肪が鍵になります。なぜなら細胞内飢餓が起こると、脂質をエネルギーとして使うように体がシフトするからです。中性脂肪が分解され遊離脂肪酸になり、ミトコンドリアに取り込まれます。したがって、中性脂肪は細胞内飢餓の指標であり低血糖の指標でもあります。目安として、中性脂肪が70以下の場合は低血糖を起こしている可能性が高いでしょう。

ポイント
☑️ 細胞内飢餓が起こると脂質をエネルギーとして使うようになる
☑️ その際に中性脂肪が分解され脂肪酸になり、ミトコンドリアに取り込まれる

もう1つの指標はALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)です。ALTはアラニンとピルビン酸を媒介している酵素で、肝臓と筋肉に存在しています。筋肉には糖新生の酵素がないので、ピルビン酸をアラニンに変換し、それを肝臓に運んでもう一度ピルビン酸に戻すことで糖新生を行います。これらの反応を仲介しているのがALTです。ALTの数値が1桁だったり、ASTとALTの差が2以上ある場合、筋グリコーゲンがうまく使えず、低血糖を起こしやすくなっていると判断します。

ヘモグロビンA1cが4.5以下であればまず間違いなく低血糖を起こしていますが、そうでなくとも、中性脂肪やALTが低い場合も低血糖を疑ってください。あとは副腎疲労の症状とセットで考えるといいでしょう。私が普段使ってる指標は大体こんなところです。

血液検査
好中球(Neu)>60%
中性脂肪<70
ALT, AST共に20以下かつその差が2以上(AST – ALT >2)、またはALTが1桁
血糖値<90
ヘモグロビンA1c<4.7
1.5AG>15
LDLコレステロール<100

毛髪検査
ナトリウム <16th
クロム<16th

オプションの検査(必ずしも行わなくてもよい)
唾液中コルチゾール検査(副腎疲労)
5時間糖負荷検査(低血糖)

低血糖の人は、過緊張気味なので好中球が上がっていることが多いです。また、低LDLコレステロールは副腎ホルモンを作れないことを意味するので、副腎疲労の指標になります。毛髪検査を受けた方は、ナトリウムとクロムの値も確認してください。ナトリウムは副腎疲労度を反映します。クロムはインスリンの働きに関係しているので、毛髪中のクロムが低い人はインスリンがうまく働いていない可能性があります。インスリンの初期応答が低いので、血糖値が一気に上がってしまうのです。インスリンの初期応答が悪いと、反応性低血糖を起こすことがあります。

副腎疲労が疑わしい方は、唾液中のコルチゾール検査を受けてみるといいと思います。一般的に低血糖症は、5時間糖負荷検査が確定診断と言われていますが、検査自体の負担が大きいので、具合の悪い人が受けるのはお勧めできません。検査中に体調が悪化して途中で止める人もいます。代替案として、唾液コルチゾール検査や、リブレでの血糖値測定をおすすめします。リブレは、血糖値の傾向を見るには大いに参考になりますし、食事内容を修正するのにも役立ちます。

5. その3. エネルギーは作れているが、無駄に消費されているパターン

最後はエネルギー漏れのパターンです。いくらミトコンドリアでエネルギーを作っても、片っ端から無駄づがいしてしまえば、本来の目的にエネルギーを使うことができません。副腎疲労を提唱したジェームズ・ウィルソン博士の言葉を借りると、「自分のエネルギー泥棒を見つけ出せ」です。エネルギー泥棒を見つけ出さない限り、副腎疲労は完治しません。例えば、副腎疲労を抱えるの人の多くは人の頼み事を断れないタイプですよね。

ストレスは脳が受け取って、HPA軸(視床下部、下垂体、副腎)に影響を及ぼします。昔は副腎疲労と言えば副腎の問題とされてきましたが、今はHPA軸全体の問題と捉えられています。脳はミトコンドリアの数がとても多く、無駄な思考や定まらない思考などでエネルギーを著しく消費します。やりたくないことをやるのは、ミトコンドリア的にもマイナスに働くのです。一緒に会話していて、どっと疲れる相手はいませんか?そういう人からはぜひ距離をおいて下さい。慢性疲労から脱出するためには、心理的アプローチが必要になることもあります。栄養療法が長期間に及んでる人がいらっしゃれば、ぜひ検討してみてください。

6. 栄養療法成功への5つのステップ ー実践編

栄養療法を理解するということは、細胞や分子や代謝経路など、目に見えないものを系統的に理解して頭に入れることです。そのためには正しく学んで欲しいと思います。80対20の法則のように、分子栄養学全体の2割ほどを学べば、8割は理解できるかなと思って作ったのが、栄養療法成功へのロードマップです。最初の5ステップはそれぞれ穴埋め式になっていて、全部埋められれば、慢性疲労や慢性炎症に対してある程度対処できるようになると思います。ここからは実際に頭と手を動かしながら読み進めていきましょう。

6-1. ステップ① 分子栄養学の基本的な考え方を理解する

分子栄養学は、栄養学・医学・生物学・生化学で構成されますが、その中で1番最初に越えなければならない山が生化学です。生化学がわからないと、人間の体で何が起こっているのか、どうやって炎症が起こるのかなど、体系的に理解できないからです。ここをスルーしてどのサプリメントがいいかという話になってしまうと、サプリメントの罠に陥ってしまいます。

まずは細胞の仕組みを理解しましょう。細胞の構成要素はたくさんありますが、その中でも重要なのは、核、ミトコンドリア、細胞膜、小胞体です。これらの要素がどんな働きを持っていて、機能を維持するためにどのような栄養素が必要か、この表を全部埋められるようにしましょう。

細胞内の要素 働き 機能を維持するために
必要な栄養
核    
ミトコンドリア    
細胞膜    
小胞体    

<ヒントと補足>

核の役割はDNAの貯蔵庫です。人間が持つ37兆個の細胞は、全て共通のDNAを持っていますが、DNAの読む場所が細胞によって異なるため、ある細胞は目になり、ある細胞は皮膚になり、ある細胞は肝臓になっていきます。DNAという設計図のどこを読むかという命令は、環境や栄養によって左右されます。

ミトコンドリアの重要な役割はエネルギー産生ですが、その他にアポトーシス(プログラムされた細胞死)にも関与します。ミトコンドリア機能低下や小胞体ストレスがあると、正常なアポトーシスが行えず癌の原因になったりします。

細胞膜は一部が切り取られてプロスタグランジンを作るため、炎症に関わります。炎症の抑制や促進は、細胞膜が大きく関わっています。細胞膜を構成するリン脂質の組成が、飽和脂肪酸なのか不飽和脂肪酸なのか、不飽和脂肪酸の種類が、エイコサペンタエン酸なのかアラキドン酸なのかによって、炎症を起こしやすいかどうかが決まります。

小胞体はタンパク質の工場と倉庫の役割を担っています。タンパク質を作る設計図は核にありますが、実際に作るところは小胞体です。小胞体機能が低下(小胞体ストレス)するとミトコンドリアの機能も一緒に落ちるので、ミトコンドリアと小胞体は一心同体です。ミトコンドリアの働きを上げるためには小胞体ストレスをなくすということが重要になってきます。

次に栄養素の持つ性質を理解しましょう。水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンとミネラルの性質を理解するということです。ビタミンは有機物で比較的吸収はいいのですが、脂溶性ビタミンの吸収には胆汁が必要です。ミネラルは難吸収性で、腸内環境を整えることが絶対条件です。それぞれの性質を理解すると、効果的な摂り方がわかります。

栄養素 性質 効果的な摂り方
水溶性ビタミン    
脂溶性ビタミン    
ミネラル    

6-2. ステップ② 3大栄養素と細胞の働きを関連づける

糖・脂質・タンパク質の順番に穴埋めしていきましょう。ミトコンドリアでのエネルギー産生に関わるのは糖質です。疲れやすくなる原因は、ミトコンドリアの機能低下によるエネルギー不足でしたね。慢性的なエネルギー不足に陥ると、糖分やカフェインを過剰に欲するので、ますます低血糖や副腎疲労が悪化してしまいます。

ミトコンドリアを
動かす栄養素
どのような時に足りなくなるか?
ビタミンB群  
鉄  
マグネシウム  
CoQ10  

ミトコンドリア機能低下と副腎疲労と低血糖はセットで起きていることがほとんどです。さらに、たんぱく異化も亢進するので、低タンパク質も併発します。その場合、むやみにサプリメントやプロテインを摂ってもうまくいきません。疲れを取るためには、エネルギー代謝のどこが滞っているのかを知り、そこを狙って修復する必要があります。そのためには、食べ物がどのようにエネルギーに転換されるか、細胞分子レベルで理解しましょう。解糖系、TCA、電子伝達系の大枠をおさえたら、どんな栄養素、どんな酵素が働いているかなど、もう少し深く見ていきましょう。

次は、脂質と細胞膜の関係です。栄養療法に必要な脂質の知識は、中性脂肪・コレステロール・細胞膜を構成するリン脂質、この3つです。

脂質の種類 働きは? 症状との関わりは?
中性脂肪    
コレステロール    
細胞膜(リン脂質)    

<ヒントと補足>

中性脂肪はエネルギー状態を反映します。脂肪と名前が付いていますが、どちらかというと糖質との関わりが強い物質です。糖質が欠乏すると中性脂肪が下がるので、細胞内飢餓状態の指標になります。糖質を摂りすぎたり、お酒を飲みすぎたりすれば上がり、低血糖が続いたり食事をあまり摂らなければ下がります。

コレステロールは細胞膜、ホルモン、胆汁酸の原料になります。約80%は胆汁酸として使われるので、コレステロールが低いと胆汁の分泌が低下し、脂溶性ビタミンの吸収が滞ります。細胞膜は、脳の炎症、炎症の調整、脳の機能に関わっています。特に炎症に関わるのはEPA(エイコサペタエン酸)、脳機能に関わるのはDHA(ドコサヘキサエン酸)です。ここを理解することで、炎症体質を緩和する方法や副腎疲労を治す方法、エネルギーを無駄遣いしない方法が見えてくると思います。

3つめはタンパク質です。タンパク質で重要なのはINOUTバランスです。タンパク質代謝を学んで、低タンパク質状態から脱出する方法を理解しましょう。タンパク質はどこから来て(IN)、どこに行くのか(OUT)、自分の普段の食事のタンパク質量がどれぐらいなのか、そしてタンパク質を消耗する原因、これらを列挙してみましょう。

タンパク質INはどこから来る?  
タンパク質OUTはどこへ行く?  
自分の普段の食事のタンパク質量は
どのくらい?
 
