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宮澤賢史

水銀デトックスで免疫力を高める

宮澤賢史 · 2021年8月4日 ·

あなたは自分の免疫力に自信がありますか?免疫力を上げるにはまず、免疫力を低下させる原因を知る必要があります。

免疫力を低下させる大きな要因の一つに、水銀の蓄積があります。マグロなどの大型魚を週に何度も食べる方、歯に金属の詰め物がある方は、ご自身が持っている本来の免疫力を発揮できていないかもしれません。そこで行いたいのが、水銀デトックスです。体に溜まった水銀を体外に排泄することにより、免疫力を上げ、ウイルスに打ち勝つ体づくりができるのです。

1. 水銀デトックスは免疫の要

1-1. なぜ水銀デトックスが重要なのか?

抗生物質の一つであるヒドロキシクロロキンは、抗炎症効果があるため、自己免疫疾患の治療に使われていますが、体内に水銀が溜まっていると効きが悪くなります。なぜなら、水銀は細胞分裂の活発な部位に入りやすく、骨髄に蓄積すると多発性硬化症(MS)や白血病などの自己免疫疾患を誘発するからです。花粉症などのアレルギー症状にも水銀が影響しているケースがあります。

亜鉛には下気道感染の予防効果がありますが、亜鉛と水銀が同族元素なので、お互いに拮抗します。したがって、亜鉛の働きをよくするためには、水銀デトックスが欠かせません。

抗生物質のジスロマックは、リボゾームに作用するため、ウイルスへの効果が期待されています。日本では約20年前から最も使われている薬のうちの1つですが、あまりにも使われすぎて、薬剤耐性が問題になっています。水銀は耐性菌を誘導することが知られており、水銀が体内に蓄積しているとますます抗生物質が効きにくい体になってしまいます。

このように、いざというときに備えて薬が効く体にしておくためには、水銀デトックスは不可欠ということがお分かりいただけたかと思います。

1-2. 解毒の3フェーズと水銀の関連性

人間の解毒の仕組みは、3つのフェーズに別れています。フェーズ1は活性化、フェーズ2は抱合、フェーズ3は輸送です。解毒がうまくいっていない人は、フェーズ1、 2、3のどこに原因があるかを探らなければなりません。

フェーズ2は、毒素がグルタチオンやグルクロン酸により抱合されて水溶性になるプロセスです。細胞内に溜まった毒素は脂質に溶けて安定化しているため、細胞外に出るには水溶性の物質と結合する必要があります。

フェーズ3は、細胞内から細胞外に出る工程と、尿や便から排出されるプロセスです。細胞膜にあるMRP1(薬剤耐性タンパク1:Multidrug resistance-associated Protein 1)輸送体は、水銀の他に抗生物質などの薬剤も排出する働きがあります。したがって、MRP1輸送体が活性化している人は、水銀と一緒に抗生物質も排出してしまうので、当然抗生物質の効きは悪くなります。

また、水銀は多剤耐性関連タンパク質遺伝子を誘発することがわかっています。水銀をたくさん蓄積している人は、細胞外に排出しようとする働きが強まり、その過程で抗生物質も排出されてしまうのです。

Toxicol Lett. 2005 Jan 15;155(1):143-50.
Mercury induces multidrug resistance-associated protein gene through p38 mitogen-activated protein kinase
https://doi.org/10.1016/j.toxlet.2004.09.007

他にも、1993年の論文では、アマルガムが水銀耐性細菌や抗生物質耐性細菌の増加を引き起こすことが報告されています。

Antimicrob Agents Chemother. 1993 Apr;37(4):825-34. 
Mercury released from dental “silver” fillings provokes an increase in mercury- and antibiotic-resistant bacteria in oral and intestinal floras of primates
https://doi.org/10.1128/AAC.37.4.825.

このような知見から、患者さんに抗生物質を処方する場合は、必要に応じて水銀のデトックスを行っています。

2. 検査の読み方と治療方針

2-1. 蓄積量・排泄力・対処法を適切に把握する

水銀デトックスをするためには、ご自身の水銀蓄積量と排泄力、そして自分に合った対処法を適切に把握することが大切です。今回は、水銀の排泄量を評価できる毛髪ミネラル検査に加え、重金属の蓄積量や対処法などの情報を与えてくれるオリゴスキャンを紹介します。

症例: 28歳男性 非淋菌性尿道炎と全身倦怠感

主訴
・尿道炎症状、発熱、下痢、食欲低下、倦怠感、手足のしびれ
・疹、手足のさかむけ、
・脱力感、手足の筋肉量低下

この男性は、尿道炎を何度も繰り返して泌尿器科を受診していましたが、全く改善がみられず、しまいには手足の痺れや脱力感、倦怠感が強くなり、宮澤医院に来院されました。舌にびらんがあり、筋力も低下していました。排尿時痛がずっと続いており、関節痛や微熱もあったため、マイコプラズマ感染の疑いがありました。マイコプラズマ・ファーメンタンス(尿道炎からくるマイコプラズマ)の検査をしたところ、陽性を示したので、マイコプラズマ感染による非淋菌性尿道炎と慢性疲労症候群と診断しました。

症状
・舌にびらん、上下肢の筋力低下、排尿時痛、
・頭のもやもや感、関節痛、微熱
・フェリチン152ng/ml, AST26,ALT27,γGTP21
・マイコプラズマによる非淋菌性尿道炎と慢性疲労症候群と診断

マイコプラズマ感染症は、関節リウマチや慢性疲労症候群、線維筋痛症など、さまざまな病気を引き起こすことがわかっており、微熱、発熱、筋肉痛、といった症状がある人には必ずマイコプラズマ検査を行っています。通常のマイコプラズマ検査ではなく、私はエムバイオテック社の抗原抗体検査を用いています。マイコプラズマ・ファーメンタンス検査は、尿道炎の原因菌となるマイコプラズマを検出できます。

最初は抗生物質であるミノマイシンを使って治療を行いましたが、なかなか改善しませんでした。抗生物質に対する耐性があると考え、水銀デトックスのDMPSと、鉛やカドミウムのデトックスに使うEDTAキレーション点滴を5クールにわたって行いました。かなり時間はかかりましたが、今はほとんどの症状が消失しています。慢性疲労症候群の患者さんで、マイコプラズマが陽性の場合、ミノマイシンを処方して1~ 2ヶ月で治る人はたったの1割程度です。先にデトックス治療を行うことにより、抗生物質の効きをよくすることができるのです。

症例の28歳男性の重金属蓄積量をオリゴスキャンで確認してみたところ、鉛は低下していましたが、僅かに増えている重金属もあり、重金属の蓄積量にほとんど変化がありませんでした。蓄積量が変わらないのに、なぜ症状が改善したのでしょうか?

2-2. オリゴスキャンの結果が教えてくれること

オリゴスキャンは、手のひらに光を照射し、体内の重金属の蓄積量を測定する装置です。蓄積量だけではなく、有害金属毒性、酸化ストレスなど、デトックスに関する様々な情報を与えてくれます。症例の男性の場合、重金属の蓄積量だけを見ると変化は少ないのですが、有害重金属のトータル毒性は減少していました。また、酸化ストレスが低下し、抗酸化力が向上していました。この辺りが影響し、症状が軽快したと推察されます。

有害金属毒性の項目に、「硫黄との結合が十分でないため有害金属の代謝不良」とありますが、これはフェーズ3(毒物の輸送)のことを指しています。硫黄と水銀は非常に親和性が高く、摂取した硫黄が水銀と結合して排出されているかという指標がここに現れます。赤から黄色に好転していますが、これが緑になるように硫黄をもう少し摂った方が良いということがわかります。硫黄を豊富に含むアブラナ科の植物や肉を積極的に摂るようにします。

2-3. 酸化ストレスは解毒力を低下させる

フェーズ2(抱合)の過程では、グルタチオンの活性化が重要になります。グルタチオンは抗酸化にも使わてしまうので、酸化ストレスが強い人はグルタチオンがうまく働きません。したがって、オリゴスキャンの酸化ストレスマーカーと、血液検査の肝臓機能マーカーを確認し、酸化ストレスが強い場合はそちらの対処をします。肝臓機能を確認する理由は、フェーズ1とフェーズ 2が主に肝臓で行われるからです。慢性の肝臓疲労や肝炎がある場合は、フェーズ2の力が落ちます。症例の男性の場合、フェリチンが152もありました。フェリチンが100以上ある場合は炎症と捉えます。抗炎症のアプローチ、もしくは肝臓のケアを行った方が良いでしょう。毛髪検査も行ったところ、ミネラル輸送障害に当てはまりました。まだ水銀の害が残っていることを示します。

以上のことから今後の治療では、ミネラルのバランスが整うように、抗炎症のアプローチと肝臓ケア、そしてもう少し水銀のデトックスが必要だと考えています。症状自体はだいぶ回復したので、メンテナンスをしながらゆっくりとしたペースで行っていきます。

2-4. 毛髪ミネラル検査とは

毛髪ミネラル検査とは、毛髪中のミネラルを測定し、重金属の排泄力を評価する検査です。髪は1ヶ月に1cm伸びるので、毛髪の根元から3cmの部分を測定すると、過去3ヶ月の平均の排泄量がわかります。毛髪は、細胞外液のミネラルの経時変化を表す記録紙と言えます。

2-5. 耐容量を超えなければ大丈夫?

水銀は、下垂体からのACTH分泌や副腎からのコルチゾール分泌をブロックします。したがって、体内に水銀が溜まっている人はだいたい副腎疲労になります。

症例: 45歳女性、副腎疲労

この症例の女性は、歯にアマルガムが9本もありましたが、毛髪ミネラル検査を行ったところ、水銀は1.1ppmしか検出されませんでした。

厚生労働省の国立水俣病総合研究センターのWEBサイトを見ると、毛髪中の水銀量が重症度を全て表しているという考えで、耐容許容量5ppmを超えなければ問題ないとされています。耐容許容量は十分な安全性を考慮して決められた値で、これを超えない限り影響はないと書かれています。症例の方に当てはめると、全く問題ないとみなされてしまいますが、果たしてそうでしょうか?

私が強く言いたいのは、「検出されない=問題ない」は間違いということです。むしろ、水銀の曝露量が多いにも関わらず、毛髪検査で検出されないケースの方が重症なのです。

2-6. 自閉症児の毛髪分析

ここで、自閉症児の毛髪分析結果の報告を見てみましょう。自閉症児の母親は、対照児の母親に比べて、明らかに水銀曝露歴が高かったにも関わらず、子供の毛髪からの排泄パターンは少なかったそうです。毛髪の水銀レベルが少ないほど、自閉症の重症度が高かったという結果も出ています。

Int J Toxicol. 2003 Jul-Aug;22(4):277-85.
Reduced levels of mercury in first baby haircuts of autistic children.
https://doi.org/10.1080/10915810305120.

  • 94人の自閉症児と、年齢、性別をマッチさせた45人の対照児の毛髪分析を行った
  • 自閉症児の母親は、対照児の母親に比べて免疫グロブリン注射や歯科アマルガムなど顕著に高レベルの水銀曝露歴があったにもかかわらず、自閉症児の毛髪からの排泄パターンは対照児に比べて明らかに少なかった
  • 対照児の毛髪水銀レベルは、母親のアマルガムの個数と魚の摂取量、そして幼少期のワクチン接種と優位に相関していたが、自閉症児には相関が見られなかった
  • 自閉症児は、症状の重症度が高いほど毛髪の水銀レベルが少なかった

毛髪は水銀の排泄器官です。したがって、水銀の排泄障害が重度であるほど、症状も重篤になると言えます。

2-7. 毛髪ミネラル検査からわかること

毛髪ミネラルの結果は、有害金属の排泄力を表しています。アマルガムの詰め物がたくさんある人でも、毛髪検査の水銀レベルが高い人は比較的軽症です。曝露量と排泄量が一致しているからです。

もう1つ、毛髪ミネラル検査で得られる重要な情報が、ミネラルバランスです。ミネラルバランスを見れば、水銀の排泄能力をある程度推測できます。水銀が体内に溜まっていないから排泄量が少ないのか、それともたくさん溜まってるのに排泄できていないのか、一見しただけでは区別がつきません。その場合はミネラルバランスを確認します。検査結果で、左右のミネラルバランスが整っている場合、水銀の排泄量=水銀の蓄積量とみなしてよいでしょう。一方、ミネラルバランスが崩れている場合は、重金属排泄不良を起こしており、水銀が蓄積していると考えます。

2-8. 毛髪レベルとオリゴスキャンを比較する

水銀が体内にないのか、排出できていないのかを知る上でより確実な方法は、毛髪レベルとオリゴスキャンを比較することです。比較することで、どのぐらい排泄できていないのか、どのぐらい蓄積しているのかがはっきりわかります。オリゴスキャンと毛髪ミネラル検査を同時に行うことで、的確なデトックスの治療方針を立てられるようになるのです。

症例: 48歳女性、慢性疲労

  • 原発性アルドステロン症にて左副腎摘出
  • 摘出後から疲労感増強、歩行不可能
  • 3ヶ月経過も改善が見られないため、副腎機能低下を疑い来院
  • 血中ACTH 27.4pg/mL, コルチゾール 11.3μg/dL(基準範囲内)
  • フェリチン 17.5 ng/mL, AST 25, ALT 17, γ-GTP 11
  • 唾液中コルチゾールが顕著に低下
  • 歯科アマルガムあり

この女性は、原発性アルドステロン症という副腎の癌を発症し、左副腎を摘出していました。この疾患は、もう片方の副腎が萎縮するため、オペ後に副腎疲労の症状が強く出るケースが多くみられます。副腎摘出後から疲労感が増し、歩行も困難になりました。3ヶ月しても改善が見られず、副腎疲労を疑い来院されました。血中のACTHとコルチゾールは基準値内でしたが、唾液中コルチゾールが顕著に低下していました。この方も歯にアマルガムがありました。治療は、腸と副腎ケア、デトックスを行い、歯科受診を勧めました。

治療前後の毛髪ミネラル検査の結果です。治療前はミネラルバランスが左に寄っていましたが、治療後は左右のバランスがとれています。この結果は、デトックスで水銀をある程度出してあげると、ミネラル輸送が回復することを示しています。ここまで回復すれば、あとは自然デトックス(サウナや運動など)で水銀を排泄できるようになります。この方は治療に4年かかりましたが、歩行が可能になり、仕事復帰し、通常の生活に戻ることができました。

ミネラル輸送が回復した時のオリゴスキャンと毛髪ミネラル検査を比較すると、アルミやカドミウムは、蓄積量が多く、排出量は少なくなっています。ヒ素の蓄積は標準レベルですが、排泄量はかなり多くなっています。

このように、ミネラル輸送障害がなければ、蓄積量(オリゴスキャン)と排泄量(毛髪ミネラル検査)は反比例する傾向があります。今後の治療方針としては、オリゴスキャンでフェーズ3がNGとなっているため、食事やα-リポ酸などのサプリメントで硫黄を補給します。また、抗酸化力が黄色なので、抗酸化アプローチも行います。フェリチンは17.5で、強い炎症がみられないため、ビタミンCを足す程度で良いと考えています。

毛髪検査の下にあるのは有機酸検査の結果です。有機酸検査では、グルタチオンレベルを確認することができます。58番のピログルタミン酸はグルタチオンが不足すると数値が上がります。この女性の場合は値が低いため、グルタチオンは足りていると判断します。2-ヒドロキシ酪酸は、グルタチオンが作られる経路(硫酸経路)の生成物です。この数値が上がっていれば、体内で解毒が活性化されていることを意味します。

2-9. 自己免疫疾患と水銀デトックス

症例: 51歳女性、線維筋痛症

  • 5年半にわたり、線維筋痛症治療を継続
  • 副腎疲労の症状に当てはまることが多数あり来院
  • 歯科アマルガム多数
  • 時々熱が出る。CRP 0.1 ng/dL
  • フェリチン51.4 mg/mL, AST 20, ALT 17, γ-GTP 11

この女性は、5年半にわたって線維筋痛症の治療を継続しており、副腎疲労の疑いもあって来院されました。歯科アマルガムも多数確認できました。時々微熱が出るということなので、マイコプラズマ検査を行ったところ陽性でした。したがって、副腎ケア、ミノマイシン、デトックスを行いました。

抗生物質が効かない人や効きにくい人には、多くのケースでデトックス治療を行っています。『Overcoming Arthritis』(David Brownstein著)には、リウマチに対してミノマイシンを投与したところ改善がみられたと書かれています。関節リウマチもマイコプラズマ感染が原因であることを示しています。

関節リウマチ患者に対して、48週間にわたる二重盲試験でミノサイクリン200mgを投与した群(109名)は、しない群(110名)に比べて優位に関節の腫張(54%, 39%)、関節の圧痛(56%, 41%)の改善がみられた。

Ann Intern Med. 1995 Jan 15;122(2):147-8.
Minocycline treatment of rheumatoid arthritis
https://doi.org/10.7326/0003-4819-122-2-199501150-00012