タンパク質を消耗する原因
(体タンパクの異化が亢進する原因)
をあげてください
 

<ヒントと補足>

タンパク質は食事由来よりも体内でのリサイクルによる供給が多いので、リサイクル率を上げるという視点は重要です。タンパク質のOUTが多すぎる原因に、低血糖によるたんぱく異化亢進が挙げられます。低タンパク質は、多くの場合ストレスが原因で起こります。そんな人はグルタミンを足してくださいね。また低血糖の場合、糖原性アミノ酸であるBCAAを摂ると改善する人もいます。個人差があるので、リブレなどでモニタリングしながら、効果を確かめると良いでしょう。

6-3. ステップ③ 栄養学的な血液検査の読み方

ステップ2の次は、血液検査の読み方を学びましょう。人によって必要な栄養素やその量は全く異なり、このことを個体差と呼びます。個体差を見るのが栄養療法の基本です。約50項目の血液検査からわかることはたくさんあります。例えば、胃腸の状態、炎症、溶血、タンパク代謝、糖質代謝、脂質代謝、貧血、ミネラル代謝、血糖調節障害、自律神経の緊張度、酸化ストレス、抗酸化力、ミトコンドリア活性などです。慣れている方は全部読み込めるようになりましょう。初めての方は、まずはご自身の健康診断結果をもとに、
☑️ ミトコンドリアに必要な栄養素の過不足がないか
☑️ 自律神経の過緊張はないか
これら2つを読み取ることからスタートしましょう。その次に活性酸素や抗酸化力なども評価します。

胃酸分泌を見る項目  
炎症を見る項目  
溶血を見る項目  
タンパク代謝を見る項目  
ミトコンドリア機能を見る項目  
抗酸化力を見る項目  

<ヒントと補足>

ミトコンドリア機能は、酵素活性を示す数値を見ればわかります。GOT(AST)やGPT(ALT)、アミラーゼ、LDHといった酵素活性の高低が指標になります。GOTやGPTはビタミンB6依存性なので、ビタミンB群を摂取すると割と早く上がってくる数値です。逆に上げるのが難しい項目は、コレステロールや尿酸値です。尿酸値はあまり上がりすぎると、尿酸結石や痛風発作が起きてしまいますが、低すぎるのも問題です。尿酸は人間が体内合成できる優れた抗酸化物質なので、抗酸化力を見ることができます。

また、ATP-ADPサイクルの過程で一部が分解され、そこに含まれるプリン体の代謝産物として尿酸ができます。ですから、細胞の新陳代謝が悪い人は尿酸値が低めです。尿酸値は少なくとも4、できれば5ぐらいほしいところです。このサイクルが回り、エネルギーを作れるようになると、尿酸値も上がってきます。コレステロールと尿酸が上がればだいぶ改善したとみて良いでしょう。

6-4. ステップ④ 腸内環境

血液検査が読めるようになったら、次は腸内環境について学びましょう。具体的には、消化不良、ディスバイオーシス、リーキーガット、この3つの言葉を覚えて、これらがどういう意味を持つのかを理解してください。

  原因 どんな検査で
わかる?
対策
(食事とサプリ)
消化不良      
ディスバイオーシス      
リーキーガット      

<ヒントと補足>

消化不良は、消化酵素と胃酸の分泌が不十分な場合に起こります。タンパク質分解酵素であるペプシノーゲンは胃酸によって活性化し、ペプシンになることでタンパク質を分解します。したがって、胃酸が正常に分泌されないと、タンパク質消化の大きな障害になります。副腎疲労などで自律神経の過緊張があり胃酸が出にくい人は、プロテインを摂らない方がいいということになります。最初に取るべきは消化酵素です。胃の炎症が治ったら胃酸の成分を摂るのも良いと思います。朝1番にレモンを丸ごと食べるとか、梅干しを食べるとか、食事面でも胃酸のサポートを考えた方が良いでしょう。胃酸の分泌にはATPをたくさん使います。したがって、ミトコンドリアが働いていない人は胃酸が出ないので、負のループに陥ります。その場合はミトコンドリア機能に立ち戻って考えてみてください。

ディスバイオーシスは、腸内細菌の多様性が失われることを意味します。当然、日和見菌のカンジダや悪性細菌が増えてきてしまいます。食品添加物の多い食事、抗生剤、ステロイド、ストレス、甘いものなどで腸内環境が悪化している人が非常に多いという現状があります。心当たりがある方は、ぜひ一度サイキンソー社の腸内細菌検査などをやってみてください。腸内細菌の多様性がひと目でわかります。

リーキーガットはいわゆる腸漏れ症候群のことです。腸に穴が開くと、未消化物、ウイルス、異物などが腸管から体内に侵入し、体のあらゆるところで炎症やアレルギー反応を起こします。これをずっと放置しておくと自己免疫疾患にも繋がります。また、リーキーガットを起こすと、リーキーブレインにも繋がります。異物が脳に入って、脳に炎症を起こしてしまうのです。

6-5. ステップ⑤ 副腎疲労と低血糖

3大ホルモンである、副腎、甲状腺、性ホルモンの中でも、特におさえておく必要があるのは副腎です。体にとって最も影響が大きいからです。多くの人が抱えている低血糖症は、エネルギー供給を不安定にする最大の要因です。この低血糖症を引き起こす根源が副腎疲労です。では副腎疲労の原因は何かと言うと、ミトコンドリア機能の低下、ストレス、炎症、低血糖発作です。ミトコンドリア機能が低下すると副腎疲労になり、副腎疲労になるとミトコンドリア機能が低下して低血糖を起こす、こんな悪循環を繰り返すことで全身の機能を低下させている人がほとんどです。ですから、単純に副腎サプリやミトコンドリアサプリを飲むだけでは良くなりません。一度この表を使って整理してみましょう。

あなたに当てはまる
副腎疲労の症状は?
 
あなたが抱えている
ストレスは?
 
その解消法は?  
あなたの抱えている
体内の炎症は?
 
その対策は?  
あなたが行うべき
低血糖対策の食事法は?
 

ここまでが1~5のステップです。表の穴埋めをするだけでも結構勉強になると思います。ステップ5までが終わったら、ここで改めて根本原因に目を向けましょう。

6-6. ステップ⑥ 根本原因ピラミッド

根本原因ピラミッドの頂点は脳機能ですが、実際は脳に対するアプローチを行う前に体調が良くなる人がほとんどで、それは80対20の法則で説明した通りです。しかし、重金属や農薬などの重篤な暴露を受けていたり、メチレーションのバランスが狂っていたり、甲状腺機能が大幅に低下しているなど、特定の原因によってうまくいかない人もいらっしゃいます。このような人たちに対して、根本原因アプローチは絶大な力を発揮します。自分に当てはまる根本原因のチェックリストをもとに、ご自身の体を振り返ってみてください。

炎症 炎症の部位は?
炎症体質の有無は?
ディスバイオーシス?
腸内環境 消化不良?
リーキーガット?
カンジダ感染?
毒素 重金属蓄積?
非金属(農薬、トルエン、排ガスなど)
カビ毒蓄積?
ホルモン 副腎疲労と低血糖の有無?
甲状腺機能低下?
ミトコンドリア 必要な栄養素の過不足?
脳機能 メチレーション? 銅亜鉛バランス?

<ヒントと補足>

炎症体質の有無は食べ物で決まります。外食に偏りがちでリノール酸過多になると炎症を起こしやすくなります。血中のオメガ3とオメガ6の比率を計ることもできますし、トランス脂肪酸の量を計ることもできます。様々な検査がありますので、興味がある人はぜひやってみてください。

消化不良はペプシノーゲン検査でわかります。血中アミラーゼも、消化酵素の分泌が低下していると低い数値になります。ディスバイオーシスが疑われる場合は、便検査で腸内環境を調べてみるとよいでしょう。リーキーガットの検査は様々ありますが、便中カルプロテクチン検査は比較的多くのところで取り扱っています。リーキーガットにより分泌されるゾヌリンを検出する検査もあります。

カンジダ感染の有無も必ずチェックしましょう。ミトコンドリア機能が低下して低血糖を起こしていると、糖質をたくさん摂ってしまうので、カンジダが増殖しやすくなります。いくら糖質をとってもカンジダに奪われて体のエネルギーにならないので、午後に猛烈に眠くなる、疲れが取れない、ブレインフォグがある、腹部膨満感がある、甘いものがやめられない、そういった症状があればカンジダを疑います。

毒素には、重金属と非金属、カビ毒があります。農薬やトルエン、排気ガスの暴露を日常的に受けている人は1度調べてみるといいと思います。重金属と非金属、どちらもイライラや疲れやすさといった症状が出ます。カビ毒に関しては、湿気が多い家に住んでいる人、ブレインフォグがなかなか取れない人は、検査を受けてみる価値があると思います。

ホルモンは、副腎疲労と甲状腺機能で判断します。甲状腺はエネルギーに関与するので、冷えが強い人やむくみが強い人は甲状腺機能を確認すると良いでしょう。

これらのことが大体わかってきたら、メチレーションの状態を見てみるのもいいと思います。メチレーションはとても複雑で、本によっては書いてあることが反対だったりする場合がありますが、実践講座の動画を使いながらじっくり学んでください。

6-7. ステップ⑦ それでもうまくいかない人へ

① 自分がどの根本原因に当てはまるかわからない人

7つの根本原因(ディスバイオーシス、脳、ミトコンドリア、ホルモン、毒素、炎症、消化不良)のうち、自分がどれに当てはまるかはっきりわからない人も中にはいらっしゃると思います。そんな人はぜひ『セルフケアコース』に参加してみてください。これは宮澤医院での7つの根本原因に対する診断治療のチェックリストと、その1つずつの項目に動画解説を加えたものです。ミトコンドリア機能低下があるのか、脳機能低下があるのか、カンジダ感染しているのか、はっきりわからない人のためにチェックリストも用意しています。ステップ5までのことを理解した上で、さらに学びたい方におすすめのコースです。

② 自律神経の過緊張が何をやっても取れない人

これは、家庭環境に起因する偏った考え方、原始反射の残存、幼少期のトラウマなどが原因になることがあります。精神的な要因も考えておくべきなので、心当たりのある人は小池雅美先生のセルフアップデートコースを受講してください。自律神経を乱す思考に気づきを与えて、自分とのコミュニケーションによって現状を抜け出すセルフアップデートを目的としたコースです。

最後に、1番効率がいい勉強方法はアウトプットです。ブログでも動画でも何でもいいので、アウトプットしていろんな人の意見を聞くといいと思います。ご自身の表現でどんどん発信してください。でもちょっと自信がないという方は、まずこのロードマップの表の穴埋めをして、栄養療法の基礎を習得してくださいね。

HPA軸機能異常(いわゆる副腎疲労)の検査と治療

宮澤賢史 · 2021年5月9日 ·

1 HPA軸機能障害の検査方法

1-1 血中コルチゾール

血中のコルチゾールの分泌量は、5~15mg/日ですが、生物学的に同じ一錠10gのコートリルという薬があります。これを飲むと一日のコルチゾールと同じくらいの量になります。コートリルを使う副腎疲労の治療もありますが、やはり副腎に負担をかけるので私はあまり使用していません。

1-2 唾液中コルチゾール

検査として一番優れていると思うのは、下記の理由により唾液中コルチゾールです。

  • ストレス研究と臨床で最もメジャーな存在
  • 活性化コルチゾールを測定できる
  • 侵襲がなく、特定の時間帯で測定できる
  • 血中濃度と密接な相関検査は唾液の流量、酵素による分解、凍結や解答による影響を受けない
  • 真夜中の唾液コルチゾールはクッシング症候群において信頼できる検査

その中でも、6回のコルチゾール検査をおすすめする理由は、CAR(Cortisol Awakening Response)を検出できるからです。健常人の唾液コルチゾールレベルは、起床時から30-45分後は35~60%上昇し、60分後までに低下します。このピークをコルチゾール覚醒反応と言います。CARはストレス関連HAP軸機能異常の臨床研究で最も多く用いられています。

コルチゾールはACTHに伴って朝上昇しますが、目覚めるまでは上昇がゆっくりしています。朝光が入って視交叉上核の刺激で、HPA軸が一気に活性化して上昇します。

皆さんも明日重大なイベントがあると考えて寝ると、パッと起きることがあると思います。何故かというと、人はストレスを予期する力があるため、そのイベントが過去の記憶と相まってコルチゾールアウェイクニングレスポンス(CAR)を高めるからです。朝のCARは平日と休日では違うため、この検査をするのは平日がお勧めです。潜在意識で明日は平日だから起きなくてはいけないと思っているとCARは上昇します。

このCARは非常に敏感なマーカーで、心理社会的燃え尽き、慢性疲労、PTSD、冬に下がったり、大きなストレスがあったり、鬱、排卵期、鬱で上がるなど微妙に変化します。女性の場合は排卵期の前後一日を避けて検査してください。

2 唾液中コルチゾール検査の読み方

2-1 CAR、日中リズムともに上昇しているパターン

青い線が正常として、正常よりもCARも高く日内変動も高いのは、高ストレス状態の人のパターンです。ストレス過多の人か、メランコリー型うつ病か、HPA軸機能異常でいえばステージ1です。予期ストレスでも上昇するというのが大きなポイントで、測定値は平日と休日では違います。

2-2 日中リズムが夕方に上昇しているパターン

このパターンの人は、コルチゾールが出続けているため、隠れた炎症が考えられます。この炎症が、睡眠障害を引き起こす可能性があるので注意が必要です

2-3 一見正常だが、症状がある場合

一見正常でCARも正常範囲に収まっていますが、疲れやすくて朝起きられないと言う人のパターンです。その場合、ステージ2の可能性があるのでDHEAを測ることをお勧めします。

DHEA/コルチゾール比率の重要性

DHEA /コルチゾール比率はHPA軸の機能を見る大切な要素で、多くの場合、コルチゾールレベルだけで判別するのは困難です。ステージ1の場合は、コルチゾールは上昇しますが、ステージ2では下降するので、一見コルチゾールレベルが正常と同じように見えますが、DHEAレベルは正常とは違います。もし症状と唾液中コルチゾール濃度が乖離するようだったらDHEAレベルも測ってみてください。

2-4 CARの低下、日中リズムは正常のパターン

日中は正常ですがアウェイキングレスポンスがない場合のパターンです。それを検出したくて新たに次の検査項目を増やしました。CARが低下している人は、下記のどれかに当てはまりますが、これらは通常の4回の唾液中コルチゾールでは検出できないポイントです。

  • PTSD
  • 慢性疲労症候群
  • 燃え尽き症候群
  • 季節性うつの冬季
  • 寝不足

2-5 全日で低下しているパターン

このパターンは、短期の強いストレスか長期の簡潔持続的ストレスにより起こります。短期のストレスの場合、PTSD、過剰フィードバックシステムによるコルチゾール低下なのでDHEAは低下しませんが、長期ストレス場合、多少のストレス増強があっても変化しません。まだコルチゾール検査をしたことがない人は、ぜひこの機会に一回計測してみてください。

3 HPA軸機能回復計画

HPA軸機能の回復方法ですが、副腎に関してはすでにケアされている方も多いと思います。今回強調したいのは、視床下部のストレス反応の正常化です。この4つを4つともケアするということが最終的に治療効果に影響しています。4つのうち1つでも欠けると、副腎疲労外来に長く通うことになるので是非この4つをケア率先してほしいというのが私からの提言です。

中枢神経副腎
視床下部のストレス反応の正常化
・低血糖対策
・知覚ストレスを減らす
・炎症対策
・概日リズム
副腎保護
・抗酸化
・アダプトゲン
フィードバック正常化
・PC(フォスファチジルセリン)
・アダプトゲン
ステロイドの原料補給
・ビタミンC
・ビタミンD
神経伝達物質のバランス
・神経伝達物質の前駆体、補酵素のサプリ補給
・DHEAやプレグネノロン
ステロイドの原料補給
・ビタミンC
・ビタミンB(B5,B3)
・ミネラル(Mg,Zn)
・副腎抽出物
副腎と脳を両方ケアすること

3-1 HPAとフィッシュオイル

副腎疲労が脳の問題だと分かると、フィッシュオイルの使用を試したくなると思います。実際、HPA軸にフィッシュオイル効果は、10年以上前から言われています。アダプトゲンやグネシウムも良いですが、検査でHPA軸障害を判別できたら、是非フィッシュオイルを使うことをお勧めします。ただ使用すべきフィッシュオイルの量は少し多めで、外人だと10gほどになります。あまり多いと辛いので、その場合は3gでも効果があると思います。

高城さんのメールマガジンで、C8だけの中鎖脂肪酸を使って一度他の食事を全部やめて油を使えるようにしてから、フィッシュオイルを使うと脳が入れ替わるということが書いてありましたが、副腎疲労の人には辛そうな治療だと思いました。ただ、脳機能を上げるためには重要だと思います。

3-2 運動でコルチゾールレベルが上がる

運動はコルチゾールレベルを上げるために大変重要で、ヨガ、太極拳、気功などで睡眠障害、フラッシュバック、怒りの爆発の大幅な減少など、PTSD症状の軽減ができます。マインドフルネスベースのストレッチと深呼吸運動8週間で、PTSD重症度が大幅に低下したり、認知行動療法・段階的な運動がコルチゾールを高めるとの報告が上がっています。

3-3 トラウマとHPA軸

HPA軸の調節不全は心理社会的ストレス、特に外傷性のライフイベントの結果として現れ、ストレッサーのHPA軸変化に対する適応反応は、CFSの素因となるアロスタティック負荷を与える可能性があります。

慢性疲労症候群の50%が子供の頃のトラウマ体験があり、そのトラウマにより、慢性疲労症候群の6倍のリスク増加というエビデンスがあります。ストレスにより母体の海馬のコルチゾール受容体のメチル化、その結果コルチゾールが上昇します。いろんな論文で散見されるのは、特に幼少期のストレスが、副腎疲労、HPA軸障害の発症に大きく影響しているということです。まだエビデンスは不足していますが、幼少期・若年期の経験や家族関係に取り組むセラピストが、とても重要な部分になる可能性があります。

この論文によると「脳はストレスへの反応の鍵となる器官である。何に脅威やストレスを感じるかだけでなく、適応できるのか損傷を与えるかといった生理学的、行動的反応まで決めてしまう」とありますが、生来の資質も非常に影響し、遺伝的素因、性格特性、内向性と低い自尊心、そして出生前と幼児期の経験はストレス反応を増幅します。この部分は、アプローチすべき必須の点だと思います。

4 まとめ

  1. HPA軸機能障害の病態鑑別に日中リズムとCARが有用
  2. 対策はコルチゾールの不適切な分泌をさせない事
  3. 心理学的アプローチ、トラウマ対策の重要性

病態の鑑別には日中リズムに加えて、コルチゾールアウェイキングレスポンス(CAR)を見ることで、PTSDやトラウマを発見でき、その場合は心理的アプローチが必要です。HPA軸が狂うのはコルチゾールの不適切な分泌があった場合に置きるため、それを予防することです。

心理的アプローチやトラウマ対策は重要だと思います。まず自分でできることは、自己肯定感を上げることです。色々な悩みは人が解決してくれるものではないので、自分自身が解決していくしかありません。何故解決しないかというと、勇気がないからかもしれないので、それを勇気づけてあげることはカウンセラーの仕事としてとても重要だと思います。

副腎疲労の正体はHPA軸機能異常

宮澤賢史 · 2021年5月9日 ·

副腎疲労は副腎から放出されるコルチゾールというホルモンが減って具合が悪くなるという疾患の概念です。

僕が2007年に副腎疲労という概念を知ったのは、「Adrenal Fatigue」という本を見たのがきっかけです。この本の著者のジェームズ・ウィルソンという方は自然療法医で、カイロプラクターでもありました。彼がストレス生理学の分野の研究に基づいて、1998年に副腎疲労という用語を作り出しました。21世紀のストレス症候群として副腎疲労がクローズアップされると確信していたんですね。

1. きっかけはビタミンC

1979年、分子栄養学の創始者ライナス・ポーリング博士は、レイベン病院の外科部長のイーワン・キャメロン先生と共著で「Cancer and VitaminC」という本を出版しました。末期ガンの患者にビタミンCを点滴したら、ガンは治らなかったけど、生活の質が上がって、生存期間が伸びたことを記した本です。

同時に論文も発表されましたが、その後すぐにメイヨー・クリニックが反対論文を発表したため、結局ビタミンCの効能は医学会から忘れ去られました。そんな中、たった1人ビタミンC点滴を治療として続けたのが人体機能改善センターのH・リオルダン医師です。彼は変わり者呼ばわりされながらも、30年間研究を重ねて、2000年に高濃度ビタミンCががん細胞を殺傷するという論文を発表しました。(2005年にWHOがこの論文を元に追加試験を行い、その後すぐに世界的なビタミンC点滴ブームがおきました。)