この女性のデトックスで注意すべきことが、硫黄に対する過敏反応があるということでした。通常のデトックス治療で使用する、DMSA、モリブデン、グルタチオン、タウリンが使えなかったため、毒物に拮抗するミネラルを多めに摂ってもらい、自然デトックスから始めました。幸いなことに、ミネラル輸送障害は見られず、重金属の排泄は良好でした。

DMSA、モリブデン、グルタチオン、タウリンに過剰反応あり

オリゴスキャンの結果から抗酸化力が低いことがわかったため、ビタミンCを摂取してもらいました。フェーズ3も赤色ですが、硫黄系のサプリメントが使えないため、一旦保留にしています。良くなったり悪くなったりを繰り返していましたが、甲状腺機能を上げると一気に症状が軽快しました。

症例: 38歳男性、慢性疲労

  • 性行為後にインフルエンザ症状が出現
  • その後、尿道炎を繰り返し、抗生剤治療で軽快するも再発。関節炎や皮膚湿疹も出現したため当院を受診
  • 湿疹、関節痛、咽頭痛、口内違和感あり
  • 口腔内アマルガム多数
  • フェリチン 71ng/mL, AST 48, ALT 54, γ-GTP 34

この男性は、性行為後にインフルエンザ症状が出現し、尿道炎を繰り返していました。典型的なマイコプラズマ感染症です。肝機能を示す数値がかなり高い状態でした。

アマルガムが多数あるにも関わらず、水銀レベルが低いため、水銀の排泄障害があると考えられました。DMPSとEDTAのキレーションを行ったところ、多くの有害金属の排出が確認できました。キレーションに効果があると確信し、DMPSとEDTAのキレーション治療を3クール行いました。その結果、ミネラルバランスは概ね整いましたが、アルミニウムの蓄積は持続していました。

この方は、3年目あたりから急に良くなって、今は慢性疲労の症状はほとんど消失しました。ただ、問題は肝機能の数値が上がってしまうことです。肝機能の数値が上がるということは、肝臓の解毒力が低下していることを意味します。オリゴスキャンの結果では、フェーズ3とフェーズ2がNGになっています。化学物質過敏症の症状が出るようになったため、ウルソやミルクシツルを使って肝臓ケアを行っています。

症例: 71歳男性、掌蹠膿疱症

5年間、掌蹠膿疱症の緩解、増悪を繰り返している方です。関節リウマチと掌蹠膿疱症の症状があり、ミネラルバランスも大きく崩れていたため、デトックスを行いました。水銀レベルがかなり高かったのですが、チオラとウラリットによるキレーションを徹底的に行ったところ、ある程度ミネラルバランスが整うようになりました。現在は、関節痛も掌蹠膿疱症もほぼ改善しています。

オリゴスキャンの結果を見ると、有害金属の代謝不良、抗酸化力の低下がみられました。関節リウマチがあったため、CRPがなかなか下がりませんでした。肝臓の数値が少し高いため、グルタチオンやビタミンCを用いて、フェーズ2, 3へのアプローチを集中的に行っています。

3. まとめ

解毒には、フェーズ1(活性化), 2(抱合), 3(輸送)の3つのステップがあります。フェーズ1にはチトクロームP450が関わっており、SNPを調べることにより評価はできますが、治療の介入が難しい部分です。一方、フェーズ2と3は治療による改善が可能です。

解毒の要素オリゴスキャン毛髪ミネラルその他の評価法
フェーズ1
(活性化)
チトクロームP450のSNP
フェーズ2
(抱合)
◯
(抗酸化)
肝機能、フェリチン、有機酸検査
フェーズ3
(輸送)
◯
(硫黄結合)
蓄積量◯
排泄力◯
水銀の影響◯

フェーズ2はオリゴスキャンで確認できます。その他にも、肝機能やフェリチン値、有機酸検査のグルタチオンレベルを調べることで評価できます。フェーズ3は、オリゴスキャンの硫黄結合の項目で評価することができます。毛髪ミネラル検査では、重金属の排泄力と水銀の影響、ミネラル輸送障害の有無を評価することができます。

重症度と重金属の蓄積量は必ずしも相関しません。複数の検査と合わせて総合的に体内を理解する必要性があります。毛髪ミネラル検査、オリゴスキャン、血液検査、これら3つの検査結果を総合的に判断することで、治療方針が立てやすくなるでしょう。

  • 症状の重症度と重金属蓄積量は必ずしも相関しない 
  • 他の検査と合わせて総合的に体内を理解する必要がある 
  • オリゴスキャンは重金属蓄積量に加えて、 デトックスのフェーズ2、3を評価できる 
  • 毛髪ミネラル検査は重金属の排泄力、水銀によるミネラル輸送障害を評価できる
  • オリゴスキャンを読み解く鍵は重金属蓄積量以外にある 

根本原因に対する個別化栄養療法のすすめ

宮澤賢史 · 2021年7月26日 ·

栄養療法を学ぶ目的は人それぞれですが、薬に頼る治療方法に限界を感じてこのサイトにたどり着いた方もたくさんいらっしゃると思います。では、そもそも栄養療法の何が優れているのでしょうか?

この内容を一言で表すと、「根本原因に対する個別化栄養療法」と言えます。様々な検査や病態から個々人の根本原因を見つけ出し、一つ一つに対処していく治療方法です。様々な検査手法が確立し遺伝子解析が進む中、個別化栄養療法は今後ますます重要視されるようになるでしょう。

1. 個別化栄養療法とは何か

1-1. 効かないサプリメントは論外

2019年に国民生活センターが各社のサプリメントを一斉にテストしたところ、4割以上が規定時間内に溶けないことが明らかとなり、メディアで話題になりました。溶けないということは、体内をスルーして便で排出され、全く効果がないということです。実践講座ではサプリメントが効かない理由を探っていきますが、このような粗悪なサプリメントは論外です。本来「効く」はずのサプリメントがなぜ自分の体には「効かない」のか、それを考えるのが本講座の目的です。

1-2. 栄養療法との出会い

私が栄養療法を始めたのは、サプリメント会社が設立したクリニックの院長に就任したことがきっかけでした。当初は血液検査などをもとに、ミトコンドリア機能と低血糖症へのアプローチをメインに行っていました。

例えば、GOT(AST)とGPT(ALT)の関係を紐解くと、ミトコンドリア機能の状態がわかります。

  1. GOT≒GPT: 正常
  2. GOT>GPT(差が2以上): ビタミンB群代謝不足
  3. GOT>40: 心不全、筋肉障害
  4. GOT<GPT: 脂肪肝、ウイルス性肝炎
  5. GOT↑・GPT↑:ビタミンB群消費↑
    ⇨ ②+④の状態の時、一見①に見えることもある
    ⇨ GOT、GPTは↑でも↓でも補給を考える

低血糖の診断には5時間糖負荷試験が用いられます。当時、500人以上の患者さんに糖負荷試験を行いましたが、ほとんどの人が3~5時間で低血糖を起こしていました。この症例はうつ病の患者さんで、30分後に146mg/dLまで上がった後、240分後には52mg/dLまで下がっています。

低血糖症は血糖値の急激な上昇のリバウンドで起こることから、当時の患者さんには糖質制限を勧めました。しかしながら、ことごとく失敗に終わってしまいました。低血糖の陰には副腎疲労が隠れていることが多く、糖質制限によりかえって症状を悪化させてしまっていたのです。

1-3. リオルダンアプローチから学ぶこと

そんな時、研修で訪れたのが米国リオルダンクリニックでした。建物がドームの集合体になっており、ドーム1つ1つが研究所やクリニックになっています。そこで教わったのが、創設者であるヒュー・リオルダン博士が提唱した「リオルダンアプローチ」でした。

リオルダンアプローチ 7つの要素
☑️ Staff/Co-learner Relationships
☑️ Identify The Causes
☑️ Characterize Biochemical Individuality
☑️ Care for the Whole Person
☑️ Food As Medicine
☑️ Cultivate Healthy Reserve
☑️ Healing Power of Nature

1つ目に「Staff/Co-learner Relationships」とあります。リオルダン博士は、「患者」と呼ばずに「Co-learner(共に学ぶ人)」という表現を使っていました。クリニックにはオーガニックレストランやセミナー施設が併設されており、畑で採れたオーガニック野菜を使ったランチを食べながら、ランチョンセミナーも開催できます。スタッフとCo-learnerとの関係性を築くために、様々な工夫が施されていました。

2つ目にある「Identify The Causes」ですが、頭文字を取って病気や病態の原因を次のようにまとめることができます。

  • Infection(感染):ウイルス、細菌、真菌の増殖
  • Digestion(消化):消化不良、胃酸分泌不良、消化酵素分泌不全
  • Emotion(感情):非常に問題で、疾患を悪化させる
  • Nutrients(栄養):栄養不良、吸収不良、代謝的なブロック
  • Toxins(毒):鉛、水銀などの重金属、残留農薬、除草剤など
  • Inflammation(炎症):「○○炎」を引き起こす慢性的な引き金、食習慣
  • Foods(食事):臓器のダメージ、食物依存症を引き起こす
  • You(あなた自身):あなたの決断、思い込み、思考の方向性
  • Thyroid dysfunction(甲状腺機能障害):特に検査でわからない甲状腺機能異常
  • Hypoglycemia(低血糖症):炭水化物、糖質、インスリン、副腎と関わる
  • Endocrine disorders(ホルモン異常):加齢、機能不全を引き起こす
  • Candida overgrowth(カンジダ過剰増殖):過剰な抗生剤、ステロイド、砂糖、ストレス
  • Adrenal Fatigue(副腎疲労):低血糖、病気や人生への負担などが原因
  • Under activity(運動不足):自分の能力を十分に鍛えないこと
  • Stress or spiritual crisis(ストレス、精神的な危機):不必要な活動でいっぱいになってしまうこと
  • Environmental(環境):満たされない、機能しない、むしろ害になっている
  • Structural(構造):心と体の不一致

これはまさに、いま行っている栄養療法そのものです。この学びをもとに、腸内環境や解毒、炎症、甲状腺ホルモンに関する検査を導入しました。また、この時初めて副腎疲労の存在を知り、クリニックに持ち帰って治療に取り入れたところ、とてもいい効果が得られました。そんな経緯で副腎疲労に特化した外来を始めました。

1-4. メチレーションと脳機能

その他に影響を受けたのが、メチレーションの権威であるベン・リンチ博士とウィリアム・ウォルシュ博士との出会いです。2016年にはウィリアム・ウォルシュ博士に来て頂き、メチレーションのセミナーを開催しました。メチレーションは脳機能に影響します。脳機能のアンバランスは個別化分類できて、それに応じた栄養素を投与すればよいということが理解でき、治療に取り入れました。

1-5. 根本原因は共通している

宮澤医院に来院する患者さんは、リウマチや橋本病、うつ病、集中力の低下、慢性疲労など、疾患名は様々です。しかし、治療方法としては、腸、炎症、重金属・カビ毒、副腎疲労・低血糖、ミトコンドリア、脳機能、これら6つの根本原因があるかどうかを確認し、それを順番に対処していくと改善していくのです。

疾患名腸内環境炎症重金属
カビ毒
副腎疲労
低血糖
ミトコンドリア脳機能
リウマチ◯◯◯
慢性疲労◯◯◯
橋本病◯◯
集中力低下◯◯◯◯◯
うつ◯◯

1-6. 根本治療ピラミッド

私の経験をもとに作ったのが根本治療ピラミッドです。個別化栄養療法は、6つの根本原因の有無を確認し、それに応じて治療を進めていきます。このピラミッドが私のひとりよがりなものではないという証拠に、他の統合医療学会も同じような治療方針を掲げています。

例えば、米国の統合医療学会で今1番勢いのある機能性医療学会、Functional Medicineのトップページには、「機能医学は、各個人の病気の根本原因に対処することにより、病気が発生する方法と理由を判断し、健康を回復します」と書かれています。認定医になるためには、基本的なコースの他に、エネルギー(ミトコンドリア)、消化管、ホルモン、解毒などのコースが用意されています。

他にも、統合医療のWebセミナーを開催しているIntegrative Medicine Academyのオンラインプログラムは、副腎、甲状腺、血液化学を含む臨床検査、有機酸検査と代謝評価、栄養とサプリメントなどがカバーされており、解毒、ミトコンドリア機能、重金属、カビ毒などについても学ぶことができます。

また、先日参加した個別化ライフスタイル医療学会では、網膜疾患の根本原因についての発表があり、次のような項目が挙げられていました。

網膜疾患の根本原因
炎症
酸化ストレス
インスリンシグナル経路の調整不全
オートファジーの不活性化
免疫不全
ミトコンドリア機能低下
タンパク質異化亢進
視細胞、網膜組織の壊死、機能障害

免疫不全は、感染、炎症、毒素による免疫の誤作動によるものです。インスリンシグナル経路の調整不全も炎症から来ています。

アルツハイマー病も同じことが言えます。『アルツハイマー病 真実と終焉』(デール・プレデセン著)には、アルツハイマーは単一型の疾患ではなく、大きく3つの型に分類される病気であると書かれています。その3つの型が、炎症、栄養・ホルモン不足、毒素です。

このように、病名や病態は様々でも、根本原因は共通しているのです。もう一つ重要なことは、根本原因は遺伝や環境的影響によって疾患の要因となりやすい箇所にあるということです。

2. 遺伝子情報の重要性

2-1. 栄養療法と遺伝子解析

今後の栄養療法は遺伝子情報を元にしたアプローチが主流になるでしょう。特に、遺伝子解析先進国のアメリカではすごい勢いで研究が進んでいます。私が23andMeで遺伝子検査を受けてから5年以上経っていますが、得られる情報がどんどんアップデートされています。

2-2. 遺伝子解析の課題

万能に見える遺伝子解析にも大きな課題があります。それは、膨大な情報を網羅的に解析して判断する必要があることです。グルタミン→グルタミン酸→GABAの代謝を例に挙げると、グルタミン酸がGABAに代謝されにくい人は、グルタミン酸脱水素酵素(GAD)のSNP(スニップ:DNAの塩基配列における1塩基の違い)を調べれば根本原因を突き止めることができるかもしれません。しかし、GADにはGAD1とGAD2があり、そのSNPは少なくともGAD1で10個、GAD2で12個存在します。22個全てのSNPを網羅的に解析するのはとても複雑な作業です。

アメリカの多くのベンチャー企業が遺伝子解析に参入し、複雑な計算からリスクを算出しサービスとして提供しています。私の23andMeの生データを別のサービスで解析したところ、アルコールとニコチンはD-、つまり酒とタバコに溺れやすいという体質ということがわかりました。他にも様々な因子を解析してくれます。

こうしたサービスはインターネットとの相性がいいので、破竹の勢いで伸びています。まだ完全には「あなたはこういう体質です」と言えるところまで来ていませんが、そう遠くない将来にはより精度の高い解析が可能になるでしょう。

2-3. MTHFRは稀なケース

今お話ししたように、一般的にはSNPは多くの箇所の網羅的な解析が必要ですが、MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元型酵素)は、たった2つの遺伝子変異で酵素活性が決まる極めて稀な酵素です。1箇所にSNPがあると70%、2箇所にSNPがあると20%まで活性が落ちてしまいます。結果がクリアに出るので、MTHFRの遺伝子解析はとてもポピュラーなものになりました。このように、自己評価できる遺伝子のSNP情報は大いに活用できると思います。

2-4. デトックスプロファイル

これはGenovaDiagnostics社のデトックスプロファイルです。デトックスに関連する特定の酵素は、遺伝子の影響を強く受けるため、遺伝子検査がよく使われます。

解毒のフェーズは、フェーズ1(活性化)とフェーズ2(抱合)に分かれています。フェーズ1はCYP(シップ)という酵素が関係しており、CPY1A2にSNPがある場合はカフェインに弱いことを示します。コーヒーを飲むと心臓がドキドキしてしまう人ですね。この検査をすれば、カフェインやタバコ、特定の薬などの影響が全てわかります。

上の結果はグルタチオンの抱合に関わるグルタチオンSトランスフェラーゼのSNPなどを見ています。

3. なぜ薬ではなく栄養が重要なのか

3-1. 遺伝子型から表現型へ

2019年9月のサイエンス誌で、『Genotype to Phenotype(遺伝子型から表現型へ)』というトピックが特集されました。

「表現型」とは見た目や行動特性のことで、遺伝子をもとにタンパク質がどう発現したかによって結果が異なってきます。特に「形態」は遺伝子の影響を強く受けますが、同一の遺伝子型でさえも表現型は微妙に異なります。一卵性双生児はそっくりですが、親が見ればすぐに判別できますよね。また、一卵性双生児の片方が統合失調症になった場合、もう片方が発症する確率は50%しかありません。つまり、遺伝子型が全てではないということです。では、遺伝子型を理想的な表現型にするためにはどうすれば良いのでしょうか。