2004年、リオルダン医師の友人だった師匠の紹介で、僕はカンザス州の人体機能改善センター(現リオルダン・クリニック)にビタミンC点滴のやり方を習いにいきました。リオルダン先生は点滴の方法を教えてくれただけでなく、慢性疲労や自閉症の患者さんの診察にも立ち合わせてくれました。

僕はここを訪れるまで、点滴のビタミンCを「効果は強くないが副作用も少ない抗がん剤」だと考えていたので、がんをどの位小さくできるかという事にばかり関心がありました。でも、リオルダン先生は、自宅の裏にある湖(写真左上)のボートの上で「抗がん作用はビタミンCの多くの作用のうちごく一部にすぎない。もっと全身の事を考えなさい。」という話をしてくれました。

帰国してみると、クリニックにはビタミンC点滴の話を聞いた多くのがん患者さんが集まっており、早速治療を始めました。75g以上で抗がん効果があると聞いて、100gのビタミンCを週3回から6回点滴しました。静岡在住の患者さんに毎日新幹線で通ってもらって点滴していたら顔は真っ白になりました。ビタミンCの美白効果はてきめんでしたが、ガンはあまり小さくなりませんでした。多いときは月にビタミンCのバイアルを1000本以上使いました。

結局、4年間で700名のがん患者さんに点滴を行いましたが、がんが完全に消失したのは2人だけでした。でも、がんは消えないけど、みんな元気なんです。よく考えてみたら、末期がんの人が静岡から渋谷のクリニックまで週6回元気に通ってくる事はすごい事です。

ビタミンCには何か体を元気にする、特別な力があるんだと考えるようになりました。

2007年、再びリオルダン・センターに行きました。その時にクリニックの売店で見た本が、この「Adrenal Fatigue」だったのです。こんな病態があるのか!とても衝撃的だったことを覚えています。

2. ビタミンCは副腎に多い

帰国後ビタミンCの点滴を副腎疲労に利用しようと考えました。リオルダン・センターのロン先生の発表に「血管を1とすると、白血球には80倍、副腎の中には150倍の濃度のビタミンCが存在する」とあったので、ビタミンCは副腎に使えると思ったからです。

文献によれば、モルモットにビタミンC点滴をすると体内で脳や副腎、水晶体に偏って分布します(左上の図)。それなら、ヒトの副腎にもビタミンCは移行しやすいと考え、副腎疲労の患者さんに点滴を試してみたら、なんと63%に症状の改善効果が認められました。

ビタミンCは、無駄なコルチゾール分泌を抑え副腎の負担を取り去ってくれます。左上のグラフのパターンを示すのは過緊張の人ですが、このような人にビタミンCを点滴すると、緊張がとけてリラックスできます。ただし、元々コルチゾールが低めの人にビタミンC点滴を入れるとコルチゾールが激減して、立ちくらみを起こしてそのまま倒れてしまう場合があります。初めてのビタミンC点滴は、必ずリクライニング・チェアで受けることをお勧めします。

そんな経験から、副腎疲労とビタミンCの関係に確信を持ち、副腎疲労のホームページを作りました。 以来、グーグル検索で副腎疲労というキーワードで3年間1位を取りました。 おかげで患者さんがすごく増え、「副腎疲労とはなんぞや物語」という漫画を出版したり、2015年には副腎疲労脱出セミナーも開催しました。調子に乗ってたんですが、それは長続きはしませんでした。

3. アドレナル・ファティーグ神話

アドレナル・ファティーグをPubMed(論文検索サイト)で調べてみると一番上に出てくるのは「アドレナル・ファティーグは存在しない」と言う論文です。

例えば、筋肉疲労だったら乳酸が溜まったりしますよね。副腎に乳酸が溜まるわけでもないし、そもそも、副腎が疲れる事ってあるんでしょうか?

実は、ストレスで副腎が疲労する、もしくは機能しなくなるというエビデンスはありません。

4. ハンス・セリエのストレス反応

1952年に出版されたハンス・セリエ著の「適応症候群」。その中で、ラットにストレス負荷を与えて解剖してみると、副腎が腫れ上がり胸腺やリンパ節が小さくなり、免疫が低下した、とあります。彼は、副腎の腫脹と、リンパ節の萎縮、胃の出血を「セリエの三徴」と名付けました。

これがいわゆるストレス反応で、副腎疲労になると、副腎は萎縮するのかなと思いきや逆に腫れ上がります。なぜ腫れ上がるかの論文は見つからなかったのですが、恐らく副腎髄質のせいです。 副腎皮質はステロイドを作っていて、副腎髄質はアドレナリンを作っています。副腎髄質は作ったアドレナリンを貯めておけるのに比べて、副腎皮質はコルチゾールを貯めておくことはできず、ACTHの命令があったときにその場で作るのみです。

副腎疲労になると、足りないコルチゾールの働きを補うために、アドレナリンがいつも出るようになります。このような人は、副腎髄質が働きっぱなしなので副腎が腫脹します。足つぼ治療を受けた方はご存知だと思いますが、副腎の足のツボは真ん中にあります。副腎疲労の人はそこに痛みを感じますが、それはアドレナリンが出続けて副腎に負担がかかっているからです。

5. コルチゾールが減る理由

ではなぜ副腎ホルモンが減ってしまうのでしょうか。コルチゾールを出しているのは副腎の中でも皮質という部分です。副腎皮質が脳から受け取るACTHという信号と、副腎皮質内の酵素の2つがコルチゾールの出力を調整しています。コルチゾールが低下する原因は、外部信号が弱くなるか、酵素の活性が弱くなるかのどちらかなのです。副腎が疲れるからではありません。

下記の図は、脳にストレスがかかるとストレスホルモンが出続けてだんだん疲れてくるという副腎疲労の図ですが、私が独立したときに初めての副腎疲労の患者さんに作ってもらいました。Adrenal Fatigueの本の挿絵に擬人化された副腎が疲れているイラストがあったので、それを参考にしたんです。

でも正確には副腎が疲れることはありません。この図は正確ではないのに色々なところで真似されました。今でもネット上で似た様な図を沢山見かけます。繰り返しますが、疲労しているのは副腎ではなく脳(下垂体)です。この事実を踏まえて、図を書き直してもらいました。

ストレスがかかると脳からACTHというホルモンが放出され、それが副腎を刺激してコルチゾールが出ますが、副腎疲労の人では、ストレスがかかってもACTHが放出できません。つまり、副腎疲労の正体は下垂体疲労なんです。この様にストレスに対する下垂体の反応が悪い状態をHPA軸機能障害と呼びます。ストレスで副腎機能が低下するというエビデンスはありませんが、鬱などの様々な疾患でHPA軸の機能が低下するというエビデンスは沢山あります。

6. HPA軸機能障害

脳の視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が出て、下垂体がその命令を受けてACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌します。それを受けた副腎がコルチゾールを出し、コルチゾールが出過ぎないように視床下部と下垂体にネガティブフィードバックをかけます。これによってCRHとACTHがバランスを保ちます。

これをHPA軸(hypothalamic-pituitary-adrenal Axis)と言います。

この視床下部、下垂体、副腎の連携が上手く取れないことをHPA軸機能障害と言います。コルチゾールが出過ぎるパターン、出にくいパターンがあります。

6-1. 鬱病ではACTH、コルチゾールが出過ぎる

鬱病の人は、CRHもACTHも放出されて、その結果コルチゾールも沢山分泌されてしまいます。コルチゾールが大量に出たら普通はネガティブフィードバックがかかって、視床下部と下垂体にこれ以上刺激ホルモンを出さないように抑制しますが、鬱ではそこがうまく機能しません。その結果、ACTHとコルチゾールが出続けてしまいます。報告によれば、うつ病患者の50%は、血中グルココルチコイド濃度上昇によるHPA軸の負のフィードバック機能障害が認められています。

6-2. 慢性疲労、PTSDではACTH、コルチゾールが出にくい

それとは反対に、会社の社長(視床下部)が部長(下垂体)に叱咤激励するのにも関わらず、部長がやる気がなくて、その結果部下(副腎)も全く働かないというのがPTSDや慢性疲労のパターンです。論文によると、慢性疲労症候群と線維筋痛症(FM)の女性に基礎コルチゾールの優位な減少が見られたり、概日周期及び朝のACTH分泌レベルが低下しているとかいうことが分かっていて、慢性疲労症候群の人は下垂体レベルから疲労しています。

様々なタイプの精神疾患とHPA軸機能障害の関係についてBaumeisterらがこのように報告しています。

https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00127-014-0887-z

7. HPA軸が狂う4つの原因

副腎疲労の正体は、HPA軸機能障害です。HPA軸が狂う原因は、コルチゾールの過剰分泌にあります。コルチゾールの働きは6つあります。

  • 炎症抑制          
  • 血糖上昇
  • 抗ストレス効果
  • 日内変動
  • 免疫抑制
  • タンパク異化

そのため下記の4つの原因がコルチゾールの異常分泌を招きます。

  • 慢性炎症
  • 血糖の乱高下
  • 慢性ストレス
  • 慢性の夜更かし

副腎疲労を治すためには、つまりHPA軸異常を治すためには、この4つに切り込むことが必須であり、HPA軸機能障害の権威であるトーマス・ギリアム博士によればこの4つのストレスは十分修正可能ということです。

7-1. 慢性炎症

炎症性サイトカインがHPA軸を活性化し、コルチゾールを放出します。リウマチ、クローン、MS、喘息、皮膚炎などの炎症性、代謝生の炎症疾患でもHPA軸の低下が見られます。また、糖尿病の人もHPA軸が狂っています。長期の炎症はコルチゾール耐性を引き起こし、炎症を増加するので、炎症を治すことはとても重要です。

7-2 .血糖値の乱高下

炎症性サイトカインが過剰に分泌されると、インスリンの働きが悪くなり内臓脂肪が増えます。内臓脂肪は炎症性物質なので悪循環となります。ストレスに対してコルチゾールが過剰分泌されるHPA障害が、糖尿の原因の一つだと言われています。糖尿病に詳しい方はお分かりだと思いますが、血糖値を薬や食事、運動で一時的にコントロールをしても、気を抜くとすぐ血糖値上がります。このため糖尿病の完治はなかなか難しいですが、一つの可能性としてはHPA軸障害が挙げられます。HPA軸が障害されて、ちょっとしたストレスでコルチゾールが大量分泌されると、高血糖は治りません。

また、血糖値が50などの絶対値だけを問題視するのではなく、200から100に急に下がるといった変化量が大きい場合も、HPA軸に負担をかけます。

7-3. 夜更かし

睡眠障害とサーカディアンリズム(概日リズム)の低下は、強力なストレッサーとして機能し、HPA障害を起こしてとても疲れやすくなります。炎症も食事も気をつけているのに、深夜1時に就寝するという人は沢山います。副腎疲労をきちんと治そうと思ったら、11時までに寝ることが重要です。体を修復する成長ホルモンのピークが夜中の12時だからです。

なかなか概日リズムが治らない人は、とにかく朝起きて1度朝日を目に入れてください。視交叉上核という光を感じ取る脳の中に核があって、そこで概日リズムを調整しています。朝早く起きれば、この視交叉上核が光を感知してメラトニンの産生を止めます。朝メラトニンがダラダラ出てるからいつまでも眠くて、その結果夜にメラトニンが出なくて眠くならないので、その悪循環を止めることが重要です。どうしても眠かったらその後寝てもいいですが、朝に視交叉上核を起こすというのが大事です。

睡眠自体が難しい場合は、根本原因ピラミッド3つを考えてください。ホルモンと消化器と解毒です。ストレスと低血糖、 消化不良によるカルシウム・マグネシウム・亜鉛不足が睡眠不足を起こします。 また、トリプトファンがセロトニンを介してメラトニンになるので、タンパク不足も不眠の原因になります。肝臓の解毒のピークは午前1時から3時のため、解毒が上手くいってない人や毒物が沢山溜まっている人は、肝臓が働き過ぎて夜中に起きてしまう可能性があります。

概日リズムを積極的に整えて、それでも眠れない場合はこの3つを考えてみてください。特に不妊治療の人は、ミトコンドリア機能を上げていかないといけないため、夜10時には寝てください。ミトコンドリア機能を見る目安は基礎体温です。

7-4. ストレス(自分がストレッサーだと感じるものの存在)

ストレスの特徴の一つは、寒さや飢えなどの「本当の脅威」と精神的、感情的、心理社会的ストレスなどの「脅威と感じたもの」を区別出来ないことです。つまり森の中で熊にあったっていうストレスと、会社に行くのが嫌だというストレスの区別がつかずに、脳はどちらのストレスにも同じ反応をするということです。

2つ目のストレスの特徴は、脅威と感じるものは人によって異なるということです。過去のストレス経験やトラウマ、くせ、人格が神経伝達物質に大きく影響を与えます。ストレスは正式にはストレッサーといいます。飲み会は私にとってストレスだというのは、正しくは飲み会は私にとってストレッサーだ、となります。

ストレッサーに対する反応の大きさはストレッサーそのものではなくて、個人の認識に基づいています。そのため飲み会がストレスになる人とならない人がいるのです。同じように、人前で話すことをストレスに感じる人と感じない人がいます。僕はものすごく緊張して手先が冷たくなりストレスに感じます。みのもんたさんは朝の番組の前に必ず生ビールを一杯飲んでから話すと聞いて、みんな同じなんだと思って少し安心しました。

自分にとって何がストレッサーなのか知りたい方は「Percieved Stress Scale」という質問表をチェックしてください。他人にとってはほんの些細なことでも、自分がストレスと感じるものであれば、それはストレスになるのです。

8. コルチゾール分泌が続くと脳が萎縮する

慢性ストレスが続くと、コルチゾールが脳の分解をするため特に脳の海馬を含む組織が萎縮していきます。これを「アロスタティック負荷」と言います。これを防ぐためストレスがかかってもコルチゾールを分泌しないように身体が脳からの命令物質ACTHを出さない様に調整します。これをHPA軸のダウンレギュレーションと言います。副腎疲労は過剰なコルチゾールから身体を守るための、HPA軸のダウンレギュレーションなのです。

9. まとめ

副腎疲労の正体はHPA軸の機能障害です。僕も最近、診断書には「HPA軸機能障害」と書くように改めました。HPA軸機能障害の原因は、HPA軸に長期間にわたり負担がかかることです。

HPA軸障害の病態の鑑別には唾液中コルチゾールを測定して、日中リズムに加えて、コルチゾールアウェイキングレスポンス(CAR)を見ます。

HPA軸機能異常(いわゆる副腎疲労)の検査と治療

食欲に負けずに結果が出るダイエット

臨床分子栄養医学研究会imamura · 2021年4月16日 ·

ダイエットについて分子栄養学的観点からお話しすることは普段あまりありませんが、人口における肥満の割合がコロナの死亡率に関連していると言われているため、今回はダイエットについて考察してみたいと思います。アメリカやイギリス人の肥満の割合が6〜7割に比べ、日本人は内臓脂肪が多い隠れ肥満型が3割くらいと言われています。その内臓脂肪が炎症を起こしていてCOVIDの死亡率を左右しているのではないかといわれています。

ダイエットの失敗原因

ダイエットの目的が体重を減らすことというのが良いかどうかという問題はありますが、巷におけるダイエットの問題点と分子栄養学的なダイエットの方法を根本原因の観点から考察します。

ネットで検索したダイエットを大きく2つに分けると、やり方が間違っているか、モチベーションが続かないの2つに分けられます。

【やり方が間違っている】

  • 食事制限が続かなかった
  • リバウンドして嫌になった
  • 決まって採る食材に飽きた
  • 体調を崩した
  • 体力がなくなった
  • 便秘になった
  • 栄養不足になった
  • 肌が荒れた 等

【モチベーションの問題】

  • ストレスがたまった
  • 「明日から⋯」と言ってスタートすらできなかった
  • すぐに結果が出ず諦めた
  • 目的があいまいだった
  • 目標が高すぎた
  • 運動がつらすぎた
  • 途中で止めてしまい続かなかった 等

では、どうしたら食欲に負けずに結果が出るダイエットができるのか、分子栄養学的に考えてみましょう。

単純なカロリー制限、糖質制限では長続きしない

カロリー制限VS糖質制限のどちらが効果的かという2010年の有名な論文があります。糖質制限は今全盛期で、大手のダイエット会社はこぞって糖質制限の手法を取り入れています。実線がカロリー制限(脂質制限)、点線が糖質制限(ローカーボダイエット)をしたグループですが、このデータを見てもわかる通り糖質制限は立ち上がりで体重を落とすスピードが早く、インスリン抵抗性も一気に改善することが分かります。

この論文は、BMIが30〜40、体重が100kgくらいの肥満の人を対象にしているので、3ヶ月目まではスピーディーに体重が落ちていきますが、その後は徐々に戻っていきます。100kgの人を2年間フォローアップして7%減(93kg)なので、必ずしも成功とは言い難く、リバウンドは糖質制限のほうが若干多いことが分かります。体全体のことを考えると、減量した体重をいかに維持できるかということが問題になります。糖質制限はリバウンドする人が多い食事療法で、5年、10年と継続させることがポイントとなります。

一方でカロリー制限は、エネルギーの消費も減ってしまいます。多くの論文によると、カロリー制限の最も基本的な生理学反応はエネルギー消費の削減で、カロリー消費を少なくするように適応します。エネルギー消費が削減される大きな理由は2つあり、一つは体重自体が減量するため必要なカロリーも少なくなること、2つ目は代謝が効率的になるということです。

体の作りが変わることで、より少ないエネルギーで体が生きていくことを可能にし、一度痩せたとしても同じカロリーを摂取すると段々元に戻ってしまいます。そのため体重を減らし続けるためには、カロリーを更に減らさなければいけないという大きな矛盾が生じます。単純なカロリー制限でダイエットを継続的に成功させるのは、かなりの意志の力が必要なのです。

モチベーションの問題

もう1つはモチベーションの問題です。カロリー制限に応じて、満腹ホルモンであるレプチンレベルが減少し、空腹ホルモンのグレリンが増加します。レプチンは、脂肪細胞から出る満腹ホルモンで、満腹を感じてこれ以上食べ物は必要ないというシグナルを出します。それと反対の働きをするのがグレリンです。カロリー制限に応じてこのレプチンが減ってグレリンが増加するため、常に空腹を感じるという状況になります。

「カロリー制限ダイエットをして、空腹感に慣れました」という人もいますが、グレリンとレプチンの生化学的なデータから判断すると、ダイエットで痩せて食事を戻したあとでも空腹感が増加したままになります。

体はモチベーション的にも体の仕組み的にもリバウンドするようにできています。一度は痩せられても、またセットポイントに戻ってしまいます。太りたい人が太れないのもこれと同じ原理です。体のセットポイントは脳が決めているという説がありますが、様々な要因が働いてそこに戻ってしまうため、ダイエットを体重減少にだけポイントを絞って行うのは難しいです。

長続きして痩せる食事法

ダイエットができない根本原因はどこにあるのでしょうか。

肥満というのは氷山の一角で、体内では肥満と同時に高血圧、高脂血症、耐糖能障害、骨粗鬆症、鬱などなど、様々な代謝障害が並行して起きています。そのため肥満だけをターゲットにするのではなく、体の代謝障害全体を治していくためには原因を追求することが必要となります。

最初に考えるべきはまず食事ですが、カロリー制限も糖質制限もお勧めできないとすると、どのような食事をするのが良いのでしょうか。食欲に負けず結果が出る食事法を世間で模索している中、ファスティングをうまく取り入れると良いというムーブメントがあります。

単なるカロリー制限ではなく、一日食べて一日食べない隔日断食(Alternative Day Fasting)や、1日のうちに8時間は食べて、残りの16時間は食べない間欠的断食(Intermittent Fasting)があります。どちらの方法でもその周期が異なるだけで断食の時間が確保され、これに関連した色々な本も出版されています。

食べても良い日は満腹になるまで食べられるため、カロリー制限より気軽に始められる点が人気の隔日断食は、普通のエネルギー摂取を100%とすると断食日は4分の1にします。ご馳走日には125%食べて良いという方法です。

それに比べて普通のカロリー制限ダイエットは、毎日の食事量を25%削減します。25%と125%の平均は75%なので、隔日断食とカロリー制限で理論的には食べている量は結果としては同じになります。ただしカロリー制限ダイエットで毎日25%抑えるのと、隔日断食における1日おきの食事の量は極端に違います。1日間、または数時間でも断食をする時間を作ることによって医学的効果を狙っているのが隔日断食の真の狙いです。

ダイエットの敵は、膵臓から分泌されるホルモンであるインスリン抵抗性です。インスリンは血糖値を下げるホルモンであると同時に、肝臓で脂肪の合成を促すホルモンです。インスリン抵抗性がある場合、インスリン感受性が落ちてしまい、インスリンが大量に分泌され、結果として脂肪を生成します。

Nutr Diabetes. 2017 Jun 19;7(6)
Enhanced insulin sensitivity in successful, long-term weight loss maintainers compared with matched controls with no weight loss history
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28628125/