3-2. 遺伝的弱点は栄養によって補完できる

こうした研究はもう何十年も前から続いており、その間に様々なことがわかってきました。「人は栄養に支配されており、特に重要なのは食事である」ということも明らかになっています。食べ物が表現型の決定に大きな影響を及ぼしているということです。遺伝子発現を制御・伝達するシステムとその学術分野をエピジェネティクスと言います。そして、最大のエピジェネティクス要因は栄養です。だからこそ、薬ではなく個別化栄養療法が重要なのです。

☑️ 人は栄養に支配されている
☑️ 栄養の必要性は遺伝子によって決まる
☑️ 食物は表現型を決める栄養の代表的存在
Vol 365, Issue 6460, 27 September 2019
https://doi.org/10.1126/science.aax3710

例を挙げると、女王蜂と働き蜂は全く同じ遺伝子型を持っていますが、大きさも寿命も異なります。女王蜂はローヤルゼリー食べて寿命が3年。働き蜂は花粉を食べて寿命が1ヶ月です。食べ物で表現型が大きく変わるということをよく表しています。

これも有名な実験です。同じ親から生まれた同一の遺伝子を持つ糖尿病のモデルマウスの実験で、通常の食事を与えると、肥満遺伝子が発現して糖尿病になります。一方、メチル化を促す食事を与えると、メチレーションが働いて遺伝子の発現を抑え、肥満遺伝子が発現しないのです。

引用:A Tale of Two Mice July 2008

これらの研究結果は、遺伝的な弱点は栄養によって補完できるということを示しています。

4. 個別化栄養療法のすすめ

4-1. 検査の使い分け

脳機能に関しては、メチレーションの遺伝子検査がある程度役立ちます。しかし、メチレーション検査が網羅的ではないため、遺伝子検査の結果とその時の脳の状態が必ずしも一致しないケースも多く見られます。

遺伝子の影響が強い箇所は、遺伝子型と根本原因がリンクしやすいので、遺伝子検査で判断しても良いでしょう。そうでない場合、つまり、環境要因が強かったり、多くの遺伝子が影響する場合は、症状や他の検査結果から判断することになります。このように、検査を選択しながら自分の根本原因がどこにあるかを絞って治療を進めてほしいと思います。

4-2. 個別化栄養療法がうまくいっていない方へ

個別化栄養療法がうまくいっていない方は、「Identify The Causes」の色がついているところをもう一度確認してください。

  • Infection(感染):ウイルス、細菌、真菌の増殖
  • Digestion(消化):消化不良、胃酸分泌不良、消化酵素分泌不全
  • Emotion(感情):非常に問題で、疾患を悪化させる
  • Nutrients(栄養):栄養不良、吸収不良、代謝的なブロック
  • Toxins(毒):鉛、水銀などの重金属、残留農薬、除草剤など
  • Inflammation(炎症):「○○炎」を引き起こす慢性的な引き金、食習慣
  • Foods(食事):臓器のダメージ、食物依存症を引き起こす
  • You(あなた自身):あなたの決断、思い込み、思考の方向性
  • Thyroid dysfunction(甲状腺機能障害):特に検査でわからない甲状腺機能異常
  • Hypoglycemia(低血糖症):炭水化物、糖質、インスリン、副腎と関わる
  • Endocrine disorders(ホルモン異常):加齢、機能不全を引き起こす
  • Candida overgrowth(カンジダ過剰増殖):過剰な抗生剤、ステロイド、砂糖、ストレス
  • Adrenal Fatigue(副腎疲労):低血糖、病気や人生への負担などが原因
  • Under activity(運動不足):自分の能力を十分に鍛えないこと
  • Stress or spiritual crisis(ストレス、精神的な危機):不必要な活動でいっぱいになってしまうこと
  • Environmental(環境):満たされない、機能しない、むしろ害になっている
  • Structural(構造):心と体の不一致

私が初めてこのリストを目にした時は、何のことだかさっぱりわからなかったのですが、長年栄養療法に携わり、今はこの意味がよくわかります。心と体の不一致、思い込み、偏った考えや思考性、トラウマ、こうした問題を抱えている人は、それが治療の足かせになっている可能性があります。

4-3. 個別化栄養療法チェック

個別化栄養療法について、どこまで理解が深まっているか確認してみましょう。

Q1. あなたの根本原因は何ですか?
Q2. 腸内環境をどうやって判断していますか?
Q3. 重金属や毒素は溜まっていますか?
Q4. 体内の隠れた炎症が起きそうな場所をチェックしていますか?
Q5. 足りない栄養素は?
Q6. メチレーション状態は?
Q7. 副腎、甲状腺、その他のホルモンバランスは正常ですか?
(答えられれば1点、答えられなければ0点)

6-7点:適切な検査と問診を組み合わせることで根本原因は見つけられます。
3-6点:把握できていない根本原因をもう一度考えてみてください
2点以下:根拠もなく言われるがままにサプリを摂っていませんか?

4-4. 最低限受けるべき検査

根本原因に対する個別化アプローチのために最低限受けて欲しい検査は、「血液検査」「有機酸検査」「毛髪検査」この3つです。もう一つ付け加えるなら、便中カルプロテクチン検査です。これらの結果から根本原因を割り出すことが可能です。もし症状があれば、耳鼻科受診や歯科受診も検討してみてください。

4-5. 個別化医療市場の展望

メタジェニックス社によれば、世界の個別化医療市場は、2025年には倍近くになると予測されています。特に大きな部分を占めるのは、個別に診断する能力です。様々な検査手法が確立し、遺伝子解析によるリスク計算がより確実なものになれば、個別化栄養療法は今以上に重要視されてメジャーになってくるでしょう。

5. 最後に

臨床分子栄養医学研究会は、根本原因に対する個別化栄養療法を推奨しています。根本原因が見つけられていない人のために、実践講座を開催しています。個別化診療が主流になる新しい時代に向けて、ともに学んでいきましょう。

分子栄養学のロードマップ

宮澤賢史 · 2021年7月15日 ·

ロードマップというのは、実践講座で紹介している分子栄養学の勉強の順番を示した道案内の役割をする地図です。膨大な分子栄養学の世界を一段ずつ確実に上がっていけるために作りました。もうすでに分子栄養学マスターの方は、自分の抜けている場所のチェックリストとして使ってください。

ステップ1:基本的な考え方を身につける

まずは体の仕組みを知ることから始めてください。これを理解しないことには体の不調に対処できないからです。

例えば、エネルギーが生まれる仕組みを知らずに慢性疲労に対処することはできないし、炎症を起こす仕組みと抑える仕組み、両方を知らずして慢性炎症を治すことは難しいでしょう。

ビタミンとミネラルは似ているようで全く異なる性質を持っています。それを知って実際にサプリメントを試すところから始めましょう。

モジュール1 分子栄養学の基本的な考え方

どのような状況で、どのくらいの量のサプリを摂ったら良いか理解していますか?栄養素は摂る量により効果が異なる事を理解してください
必要な栄養の量が人によって異なることを知っていますか?なぜある人にとっての栄養になるものが他の人にとって毒になるのか、その仕組みを知りましょう
なぜ栄養が不足するのか、理解できていますか?根本原因の定義を知り、どのようなものが当てはまるかを考えてみましょう
ある人にとってその栄養素が必要かどうか疾患の場所から推定できますか?栄養素の局在について理解してください

モジュール2 細胞について理解する

人がエネルギーを生み出す仕組みと必要な栄養素を理解していますか?ミトコンドリアの構造とエネルギー産生の仕組みを知りましょう
情報のやり取り、炎症を起こしたり静めたりする機序を知っていますか?細胞膜とそれを構成する栄養素、その代謝を押さえてください
栄養、食事をはじめとした環境で作られるタンパク質が変わってくる仕組みをご存知ですか?体内でタンパク質が作られる仕組みとそれにメチル化が及ぼす影響をマスターしましょう
無駄なタンパク質を作らない方法、ミトコンドリアを若返らせる方法をマスターしていますか?小胞体とミトコンドリアの関係を学び、小胞体ストレスを軽減させる方法を習得してください

モジュール3 ビタミン、ミネラル、アミノ酸の使い方

水溶性ビタミンの性質を踏まえた効果的な摂り方を実践していますか?ビタミンCを効果的な方法で摂ってみましょう
脂溶性ビタミンの使い方をマスターしていますか?ビタミンAを摂ってドライスキンの改善を体験します
ミネラルがどのような効果をもち、どのように人体に貢献するかご存知ですか?マグネシウム・亜鉛の効果的な摂取方法について学び、実際に使ってみましょう
アミノ酸をうまく使う方法をマスターしていますか?グルタミンやBCAAの体内での働きを知り、実際に摂ってみましょう

第21期実践講座の実施概要はこちら

ステップ2:サプリと食事の基本をマスターする

次に目指すのはフードマスターです。

ビタミンやミネラルは三大栄養素の調整を行っていますが、食事の量や質が悪ければ、効果は期待できません。血糖値が乱高下しない食べ方や、脳のパフォーマンスを最大限にあげるための脂質の種類の選び方と調理方法、腸の炎症をとり疲れ知らずになる食事メニューなど、誰もが目指すべき食事内容について学んでください。症例検討会参加までにここまではマスターしておかれると話がスムーズになります。

モジュール4 三大栄養素の代謝をマスターする

食事を摂っていない時に血糖値が保たれる仕組みを理解していますか?解糖系・糖新生について理解しましょう
血糖値が乱高下しない糖質の種類や摂り方を知っていますか?補食の摂り方(タイミング、量、質)について学んでください
体内でタンパク質が作られる機序を理解していますか?タンパク質の作られ方について復習しましょう
体内のタンパク質の種類が頭に入っていますか?(機能性タンパク質と構造タンパク質)特に機能性タンパク質の種類と働きについて一通り押さえてください。
摂るべき油と避けるべき油の区別がつきますか?油の構造式から性質が読み取れるようになりましょう。
コレステロールが体内でどのような働きをしているか知っていますか?コレステロールの生成、コレステロールを原料にして作られるものを押さえます。
中性脂肪とリン脂質の違い、働きを理解していますか?中性脂肪がエネルギーに使われる機序、リン脂質の細胞膜における代謝を学んでください

モジュール5食事療法の基本をマスターする

引き算の栄養学を体験しましたか?カゼイン・グルテン・カフェイン・アルコールフリー生活を2週間やってみましょう
カンジタを減らす食事をマスターしていますか?カンジダ除菌中に摂るべきものと控えるものを知りましょう
グルテンとは何か?どのような影響を体に与えるかご存知ですか?グルテンの性質、交差反応について学びましょう
食物アレルギーと過敏症、不耐症の違いを理解していますか?それぞれの対処法についても理解してください
食事への依存はないですか?食事制限がうまくいかない場合は考えるべきです。

ステップ3:個体差を見極め対処する Personalize

ある人にとっての薬は他の人にとって毒になり得ますが、サプリや食事にも同じことが言えます。ここでは自分にあったサプリや食事を検査データから見分ける方法を学びます。結果を元にして必要なサプリメントと食事を細かく選んでいきます。

まずは足りない栄養素の補給法、そして次に体が受けているダメージをデータから読み取り、その対策をしていきます。血液検査だけでもわかることはたくさんあります。

モジュール6 足りない栄養素を知って補充する

自分に足りない栄養を把握できていますか?栄養素別のアンケートにチェックをして、どんな栄養が足りないのかあたりをつけましょう
自分に足りない栄養を検査したことがありますか?既定の血液検査を受けましょう
検査結果で足りないビタミン・ミネラルをチェックしてくださいVB3,B6,B12,Mg,Zn,Fe,K,Dなどのチェックを行いましょう
糖質代謝は問題なかったですか?低血糖のチェックにはALT,TGが特に有用です。
エネルギー状態はどうでしたか?ミトコンドリアが動いていない場合、代償的に解糖系が亢進します。

モジュール7体のダメージを知って対策する

体に起こっているダメージを把握していますか?活性酸素、炎症、インスリン抵抗性、タンパク異化の状態とその対応
炎症マーカーは上昇していますか?対策としてはCRPだけでなく、フェリチンや血小板、ガンマグロブリンなどもチェックしてください
インスリン抵抗性はありましたか?たとえ痩せていてもインスリン抵抗性は存在します。もれなくチェックしてください。
タンパク異化はどうですか?その程度は?データチェックと体感から読み取り対策しましょう
自律神経の緊張度はどうですか?自覚のない緊張にも注意しましょう。低血糖と合わせて理解してください。

ステップ4:根本原因にアプローチ1 Rootcause

問診と検査結果から自分にどのような根本原因が潜んでいるかを知り、それをどのような順番で対処するか計画を立てて実行します。

ここで重要なのはアプローチの順番です。人がどのように病気になるかを理解することで、アプローチの方法が見えてきます。まずは副腎、神経、ミトコンドリアを同時にケアすることで気分、体調を上げましょう。

モジュール8 病気になる順番、直す順番を理解する

頭の中に自分の治療モデルが描かれていますか?モデルの雛形に沿って自分のを作りましょう
多くの人が病気になる流れを掴んでいますか?全体像を学びましょう(生活習慣、腸内環境、ホルモンバランス、解毒)
多くの人に有効な治療の順番を知っていますか?自分の順番を組み上げましょう

モジュール9 副腎疲労の原因と対策

低血糖症状はないですか?リブレと合わせて低血糖の有無を確認し、あれば補食から始めましょう
自分のストレスを把握していますか?ストレス問診と唾液、血液検査結果、から自分のストレスタイプを決定し、対処法を考えます
睡眠は良好ですか?炎症と低血糖、ストレス状態を確認します
副腎ホルモンは低下していませんか?コルチゾール検査で日内リズムと覚醒反応を確認し、それに応じたサプリケアを始めましょう

モジュール10 神経伝達物質とミトコンドリアケア

気分の落ち込み、不安などの神経症状がありますか?検査と症状からセロトニンレベルを推定し、対策しましょう。(程度により病院受診が必要)
やる気の低下、もしくはイライラが強いなど症状がありますか?検査と症状からドーパミンレベルを推定し、対策しましょう
疲れやすさがありますか?ミトコンドリアの状況を有機酸検査から把握し、それに応じた対策を取りましょう

ステップ5:根本原因にアプローチ2Rootcause

副腎やミトコンドリアケア、抗炎症アプローチを終え、やっと腸内環境をきちんと治療する準備が整いました。いよいよ最終的な根本原因にアプローチしていきます。

感染症や毒素などの重大な根本原因は腸や肝臓などに存在しています。ここでもプロトコールに沿って順番に進めていきます。

モジュール11 腸内環境の改善

自分の腸内環境を知る方法を知っていますか?腸内環境検査をオーダーし、結果を解析しましょう
腸内環境は良好でしたか?結果に応じてサプリと食事内容で対処しましょう
消化不良はありませんか?採血検査と自覚症状から確認の上、サプリケアをしましょう
リーキーガット(腸漏れ)は起きていませんか?リーキーガットの程度に応じてケアを行います
腸にカンジダや悪性菌が増殖していませんか?便検査や有機酸検査で確認し必要に応じて対処しましょう。

モジュール12 解毒、ファスティング

検査で重金属が蓄積していましたか?毛髪検査で体内毒素の排泄力を推測します
問診で体内にカビが蓄積していそうですか?体内のカビ毒蓄積を確認して対処します
検査で毒素が溜まっていそうですか?セルフデトックスをしましょう
一通りデトックスが終わりましたか?デトックス体質に変換していきましょう
ファスティングをしたことがありますか?ファスティングにトライしてみましょう

根本原因とデトックス

宮澤賢史 · 2021年7月13日 ·

免疫を上げるには、睡眠や食事などのライフスタイル、つまり「環境」を改善することが大切といわれていますが、デトックスも同じで、どんなデトックスサプリを使うかよりも、どのようなデトックス環境を整えるかが重要となります。

本日は、何がどれくらい溜まっているかをどうやって知るのかという検査のことと、どうやって解毒すべきかというWhatとHowについてお話しします。

1. 何を解毒するべきなのか

1-1. 脳に蓄積し障害を起こすもの

根本原因とデトックスのピラミッド図をご覧頂くと分かるように、デトックスは様々な要因の影響を受けています。

では、一体何を解毒すべきなのでしょうか?基本的には、主に以下のものになります。

①脳に蓄積し、障害を引き起こしやすいもの

・脂溶性である水銀、カビ毒は脳に蓄積しやすい(『アルツハイマー病 真実と終焉』デール・ブレデセン著より)

・アマルガムが自閉症、発達障害慢性疲労、繊維筋痛症、化学物質過敏症、精神疾患の原因となる(『アマルガム・イルネス』 アンドリュー・カトラー著より)

上記の本にあるように、水銀とカビ毒は脂溶性のため脳に蓄積しやすく、BBB(血液関門)を通過しやすいものが中に入り込んで脳に溜まってしまいます。

②ミトコンドリアを障害するもの

フッ素、水銀、ヒ素、アンチモン、アルミニウムは、TCAサイクルの働きを止め、ミトコンドリア機能を阻害してしまいます。TCAサイクルだけではなく、右上の図のように電子伝達系にも影響を与えます。特にNADHが関わっている複合体一番の細胞膜にあるSH基とS基の間に水銀が入り込んで、タンパク質の構造を変化させてしまいます。