そのため長期の減量の維持には、インスリン感受性の増強が必須となります。ではどんなファスティングや食事法がインスリン抵抗性を落とすかというと糖質制限が大変有効ですが、継続が困難なのが問題点です。

隔日断食に関しての上の表をご覧ください。ADF(隔日断食)はCR(カロリー制限)に比べて、恐らく断食の時間を設けることによってインスリン抵抗性(HOMA-IR)が改善しています。

糖質制限は辛いけれど、インスリン抵抗性を落として減量したい人にとっては、一日は好きなだけ食べて一日断食する隔日断食が良いと思います。副腎機能と肝機能が正常で筋肉がしっかりある人にとっては問題ないと思いますが、問題点は糖質制限と同じく離脱率が38%とかなり高いということです。このデータは、アメリカ人でBMIが25.0〜35.9の肥満度が高い人を対象にしたものなので、それほどインスリン抵抗性が高くない人には効果は期待できません。痩せてる人がモデル体型を目指して隔日断食をするのは注意が必要です。

隔日断食をより緩くして継続可能になると言われているのが、24時間のうち8時間は食べて良いが残りの16時間は食べない断続的断食、通称8時間ダイエットと言われるものです。間欠的断食やIntermittent Fastingとも言われています。隔日断食ほどではないにしろ、ファスティングの時間を設けることによってインスリン抵抗性の改善が期待できます。

糖尿病の人、代謝障害がある人に対しての間欠的断食についての論文によると、明らかにインスリンのレベルは下がっているため、インスリン抵抗性が大きい人に対しては間欠的断食は意味があると思います。

私が実践しているもので近いパターンのものは、間欠的断食です。お昼の12時と夜の7時に食べたら、他の時間に食べなければ間欠的な断食になります。副腎疲労がない人なら比較的継続しやすいやり方ではないでしょうか。

アメリカの学会におけるVarady先生の発表による隔日断食と8時間ダイエットの比較表です。

Krista Varady,Ph.D. Professor of Nutrition University of Illinois,Chicago

隔日断食のメリットは3ヶ月で5〜7.5kg減と体重の減り始めが早いことですが、さらに減り始めが早いのは糖質制限です。隔日断食にしても、体重が減り始めるのは、8時間ダイエットに比べれば早いです。継続は確実断食が難しくて8時間ダイエットは簡単。共通しているのは、カロリー計算は不要だということです。

今のところ絶対的に継続可能な食事というのはないですが、いかにインスリン抵抗性とレプチンの問題を抑えるかというのが、モチベーションに関係してくるのではないでしょうか。

炎症の与える影響その1インスリン抵抗性

もう一つ考えたいのは、炎症の与える影響です。炎症は、ピラミッドの一番下にあるので、炎症と腸内環境のケアはダイエットのためには必須です。

膵臓からインスリンから血中に分泌されても、肝臓骨格筋、脂肪組織でのインスリンに対する反応が鈍くなっているために、インスリンの血糖を下げる働きが十分に発揮されない状態のことをインスリン抵抗性と言います。インスリン抵抗性を来す原因は太っていることですが、太っているとなぜ糖尿病になるのでしょうか。

インスリン
• 食後に膵臓β細胞から分泌されるホルモン
• インスリン受容体に作用して、グルコースの取り込みを促す
• 過剰に分泌されると、受容体機能が低下する

脂肪細胞が肥大化すると炎症が起こります。脂肪が増えてきて、酸欠状態になります。そうすると、炎症のマクロファージが寄ってきて炎症性サイトカインを出してインスリンのシグナリングを邪魔します。

インスリンの受容体にインスリンがくっつくと、細胞内でリン酸化という反応が起きて、GLUT4というグルコースを取り込むタンパク質を引っ張り、細胞膜に同化させます。このGLUT4が細胞膜に同化すると、グルコースを取り込む穴ができてグルコースが入ってきます。これがインスリンによるグルコース取り込みの機序ですが、このシグナルが炎症によってインスリン受容体のリン酸化が邪魔されてGLUT4が上がってこなくなるのでグルコースが取り込めなくなります。その結果、細胞の外にブドウ糖があふれるのが、インスリン抵抗性です。

インスリン抵抗性の仕組み
 脂肪細胞の肥大化
→脂肪細胞にマクロファージが働いて炎症性サイトカインを放出する
→インスリン受容体基質のリン酸化を邪魔する
→GLUT4が細胞膜に上がってこない
→グルコースが取り込めないため、代償的にインスリン濃度は増大する

インスリンが効かないので、代償的にインスリン濃度がどんどん増大していきます。インスリンというのは肝臓で沢山脂肪をつくるため、インスリン抵抗性がある人は太りやすくなります。

炎症の与える影響その2 レプチン抵抗性

インスリンのほかにもう一つ痩せられない原因で考えなければいけないのは、レプチンです。

レプチンというのは食後に脂肪細胞から分泌されるホルモンですが、満腹中枢を刺激するので、レプチンが出たら通常は食欲が抑制されます。ただし過剰に分泌されすぎると、インスリンと同じように受容体の機能が低下して食欲が抑制できなくなります。このことをレプチン抵抗性といいます。レプチン抵抗性とインスリン抵抗性の2つがあると、なかなか痩せられません。

レプチン
• 食後に脂肪細胞から分泌
• 満腹中枢を刺激する「レプチン受容体」に作用して、食欲を抑制
• 過剰に分泌されると、受容体機能が低下する

下記の論文によると、インスリン同様にレプチン(満腹ホルモン)が高いままダイエットしてもリバウンドします。

J Clin Endocrinol Metab.2010 Nov;95(11):5037-44
Weight regain after a diet-induced loss is predicted by higher baseline leptin and lower ghrelin plasma levels
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20719836/

8週間低カロリーダイエットで平均で5%の体重減少をしてリバウンドしていないか調べたところ、10%以上リバウンドした人は、そうでない人に比べて優位にレプチンレベルが高く、グレリンレベルが低いという結果が出ました。

インスリン抵抗性と同じく、レプチン抵抗性の鍵も炎症です。

J Am Coll Cardiol. 2008 Oct 7; 52(15)
Leptin Resistance: A Possible Interface of Inflammation and
Metabolism in Obes

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4556270/

上記は、レプチンと炎症マーカーの血漿レベルが相関しているという論文ですが、体内の炎症を抑えて、レプチン抵抗性やインスリン抵抗性を抑えないと、脂肪は増加して食欲が止まらなくなります。

炎症を抑え、インスリン抵抗性を減らすために、ファスティングの時間をとるというのは有効だと思います。糖質をとらない時間=インスリンをなくす時間を無理なく持つためにファスティングは大変有効です。

では、糖質を摂らず脂質を摂ればいいかというとそうもいきません。脂質の摂り過ぎも炎症を起こします。

腸内環境とリーキーガット

炎症は腸とセットになっていて、腸内環境とダイエットは密接に関わっています。腸内細菌とリーキーガットの関係性を見てみましょう。

J Clin Med.2019 Apr; 8(4)
Faecal Microbiota Are Related to Insulin Sensitivity and Secretion in Overweight or Obese Adults
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6518043/

腸内細菌とインスリンの感受性は密接に相関することがわかっています。糖尿病の人の腸内細菌叢というのは健常者の腸内細菌叢と全く違います。腸内細菌を変えたら糖尿病も治ります。

太った人に痩せた人の腸内細菌を移植したらインスリン抵抗性が改善するという論文もあります。それほど腸内細菌とインスリン抵抗性は密接に関係しています。インスリン抵抗性を改善して腸の抗炎症効果がある酪酸も増加したそうです。腸のエネルギー産生があり、腸の抗炎症効果がある酪酸が増えるという点からみても、腸内細菌はとても重要だと言えます。

腸内細菌検査はされたことはありますか?いくつかの日本の会社が腸内細菌のDNA解析の検査を提供していますが、当院で扱っているマイクロバイオータ社の腸内細菌検査では、太りやすさを腸内細菌から推測するというデータ解析をしています。デブ菌VS痩せ菌、つまりフィルミクテスとバクテロイデスの比率が入っています。

このフィルミクテスとバクテロイデスの比率が何故関係するかというと、フィルミクテスは食事からより多くのカロリーを抽出するというデブ菌と言われていて、フィルミクテスが沢山ある人は太りやすいという考察です。痩せ菌と言われているのは、バクテロイデスです。酪酸がバクテロイデスを生成し、カロリーを消費してくれます。腸内環境から始めたいという方は、ぜひ腸内細菌検査をしてフィルミクテスとバクテロイデスの比率をみてみてください。酪酸が不足すると炎症を起こすので、更に総合便分析をしてみると、酪酸・腸の炎症などその他全てについて判ります。

腸内細菌バランスを整える必要性はわかると思いますが、その他にするべきはリーキーガット対策です。リーキーガットの原因は、抗生剤、ステロイド、ストレス、悪い食事などです。

高脂肪食はリーキーガットを引き起こす

糖質制限については賛否両論ありますが、糖質制限をした場合に間違いが起こりやすいのが悪い脂肪を摂ってしまうことです。

高脂肪食で
◆ フェルミテクス/バクテロイデス比を増加した
◆ 血中サイトカインの増加を認める
◆ LPSの増加を認める(LGS)

Ann Intern Med. 2010 Aug 3;153(3)
Weight and metabolic outcomes after 2 years on a low-carbohydrate versus low-fat diet: a randomized trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20679559/

ダイエットで一番避けるべきは、悪い脂肪を摂ることによってリーキーガットを引き起こすことです。腸の炎症が起きて、インスリン抵抗性が起きてしまいます。高脂肪食はフィルミクテスとバクテロイデスの比率を増加してデブ菌を増やし、炎症性物質である血中サイトカインが増加します。炎症成分であるLPSも増えてしまいます。腸に炎症を起こしてリーキーガットを引き起こして、そのリーキーガットから漏れた穴からLPSが血中に入ってしまいます。

Trends Biotechnol.2015 Sep;33(9)
Proteobacteria: microbial signature of dysbiosis in gut microbiota
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26210164

LPS(リポポリサッカライド Lipopolysaccharide)が食欲と体重を増加させます。血中にこのLPSが入ると体中に炎症を起こします。腸と脳は迷走神経で繋がっていてこれを腸脳相関といいますが、腸からコレシストキニンという伝達物質が分泌されます。これはレプチンと同じように分泌されると食欲を抑える物質ですが、コレシストキニンの迷走神経をLPSが阻害してしまうため、食欲を増大させる原因になります。

ダイエットが失敗する二大要因として考えられるのは、減量の効果をなくすインスリン抵抗性やレプチン抵抗性か、食欲が亢進してしまうことですが、LPSはこの両者に働きかけるので、高脂肪食、特に脂肪の種類が悪いと問題になります。

減量しても痩せさせないシステムがあるのか、それとも減量を続けさせないような糖質の渇望の状態や食事の渇望の状態をつくってしまうのかが根底のメカニズムにあります。

消化不良

消化不良は日本人だけでなくて欧米人にも共通で散見される問題で、消化不良で問題になってくるのはミネラル、特に亜鉛とマグネシウムです。

マグネシウムの欠乏はチョコレートの渇望に影響を与える可能性があるそうです。マグネシウム不足の人はチョコレートを欲しがちで、この渇望がダイエットを阻害します。

過食の患者40%と神経性食欲不振症の患者の54%は亜鉛欠乏でした。銅と亜鉛のバランスはとても重要です。Dr. カリッシュの論文によると、欧米では消化不良というベースがあってこれらの欠乏が起きるそうです。

睡眠とデトックス、副腎と肝臓と筋肉

食事、炎症、消化管のリーキーガットの問題など様々なことがダイエットに関わってくるということがわかりますが、もう1つの要因である睡眠とデトックスにも触れておきましょう。

睡眠不足は肥満の大きな原因で、免疫低下も招きます。理想的な睡眠時間は7〜9時間で、睡眠が7時間以下や9時間以上の人は睡眠に問題があります。9時間以上の人は睡眠が浅いために代償的に睡眠時間が伸びている可能性があります。慢性的な睡眠不足は過食や肥満を招きます。睡眠不足だとメラトニンが充分に分泌されないため、免疫が働かなくなります。

下記は2013年の論文ですが、脳は睡眠中に不要物を排出しているとあります。

Science 2013 Jun 28;340(6140)
Neuroscience. Garbage truck of the brain
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23812703/

脳の血管にはリンパ組織がないため、intercellular glyphatic pathwayという動脈と静脈の間をつないでいる経路から不要物やリン酸化したタンパク質を排出しますが、夜寝ている間に働くため、睡眠不足=デトックス不良ということになります。

食事、炎症、消化管、デトックスなどの理由がありますが、ダイエットという観点からするとインスリン抵抗性がすごく大きな問題なので、糖質を制限して、インスリン抵抗性を改善させるステージが必要ですが、そのためには、副腎と肝臓と筋肉が元気である必要があります。

人は糖新生で血糖値を保っています。食事中のブドウ糖は2時間しか保たないため、グリコーゲンを使わないと血糖値を保てません。体のアミノ酸を分解してブドウ糖を作ったり、脂肪を燃やしていますが、糖新生がうまくできない人は糖質制限をすると疲弊してしまうので、まずは腸、それから肝臓を治してというふうに、ダイエットも根本ピラミッドの下から段階的に積み上げていくしかないと思います。

繰り返しますが、肥満とは、氷山の一角です。肥満は体内に起きている様々な代謝異常の一部だと考えられます。

ホメオスタシスが狂ってインスリン抵抗性が出たとして、体の中の変化はわかりにくいですが、肥満はわかりやすいので気になります。ただ体の外に出ている肥満というのはごく一部で、高血圧、脂質代謝異常、サルコペニア、アルツハイマーの発症率が高くなります。体内に炎症があり、消化不良の問題があって、デトックスがうまくいっていないから、こういった症状が一連の流れとして起きてくるのです。

ダイエットはわかりやすい切り口なので、そこだけに注目しがちですが、体全体のことを考えると、体の全体の代謝異常が治るのと同時に肥満も自然と解消していくのではないかと思います。

実際にリバウンドをして体重は元に戻っても、健康状態が改善されることがあります。インスリン抵抗性もある程度良くなって代謝も上がり、デトックスの状態も良くなります。体重は変わらないけど他が変わればいいのではという考え方もあると思います。それでもやっぱり痩せたいと思うのは、モチベーションの問題です。下記は、運動を追加すると減量の維持が改善されるという論文です。

ARTICLES.01 SEP 2009
Regular exercise attenuates the metabolic drive to regain weight after long-term weight loss
https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/ajpregu.00192.2009

難しいのは継続

ダイエットで一番難しいのは「継続」なので、継続するために必要なのは目的の明確化です。ゴールは情報でできているので、自分のゴールがどこにあるのかが脳の中で明確になっていれば成功すると思います。

心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる、人格が変われば運命が変わるという言葉がありますが、習慣化によって人格と運命も変わります。

最初の2ヶ月間、3、4週間でも習慣化するにはいろいろな方法がありますが、それには意識を変えることです。毎日10km走ろうと思ったらなかなか続かないので、気が乗らないときは100mだけ走ります。100m走るということは、少なくとも意識が走るということに向いたということなので、無理をしないで続けるためには距離を短くして、スクワットの回数を少なくして、必ず一回ずつ行うということをすると意識が変わって習慣化することが可能になります。

結果を得るためには、be→do→haveという流れが必要です。行動するためには、在り方が大変重要です。在り方というのは何かというと、「習慣の総体」です。最初の一歩が肝心なのです。

コルチゾール・スティールは存在しない

宮澤賢史 · 2021年3月17日 ·

副腎疲労は疾患の進行に伴い、コルチゾール・スティールという現象を引き起こすことが有名です。それに関連して「もともとエストロゲン過剰がある場合、副腎疲労でコルチゾール・スティールが行われたほうが、エストロゲンが減少してちょうどいいのでは?」とご質問がありました。コルチゾール・スティールとは何か?、本当に存在するのか?についてお答えします。

1 エストロゲン過剰について

まずは、エストロゲン過剰の話からです。生理周期に伴う二つの女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)は、生理の周期にしたがって、下記の図のように絶妙なバランスの上に成り立っています。生理開始から2週間(卵胞期)はエストロゲンのみが上昇し、排卵後の後半の2週(黄体期)はエストロゲンとプロゲステロンの両方が上昇します。卵胞から排卵し、それが黄体に変化して、黄体からプロゲステロンが分泌されるため、図のような形の大きな山が形成されます。

エストロゲンとプロゲステロンは、身体の中で反対の働きをします。お互いに押さえ込むような働きをするため、この二つのホルモンが両方とも同じように分泌されるのが理想ですが、このバランスが崩れる原因は下記の4通りです。

1 無排卵(排卵後の卵胞である黄体からプロゲステロンが作られる)
2 ダイオキシン、水銀、アルミニウム
3 前更年期(閉経するとEレベルは40-60%、Pレベルは120分の1に低下)
4 高脂肪食

2 エストロゲン過剰の原因

では、これらを一つずつ詳しく見ていきましょう。

2-1. 無排卵

排卵しないと黄体ができないため、プロゲステロンが分泌されません。多嚢胞性卵巣症候群や、インスリン抵抗性が強めの女性に無排卵の人が多いと言われています。
無排卵かどうかの判別は、基礎体温の計測でわかります。基礎体温は排卵の時期だけを知るためのものではありません。プロゲステロンは、甲状腺ホルモンの働きを介して体温を上げるので、健康な女性であれば、卵胞期に比べて黄体期は0.3度以上上がっているのが普通です。黄体期に体温が上がらない場合は、黄体機能不全かミトコンドリア機能不全のことが多いです。血液検査をするよりも、基礎体温を測ることで自律神経の緊張度合いとミトコンドリア機能が分かるので、特に若い女性にとって計測は不可欠です。

2-2.前更年期

35歳-60歳の間の前更年期には、生理的に女性ホルモンが減少します。エストロゲンは40-50%減りますが、プロゲステロンはもっと減り幅が広く、90-95%減ります。プロゲステロンの方が多く減るために、相対的にエストロゲン過剰になります。

2-3.ダイオキシン、水銀、アルミニウム

プラスチックのボトルや魚、ダイオキシンなどの環境ホルモンなどのホルモン撹乱物質は、エストロゲン様の働きを持っているためエストロゲンを優位にします。

2-4.高脂肪食

ホルモンの規制の問題でアメリカの牛肉は日本の牛肉の600倍のエストロゲンが入っているため、エストロゲンの働きを狂わせます。

これらの原因により、女性のみならず男性もエストロゲンの海に浮かんでいると言われていて、この状態を「エストロゲン優勢症候群」と言います。エストロゲン優勢症候群になると、様々な問題が起きます。エストロゲンは女性らしさを保つためにとても重要なホルモンですが、過剰に分泌されると乳がん、子宮がん、子宮内膜症、子宮筋腫など女性特有の問題を引き起こすことになります。

PMSや生理痛が強いのも立派なエストロゲン優勢症候群です。生理痛が強いということは、つまり物理的に子宮を曲げる力が強いということです。子宮を収縮させるのはエストロゲンとプロスタグランジンE2で、これには食生活が影響します。

3 コルチゾール・スティールとは

次は、コルチゾール・スティールの説明です。コレステロールからプレグネノロンを得て、コルチゾールとエストロゲンが生成されます。ストレスなどによってコルチゾールの需要が高まり、ホルモンの材料が全てコルチゾールに奪われてDHEAやエストロゲンが減少することを、一般的に「コルチゾール・スティール」と呼んでいます。

プレグネノロンはすべてのステロイドホルモンの前駆体なので、ストレスによるコルチゾールの過剰分泌は必然的にDHEAと他の下流ホルモンを製造するための前駆体として利用されるプレグネノロンを奪ってしまいます。

こちらのグラフは副腎疲労のステージ表です。非常にストレスがかかった副腎疲労の抵抗期のステージ1では、コルチゾールは上昇しますが、性ホルモンであるDHEAは減っています。このグラフで見るとあたかもプレグネノロンがコルチゾールに奪われてDHEAが下がっているように見えます。

副腎疲労に伴い、女性ホルモンが少なくなることを「コルチゾール・スティール」と言います。それでは、コルチゾール・スティールはエストロゲン過剰と同時に起きればちょうどいいんじゃないでしょうかというのが、冒頭のご質問の意味でした。

4 副腎皮質と主な生成物

下記は、ウィキペディアに掲載されているコレステロールの代謝マップです。

一番左上にある図が、コレステロールです。コレステロールが、各代謝によって様々な物質に変化していきます。右上にあるのは、コレステロールから生成されるアルドステロンです。コルチゾールも同じくコレステロールからできます。右下のピンクの三角形にあるのは女性ホルモンです。エストロゲンは、E1(エストリオール)、E2(エストラジオール)、E3(エストロン)の3つの総称ですが、全てコレステロールから生成されます。DHEAなどの様々なホルモンは、コレステロール骨格を持っています。副腎をウィキペディアで調べてみると、4層構造に分かれています。