これらを調べるには、有機酸検査を受けることをお勧めします。有機酸検査の結果から、29番のクエン酸と28番のアコニット酸を比べてみます。クエン酸がアコニット酸に変わるのには、アコニターゼという酵素が必要ですが、このアコニターゼが水銀やヒ素に阻害されてしまいます。アコニット酸よりイソクエン酸が低くなっている場合には、アコニターゼが阻害されていると考えられ、水銀のデトックスが必要だと推測できます。

水銀は硫黄との親和性が非常に高く、硫黄と硫黄の間にあるSS結合の間に水銀が入りこみ、タンパク質の構造全体を狂わせてしまいます。

逆にそれを利用して、硫黄を含んだ食事やサプリメントを使って水銀と結合させて解毒することが可能になります。

下記は、ハル・ハギンス博士の『本当に怖い歯の詰め物』という書籍からの抜粋になります。

  • 85.0% 説明のつかない疲労感
  • 73.3% 説明のつかないいらつき
  • 72.0% 長時間のうつ
  • 67.3% 四肢のしびれ
  • 64.5% 夜間頻尿
  • 62.6% 四肢の冷感(温かい日でも)
  • 60.6% 食後の腹部膨満感
  • 58.0% 記憶障害(物事が思い出せない)
  • 55.5% 突然怒りが込み上げてくる
  • 54.6% 便秘

水銀中毒の症状にはイライラや、うつ、しびれがありますが、一番顕著な症状は疲労感で、これはミトコンドリア機能の低下からきていると考えられます。その原因は他にもあり、尿中のポルフィリン検査からヘムの合成過程が水銀によって妨害されるということがわかります。

ヘモグロビンが合成される過程で、いくつかのポルフィリン経路を経由します。その経路を水銀や鉛、カドミウムが阻害します。水銀が蓄積すると、途中で反応が止まりコプロポルフィリンやプレコプロポルフィリンが増えてしまいます。水銀はヘムの合成を阻害し、貧血を引き起こします。

また、1つの分子につき酸素を4つ結合する分子構造を持つヘモグロビンは、鉄と酸素の親和性よりも鉄と水銀の親和性の方が強いので、一旦そこに水銀がくっつくとなかなか離れません。酸素は肺でくっついて、末梢の臓器で離れることによって循環しますが、ヘモグロビンに水銀がくっついてしまうと使い物にならなくなってしまいます。

赤血球の寿命は120日なので、少なくとも120日間は水銀が結合した赤血球ということになります。実際にこのような状態であってもヘモグロビン自体が少なくなるわけではないので、見た目上は貧血ではなく、むしろ酸素飽和度が低下するために体はもう少し酸素が必要だと判断して造血を行います。その結果、ヘモグロビンの数値が高くなるというのが水銀中毒の人の一般的なデータとなります。このためヘモグロビンの数値より、注目すべきは酸素飽和度となります。ハル・ハギンス博士のデータによると、アマルガム除去をすると酸素飽和度は上昇します。

2. 何を解毒するべきなのか?

1-2. ミトコンドリアを障害するもの

水銀はこのように様々な悪さをして、貧血を起こしたりミトコンドリア機能も障害しますが、実はヒ素もメチル水銀と同様に血液脳関門を通過します。ミトコンドリアがヒ素毒性の重要なターゲットです。ミトコンドリア豊富な臓器である脳は、ミトコンドリア機能に大きく依存していて、ミトコンドリア異常=脳機能低下ということになります。

下記は、ミトコンドリア機能がヒ素の暴露によって低下しているという毛髪検査のレビューです。

ヒ素や水銀が一緒に多く出る場合は、海産物の摂取量が多いと推測できます。脳に蓄積して障害を起こすものは水銀、ヒ素、カビ毒で、ミトコンドリア機能を障害するものは、水銀と重金属ではヒ素です。揮発性毒物のトックス検査をすると、ミトコンドリアのDNAがどれくらい障害されているかを見ることができます。

ミトコンドリアDNAの障害の指標となるのは、チグリルグリシンというトックス検査の一番最後の項目です。もしその数値が上がっていたら、積極的なデトックスをしたほうがいいだろうということになります。日本人の毛髪水銀濃度は、世界中でも飛び抜けて高いですが、その理由は魚が汚染されているからで、世界の水銀の排出量のうち47.4%が東アジアに集中しています。これは火力発電所が沢山あるためで、魚の水銀汚染の主な起源というのは、石炭火力発電所から大気中に排泄された水銀です。

1-3. 内分泌撹乱物質・PMS・乳がん

次にPMSや乳がんを引き起こす内分泌撹乱物質を取り上げます。PMS症候群は、エストロゲンとプロゲステロンのアンバランスにより起こります。内分泌撹乱物質は、一般に環境ホルモンと言われていますが、受容体で結合してホルモンのふりをし、その働きを邪魔して、内分泌の一連の働きを乱す物資のことをいいます。

PCBのようにすでに製造中止になったものもありますが、今話題になってるのはビスフェノールAというプラスチックの原料や、ゴミの焼却の時に排出されるダイオキシン、水銀、鉛、カドミウムです。水銀の論文によると、甲状腺、副腎、卵巣、精巣機能など様々な内分泌臓器に影響を及ぼします。

アンドリュー・カトラー先生の『アマルガムイルネス』によると、甲状腺も副腎も性ホルモンも様々なところの受容体をブロックしたり、ホルモンの分泌を障害したりしますが、甲状腺の場合は、TSHの分泌、甲状腺の受容体、T 4から T 3への変換も全て阻害してしまいます。つまり甲状腺機能の低下があったら、水銀の害を考えた方が良いでしょう。

女性ホルモンには悪玉と善玉と言われるものがありますが、善玉が2-ヒドロキシエストロン(2-OHE1)で、悪玉が16-ヒドロキシエストロン(16a-OHE1)です。外因性の環境ホルモンや、ホルモン補充療法で使われるホルモンの原料は馬の尿ですが、これはバイオアイデンティカルではないので、人間のホルモンと違い代謝がゆっくりです。女性ホルモンの薬はすぐに代謝されないように作られているので、エストロゲンもプロゲストロンも体内に長く留まります。

ピルを飲むと99%の確率で排卵させない分体内に長く留まるので、発癌リスクも高まります。それに比べて天然のホルモンは、半減期が短いバイオアイデンティカルのため代謝されやすいです。天然のホルモンは効きを良くするために、経口ではなく経皮でゆっくり補充します。善玉のエストロゲンを増やすためには、DIM、インドール-3-酢酸、アマニ油、ブロッコリーを摂ると良いです。

腸内環境への影響もあり、水銀は消化酵素のDPPⅣを阻害するため、グルテン・カゼインの分解が悪くなり、カンジダの悪性度を増します。水銀が蓄積しているとカンジダが増殖形態になりやすいので、私はカンジダを除菌した後は、ほぼ全員の人に水銀のデトックスを勧めています。

水銀の種類には、金属水銀、有機水銀と無機水銀の3つがあります。

金属水銀はアマルガムの他に、アフリカなどの採掘所では金属水銀の塊を使って金をろ過します。これらの金属水銀は蒸発して蒸気水銀になるため、採掘所で働く子供が水銀中毒になる問題を抱えています。

水銀の種類

左の図は、カルガリー大学の実験でアマルガムを擦って、水銀蒸気を出させる実験です。

このような金属水銀は簡単な刺激によって蒸発します。蒸気水銀になると吸入して肺から入り、脳に行ったところで酸化して蓄積し、脳から出られなくなってしまいます。水銀の中で害になるのは、この蒸発する金属水銀と、有機水銀です。メチル水銀はシステインと結合すると腸管から吸収され、 blood-brain barrier, BBB(血液脳関門)を通過して脳に届きます。

1-4. アマルガムを知らない人のために

  • 水銀を多く(50%)含む歯科材料。
  • 加工が容易で丈夫なため、20世紀を中心に歯の詰め物として使われてきた。
  • 水銀の害が知られ、今ではあまり使われなくなったが、2016年4月まで日本政府公認の治療材料。

アマルガムは水銀を多く含む歯科材料です。加工が容易で丈夫なので、20世紀を中心に歯の詰め物として使われてきました。殺菌作用が強く長持ちするため、水銀の害を除けば歯科材料としては最適です。『乳歯のアマルガム修復』という50年くらい前の本によると、当時は乳幼児にも積極的にアマルガムが使われていました。

今は保険適用外ですが、2016年までは日本政府公認の歯科材料として使われていました。とても便利なため、いまだに自費診療で使用している歯科医師もいます。日本人の場合は、水銀の源の大半は、魚か歯だと言われています。この二つの暴露源がないかをチェックし、もしあればそれを避けることが大切になります。

アマルガムは無機水銀のため、BBB(血液脳関門)を通過せず、脂肪に移行しないので安全であるというのがアメリカの歯科学会の主張ですが、実際には無機水銀は口腔内や腸内でメチル化するので、BBBを通過します。アマルガムは蒸発して肺から吸入し、目や脳、神経、肺、そして血中で酸化したものが口の中から胃腸を通過後にメチル化して胎盤、内分泌、細胞膜にも届きます。

1-5. 腸への影響

上記はハル・ハギンス先生に頂いたポスターで、どの水銀が体のどこに影響してるかという図です。左から金属水銀、イオン化している無機水銀、メチル水銀ですが、この金属水銀とか無機水銀に比べて、メチル水銀の人は頭がぼやっとしていて、ブレインフォグを起こしてます。手と足に痺れがあることからみても、BBBを通過してCentral nervous system(中枢神経系)、免疫系、生殖器系にも影響を及ぼしていることがわかります。

水銀蒸気は血液脳関門を通過し、無機水銀は通過しないので安全と言われていますが、メチル化して全てのバリアを通過し、胎盤を通過するので、母親が水銀に暴露していると子供の毛髪にも水銀が検出されます。そして内分泌かく乱も引き起こすので、どれだけ排泄できているかということがすごく大事になってきます。

1-6. アマルガムの水銀分布

上記は歯にアマルガムがある人の体内の水銀分布図です。

Tooth alveolar bone(歯槽骨)と、Gum mucosa(歯肉)の水銀濃度が高いのは当然ですが、胃の濃度が非常に高いことから、水銀が体内にも影響を与えていることが分かります。そして便中の濃度や、腎臓と肝臓という排泄機関の濃度も高いです。胃腸の濃度が高いことから、腸内細菌に影響を及ぼしていることも想像に難くないです。

アマルガムや魚の水銀はもともとメチル水銀です。

メチル水銀というのは、システインという必須アミノ酸と結合すると、メチオニンと同じく腸管から100%吸収されます。メチル水銀はデトックスで胆汁排泄されますが、胆汁から排出されたメチル水銀はメチオニンと間違えられて再度吸収されるので腸管循環を繰り返してしまいます。つまりデトックスは腸管循環を少なくして、便中にいかにメチル水銀を排出させるかということがポイントになります。

ハル・ハギンス先生のセミナーでは、アマルガムが開発されてから ALS(筋萎縮性側索硬化症)の発症率が異常に上昇しているというデータや、1832年にアマルガムがフランスで発明されてからしばらくして白血病の発症率も増えてきたというお話がありました。

Multiple sclerosis(多発性硬化症)の発症率は、特に毒性が高いアマルガムが発明された1976年以降に、急に発症率が上がっているという話もありました。水銀は骨髄の中に入り込みやすいため、骨髄の免疫を壊して自己免疫疾患や白血病が発症しやすくなるのだろうとのことでした。

2. 溜まっているものを知る方法

体内に何がどのくらい溜まっているのかを、どのように調べるかということをお話します。毛髪で水銀レベルを見るというのは、恐らくイラクで1971年に起こった水銀中毒事故のデータをベースにしていると思います。

  • 農薬のメチル水銀を使った小麦で作ったパン
  • 6,500人が水銀中毒
  • 血液、毛髪中水銀レベルデータが多数残っている
  • 毛髪中水銀レベルは血中の250倍

血中の水銀レベルは半減期が短く、暴露して3日もすると測定感度以下になってしまいますが、毛髪中の水銀のレベルは血中レベルの250倍ありました。

内閣府の食品安全委員会の資料によれば、例のイラクの事故を分析すると、母親の毛髪中の水銀モードが上がれば上がるほど、子供への発達の影響があるということがわかります。

母親の毛髪中の水銀モードが10〜20ppmを超えると胎児に影響があったため、それをもとに国立水俣病の胎児に影響を与える母親の最小値が11ppmとみなされました。このイラクの暴露事故から計算して、耐容摂取量、つまりこれを超えない限り影響はないと考えられる摂取量が5ppmに設定されたのです。

2-1. 45歳副腎疲労の女性

唾液中コルチゾールからは完全に副腎疲労と思われる45才女性の毛髪検査をしたら、1.1 ppmしか水銀が検出されませんでした。厚労省の設定した耐容摂取量5ppmの1/5だから全く問題はないだろうと考えがちですが、実際には歯の中に9本のアマルガムがあったので、水銀の暴露量は非常に多いと言えます。

水銀にこれだけ暴露しているのにかかわらず、毛髪から1.1ppmしか出ないということは、水銀の排泄の障害があると考えられます。水俣病のように大量の暴露をしたら、さすがに毛髪に出るとは思いますが、中には排出できない人がいるということが問題なのです。

実際に上記左側の34歳の慢性疲労の人は、アマルガムが歯の中にあって水銀が10ppm出ているので、明らかに水銀中毒です。ただ逆の見方をすれば、この人は水銀の排泄能力が保たれているということです。毛髪中の水銀濃度というのは、有機水銀メチル水銀の排泄能力とイコールだと考えていいと思います。実際、この方はアマルガムを除去したら元気になりました。それに対して右側の45歳の方は、アマルガムが何本も入っているにもかかわらず、水銀濃度が1.1ppmしかないということは、排泄能力が低下しているため、アマルガムを除去しても疲れが取れませんでした。

宮澤医院の150人の副腎疲労の患者さんを、アンドラー・カトラー博士が開発したカウンティングルールに基づいて調べたら、56%の人はミネラルの輸送障害がありました。

           軽症      中等症        重症
ミネラル輸送障害   なし      なし         あり
水銀レベル      低い      高い         低い
備考         問題なし   排泄機能は正常    排泄機能
                  症状ない人もいる   に異常がある
副腎疲労と水銀

副腎疲労の人は水銀を排泄する力が弱いため、ミトコンドリア機能が低下していることが多いです。残り半分の人は水銀レベルがとても高く、水銀の害が全くないと思われるような人は1%しかいなかったです。調べてみたら皆ことごとく水銀だったので、疲れている人はやっぱり水銀レベルを見た方がいいだろうと私は思っています。

2-2. 自閉症児の毛髪分析

自閉症の子供に関しては、水銀のレベルは低ければ低いほど重症です。

  • 94人の自閉症児と年齢、性別をマッチさせた45人の対照児の毛髪分析を行った。
  • 自閉症群の母親は対照群の母親に比べて免疫グロブリン注射や歯科アマルガムなどによって顕著に高レベルの水銀暴露歴があったにもかかわらず、自閉症群の毛髪からの排泄パターンは対照群に比べて明らかに減少していた。
  • 自閉症群では、毛髪の水銀レベルは症状の重症度が高いほど少なかった。
  • 対照群の毛髪水銀レベルは顕著に母親のアマルガムの個数と魚の摂取量、そして小児期のワクチン接種と相関していた。
  • この相関は自閉症群には見られなかった。
  • 自閉症の子供の毛髪からの水銀排泄はそうでない子供に比べて明らかに少なかった
  • Int J Toxicol. 2003 Jul-Aug;22(4):277-85. Reduced levels of mercury in first baby haircuts of autistic children.