副腎皮質と副腎髄質、真ん中にあるのは副腎髄質です。副腎皮質は、さらに球状層、束状層、網状層による三層構造に分かれています。球状層から主にアルドステロン、束状層からコルチゾール、網状層からDHEAというホルモンが生成されます。アドレナリン(エピネフリン)とノルアドレナリン(ノルエピネフリン)を作っている場所が副腎髄質で、その外側に副腎皮質があり、3層構造に分かれています。束状層は6割の大きさがあり、コルチゾールを生成しています。副腎皮質の場所によって主な生成物が違うということがこの図から分かります。

副腎皮質からはアルドステロンが分泌されて腎臓に働きます。2層目の束状層からはコルチゾールが分泌されて肝臓に働きます。内側の網状層は性ホルモンなので、生殖器に働きます。副腎髄質からは、エピネフリンが分泌されて心臓や血管に働きます。

コレステロールの代謝マップは、すべての代謝を一度に記載しているので誤解を招きがちです。実際にこのように全ての臓器で色々なホルモンが均等に生成される臓器や組織はありません。代謝マップの緑の縦の棒が酵素です。臓器や組織によって発現している酵素が違うので、組織によって生成物は異なってきます。

4-1球状層の場合

球状層の主な生成物はアルドステロンですが、その特徴はアンギオテンシンⅡ受容体が発現していることです。つまりアンギオテンシンⅡ受容体が球状層にくっついて、酵素反応が起きます。例えばCYP11B2遺伝子が発現しているところで、CYP17遺伝子は欠損しているため、下層には反応がいかなくなります。アンギオテンシンⅡ受容体が働くと、コレステロールがプレグネノロンに変換されます。プレグネノロンは本来下層にも働くのですが、CYP17遺伝子の酵素が欠損しているため右にしかいけません。青枠で囲まれた酵素が発現してるので、一部コルチゾールもできまが、腎臓でナトリウムの再吸収をするアルドステロンが生成されます。

4-2 束状層の場合

束状層は、副腎皮質刺激ホルモンの受容体があるためACTH(副腎皮質刺激ホルモン)に反応します。球状層とは違って、CYP17遺伝子が発現しているため二段目まではいけますが、17,20 lyaseの発現がないので三段目の性ホルモンには到達できず、コルチゾールが主な生成物になります。

4-3 網状層の場合


網状層の場合は、球状層とか束状層には存在しない17,20 lyaseが発現してるので、一番下層まで到達できます。それとは逆に、CYP21A2とCYP11βの酵素の発現がないため、右にはいけません。そのため網状層ではDHEAが生成されます。右下の四角内の赤がミトコンドリアで、緑が発現小胞体です。コレステロールがプレグネノロンに変換されるのは、細胞のミトコンドリアの中で行われます。小胞体ではタンパク質が生成されます。小胞体でこれらの酵素がつくられるかどうかはエピジェネティクスによって違います。つまり細胞や組織によって小胞体で生成される酵素が違うため反応が異なるということになります。

上の図のようにACTHやアンギオテンシンⅡなどの細胞外からの刺激によりミトコンドリアに指令があると、コレステロールが外膜から内膜に移動し、プレグネノロンに変換されます。プレグネノロンに変換されるとミトコンドリアの外に出て、小胞体の酵素によって形が変わっていきます。このプレグネノロンは小胞体で生産される臓器特異的(組織特異的)な酵素によって各ホルモンに代謝され、最終的に細胞外に分泌されます。それをまとめたのが下の図です。

球状層でコレステロールのプレグネノロンに変換されるのは、それぞれの副腎皮質細胞のミトコンドリアで起こります。そのミトコンドリアの中で、コレステロールがプレグネノロンに変換されて、プレグネノロンが組織特異性のある酵素で、アルドステロンやコルチゾール、DHEAに変換されます。つまり球状層のコレステロールは、アルドステロン専用、束状層のコレステロールは、コルチゾール専用、網状層のコレステロールはDHEA専用ということです。

「コルチゾール・スティール」というのは、コルチゾールが足りなくなるため他のDHEAをつくるための材料のコレステロールが全部奪われるということですが、球状層や束状層でコルチゾールを作るために、網状層のプレグネノロンやエストロゲンが奪われ、細胞壁を超えて移動するというエビデンスは今の所出ていません。

繰り返しますが、Wikipediaのコレステロール代謝マップは、各ステロイド産生組織間で異なる酵素活性度を示していないため、混乱しないようにしてください。

5 コルチゾールスティールは神話である

下記は、1996年出版のブラックウィル先生の「必須内分泌学」第三版に載っている図です。コルチゾール・スティールの説明のために少し修正されていますが、左下の丸から腎臓、肝臓、卵巣、精巣となります。General circulationとあり、全身の流れでこのようなことが起きているということが教科書に書いてあるので誤解を招きます。 PubMedでコルチゾール・スティールを調べてみると、たった10件しか検索結果が出てきません。コルチゾール・スティールがいかに一般医学会からは異端扱いされているかということが分かります。

この図を見ると、いかにも共通のコレステロールプールがプレグネノロンプールがあるように見えますが、タンパク質はローテーションしていても身体にアミノ酸プールがないように、全身のホルモンに共通したプレグネノロンプールは存在しません。

6 ではなぜ、コルチゾール↑DHEA↓が起こるのか?

コルチゾール・スティールが起こらないとしたら、副腎疲労の第一期では、何故下の図のようにコルチゾールが上昇し、DHEAが下降するのでしょうか。現在考えられているのは、ストレスによる刺激応答への低下や、コルチゾール上昇に伴う耐糖能障害です。

高血糖が健常男性のDHEAレベルを急激に低下させます。コルチゾール↑、DHEA↓のコントロール不良2型糖尿病患者では、網状帯でのDHEA形成に必要な酵素(17,20リアーゼ)活性が低下。血糖コントロール改善後に、酵素活性が修正され、コルチゾール、DHEA、およびDHEA-Sレベルも正常化します。また、炎症性ストレス下では、網状帯がDHEA産生をダウンレギュレートします。

コルチゾールは血糖値を上げます。血糖値が上がると、DHEAは下がります。何故DHEAが下がるのかというと、コントロール不良2型糖尿病患者では、網状帯でもDHEA形成に必要な酵素である17,20リアーゼの活性が低下するからです。高血糖が一部の酵素活性を落とすということが明確になってきています。

もう一つDHEAのレベルを落とすのが、炎症です。炎症ストレス下では網状帯がDHEA産生をダウンレギュレーションします。その結果、コルチゾールが上昇して、DHEAが下降します。コルチゾールとDHEAの関係性は非常に大切で、コルチゾールはタンパクを異化するホルモンです。コルチゾール分泌が過多になると身体が分解していきますが、DHEAはその反対の働きをするアナボリック(タンパク同化)ホルモンなのです。コルチゾールが分泌されるとDHEAも同時に上がって、過剰なタンパクの異化を抑えるように身体の仕組みとしては働いているのですが、DHEAが急激に減少するということは、カタボリック(タンパク異化)が亢進するということなので、DHEAはとても大事になります。

7 コルチゾール・スティールがないと言えるもう一つの理由

そもそもコルチゾール・スティールが本当に存在するとしたら、朝コルチゾールが上昇するときに、エストロゲンの分泌が減るはずです。エストロゲンは日内変動はないのでここからもコルチゾール・スティールが当てはまらないと言うことが分かります。

エストラジオールとコルチゾールの血中濃度は、28.8~196.8pg/ml、コルチゾールは4.5万~21.1万pg/mlと、1000倍以上あることが分かりました。つまりコルチゾールは大量なので、エストラジオールが多少コルチゾールを盗んでも足しにはならないということが分かりました。

つまりコルチゾール・スティールは存在しませんが、エストロゲン過剰とコルチゾールの低下はそれぞれに対して個別に対処すべきというのが冒頭の質問の答えになります。

8 エストロゲン過剰への対処法

エストロゲン過剰に対しての対処法を知るのに参考になる本はプロゲステロンクリームを世に広めたジョン・リー先生の「医者も知らないホルモンバランス」という著書です。もうお亡くなりになられましたが、この本はとても有名で、今改訂版が出ているのでご興味ある方はぜひ読んでみてください。

「What your doctor may not tell you about」というシリーズで、「about Menopause」「about Psyroid」「about Oslo」などがあります。

「What your doctor may not tell you about」というシリーズで,日本語に訳されているのは3種類くらいですが、その中でもこれは良書です。この本には、プロゲステロンは大変万能な働きをしていて、その働きの一つには過剰なエストロゲンを抑えるとあります。だからエストロゲン過剰症候群が辛い人に、プロゲステロンクリームを使ったらいいのではないかと勧める本です。 ただなかにはプロゲステロンクリームの効果がない人もいます。そのような場合は、根本原因ピラミッドを遡って調べるのが良いと思います。根本原因ピラミッドの特に下の3つがとても重要です。ホルモン、消化器、デトックスです。

1.ホルモン

もしプロゲステロンクリームが効かない場合、まず最初に考えられるのは副腎疲労です。副腎ホルモンが、PMSや更年期症状などの女性ホルモン症状の主な原因となります。副腎ホルモンはホルモンヒエラルキーの一番下なので、女性ホルモンの問題を解決するためには、まず副腎をケアすることが鉄則です。

2. 消化器系

不安定な血糖値、炭水化物やお菓子の過剰摂取、消化機能の低下、食物過敏症はすべて、女性ホルモン問題の一因です。これらの原因により、血糖値が上下して腸の炎症が起きます。腸内細菌バランスもとても大切で、腸内細菌はエストロゲンを分泌しているので、腸内細菌バランスが崩れるとE1,E2,E3のバランスが崩れます。それがエストロゲン優勢症候群の原因とも言われています。

3. 解毒

副腎疲労も治したし、胃腸のケアもしているのにPMSが強い人は、デトックスをされてみてください。ピルの服用またはホルモン補充療法を受けた女性は、外部ソースからのホルモンを体が排除しようとする肝臓の解毒経路に余分な負担をかけます。エストロゲンは、肝臓でCOMTという酵素で代謝され、ビタミンB6がその補酵素となります。メチレーションが回っていない人や、ビタミンB6が不足している人は、エストロゲン過剰の症状が強く出ます。特にプロゲステロンクリームが効かない人、乳がん、子宮頸種、女性特有の問題を抱えている人が最初に取り組むべき栄養療法は、肝臓へのアプローチで女性ホルモンへの対処に大変重要です。 

プロゲステロンの働き

  • 妊娠の継続
  • 脳機能を保つ(脳細胞中のPレベルは血中の20倍、GABA-R に結合)
  • 体温を上昇させる
  • 過剰なエストロゲンの働きを抑える
  • 他のホルモンの前駆物質
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