なぜならば毛髪検査というのは蓄積量ではなくて排泄量をみるものだからです。母親の歯にアマルガムがあったり、高レベルの水銀の暴露歴があるにも関わらず、自閉症の子供からは毛髪中の水銀が出ませんでした。お子さんの場合は母親の暴露歴も聞いてください。メチル水銀は胎盤を通過します。

デトックスのために何か特別な治療をやらなければいけないのかというと、必ずしもそういうわけではありません。人間はもともと水銀を排泄する力があります。水銀の生物学的半減期、つまり体の中にある水銀が半分になるまでの期間は、50〜60日です。そのため正常な排泄する力を持っている人でしたら、魚を食べなければ150日あれば水銀は体から排泄されます。

文献検体    暴露物   半減期(日)
Miettinen et al.(1971)水銀/血液メチル水銀49.8
l-Shahristani and Shihab (1974)水銀/血液穀物中メチル水銀(Total) 72 (35–120),
(90%) 65 (35–100)
Kershaw et al.(1980)水銀/血液魚 (20 µg Hg/kg bw)52
Sherlock et al.(1984)水銀/血液水銀濃縮された魚、3か月50
Smith et al.(1994)メチル水銀/血液メチル水銀44.8 (35.1–52.8)
Albert et al.(2010)水銀/血液海産物65.4
Yaginuma-Sakurai et al.(2012)水銀/血液・毛髪魚(3.4 µg/kg/week)血液; 94 (58–155),
毛髪; 102 (60–192)
水銀の半減期には個人差がある

水銀を出す力には個人差があります。

平均は70日ぐらいですが、40日の人もいるし、100日の人もいます。100日以上かかる人はものすごくスローメタボライザーで代謝が遅いので、暴露量が微量でも体内に溜まってしまいます。そのような人は、デトックス体質になるかデトックス治療をしないと水銀の有害性が出てくる可能性があります。そこを見極めるために検査するわけです。

2-3. 人の解毒のしくみ

人の解毒は3段階になっています。

Phase1・2・3となっていて、Phase1は「活性化」、Phase2は「抱合」と言って、グルタチオン、グルクロン酸、硫酸などによる抱き合わせによって、細胞の外に出る準備をします。MRP1輸送隊という受容体を通って細胞の中から外に出て行きます。

その先のPhase3は「輸送」です。輸送の際、無機水銀は水溶性なので腎臓を通って尿へ、そして有機水銀の場合は、脂溶性のため肝臓を通って胆汁から便へ排泄されることになります。

何がどれぐらい溜まっていて、どれぐらいの排泄能力があるかを見ることが大切で、溜まっている量を見るのはオリゴスキャン、排泄能力を見るのは毛髪検査や尿検査が良いです。

腎臓からの排泄量は尿検査で直接分かりますが、胆汁からの便排泄の量というのは、直接見にくいのでメチル水銀を排泄している毛髪検査で代用します。毛髪はシステインを含んでいるため、メチル水銀がシステインと結合して肝臓の胆汁排泄を代表する代わりになるのが毛髪検査と言われています。

つまりオリゴスキャンでは蓄積量と対処法。そして毛髪ミネラル検査では排泄量と「カウンティングルール」で主に把握することができます。

蓄積量と対処法                       排泄量

水銀が元々体内にないのか、排泄できずに低いのか、それを見分けるのが「カウンティングルール」です。水銀レベルからではなく、ミネラルのバランスから判断します。

 ミネラル輸送障害なし                         ミネラル輸送障害あり

ミネラルバランスが左の表のようではなく、真ん中や右側のように、左側や右側に偏りすぎてる場合、ミネラルの輸送障害が考えられます。ミネラルの輸送障害があるということは、水銀が溜まっているということを示唆します。これがカウンティングルールと言って、アンドリュー・カトラー先生の本に書いてあることですが、今のところエビデンスはほとんどありません。

ただ、他のアメリカの代替療法のセミナーでも、このカウンティングルールを使っていて、毛髪検査だけで水銀の蓄積量を完全に推定するのは不確定なので、オリゴスキャンで俯瞰するのが有力な方法じゃないかと考えています。実際に治療をすると、このミネラルバランスが戻ってくる人が多いので、治療経過としても使えると思います。先ほどの48歳の慢性疲労の女性のように、ミネラルのバランスが崩れている場合、水銀をある程度出すと症状も良くなりミネラルバランスが改善します。

水銀レベルを0にすることはできないので、どこまでデトックスを続けるかについては、ミネラルのバランスを取り戻すまでを治療期間にして、その後は自然デトックス、例えばサウナや運動に切り替えるようにしてもらっています。できればオリゴスキャンをしてご自分の毛髪検査と比べてみるといいと思います。排泄障害がない場合、排泄量と蓄積量は反比例していることが多いです。

2-4. 48歳女性 慢性疲労

この方の場合はミネラルの輸送障害がないので、例えばヒ素が多く出ている場合、ヒ素の溜まりは少ないといえます。オリゴスキャンの良い点は、Phase2とPhase3が働いているかを見る指標にもなってくれることです。酸化ストレスがあるかどうかは、Phase2がうまく働いているかどうかを見る指標となります。Phase2のセンターピンは細胞内グルタチオン濃度です。細胞内のグルタチオン濃度を保つためには、抗酸化力がとても重要です。有機酸検査のグルタチオン濃度がきちんと働いているかどうかをみるためには58番、59番に注目します。水銀は硫黄と結合することによって、体外に排出されやすくなるので、オリゴスキャンで硫黄との結合性をみてPhase3の輸送の評価もできます。

グルタチオン濃度を詳しく見たのが上記です。グルタチオンの指標物質の58番ピログルタミン酸は、グルタチオンの欠乏で上昇します。59番の2-ヒドロキシ酪酸は、このメチレーション回路が働いてグルタチオンが出来る時に副産物としてできるので、これが上昇していたら解毒回路が働いているということが分かります。つまり解毒で体内が忙しい時には、59番が上昇するということです。

この2つの上昇でグルタチオン不足だと急いでグルタチオンを補充するのではなく、まずは原因追及をして、なぜグルタチオンが足りないのか、なぜ解毒で忙しくなっているのかを突き止めることが大切です。そうしないといくらサプリがあっても足りなくなります。特に炎症があると、グルタチオンは全部使われてしまいます。

Phase1から3は、オリゴスキャン、毛髪ミネラル検査、血液検査などを見て把握してください。自分のどこが詰まっているのかを解明して、そこをターゲットにアプローチしていくのが正しいデトックス法です。

5. どうやって解毒していくか〜人の解毒の方法を知る方法

どうやって解毒していくかというと、本来の人間の解毒システムを知ってそれを強化してあげる方法がベストだと思います。

  • 暴露源を除去する
  • 毛髪検査をして特にヒ素・カドミウムが高い人は、水と米を変える
  • カビ毒がある人は、空気清浄機を買う
  • 引っ越しする
  • マグロをサンマにする
  • アマルガムを除去する

胎児に影響を及ぼさない母体中の毛髪水銀濃度は11ppmですが、そこから計算するとどれぐらい水銀を摂取しても大丈夫かという耐容週間摂取量は、2μg/kg/週になります。

普通に魚の摂取をしていると2μgを優に超えてしまいます。食品安全委員会は、マグロの代わりにサンマを食べるとこれを超えずに済むと提唱しています。食物連鎖の上にある魚ほど、水銀が沢山溜まっているので、マグロをサンマに変えるのは意味のあることだと思います。

5-1. キレーション・プロファイル

 Phase1は、シトクロムP450による酸化のことで、つまり活性化のことをいいます。酸化して活性化させて安定化している脂肪の中の毒物を出す準備をすることです。

第1相:シトクロムP450による酸化      第2相:グルタチオン等による抱合

CYP1A1  排ガス
CYP1B1  エストロゲン水酸化
CYP2C19 PPI,抗痙攣薬
CYP2D6  SSRI,抗うつ薬など
CPY3A4  処方薬の50%、ステロイド

Phase2がグルタチオンによる抱合ですが、まず最初に準備することは、暴露物をなくすことなので、マグロをサンマに変えたり、アマルガムを外すことになります。アマルガムは防御しないで外すと、脱力、頭痛、めまい、耳鳴りなどの症状が出ることがあります。特に水銀を排泄する力がない人、カウンティングルールでミネラルの輸送障害がある人は、アマルガムを外す時は気をつけたほうが良いです。アマルガムを削ると大量の水銀が一気に蒸発するため、急性水銀中毒になるからです。刺激なしの時の100倍の水銀の蒸気が脳に行ってしまうため、特にアマルガムが大きい場合はきちんと防御をして除去してくれる所に相談をしましょう。

キレーション療法とは「蟹のはさみ」という意味で、現在色々なクリニックで取り入られている治療法です。金属イオンをはさみこんで結合して、有害物質を体外に排出しやすくする方法です。キレートミネラルというサプリメントが体内に入り込みやすいのは、ミネラルではなくアミノ酸の扱いになるからです。アミノ酸の扱いになると、体の中に入るのも、出すのも容易になります。だからミネラルはキレートとして入れたり、キレートして出したりするのです。

キレートによく使われる薬が、EDTAです。EDTAは、このような形の構造をしているアミノ酸で、中に金属を挟み込むことができます。

EDTAのサプリメントは、経口摂取しても腸管からの吸収が悪いため、点滴で取り込むのが一番です。その代わりEDTAを飲めば、腸管の金属は除去することができます。慢性の副鼻腔炎の患者に使用している経鼻スプレーにはEDTAが入っていますが、これは金属を除去するのと、バイオフィルムを除去するという働きがあるからです。ただし体内には吸収されないので鼻腔や腸管啌などに使い、体内に入れたい場合は点滴をします。

その他、有名なのは DMSAやチオラですが、これの問題点は水銀を吸着することができないことです。水銀以外のカドミウムやアルミニウムは沢山入りますが、水銀をターゲットとして出すためにはSH基やヒドロキシル基を持った薬剤やサプリメントを使います。

DMSAは5年ぐらい前までi herbでも買えたましたが、日本では輸入できなくなりました。現在DMSAは薬剤扱いで、SH基は2つ結合しています。日本で買えるチオラは鉛中毒の薬で、SH基が1つです。これでも水銀も鉛も排出されると思いますが、一部のキレーションドクターの中ではSH基が2つないと水銀との親和性が低くなって途中で離してしまうので、DMSAだけを使う先生もいます。どちらにしても重要なのは血中濃度を保つことで、血中濃度が下がると水銀をキャッチしても途中で離してしまうので、体の中で他の場所に再分布してしまいます。

血中濃度をうまく保てるように、僕の場合はチオラを使うなら3時間おきに5回、1日5回摂ってもらうようにしています。僕の医院では行っていませんが、カトラー先生は、5時間おきに睡眠中も子供を起こしてチオラを摂取させる強行的なプログラムを行なっています。それほど血中濃度を保つことが大切ということになります。こういった薬を組み合わせて、挟み込んでくっつけて外に出す治療をキレーション治療と言いますが、この治療の問題点は、Phase3にしかアプローチできないことです。

5-2. 42才男性 脱力、乾癬

42歳男性

  • 医師
  • ストレスが強い
  • 倦怠感
  • 風邪をひきやすい(2ヶ月に1度)
  • 乾癬(左腕、左大腿部)
  • 不眠

倦怠感、風邪をひきやすく、アマルガムがある方を、 先ほどのEDTAという薬を点滴してキレーション治療をしたところ、鉛は出ましたが水銀はあまり出ませんでした。

Ca-EDTAによる誘発テスト

カルシウム入りEDTAとDMSAの点滴を入れたら、沢山出るようになってかなり頭が冴えるようになりました。このように細胞の外に水銀を出せる人の場合は良くなります。

僕の場合マグロを食べているせいか、毛髪中の水銀濃度がものすごく高いです。ミネラル輸送障害はなかったので、点滴治療で良くなりました。

5-3. 歯科医師 33歳男性

33歳の歯科医師の男性で、疲れやすく、痺れや痒みがある方にはやはり歯にアマルガムがあったのですが、食物アレルギーがあってデトックスしてもあまり上手くいきませんでした。

  • 疲れやすい、手にわずかなしびれ、かゆみ、背部痛、記憶力低下
  • 便の状態が日々変わる(腹部に症状は無い)
  • 現病歴 数年前から疲れやすさと記憶力が低下している感じがでて、
  •  最近わずかに指先がしびれる感じがある。
  • 身長178cm 体重68kg BMI:21.5
  • 筋肉量 標準 体脂肪量 標準
  • 歯科アマルガムあり

ミネラル輸送障害があって、細胞の中から外に出す力がないためPhase3のキレーション治療だけ行ってもうまくいかなかったと考えられます。

卵と乳製品に重度の食物アレルギー
水銀は体内でミネラルの輸送を阻害する

毛髪検査や尿検査でうまく排泄できている人は、必要に応じてキレーション治療を行えば良くなると思いますが、暴露量と排泄量が一致していない人は 、Phase1・2・3の評価をして、この機能を上げてあげるほうが良いだろうということです。

6. 解毒の3Phase

6-1. フェーズ1 活性化(脂肪内で安定化している毒物を刺激する)

上記は僕の遺伝子検査の結果ですが、物事を活性化する酵素というのは半分遺伝子によって決まります。僕の場合はCYP2D6が++になっているので、ここは少し弱いところです。CYP1A2も+/−になっていますが、これはカフェインの解毒に関係しています。もし遺伝子検査をすぐにしたいという方は、ジェネシスと検索してみてください。確か1万5千円くらいだったと思いますけども、唾液の採取で検査できます。結果が分かるのに1ヶ月近くかかりますが、非常に結果が分かりやすいです。

僕の場合は飲酒量が多い、ワインはやや好き、喫煙量は標準というふうに出ています。この飲酒量の有無は、アセトアルデヒド脱水素酵素から推測しているようです。カフェインの消費量は少ない傾向になっていますが、それは僕の場合はCYP1、CYPA2があまり良くないからだと思います。

つまりこの第一相のシトクロムP450対策は何かと言うと、事前に検査をして自分の排泄しづらいものは食べない、入れないということになります。CYPA1Aが排ガス、CYP2D6がSSRIとか抗うつになるので、僕の場合はこの薬は飲まないようにした方が良さそうです。

該当するもの暴露を避けるという意味では、第2相も同じです。エストロゲンの代謝はCOMTです。このCOMTの補酵素がビタミンB6です。COMTがある人はエストロゲンの暴露を避けると良いと思います。

また、グルタチオンは「抱合」といって、毒物と抱き合わせますが、そのための酵素がグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)です。スニップ(一塩基多型)があったら解毒しづらいということです。同じようにグルタチオンは活性酸素があると働かないので、 SODスーパーオキサイドディスムターゼという酸化ストレスを中和してくれるところにスニップがあるかどうかを見ると良いと思います。

ジェノバ社のデトックスプロファイルは値段が高いのであまりお勧めしませんが、一生に一度と思って検査しておいても良いかもしれません。何が溜まりやすいか分かるので、該当するものを下げられます。

6-2. フェーズ2 抱合水溶性物質と抱き合わせて排出の準備をする

Phas1を処置したら、次はPhase2(抱合)です。Phase2のポイントは、グルタチオンです。

グルタチオンというのは、アミノ酸(グルタミン酸、システイン、グリシン)からなるトリペプチドで、抗酸化と抱合の二つの役割をしています。どちらの役割が高いかと言うと抗酸化です。細胞内濃度が極めて高く、細胞内の酸化還元環境を維持しているトップはグルタチオンです。グルタチオン濃度をいかに保つかということが、全てと言ってもいいと思います。

細胞中の還元型と酸化型グルタチオンの比率が、細胞毒性の評価の指標です。還元型と酸化型グルタチオンが混在していますが、98%以上が還元型として存在しているので、このバランスが狂っているとまずいです。酸化されてもすぐにナイアシンによって還元されます。Phase2のセンターピンは細胞内グルタチオン濃度を適切に保つことです。センターピンというのはボーリングの一番前のピンのことで、そこを倒せば全部残りの9本も倒れます。

グルタチオンが活性酸素H2O2を組み合わせると、酸化されて水ができます。

上記の下の式が酸化型グルタチオンですが、これはナイアシンによってまた元のグルタチオンに戻してくれます。この抗酸化の働きをするためには、グルタチオンペルオキシダーゼという反応を触媒するものが必要で、ペルオキシダーゼの活性中心が有名なセレンです。

先ほどのオリゴスキャンにPhase2の抗酸化力とありましたが、抗酸化力が何故ミネラルの測定で分かるかというと、グルタチオンペルオキシダーゼの活性中心のセレンを測定しているからです。セレン、マンガン、亜鉛などが、高酸化酵素の活性化中心として必要で、ミネラルは抗酸化力の維持に関わっています。

メチレーション検査

細胞内グルタチオン濃度を測定するのは難しいので、血漿中のグルタチオン濃度を調べようというのがこのメチレーション検査です。メチレーション回路が回ると、体内で適切にグルタチオンが産生されます。このメチレーション検査では、グルタチオンの中でも酸化型と還元型のグルタチオン濃度を測ることができます。

上記はHDRI社のメチレーション検査です。この方の場合、酸化型(oxisidised)グルタチオンは基準範囲内ですが、還元型(reduced)グルタチオン濃度がちょっと低めなので、抗酸化能力が少し低くなっていて、恐らくメチレーション回路がうまく回ってないからだろうというのが分かります。

6-3. グルクロン酸抱合

グルタチオン以外にもグルクロン酸抱合や硫酸抱合などがあり、グルクロン酸はOHが沢山あるため水溶性だということが分かります。

  • 種々の薬物、ビリルビン、ステロイドホルモンなどは生体内に滞留すると発ガン・神経障害 ・内分泌障害など重篤な疾病をひき起こす。
  • 一般に、これらの難水溶性物質 は肝臓にあるUDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT) によって、グルクロン酸が付加され水溶性のグルクロナイドに変換される。
  • 水溶性になった薬物は細胞外に輸送され、血流にのって腎臓で濾過され尿中に排泄される。一方、ビリルビンのグルクロン酸抱合体は胆汁中に排泄される。このグルクロン酸抱合反応は、上記物質の生体内解毒反応の主役である。

抱合というのは水溶性にして外に出させるようにすることです。ビリルビン、ステロイドホルモンなど一部の薬は、グルクロン酸抱合でPhase2を引き起こします。このグルクロン酸抱合を起こすUDPグルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)を活性化するのが、ブロッコリースプラウトです。

スルフォラファンを摂取したら、ビリルビンやモルヒネを活性化して解毒が進むので、スルフォラファンを摂取したら自閉症のお子さんの症状が改善したというデータがあります。

6-4. グルタチオンを増やす方法

  • サプリで増やす(トリペプチドで分解されやすいので、リポソーム・タイプのものが細胞膜を通過して細胞内に入ることができる)
  • メチレーション回路を回す(体内のグルタチオン濃度を保つ)
  • 炎症を取る
  • 抗酸化サプリを摂る(ビタミンCを沢山摂ることで、抗酸化をビタミン C に任せ、グルタチオンを温存することができる)

5年前にハル・ハギンス先生を訪ねた時に伺ったのですが、実は先生がコロラドに行った理由は、コロラド州は比較的医療に関して寛容だからだそうです。6年前にすでにコロラド州とニューヨーク州では医療大麻が解禁されていました。医療大麻は、小児のてんかんに限って使用が認められたのですが、アマルガムを除去したり、水銀をデトックスするというのは、異端の医療で他で禁止されていて、先生も歯科免許を一回剥奪されたことがあるそうです。

そのため一時期はサン・ディエゴに住んで、オフィスはメキシコにおいて、話を聞くのはサンディエゴで、治療はアメリカでなくメキシコでやってたりしたそうです。今はさすがにもう大丈夫だと思いますが、栄養療法の最先端のことをやっている人は、迫害されたりすることはよくあります。

先生によると、アマルガムを取って良くなる人とそうじゃない人の違いは、アポリポ蛋白E のアイソザイムの違いだろうとおっしゃっていました。ApoE4が1つもない人に比べて、ApoE4が1つある人は、炎症促進してアルツハイマーになりやすいです。

ApoE4がひとつもない人のアルツハイマーの発症率が9%に比べて、ApoE4がひとつだと30%、ApoE4が2つ以上だと50%以上になります。

このApoE対策も抗酸化です。グルタチオンを摂るのに先駆けて、ビタミンCやビタミンEを摂ることによって、ApoE4を持っていても発症のリスクを抑えられるので、十分調べる価値がある検査だと思います。

このような人は、脳の抗酸化であるフェルガードや、リポゾームのビタミンCを摂ることをお勧めします。

phase2の細胞内グルタチオン濃度を上げるため、抗酸化はデトックス治療の一部です。細胞内グルタチオン濃度上げる方法をまとめると、まず暴露量を減らすこと。DMSAなどは細胞外液の水溶性分画にしか作用しないのでまず炎症を止めること、抗酸化治療をすること、そしてメチレーション回路を回すことです。自閉症の治療をするアメリカのDAN!という組織が、このプロトコールを推奨しています。

6-5. フェーズ3 排細胞内から細胞外へ肝・腎を経由して対外へ

Phase3は Phase 2に先駆けて行ってください。便秘をしないこと、そして腸管循環を抑制するために水溶性食物繊維を摂ること、キレーションもこのPhase3に入ります。細胞の中から外に出すためのMRP 蛋白を活性化してあげること、あとはメタロチオネインというカドミウムをくっつける蛋白を作るのもPhase3の要素の一つになります。

MRPタンパク質というのは細胞の外から中に変な化合物が入ってきた場合に大きく口を開けて、排出させる蛋白のことです。 Multi-drug resistance; MDR蛋白、つまり薬が入ってきて排出させるタンパクで、抗がん剤が効かないのはこのMRPたんぱく質が原因ということで、現在研究されています。デトックスの場合、MRPたんぱく質を活性化させなければいけないのですが、抗癌剤を効かせるためにはこの MRPタンパク質を阻害しなければならないので、その阻害剤というのが研究されているわけです。

デトックス目的の場合は、このMRPタンパク質を活性化させることですが、そもそもデトックスをすると疲れる理由は、ATPを消費するからです。ファスティングのメリットは、消化に使うATPを全部デトックスに回せることです。デトックスをすると次の日尿が濃いのは、MRP蛋白質がきちんと働けるからです。メチル水銀の排泄経路は90%は胆汁排泄で腸から出ますから、便秘をしないことです。

6-6. メタロチオネイン

メタロチオネインとは、重金属(特に銅、カドミウム、水銀)を結合するタンパク質のことで、これは亜鉛を摂ることで生成されます。

結合力  Zn < Cd < Cu< Hg Ag
亜鉛刺激で作られ、カドミウムがあれば入れ替わる
システイン摂取の必要性

ウィリアム・ウオルシュは、このメタロチオネインをプロモーションする治療を推奨していて、それはアミノ酸と亜鉛を摂ることです。そこで重要になってくるのが、亜鉛の血中濃度です。メタロチオネインを作るためには、亜鉛の血中濃度を100μgに上げることをウオルシュ博士は推奨しています。

6-7. 亜鉛の使用量

どれぐらい亜鉛を摂れば100μgになるかというと、下記の9パーセントルールを使用してください。

亜鉛摂取量を2倍にすると血清/血漿亜鉛状態が9%上昇した

9%ルールというのは、亜鉛を摂る量を2倍にすると、亜鉛の血中濃度が9%上昇するということです。これを計算するとどれくらい亜鉛を摂ったら血中濃度が100になるかが分かります。例えば血中濃度が70の人は、食事からの亜鉛が10mgとすると、亜鉛を150mg摂らなければいけないことになります。

150mgというのは食事で摂るととてつもない量ですが、普通の薬では150mgなので、このような目的によっては使用するのが良いです。ただ亜鉛を100mg以上摂る場合は、特に銅の欠乏が問題になります。銅は成長に必要なので、多すぎても少なすぎても問題です。亜鉛と銅はブラザーイオンなので亜鉛を沢山摂る場合は、血中濃度をモニタリングしながら専門家のもとで行ってください。

デトックスというのは、特に脂溶性のものは抱合して、胆汁から排泄させるもの、肝機能を高めるミルクシスルとかリポゾマルグルタチオン、還元型グルタチオン、ウルソや、タチオンとか使うのもいいでしょう。

そして出てきた毒素をキャッチして、再吸収による腸管循環を防ぐためには、クロレラやクレメジンのような活性炭の薬を使うのもいいでしょう。これら2つをうまく組み合わせることで、自然デトックスのPhase2とPhase3をコントロールすることができます。

炎症→腸→デトックス

まず炎症を取ること、そして腸内環境を改善して除菌をすること。その後にデトックスをすると良いでしょう。

7. デトックスのセンターピンは

最後にデトックスのセンターピン(物事の本質を見つけること)は何かというと、

根本原因ピラミッドPhase1というのは自分の排泄しにくいものを避けることです。そしてPhase2は、細胞内グルタチオン濃度を上げること、そして炎症を抑えること。Phase3は腸内環境を改善して腸管循環を抑えること、そしてミトコンドリア機能を改善することです。根本原因の色々な物を超えたアプローチをして、炎症、腸内環境、エネルギーを総合的に見ることが、結果としてデトックスになるということが分かります。

詳しくは与沢翼さんの『ブチ抜く力』という本を読んでみてください。この本には、センターピンを1つに絞ること、そして選択と集中をして、やり遂げることが重要とあります。理論が分かってもなかなか実行できないので、とにかく1つやることを絞って、最低3週間続けてみることです。3週間続けると習慣化するからです。

この与沢翼さんは、秒速で1億稼ぐと言われながらも破産して、マレーシアで投資に成功して今億万長者になった人ですけど、億万長者になって暇になったので生命保険に入ろうとしたのですが、太り過ぎという理由で生命保険から拒否されたそうですが、お金の事になるとモチベーションが上がって、2ヶ月で10 kg 減量に成功したそうです。

ダイエットのセンターピンは「食べないで鬼動くこと」と書いてありますけども、このダイエットの仕方は人をよほど選ぶので、ここだけは真似しないようにしてください。他はすごく参考になると思います。

デトックスのポイントは腸内環境改善とグルタチオンの使い方

宮澤賢史 · 2021年7月4日 ·

今回は、デトックスの中級編です。デトックス治療をするときの重要なポイントは共通しているので、デトックスのボトルネックをいかにして克服するかが大切になります。

1. 低血糖とミトコンドリア対策

1-1. Dr Kalishのmethod

機能性医学の権威、ダニエル・カリッシュ先生は、医療コンサルタントと栄養療法の講師をしています。彼曰く、患者さんが検査や治療に消極的なのは説明が悪いのが原因だそうです。患者にきちんと説明ができていないから、セールスにつながらない。つまり、売り上げというのは自分の技量の結果そのものなんですね。

さて、カリッシュ先生はいつも僕が解説している根本治療ピラミッドに似た概念を提唱しています。彼の治療ピラミッドは大きく、神経内分泌、消化器、デトックスの3つから成り立っています。

  • 神経内分泌 1.糖質代謝 2.エネルギー産生 3.神経伝達物質代謝
  • 消化器     4.バクテリア、クロストリジウム、イースト除菌
  • デトックス    5.デトックス 6.酸化 7.メチレーション

神経内分泌の1番の糖質代謝とは、低血糖を治すということです。2番目のエネルギー産生はミトコンドリア機能を上げること、3番目は神経伝達物質代謝で、アドレナリンの過剰分泌があるとデトックス効率が落ちるので、全て整えてからデトックスした方が良いということです。

デトックス治療が上手くいくかどうかは、環境を整えられるかどうかにかかっています。肝臓がデトックスの要なので、肝臓の機能が上がると、デトックス治療をしなくても自然に毒が排出されます。

1-2.遺伝子よりも症状が大切

メチレーションの大家のベン・リンチ博士も、メチレーションは最後にケアすべきと言います。「DIRTY GENES」という著書の中で、「いくら遺伝子解析をしても、遺伝子が環境によって汚されると思うようにタンパク質を発現できない。そのため治療すべきターゲットは、遺伝形式ではなくて実際の表現型だ」と言っています。遺伝子検査の結果に一喜一憂せず、実際の症状に目を向けましょう。

1-3. 低血糖とミトコンドリア対策

一番最初に取り組むべきは低血糖のケアです。低血糖があると、エネルギーの供給障害でミトコンドリア機能低下に直結します。糖質代謝がうまくいかないとエネルギー(ATP)産生もできなくなります。肝臓はエネルギーを大量に消費するので、ミトコンドリア機能低下=肝機能低下ということになります。

肝機能低下を表す代表的な数字が、ASTとALTです。両者は、アラニン経路の酵素なので、これらの数値が低いということはアラニン経路が異常に活性化されて、低血糖の代償が行われているということです。いくらビタミンB6を摂ってもASTとALTが上がってこない方は、糖質のエネルギーがうまく供給されないので、アミノ酸が異化されていきます。夜間低血糖を起こす人は、眠りが浅く、筋肉が緊張しているため、朝から肩が凝っています。プロテインを摂っていても、タンパク異化を起こして筋肉がどんどん痩せていきます。

人間は本来、血糖値を維持するためにグリコーゲンを蓄積することができますが、肝臓には500kcal分しか貯蔵することができません。そのため筋肉の1500kcal分のグリコーゲンを間接的に使うべくアラニン回路が働きます。低血糖を頻発する人はアラニン回路が過剰に亢進しているので、筋肉がどんどん分解されます。肝臓のグリコーゲンの分解刺激はグルカゴンですが、筋肉のグリコーゲンの分解刺激はコルチゾールとアドレナリンなので、低血糖を頻発してる人はこれらが過剰となります。

だから、補食をしたり、薬で副腎のケアをして低血糖を落ち着かせて、ミトコンドリア機能を安定させることがデトックスの最初の一歩なのです。そのあとに消化器のディスバイオシス、それからリーキーガットを治すという順序になります。

2. 腸内環境を整え肝臓の炎症を抑える

デトックスの第二のボトルネックは、肝臓の炎症です。炎症がデトックスの第二段階の抱合に必要なグルタチオンを無駄遣いしてしまうし、肝臓の炎症があると胆汁がうまく分泌できなくなります。肝臓の炎症は様々な要因で起こりますが、一番の要因は腸です。

2-1.ストレス、ディスバイオーシスとLPS

ストレスが腸の透過性を亢進することは昔から知られていました。これは1996年の論文で心臓手術を受けている患者にリーキーガットが多いことを示すものです。

バイパス手術を受けている患者はリーキーガットを引き起こしている
Intestinal permeability, gastric intramucosal pH, and systemic endotoxemia in patients undergoing cardiopulmonary bypass
JAMA 1996 Apr 3;275(13):1007-12.

ストレスは、炎症、リーキーガットを引き起こします。リーキーガットになれば未消化のタンパクや腸管の病原菌、ウイルスなど様々なものが血中を経由して肝臓に到達します。リーキーガットと肝臓の炎症には密接な関連がありそうです。

SIBOと脂肪肝に有意な関連性
Small intestinal bacterial overgrowth and nonalcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis
Eur J Gastroenterol Hepatol2020 May;32(5):601-608. 

腸内細菌のバランスが悪い人は炎症体質です。ディスバイオーシスとは、腸内細菌の多様性が失われている状態のことを指します。腸内細菌の数と種類が減ることで、悪性のグラム陰性桿菌の割合が増えて、その細胞壁の成分であるLPS(リポポリサッカライド)からエンドトキシンが分泌されて体の内外に炎症を引き起こします。

糖尿病性腎症の患者は、腸内細菌バランスが悪く、炎症レベルが高い
Dysbiosis of Gram-negative gut microbiota and the associated serum lipopolysaccharide exacerbates inflammation in type 2 diabetic patients with chronic kidney disease
Exp Ther Med. 2019 Nov; 18(5): 3461–3469.Published online 2019 Aug

2-2. LPSがMRPを抑制する

この全身に炎症を引き起こすLPSですが、実は解毒にも重大な悪影響を及ぼすことがわかっています。LPSは、肝臓に炎症を引き起こして肝機能を止め、細胞の外から入ってきた異物を捕まえて外に排出する多剤耐性タンパク(multi-drug resistance Protein ; MDP)の機能低下を引き起こします。

抗がん剤が効かない一番の理由がこのMRPタンパク質なので、近年非常に研究されています。細胞には元々異物を排出する仕組みが備わっているため、抗がん剤を大量に使っている人たちに対して、MRPをいかに阻害するかという薬を開発しています。デトックスをする人の場合、このMRPを逆に活性化するということが大切になってきます。

細胞内から細胞外に薬物を排出するためには、この図にあるように大量なエネルギーが必要です。細胞が活性化するためにミトコンドリア機能を上げる必要がありますが、このMRPが阻害される原因はLPSです。エンドトキシンは、第二相・第三相の解毒ともに阻害するので、腸内環境が悪い人は解毒ができません。まず腸を治すために、食事を変えて、ストレスを減らしてください。

さらに悪いことに、エンドトキシンは胆汁の流れを劇的に減少させます。胆汁は下記のように様々な機能を持っています。

  • 脂肪の消化
  • 解毒
  • 抗菌
  • 甲状腺ホルモン活性化(+胆汁が脂肪を分解して体が活発な甲状腺ホルモンを作るのを助ける)

胆汁が分泌されないと、脂溶性ビタミンも吸収できず、メチル水銀、農薬、マイコトキシン脂溶性などの毒物が解毒できず、甲状腺ホルモンの活性化も妨げられます。

マウスに胆汁を投与すると、褐色脂肪組織のエネルギー消費が増加して肥満とインスリン抵抗性が予防されます。胆汁は単なる消化液ではありません。油ものを食べると胃がもたれるという人は、解毒もできず、腸内の抗菌活性も保たれていないのでSIBOも起きやすく、甲状腺機能も低下していると思われます。

2-3. 胆汁分泌不全の兆候

Dr.サンドラ・カボットが、サイロイドと、リバーディスファンクションの関係の本を沢山出版されていますが、甲状腺機能低下の患者さんの半数以上は胆汁分泌に障害を持っているとおっしゃっています。

胆汁分泌が低下して出る症状は、下記の通りです。

  • 肩甲骨の間または胸郭の下の痛み
  • 明るい色または灰色の便
  • めまい
  • 脂肪の多い食事後の膨満感
  • 不眠症
  • 乾燥肌
  • 脱毛

ビタミンDのサプリメントを摂っているのにビタミンDの血中濃度が上がらない人も、一度胆汁分泌ができているかどうかを確かめてみると良いと思います。甲状腺機能の低下に関連した脱毛もあります。胆汁分泌不全の原因は、肝機能障害も然り、化学物質の曝露による毒素の蓄積や、ストレスホルモンであるコルチゾールの過多が胆汁分泌を妨げます。胆汁分泌も胃と同じように副交感神経支配だからです。

副交感神経の迷走神経は枝分かれしていて胃と胆のうに伸びているため、緊張すると胆のうや胃の動きも止めてしまいます。解決策として、Dr.サンドラ・カボットは、ココナッツオイルやMCT、クランベリーを推奨しています。甲状腺機能の低下が改善されない人は、リバークレンジングジュースで検索して、胆汁分泌を改善させてください。

2-4. LPS↑を疑う症状と検査

このエンドトキシンが悪さをして胆汁に炎症を引き起こし、胆汁分泌を止めてデトックスを妨げます。下記の症状がある方は要注意です。

症状

  • 鼓腸
  • 過敏性腸症候群
  • 膨満
  • 口臭
  • 食物アレルギー
  • うつ 不安

検査

  • 血中ゾヌリン↑
  • 良性細菌の低下
  • 細菌多様性の低下
  • 食物アレルギーIgG↑
  • アラビノース↑
  • カルプロテクチン↑

腸内環境の良し悪しは、腸と脳の症状で見ます。様々なエビデンスが出ていて、腸内環境の悪化=うつ、不安、緊張、パニック、などの精神症状を引き起こすため、精神症状が安定しない人は腸をチェックしてみてください。

検査での血中ゾヌリンはリーキーガットの良い指標です。CSA(腸内細菌検査)で良性細菌の低下、もしくは細菌の数や種類が減っていたら多様性の低下が考えられます。食物アレルギーが上昇していたり、カンジタならアラビノース、便中及び血中のカルプロテクチンは腸の炎症を表す良い指標のひとつです。これらを総合して、数値に問題がある人はデトックスはまだ時期早々か、行ったとしてもあまり効果が出ないでしょう。

まずは腸内細菌や腸内環境を改善してください。様々な方法がありますが、乳酸菌をサプリメントで入れるのが近道です。プロバイオティクスとプレバイオティクスをうまく使い分けるのがコツですが、プロバイオティクスを入れるということは強制的に腸内環境細菌を良くするということで、生着はしませんが便の状態が改善されます。

2-5. グルタミンの有用性

僕が一番重要視しているのはグルタミンです。特に低血糖からの流れで腸内環境が悪い人は、グルタミンが減少しています。低血糖の発作時に低血糖があると、筋肉で身体の中にアミノ酸が一番分解されるのはアラニンとグルタミンです。アラニンは糖新生に使われ、グルタミンも一部エネルギーとして使われますが、グルタミンの用途はストレスで失われるのと、腸粘膜の修復で失われるため、低血糖で腸内環境が悪い人はグルタミンが足りません。グルタミンを補給すれば夜間の低血糖の防止にもなり、筋肉が痩せていくのを抑制することができます。

グルタミンの使用量は、少ない人は5g〜でも十分ですが、多い人で50g、または15gを1日3回摂る人もいます。グルタミンは腸の水分量を調整するので、摂り過ぎると便秘になりますが、マグネシウムを併用することで便のコントロールはある程度可能です。便通に関しては、マグネシウムがアクセルで、グルタミンがブレーキとなります。ストレスで両方失われるので、両方摂ることをお勧めします。便中のカルプロテクチンを下げるのにグルタミンは有用です。リーキーガットが改善されるということは、肝炎が治るということです。肝炎が治って肝臓の細胞がきちんと働きだしたら、デトックスの第一相と第二相が働き出します。

グルタミンが重症熱傷患者の腸透過性を改善し、入院期間を短縮
Effects of enteral supplementation with glutamine granules on intestinal mucosal barrier function in severe burned patients
Clinical Trial Burns.2004 Mar;30(2):135-9.

2-6.まとめ

ディスバイオーシスは、

  • 肝臓に炎症を引き起こし
  • MRPタンパク質の発現を低下させ
  • 胆汁の流れを止める

まずは徹底的に腸を治療してください。ドクター・カリッシュのメソッドで、1番目が低血糖、糖質代謝の改善、2番目がミトコンドリア、3番目が神経伝達物質代謝です。そこを落ち着かせてから、4番目に腸内環境に取り掛かりましょう。

デトックス治療というのは、デトックスに最適な環境を整えることで、副腎疲労の治療と似ています。副腎疲労の治療というのは副腎サプリを摂ることではなく、副腎が治るのに最適な環境を整えてあげることです。引き算で考えて、炎症とストレスと低血糖発作を取ってあげることが大切です。

3. グルタチオン

デトックスのボトルネックの3番目は、細胞内グルタチオンの濃度が上がらないことでした。いかに細胞内グルタチオン濃度を上げるかという、ここからが本題となります。

3-1.グルタチオンとは

グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンという3つのアミノ酸から成るトリペプチドで、身体の中で2つの重要な機能を持っています。一つは細胞内の主要な抗酸化成分で、細胞内環境の抗酸化の集約です。それとともに、毒物や薬物の細胞外への排泄も執り行っています。他の抗酸化物質に比べてグルタチオンは特別に濃度が高く、酸化型と還元型のグルタチオンがありますが、NADHやビタミンB2、B3が働いて、細胞内の還元型グルタチオンを98%以上になるように保っています。

細胞内の還元型と酸化型のグルタチオンの比率が細胞毒性の評価指標、もしくは酸化ストレスの評価指標だと言われています。細胞内の指標は、血中濃度で測ることができます。メチレーションが低下している人は、この還元型と酸化型のグルタチオンの比率が低く、グルタチオンを還元する力が弱いです。

Phase1は酸化、活性化です。油の中に溶けている安定した毒物を排泄するために、活性化させて不安定にさせる必要があります。酸化させるためには、ビタミンB群が大量に必要で、実際に行うのはシトクロム、P450です。

Phase2は、活性化したものを抱合して水に溶けやすい物質と抱き合わせにします。その主役を担うのがグルタチオンで、Phase2のセンターピンは、細胞内グルタチオン濃度です。センターピンというのはボウリングの一番前に立っているピンのことです。ここのセンターピンを倒すと全部倒れるので、センターピンを外さないことです。

グルタチオンの半減期は12分なので、良いグルタチオンサプリを使っても即効性と持続性は両立しません。解毒の場合には細胞内グルタチオン濃度を高く保ち続けることが大切なので、やはり環境をいかに整えるかが大切になります。

3-2. グルタチオンの体内反応

グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)
中心にセレン
グルタチオンレダクターゼ

グルタチオンは、細胞の中で還元と解毒という2つの働きを持っています。上の式は、還元です。過酸化水素がグルタチオンと結合することによってグルタチオンが酸化されて、過酸化水素は還元されて水になります。過酸化水素を還元しています。

GS-SGは酸化されたグルタチオンです。これは、NADPH、ビタミンB3によってまたグルタチオンに還元されて、その反応が繰り返されます。

この酸化還元反応を触媒しているのがグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)という酵素で、補酵素はセレンです。グルタチオンがあるだけでは酸化還元反応は進みません。GPXという触媒が媒介してくれることによって、酸化還元反応が起きるので、セレンが不足している人は細胞内環境がうまくいきません。グルタチオンを働かせるためにはセレンとナイアシンを摂らなければいけないということが分かります。

これは、メチレーションの中の硫酸経路の図です。

ホモシステインは独立した動脈硬化の因子で、不安定な物質であるシステインに変換されると、活性酸素があったり、鉄が多く存在する環境ではシスチンに変化し、シスチンがリアクティブニトロゲンスペーシーズ(RNS)になります。活性酸素(ROS)とRNSは、友達みたいなものなのでホモシステインが多すぎると、活性酸素の元となります。

ホモシステインが高すぎる人は、ビタミンB6、B12、葉酸を適宜摂ってメチレーション回路を回してください。B6を摂ることによって、CBSという酵素が活性化されて、システインにどんどん代謝されていきます。CBSの酵素はSAMe、活性酸素、ビタミンB6はセレンによって活性化されます。逆にこれを止めるのはシステインとグルタチオンです。

身体の中でグルタチオンを作る経路はこれしかないので、システインに、グルタミン酸とグリシンが結合してグルタチオンになります。この上流にあるホモシステインが適度にあると良いんですが、10以上は高くて動脈硬化の原因となり、5以下でもグルタチオンを作る材料がないということで問題になります。

CBSの遺伝子変異がある人はこの経路が活性化しやすいと言われていますが、実際にはこのホモシステインの数字を見たほうが良いです。CBSは遺伝子変異もありますが、システイン、グルタチオン、SAMeなどCBS酵素に影響を与えるものが多いので、遺伝子型よりも表現型(実際の数字)を見て、治療に役立てたほうが良いでしょう。

4. 肝臓(フェーズ1とフェーズ2の動き)とデトックスの原則

4-1. 肝臓(フェーズ1とフェーズ2の動き)

下記は、肝臓の中でフェーズ1とフェーズ2がどのように動いてるかという図になります。

Phase1が、チトクロームP450酵素、Phase2は抱合(Conjugation )です。Phase1に必要な栄養素は、アミノ酸も必要ですが、活性化のためにはビタミンB群が主役です。

Phase2に至るために重要なのは抗酸化物質です。Phase1はビタミンB群、Phase2は抗酸化物質、そしてPhase3はS、硫黄です。これらの重要な栄養素は、BASと覚えると覚えやすいと思います。

ここで大事なのが、Phase1からPhase2に引っかかる人が多いということです。Phase1はビタミンB群で活性化されますが、実際はストレスやアルコールでも活性化されます。細胞内グルタチオンの濃度が低い、活性酸素が多い、体内で炎症を起こしているなど様々な理由で、細胞内グルタチオン濃度が低い人というのはPhase2で止まっていて、これが一番困るパターンです。活性化されがものがそのまま体に残ってしまうので、活性酸素を二次的に発生させて組織のダメージにつながってしまいます。細胞内環境の修復が急務です。そういう方には、肝臓の炎症を取ってからデトックス治療をしてください。

4-2. デトックスの原則

① 脂と水を適切量とること

  • 脂肪は中枢神経の60~80%を構成する
  • 不足すると水銀や農薬など脂溶性毒素の攻撃を受けやすい
  • 十分な水分がないと腎臓で適切な濾過ができなくなる
  • 水分を細胞内に入れ込むことが重要(そのためにはミネラル)

② 毒素の再分布は悪化を招く

  • 腸肝循環における再吸収
  • フェーズ1のみ活性化されるとデトックスクライシス
  • 経口での吸着物質なしでのキレーションは脳への再分布の可能性

デトックス治療で一番最初にやるべきことは質の良い油と水を適量取ることです。脂肪は脳の乾燥重量の6割から8割を占めているので、脂肪が不足すると水銀や農薬などの脂溶性毒素の攻撃を受けやすくなります。油は体に悪いのでなるべく摂らないようにしているという方がいますが、良い油を積極的に摂らないとデトックスにはならないです。

十分な水分がないと適切な毒素のろ過ができないので、水も沢山摂ってください。水を飲んでも細胞の外に入れ込むだけなので、細胞外液を増やすのではなく細胞の中に水分を入れ込むのがポイントです。そのために細胞内ミネラルを一緒に摂ることです。細胞内に多く存在するミネラルであるカリウムとマグネシウムを摂ることによって、細胞の中に水が供給されるようになります。それが解毒の第一歩です。

毒素の再分布が一番問題だということも覚えておいてください。再分布とは、腸肝循環における再吸収により、モルヒネなどの薬は肝臓で一度代謝されて、胆汁で排出されたあと、また腸から吸収されて肝臓に戻ります。それを何回か繰り返しているので、なかなか薬として抜けずに薬剤性肝障害の元となります。メチル水銀も腸管循環を繰り返していますが、腸が悪く便秘だとさらに腸肝循環が悪くなります。そのため水溶性食物繊維を意識して摂って、余計な毒物を排泄するというのがとても大事になってきます。

Phase1からPhase2にうまく繋げないと、活性化されたものが肝臓の中に溜まってしまい、毒素を悪化させる要因となります。これをデトックスクライシスと言います。最近、ミネラルをキレート化できる薬物を経口や点滴で入れるキレーション治療というものがあります。DMSAや、EDPAなどの硫黄や活性酸、クロレラなどの吸着物質が入っている薬を使います。これらを使わずにキレーションだけすると、脳に届いて悪化を招きます。

5. グルタチオンの上手い使い方

グルタチオンのサプリメントを使って細胞内グルタチオン濃度をあげる方法をご紹介します。

5-0.問診する

最初に重要なのは問診です。赤ワインを飲んだら不眠になるか、頭痛起こるかを聞いてください。何故かというと、グルタチオンには硫黄が含まれるからです。グルタチオンというのはグリシン、グルタミン酸、システインの3つのトリペプチドで、システインの中に硫黄を含み、硫黄負荷がかかります。

ROSおよびRNSとは何ですか?

活性窒素種は活性酸素種(ROS)と一緒に作用して細胞を損傷し、
ニトロソ化ストレスを引き起こします。
したがって、これらの2つの種はまとめてROS / RNSと呼ばれることがよくあります。

グルタチオンは、ある程度以上身体に入ると身体にフィードバックがかかってシステインをグルタチオンに変換する酵素の働きが悪くなるため抑制されて、硫黄を代謝する方向に流れます。硫黄を代謝する経路は、最終的に亜硫酸塩がSUOXで硫酸塩に変換され、尿になって身体から出ていきますが、炎症がある、モリブデンが足りない、ヒ素や胆のうが溜まっている、SUOXにスニップがある、遺伝子変異がある人というのは、硫黄を摂ると頭痛がしたり喘息が出たりします。

宮澤医院では、デトックス治療をする前に、硫黄アレルギー、玉ねぎ、ブロッコリー、にんにくなどを食べて具合が悪くなる方は申し出てくださいと伝えています。

ワインに含まれる酸化防止剤も亜硫酸塩なので、ワインを飲んで気持ち悪くなる人というのは硫黄代謝がうまくいってない人です。僕は3,000円以下のワインを買ったら、亜硫酸塩を飛ばすために、一杯だけグラスに注いでボトルを振ります。空気の隙間ができたらキャップをもう1回締めて、20回くらい振り、その後キャップを開けるとシューという音がします。これをすることによって悪酔いをしません。

5-1. 水を入れる

  • 脱水=毒素の濃縮
  • 水を補給するタイミングは「ちょっと脳が疲れたとき」
  • 脳は脱水に敏感

問診が終わったら、まず水を補給して毒素の濃縮を薄めることから始めます。特に脱水に敏感な臓器である脳のデトックスが大事なので、水を頻繁に補給してもらうようにしてください。ちょっと疲れたなと思ったらそれは脱水症状なので、カフェインを補給するではなくて、水分を補給してください。

5-2. ミネラルを補給する

正しい水分補給というのは細胞内ミネラルを摂ることと同義です。ミネラルは水を引っ張る性質があるので、細胞内ミネラルを摂ることが細胞内に水を引き込むことになるのです。カリウム、マグネシウムなどのミネラルを十分補給してください。

5-3. モリブデンを摂る

硫酸の活性化をするため、モリブデンを摂ってください。モリブデンといえばこの3つを覚えておいてください。

  • アセトアルデヒドの代謝
  • 硫黄の代謝(SUOXの補酵素)
  • 尿酸代謝(XOの補酵素)

黄色いのがモリブデンです。カンジタ治療をする時には、アセトアルデヒド脱水素酵素の補酵素としてマグネシウムと一緒にモリブデンを入れておくと、ダイオフが少なくて済みます。モリブデンを使って、硫黄の代謝をスムーズにしてください。グルタチオンが大切だと言うと、ついグルタチオンの量が増えてしまいますが、共に使う補酵素を消費するので、バランスが大事です。

モリブデンを使うと尿酸代謝が上がるので、元々尿酸が高い人は気をつけてください。尿酸が低くて活性酸素が足りずに抗酸化力が弱い人は、使用して大丈夫です。尿酸値を増やしたい人はモリブデンを使ってみましょう。尿酸値を減らしたい人は体をアルカリ化してください。尿酸は、アルカリ環境下で排泄が促進されます。

5-4. 抗酸化物質を摂る

抗酸化物質が足りないとグルタチオンが抗酸化に使われてしまうので、抗酸化物質を摂りましょう。

5-5. リボフラビンを摂る(グルタチオンの還元に必要)

ビタミンB2、B3は、グルタチオンの還元環境を保つのに必要です。

5-6. ブロッコリースプラウトを摂る

Phase2はグルタチオンが主役ですが、その他にグルクロン酸抱合も重要です。これを活性化してくれるのがブロッコリースプラウトです。ブロッコリースプラウトは安価のため、POORMAN’Sグルタチオンと言われていますが、グルタチオンに負けず劣らず効果が高いので、毎日摂るべきです。ラディッシュスプラウトと、ブロッコリスプラウトをミックスするとより効果が高いそうです。咀嚼することで活性化されるので、食べ物で摂ったほうが良いと思います。

5-7. 少量頻回に摂ること(半減期12分)

グルタチオンは、少量頻回の方が効きやすいです。白玉点滴というタチオンを入れる点滴があります。美白に効果が高く、モデルさんが使っているので白玉点滴という名前がついたようです。内容物は、グルタチオンで一つ200mgを5本、1,000mgくらい一度に点滴します。美白の効能については分かりませんが、肝機能の向上になり、お酒を飲んだ翌日は楽になると思います。

ただ、半減期が短く持続力はありません。細胞の膜を貫通して入るリポソーマルタイプのグルタチオンは、非常に即効性があります。リポソーマルグルタチオンを発売している会社のインタビューを見ると、「まずリポソーマルグルタチオンを飲んだら喉元に貯めておいてください。20秒、30秒〜1分くらい貯めておくと頭がスッキリしてきます」と言っています。即効性があり、細胞膜を超えて入ってくるので、良い使い方だと思います。脳に近く、細胞内の抗酸化をするから、頭がすっきりします。

ただし、持続と即効性は違うので、半減期が短いグルタチオンをうまく使うには、ティースプーン1杯を一度に摂るのではなく、1/4のティースプーンに4回に分けて摂ったほうが解毒に関しては効果が高いので、補酵素との影響を考えて少量頻回で摂って下さい。

5-8. 遺伝子について

グルタチオンに関しては、ホモシステインの数字を見て補酵素がきちんと働いているかどうかを見てください。ベン・リンチ博士は、色々な要素が大き過ぎて遺伝子変異だけでは予測がつかないので、ホモシステインからシステインに、システインからグルタチオンにどのくらい変換されているか、グルタチオンを過剰摂取したらフィードバックがかかる可能性と、その結果も考えながら上げる要素、下げる要素を理解して使いなさいと言っています。

では、どれくらいの量を摂ったらフィードバックがかかるでしょうか。グルタチオンは肝臓だけで1日10gくらい作られます。500mgのグルタチオンサプリを一度摂って、フィードバックがかかるかは疑問です。

ただし、身体は硫黄が大量に入ってくると硫酸経路を活性化させ、排泄する方向に動くので、フィードバックは実際にかかるということは試験管の中で確認されているようなので、そういう働きはあると思いますが、はっきりしたことはまだ分かっていません。

6. グルタチオンサプリの副作用

グルタチオン=グリシン+システイン(硫黄)+グルタミン酸

6-1. グルタミン酸による副作用

グルタチオンは、グリシン、システイン、グルタミン酸から成っています。システインの硫黄の負荷のことは以前お話しした通りですが、グルタミン酸による副作用が出る人もいるので気をつけてください。

グルタミン酸は脳のカルシウムチャンネルを開放します。カルシウム、低血糖は、グルタミン酸神経を刺激します。グルタミン酸神経が開放されて、カルシウムが沢山入ってくれば、炎症を引き起こして細胞死を起こします。これは、自閉症の子どもの脳によく起こるので、低グルタミン酸食にしてもらいます。イライラ、頭痛、MSG、過敏症、不眠症が起きている人は、グルタチオンによる副作用なのかもしれません。有機酸検査でキヌレニン経路が亢進して、脳に炎症が起きている人は副作用が起きやすいです。

グルタミン酸とキヌレニン酸、キノリン酸は、脳の神経毒物です。電磁波過敏症の人は、カルシウムチャンネルが開放を刺激するので、グルタチオンが足りていないことが多いです。5Gが怖いと思っている人は、細胞内グルタチオン濃度を上げてください。

6-2. 硫黄による副作用

前述したように、グルタチオンは硫黄の代謝物だということを忘れてはいけません。

7. どんなタイプのグルタチオンを使うべきか、基質と酵素のバランスが大事

7-1. グルタチオンレベルは低すぎても高すぎても問題

グルタチオンレベルが低いか高いかは、個人によって差があります。ブレインフォグ、頭がクリアでない程度に合わせて飲むグルタチオンの量を調整してください。リポソームグルタチオンなら2、3滴からスタートして、ティースプーンを1/4、半分、または1杯を1回に摂ってみて、症状に変化があるかを試してみてください。赤血球中のグルタチオン濃度を測るのは高価なので、症状で微調整するのが現実的でしょう。

7-2. どんなタイプのグルタチオンを使うべきか

グルタチオンのサプリメントは下記のように様々あります。

・S-acetylglutathione

グルタチオンはトリペプチドなので、胃酸で切られると効力がなくなりがちですが、最近出たiHerbで購入できるSアセチルグルタチオンというサプリはアセチル基だけが切られるので、細胞内グルタチオン濃度を上げるのに良いそうです。

・ラクトバチラス・ファーメンタンス(グルタチオン産生腸内細菌)

ラクトバチラス・ファーメンタンスという乳酸菌は、グルタチオンの産生能力がある菌だと言われています。ただし発酵して腹部膨満を起こす人がいるので、注意した方が良いかもしれません。

・NAC

他に有名なのはNACのNアセチルシステインです。システインがグルタチオンの前駆体なので、Nアセチルシステインを使うのは良い方法だと思います。前駆体を入れておけば身体の中で都合よく変換してくれるからです。Nアセチルシステインの問題点は、このGCLの酵素がマイコトキシンで阻害されるということです。これに関した論文がいくつかあるので、マイコトキシンの検査をして溜まってる人は NACではなくてグルタチオンそのものの方がいいかもしれません。

・グルタチオン点滴

グルタチオンの点滴に関しては、「リポゾーマルグルタチオンのサプリメントの方が、赤血球中グルタチオンレベルの上昇度が高い」というドクターズデータ社の検査の方の非公式コメントが出ています。点滴でも上がりますが性能が良いサプリメントの方が効果は高いらしいので、うまく組み合わせて使うのが良いだろうと思います。

大切なのは基質と酵素のバランスをとることです。グルタチオンはセレンがないと活性化できず、リボフラビンがあって初めてリサイクルでき、モリブデンがあって硫黄代謝ができます。グルタチオンだけ入れると、競合して使われる他の栄養素が枯渇するので気をつけてください。基質を入れる時はいつでも、酵素に負荷をかけすぎないように気をつけてください。

僕が今使っているのはこちらです。

ある先生が推奨していたのでこれを使っていますが、使っている一番の理由は不味くないからです。グルタチオンのサプリメントの欠点の一つは硫黄が入っているため不味いことです。 上記は、グルタチオンに加えて、リボフラビン、セレン、モリブデンが入っています。PQQというのは抗酸化の補酵素で、細胞膜を柔らかくするフォスファチジルコリンもセットで入っているので、基質と酵素のバランスが考えられていて使いやすいと思います。

このシーキングヘルス社のサプリはベン・リンチが作っていますが、彼のインタビューで、アンケートでは全く受け付けない人は3%しかいなかったとのことでした。それほど多数でないですが副作用として、痙攣と自己免疫の反応があるということです。アメリカではリーキーガットのせいか、癌や心臓病より自己免疫疾患の患者が飛び抜けて多くなっているので、そのような症状で困っている人がグルタチオンを使っていると推測します。

他に僕が使っているのはリサーチ・ドニュートリショナルというもので、グリセリンが沢山入っていてスイカ味とオレンジ味があって、味が中和されているために採用しました。また、個包装なので酸化しにくいと思います。沢山量を摂ることではなくて、細胞内環境を整えることが大事だと思うので、その補助として頻回に使うと良いでしょう。

これは、ウィリアム・ウォルシュ博士のスライドからお借りしたメチレーション、低メチレーションとオーバーメチレーションの原因の図です。

ホモシステインが高くなる人の多くは、低メチレーションが原因です。低メチレーションになる人の原因の一番は、MTHFRの遺伝子変異です。MTHFRはホモシステインが特に高い人は調べる価値があるかもしれません。

SAMeが沢山作れるかで、オーバーメチレーションかアンダーメチレーションかが決まりますが、SAMeは作られたものの7割が筋肉で使われるので、AGATやGAMTなど筋肉を作る酵素がうまく働いていない人は、筋肉が作られずメチル基が余ってしまいます。高メチル化の人は、いくら運動しても筋肉がつきません。低メチル化の人は少し運動すれば筋肉がつきます。筋肉がつきやすいということは筋肉を作るのにメチル基が全部持っていかれるため、低メチレーションになります。僕のホモシステインは7ぐらいなので、比較的低メチレーションだと思います。ホモシステインは、簡単に血中濃度を測れるので、ちょうど良い値になるように調整するように心がけてみてください。

8. 症例 46歳女性 慢性疲労

8-1. 主訴

  • 貧血でふらつく
  • だるい日はやるべきことが捗らない
  • 少しでもジャンクなものを食べると必ず体調が悪くなる
  • 夜になると動けなくなる
  • いつもはコーヒーを2杯ほど飲んでなんとか活動している
  • ここ2年で体重が8kg増えた
  • 元気にパワフルに過ごしたいです

症状で特筆すべきは、中性脂肪が極端に低いことです。中性脂肪が低い=エネルギー代謝が低いです。特にアドレナリンが沢山出ている人の場合は、アドレナリンが中性脂肪を分解して遊離脂肪酸に変えるため、低血糖があってエネルギー代謝が悪いことは容易に想像できると思います。

8-2. 血液データ

食後高血糖があるのか、1.5AGがとても低いです。炎症の影響なのか、銅亜鉛バランスも悪いため、銅過剰タイプなのかもしれません。炎症のマーカーはそれ程高くはないですが、ピロリ菌がいることが炎症の引き金になっているのかもしれません。ペプシノゲンが少し高いです。

フェリチンは37で、MCVは108です。つまり、鉄欠乏と大球性貧血が混在しているので、恐らく鉄欠乏に加えてB12の消化吸収の障害及び甲状腺機能の低下があるでしょう。実際にTSHおよびT3がとても低いです。T3が低くてTSHが低いというのはフィードバックがかけたくてもあまりかけられてない状態なので、長年に渡って中枢神経が抑制を受けてる状況じゃないかと考えられます。

このデータを見て、どうやってデトックスするのかということを考えてみてください。最初にお話ししたドクターカリッシュのメソッドを思い出してください。デトックスの一番最初にやることは低血糖の改善でした。2番目がミトコンドリア機能の改善でした。この方は低血糖症もあるし、ミトコンドリア機能低下もあるでしょう。

8-3. 腸内環境

腸内環境を見てみると、良性菌のラクトバチルスが1+と少なく、境界型菌が5つ出てますから、ディスバイオーシスは結構進んでいるのではと考えられます。

消化吸収マーカーを見てみると、エラスターゼが208と低下しています。これは500以上が標準なので消化酵素は低く、そのためにディスバイオーシスを起こしやすい原因になっています。下の炎症マーカーを見てみると、標準が1くらいのラクトフェリンが3.2、カルプロテクティンは10くらいでそれほど大きくありませんが、標準100のリゾチームが148で、炎症が少し見られます。

ディスバイオーシスがあり、消化酵素が落ちていて、炎症があるので、乳酸菌を足した方が良さそうです。消化酵素が少ないので、場合によってはSIBOの検査をした方が良いでしょう。

短鎖脂肪酸を見ると、トータルの総短鎖脂肪酸は6.7、その中の酪酸は1.8で、比較的低いので、もう少し足してあげたほうが良いです。元々この短鎖脂肪酸が低いのは乳酸菌が少ないせいです。短鎖脂肪酸は食物繊維が良性の細菌によって発酵されたもので、これが不足するとミネラルが吸収できなかったり、腸管循環が起きやすくなります。この方の場合は低血糖を治して、ミトコンドリア機能を上げて、腸内環境を治してあげることが重要です。腸内環境を治すには、乳酸菌を入れて炎症を抑えて消化酵素を少し足してください。だんだんお腹の調子が良くなってくるでしょう。

8-4. 毒物検査

46歳で、できれば妊娠もしたいというお話だったので、毒物検査もしていただきました。いくつかの毒物が出ましたが、特に高かったのは有機リンです。母体に有機リンがあると、自然流産やIUGRが起こりやすいので、デトックスしたいとご希望がありました。

最後にオリゴスキャンを見てみましょう。アルミニウム、銀、カドミウムが高いです。

日本人では標準な方ですが、有害金属の毒性を見るとトータル属性が高いので、デトックスをした方が良いと判断します。

あくまでも参考程度ですが、オリゴスキャンの検査ではPhase2とPhase3の状況が分かります。このPhase3の硫黄との結合状態に要注意と出ているのでうまくいってないだろうと思います。一番下の酸化ストレスと抗酸化薬は緑と黄色なので、酸化ストレスに関しては心配ないでしょう。ただこの検査だけでははっきり分からないので、有機酸検査や、他の血液検査から細胞内環境を推定していく必要はあります。尿酸値が低い、ビリルビンが高いというのは活性酸素が沢山出ているということです。

8-5. 有機酸検査

  • アラビノース
  • クロストリジウム
  • SIBO
  • シュウ酸
  • リボフラビン
  • ビタミンC
  • ミトコンドリア
  • キノリン酸
  • NAC
  • ピログルタミン酸
  • 2ヒドロキシ酪酸

解毒をする人はぜひ有機酸検査をしてみてください。有機酸検査では、解毒に必要なマーカーが10個くらいあり、これらを全部クリアしたらデトックスできるという印です。アラビノース、クロストリジウム、SIBO、アラビノースはカンジタの治療、クロストリジウムは腸内細菌バランス、SIBOも同じです。SIBOはDHPTAを見ればわかります。

有機酸検査で有用なのはシュウ酸がわかることです。シュウ酸というのはカンジタ感染や食べ物の多さで上がりますが、水銀と結びついてシュウ酸水銀になると水銀のデトックスができなくなるため、シュウ酸が高いうちにデトックスはしないでください。次に見るのはビタミンです。ビタミンCの血中濃度は有機酸検査では下がりやすい所ですが、抗酸化力の指標になります。

リボフラビンを見ると、ビタミンB2が見れます。ビタミンB2は有機酸検査では上がりやすい所です。グルタル酸というところで、ビタミンB2は低く出やすい場所です。なぜならばビタミンB2はカンジタの代謝で使われるからです。カンジタ感染を起こしている人はリボフラビンが低く出ます。甲状腺機能が低下している人も、リボフラビンが低く出ます。ビタミンB2が低いということはグルタチオンは還元できないということです。ここもチェックしておいてください。

ミトコンドリア機能を見るのも重要です。ミトコンドリアにはATPが必要ですが、解毒やMRPタンパク質を使うのにもミトコンドリアが必要です。キノリン酸Nアセチルシステインも測れます。

最後はピログルタミン酸と2ヒドロキシ酪酸。この二つはグルタチオンマーカーとして58番と59番に載ってます。この二つが高いということは解毒が体内で働いているか、グルタチオンが体内で枯渇しているかを表しています。有機酸検査でこの11個のマーカーを見て、解毒治療に役立ててください。

8-6. 治療経過

低血糖を治してミトコンドリアをフォローして、神経伝達物質バランスを治してください。この方の場合は銅亜鉛バランスがかなり悪いので、亜鉛を摂るのはとても有用です。ドーパミン代謝が悪いはずです。それが終わったら消化器と肝臓のケアをしてください。f僕がいつも使っているサプリメントをご紹介します。Phase2を助けるのは、こちらです。

Liver Nutrientsには、肝臓の胆汁排泄をあげるミルクシスルが入っています。

Nアセチルシステインとリポゾーマルグルタチオンを一緒に使うと、血中濃度細胞内グルタチオン濃度を安定させるのに有用です。グルタチオンの半減期は短いので、前駆体を入れることで安定します。タウリンは、胆汁排泄や、細胞内にマグネシウムを入れ込む時に役立ちます。他にメチレーションを回すためにベタインやトリメチルグリシンが入ってます。αリポ酸はSH基が付いているので、Phase3に役に立ちます。

リポソーマルグルタチオンにリボフラビンや補酵素が、リバーニュートリエンスにミルクシスル、Nアセチルシステインが入ってるので、この2つを僕は組み合わせて使うようにしています。場合によってはウルソという胆汁排泄用の薬と、たまに使うのがタチオン、iHerbで売っている還元型のグルタチオンを主に使って、抱合して胆汁排泄を促します。

胆汁から排泄してきたらその毒素をキャッチして再吸収を防ぐには、下記の活性炭、クレメジンという薬、クロレラをよく使うようにしています。ケイ素を入れると水銀の抗酸化に役立つとので一緒に使っています。

この方の場合は、甲状腺機能の低下症があったので途中からナチュラルサイロイドを使いました。

腸内環境処方

  • ウルトラフローラ
  • ビタミンA
  • トレースミネラル
  • DaVinci リポソーマルC
  • カンジダアウェイ
  • リフキシマ
  • インターフェーズ

デトックス処方

  • ミヤBM
  • リバー
  • 亜鉛・マグネシウム
  • グルタチオン
  • B12
  • 葉酸
  • クロレラ
  • ケイ素

ミトコンドリア機能を上げるのに、どうしても甲状腺機能がネックになる場合があって、その場合は起爆剤として甲状腺ホルモン(自然ホルモン)を使うとうまくいくことがあります。この方の場合は治療後のT3がも3.6まで上がりました。

治療後
デトックス治療前後での比較

治療期間は1年半くらいかかりましたが、貧血も治って低血糖症の症状も改善して表情も明るくなりました。デトックス後、有機リンはギリギリくらいまで下がり、症状も大分良くなりました。

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